説明

編糸の定長供給機構を備えた横編機

【課題】予め原画の絵柄に合わせた色柄部分を編糸の長さ方向に配列した色柄編糸を準備しておき、この色柄編糸を横編機のニッテイングポイントに定長で供給することにより、編み上がった編物の絵柄を極めて簡便に柄合わせ可能になした編糸の定長供給機構を備えた横編機を提供すること。
【解決手段】多数の編針を平状あるいは環状に配列してなる横編機であって、前記横編機は、編糸を定長で供給するフィーダー23と、前記編糸を編針10へ導く給糸ガイド24とを備えていて、前記フィーダーは、前記編糸が係合する円筒面25を有し、前記給糸ガイドは、前記円筒面の円筒中心Axに対して相対的に位置決めされており、前記円筒面25は、前記円筒中心を軸として、給糸ガイドに対して相対的に回転し、前記編針と給糸ガイドとのいずれか一方が移動することによって給糸ガイドが編針に順次に出合い、1針の出合い毎に、円筒面の相対回転が1以上の整数(N)分の1回転であることを特徴とする編糸の定長供給機構を備えた横編機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手芸用の横編機に関するものであって、特に、予め原画の絵柄に合わせた色柄部分を編糸の長さ方向に配列した色柄編糸を準備しておき、この色柄編糸を横編機のニッテイングポイントに定長で供給することにより、編み上がった編物の絵柄を極めて簡便に柄合わせ可能になした編糸の定長供給機構を備えた横編機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、適宜編糸を用いて所望の編物を手芸調に編成するようにした玩具的簡易横編機が、種々開発され提供されてきている。この従来の手芸用横編機では、予め原画の絵柄に合わせた色柄部分を編糸の長さ方向に配列した色柄編糸を用いて色柄編物にする場合、編物のもつ伸縮特性並びに色柄編糸を用いて編成することで意匠性に富んだ帽子、レッグウォ−マ−、ペットボトルカバー等の編物作品を作ることができる。しかしながら、従来の手芸用横編機は、編機のニッテイングポイントに供給される編糸を、単に、平編、ゴム編あるいはパール編に編成するにすぎず、予め原画の絵柄に合わせた色柄部分を編糸の長さ方向に配列した色柄編糸を用いて色柄編物を編成するようなことは簡単には出来なかった。
【0003】
すなわち、従来の手芸用横編機によれば、上記の色柄編糸で編物を作成する場合、編み上がった編物作品を、その所望するデザイン通りに編もうとすれば、横編機上で、編糸の色配列に合わせていかなければならず、この色柄編糸の色柄合わせは極めて困難で、極めて煩雑なものであった。したがって、従来の手芸用横編機により緻密な色柄編物を製作することは全く不可能なものであり、簡便な方法により絵柄を合わせ得る方法が求められていた。
【0004】
この発明では、予め色柄編物のデザインに則って、図6Aに示すような色柄編糸を用いて色柄編物を編む場合に、編物の組織形状(図6Bに平編の組織形状を示す)に合わせた編糸を、製編させたい編針に対して必要長さで供給する定長供給機構を付加することで緻密な柄の編物を作ることができる。
【0005】
平編、ゴム編並びにパール編のいわゆる横編の三原組織と、これらに類するタック、ミス(ウェルト)を組み合わせした編物を編成する場合、編成データに基づいた編糸の需要糸量に相当する編糸を供給すれば、製編時の編糸の張力変動も少なくなり、編糸が切れる等のトラブルも少なく編みやすい。この点に関して、特許文献1(特開2002−227064)では、編糸の供給をサーボモーターにてPID制御することによって行いながら駆動する方式が採られている。
【0006】
さらに、色柄編糸を編糸として色柄編物にする研究も知られているが、2002年5月に開催された第55回の繊維機械学会年次大会で講演の「横編機における編糸のインクジェット着色編成」では、横編機上で編糸にインクジェット着色して給糸量をキャリッジ移動量、キャリッジ速度にてコントロールして色柄のズレ量を減らす研究報告がなされている。
【0007】
しかしながら、デザインを施した原画を編物として表現させるため、予め糸に該原画に合致させた色を配列させた編糸にて製編するようにした横編機において、該横編機が玩具用途であったり手芸などの趣味で行う場合、上記する高度な技術による高価な装置ではなく、一般の使用者が手動で簡単に操作ができ、しかも安価である編糸供給機構が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−227064号公報(要約、特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明では、上記する従来技術の問題点を解消しようとするものであって、特に重要な要素は、予め原画の絵柄に合わせた色柄部分を編糸の長さ方向に配列した色柄編糸を準備しておき、この色柄編糸を横編機のニッテイングポイントに定長で供給することにより、編み上がった編物の絵柄を極めて簡便に柄合わせ可能になした編糸の定長供給機構を備えた横編機