説明

緩衝器部材付きの緩み止めネジ

本発明は、次のような、緩衝器部材2を備える緩衝器部材付きの緩み止めネジに関する。すなわち、緩衝器部材2は、緩み止めネジ1に向き合う領域に、実質上ボール状の突起2aを備え、緩み止めネジ1は、緩衝器部材2に向き合う領域に、緩衝器部材2における実質上ボール状の突起2aを受け入れる抜き部を有し、このようにして、緩み止めネジ1と緩衝器部材2との間には、関節状に振れ動き可能な接続が形成されている。緩み止めネジ1と緩衝器部材2との間の関節状に振れ動き可能な接続について制限すべく、緩み止めネジ1にはネジ側の突き当て面1aが備えられ、緩衝器部材2には緩衝器部材側の突き当て面2aが備えられる。また、緩衝器部材2の位置・姿勢を復元するための位置・姿勢復元部材が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器部材を有する緩み止めネジに関する。特には、緩み止めネジに関節状に接続された緩衝器部材を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の緩衝器部材付きの緩み止めネジには、引き続き負荷を受けると、早期に不具合が生じるという欠点があった。特に、航空機に採用し使用する場合には、耐久寿命及び長期安定性が、決定的に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許US4850630
【特許文献2】米国特許US2190585
【特許文献3】ドイツ実用新案DE20212656U1
【特許文献4】ヨーロッパ特許出願公開EP0461994A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、緩み止めネジの耐久寿命及び長期安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
緩衝器部材付きの緩み止めネジにおいて、緩衝器部材が、緩み止めネジの側の領域に、実質上球状またはボール状(以降、単に実質上ボール状とする)の突起を備え、緩み止めネジが、緩衝器部材の側の領域に、緩衝器部材における実質上ボール状の突起を受け入れる抜き部を備える。このようにして、緩衝器部材と、緩み止めネジとの間に、関節状に振れ動き可能とする接続を形成している。上記の課題は、このような緩衝器部材付きの緩み止めネジにおいて、以下により解決される。すなわち、緩衝器部材と緩み止めネジとの間における関節状に振れ動き可能な接続について制限すべく、緩み止めネジにネジ側突き当て面が備えられ、緩衝器部材に緩衝器部材側突き当て面が備えられる。また、緩衝器部材の位置・姿勢を復元させるべく、位置・姿勢復元部材が備えられる。
【発明の効果】
【0006】
この実施形態が有する利点は、振れ動きの角度が、両突き当て面により制限され、緩み止めネジと緩衝器部材とは、材料に損傷を与えることなく、元の位置・姿勢に復帰することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】緩衝器部材付きの緩み止めネジについての第1の実施例を示す模式的な断面図である。
【図2】緩衝器部材付きの緩み止めネジについての第2の実施例を示す模式的な断面図である。
【図3】緩衝器部材付きの緩み止めネジについての第3の実施例を示す模式的な断面図である。
【図4】緩衝器部材付きの緩み止めネジについての第4の実施例を示す模式的な断面図である。
【図5】緩衝器部材付きの緩み止めネジについての第5の実施例を示す模式的な断面図である。
【図6】緩衝器部材付きの緩み止めネジについての第6の実施例を示す模式的な断面図である。
【図7】緩衝器部材付きの緩み止めネジについての第7の実施例を示す模式的な断面図である。
【図8】第7の実施例による緩み止めネジについての側面図である。
【図9】第7の実施例による緩み止めネジについての平面図である。
【図10】緩み止めネジ用の取り付け具を模式的に示す斜視図である。
【図11】緩み止めネジ用の取り付け具についての模式的な断面図である。
【図12】緩み止めネジ用の取り付け具についての側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次のようであれば好ましいことが知られた。すなわち、実質上ボール状の突起が、緩み止めネジに遊びなく組み付けられており、これにより、緩衝器部材と緩み止めネジとの間の密閉が実現しているならば、好ましいことが知られた。
【0009】
ネジ側突き当て面、及び、緩衝器部材側突き当て面が、リング状に形成されているならば好ましいことが知られた。
【0010】
次のようであるのが好ましい。すなわち、緩衝器部材における実質上ボール状の突起の首(くび)部分と、緩み止めネジとの間に、シールリングが配置され、これにより、緩衝器部材の位置・姿勢の復元が行われ得るというのが好ましい。
