編機
【課題】筬振り装置、スイング装置によって筬振り方向に垂直に運動可能な少なくとも1本のガイドバーを有する編機であって、両方のボールピン及びボールソケット支承によるプッシュロッド方式の欠点を解消し、ガイドバーの筬振り運動の極力正確な制御を可能とする。
【解決手段】筬振り装置11によって筬振り方向10で運動可能かつスイング装置5によって前記筬振り方向に垂直に運動可能な少なくとも1本のガイドバー2を有する編機において、筬振り方向10に垂直に向いた2つの滑り面18を有する滑り面対を介して前記筬振り装置が前記ガイドバーに作用する。
【解決手段】筬振り装置11によって筬振り方向10で運動可能かつスイング装置5によって前記筬振り方向に垂直に運動可能な少なくとも1本のガイドバー2を有する編機において、筬振り方向10に垂直に向いた2つの滑り面18を有する滑り面対を介して前記筬振り装置が前記ガイドバーに作用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筬振り装置によって筬振り方向で運動可能かつスイング装置によって筬振り方向に垂直に運動可能な少なくとも1本のガイドバーを有する編機に関する。
【背景技術】
【0002】
編機で編地を製造する場合、編目形成を行うために糸ガイドが編針の周りに案内されねばならない。糸ガイドはガイドバーに固着されている。それゆえにガイドバーの運動経過は、編目形成時にガイドバーが筬振り方向で一度は往動し、一度は復動するように制御される。筬振り方向とはガイドバーの長さ方向に一致した方向、つまりガイドバーの全糸ガイドが前後に配置されている方向である。往動と復動との間でガイドバーは付加的に筬振り方向に垂直に動かされる。後続する編目形成過程の復動と往動との間で筬振り方向に垂直な運動がやはり必要である。
【0003】
筬振り方向に垂直な運動は、しばしば、編機伝動装置を介して往復回転されるハンガー軸にガイドバーを固着することによって引き起こされる。筬振り運動は、ガイドバーを往復動させる筬振り装置によって制御される。筬振り装置はなかんずくパターン形成も担当する。すなわち、各編目形成過程でガイドバーの行程がいかなる大きさであるのかは筬振り装置によって制御される。
【0004】
編機内でガイドバーの筬振り運動を制御する公知の方法は、接触ローラが当接するパターンディスクを使用することである。接触ローラは筬振りスライダと結合されている。筬振りスライダの他端に設けられたボールピンがプッシュロッドと係合しており、このプッシュロッドはやはりガイドバーのボールピンと係合している。プッシュロッドは両方の末端にボールソケットを有する。こうしてボールピンはボールソケット内で回転可能に支承されている。これにより、ガイドバーが筬振り方向に垂直にスイング運動を行うときにもガイドバーをパターンディスクによって駆動することが可能である。プッシュロッドは、両方のボールピン‐ボールソケット支承によって、一方で前側および後側スイング位置と他方で中央位置との間に生じるさまざまな距離を補償する。
【0005】
スイング運動によってプッシュロッドの有効長さから引き起こされるこれらの変化を補償するために、特許文献1では、基底関数に補償関数を重ねることが提案された。この補償関数はパターンディスクの製造時に考慮されねばならない。
【0006】
しかしこの処理方式の欠点は、依然として、バーに対して横力が交互に作用することにある。これは一方で筬ガイドの負の交互応力を引き起こし、他方でボール結合部内に摩擦熱と摩耗を生じる。他の欠点として、ボール結合部は比較的高い費用を要してのみ所要の精度で製造することができる。ごく正確に製造する場合でも、例えばボール結合部内の顕著な摩擦熱によって生じる温度変化がピッチの不正確さを引き起こし、そのことから諸問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第4127344号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ガイドバーの筬振り運動の極力正確な制御を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は冒頭に指摘した種類の編機において、筬振り方向に垂直に向いた2つの滑り面を有する滑り面対を介して筬振り装置がガイドバーに作用することによって解決される。
【0010】
