編機用編針
【課題】3つの機能を果たすことができる簡単な編針を提供する。
【解決手段】編機用編針10は、針かぎ12を備えた針幹11及びその上側に設けられて針10を動かすための少なくとも1つの駆動バット15を有するものにおいて、1つの駆動バット15のみが、編針10の針かぎ12とは反対の端部に設けられ、ばね力に抗して下降せしめられた位置から少なくとも1つの上昇せしめられた位置へ、又は上昇せしめられた位置から少なくとも1つの下降せしめられた位置へ可動する。
【解決手段】編機用編針10は、針かぎ12を備えた針幹11及びその上側に設けられて針10を動かすための少なくとも1つの駆動バット15を有するものにおいて、1つの駆動バット15のみが、編針10の針かぎ12とは反対の端部に設けられ、ばね力に抗して下降せしめられた位置から少なくとも1つの上昇せしめられた位置へ、又は上昇せしめられた位置から少なくとも1つの下降せしめられた位置へ可動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編機用編針であって、針かぎを備えた針幹及びその上側に設けられて針を動かすための少なくとも1つの駆動バットに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の編機では、編針により3つの機能を満たすことができる。即ち編目の形成、タックループの挿入及び不動作位置における保持である。これらの機能は、編針と針床を越えて摺動する編成システムとの共同作用によって得られ、編成システムにより針選択が行われ、行うべき所望の機能に従って針が駆動される。その際編針の駆動バットは、編成システムにある異なるカム曲線路に係合する。
【0003】
編針の3つの異なる機能を保証する可能性は、いわゆる押圧カムの使用である。針床から上方へ突出する編針又は編針に結合される駆動素子の駆動バットは、カム曲線路をバットが通過する間に選ばれた個所で、針床へ押込まれ、従ってカムとの係合を外される。押圧の解消により対応する駆動バットが針床から再び浮上して、カムに再び係合することができる。その際駆動バットを一部だけ針床へ押戻すことも可能なので、他のカム部分により駆動バットを捕捉し、編針の引続く機能を実現することができる。構造が複雑な押圧カムの使用は、編針のほかに、同様に駆動バットを備えた駆動素子の使用も必要にする。更に針長手方向に強い荷重がかかると、編針が意に反して針床へ没入する危険があり、誤動作を生じる。
【0004】
押圧カムを使用するほかに、上昇カムの使用も公知である。ここでは編針又は付属する駆動素子の駆動バットがまず針床へ沈下せしめられ、カム通路の所定の個所で針床から上昇せしめられる。こうして駆動バットを異なるカム曲線路に係合させることができる。カム通過後駆動バットが積極的に針床へ押戻されて、係合を解除される。このような上昇カムは例えば欧州特許第0189602号明細書に記載されている。上昇カムを使用する場合の欠点は、カム通過後針バットを積極的に針床へ押戻さねばならず、それにより個々の編成システムの間に大きい間隔が生じることである。更に針床への望ましくない下降を防止するため、カム通過中に若干個所で針バットを下から支持せねばならない。上昇カムに関連して、ばね力により駆動バットが針床内へ下降せしめられる編針の使用も公知である。しかしこれらの編針に、編針を歯口へ戻す第2の駆動バットを設けねばならない。これらの公知の編針は従って比較的長く、それにより針長手方向における針床の適当な大きさが必要になる。
【0005】
中国特許出願公開第101314887号明細書から公知の別の編成カムでは、編針又は付属する駆動素子が異なる個所で動作可能である。このカムでは、編針のほかに駆動素子が必ず必要である。駆動素子は弾性的応力のかかる位置へもたらされて固定される。カム通路の所定の個所で素子の固定が解消される。その場合素子の応力が駆動バットをカムに係合させる。残る残留応力が、カム通過中における駆動バットの没入を防止する。しかしこの残留ばね力は僅かである。なぜならば、カム通過後に駆動素子の必要な再度の固定の際、この残留ばね力に更に打勝たねばならないからである。
【0006】
最後に欧州特許出願公開第1569065号明細書から公知の編針は、1つの駆動バットのみを持っているが、針幹全体は可撓性素子として構成されている。しかしこの構成により、編針は側方負荷の際ねじれ易く、更にこの編針でも針床へ駆動バットの予期しない下降も起こることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎になっている課題は、簡単に構成され、かつ3つの機能の1つすなわち編目の形成、タックループの挿入又は不動作保持を選択的に実施するため、針床に付加的な駆動素子なしに、編成システムにより駆動可能な編機用編針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
編機用編針であって、針かぎを備えた針幹及びその上側に設けられて針を動かすための少なくとも1つの駆動バットを有するものにおいて、1つの駆動バットのみが、編針の針かぎとは反対の端部に設けられ、ばね力に抗して下降せしめられた位置から少なくとも1つの上昇せしめられた位置へ、又は上昇せしめられた位置から少なくとも1つの下降せしめられた位置へ可動であることによって、課題が解決される。
