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締結状態の検査装置及び方法
説明

締結状態の検査装置及び方法

【課題】比較的小型なねじでも正確に締結検査が可能で、かつ、適用が簡単で、安価な、締結状態の検査装置及び方法を提供する。
【解決手段】ねじ頭の座面と被締結部品の接触面の状態を超音波のインピーダンス変化および共振周波数変化を計測して締結力を検査するもので、基準信号を締結中のインピーダンス変化や共振周波数変化として検出し、検出確度が高く、ねじの全数検査を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数部材を含む被検体の締結(接触)状態を検査するための検査方法及び検査装置に関し、例えば、ねじやリベットの締結状態を検査する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機、モータなどの産業機器、自動車、航空機などの輸送機、テレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電品は複数個の部品を組み合わせて性能を発揮する。この組み合わせを実現する締結の際に用いられる技術はねじ締結、リベット締結、溶接締結、かしめ締結などが一般的であるが、締結後の分解が容易なねじ締結が広く用いられている。このねじ締結は、産業革命以来使用されており、簡便に締結が可能であるが、締結時の締め忘れ、締結後の緩みが発生する欠点を有している。この締め忘れ、緩みは構造物に致命的なトラブルを発生させ、輸送機などではその事例が社会問題となることが多い。各メーカーはそれらの機器を製造する際、検査を頻繁に実施し、締結不備対策に時間と労力を費やしている。
【0003】
ねじ締結の検査は締結後直ちに行い、その検査に不合格となったねじは再締結などの操作により締結状態を修正する。ねじ締結はねじの倍力機能で数十Kgから数千Kgの力で締結が可能で、この要求される締結力によってねじサイズを変更する。サイズは直径が1mm以下の小型サイズから100mm以上の大型ねじまで種類は豊富である。ねじにより所定の締め付け力を得るには締め付けトルクを管理しなければならない。この締め付けトルクは、ねじの締め付け力とねじと被締結部品の摩擦によって決まり、この摩擦がねじの形状誤差、潤滑不足などで大きくなった場合、所定の締結力が得られない問題がある。このねじ締結後の検査方法としては視認による隙間の確認、ひずみゲージによる被締結部品およびねじの変形計測による締結力測定などが一般的である。
【0004】
その他、ねじ締結検査の従来技術として、特許文献1に記載されている技術がある。これは、超音波振動子をボルトの頭部に配置し、締結時のボルトの伸びを超音波により測定し、この伸び量からボルトの軸力を算出するものである。ボルトの伸びは、ボルトの軸方向を超音波が伝播する時間を計測することで得ている。具体的には、締結前後のボルトの長さの変化、すなわち伸び量と、別途ボルトのかかる引張り荷重を計測するために取り付けられた歪みゲージの締結前後における出力変化との相関関係から、ボルトの軸力を算出している。
【0005】
また、別のねじ締結検査の従来技術として、特許文献2に記載されている技術がある。特許文献2の技術は、ボルトに螺合したナットの側面に超音波送信器と超音波受信機とをナットを介して正対するように配置し、前記超音波送信器から発生した超音波を前記超音波受信器で受信して得られる受信エコーの強度に基づいて、ボルトの軸力を算出するものである。
【0006】
さらに、別のねじ締結検査の従来技術として、特許文献3や特許文献4に記載されている技術がある。特許文献3の技術は、ねじと被締結物との境界における超音波の反射率を計測して、ねじの着座の確認を行うものである。また、特許文献4の技術は、締結状態にあるボルトの減衰量を超音波のパルスカウントによって計測し、この減衰量とボルトの軸力との相関関係を用いて軸力を算出し、ボルトの締結状態を確認するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−253368号公報
【特許文献2】特開平8−170933号公報
【特許文献3】特開平1−142426号公報
【特許文献4】特開平2−88127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1乃至3に示されている検査においては、ねじが小型になればなるほど、発生させる超音波に高い分解能が求められる。そのため超音波周波数を高くし、且つ広帯域な超音波振動子が必要となり、やはりねじ直径が6mm以下のねじに対して、適用することが難しい。
