緩衝性樹脂組成物及び緩衝材
【課題】良好な緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えた緩衝性樹脂組成物、及びその緩衝性樹脂組成物を用いて構成された緩衝材の提供。
【解決手段】軟化剤が添加されたスチレン系エラストマへフィラーを充填する実験において、充填量が5wt%以下の場合は、カーボンブラックを充填した比較例も気相成長炭素繊維を充填した実施例1も、充填量が増えるにつれて緩衝性が向上している。しかしながら、比較例では充填量が5wt%を超えて10wt%以上となると緩衝性が低下し始めるが、実施例1では20wt%程度まで充填しても寧ろ緩衝性が向上することが分かった。また、周知のように、導電性及び熱伝導性は、気相成長炭素繊維の充填によって良好に向上させることができる。従って、スチレン系エラストマに軟化剤及び気相成長炭素繊維を充填することで、緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えた緩衝性樹脂組成物が得られる。
【解決手段】軟化剤が添加されたスチレン系エラストマへフィラーを充填する実験において、充填量が5wt%以下の場合は、カーボンブラックを充填した比較例も気相成長炭素繊維を充填した実施例1も、充填量が増えるにつれて緩衝性が向上している。しかしながら、比較例では充填量が5wt%を超えて10wt%以上となると緩衝性が低下し始めるが、実施例1では20wt%程度まで充填しても寧ろ緩衝性が向上することが分かった。また、周知のように、導電性及び熱伝導性は、気相成長炭素繊維の充填によって良好に向上させることができる。従って、スチレン系エラストマに軟化剤及び気相成長炭素繊維を充填することで、緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えた緩衝性樹脂組成物が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器、情報関連機器、情報伝達機器等に使用される緩衝性樹脂組成物、及びその緩衝性樹脂組成物を用いて構成された緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD−ROM、ミニディスク、DVD等の光ディスクや光磁気ディスクが汎用されており、また、情報機器の普及に伴ってハードディスクの需要も増大している。これらの機器は機構上、振動に弱い部分を有するので、振動や衝撃を減衰させるために緩衝性樹脂組成物によって成形されたシートなどを介して筐体に装着されている。例えば、スチレン系エラストマは、このような緩衝性樹脂組成物として知られており、本願出願人も、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマ等に軟化剤及び水添石油樹脂を添加することで、その制振性を向上させることを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3368232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の緩衝性樹脂組成物は、一般的に導電性や熱伝導性に劣っており、導電性若しくは熱伝導性を付与して静電気対策や放熱を行いたいといった要請がある。樹脂組成物に導電性若しくは熱伝導性を付与する方法としては、導電性フィラー若しくは熱伝導性フィラーを充填する方法が一般的であるが、フィラーを多量に充填すると樹脂組成物の緩衝性が低下する傾向がある。そこで、本発明は、良好な緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えた緩衝性樹脂組成物、及びその緩衝性樹脂組成物を用いて構成された緩衝材を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達するためになされた本発明の緩衝性樹脂組成物は、エラストマに、軟化剤、及び、気相成長炭素繊維を充填してなることを特徴としている。本願出願人は、エラストマに軟化剤を充填してなる緩衝性樹脂組成物に、更に種々の導電性フィラー若しくは熱伝導フィラーを充填する実験を行った。その結果、フィラーとして気相成長炭素繊維を充填した場合、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができるばかりでなく、緩衝性もあまり阻害されないことを発見した。本発明の緩衝性樹脂組成物では、エラストマに、軟化剤、及び、気相成長炭素繊維を充填しているため、良好な緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えている。
【0005】
なお、上記エラストマ及び軟化剤としては、周知の種々のものが適用できるが、上記エラストマがスチレン系エラストマであり、上記軟化剤が鉱物油である場合、一層良好な緩衝性が得られる。
【0006】
また、気相成長炭素繊維の代わりにカーボンブラックを充填した場合、充填量が5wt%を超えると緩衝性が低下し始めるが、気相成長炭素繊維は20wt%程度まで充填しても寧ろ緩衝性が向上することが分かった。もちろん、気相成長炭素繊維の充填量が増えるにつれて上記緩衝性樹脂組成物の導電性及び熱伝導性は向上する。従って、本発明において、上記気相成長炭素繊維が5wt%以上(望ましくは10wt%以上)充填された場合、緩衝性と導電性及び熱伝導性とを一層良好に兼ね備えることができる。
【0007】
更に、本発明の緩衝性樹脂組成物は、アスカーFP硬度が50〜95である場合、極めて良好な柔軟性が得られ、ハードディスク等のための緩衝材料として良好に適用することができる。また、本発明では、上記構成により、このような柔軟性を良好に得ることができる。
【0008】
また更に、本発明の緩衝性樹脂組成物は、上記エラストマに、更に黒鉛を充填してなるものであってもよい。この場合、黒鉛を更に充填することにより、導電性及び熱伝導性を一層向上させることができる。また、一般の導電性フィラーまたは熱伝導性フィラーをエラストマに充填するとエラストマが硬化し、緩衝性が低下する傾向があるが、黒鉛は充填してもそれほどエラストマが硬化することはなく、緩衝性の低下を抑制することができる。従って、この場合、緩衝性をそれ程低下させることなく導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができる。
【0009】
また、この場合、黒鉛は天然黒鉛または人造黒鉛のいずれでもよく、粉末状,鱗片状,土状,粒状など種々の形態のものが使用できるが、上記黒鉛が粒状である場合、次のような更なる効果が生じる。粒状の黒鉛は、凝集し難く、エラストマを硬化させる作用が少ない。従って、この場合、緩衝性の低下を一層良好に抑制することができる。
【0010】