つまり滑り面対の両方の滑り面は、互いに滑動することによって、筬振り方向に垂直に互いに相対的に変位することができる。それにもかかわらず、滑り面対の相互作用する滑り面を介して筬振り方向でガイドバーに駆動力を伝達することができる。これにより、筬振り装置とガイドバーとの間で伝達要素の有効長さの変化は生じない。つまり、ガイドバーは他の補助措置なしに筬振り装置によってごく正確に制御することができる。ガイドバーおよび筬振り装置に対する横力は弱いものに抑えられる。
【0011】
好ましくは、筬振り装置が筬振り方向で案内される伝達要素を有し、この伝達要素が滑り面対の一方の滑り面を担持している。この伝達要素は筬振り方向で案内しておくことができる。この伝達要素の横荷重は事実上排除されている。場合によっては、滑り面対内の摩擦によって発生する僅かな横力が伝達要素に作用する。しかしこれらの摩擦力は比較的弱く、伝達要素またはその支承部に対して否定的作用を有しない。
【0012】
伝達要素がプッシュロッドとして形成されていることも有利である。このプッシュロッドは一定の長さにわたって筬振り方向で案内しておくことができ、比較的弱い横力が現れるとしてもそれを問題なく吸収することができる。こうしてプッシュロッドの比較的正確な支承を達成することができ、この支承は長い期間にわたってもさしたる摩耗なしに作動することができる。
【0013】
好ましくは、ガイドバーがバー要素を有し、このバー要素が滑り面対の一方の滑り面を有する。その場合、バー要素はいわば伝達要素に対する相手部材となる。こうして、駆動力をバーに作用させるための適切な作用点を提供することが可能となる。
【0014】
好ましくは、バー要素が案内要素内を延びており、この案内要素が相対回転不能にハンガー軸と結合されており、このハンガー軸でガイドバーが支承されている。スイング運動、つまり筬振り方向に垂直な運動を生成する簡単な可能性は、ガイドバーをハンガー軸に吊り掛け、ハンガー軸を小さな角度範囲にわたって往復回転させることによってスイング運動を引き起こすことにある。ところでバー要素が支えを備え、つまりハンガー軸のこの回転運動を一緒に行う案内要素を備えていると、バー要素に対する横力をやはり弱いものに留めることができる。こうしてガイドバーに対する横力も弱いものに抑えられる。
【0015】
好ましくは、バー要素が案内要素に対して筬振り方向で運動可能であり、かつ案内要素によって筬振り方向で案内されている。つまり案内要素は相対回転不能であるだけでなく、筬振り方向で定置でハンガー軸に固着されている。筬振り装置からガイドバーに運動を伝達するバー要素は案内要素を通して運動可能である。これにより、筬振り運動時に動かねばならない質量は小さなものに抑えられる。それに応じて筬振り装置は寸法設計することができる。すなわち、筬振り装置は案内要素を筬振り方向で一緒に動かしてはならない。
【0016】
好ましくは、少なくとも一方の滑り面が滑り板に形成されている。このような滑り板は拡大された面を提供し、つまり伝達要素および/またはバー要素の直径よりも大きな面を提供する。こうして一方で伝達要素とバー要素は一層細い横断面を備えることができ、これは可動質量の大きさを小さなものに抑えるのに寄与する。しかし他方で、ガイドバーを動かすための十分な力を滑り板によって常に伝達することができるので、スイング運動の大きさはさして制限されていない。
【0017】
好ましくは、少なくとも一方の滑り面が減摩被覆を有する。減摩被覆として例えばプラスチックが考慮に値する。両方の滑り面が減摩被覆を備えている場合、これらの被覆は、極力小さな摩擦係数が達成されるように互いに調整することができる。
【0018】
選択的に、またはこれを補足して、少なくとも一方の滑り面が潤滑剤供給部を有するようにすることができる。例えば油脂等の潤滑剤は滑り面対に注入しまたは塗り込むことができる。このことも、両方の滑り面の間の摩擦を小さなものに抑えることに寄与し、ガイドバーのスイング運動時に発生する摩擦力は事実上無視し得るものである。それに対して筬振り方向では、加圧力が伝達されるだけであるので、摩擦低減は邪魔されない。
【0019】
好ましくは、筬振り装置がパターンディスクまたはパターンチェーンと後退機構とを有する。後退機構は例えばばねとして形成しておくことができる。パターンディスクまたはパターンチェーンは例えば接触ローラを介して一方の方向でガイドバーに加圧力を伝達する。後退機構は別の方向でガイドバーに力を伝達する。こうして、滑り面対の両方の滑り面が常に互いに当接することが保証されている。こうして筬振り運動の各段階で筬振り運動の正確な制御が可能である。
【0020】
以下、好ましい実施例に基づいて図面と合せて本発明が述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】編機の一部の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