【0009】
例えば、特許文献2では、ナットやボルトの頭の側面に超音波送信器や超音波受信器を取り付ける必要があり、小型のねじや、皿ねじのように側面の面積が取れないようなねじへの適用はできない。また、特許文献4の技術は、超音波パルスが長くなるため、分解能が悪く、やはり小型のねじへの適用が難しいという問題がある。
【0010】
ねじ締結検査は、全数検査、及びin situ検査(その場での検査)が必要であること、ねじに検査用の構造が不必要であることなど、簡単な構造を採用して安価な検査装置としなければ大量生産向けの高信頼検査装置とはなりえない。
【0011】
特に、例えば、特許文献1に示されている、超音波によりねじ軸の伸びを計測する手法は、ねじ直径が6mm以下のねじに関しては、超音波に高い分解能が求められると共に、ねじ山からの散乱信号が計測の外乱となって適用が難しい。また、超音波が反射する端面の加工を高精度とする必要があり、全数検査には不向きであり、検査に掛かるコストも高い。したがって、ねじ締めトルクとその軸力の条件出しに使用し、生産ラインとは別のオフラインで所定の軸力を発生する締め付けトルクをこの計測器を用いて決め、生産ラインではこの決定した締め付けトルクで締め付け作業を行っている。この場合、ねじ固有の原因である摩擦の変化などで所定の締め付け力が得られないといった問題も発生する。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、比較的小型なねじ(締結手段)でも正確に締結検査が可能で、かつ、適用が簡単で、安価な、締結状態の検査装置及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するために、本発明の接触状態の検査方法及び検査装置は、複数部材を含む被検体を一周波数あるいは複数周波数で超音波加振する電歪型、磁歪型、静電型のいずれかの超音波加振部と、超音波加振部の電気端における電圧と電流を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、複数部材の接触状態の情報を演算する処理部とを有する。この場合の複数部材の接触状態の情報としては、前記超音波発生部の電気端における電気インピーダンス、あるいは電気アドミッタンスの周波数特性と共振周波数の少なくとも一方を用いる。なお、超音波加振部にはボルト締めランジュバン型振動子を含むことが望ましい。
【0014】
超音波の周波数は200kHz以下の共振周波数を有しており、被検体と超音波加振部との間に、例えばゴム材からなるクッション材を備える。クッション材の厚さは、超音波の周波数におけるクッション材の波長に対して1/10以下の厚さとなるように構成される。さらに、超音波発生部を被検体側に静的な押付け力で押付ける加圧部を備えている。押付け力は、超音波加振部のほぼ振動の節にあたる位置に設けられたフランジを介して超音波加振部に与えられ、超音波発生部と被検体との間の接触圧力が0.1MPa以上となるように加圧される。
【0015】
また、本発明の接触状態の検査方法及び検査装置は、超音波加振部と、電気インピーダンスあるいは電気アドミッタンスを計測し、ねじ締結状態を判定するねじ締結判定器とを備えたねじ検査装置と、ねじ締め装置とを個別に配置し、その協調動作によってねじ締結検査を行うよう構成される。
【0016】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の締結状態の検査装置及び方法によれば、比較的小型なねじでも正確に締結検査が可能であり、しかも、簡単な構成で検査することができるため、安価な締結状態の検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態による締結状態検査装置(機械インピーダンス計測による)の概略構成を示す図である。
【図2】ねじ頭の振動モードを示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による締結状態検査装置(超音波振動系を用いたもの)の概略構成を示す図である。
【図4】超音波プローブの振動モードを示す図である。
【図5】第2の実施形態による検査装置の電気的等価回路図である。
【図6】電気インピーダンス計測のための回路図である。
【図7】本発明の第3の実施形態による締結状態検査装置(超音波振動系を用いたもの)の概略構成を示す図である。
【図8】超音波振動系の振動モードを示す図である。