【0009】
この編針の針幹は少なくとも大部分曲げ剛性のある材料から製造され、それにより必要な安定性を持つことができる。ただ1つの駆動バットを設けることによって、編針は構造が簡単であり、比較的小さい長さを持っている。駆動バットの一方の終端位置を編針自体に生じるばね力が取るので、駆動バットを1つの運動方向へ積極的に駆動しさえすればよい。従って編針のために、針床に設けるべき少数の駆動素子しか必要でない。これは、針長手方向における針床の比較的狭い構造を可能にする。編針を駆動するための編成カムも比較的簡単な構造を持つことができる。1つの駆動バットのみが作用を受ける。更に針長手方向に対して直角な駆動バットの1つの運動方向をばね力が引受け、従って積極的に開始する必要がない。押圧カム又は上昇カムを使用する必要がない。
【0010】
好ましい構成では、駆動バットが、その最も下降せしめられた位置において、針幹又は針床を越えて上方へ突出していないようにすることができる。従ってこの位置で編針の駆動バットはカム部分により捕捉されない。他方駆動バットが、少なくとも最も上昇せしめられた位置において、針幹又は針床を越えて上方へ突出しているので、駆動バットはカム部分により捕捉可能である。更に駆動バットの最も上昇せしめられた位置と最も下降せしめられた位置との間の中間位置へ駆動バットをもたらすことも可能で、この位置で駆動バットが同様に針幹を越えて上方へ突出する。
【0011】
編針の構造は異なるように構成することができる。第1の変形例では、駆動バットが針幹の弾性部分に設けられている。従って編針は1つの部分から構成することができる。針幹は弾性範囲以外では曲げ剛性を持つように構成可能なので、編針の必要な機械的安定性は保証されている。
【0012】
別の構成では、針幹に関節結合される揺動素子に駆動バットが支持され、揺動素子がばね力とは逆の方向に針幹に対して揺動可能である。編針のこの2部分構成も、駆動バットの所望の移動を可能にする。その際ばね力が針幹の弾性部分により発生可能であるか、又はばね力が揺動素子の弾性部分により発生可能である。
【0013】
針幹が、少なくともその1つの運動方向において駆動バットの運動を限定するストッパを持っていると、別の利点が生じる。このようなストッパは、駆動バットが所定の終端位置を取ることができるようにし、針幹の弾性部分を持つ編針では、同時に弾性部分の安定化に役立つ。
【0014】
図面により、本発明による編針の種々の実施例が以下に説明される。すべての図は、それぞれ1つの編針が挿入されている針溝の範囲における針床の断面図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第1の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図1b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第1の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図2a】 下降せしめられた駆動バットを持つ第2の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図2b】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第2の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図3a】 下降せしめられた駆動バットを持つ第3の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図3b】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第3の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図4a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第4の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図4b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第4の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図5a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第5の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図5b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第5の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図6a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