編機1が少なくとも1本のガイドバー2を有し、このガイドバーが筬ガイド3を介して相対回転不能にハンガー軸4に固着されている。ハンガー軸4は詳しくは図示しない編機主軸とこれに固着されてレバーアーム5に作用するプッシュロッドとを介して両方向矢印6の方向で往復回転する。ハンガー軸4は機枠9の2つの側壁7、8内で回転可能に支承されている。
【0023】
編地の編目形成のためにやはり必要な編針バーは見易くする理由からここには図示されていない。
【0024】
ガイドバー2は編目形成のために筬振り方向10でも往復運動しなければならない。筬振り方向10はガイドバー2の長手方向に一致している。
【0025】
これらの運動を引き起こすために筬振り装置11が設けられており、この筬振り装置は側壁8の、ガイドバー2とは反対の側に配置されている。筬振り装置11はこの場合、やはり編機主軸によって駆動されるパターンディスク12を有し、パターンディスク12の運動はレバーアーム5の運動と同期化されている。
【0026】
パターンディスク12に接触ローラ13が当接する。この接触ローラが筬振りスライダ14の一端に配置されており、この筬振りスライダはその他端が、プッシュロッド15として形成された伝達要素に作用する。プッシュロッド15は案内機構16内で支承され、案内機構16内で筬振り方向で案内されている。すなわち、プッシュロッドは案内機構16内で専ら筬振り方向10の運動を行うことができる。但し、案内機構16は比較的弱い横力を吸収することができる。
【0027】
ガイドバー2に近接した末端にプッシュロッド15が滑り板17を有し、この滑り板はその正面に滑り面18を有する。滑り面18は筬振り方向10に垂直に向いている。滑り板17はプッシュロッド15の直径よりも大きな直径を有する。
【0028】
ガイドバー2がバー要素19と結合されている。このバー要素19はやはりプッシュロッドとして形成されており、ガイドバー2とは反対側のその末端に他の滑り板20を有する。この滑り板はプッシュロッドに比べて拡大された直径を有する。滑り板20は筬振り装置11に近接した側にやはり(視認不能な)滑り面を有し、この滑り面が滑り板17の滑り面18に当接する。つまり両方の滑り面が滑り面対を形成する。
【0029】
バー要素19は案内要素21に挿通されており、筬振り方向10で案内要素21によって案内される。案内要素21は相対回転不能にハンガー軸4と結合されている。従って、バー要素19は筬振り方向10に垂直にガイドバー2と同じ運動を行う。案内要素21はバー要素19に対する横力を吸収し、この横力をガイドバー2から遠ざけている。
【0030】
操業時、両方の滑り板17、20は一定の圧力のもとで互いに当接する。詳しくは図示しない後退機構、例えばガイドバー2を筬振り装置11の方向に引っ張る引張ばね、またはガイドバー2を筬振り装置11の方向に加圧する圧縮ばねは、両方の滑り板17、20が持続的に相当接するようにする。
【0031】
つまり操業時に滑り板17、20を介して筬振り装置11からガイドバー2またはその逆へと加圧力が持続的に伝達される。その際、プッシュロッド15もバー要素19も筬振り方向10でそれらの心合せを維持する。両方の滑り板17、20の間の摩擦によって僅かな摩擦が発生するが、しかしこの摩擦はバー要素19もしくはプッシュロッド15に対して弱い横力を生じるだけである。この弱い横力は案内機構16と案内要素21とによって吸収され、筬振り装置11もガイドバー2も横力、つまり筬振り方向10を横切る力を付加されることがない。つまりガイドバー2は正確に筬振り方向で筬振り装置11の規定された筬振りに追従する。両方の滑り板17、20が互いに滑動することによって、定置式筬振り装置11に対するガイドバー2のスイング運動は補償することができる。
【0032】
操業時に摩擦を小さなものに抑えるために滑り板17、20の滑り面18を減摩材料で被覆することができる。選択的にまたは付加的に、両方の滑り板17、20の間の接触領域に潤滑剤、例えば油脂を持続的に供給するために潤滑剤供給部を利用することもできる。この措置も、両方の滑り板17、20の間の摩擦を小さなものに抑えるのに役立つ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、筬振り装置によって筬振り方向で運動可能かつスイング装置によって筬振り方向に垂直に運動可能な少なくとも1本のガイドバーを有する編機に関する。
【背景技術】
【0002】