また、本発明の緩衝性樹脂組成物は、上記エラストマに、更にフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、及びポリアミド樹脂の中から選ばれるいずれか1種または2種以上の樹脂によって形成された平均粒子径0.5〜80μmの樹脂粉末を充填してなるものであってもよい。そして、その場合、上記樹脂粉末が、ポリテトラフルオロエチレンによって形成されたものであってもよい。このような樹脂粉末を充填すると、緩衝性は徐々に低下するが、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができる。更に、本発明の緩衝性樹脂組成物は、体積抵抗率が1×10-1〜1×106 Ω・cmであると一層好ましい。
【0011】
また、上記目的を達するためになされた本発明の緩衝性樹脂組成物は、エラストマに、軟化剤、及び、人造黒鉛を充填してなることを特徴とするものであってもよい。このように、フィラーとして人造黒鉛を充填した場合も、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができるばかりでなく、緩衝性もあまり阻害されない。従って、本発明の緩衝性樹脂組成物も、良好な緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えている。
【0012】
また、本発明の緩衝材は、上記いずれかに記載の緩衝性樹脂組成物を用いて、ハードディスクの外周を覆う形状に構成されたことを特徴としている。このように構成された本発明では、上記いずれかに記載の緩衝性樹脂組成物によってハードディスクの外周を覆うことができるので、そのハードディスクを振動や衝撃から良好に保護することができる。また、上記緩衝性樹脂組成物は導電性及び熱伝導性も優れているので、ハードディスクで発生した熱や静電気を良好に逃がすことができる。
【0013】
本発明の緩衝材は、上記構成に加えて、更に、上記ハードディスクの、少なくとも長手方向及び幅方向の4辺を連続的に覆う形状に構成され、伸縮することによってその内側に上記ハードディスクを装着可能に構成されてもよい。従来の緩衝材は、柔軟性に劣るため、ハードディスクの各方向から取り付けなければならなかったが、上記緩衝性樹脂組成物は優れた柔軟性を有しているため、上記のように伸縮変形させることによってその内側にハードディスクを装着することができる。従って、この場合、緩衝材を1パーツで構成するなどして作業性を向上させることが可能となるといった、更なる効果が生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、以下の製造方法により緩衝性樹脂組成物からなるシートを製造した。すなわち、スチレン系エラストマに、鉱物油からなる軟化剤と、直径100〜500nm,長さ10〜20μmの気相成長炭素繊維とを混合することによって充填した。この混合の方法としては、真空脱泡ミキサー等の機械を用いて混練する方法の他、押出,2本ロール,ニーダ,バンバリーミキサー等の種々の方法を適用することができる。
【0015】
続いて、このように気相成長炭素繊維を混練したスチレン系エラストマ(本発明の緩衝性樹脂組成物に相当)をシート状に成形した。この成形の方法としては、コーター,カレンダロール,押出,プレス,射出等の機械を用いて成形する方法等、種々の方法を適用することができる。
【0016】
また、本発明の実施の形態としての緩衝性樹脂組成物は、スチレン系エラストマに、人造黒鉛を混合することによって充填し、上記と同様にシート状に成形したものであってもよい。この場合、必要に応じて、鉱物油からなる軟化剤,ランダム重合により製造されたポリプロプレン(以下、ランダムPPともいう),フェノール系酸化防止剤等を、上記スチレン系エラストマ及び人造黒鉛と混合してもよい。
【0017】
なお、本発明で使用するエラストマとしては、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマ、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン系エラストマ、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマ、スチレン−イソブチレン−スチレン系エラストマ等のスチレン系エラストマの他、ポリエステル系、ウレタン系、オレフィン系等のエラストマも使用可能である。また軟化剤としては、鉱物油系、植物油系、合成系などの各種ゴム用または樹脂用軟化剤が挙げられる。鉱物油系としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系などのプロセスオイルが挙げられ、植物油系としては、ひまし油、綿実油、亜麻仁油、菜種油、大豆油、パーム油、椰子油、落花生油、木蝋、パインオイル、オリーブ油などが挙げられ、合成系としてはポリαオレフィン(PAO)、液状ポリブテン、液状ポリイソブチレンなどが挙げられる。これらの軟化剤は単独で用いてもよいが、互いの相溶性が良好な2種以上を混合して用いてもよい。
【実施例】
【0018】
次に、気相成長炭素繊維を充填した上記実施の形態のシートを、実際に実施例1として製造し、気相成長炭素繊維の代わりにカーボンブラックを使用した比較例との特性を比較した。すなわち、スチレン系エラストマ(数平均分子量が20万でスチレン含有量が30wt%のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマ)100重量部に鉱物油(温度40℃における動粘度が90mm2/s のパラフィン系プロセスオイル)600重量部を充填した基材に、気相成長炭素繊維(商品名「VGCF」:昭和電工製)またはカーボンブラック(三菱化学製導電品#3350)を徐々に充填量を変化させながら特性の変化を調べた。なお、カーボンブラックには、凝集防止のため混練前にミキサーを通した。また、使用した気相成長炭素繊維の特性を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
また、上記スチレン系エラストマ9.0wt%に、パラフィン系プロセスオイル45.5wt%,ランダムPP2.0wt%,人造黒鉛粉43.0wt%,フェノール系酸化防止剤0.5wt%を充填したものも、実施例2として製造した。なお、上記パラフィン系プロセスオイルとしては前述の温度40℃における動粘度が90mm2/s のものを、ランダムPPとしてはJISK7210:1999に沿って測定したMFR(melt mass-flow rate )が22g/10minのものを、人造黒鉛粉としては平均粒径9〜12μmでグラファイト系の「UF−G30」(商品名:昭和電工製)を、それぞれ使用した。
【0021】
また、特性の評価は、次のようにして行った。実施例1,実施例2,及び比較例の表面抵抗及び体積抵抗は「抵抗率計ロレスタGP」(商品名:ダイアインスツルメンツ製)及び「抵抗率計ハイレスタUP」(商品名:ダイアインスツルメンツ製)を用いて測定し、熱伝導率は「迅速熱伝導率計QTM−500」(商品名:京都電子工業製)を用いて測定した。また、緩衝性は、下記のような落下試験機と「FFTアナライザーDS−2000(商品名:小野測器製)」とを用いて、次のように評価した。