【図9】第3の実施形態による超音波振動系の構成を示す図である。
【図10】実験により得られた電気インピーダンスの周波数特性図である。
【図11】実験により得られたトルクと電気インピーダンス及び共振周波数の関係の特性図である。
【図12】実験により得られたトルクと電気アドミッタンスの関係の特性図である。
【図13】本発明の適用例であるねじ検査装置の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の適用例であるねじ検査装置から得られる信号例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は複数部材を含む被検体における、前記複数部材の接触状態を調べるための検査方法及び検査装置に関するものである。
【0020】
以下では、締結部材(手段)としてねじを用い、ねじと被締結物との締結状態を検査することを例に挙げ、本発明の原理及び本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。なお、締結手段にはねじだけでなく、上述のリベット、溶接、かしめ等も含まれ、本発明はこれらの締結状態の検査にも当然適用可能である。
【0021】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による締結状態検査装置の概略構成を示す図である。図1における被検査対象は、ねじ100の座面に直接接触する被締結物(表面部)120と、めねじ122が設けられている被締結物(内部)121とが、ねじ100によって締結されているものである。
【0022】
ねじ100のねじ頭110には、打撃力(物理的作用)Fsをねじ頭110に与える打撃手段130と、打撃手段130によってねじ頭110が打撃されたときに生じるねじ頭の振動速度vを測定して出力するための計測手段131とが設けられている。
【0023】
測定された振動速度vは信号処理部132に送られる。信号処理部132では、ねじ頭110から見た機械インピーダンス(Fs/v)が計算される。ここで打撃力Fsは、既知の質量を有する重りなどを既知の高さからねじ頭110に落下させるなどして、定量的に求められており、信号処理部132に予め設定されている。また、信号処理部132では、接触状態の良否を判断するための機械インピーダンスの閾値も予め設定してあり、この閾値と、計測された機械インピーダンス(Fs/v)とを比較することによって、ねじ100と被締結物120及び121との締結状態が判定される。
【0024】
次に、ねじ100の締結状態と機械インピーダンスとの関係について図2を用いて説明する。図2は、ねじ100のねじ頭110を打撃手段130によって打撃した際に生じる被検体の振動の状態を示した振動モード図である。図2(a)はねじ100が被締結物から浮いている状態で打撃されたときに生じる振動モードを示し、図2(b)は完全に締結された状態で打撃されたときに生じる振動モードを示す概略図である。
【0025】
図2(a)に示されるように、ねじ浮きの状態においては、ねじ頭110は打撃によって振動モード111のような姿態となり、振動速度や振動周波数は主としてねじ頭110が拘束を受けない状態のときに近くなる。
【0026】
一方、図2(b)に示されるように、完全に締結状態にあるときは、ねじ100と被締結物120及び121が一体の構造とみなされ、例えば、ねじ頭110及び被締結物120に振動モード112のような姿態となる。図2(b)の場合、ねじ頭110に絞って考えるとねじ頭110の座面が拘束された状態となっており、これに伴って振動周波数や振動速度は図2(a)の状態とは異なったものになる。すなわち、同じ打撃条件でねじ頭110を打撃したとしても、ねじ頭110の座面の接触状態(拘束状態)によって振動周波数や振動速度が異なり、一般には締結状態が良いほど、振動速度は小さくなるといえる。したがって、打撃力Fsと振動速度vとの比で計算される機械インピーダンス(Fs/v)の周波数特性の変化をみれば、ねじ100の締結状態を検査することが可能となる。
【0027】
振動速度vの計測には、渦電流式あるいは光量式の非接触式変位計や、レーザードップラ振動計を用いればよく、打撃手段130の代替手段として、機械的にねじ頭110を加振して物理的な力を被検査物に与える加振手段を用いても良い。なお、加振手段を用いる場合は、ねじ頭110に生じる加振力を計測する必要があるが、歪ゲージなどを被検体に取り付けるか、あるいは加振力をモータのトルクなどから算出するなどし、それらの出力から信号処理部130で機械インピーダンスを算出するようにしても良い。