第6の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図6b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第6の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図7a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第7の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図7b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第7の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1a,1bには、他のすべての図におけるように、針底を形成する針床110の部分及び覆い条片110が示され、覆い条片110は、図1a,1bにおいて針底から編針10が離れるのを防止する役割を持っている。編針10は、前方端部に針かぎ12を備えた針幹11を持っている。針幹11はその後方端部にほぼU字状の形状を持ち、下部脚辺13も残りの針幹11と同様に曲げ剛性を持つように構成されている。これに反し上部脚辺14は弾性的に構成されている後方端部には駆動バット15が設けられて、図1aに示す負荷されない位置で針幹11及び覆い条片110を越えて上方へ突出し、従って針床を越えて動かされる図示しない編成カムにより捕捉されることができる。
【0017】
図1bでは、力Fにより下方へ動かされる駆動バット15を持つ編針10が示されている。この下降せしめられた位置で、駆動バット15もはや針幹11従って針床を越えて突出せず、それによりカム曲線路へ係合せしめられない。弾性脚辺14は下方へ曲げられ、それにより予荷重をかけられる。力Fの作用が終わると、脚辺14は再び図1aに示す位置を取り、この位置で駆動バット15が上昇せしめられている。
【0018】
図2a,2bには、再び後方端部に設けられて駆動バット25を有する弾性脚辺24を持つ針幹21を持つ編針10に全く類似な編針20が示されている。従って編針20は、編針10と同様に1つの部分から構成されている。しかしここでは弾性脚辺24は荷重を除かれた状態で下方へ曲げられており、即ち駆動バット25はこの位置で針床内へ下降せしめられ、針床21を越えて上方へ突出していない。図2に示すように下からのばね力Fにより、駆動バット25を上昇位置へもたらすことができる。この位置で、駆動バットが編成カムにより捕捉可能である。力Fの作用が終了すると、駆動バット25を持つ脚辺24が再び図2aに示す位置へ下降する。
【0019】
図3a,3bは、弾性脚辺34を持つ針幹31を有する1つの部分から成る第3の編針30を示し、脚辺34の後方端部に駆動バット35が設けられている。図3aに示す荷重を除かれた状態では、脚辺34は下方へ曲げられ、即ち駆動バット35は下降位置にある。ここでは針床100′がその後方縦縁に面取り部120を持ち、駆動バット35の下方部分36がこの面取り部上に支持されている。図3bに示すように、編針30全体が矢印37の方向に前方へ移動されると、面取り部120が駆動バット35を持ち上げるので、駆動バットをカム曲線路が捕捉することができる。上昇せしめられた位置で、駆動バット35の部分36が針床100′の針底上にあるので、駆動バット35が針床内への予期しない下降を防止されている。矢印37の方向とは逆に編針30が再び後方へ移動されると脚辺34のばね応力により、編針30が再び図3aに示す位置を取り、駆動バット35が下降せしめられる。
【0020】
図4a,4bには、本発明による別の1つの部分から成る編針40が示されている。この編針40の針幹41は、その後方範囲に弾性部分44を持ち、弾性部分44がその端部に駆動バット45を持っている。弾性部分44は、編針40では剛性的に構成される2つの脚辺43及び46の間に設けられ、これらの脚辺がその後方端部にそれぞれ弾性部分44用のストッパ47,48を持っている。弾性部分44の図4aに示す応力を除かれた状態で、この弾性部分が脚辺46のストッパ47に当たっている。駆動バット45は上昇せしめられた位置にあり、針床から上方へ突出している。上から駆動バット45を押すことにより、これを図4bに示す位置へもたらすことができる。弾性部分44は今や脚辺43のストッパ48に当たる。この位置で駆動バット45はもはや針幹41を越えて上方へ突出せず、従って編成カムによりもはや捕捉されない。
【0021】
弾性部分44の応力を除かれた位置は下方へ曲げられた位置でもあり、即ち駆動バット45は下降位置にある。下から駆動バット45を押すことにより、駆動バット45は図4bに相当する位置から図4aによる位置へもたらされる。
【0022】
図5a,5bは、2つの部分から構成される編針50の実施例を示す。針幹51は再び後部範囲に弾性部分54を持っている。しかし編針の駆動バット55はもはや弾性部分54に設けられているのではなく、枢着個所57で針幹51に結合されている別個の揺動素子56に設けられている。揺動素子56の部分58は更に弾性部分54の外側端部を包囲している。応力を除かれた状態で弾性部分54は、図5aに示す位置をとり、この位置で編針50に駆動バット55が上昇せしめられている。これに反し図5bは、下降位置にある駆動バット55を示す。この位置で弾性部分54は揺動素子56により応力をかけられる。