【0022】
図1は、緩衝性を評価するための落下試験の方法を模式的に表す説明図である。本実施例で使用した落下試験機は、試験片1を2本のレバー3,3で挟持し、そのレバー3,3を備えた図示しないホルダが試験片1及びレバー3,3と一体に矢印方向に自由落下し、衝突面5に衝突する直前でレバー3,3が試験片1から離れる装置である。
【0023】
このため、試験片1には、回転を生じずにそのままの姿勢で自由落下した場合と同様の衝撃が加わる。このため、加速度計7を試験片1の上面に取り付けておき、その加速度計7の検出信号を前述の「FFTアナライザーDS−2000」に入力して試験片1が衝突面5に衝突したときの加速度を測定すれば、その加速度が小さいほど衝撃が小さいことになる。
【0024】
実験では、試験片1として平面視略正方形で質量200gのSUS板を使用し、衝突面5にラワン材を使用して、試験片1を20cmの高さから落下させた。また、上記各実施例または比較例のシートを10mm×10mm×t3mmに切断して測定サンプル10とし、これによって試験片1を4点支持してその緩衝性を調べた。結果を図2に示す。なお、図2において「対策無し」とは、試験片1に測定サンプル10を添付せずに落下させたデータである。また、この実験では、実施例2における人造黒鉛粉の添加量を実施例1,比較例と合わせるため、人造黒鉛粉の充填量を20.0wt%,30.0wt%とした試料も作成した。各試料の配合を、前述の配合と合わせて表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
図2に示すように、充填量が5wt%以下の場合は、比較例も実施例も充填量が増えるにつれて緩衝性が向上している。しかしながら、気相成長炭素繊維の代わりにカーボンブラックを充填した比較例では、充填量が5wt%を超えて10wt%以上となると緩衝性が低下し始めるが、気相成長炭素繊維を充填した実施例1や人造黒鉛粉を充填した実施例2では20wt%程度まで充填しても寧ろ緩衝性が向上することが分かった。
【0027】
また、カーボンブラックを充填した比較例では、カーボンブラックは嵩高いので30wt%以上充填すると硬度が高くなりすぎ、材料混練性・製品成形性に難があるため、30wt%以上での評価を行わなかった。
【0028】
図3は、実施例1(図3では単に「実施例」と表記)及び比較例の表面抵抗及び体積抵抗の測定結果である。図3に示すように、実施例1及び比較例のいずれも、充填量が増えるにつれて表面抵抗及び体積抵抗が低下している。但し、充填量が5wt%以下の場合は、比較例の方が実施例1よりも表面抵抗,体積抵抗が共に小さいが、充填量が6wt%を超えると実施例1の方が体積抵抗が低くなり、充填量が8wt%を超えると表面抵抗,体積抵抗が共に実施例1の方が低くなる。また、人造黒鉛粉を43.0wt%充填した実施例2では、2.17×107 Ω/□の表面抵抗と1.09×106 Ω・cmの体積抵抗とが観測された。
【0029】
図4は、実施例1(図4では単に「実施例」と表記)及び比較例の熱伝導率の測定結果である。比較例の場合、充填量が20wt%未満では熱伝導率の測定が不能であった。これに対し、実施例1では、充填量が3wt%でも0.2W/m・Kを超える熱伝導率が測定され、充填量が増えるにつれて熱伝導率は向上した。熱伝導率については、常に実施例1の方が比較例より優れた値が得られた。また、人造黒鉛粉を43.0wt%充填した実施例2では、1.16W/m・Kの熱伝導率が観測された。
【0030】
以上のように、スチレン系エラストマに気相成長炭素繊維または人造黒鉛粉をフィラーとして充填した場合、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができるばかりでなく、緩衝性もあまり阻害されないことが分かった。また、気相成長炭素繊維が5wt%を以上(望ましくは6wt%以上、更に望ましくは8wt%以上)充填された実施例1は、前述のように緩衝性と導電性及び熱伝導性とを極めて良好に兼ね備えていることが分かった。
【0031】
更に、上記実施例1に対して、気相成長炭素繊維の充填量を変化させながら硬度の変化を調べた。なお、硬度の測定には、高分子計器製「アスカーゴム硬度計FP型」(商品名)を使用した。結果を図5に示す。図5に示すように、実施例1の緩衝性樹脂組成物は、気相成長炭素繊維の充填量を3〜20wt%の範囲で変化させてもアスカーFP硬度が50〜95の範囲に収まり、極めて良好な柔軟性を有していることが分かる。
【0032】
また、人造黒鉛粉を43.0wt%充填した実施例2では、JISA硬度10,アスカーC硬度40,アスカーFP硬度92といった測定結果が得られた。更に、人造黒鉛粉を43.0wt%充填した実施例2では、共振周波数が42.0Hz、共振倍率が10.4dB、損失係数が0.47と、極めて良好な制振特性が得られた。
【0033】
従って、上記各実施例の緩衝性樹脂組成物を、例えばハードディスク等と筐体との間に配設すれば、ハードディスク等で発生した静電気を良好に筐体に放電すると共にハードディスク等で発生した熱を良好に筐体に放熱することができ、更に、そのハードディスク等を良好に衝撃から保護することができる。なお、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施できることはいうまでもない。例えば、実施例2における人造黒鉛粉としては、上記「UF−G30」以外にも、同じく昭和電工製の人造黒鉛微粉末「UF−Gシリーズ」、日本黒鉛工業製の球状化黒鉛粉末「HAGシリーズ」、エスイーシー製の高純度人造黒鉛「SGシリーズ」、中越黒鉛工業所製の特殊処理黒鉛「RASシリーズ」など、平均粒径1〜100μmの人造黒鉛粉を用いても同様の効果が得られるものと推察される。平均粒径は、1〜20μmが特に好ましく、平均粒径が100μmを超えると、射出成形し難いとかフィルム状に成形するとごつごつするといった点が指摘される。また、同等の天然黒鉛粉を用いても同様の効果が得られる可能性があるが、天然黒鉛は、品質が不均一で不純物が含まれるなどの点であまり好ましくない。更に、実施例1には、上記気相成長炭素繊維と共に、黒鉛等、気相成長炭素繊維以外のフィラーもエラストマに充填してもよい。
【0034】
次に、上記気相成長炭素繊維と共に黒鉛をエラストマに充填した実施例3について説明する。本実施例では、気相成長炭素繊維(VGCF)の充填量を5wt%とし、黒鉛として、平均粒径20〜30μmで粒度分布の累積50μm以上が20%以下でグラファイト系の人造黒鉛(昭和電工製の試作品)、平均粒径9〜12μmでグラファイト系の「UF−G30」(商品名:昭和電工製)、及び、前述のカーボンブラックの#3350を使用した。
【0035】
気相成長炭素繊維の充填量を5wt%とした上記実施例1に対して、上記UF−G30の充填量を変化させながら前述の落下試験を行った結果を表3に示す。なお、表3において「0wt%」とは、気相成長炭素繊維を5wt%充填したのみで、UF−G30の充填量が0wt%であることを示す。表3に示すように、気相成長炭素繊維と共に黒鉛を充填することにより、良好な緩衝性が得られることが分かった。