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、請求項1に記載の発明は、多数の編針を平状あるいは環状に配列してなる横編機であって、前記横編機は、編糸を定長で供給するフィーダーと、前記編糸を編針へ導く給糸ガイドとを備えていて、前記フィーダーは、前記編糸が係合する円筒面を有し、前記給糸ガイドは、前記円筒面の円筒中心に対して相対的に位置決めされており、前記円筒面は、前記円筒中心を軸として、前記給糸ガイドに対して相対的に回転し、前記編針と給糸ガイドとのいずれか一方が移動することによって前記給糸ガイドが前記編針に順次に出合い、1針の出合い毎に、前記円筒面の相対回転が1以上の整数(N)分の1回転であることを特徴とする編糸の定長供給機構を備えた横編機を構成するものである。
【0011】
この発明において請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の編糸の定長供給機構を備えた横編機であって、前記円筒面の円周に沿って、1個またはN個またはNの約数個の表示が、該表示が2個以上の場合には、等間隔で付されていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明において請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の編糸の定長供給機構を備えた横編機であって、前記フィーダーの円周面の周長が、編針のニット位置における編針頭の間隔の整数(N)倍のさらに1〜5倍であることを特徴とするものである。
【0013】
この発明において請求項4に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の編糸の定長供給機構を備えた横編機であって、前記フィーダーの円周面の周長が、編針のニット位置における編針頭の間隔の整数(N)倍のさらに1.5〜2.5倍であることを特徴とするものである。
【0014】
この発明において請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の編糸の定長供給機構を備えた横編機であって、前記多数の編針が環状に配列されている中心と、前記フィーダーの円周面の円筒中心とが同一中心であることを特徴とするものである。
【0015】
この発明において請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の編糸の定長供給機構を備えた横編機であって、前記フィーダーと針床との相関位置が固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明になる編糸の定長供給機構を備えた横編機によれば、当該横編機に、供給編糸が係合する円筒面を有し、この編糸を定長で供給するフィーダーと、当該編糸を編針へ導くべく、前記円筒面の円筒中心に対して相対的に位置決めされている給糸ガイドとを備え、円筒面が円筒中心を軸として、給糸ガイドに対して相対的に回転し、編針と給糸ガイドとのいずれか一方が移動することによって給糸ガイドが編針に順次に出合い、1針の出合い毎に、円筒面の相対回転が1以上の整数(N)分の1であるように構成したことにより、色柄編糸を一定のテンションで、横編機におけるニッテイングポイントに定長で供給することができ、編み上がった編物の絵柄を極めて簡便に柄合わせ可能になしたものであって、その点において極めて有効に作用するものといえる。
【0017】
さらに、この発明になる編糸の定長供給機構を備えた横編機によれば、極めて簡単な構成でなる横編機であって、故障並びに誤動作が少なく、且つ、安価な横編機を提供することができる点、並びに、極めて簡便な操作で所望の編物作品を編み上げ得る点などにおいても極めて有効に作用するものといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明になる編糸の定長供給機構を備えた横編機について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明になる編糸の定長供給機構を備えた横編機について、その外観を示す概略的な斜視図である。図2は、当該横編機の概略的な平面図であり、図3は、当該横編機における上部側構成機構を取り外して、当該横編機における回転駆動系の一構成例を示す概略的な斜視図である。
【0019】
一方、図4は、横編機における回転駆動系並びに編針の上下動のためのカム機構の具体的な一実施例を示す概略的な側断面図であり、図5は、カム機構により編針が上昇位置にある状態を示す概略的な側断面図である。一方、図6Aは、この発明になる編糸の定長供給機構を備えた横編機に対して極めて効果的に適用される色柄編糸の例を示す概略図であり、図6Bは、平編組織の場合の編ループ形成のパラメータの例を示す説明図である。
【0020】