【0023】
弾性部分54の応力を除かれた位置は、下方へ曲げられた位置であってもよいので、駆動バット55は下降位置にある。駆動バット55を下から押すことにより、これを図5aに示す位置へもたらすことができる。
【0024】
図6a,6bは2つの部分から成る編針60の別の例を示し、駆動バット65は再び揺動素子66に設けられている。揺動素子66は、針幹61の2つの曲げ剛性を持つ2つの脚辺63,68の間の枢着個所67に揺動可能に支持されている。この編針の針幹61全体が曲げ剛性を持つように構成されている。ばね力は、同様に針幹の両方の脚辺63と68との間に導入されてこれらの脚辺63,68の間に支持される揺動素子66の弾性部分64により発生される。図6aに示すばね素子64の応力を除かれた位置で、駆動バット65が上昇位置にある。これに反し図6bは、下降位置にある駆動バット65を示す。揺動素子66は下方へ揺動されている。ばね素子64は上方へ湾曲し、それにより予荷重をかけられて、駆動バット65への力の作用の終了後駆動バット65を再び上昇した初期位置へもたらすことができる。
【0025】
この場合もばね素子65の応力を除かれた位置は上方へ湾曲していてもよいので、駆動バット65は下降位置にある。駆動バット65を下から押すことにより、駆動バットを図6aに示す位置へもたらすことができる。
【0026】
図7a,7bは編針60に類似な2つの部分から成る編針70を示し、編針70の両方の剛性脚辺73及び78がそれぞれ揺動素子76用のストッパ73a,78aを持っているという点で、この編針70は編針60と相違している。図7aに示す応力を除かれた状態で、揺動素子76に設けられるばね素子74が上方へ曲げられているので、揺動素子76がストッパ78aに当たり、駆動バット75が針床から上昇せしめられている。駆動バット75を押すことにより、これが図7bに示すように下降せしめられる。揺動素子76はストッパ73aに当たるまで下方へ揺動する。ばね素子74は上方へ曲げられ、それにより予荷重をかけられて、駆動バット75に対する力の作用の終了後これをその上昇せしめられた初期位置へもたらすことができる。
【0027】
しかしばね素子74の応力を除かれた位置は、上方へ曲げられた位置であってもよく、この位置で駆動バット75は下降位置にある。下から駆動バット75を押すことにより、これを図7aに示す位置へもたらすことができる。
【0028】
図示した編針10〜70は舌針である。編針を複合針として構成できることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、編機用編針であって、針かぎを備えた針幹及びその上側に設けられて針を動かすための少なくとも1つの駆動バットに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の編機では、編針により3つの機能を満たすことができる。即ち編目の形成、タックループの挿入及び不動作位置における保持である。これらの機能は、編針と針床を越えて摺動する編成システムとの共同作用によって得られ、編成システムにより針選択が行われ、行うべき所望の機能に従って針が駆動される。その際編針の駆動バットは、編成システムにある異なるカム曲線路に係合する。
【0003】
編針の3つの異なる機能を保証する可能性は、いわゆる押圧カムの使用である。針床から上方へ突出する編針又は編針に結合される駆動素子の駆動バットは、カム曲線路をバットが通過する間に選ばれた個所で、針床へ押込まれ、従ってカムとの係合を外される。押圧の解消により対応する駆動バットが針床から再び浮上して、カムに再び係合することができる。その際駆動バットを一部だけ針床へ押戻すことも可能なので、他のカム部分により駆動バットを捕捉し、編針の引続く機能を実現することができる。構造が複雑な押圧カムの使用は、編針のほかに、同様に駆動バットを備えた駆動素子の使用も必要にする。更に針長手方向に強い荷重がかかると、編針が意に反して針床へ没入する危険があり、誤動作を生じる。
【0004】
押圧カムを使用するほかに、上昇カムの使用も公知である。ここでは編針又は付属する駆動素子の駆動バットがまず針床へ沈下せしめられ、カム通路の所定の個所で針床から上昇せしめられる。こうして駆動バットを異なるカム曲線路に係合させることができる。カム通過後駆動バットが積極的に針床へ押戻されて、係合を解除される。このような上昇カムは例えば欧州特許第0189602号明細書に記載されている。上昇カムを使用する場合の欠点は、カム通過後針バットを積極的に針床へ押戻さねばならず、それにより個々の編成システムの間に大きい間隔が生じることである。更に針床への望ましくない下降を防止するため、カム通過中に若干個所で針バットを下から支持せねばならない。上昇カムに関連して、ばね力により駆動バットが針床内へ下降せしめられる編針の使用も公知である。しかしこれらの編針に、編針を歯口へ戻す第2の駆動バットを設けねばならない。これらの公知の編針は従って比較的長く、それにより針長手方向における針床の適当な大きさが必要になる。