【0036】
【表3】
【0037】
また、上記と同様の方法で、黒鉛の充填量の変化に伴う体積抵抗率及び熱伝導率の変化を測定した結果を、図6及び図7に示す。どの黒鉛を充填した場合でも、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができたが、導電性を向上させる効果は#3350,UF−G30,人造黒鉛の順に大きく、熱伝導性を向上させる効果はUF−G30,人造黒鉛,#3350の順に大きかった。このように、実施例1の緩衝性樹脂組成物に黒鉛を充填することにより、緩衝性をそれ程低下させることなく導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができることが分かった。
【0038】
更に、黒鉛の充填量を変化させながら硬度の変化を調べた結果を図8に示す。なお、硬度の測定には、高分子計器製「アスカーゴム硬度計C型」(商品名)を使用した。図8に示すように、黒鉛の充填量が0wt%のときはアスカーC硬度は0(すなわち、アスカーゴム硬度計C型では測定不能で前述のFP型でのみ測定可能)であったが、黒鉛の充填量が増えるに従って硬度が増加した。しかしながら、その増加はいずれも緩やかで、特にグラファイト系の黒鉛である人造黒鉛及びUF−G30では極めて緩やかであった。
【0039】
なお、黒鉛は天然黒鉛または人造黒鉛のいずれでもよく、粉末状,鱗片状,土状,粒状など種々の形態のものが使用できるが、上記実施例3のように黒鉛が粒状である場合、黒鉛同士が凝集し難く、エラストマを硬化させる作用が少ない。従って、この場合、黒鉛の充填による柔軟性の低下を一層良好に抑制することができる。
【0040】
次に、上記気相成長炭素繊維と共に、樹脂粉末としてのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粉末をエラストマに充填した実施例4について説明する。本実施例では、気相成長炭素繊維(VGCF)の充填量を10wt%とし、PTFE粉末としては、平均粒子径17μm、融点332℃の市販品(商品名:Fluon(登録商標):旭硝子株式会社製、品番:L169J)を使用した。
【0041】
気相成長炭素繊維の充填量を10wt%とした上記実施例1に対して、PTFE粉末の充填量を変化させながら前述の落下試験を行った結果を図9に示す。また、上記と同様の方法で、PTFE粉末の充填量の変化に伴う体積抵抗率及び熱伝導率の変化を測定した結果を、図10及び図11に示す。図9に示すように、気相成長炭素繊維と共にPTFE粉末を充填することにより、緩衝性は若干低下したが、図10及び図11に示すように、PTFE粉末を充填することによって導電性及び熱伝導性を極めて良好に向上させることができた。特に、導電性は、PTFE粉末自身の体積抵抗率が1×1018Ω・cmであるにも拘わらず、それを充填することによって10Ω・cm程度まで体積抵抗率を低下させることができた。また、熱伝導性は、PTFE粉末自身の熱伝導率が0.25W/m・Kであるにも拘らず、それを充填することによって1W/m・K程度まで熱伝導率を向上させることができた。これらは、原因は不明であるが、PTFE粉末が気相成長炭素繊維によるネットワークの形成を促進する作用を有するためと推測される。
【0042】
更に、PTFE粉末の充填量を変化させながら硬度の変化を調べた結果を図12に示す。なお、硬度の測定には、前述の「アスカーゴム硬度計C型」を使用した。図12に示すように、アスカーC硬度はPTFE粉末の充填量が増えるに従って硬度が増加した。しかしながら、その増加は緩やかであった。従って、上記エラストマに気相成長炭素繊維と共にPTFE粉末を充填した場合も、柔軟性の低下を良好に抑制できることが分かった。
【0043】
また、本実施例4では、PTFE粉末を充填したことで、表面の粘着性(いわゆるタック性)も抑制され、一般的な緩衝材料や制振材料より摺動性に富む材料となることが分かった。なお、樹脂粉末としては、他のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、またはポリアミド樹脂などから形成された粉末を使用することもでき、上記樹脂のうちの複数を使用して形成された粉末を使用することもできる。
【0044】
次に、上記緩衝性樹脂組成物を用いて、ハードディスクを振動及び衝撃から保護するための緩衝材を作成した実施例について説明する。図13は、緩衝材の第1実施例としての緩衝材11の構成を表す斜視図である。この緩衝材11は、ハードディスク90の長手方向の2辺を、幅方向両側から覆ういわゆる2パーツタイプの緩衝材である。各緩衝材11は、いずれも平面視コの字形に構成され、その内面には、ハードディスク90の上記各辺が嵌合する溝11aが形成されている。
【0045】
このように構成された緩衝材11は、ハードディスク90の幅方向両側から装着してハードディスク90の2辺を溝11aに嵌合させることにより、その辺を覆ってハードディスク90を振動や衝撃から良好に保護することができる。また、上記緩衝性樹脂組成物は導電性及び熱伝導性も優れているので、緩衝材11は、ハードディスク90で発生した熱や静電気を良好に逃がすことができる。
【0046】
図14(A)は緩衝材の第2実施例としての緩衝材12の構成を表す斜視図であり、図14(B)はそのA−A線断面図である。この緩衝材12は、ハードディスク90の長手方向及び幅方向の4辺を連続的に覆ういわゆる1パーツタイプの緩衝材である。従来のフィラーが多量に充填された緩衝性樹脂組成物は柔軟性に劣るものが多く、前述のような2パーツタイプの緩衝材が主流であったが、上記実施例の緩衝性樹脂組成物は極めて優れた柔軟性を有しているため、本実施例のような1パーツタイプの緩衝材も構成可能となった。
【0047】
図14(A)に示すように、緩衝材12は平面視ロの字形に構成され、その内面には、ハードディスク90の4辺が嵌合する溝12aが形成されている。このように構成された緩衝材12は、開口部12bを押し広げてハードディスク90の4辺を溝12aに嵌合させて使用される。その後、手を離すと緩衝材12が収縮して、図14(B)に示すようにハードディスク90の4辺を覆ってハードディスク90を振動や衝撃から良好に保護することができる。また、上記緩衝性樹脂組成物は導電性及び熱伝導性も優れているので、緩衝材12は、ハードディスク90で発生した熱や静電気を良好に逃がすことができる。
【0048】
なお、緩衝材12は、図15の斜視図に示すように、4隅以外を薄肉部12cとしてもよい。この場合、負荷が加わり易い4隅のみを厚肉にすることで、衝撃を効率的に吸収し、かつ、材料費を低減すると共に軽量化を図ることができる。
【0049】