先ず、この発明の適用になる横編機1の基本的な構成例について、図1〜図5に示す具体的な実施例にもとづいて詳細に説明する。この横編機1は、その具体的な設計例において、下部側構成機構1A並びに上部側構成機構1Bとの組み合わせによって構成されている。前記下部側構成機構1Aは、基台2を含むものからなっており、前記基台2には、軸受け手段3を介してハンドル手段4が設けてある。前記ハンドル手段4は、その回転軸5の一方の端部5aに設けたハンドル部6と、回転軸5の他方の端部5bに設けた回転駆動ギア7とからなっている。前記基台2には、前記ハンドル手段4における出力側の回転駆動ギア7に対しギア連結されていて、前記基台2上で回転駆動する回転駆動ドラム9を回転駆動可能に収容する凹部8が設けてある。前記凹部8には、後述する編針10を鉛直方向に上下動させるためのカム機構11であって、当該編針10の下端側に設けてあるカムフォロア12の下面側を受ける下側カム面13が設けてある。
【0021】
一方、前記回転駆動ドラム9は、前記基台2に対して、前記凹部8内において回転可能に支持されており、外周面に前記回転駆動ギア7に噛み合う従動ギア14が設けてあり、内周面には、例えば22本の編針10を上下方向に移動可能に支持する22個の編針収容部15が設けてある。前記回転駆動ドラム9の内側には、前記カム機構11における上側カム面16を形成する上側カム面形成部材17が配設されていて、前記上側カム面形成部材17は、前記基台2に対して固定してある。この基台2側に設けてある下側カム面13と、前記基台2に対して固定してある上側カム面16とによって、前記編針10におけるカムフォロア12を受け入れるカム溝18を形成し、前記編針10を前記回転駆動ドラム9における編針収容部15に収容した状態で中心軸線Axのまわりに回転させつつ、前記カム機構11の位置において上下動させるようになっている。
【0022】
図に示す実施例において、前記カム機構11におけるカム溝18は、下降点移動部18aと、下降点移動部18aから傾斜して立ち上がる傾斜立ち上がり部18bと、下降点移動部18aから高さhの位置で水平にのびる上昇点移動部18cと、上昇点移動部18cから傾斜して立ち下がる傾斜立ち下がり部18dとからなっており、前記回転駆動ドラム9の回転にともない、前記傾斜立ち上がり部18bにおいて、順次1本ずつの編針10を徐々に上昇させる態勢に案内し、前記上昇点移動部18cにおいて、順次1本ずつの編針10を上昇点の位置に維持して案内し、前記傾斜立ち下がり部18dにおいて、順次1本ずつの編針10を徐々に下降させる態勢に案内するように構成されている。
【0023】
これに対して前記上部側構成機構1Bは、当該横編機におけるニッテイングポイントNPを規定するためのニッテイングポイント規定手段19と、前記編糸Yを前記ニッテイングポイントNPに定長で供給するための編糸定長供給手段20とを含むものからなっている。前記上部側構成機構1Bは、前記下部側構成機構1Aにおける回転駆動ドラム9に対して固定連結されていて、前記ハンドル手段4の回転操作によって一体的に回転するようになっている。前記上部側構成機構1Bにおけるニッテイングポイント規定手段19は、前記下部側構成機構1Aにおける22個の編針収容部15に対応する位置に設けた22個の編針挿通孔21と、各編針間で、下降してゆく編針10の編糸引掛け部10aに引っ掛けられた編糸をループ状に案内する22個のループ形成のための突起22とを含むものからなっている。
【0024】
前記上部側構成機構1Bにおける編糸定長供給手段20は、この発明の重要な構成要素であり、編糸YをニッテイングポイントNPに定長で供給するべく、前記ニッテイングポイント規定手段19を介して前記回転駆動ドラム9に連結されている回転系のフィーダー23と、該編糸Yを編針10へ導く給糸ガイド24とによって構成されている。前記フィーダー23は、複数の編針10を収容して回転する回転駆動ドラム9並びに前記ニッテイングポイント規定手段19とに対して一体的であり、回転ハンドル手段4の操作によって一体的に回転する。
【0025】
前記フィーダー23は、前記編糸Yが係合する円筒面25を有している。この発明では、編糸供給源(図示せず)から供給される編糸YをニッテイングポイントNPにもたらす前段(上流側)において、前記編糸Yを前記円筒面25に複数巻回し、後述する給糸ガイド24に挿通して、ニッテイングポイントNPに導くようになっており、前記フィーダー23が複数の編針群と一体回転することから、編糸Yを前記ニッテイングポイントNPに定長供給することができる。
【0026】
図1において、参照符号26は、前記編糸Yを前記円筒面25に複数巻回するためのガイド手段である。前記ガイド手段26は、一端が前記基台2側に固定されていて、他端が前記円筒面25に対面して、前記編糸Yを挿通可能に支持して案内するガイド部27を形成するものからなっている。また、参照符号28は、前記円筒面25上に設けた巻取長さ調整手段であり、当該巻取長さ調整手段28は、前記円筒面25に巻き付ける編糸の巻取長さを調整するためのものであり、編糸の種類により編物一段分に必要な編糸長さが変わるような場合に、当該巻取長さ調整手段28を調整して、前記円筒面25に巻き付ける編糸の巻取長さを調整するように構成してある。