【0028】
<第2の実施形態>
次に、機械インピーダンスの代わりに、超音波振動(物理的作用を与える)系を用いて、超音波振動系の電気インピーダンスから接触状態を検査する方法及び装置(第2の実施形態)について、図面を用いて説明する。
【0029】
図3は、本発明の第2の実施形態による締結状態検査装置の概略構成を示す図である。この装置は、超音波プローブ200と、ハウジング220と、インピーダンス判定部135とを備える。超音波プローブ200とインピーダンス判定部135は、信号線133及び134によって電気的に連結されている。超音波プローブ200は圧電素子などの電気音響変換素子202を含み、電気音響変換素子202を金属製の前面ブロック203と金属製の裏打ちブロック201とで挟み込んだ、いわゆるランジュバン型振動子となっている。そして、前面ブロック203の機械出力端には、ねじ頭110との間に挟まれる形で、ゴム材料などからなるクッション材230が設けられている。
【0030】
また、前面ブロック203には、ハウジング220との連結部となるフランジ204が設けられている。超音波プローブ200は、図4で示すような軸方向の振動振幅分布205を持った半波長共振の固有振動モードを有している。フランジ204は、超音波プローブ200の振動モードに影響を与えないように、その振動モードの節に当たる位置に設けられている。
【0031】
クッション材230は、超音波プローブ200とねじ頭110との間の接触に関し、これらの間に空隙ができて超音波が反射してしまうのを防ぐために設けられる。ハウジング220の上面から押付け力300が加えられ、超音波プローブの振動モードに影響を与えないフランジ204を介して、超音波プローブ200の出力端がねじ頭110に押し付けられる。クッション材230は、ねじ頭110の表面粗さや平面度を押付け力300によるクッション材230の変形で吸収し、超音波プローブ200からねじ100を含む被検体へ効率よく超音波が伝搬するようにする。
【0032】
一方、クッション材230の厚さが、超音波プローブ200の上記半波長の共振周波数におけるクッション材230の波長と同等になってくると、クッション材230における超音波の減衰などの影響で感度が低下する。このため、クッション材230の厚さは、超音波プローブ200の上記半波長の共振周波数におけるクッション材230の波長の1/10以下の厚さとし、音響的には透明に見えるような厚さが望ましい。
【0033】
このことから、超音波プローブ200の半波長共振周波数が高くなると、これに伴いクッション材230の厚さも薄くする必要があり、加工が困難になる。また、周波数が高いとねじ頭110自体の高次の振動モードなどが励起され、複雑な振動となって接触状態の評価が難しくなる。超音波プローブ200は圧電素子や金属によって構成され、縦波音速は約5000m/sである。クッション材230の厚さとの関係や、ねじ頭110の高次の振動モードの抑制を考慮すると、超音波プローブ200は、少なくとも200kHz以下の共振周波数を有することが望ましい。
【0034】
また、クッション材230が十分に変形し、ねじ頭110の表面粗さや平面度を吸収して、超音波が効率よく伝搬するようために十分な押付け力300が必要である。クッション材230のヤング率及び厚さをそれぞれE及びtとし、必要な変形量をΔtとすれば、クッション材230に必要となる応力σは、σ=E×(Δt/t)となり、ねじ頭110の面積をSとして、(σ×S)の押付け力300を要する。一般にゴム材は弾性率Eが3〜8MPa程度であり、ゴム材の厚さtを0.5mmとすれば、5μm程度の変形を必要とすると、ゴム材に対して30〜80kPa程度の応力が要求される。したがって、少な
くとも、クッション材230とねじ頭110との接触応力が0.1MPa以上となるように押し付けることが望ましい。
【0035】
次に、超音波振動系を用いたねじ締結状態の検査原理について説明する。図5は、超音波プローブ200をねじ頭110に取り付けた状態の電気的等価回路を示す図である。超音波プローブ200は図5の破線で囲まれた等価回路400で示されており、機械端AA’と電気端BB’とを有し、コンデンサ401と超音波プローブ200自体の機械インピーダンス等価回路402とからなる。
【0036】