更に、この場合、図16(A)の斜視図及び図16(B)のB−B線断面図に示すように、開口部12bの長手方向中央及び長手方向両端に、薄肉部12cと連接して、ハードディスク90の表面に当接する面部12dを設けてもよい。また更に、この場合、図17の断面図に示すように、薄肉部12c及び面部12dの外周に、リブ12eを設けてハードディスク90からの放熱を促進してもよい。更に、リブ12eは突起に換えてもよく、緩衝材11において前述のような薄肉部や面部を設けてもよく、緩衝材は本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態とすることができる。また更に、本発明の緩衝性樹脂組成物は、マイクホルダや各種モータのインシュレータや防振ブッシュ等種々の用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】緩衝性を評価するための落下試験の方法を模式的に表す説明図である。
【図2】実施例及び比較例の緩衝性の測定結果である。
【図3】実施例及び比較例の表面抵抗及び体積抵抗の測定結果である。
【図4】実施例及び比較例の熱伝導率の測定結果である。
【図5】実施例の硬度測定結果である。
【図6】黒鉛を更に充填した場合の実施例の体積抵抗測定結果である。
【図7】黒鉛を更に充填した場合の実施例の熱伝導率測定結果である。
【図8】黒鉛を更に充填した場合の実施例の硬度測定結果である。
【図9】PTFE粉末を更に充填した場合の実施例の緩衝性測定結果である。
【図10】PTFE粉末を更に充填した場合の実施例の体積抵抗測定結果である。
【図11】PTFE粉末を更に充填した場合の実施例の熱伝導率測定結果である。
【図12】PTFE粉末を更に充填した場合の実施例の硬度測定結果である。
【図13】緩衝材の第1実施例の構成を表す斜視図である。
【図14】緩衝材の第2実施例の構成を表す斜視図及び断面図である。
【図15】その緩衝材の変形例の構成を表す斜視図である。
【図16】その緩衝材の更なる変形例の構成を表す斜視図及び断面図である。
【図17】その緩衝材の更に他の変形例の構成を表す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…試験片 3…レバー 5…衝突面 7…加速度計 10…測定サンプル
11,12…緩衝材 11a,12a…溝 12b…開口部 12c…薄肉部
12d…面部 12e…リブ 90…ハードディスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器、情報関連機器、情報伝達機器等に使用される緩衝性樹脂組成物、及びその緩衝性樹脂組成物を用いて構成された緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD−ROM、ミニディスク、DVD等の光ディスクや光磁気ディスクが汎用されており、また、情報機器の普及に伴ってハードディスクの需要も増大している。これらの機器は機構上、振動に弱い部分を有するので、振動や衝撃を減衰させるために緩衝性樹脂組成物によって成形されたシートなどを介して筐体に装着されている。例えば、スチレン系エラストマは、このような緩衝性樹脂組成物として知られており、本願出願人も、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマ等に軟化剤及び水添石油樹脂を添加することで、その制振性を向上させることを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3368232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の緩衝性樹脂組成物は、一般的に導電性や熱伝導性に劣っており、導電性若しくは熱伝導性を付与して静電気対策や放熱を行いたいといった要請がある。樹脂組成物に導電性若しくは熱伝導性を付与する方法としては、導電性フィラー若しくは熱伝導性フィラーを充填する方法が一般的であるが、フィラーを多量に充填すると樹脂組成物の緩衝性が低下する傾向がある。そこで、本発明は、良好な緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えた緩衝性樹脂組成物、及びその緩衝性樹脂組成物を用いて構成された緩衝材を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達するためになされた本発明の緩衝性樹脂組成物は、エラストマに、軟化剤、及び、気相成長炭素繊維を充填してなることを特徴としている。本願出願人は、エラストマに軟化剤を充填してなる緩衝性樹脂組成物に、更に種々の導電性フィラー若しくは熱伝導フィラーを充填する実験を行った。その結果、フィラーとして気相成長炭素繊維を充填した場合、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができるばかりでなく、緩衝性もあまり阻害されないことを発見した。本発明の緩衝性樹脂組成物では、エラストマに、軟化剤、及び、気相成長炭素繊維を充填しているため、良好な緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えている。
【0005】
なお、上記エラストマ及び軟化剤としては、周知の種々のものが適用できるが、上記エラストマがスチレン系エラストマであり、上記軟化剤が鉱物油である場合、一層良好な緩衝性が得られる。
【0006】
また、気相成長炭素繊維の代わりにカーボンブラックを充填した場合、充填量が5wt%を超えると緩衝性が低下し始めるが、気相成長炭素繊維は20wt%程度まで充填しても寧ろ緩衝性が向上することが分かった。もちろん、気相成長炭素繊維の充填量が増えるにつれて上記緩衝性樹脂組成物の導電性及び熱伝導性は向上する。従って、本発明において、上記気相成長炭素繊維が5wt%以上(望ましくは10wt%以上)充填された場合、緩衝性と導電性及び熱伝導性とを一層良好に兼ね備えることができる。
【0007】
更に、本発明の緩衝性樹脂組成物は、アスカーFP硬度が50〜95である場合、極めて良好な柔軟性が得られ、ハードディスク等のための緩衝材料として良好に適用することができる。また、本発明では、上記構成により、このような柔軟性を良好に得ることができる。
【0008】
また更に、本発明の緩衝性樹脂組成物は、上記エラストマに、更に黒鉛を充填してなるものであってもよい。この場合、黒鉛を更に充填することにより、導電性及び熱伝導性を一層向上させることができる。また、一般の導電性フィラーまたは熱伝導性フィラーをエラストマに充填するとエラストマが硬化し、緩衝性が低下する傾向があるが、黒鉛は充填してもそれほどエラストマが硬化することはなく、緩衝性の低下を抑制することができる。従って、この場合、緩衝性をそれ程低下させることなく導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができる。
【0009】
また、この場合、黒鉛は天然黒鉛または人造黒鉛のいずれでもよく、粉末状,鱗片状,土状,粒状など種々の形態のものが使用できるが、上記黒鉛が粒状である場合、次のような更なる効果が生じる。粒状の黒鉛は、凝集し難く、エラストマを硬化させる作用が少ない。従って、この場合、緩衝性の低下を一層良好に抑制することができる。