【0027】
これらに対して、前記給糸ガイド24は、前記ニッテイングポイントNPの上流側において、前記円筒面25の円筒中心Axに対して相対的に位置決めされている。図1などに示す実施例では、前記給糸ガイド24は、前記基台2側に固定してある。
【0028】
前記フィーダー23の円筒面25は、前記円筒中心Axを軸として、前記給糸ガイド24に対して相対的に回転し、前記編針10と給糸ガイド24とのいずれか一方が移動することによって前記給糸ガイド24が前記編針10に順次に出合うように構成されており、1針の出合い毎に、前記円筒面25の相対回転が1以上の整数(N)分の1に構成されている。
【0029】
この発明では、前記円筒面25の円周に沿って、1個またはN個またはNの約数個の表示、目印Ma1が、当該表示が2個以上の場合には、等間隔で付されている。前記フィーダー23の円周面25の周長は、編針10のニット位置における編針頭の間隔の整数倍のさらに1〜5倍に設計されており、より好ましくは、前記フィーダー23の円周面25の周長は、編針10のニット位置における編針頭の間隔の整数倍のさらに1.5〜2.5倍に設計されているものである。
【0030】
さらに、この発明では、前記多数の編針10が環状に配列されている中心と、前記フィーダー23の円周面25の円筒中心Axとが同一中心である。また、前記フィーダー23と針床との相関位置は固定されている。
【0031】
この発明になる横編機1は、編糸をニッテイングポイントに定長供給するように構成したものであり、それによって、予め原画の絵柄に合わせた色柄部分を編糸の長さ方向に配列した色柄編糸を用いて、この色柄編糸を横編機のニッテイングポイントに定長で供給することにより編み上がった編物の絵柄を極めて簡便に柄合わせすることができる。即ち、この発明では、図6Aに示すような色柄部分を編糸の長さ方向に配列した色柄編糸が準備される。この色柄編糸には、予めその色配列に関連して色印Maが付してある。図6Aに示す実施例になる色柄編糸は、糸の長さ方向に沿って色分けされており、且つ所定のピッチa(横編地における1編目の糸の長さ)の予め定めた整数N倍の長さ間隔L(L=aN)で色印が付されており、同一コースに該予め定めた整数Nに対し、別途予め定めた整数M倍の目数(N×M)を順次形成してある。
【0032】
このような色柄編糸により、図6Bに示すような平編を組織する場合、一段に要する糸の長さを決定するためのパラメーターを予め算出しておく。図6Bに示す平編における編ループ形成のためのパラメーターにおいて、編目の幅方向に関しては、ニードルループ編目の幅GN、シンカーループ編目の幅GG、これにより1個の編目ループの幅GTが決まる。一方、編糸の太さφD、編目高さGHと、上段および下段のループのオーバーラップ量GO、ニードルループの曲率半径NR、シンカーループの曲率半径SRがパラメーターとして規定される。
【0033】
図1に示す実施例において、編糸Yは、編みたい筒状の編物の一段分の編糸必要長さに等しくなるように、環状に配列された編針10のさらに外側に位置する円筒状のフィーダー23の円筒面25に巻回される。前述するように、前記回転駆動ドラム9と前記フィーダー23の回転軸は同じであり、一緒に回転することで編糸Yを定長で供給することができる。図1並びに図2に示す実施例において、環状に配列した編針10のニッテイングポイントの位置が、直径110mmである場合、使用した獣毛繊維の毛番手2/8の場合の編物一段分の編糸長さは、628mmであり、これは、前記フィーダー23の円筒面25の円周長さに等しいものである。編糸の種類により編物一段分に必要な編糸長さが変わるような場合には、前記円筒面25上に設けた巻取長さ調整手段28により、前記円筒面25に巻き付ける編糸の巻取長さを調整する。
【0034】
この横編機では、前記フィーダー23の円筒面25に巻き取った編糸Yを前記給糸ガイド24により給糸ラインを一定にして編針10に供給して製編していく。前記フィーダー23には、編糸Yの色配列による色印Maと、フィーダー23の円周上での目印Ma1とが一致するように、フィーダー23上において手動で合わせ、さらに環状に配列された編針10のうち、特定の編針10または/およびその編針付近に目印Ma2を付けておき、編糸Yの定長供給により、予め色柄編物の柄デザインに則った色柄編糸にて編む場合に柄合わせ作業が省力的に且つ簡便にできる。
【0035】
この横編機では、図6に示すような色柄編糸であってもよいし、色配列のない糸を使った編物に対しても変更なく使用することができる。糸を一定供給できることから柄合わせがやりやすいだけでなく、該編物に構成する編目のそれぞれの糸テンションが均一にでき品質面でも安定する。
【0036】
さらにまた、この横編機では、モール糸の他、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸は勿論のこと、獣毛糸、羊毛糸、シルクなどの素材に対しても色配列を持たすことでモール糸に比べてより緻密なデザインを施した編物を作ることができる。また、リリアン糸や組紐を使って凹凸感があり、高品質の編物を作ることができる。