【0005】
中国特許出願公開第101314887号明細書から公知の別の編成カムでは、編針又は付属する駆動素子が異なる個所で動作可能である。このカムでは、編針のほかに駆動素子が必ず必要である。駆動素子は弾性的応力のかかる位置へもたらされて固定される。カム通路の所定の個所で素子の固定が解消される。その場合素子の応力が駆動バットをカムに係合させる。残る残留応力が、カム通過中における駆動バットの没入を防止する。しかしこの残留ばね力は僅かである。なぜならば、カム通過後に駆動素子の必要な再度の固定の際、この残留ばね力に更に打勝たねばならないからである。
【0006】
最後に欧州特許出願公開第1569065号明細書から公知の編針は、1つの駆動バットのみを持っているが、針幹全体は可撓性素子として構成されている。しかしこの構成により、編針は側方負荷の際ねじれ易く、更にこの編針でも針床へ駆動バットの予期しない下降も起こることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎になっている課題は、簡単に構成され、かつ3つの機能の1つすなわち編目の形成、タックループの挿入又は不動作保持を選択的に実施するため、針床に付加的な駆動素子なしに、編成システムにより駆動可能な編機用編針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
編機用編針であって、針かぎを備えた針幹及びその上側に設けられて針を動かすための少なくとも1つの駆動バットを有するものにおいて、1つの駆動バットのみが、編針の針かぎとは反対の端部に設けられ、ばね力に抗して下降せしめられた位置から少なくとも1つの上昇せしめられた位置へ、又は上昇せしめられた位置から少なくとも1つの下降せしめられた位置へ可動であることによって、課題が解決される。
【0009】
この編針の針幹は少なくとも大部分曲げ剛性のある材料から製造され、それにより必要な安定性を持つことができる。ただ1つの駆動バットを設けることによって、編針は構造が簡単であり、比較的小さい長さを持っている。駆動バットの一方の終端位置を編針自体に生じるばね力が取るので、駆動バットを1つの運動方向へ積極的に駆動しさえすればよい。従って編針のために、針床に設けるべき少数の駆動素子しか必要でない。これは、針長手方向における針床の比較的狭い構造を可能にする。編針を駆動するための編成カムも比較的簡単な構造を持つことができる。1つの駆動バットのみが作用を受ける。更に針長手方向に対して直角な駆動バットの1つの運動方向をばね力が引受け、従って積極的に開始する必要がない。押圧カム又は上昇カムを使用する必要がない。
【0010】
好ましい構成では、駆動バットが、その最も下降せしめられた位置において、針幹又は針床を越えて上方へ突出していないようにすることができる。従ってこの位置で編針の駆動バットはカム部分により捕捉されない。他方駆動バットが、少なくとも最も上昇せしめられた位置において、針幹又は針床を越えて上方へ突出しているので、駆動バットはカム部分により捕捉可能である。更に駆動バットの最も上昇せしめられた位置と最も下降せしめられた位置との間の中間位置へ駆動バットをもたらすことも可能で、この位置で駆動バットが同様に針幹を越えて上方へ突出する。
【0011】
編針の構造は異なるように構成することができる。第1の変形例では、駆動バットが針幹の弾性部分に設けられている。従って編針は1つの部分から構成することができる。針幹は弾性範囲以外では曲げ剛性を持つように構成可能なので、編針の必要な機械的安定性は保証されている。
【0012】
別の構成では、針幹に関節結合される揺動素子に駆動バットが支持され、揺動素子がばね力とは逆の方向に針幹に対して揺動可能である。編針のこの2部分構成も、駆動バットの所望の移動を可能にする。その際ばね力が針幹の弾性部分により発生可能であるか、又はばね力が揺動素子の弾性部分により発生可能である。
【0013】
針幹が、少なくともその1つの運動方向において駆動バットの運動を限定するストッパを持っていると、別の利点が生じる。このようなストッパは、駆動バットが所定の終端位置を取ることができるようにし、針幹の弾性部分を持つ編針では、同時に弾性部分の安定化に役立つ。
【0014】
図面により、本発明による編針の種々の実施例が以下に説明される。すべての図は、それぞれ1つの編針が挿入されている針溝の範囲における針床の断面図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第1の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図1b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第1の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図2a】 