【0010】
また、本発明の緩衝性樹脂組成物は、上記エラストマに、更にフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、及びポリアミド樹脂の中から選ばれるいずれか1種または2種以上の樹脂によって形成された平均粒子径0.5〜80μmの樹脂粉末を充填してなるものであってもよい。そして、その場合、上記樹脂粉末が、ポリテトラフルオロエチレンによって形成されたものであってもよい。このような樹脂粉末を充填すると、緩衝性は徐々に低下するが、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができる。更に、本発明の緩衝性樹脂組成物は、体積抵抗率が1×10-1〜1×106 Ω・cmであると一層好ましい。
【0011】
また、上記目的を達するためになされた本発明の緩衝性樹脂組成物は、エラストマに、軟化剤、及び、人造黒鉛を充填してなることを特徴とするものであってもよい。このように、フィラーとして人造黒鉛を充填した場合も、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができるばかりでなく、緩衝性もあまり阻害されない。従って、本発明の緩衝性樹脂組成物も、良好な緩衝性と導電性及び熱伝導性とを兼ね備えている。
【0012】
また、本発明の緩衝材は、上記いずれかに記載の緩衝性樹脂組成物を用いて、ハードディスクの外周を覆う形状に構成されたことを特徴としている。このように構成された本発明では、上記いずれかに記載の緩衝性樹脂組成物によってハードディスクの外周を覆うことができるので、そのハードディスクを振動や衝撃から良好に保護することができる。また、上記緩衝性樹脂組成物は導電性及び熱伝導性も優れているので、ハードディスクで発生した熱や静電気を良好に逃がすことができる。
【0013】
本発明の緩衝材は、上記構成に加えて、更に、上記ハードディスクの、少なくとも長手方向及び幅方向の4辺を連続的に覆う形状に構成され、伸縮することによってその内側に上記ハードディスクを装着可能に構成されてもよい。従来の緩衝材は、柔軟性に劣るため、ハードディスクの各方向から取り付けなければならなかったが、上記緩衝性樹脂組成物は優れた柔軟性を有しているため、上記のように伸縮変形させることによってその内側にハードディスクを装着することができる。従って、この場合、緩衝材を1パーツで構成するなどして作業性を向上させることが可能となるといった、更なる効果が生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、以下の製造方法により緩衝性樹脂組成物からなるシートを製造した。すなわち、スチレン系エラストマに、鉱物油からなる軟化剤と、直径100〜500nm,長さ10〜20μmの気相成長炭素繊維とを混合することによって充填した。この混合の方法としては、真空脱泡ミキサー等の機械を用いて混練する方法の他、押出,2本ロール,ニーダ,バンバリーミキサー等の種々の方法を適用することができる。
【0015】
続いて、このように気相成長炭素繊維を混練したスチレン系エラストマ(本発明の緩衝性樹脂組成物に相当)をシート状に成形した。この成形の方法としては、コーター,カレンダロール,押出,プレス,射出等の機械を用いて成形する方法等、種々の方法を適用することができる。
【0016】
また、本発明の実施の形態としての緩衝性樹脂組成物は、スチレン系エラストマに、人造黒鉛を混合することによって充填し、上記と同様にシート状に成形したものであってもよい。この場合、必要に応じて、鉱物油からなる軟化剤,ランダム重合により製造されたポリプロプレン(以下、ランダムPPともいう),フェノール系酸化防止剤等を、上記スチレン系エラストマ及び人造黒鉛と混合してもよい。
【0017】
なお、本発明で使用するエラストマとしては、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマ、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン系エラストマ、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマ、スチレン−イソブチレン−スチレン系エラストマ等のスチレン系エラストマの他、ポリエステル系、ウレタン系、オレフィン系等のエラストマも使用可能である。また軟化剤としては、鉱物油系、植物油系、合成系などの各種ゴム用または樹脂用軟化剤が挙げられる。鉱物油系としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系などのプロセスオイルが挙げられ、植物油系としては、ひまし油、綿実油、亜麻仁油、菜種油、大豆油、パーム油、椰子油、落花生油、木蝋、パインオイル、オリーブ油などが挙げられ、合成系としてはポリαオレフィン(PAO)、液状ポリブテン、液状ポリイソブチレンなどが挙げられる。これらの軟化剤は単独で用いてもよいが、互いの相溶性が良好な2種以上を混合して用いてもよい。
【実施例】
【0018】
次に、気相成長炭素繊維を充填した上記実施の形態のシートを、実際に実施例1として製造し、気相成長炭素繊維の代わりにカーボンブラックを使用した比較例との特性を比較した。すなわち、スチレン系エラストマ(数平均分子量が20万でスチレン含有量が30wt%のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマ)100重量部に鉱物油(温度40℃における動粘度が90mm2/s のパラフィン系プロセスオイル)600重量部を充填した基材に、気相成長炭素繊維(商品名「VGCF」:昭和電工製)またはカーボンブラック(三菱化学製導電品#3350)を徐々に充填量を変化させながら特性の変化を調べた。なお、カーボンブラックには、凝集防止のため混練前にミキサーを通した。また、使用した気相成長炭素繊維の特性を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
また、上記スチレン系エラストマ9.0wt%に、パラフィン系プロセスオイル45.5wt%,ランダムPP2.0wt%,人造黒鉛粉43.0wt%,フェノール系酸化防止剤0.5wt%を充填したものも、実施例2として製造した。なお、上記パラフィン系プロセスオイルとしては前述の温度40℃における動粘度が90mm2/s のものを、ランダムPPとしてはJISK7210:1999に沿って測定したMFR(melt mass-flow rate )が22g/10minのものを、人造黒鉛粉としては平均粒径9〜12μmでグラファイト系の「UF−G30」(商品名:昭和電工製)を、それぞれ使用した。
【0021】
また、特性の評価は、次のようにして行った。実施例1,実施例2,及び比較例の表面抵抗及び体積抵抗は「抵抗率計ロレスタGP」(商品名:ダイアインスツルメンツ製)及び「抵抗率計ハイレスタUP」(商品名:ダイアインスツルメンツ製)を用いて測定し、熱伝導率は「迅速熱伝導率計QTM−500」(商品名:京都電子工業製)を用いて測定した。また、緩衝性は、下記のような落下試験機と「FFTアナライザーDS−2000(商品名:小野測器製)」とを用いて、次のように評価した。