【0011】
緩み止めネジが、バネ受入用抜き部を備え、このバネ受入用抜き部中にバネ部材が配置されるのであれば好ましいことが知られた。このようであることにより、緩衝器部材の位置・姿勢の復元と、衝撃吸収とを実現することが可能である。
【0012】
次のようであれば特に好ましい。すなわち、バネ部材には、コイル巻きの具合に変動があり、これにより、局所的な負荷について、特には横方向の負荷について、調整・均一化が可能となっているのであれば特に好ましい。
【0013】
緩み止めネジには、ボール状突起と向き合う領域に、バネ受入用抜き部が備えられ、このようにして、バネ部材がボール状突起の面取り状削り取り部に突き当てられるのであっても良い。これに代えて、緩み止めネジには、バネ受入用抜き部と、この抜き部中に配置されるバネ部材とが、緩み止めネジと、ボール状突起とにまたがって延びるというのであっても良い。
【0014】
好ましい一実施形態において、ボール状突起が、内側ボールのためのボール受入部を備え、バネ部材が、この内側ボールに突き当てられている。この実施形態が有する利点は、バネ部材が、精確に軸方向にて、特定の変形を行うようにすることができることである。
【0015】
また、緩み止めネジは、位置シフト可能な押し棒と、バネ部材のためのバネ保持部と、少なくとも1つの係止ボールとを備えることができ、位置シフト可能な押し棒には、少なくとも1つの係止ボールのための、これに対応する少なくとも1つの凹陥部が設けられるようにすることができる。このようにすることで、係止ボールについて、押し棒アセンブリーの係止を可能にする係止の位置から、押し棒アセンブリーの係止解除を可能にする係止解除の位置へと、移動させることができる。バネ保持部を備える実施形態は、バネ部材を2つの目的で用いることが可能であるという利点を有している。そして、係止ボール及び凹陥部を備える実施形態は、緩み止めネジを特に確実に固定可能であるという利点を有している。
【0016】
内側ボールのまわりに円筒状のボール保持部が配置されているのが好ましい。このような実施形態が有する利点は、内側ボールの寸法をより小さくすることが可能であり、円筒状のボール保持部として、より強力な耐力を有する材料を用いることで、アセンブリー全体としての耐力・剛性を向上することが可能である。また、安全確実性の向上を実現できる。左方からという、一方向の荷重印加を行うことができるからである。
【0017】
次のようであれば有利であることが知られた。すなわち、位置シフト可能な押し棒、及び/または、円筒状のボール保持部が(すなわち、これらの少なくとも一方が)、材料としての高い機械的耐力を有する材料から形成されており、この材料により、緩み止めネジ、及び/または、ボール状突起が形成されていれば好ましいことが知られた。
【0018】
上記に代えて、ボール状の突起と、バネ部材との間に、バネ受入部材が配置されるのであっても良い。
【0019】
さらには、係止ボールが、係止位置において、位置シフト可能な押し棒の外面に突き当てられるのであっても良い。ここで、この外面は、わずかな傾斜角にてテーパー状をなすように形成される。これにより、遊びがなくなり、追い締めの余地が与えられている。
【0020】
好ましい一実施例において、緩み止めネジは、一体の閉じ止め部を有する。このような方式であると、安全確実性を向上することができる。一方向からの荷重印加が可能であるからである。
【0021】
本発明の他の側面は、本発明の緩み止めネジと、この緩み止めネジのための取り付け部との組み合わせに関する。ここで、取り付け部には、少なくとも1つの係止ボールのための、少なくとも1つの係止受入部が備えられる。
【実施例】
【0022】
以下に、図面に示す実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
【0023】
図1の模式的な断面図には、緩衝器部材2を備える緩み止めネジ1についての第1の実施例を示す。緩み止めネジ1中には、抜き部が形成されている。この抜き部は、緩衝器部材2における実質上ボール状の突起2aとの間に、ユニバーサルジョイントをなすように形成されている。緩み止めネジ1と、緩衝器部材2との間での関節状の振れ動きは、ネジ当接面1aと、対向して緩衝器部材2に設けられた緩衝器部材当接面2bとにより制限されている。バネ受入用抜き部4が、第1の実施例において、緩み止めネジ1と、実質上ボール状の突起2aとにまたがる1つの領域中にわたって延びており、このバネ受入用抜き部4中に、バネ部材5が配置されている。本実施例において、バネ部材5の全長にわたって、バネの巻き具合が変化していくようになっている。実質上ボール状の突起2aの首部分2dと、緩み止めネジ1との間には、シールリング3が配置されている。