編機で編地を製造する場合、編目形成を行うために糸ガイドが編針の周りに案内されねばならない。糸ガイドはガイドバーに固着されている。それゆえにガイドバーの運動経過は、編目形成時にガイドバーが筬振り方向で一度は往動し、一度は復動するように制御される。筬振り方向とはガイドバーの長さ方向に一致した方向、つまりガイドバーの全糸ガイドが前後に配置されている方向である。往動と復動との間でガイドバーは付加的に筬振り方向に垂直に動かされる。後続する編目形成過程の復動と往動との間で筬振り方向に垂直な運動がやはり必要である。
【0003】
筬振り方向に垂直な運動は、しばしば、編機伝動装置を介して往復回転されるハンガー軸にガイドバーを固着することによって引き起こされる。筬振り運動は、ガイドバーを往復動させる筬振り装置によって制御される。筬振り装置はなかんずくパターン形成も担当する。すなわち、各編目形成過程でガイドバーの行程がいかなる大きさであるのかは筬振り装置によって制御される。
【0004】
編機内でガイドバーの筬振り運動を制御する公知の方法は、接触ローラが当接するパターンディスクを使用することである。接触ローラは筬振りスライダと結合されている。筬振りスライダの他端に設けられたボールピンがプッシュロッドと係合しており、このプッシュロッドはやはりガイドバーのボールピンと係合している。プッシュロッドは両方の末端にボールソケットを有する。こうしてボールピンはボールソケット内で回転可能に支承されている。これにより、ガイドバーが筬振り方向に垂直にスイング運動を行うときにもガイドバーをパターンディスクによって駆動することが可能である。プッシュロッドは、両方のボールピン‐ボールソケット支承によって、一方で前側および後側スイング位置と他方で中央位置との間に生じるさまざまな距離を補償する。
【0005】
スイング運動によってプッシュロッドの有効長さから引き起こされるこれらの変化を補償するために、特許文献1では、基底関数に補償関数を重ねることが提案された。この補償関数はパターンディスクの製造時に考慮されねばならない。
【0006】
しかしこの処理方式の欠点は、依然として、バーに対して横力が交互に作用することにある。これは一方で筬ガイドの負の交互応力を引き起こし、他方でボール結合部内に摩擦熱と摩耗を生じる。他の欠点として、ボール結合部は比較的高い費用を要してのみ所要の精度で製造することができる。ごく正確に製造する場合でも、例えばボール結合部内の顕著な摩擦熱によって生じる温度変化がピッチの不正確さを引き起こし、そのことから諸問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第4127344号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ガイドバーの筬振り運動の極力正確な制御を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は冒頭に指摘した種類の編機において、筬振り方向に垂直に向いた2つの滑り面を有する滑り面対を介して筬振り装置がガイドバーに作用することによって解決される。
【0010】
つまり滑り面対の両方の滑り面は、互いに滑動することによって、筬振り方向に垂直に互いに相対的に変位することができる。それにもかかわらず、滑り面対の相互作用する滑り面を介して筬振り方向でガイドバーに駆動力を伝達することができる。これにより、筬振り装置とガイドバーとの間で伝達要素の有効長さの変化は生じない。つまり、ガイドバーは他の補助措置なしに筬振り装置によってごく正確に制御することができる。ガイドバーおよび筬振り装置に対する横力は弱いものに抑えられる。
【0011】
好ましくは、筬振り装置が筬振り方向で案内される伝達要素を有し、この伝達要素が滑り面対の一方の滑り面を担持している。この伝達要素は筬振り方向で案内しておくことができる。この伝達要素の横荷重は事実上排除されている。場合によっては、滑り面対内の摩擦によって発生する僅かな横力が伝達要素に作用する。しかしこれらの摩擦力は比較的弱く、伝達要素またはその支承部に対して否定的作用を有しない。
【0012】
伝達要素がプッシュロッドとして形成されていることも有利である。このプッシュロッドは一定の長さにわたって筬振り方向で案内しておくことができ、比較的弱い横力が現れるとしてもそれを問題なく吸収することができる。こうしてプッシュロッドの比較的正確な支承を達成することができ、この支承は長い期間にわたってもさしたる摩耗なしに作動することができる。
【0013】