ねじ頭110から見た被検体の機械インピーダンス等価回路410は機械端AA’に連結され、ねじ100の締結状態によって、上記被検体の機械インピーダンス410は変化する。したがって、電気端BB’からみた電気インピーダンスZを計測することにより、ねじ100の締結状態を知ることができる。例えば、締結状態が良くなると被検体での超音波減衰も大きくなるから、機械インピーダンス401に含まれる純抵抗が大きくなり、電気インピーダンスZは大きくなる。また、締結状態が良くなると、ねじ100だけでなく被締結物120及び121にも超音波が伝搬し、被締結物境界で反射したり、散乱したりする要素が増すため、超音波プローブ200と被検体とからなる振動系の共振周波数が変化する。よって、予めねじ100の締結状態と電気インピーダンスや共振周波数との相関関係を調べておけば、それと比較して、ねじ締結状態の検査が可能になる。なお、電気インピーダンスの逆数で表される電気アドミッタンスを用いて評価しても良いし、反響振周波数の情報や、これらインピーダンスやアドミッタンスの周波数特性の形を判定のための情報としても良い。
【0037】
電気インピーダンスZの計測は、インピーダンス判定部で行われる。電気インピーダンスを計測する手段としては、図6(a)及び(b)に示したようなブリッジ法やI−V法がある。図6(a)のブリッジ法は、インピーダンスZ、Z、Zと求めたい電気インピーダンスZとでブリッジ回路を組み、検流計420に電流が流れないようにインピーダンスZ、Z、Zを調整すると、Z=Z/Zを計算することによって、電気インピーダンスZが求められる。発振器450で周波数を掃引するなどして、超音波プローブ200の共振周波数周辺のインピーダンス周波数特性を計測する。
【0038】
また、図6(b)のI−V法は、図5に示した電気的等価回路に流れる電圧Vと電流Iとを検出して、電気インピーダンスZを求める方法である。電圧は電圧計430で計測し、電流Iは低抵抗Rを用いて電圧計440で計測する。電圧計430で得られる電圧Vと、電圧計440で得られる電圧V及び低抵抗Rから、電気インピーダンスZはZ=V/I=RV/Vとして求めることができる。電気インピーダンスを求める方法としては、他に自動平衡ブリッジ法や共振法などがあるが、いずれを用いても良い。
【0039】
なお、従来の超音波を利用したボルトの軸力計では、主として締結時のボルトの伸び量を、ボルトを伝播する超音波パルスの往復伝搬時間から算出している。しかし、小型のボルトなどに対しては、ボルトのねじ山などが超音波パルスを散乱させたり、非常に高分解能な超音波パルス制御が必要となるなど、実用的ではないという問題があった。これに対して本発明の接触状態の検査方法及び検査装置では、ねじの着座に着目し、ねじ頭の座面と被締結物との接触状態をインピーダンス変化として計測するため、小型のねじにも適用が可能であり、装置も安価に構成することができる。
【0040】
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態による、超音波振動(物理的作用を与える)系を用いた接触状態の検査装置について、以下図面を用いて説明する。図7は、第3の実施形態による締結状態の検査装置の概略構成を示す図である。
【0041】
図7では、超音波振動系が、裏打ちブロック211、電気音響変換素子212及び前面ブロック213からなる超音波プローブ210と、金属製の固体伝送棒214とを含んで構成されている。また、固体伝送棒214にフランジ215が設けられて、ハウジング221と連結されている。固体伝送棒214の出力端にはクッション材230が設けられている。他の構成は図3で示した第2の実施形態と同様である。
【0042】
固体伝送棒214は、フランジ215を境に、クッション材230側の太さの方が超音波プローブ210側の太さよりも細く絞るような構成となっている。このような構成は、図7に示すように被締結物123に座ぐり124があり、ねじ頭110の寸法が小さい場合などに、超音波プローブの設計を新たに変更する必要がないなどの効果もあるが、別の効果として機械インピーダンスの変換を行える点がある。
【0043】
図8は、この超音波振動系の振動モードを示しており、超音波プローブ210と固体伝送棒214及びクッション材230で一波長の共振となるような振動振幅分布216を有している。固体伝送棒214の出力端側の太さを細くすると、振動振幅が拡大し、固体伝送棒214の出力端における伝送力は、固体伝送棒214の超音波プローブ210側の入力端より減少する。損失がなければ伝送力と振動速度の積で表されるパワーは両端で変わらないが、伝送力と振動速度の比で表される機械インピーダンスはクッション材230側の出力端の方が、超音波プローブ210側の入力端よりも小さくなる。このような機械インピーダンスの変化によって、超音波プローブ210での計測感度が最適になるように、機械インピーダンスの変換を行うことができる。