【0037】
この発明に関して、実施例では、横編機の円形編機シングルジャージ方式のもので示したが、ダブルジャージ方式でも同様に適用が可能であり、さらにまた、横編機のうち、平型編機のシングルジャージ方式、ダブルジャージ方式のものに対しても同様に適用が可能である。
【0038】
また、ここで用いるモール糸とは、糸の長さ方向に連続的にのびる芯糸とそれに対して実質的に直角にのびる花糸とを有する糸であっり、花糸を保持させる芯糸は絡まっていてもよいし、平行であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、この発明になる編糸の定長供給機構を備えた横編機について、その外観を示す概略的な斜視図である。
【図2】図2は、当該横編機の概略的な平面図である。
【図3】図3は、当該横編機における上部側構成機構を取り外して、当該横編機における回転駆動系の一構成例を示す概略的な斜視図である。
【図4】図4は、横編機における回転駆動系並びに編針の上下動のためのカム機構の具体的な一実施例を示す概略的な側断面図である。
【図5】図5は、カム機構により編針が上昇位置にある状態を示す概略的な側断面図である。
【図6】図6Aは、この発明になる編糸の定長供給機構を備えた横編機に適用される色柄編糸の例を示す概略図であり、図6Bは、平編組織の場合の編ループ形成のパラメータの例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 横編機
1A 下部側構成機構
1B 上部側構成機構
Y 編糸
2 基台
3 軸受け手段
4 ハンドル手段
5 回転軸
5a 回転軸の一方の端部
5b 回転軸の他方の端部
6 ハンドル部
7 回転駆動ギア
8 凹部
9 回転駆動ドラム
10 編針
11 カム機構
12 カムフォロア
13 下側カム面
14 従動ギア
15 編針収容部
16 上側カム面
17 上側カム面形成部材
18 カム溝
Ax 中心軸線
18a 下降点移動部
18b 傾斜立ち上がり部
18c 上昇点移動部
18d 傾斜立ち下がり部
19 ニッテイングポイント規定手段
NP ニッテイングポイント
20 編糸定長供給手段
21 編針挿通孔
22 突起
23 回転フィーダー
24 給糸ガイド
25 フィーダーの円筒面
26 ガイド手段
27 ガイド部
28 巻取長さ調整手段
Ma 色柄編糸の色印
Ma1 フィーダー円周上の目印
Ma2 編針あるいはその近傍に設けた目印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の編針を平状あるいは環状に配列してなる横編機であって、前記横編機は、編糸を定長で供給するフィーダーと、前記編糸を編針へ導く給糸ガイドとを備えていて、前記フィーダーは、前記編糸が係合する円筒面を有し、前記給糸ガイドは、前記円筒面の円筒中心に対して相対的に位置決めされており、前記円筒面は、前記円筒中心を軸として、前記給糸ガイドに対して相対的に回転し、前記編針と給糸ガイドとのいずれか一方が移動することによって前記給糸ガイドが前記編針に順次に出合い、1針の出合い毎に、前記円筒面の相対回転が1以上の整数(N)分の1回転であることを特徴とする編糸の定長供給機構を備えた横編機。
【請求項2】
前記円筒面の円周に沿って、1個またはN個またはNの約数個の表示が、該表示が2個以上の場合には、等間隔で付されていることを特徴とする請求項1に記載の横編機。
【請求項3】
前記フィーダーの円周面の周長が、編針のニット位置における編針頭の間隔の整数(N)倍のさらに1〜5倍であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の横編機。
【請求項4】
前記フィーダーの円周面の周長が、編針のニット位置における編針頭の間隔の整数(N)倍のさらに1.5〜2.5倍であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の横編機。
【請求項5】
前記多数の編針が環状に配列されている中心と、前記フィーダーの円周面の円筒中心とが同一中心であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の横編機。
【請求項6】
前記フィーダーと針床との相関位置が固定されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の横編機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−63478(P2006−63478A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246643(P2004−246643)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物 (104)
【Fターム(参考)】