好ましくは、ガイドバーがバー要素を有し、このバー要素が滑り面対の一方の滑り面を有する。その場合、バー要素はいわば伝達要素に対する相手部材となる。こうして、駆動力をバーに作用させるための適切な作用点を提供することが可能となる。
【0014】
好ましくは、バー要素が案内要素内を延びており、この案内要素が相対回転不能にハンガー軸と結合されており、このハンガー軸でガイドバーが支承されている。スイング運動、つまり筬振り方向に垂直な運動を生成する簡単な可能性は、ガイドバーをハンガー軸に吊り掛け、ハンガー軸を小さな角度範囲にわたって往復回転させることによってスイング運動を引き起こすことにある。ところでバー要素が支えを備え、つまりハンガー軸のこの回転運動を一緒に行う案内要素を備えていると、バー要素に対する横力をやはり弱いものに留めることができる。こうしてガイドバーに対する横力も弱いものに抑えられる。
【0015】
好ましくは、バー要素が案内要素に対して筬振り方向で運動可能であり、かつ案内要素によって筬振り方向で案内されている。つまり案内要素は相対回転不能であるだけでなく、筬振り方向で定置でハンガー軸に固着されている。筬振り装置からガイドバーに運動を伝達するバー要素は案内要素を通して運動可能である。これにより、筬振り運動時に動かねばならない質量は小さなものに抑えられる。それに応じて筬振り装置は寸法設計することができる。すなわち、筬振り装置は案内要素を筬振り方向で一緒に動かしてはならない。
【0016】
好ましくは、少なくとも一方の滑り面が滑り板に形成されている。このような滑り板は拡大された面を提供し、つまり伝達要素および/またはバー要素の直径よりも大きな面を提供する。こうして一方で伝達要素とバー要素は一層細い横断面を備えることができ、これは可動質量の大きさを小さなものに抑えるのに寄与する。しかし他方で、ガイドバーを動かすための十分な力を滑り板によって常に伝達することができるので、スイング運動の大きさはさして制限されていない。
【0017】
好ましくは、少なくとも一方の滑り面が減摩被覆を有する。減摩被覆として例えばプラスチックが考慮に値する。両方の滑り面が減摩被覆を備えている場合、これらの被覆は、極力小さな摩擦係数が達成されるように互いに調整することができる。
【0018】
選択的に、またはこれを補足して、少なくとも一方の滑り面が潤滑剤供給部を有するようにすることができる。例えば油脂等の潤滑剤は滑り面対に注入しまたは塗り込むことができる。このことも、両方の滑り面の間の摩擦を小さなものに抑えることに寄与し、ガイドバーのスイング運動時に発生する摩擦力は事実上無視し得るものである。それに対して筬振り方向では、加圧力が伝達されるだけであるので、摩擦低減は邪魔されない。
【0019】
好ましくは、筬振り装置がパターンディスクまたはパターンチェーンと後退機構とを有する。後退機構は例えばばねとして形成しておくことができる。パターンディスクまたはパターンチェーンは例えば接触ローラを介して一方の方向でガイドバーに加圧力を伝達する。後退機構は別の方向でガイドバーに力を伝達する。こうして、滑り面対の両方の滑り面が常に互いに当接することが保証されている。こうして筬振り運動の各段階で筬振り運動の正確な制御が可能である。
【0020】
以下、好ましい実施例に基づいて図面と合せて本発明が述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】編機の一部の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
編機1が少なくとも1本のガイドバー2を有し、このガイドバーが筬ガイド3を介して相対回転不能にハンガー軸4に固着されている。ハンガー軸4は詳しくは図示しない編機主軸とこれに固着されてレバーアーム5に作用するプッシュロッドとを介して両方向矢印6の方向で往復回転する。ハンガー軸4は機枠9の2つの側壁7、8内で回転可能に支承されている。
【0023】
編地の編目形成のためにやはり必要な編針バーは見易くする理由からここには図示されていない。
【0024】
ガイドバー2は編目形成のために筬振り方向10でも往復運動しなければならない。筬振り方向10はガイドバー2の長手方向に一致している。
【0025】
これらの運動を引き起こすために筬振り装置11が設けられており、この筬振り装置は側壁8の、ガイドバー2とは反対の側に配置されている。筬振り装置11はこの場合、やはり編機主軸によって駆動されるパターンディスク12を有し、パターンディスク12の運動はレバーアーム5の運動と同期化されている。
【0026】