【0044】
超音波プローブ200及び210、あるいは超音波プローブ210と固体伝送棒214からなる超音波振動系は、少なくとも複数の部材で構成されているため、例えば、電気音響変換素子202と、裏打ちブロック201及び前面ブロック203との接着状態や、超音波プローブ210と固体伝送棒214との接着状態は、検査の精度や性能に大きく影響する。即ち、上述の接着状態が導電性の接着剤によりなされているような場合には、接着面にボイドが存在していたりするだけで性能劣化の原因となる。このような性能の劣化を改善し、高い性能を維持するためには、本実施形態における超音波振動系は、ねじ締結されていることが望ましい。
【0045】
図9は、図7に示した超音波振動系を構成する複数の部材の各接続部を、ねじ締結した超音波振動系を示す図である。超音波プローブ500はボルト締めランジュバン型振動子となっている。そして、交互に重ねられた2枚の電極521及び522と2層の圧電素子511及び512とを、裏打ちブロック501と前面ブロック502とで挟み込み、締結ボルト531で締結している。また、超音波プローブ500と固体伝送棒217も連結ボルト532で締結されている。このように超音波振動系の構成部においてはできるだけボルトによる締結を行うことで、計測対象以外の接触状態を安定に保つことができ、検査性能の維持が可能となる。
【実施例】
【0046】
<検査実験>
以下、上述した本発明の超音波振動系を用いたねじ締結状態の検査に関する実験結果について説明する。用いた超音波振動系は図9に示した超音波振動系とほぼ同一で、固体伝送棒の太さは均一とした。即ち、固体伝送棒での機械インピーダンスの変化はない。超音波プローブには約60kHzの半波長共振を持ったボルト締めランジュバン型振動子を用い、その出力端にアルミニウム合金製の固体伝送棒を連絡ボルトを用いて締結した。クッション材にはバイトンゴムを用い、厚さを0.3mmとした。上記固体伝送棒の長手方向中央にフランジを設け、ハウジングを介して4kgの荷重をかけた。検査対象としたねじはM2.5のねじを用い、トルクドライバーによるトルクの値と電気インピーダンス計測結果との比較を行った。
【0047】
図10乃至図12は、実験結果を示している。図10は電気インピーダンスの周波数特性図である。トルクをパラメータとして、図10(a)はインピーダンスの絶対値の周波数特性を示し、図10(b)は位相の周波数特性を示している。インピーダンスの絶対値の周波数特性(図10(a))を見ると、インピーダンスが最小値をとる周波数が、電気的な共振周波数であり、トルクの増加に伴って、インピーダンスの値が増加し、共振周波数も上昇していくことがわかる。
【0048】
図11は共振周波数におけるインピーダンスの値と、共振周波数とをそれぞれトルクに対してプロットした図である。トルクを対数に取ると、インピーダンスも共振周波数のどちらも直線的に増加する。図10及び図11には、ねじ頭が着座していないねじ浮きの場合の実験結果も示してあり、インピーダンスの絶対値だけでは着座の有無を評価できないが、共振周波数の変化やトルクそのものとの併用によって、確実に判断することができる。
【0049】
図12は、電気アドミッタンスによる評価結果を示し、特に、図12(a)は電気アドミッタンス円を、図12(b)はトルクに対するコンダクタンス最大値、すなわちアドミッタンス円の直径の大きさを示したものである、トルクの増加に伴い、アドミッタンス円は小さくなっており、ねじ頭から見た機械的な負荷インピーダンスが大きくなっていることがわかる。また、図12(b)から、トルクの上昇に伴って、徐々に一定値に漸近していくことがわかる。インピーダンスと同様に、コンダクタンス値だけでのねじ浮きの評価は難しいが、共振周波数の変化やトルクの値を併用することで、確実に着座の有無を評価できる(ねじ浮きの有無を適切に評価できる)。
【0050】
以上の電気インピーダンスあるいは電気アドミッタンスの変化、あるいは共振周波数の変化は、本実験条件下において見られた傾向であり、被締結物の形状や材質によっては、例えば共振周波数が減少していくなど異なる結果が出ることも考えられる。したがって、リファレンスとして正しく締結されている状態のデータを予め計測しておき、そのデータとの比較を行うことで評価することが望ましい。
【0051】
<適用例>
以下、ねじ締結検査装置としての適用例について述べる。本発明ではねじ締め装置の近傍に本発明によるねじ締結検査装置を配置し、ねじ締結作業終了後直ちにねじ締結検査が実施可能とした。
【0052】