【0024】
図2の模式的な断面図には、緩衝器部材2を備える緩み止めネジ1についての第2の実施例を示す。図1に示された第1の実施例とは異なり、バネ受入用抜き部4が、もっぱら緩み止めネジ1中を延びており、突起2aの球形は、面取り状に削り取られているだけである。そのため、実質上ボール状の突起2aの削り取り平面2eに、バネ部材5が突き当てられている。
【0025】
図3の模式的な断面図には、緩衝器部材2を備える緩み止めネジ1についての第3の実施例を示す。図1及び2に示された各実施例とは異なり、実質上ボール状の突起2a中に、ボール用の受入部2cが備えられる。このボール用受入部2cには、ボール6が突き当てられる。このボール6は、バネ部材5とボール状突起2aとの間に配置される。
【0026】
図4の模式的な断面図には、緩衝器部材2を備える緩み止めネジ1についての第4の実施例を示す。図1及び2に示された各実施例とは異なり、緩み止めネジ1には、さらに、バネ保持部8aを備える、位置シフト可能な押し棒8が備えられる。バネ保持部8aは、バネ部材5における一方の側の部分を受け入れる。さらには、緩み止めネジ1が、少なくとも1つの係止ボール7を備える。係止ボール7は、係止位置にて、バネ保持部8aの外側面に突き当てられる。係止の解除のためには、係止ボール7が、位置シフト可能な押し棒8の凹陥部9中にもって来られる。また、本実施例においては、シャンク部12(図5〜7)が備えられる。
【0027】
図5の模式的な断面図には、緩衝器部材2を備える緩み止めネジ1についての第5の実施例を示す。第5の実施例は、第4の実施例と第3の実施例との組み合わせに相当する。図4に描かれた特徴を備えるのに加えて、実質上ボール状の突起2a中に、部材受け用内側ボール6が備えられており、この部材受け用内側ボール6に、バネ部材5の他方の端部が突き当てられている。また、図5から知られるように、別個の閉じ止め部材16によって、内部を封鎖することができる。
【0028】
図6の模式的な断面図には、緩衝器部材2を備える緩み止めネジ1についての第6の実施例を示す。第5の実施例における部材受け用内側ボール6に代えて、バネ部材5の他端部を受け入れるためには、バネ部材受入部材11が、バネ部材5と、実質上ボール状の突起2aとの間に配置される。
【0029】
図7の模式的な断面図には、緩衝器部材2を備える緩み止めネジ1についての第7の実施例を示す。第7の実施例は、第5の実施例からの変形例であり、部材受け用内側ボール6が円筒状のボール保持部10によって取り囲まれている。
【0030】
本発明をより良く理解できるように、図8には、本発明の緩み止めネジ1の側面図を示す。また、図9には、本発明の緩み止めネジ1の平面図を示す。
【0031】
図10の模式的な斜視図には、緩み止めネジ1のための取り付け具14を示す。取り付け具14中には、係止ボール7のための係止用受入部13が認められる。図11の模式的な断面図には、取り付け具14と、これに差し込まれた、緩衝器部材2付きの緩み止めネジ1とを示す。ここで、省かれていない部分のネジ切領域15が、異物や汚染物の侵入を防ぐ役割を行い得る。最後に、図12の側面図には、緩み止めネジ1のための取り付け具14を示す。この実施例においては、6個の係止用受入部13が備えられる。
【符号の説明】
【0032】
1...緩み止めネジ; 1a...ネジ側の突き当て面; 2...緩衝器部材;
2a...実質上ボール状の突起; 2b...緩衝器部材側の突き当て面;
2c...緩衝器部材受けボール用の受入部; 2d...突起の首の領域;
2e...突起の面取り状削り取り部; 3...シールリング;
4...バネ部材受入用抜き部; 5...バネ部材; 6...内側ボール;
7...係止ボール; 8...位置シフト可能な押し棒; 9...凹陥部;
10...円筒状のボール保持部; 11...バネ受入部材; 12...シャンク部;
13...係止ボール用の係止受入部; 14...緩み止めネジ用の取り付け具;
15...ネジ切領域; 16...閉じ止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝器部材(2)を備える緩衝器部材付きの緩み止めネジであって、
緩衝器部材(2)は、緩み止めネジ(1)に向き合う領域に、実質上ボール状の突起(2a)を備え、緩み止めネジ(1)は、緩衝器部材(2)に向き合う領域に、緩衝器部材(2)における実質上ボール状の突起(2a)を受け入れる抜き部を有し、このようにして、緩み止めネジ(1)と緩衝器部材(2)との間には、関節状に振れ動き可能な接続が形成されているものにおいて、
緩み止めネジ(1)と緩衝器部材(2)との間の関節状に振れ動き可能な接続について制限すべく、緩み止めネジ(1)にはネジ側の突き当て面(1a)が備えられ、緩衝器部材(2)には緩衝器部材側の突き当て面(2a)が備えられ、