パターンディスク12に接触ローラ13が当接する。この接触ローラが筬振りスライダ14の一端に配置されており、この筬振りスライダはその他端が、プッシュロッド15として形成された伝達要素に作用する。プッシュロッド15は案内機構16内で支承され、案内機構16内で筬振り方向で案内されている。すなわち、プッシュロッドは案内機構16内で専ら筬振り方向10の運動を行うことができる。但し、案内機構16は比較的弱い横力を吸収することができる。
【0027】
ガイドバー2に近接した末端にプッシュロッド15が滑り板17を有し、この滑り板はその正面に滑り面18を有する。滑り面18は筬振り方向10に垂直に向いている。滑り板17はプッシュロッド15の直径よりも大きな直径を有する。
【0028】
ガイドバー2がバー要素19と結合されている。このバー要素19はやはりプッシュロッドとして形成されており、ガイドバー2とは反対側のその末端に他の滑り板20を有する。この滑り板はプッシュロッドに比べて拡大された直径を有する。滑り板20は筬振り装置11に近接した側にやはり(視認不能な)滑り面を有し、この滑り面が滑り板17の滑り面18に当接する。つまり両方の滑り面が滑り面対を形成する。
【0029】
バー要素19は案内要素21に挿通されており、筬振り方向10で案内要素21によって案内される。案内要素21は相対回転不能にハンガー軸4と結合されている。従って、バー要素19は筬振り方向10に垂直にガイドバー2と同じ運動を行う。案内要素21はバー要素19に対する横力を吸収し、この横力をガイドバー2から遠ざけている。
【0030】
操業時、両方の滑り板17、20は一定の圧力のもとで互いに当接する。詳しくは図示しない後退機構、例えばガイドバー2を筬振り装置11の方向に引っ張る引張ばね、またはガイドバー2を筬振り装置11の方向に加圧する圧縮ばねは、両方の滑り板17、20が持続的に相当接するようにする。
【0031】
つまり操業時に滑り板17、20を介して筬振り装置11からガイドバー2またはその逆へと加圧力が持続的に伝達される。その際、プッシュロッド15もバー要素19も筬振り方向10でそれらの心合せを維持する。両方の滑り板17、20の間の摩擦によって僅かな摩擦が発生するが、しかしこの摩擦はバー要素19もしくはプッシュロッド15に対して弱い横力を生じるだけである。この弱い横力は案内機構16と案内要素21とによって吸収され、筬振り装置11もガイドバー2も横力、つまり筬振り方向10を横切る力を付加されることがない。つまりガイドバー2は正確に筬振り方向で筬振り装置11の規定された筬振りに追従する。両方の滑り板17、20が互いに滑動することによって、定置式筬振り装置11に対するガイドバー2のスイング運動は補償することができる。
【0032】
操業時に摩擦を小さなものに抑えるために滑り板17、20の滑り面18を減摩材料で被覆することができる。選択的にまたは付加的に、両方の滑り板17、20の間の接触領域に潤滑剤、例えば油脂を持続的に供給するために潤滑剤供給部を利用することもできる。この措置も、両方の滑り板17、20の間の摩擦を小さなものに抑えるのに役立つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筬振り装置(11)によって筬振り方向(10)で運動可能かつスイング装置(5)によって前記筬振り方向(10)に垂直に運動可能な少なくとも1本のガイドバー(2)を有する編機において、前記筬振り方向(10)に垂直に向いた2つの滑り面(18)を有する滑り面対を介して前記筬振り装置(11)が前記ガイドバー(2)に作用することを特徴とする編機。
【請求項2】
前記筬振り装置(11)が前記筬振り方向(10)で案内される伝達要素を有し、前記伝達要素が前記滑り面対の一方の滑り面(18)を担持していることを特徴とする、請求項1記載の編機。
【請求項3】
前記伝達要素がプッシュロッド(15)として形成されていることを特徴とする、請求項2記載の編機。
【請求項4】
前記ガイドバー(2)がバー要素(19)を有し、前記バー要素が前記滑り面対の一方の滑り面を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の編機。
【請求項5】
前記バー要素(19)が案内要素(21)内を延びており、前記案内要素が相対回転不能にハンガー軸(4)と結合されており、前記ハンガー軸でガイドバー(2)が支承されていることを特徴とする、請求項4記載の編機。
【請求項6】
前記バー要素(19)が前記案内要素(21)に対して前記筬振り方向(10)で運動可能であり、かつ前記案内要素(21)によって前記筬振り方向で案内されていることを特徴とする、請求項5記載の編機。