ねじ締め装置にこのねじ締結検査装置を組み込み、ねじ締結中の締結力を常時モニタすることでねじ締結検査が実施可能な構造とした。
【0053】
図13は本発明によるねじ締結検査装置の構成を示している。超音波を生成し受信する超音波プローブ10によりねじ11の締結を計測する。超音波プローブ10は圧電素子12をその内部に固定した軸の先端からねじ頭13に向かって超音波を発信する。超音波プローブ10は圧電素子12をその間に挟みこんだ軸構造で圧電素子12とねじ頭13の間に前軸14、反対側に後軸15が配置されている。ねじ頭13と前軸14の間にはその接触を高めるための軟質材16を配置している。前軸14の外周から取り付けフランジ17が加工されておりここで固定軸18と結合されている。固定軸18はエアシリンダ19の可動軸20に取り付いている。エアシリンダ19の可動軸20は圧縮空気によって上下に動くことが可能な構造となっている。超音波プローブ10にはその圧電素子12を駆動するための駆動ドライバ64とねじ頭13の座面21と被締結部品22の接触部の反射波から得られた信号からねじ締結の判断を行うねじ締結判定器23が配置されている。超音波プローブ10はねじ頭13との接触部24で超音波の伝達を容易とするために加圧機構を具備している。この加圧機構はエアシリンダ19の空圧による加圧で、合わせてこの上下移動で検査装置の退避ができる構造となっている。ねじ11は被締結部品22を締結部品25に取り付ける構造で被締結部品22には通し穴、締結部品25にはタップ穴が加工されている。ねじ11の回転で被締結部品22と締結部品25を締結する構造となっている。
【0054】
図14は、ねじ締結によるインピーダンス線26の変化を示す図である。縦軸がインピーダンスで、横軸に周波数を示す。このインピーダンス線26は超音波プローブ10からねじ頭13の座面21と被締結部品の接触部に向けて超音波を入射し、このインピーダンスを計測したものである。この時周波数を変化させてインピーダンスの変化を締結前後で比較し、締結を確認する。締結前のインピーダンスで計測された共振周波数W1がねじの締結において破線65で示す共振周波数W2に変化している様子がわかる。この共振周波数の変化でねじ締結を確認することができる。
【0055】
<まとめ>
以上、本発明の接触状態の検査方法及び検査装置によれば、複数部材からなる被検体における、複数部材の接触状態を機械インピーダンスの情報をもとに算出するので、例えば、被検体内にねじと被締結物を含み、ねじの締結状態を検査する場合に、小型のねじへの適用も可能になる。
【0056】
また、超音波振動子を含んだ超音波発生部を被検体に押し付け、機械インピーダンスを力と速度の比から直接求める代わりに、超音波振動子の電気端における電気インピーダンスあるいは電気アドミッタンスを計測することにより、装置の低コスト化、小型化が実現できる。ここで使用する超音波発生部は、共振周波数が比較的低いため、例えば、被検体内にねじと被締結物を含み、ねじの締結状態を検査する場合に、小型のねじへの適用も可能である。
【0057】
また、本発明によれば、ねじ締結前後のねじと被締結物との接触による電気インピーダンスあるいは電気アドミッタンスの変化をその締結情報として処理し、締結力を検査するので、ねじに計測のための特別な構造の付加をせず、ねじ締結作業後に検査工程を入れることも可能になる。このため、生産ラインのin situ(その場)で短時間に締結検査が可能となり、全数検査にも対応できる。
【符号の説明】
【0058】
10、200、210 超音波プローブ
11、100 ねじ
12、202、212、511、512 圧電素子
13、110 ねじ頭
14 前軸
15 後軸
16 軟質材
17 取り付けフランジ
18 固定軸
19 エアシリンダ
20 可動軸
21 座面
22 被締結部品
23 ねじ締結判定器
24 接触部
25 締結部品
26 インピーダンス線
64 駆動ドライバ
65 破線
111、112 振動モード
120、121、123 被締結物
122 めねじ
124 座ぐり
130 打撃手段
131 計測手段
132 信号処理部
133、134 信号線
135 インピーダンス判定部
201、211、501 裏打ちブロック
203、213、502 前面ブロック
204、215 フランジ
205、216 振動振幅分布
214、217 固体伝送棒
230 クッション材
400 等価回路
401 コンデンサ
402、410 機械インピーダンス等価回路
420 検流計
430、440 電圧計
450 発振器
521、522 電極
531 締結ボルト