下降せしめられた駆動バットを持つ第2の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図2b】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第2の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図3a】 下降せしめられた駆動バットを持つ第3の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図3b】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第3の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図4a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第4の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図4b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第4の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図5a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第5の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図5b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第5の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図6a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第6の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図6b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第6の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図7a】 上昇せしめられた駆動バットを持つ第7の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【図7b】 下降せしめられた駆動バットを持つ第7の編針を有する針床の針溝の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1a,1bには、他のすべての図におけるように、針底を形成する針床110の部分及び覆い条片110が示され、覆い条片110は、図1a,1bにおいて針底から編針10が離れるのを防止する役割を持っている。編針10は、前方端部に針かぎ12を備えた針幹11を持っている。針幹11はその後方端部にほぼU字状の形状を持ち、下部脚辺13も残りの針幹11と同様に曲げ剛性を持つように構成されている。これに反し上部脚辺14は弾性的に構成されている後方端部には駆動バット15が設けられて、図1aに示す負荷されない位置で針幹11及び覆い条片110を越えて上方へ突出し、従って針床を越えて動かされる図示しない編成カムにより捕捉されることができる。
【0017】
図1bでは、力Fにより下方へ動かされる駆動バット15を持つ編針10が示されている。この下降せしめられた位置で、駆動バット15もはや針幹11従って針床を越えて突出せず、それによりカム曲線路へ係合せしめられない。弾性脚辺14は下方へ曲げられ、それにより予荷重をかけられる。力Fの作用が終わると、脚辺14は再び図1aに示す位置を取り、この位置で駆動バット15が上昇せしめられている。
【0018】
図2a,2bには、再び後方端部に設けられて駆動バット25を有する弾性脚辺24を持つ針幹21を持つ編針10に全く類似な編針20が示されている。従って編針20は、編針10と同様に1つの部分から構成されている。しかしここでは弾性脚辺24は荷重を除かれた状態で下方へ曲げられており、即ち駆動バット25はこの位置で針床内へ下降せしめられ、針床21を越えて上方へ突出していない。図2に示すように下からのばね力Fにより、駆動バット25を上昇位置へもたらすことができる。この位置で、駆動バットが編成カムにより捕捉可能である。力Fの作用が終了すると、駆動バット25を持つ脚辺24が再び図2aに示す位置へ下降する。
【0019】
図3a,3bは、弾性脚辺34を持つ針幹31を有する1つの部分から成る第3の編針30を示し、脚辺34の後方端部に駆動バット35が設けられている。図3aに示す荷重を除かれた状態では、脚辺34は下方へ曲げられ、即ち駆動バット35は下降位置にある。ここでは針床100′がその後方縦縁に面取り部120を持ち、駆動バット35の下方部分36がこの面取り部上に支持されている。図3bに示すように、編針30全体が矢印37の方向に前方へ移動されると、面取り部120が駆動バット35を持ち上げるので、駆動バットをカム曲線路が捕捉することができる。上昇せしめられた位置で、駆動バット35の部分36が針床100′の針底上にあるので、駆動バット35が針床内への予期しない下降を防止されている。矢印37の方向とは逆に編針30が再び後方へ移動されると脚辺34のばね応力により、編針30が再び図3aに示す位置を取り、駆動バット35が下降せしめられる。