【0022】
図1は、緩衝性を評価するための落下試験の方法を模式的に表す説明図である。本実施例で使用した落下試験機は、試験片1を2本のレバー3,3で挟持し、そのレバー3,3を備えた図示しないホルダが試験片1及びレバー3,3と一体に矢印方向に自由落下し、衝突面5に衝突する直前でレバー3,3が試験片1から離れる装置である。
【0023】
このため、試験片1には、回転を生じずにそのままの姿勢で自由落下した場合と同様の衝撃が加わる。このため、加速度計7を試験片1の上面に取り付けておき、その加速度計7の検出信号を前述の「FFTアナライザーDS−2000」に入力して試験片1が衝突面5に衝突したときの加速度を測定すれば、その加速度が小さいほど衝撃が小さいことになる。
【0024】
実験では、試験片1として平面視略正方形で質量200gのSUS板を使用し、衝突面5にラワン材を使用して、試験片1を20cmの高さから落下させた。また、上記各実施例または比較例のシートを10mm×10mm×t3mmに切断して測定サンプル10とし、これによって試験片1を4点支持してその緩衝性を調べた。結果を図2に示す。なお、図2において「対策無し」とは、試験片1に測定サンプル10を添付せずに落下させたデータである。また、この実験では、実施例2における人造黒鉛粉の添加量を実施例1,比較例と合わせるため、人造黒鉛粉の充填量を20.0wt%,30.0wt%とした試料も作成した。各試料の配合を、前述の配合と合わせて表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
図2に示すように、充填量が5wt%以下の場合は、比較例も実施例も充填量が増えるにつれて緩衝性が向上している。しかしながら、気相成長炭素繊維の代わりにカーボンブラックを充填した比較例では、充填量が5wt%を超えて10wt%以上となると緩衝性が低下し始めるが、気相成長炭素繊維を充填した実施例1や人造黒鉛粉を充填した実施例2では20wt%程度まで充填しても寧ろ緩衝性が向上することが分かった。
【0027】
また、カーボンブラックを充填した比較例では、カーボンブラックは嵩高いので30wt%以上充填すると硬度が高くなりすぎ、材料混練性・製品成形性に難があるため、30wt%以上での評価を行わなかった。
【0028】
図3は、実施例1(図3では単に「実施例」と表記)及び比較例の表面抵抗及び体積抵抗の測定結果である。図3に示すように、実施例1及び比較例のいずれも、充填量が増えるにつれて表面抵抗及び体積抵抗が低下している。但し、充填量が5wt%以下の場合は、比較例の方が実施例1よりも表面抵抗,体積抵抗が共に小さいが、充填量が6wt%を超えると実施例1の方が体積抵抗が低くなり、充填量が8wt%を超えると表面抵抗,体積抵抗が共に実施例1の方が低くなる。また、人造黒鉛粉を43.0wt%充填した実施例2では、2.17×107 Ω/□の表面抵抗と1.09×106 Ω・cmの体積抵抗とが観測された。
【0029】
図4は、実施例1(図4では単に「実施例」と表記)及び比較例の熱伝導率の測定結果である。比較例の場合、充填量が20wt%未満では熱伝導率の測定が不能であった。これに対し、実施例1では、充填量が3wt%でも0.2W/m・Kを超える熱伝導率が測定され、充填量が増えるにつれて熱伝導率は向上した。熱伝導率については、常に実施例1の方が比較例より優れた値が得られた。また、人造黒鉛粉を43.0wt%充填した実施例2では、1.16W/m・Kの熱伝導率が観測された。
【0030】
以上のように、スチレン系エラストマに気相成長炭素繊維または人造黒鉛粉をフィラーとして充填した場合、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができるばかりでなく、緩衝性もあまり阻害されないことが分かった。また、気相成長炭素繊維が5wt%を以上(望ましくは6wt%以上、更に望ましくは8wt%以上)充填された実施例1は、前述のように緩衝性と導電性及び熱伝導性とを極めて良好に兼ね備えていることが分かった。
【0031】
更に、上記実施例1に対して、気相成長炭素繊維の充填量を変化させながら硬度の変化を調べた。なお、硬度の測定には、高分子計器製「アスカーゴム硬度計FP型」(商品名)を使用した。結果を図5に示す。図5に示すように、実施例1の緩衝性樹脂組成物は、気相成長炭素繊維の充填量を3〜20wt%の範囲で変化させてもアスカーFP硬度が50〜95の範囲に収まり、極めて良好な柔軟性を有していることが分かる。
【0032】
また、人造黒鉛粉を43.0wt%充填した実施例2では、JISA硬度10,アスカーC硬度40,アスカーFP硬度92といった測定結果が得られた。更に、人造黒鉛粉を43.0wt%充填した実施例2では、共振周波数が42.0Hz、共振倍率が10.4dB、損失係数が0.47と、極めて良好な制振特性が得られた。
【0033】
従って、上記各実施例の緩衝性樹脂組成物を、例えばハードディスク等と筐体との間に配設すれば、ハードディスク等で発生した静電気を良好に筐体に放電すると共にハードディスク等で発生した熱を良好に筐体に放熱することができ、更に、そのハードディスク等を良好に衝撃から保護することができる。なお、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施できることはいうまでもない。例えば、実施例2における人造黒鉛粉としては、上記「UF−G30」以外にも、同じく昭和電工製の人造黒鉛微粉末「UF−Gシリーズ」、日本黒鉛工業製の球状化黒鉛粉末「HAGシリーズ」、エスイーシー製の高純度人造黒鉛「SGシリーズ」、中越黒鉛工業所製の特殊処理黒鉛「RASシリーズ」など、平均粒径1〜100μmの人造黒鉛粉を用いても同様の効果が得られるものと推察される。平均粒径は、1〜20μmが特に好ましく、平均粒径が100μmを超えると、射出成形し難いとかフィルム状に成形するとごつごつするといった点が指摘される。また、同等の天然黒鉛粉を用いても同様の効果が得られる可能性があるが、天然黒鉛は、品質が不均一で不純物が含まれるなどの点であまり好ましくない。更に、実施例1には、上記気相成長炭素繊維と共に、黒鉛等、気相成長炭素繊維以外のフィラーもエラストマに充填してもよい。
【0034】
次に、上記気相成長炭素繊維と共に黒鉛をエラストマに充填した実施例3について説明する。本実施例では、気相成長炭素繊維(VGCF)の充填量を5wt%とし、黒鉛として、平均粒径20〜30μmで粒度分布の累積50μm以上が20%以下でグラファイト系の人造黒鉛(昭和電工製の試作品)、平均粒径9〜12μmでグラファイト系の「UF−G30」(商品名:昭和電工製)、及び、前述のカーボンブラックの#3350を使用した。
【0035】