532 連結ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結手段と被締結部材を含む被検体の締結状態を検査する検査装置であって、
前記被検体に対して物理的作用を加える物理的作用付加部と、
前記物理的作用が加えられたことによって生じる前記被検体の物理的変化を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記締結手段と前記被締結部材の締結状態を評価するための情報を演算する処理部と、を備え、
前記物理的作用付加部は、前記被検体を一周波数あるいは複数周波数で超音波加振する超音波加振部で構成され、
前記検出部は、前記超音波加振部の電気端における電圧と電流を検出することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記被検体と前記超音波加振部との間に、クッション材を備えるか、液体あるいはゲル状物質が充填されることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記超音波加振部は、電歪型、磁歪型、及び静電型のいずれかの超音波発生部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記超音波加振部は、200kHz以下の共振周波数を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記締結状態を評価するための情報は、前記超音波加振部の電気端における電気インピーダンス、或いは電気アドミッタンスの周波数特性及び共振周波数の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記クッション材はゴム材であることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項7】
前記クッション材の厚さは、前記超音波加振部から発生する超音波振動の周波数における前記クッション材の波長に対して1/10以下の厚さであることを特徴とする請求項2又は6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記超音波加振部は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子を含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
さらに、前記超音波加振部を前記被検体側に静的な押付け力で押付ける加圧部を備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
前記超音波加振部は、振動の節の周辺部にフランジを備え、
前記加圧部による押付け力は、前記フランジを介して前記超音波加振部に与えられ、
前記押付け力によって与えられる前記超音波加振部と前記被検体との間の接触圧力が0.1MPa以上であることを特徴とする請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
前記被検体はねじを含み、
前記ねじと被締結部材との締結状態を調べることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項12】
締結手段と被締結部材を含む被検体の締結状態を検査する検査方法であって、
物理的作用付加部が、前記被検体に対して物理的作用を加え、
検出部が、前記物理的作用が加えられたことにより生じる前記被検体の物理的変化を検出し、
処理部が、前記検出部の検出結果に基づいて、前記締結手段と前記被締結部材の締結状態を評価するための情報を演算し、
前記物理的作用付加部は、前記被検体を一周波数あるいは複数周波数で超音波加振する超音波加振部で構成され、
前記検出部は、前記超音波加振部の電気端における電圧と電流を検出することを特徴とする検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−54039(P2013−54039A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264506(P2012−264506)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2008−165950(P2008−165950)の分割
【原出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】