【0020】
図4a,4bには、本発明による別の1つの部分から成る編針40が示されている。この編針40の針幹41は、その後方範囲に弾性部分44を持ち、弾性部分44がその端部に駆動バット45を持っている。弾性部分44は、編針40では剛性的に構成される2つの脚辺43及び46の間に設けられ、これらの脚辺がその後方端部にそれぞれ弾性部分44用のストッパ47,48を持っている。弾性部分44の図4aに示す応力を除かれた状態で、この弾性部分が脚辺46のストッパ47に当たっている。駆動バット45は上昇せしめられた位置にあり、針床から上方へ突出している。上から駆動バット45を押すことにより、これを図4bに示す位置へもたらすことができる。弾性部分44は今や脚辺43のストッパ48に当たる。この位置で駆動バット45はもはや針幹41を越えて上方へ突出せず、従って編成カムによりもはや捕捉されない。
【0021】
弾性部分44の応力を除かれた位置は下方へ曲げられた位置でもあり、即ち駆動バット45は下降位置にある。下から駆動バット45を押すことにより、駆動バット45は図4bに相当する位置から図4aによる位置へもたらされる。
【0022】
図5a,5bは、2つの部分から構成される編針50の実施例を示す。針幹51は再び後部範囲に弾性部分54を持っている。しかし編針の駆動バット55はもはや弾性部分54に設けられているのではなく、枢着個所57で針幹51に結合されている別個の揺動素子56に設けられている。揺動素子56の部分58は更に弾性部分54の外側端部を包囲している。応力を除かれた状態で弾性部分54は、図5aに示す位置をとり、この位置で編針50に駆動バット55が上昇せしめられている。これに反し図5bは、下降位置にある駆動バット55を示す。この位置で弾性部分54は揺動素子56により応力をかけられる。
【0023】
弾性部分54の応力を除かれた位置は、下方へ曲げられた位置であってもよいので、駆動バット55は下降位置にある。駆動バット55を下から押すことにより、これを図5aに示す位置へもたらすことができる。
【0024】
図6a,6bは2つの部分から成る編針60の別の例を示し、駆動バット65は再び揺動素子66に設けられている。揺動素子66は、針幹61の2つの曲げ剛性を持つ2つの脚辺63,68の間の枢着個所67に揺動可能に支持されている。この編針の針幹61全体が曲げ剛性を持つように構成されている。ばね力は、同様に針幹の両方の脚辺63と68との間に導入されてこれらの脚辺63,68の間に支持される揺動素子66の弾性部分64により発生される。図6aに示すばね素子64の応力を除かれた位置で、駆動バット65が上昇位置にある。これに反し図6bは、下降位置にある駆動バット65を示す。揺動素子66は下方へ揺動されている。ばね素子64は上方へ湾曲し、それにより予荷重をかけられて、駆動バット65への力の作用の終了後駆動バット65を再び上昇した初期位置へもたらすことができる。
【0025】
この場合もばね素子65の応力を除かれた位置は上方へ湾曲していてもよいので、駆動バット65は下降位置にある。駆動バット65を下から押すことにより、駆動バットを図6aに示す位置へもたらすことができる。
【0026】
図7a,7bは編針60に類似な2つの部分から成る編針70を示し、編針70の両方の剛性脚辺73及び78がそれぞれ揺動素子76用のストッパ73a,78aを持っているという点で、この編針70は編針60と相違している。図7aに示す応力を除かれた状態で、揺動素子76に設けられるばね素子74が上方へ曲げられているので、揺動素子76がストッパ78aに当たり、駆動バット75が針床から上昇せしめられている。駆動バット75を押すことにより、これが図7bに示すように下降せしめられる。揺動素子76はストッパ73aに当たるまで下方へ揺動する。ばね素子74は上方へ曲げられ、それにより予荷重をかけられて、駆動バット75に対する力の作用の終了後これをその上昇せしめられた初期位置へもたらすことができる。
【0027】
しかしばね素子74の応力を除かれた位置は、上方へ曲げられた位置であってもよく、この位置で駆動バット75は下降位置にある。下から駆動バット75を押すことにより、これを図7aに示す位置へもたらすことができる。
【0028】
図示した編針10〜70は舌針である。編針を複合針として構成できることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編機用編針であって、針かぎ(12)を備えた針幹(11,21,31,41,51,61,71)及びその上側に設けられて針(10〜70)を動かすための少なくとも1つの駆動バット(15,25,35,45,55,65,75)を有するものにおいて、1つの駆動バット(15,25,35,45,55,65,75)のみが、編針(10,20,30,40,50,60,70)の針かぎ(12)とは反対の端部に設けられ、ばね力に抗して下降せしめられた位置から少なくとも1つの上昇せしめられた位置へ、又は上昇せしめられた位置から少なくとも1つの下降せしめられた位置へ可動であることを特徴とする、編針。