【請求項7】
少なくとも一方の滑り面(18)が滑り板(17、20)に形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の編機。
【請求項8】
少なくとも一方の滑り面(18)が減摩被覆を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の編機。
【請求項9】
少なくとも一方の滑り面(18)が潤滑剤供給部を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の編機。
【請求項10】
前記筬振り装置(11)がパターンディスク(12)またはパターンチェーンと後退機構とを有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の編機。
【請求項1】
筬振り装置(11)によって筬振り方向(10)で運動可能かつスイング装置(5)によって前記筬振り方向(10)に垂直に運動可能な少なくとも1本のガイドバー(2)を有する編機において、前記筬振り方向(10)に垂直に向いた2つの滑り面(18)を有する滑り面対を介して前記筬振り装置(11)が前記ガイドバー(2)に作用することを特徴とする編機。
【請求項2】
前記筬振り装置(11)が前記筬振り方向(10)で案内される伝達要素を有し、前記伝達要素が前記滑り面対の一方の滑り面(18)を担持していることを特徴とする、請求項1記載の編機。
【請求項3】
前記伝達要素がプッシュロッド(15)として形成されていることを特徴とする、請求項2記載の編機。
【請求項4】
前記ガイドバー(2)がバー要素(19)を有し、前記バー要素が前記滑り面対の一方の滑り面を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の編機。
【請求項5】
前記バー要素(19)が案内要素(21)内を延びており、前記案内要素が相対回転不能にハンガー軸(4)と結合されており、前記ハンガー軸でガイドバー(2)が支承されていることを特徴とする、請求項4記載の編機。
【請求項6】
前記バー要素(19)が前記案内要素(21)に対して前記筬振り方向(10)で運動可能であり、かつ前記案内要素(21)によって前記筬振り方向で案内されていることを特徴とする、請求項5記載の編機。
【請求項7】
少なくとも一方の滑り面(18)が滑り板(17、20)に形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の編機。
【請求項8】
少なくとも一方の滑り面(18)が減摩被覆を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の編機。
【請求項9】
少なくとも一方の滑り面(18)が潤滑剤供給部を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の編機。
【請求項10】
前記筬振り装置(11)がパターンディスク(12)またはパターンチェーンと後退機構とを有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の編機。
【図1】
【公開番号】特開2011−63925(P2011−63925A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211252(P2010−211252)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(591008465)カール マイヤー テクスティルマシーネンファブリーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフツング (45)
【氏名又は名称原語表記】KARL MAYER TEXTILMASCHINENFABRIK GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(591008465)カール マイヤー テクスティルマシーネンファブリーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフツング (45)
【氏名又は名称原語表記】KARL MAYER TEXTILMASCHINENFABRIK GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】
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