緩衝器部材(2)の位置・姿勢を復元するための位置・姿勢復元部材が備えられることを特徴とする緩み止めネジ。
【請求項2】
ネジ側の突き当て面(1a)及び緩衝器部材側の突き当て面(2a)が、リング状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の緩み止めネジ。
【請求項3】
緩衝器部材(2)の実質上ボール状の突起(2a)における首の部分(2d)と、緩み止めネジ(1)との間には、シールリング(3)が配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の緩み止めネジ。
【請求項4】
緩み止めネジ(1)がバネ受入用抜き部(4)を有し、このバネ受入用抜き部(4)中に、バネ部材(5)が配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩み止めネジ。
【請求項5】
バネ部材(5)内で、コイルの巻き具合に変動があることを特徴とする請求項4に記載の緩み止めネジ。
【請求項6】
バネ受入用抜き部(4)が、ボール状突起(2a)に向き合う領域に配置され、このようにして、バネ部材(5)が、ボール状突起(2a)における面取り状の削り取り部(2e)に突き当てられることを特徴とする請求項4または5に記載の緩み止めネジ。
【請求項7】
バネ受入用抜き部(4)と、この中に配置されるバネ部材(5)とが、緩み止めネジ(1)と、ボール状突起(2a)とにまたがって延びていることを特徴とする請求項4または5に記載の緩み止めネジ。
【請求項8】
ボール状突起(2a)には、内側ボール(6)のための、緩衝器部材受けボール用受入部(2c)が備えられ、バネ部材(5)が内側ボール(6)に突き当てられていることを特徴とする請求項4または5に記載の緩み止めネジ。
【請求項9】
緩み止めネジ(1)が、位置シフト可能な押し棒(8)と、バネ部材(5)のためのバネ受入用抜き部(4)と、少なくとも1つの係止ボール(7)とを有し、
位置シフト可能な押し棒(8)には、少なくとも1つの係止ボール(7)を受け入れるための少なくとも1つの凹陥部(9)が形成され、これにより、係止ボール(7)について、押し棒アセンブリーの係止を可能にする係止の位置から、押し棒アセンブリーの係止解除を可能にする係止解除の位置へと、移動させることができることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の緩み止めネジ。
【請求項10】
円筒状のボール保持部(10)が、内側ボール(6)のまわりに備えられることを特徴とする、請求項9における請求項8に従属する部分に記載の緩み止めネジ。
【請求項11】
ボール状突起(2a)と、バネ部材(5)との間に、バネ受入部材(11)が配置されていることを特徴とする、請求項9における請求項4または5に従属する部分に記載の緩み止めネジ。
【請求項12】
位置シフト可能な押し棒(8)に、シャンク部(12)が備えられることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の緩み止めネジ。
【請求項13】
係止ボール(7)が、係止位置にて、バネ保持部(8a)の外側面に突き当てられ、この外側面は、わずかな傾斜でもってテーパー状に形成されていることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の緩み止めネジ。
【請求項14】
一体の閉じ止め部材(16)が、緩み止めネジ(1)における、緩衝器部材(2)から最も遠く離れた領域に備えられることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の緩み止めネジ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の緩み止めネジと、取り付け部(14)との組み合わせであって、
取り付け具(14)には、少なくとも1つの係止ボール(7)を受け入れるための、少なくとも1つの、係止受入部(13)が備えられることを特徴とする組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−530223(P2012−530223A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515352(P2012−515352)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/DE2010/075033
【国際公開番号】WO2010/145647
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(593065833)