【請求項2】
駆動バット(15,25,35,45,55,65,75)が、その最も下降せしめられた位置において、針幹(11,21,31,41,51,61,71)を越えて上方へ突出していないことを特徴とする、請求項1に記載の編針。
【請求項3】
駆動バット(15,25,35,45,55,65,75)が、少なくとも最も上昇せしめられた位置において、針幹(11,21,31,41,51,61,71)を越えて上方へ突出していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の編針。
【請求項4】
駆動バット(15,25,35,45)が針幹(11,21,31,41)の弾性部分(14,24,34,44)に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の編針。
【請求項5】
針幹(51,61,71)に関節結合される揺動素子(56,66,76)に駆動バット(55,65,75)が支持され、揺動素子がばね力とは逆の方向に針幹(51,61,71)に対して揺動可能であることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の編針。
【請求項6】
ばね力が針幹(51)の弾性部分(54)により発生可能であることを特徴とする、請求項5に記載の編針。
【請求項7】
ばね力が揺動素子(66,76)の弾性部分(64,74)により発生可能であることを特徴とする、請求項5に記載の編針。
【請求項8】
針幹(41,71)が、少なくともその1つの運動方向において駆動バット(45,55,75)の運動を限定するストッパ(47,48;43a,78a)を持っていることを特徴とする、請求項1〜7の1つに記載の編針。
【請求項1】
編機用編針であって、針かぎ(12)を備えた針幹(11,21,31,41,51,61,71)及びその上側に設けられて針(10〜70)を動かすための少なくとも1つの駆動バット(15,25,35,45,55,65,75)を有するものにおいて、1つの駆動バット(15,25,35,45,55,65,75)のみが、編針(10,20,30,40,50,60,70)の針かぎ(12)とは反対の端部に設けられ、ばね力に抗して下降せしめられた位置から少なくとも1つの上昇せしめられた位置へ、又は上昇せしめられた位置から少なくとも1つの下降せしめられた位置へ可動であることを特徴とする、編針。
【請求項2】
駆動バット(15,25,35,45,55,65,75)が、その最も下降せしめられた位置において、針幹(11,21,31,41,51,61,71)を越えて上方へ突出していないことを特徴とする、請求項1に記載の編針。
【請求項3】
駆動バット(15,25,35,45,55,65,75)が、少なくとも最も上昇せしめられた位置において、針幹(11,21,31,41,51,61,71)を越えて上方へ突出していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の編針。
【請求項4】
駆動バット(15,25,35,45)が針幹(11,21,31,41)の弾性部分(14,24,34,44)に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の編針。
【請求項5】
針幹(51,61,71)に関節結合される揺動素子(56,66,76)に駆動バット(55,65,75)が支持され、揺動素子がばね力とは逆の方向に針幹(51,61,71)に対して揺動可能であることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の編針。
【請求項6】
ばね力が針幹(51)の弾性部分(54)により発生可能であることを特徴とする、請求項5に記載の編針。
【請求項7】
ばね力が揺動素子(66,76)の弾性部分(64,74)により発生可能であることを特徴とする、請求項5に記載の編針。
【請求項8】
針幹(41,71)が、少なくともその1つの運動方向において駆動バット(45,55,75)の運動を限定するストッパ(47,48;43a,78a)を持っていることを特徴とする、請求項1〜7の1つに記載の編針。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【公開番号】特開2011−226054(P2011−226054A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96529(P2011−96529)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(591114995)ハー・シユトル・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(591114995)ハー・シユトル・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト (16)
【Fターム(参考)】
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