気相成長炭素繊維の充填量を5wt%とした上記実施例1に対して、上記UF−G30の充填量を変化させながら前述の落下試験を行った結果を表3に示す。なお、表3において「0wt%」とは、気相成長炭素繊維を5wt%充填したのみで、UF−G30の充填量が0wt%であることを示す。表3に示すように、気相成長炭素繊維と共に黒鉛を充填することにより、良好な緩衝性が得られることが分かった。
【0036】
【表3】
【0037】
また、上記と同様の方法で、黒鉛の充填量の変化に伴う体積抵抗率及び熱伝導率の変化を測定した結果を、図6及び図7に示す。どの黒鉛を充填した場合でも、導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができたが、導電性を向上させる効果は#3350,UF−G30,人造黒鉛の順に大きく、熱伝導性を向上させる効果はUF−G30,人造黒鉛,#3350の順に大きかった。このように、実施例1の緩衝性樹脂組成物に黒鉛を充填することにより、緩衝性をそれ程低下させることなく導電性及び熱伝導性を良好に向上させることができることが分かった。
【0038】
更に、黒鉛の充填量を変化させながら硬度の変化を調べた結果を図8に示す。なお、硬度の測定には、高分子計器製「アスカーゴム硬度計C型」(商品名)を使用した。図8に示すように、黒鉛の充填量が0wt%のときはアスカーC硬度は0(すなわち、アスカーゴム硬度計C型では測定不能で前述のFP型でのみ測定可能)であったが、黒鉛の充填量が増えるに従って硬度が増加した。しかしながら、その増加はいずれも緩やかで、特にグラファイト系の黒鉛である人造黒鉛及びUF−G30では極めて緩やかであった。
【0039】
なお、黒鉛は天然黒鉛または人造黒鉛のいずれでもよく、粉末状,鱗片状,土状,粒状など種々の形態のものが使用できるが、上記実施例3のように黒鉛が粒状である場合、黒鉛同士が凝集し難く、エラストマを硬化させる作用が少ない。従って、この場合、黒鉛の充填による柔軟性の低下を一層良好に抑制することができる。
【0040】
次に、上記気相成長炭素繊維と共に、樹脂粉末としてのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粉末をエラストマに充填した実施例4について説明する。本実施例では、気相成長炭素繊維(VGCF)の充填量を10wt%とし、PTFE粉末としては、平均粒子径17μm、融点332℃の市販品(商品名:Fluon(登録商標):旭硝子株式会社製、品番:L169J)を使用した。
【0041】
気相成長炭素繊維の充填量を10wt%とした上記実施例1に対して、PTFE粉末の充填量を変化させながら前述の落下試験を行った結果を図9に示す。また、上記と同様の方法で、PTFE粉末の充填量の変化に伴う体積抵抗率及び熱伝導率の変化を測定した結果を、図10及び図11に示す。図9に示すように、気相成長炭素繊維と共にPTFE粉末を充填することにより、緩衝性は若干低下したが、図10及び図11に示すように、PTFE粉末を充填することによって導電性及び熱伝導性を極めて良好に向上させることができた。特に、導電性は、PTFE粉末自身の体積抵抗率が1×1018Ω・cmであるにも拘わらず、それを充填することによって10Ω・cm程度まで体積抵抗率を低下させることができた。また、熱伝導性は、PTFE粉末自身の熱伝導率が0.25W/m・Kであるにも拘らず、それを充填することによって1W/m・K程度まで熱伝導率を向上させることができた。これらは、原因は不明であるが、PTFE粉末が気相成長炭素繊維によるネットワークの形成を促進する作用を有するためと推測される。
【0042】
更に、PTFE粉末の充填量を変化させながら硬度の変化を調べた結果を図12に示す。なお、硬度の測定には、前述の「アスカーゴム硬度計C型」を使用した。図12に示すように、アスカーC硬度はPTFE粉末の充填量が増えるに従って硬度が増加した。しかしながら、その増加は緩やかであった。従って、上記エラストマに気相成長炭素繊維と共にPTFE粉末を充填した場合も、柔軟性の低下を良好に抑制できることが分かった。
【0043】
また、本実施例4では、PTFE粉末を充填したことで、表面の粘着性(いわゆるタック性)も抑制され、一般的な緩衝材料や制振材料より摺動性に富む材料となることが分かった。なお、樹脂粉末としては、他のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、またはポリアミド樹脂などから形成された粉末を使用することもでき、上記樹脂のうちの複数を使用して形成された粉末を使用することもできる。
【0044】
次に、上記緩衝性樹脂組成物を用いて、ハードディスクを振動及び衝撃から保護するための緩衝材を作成した実施例について説明する。図13は、緩衝材の第1実施例としての緩衝材11の構成を表す斜視図である。この緩衝材11は、ハードディスク90の長手方向の2辺を、幅方向両側から覆ういわゆる2パーツタイプの緩衝材である。各緩衝材11は、いずれも平面視コの字形に構成され、その内面には、ハードディスク90の上記各辺が嵌合する溝11aが形成されている。
【0045】
このように構成された緩衝材11は、ハードディスク90の幅方向両側から装着してハードディスク90の2辺を溝11aに嵌合させることにより、その辺を覆ってハードディスク90を振動や衝撃から良好に保護することができる。また、上記緩衝性樹脂組成物は導電性及び熱伝導性も優れているので、緩衝材11は、ハードディスク90で発生した熱や静電気を良好に逃がすことができる。
【0046】
図14(A)は緩衝材の第2実施例としての緩衝材12の構成を表す斜視図であり、図14(B)はそのA−A線断面図である。この緩衝材12は、ハードディスク90の長手方向及び幅方向の4辺を連続的に覆ういわゆる1パーツタイプの緩衝材である。従来のフィラーが多量に充填された緩衝性樹脂組成物は柔軟性に劣るものが多く、前述のような2パーツタイプの緩衝材が主流であったが、上記実施例の緩衝性樹脂組成物は極めて優れた柔軟性を有しているため、本実施例のような1パーツタイプの緩衝材も構成可能となった。
【0047】
図14(A)に示すように、緩衝材12は平面視ロの字形に構成され、その内面には、ハードディスク90の4辺が嵌合する溝12aが形成されている。このように構成された緩衝材12は、開口部12bを押し広げてハードディスク90の4辺を溝12aに嵌合させて使用される。その後、手を離すと緩衝材12が収縮して、図14(B)に示すようにハードディスク90の4辺を覆ってハードディスク90を振動や衝撃から良好に保護することができる。また、上記緩衝性樹脂組成物は導電性及び熱伝導性も優れているので、緩衝材12は、ハードディスク90で発生した熱や静電気を良好に逃がすことができる。
【0048】
なお、緩衝材12は、図15の斜視図に示すように、4隅以外を薄肉部12cとしてもよい。この場合、負荷が加わり易い4隅のみを厚肉にすることで、衝撃を効率的に吸収し、かつ、材料費を低減すると共に軽量化を図ることができる。
【0049】
更に、この場合、図16(A)の斜視図及び図16(B)のB−B線断面図に示すように、開口部12bの長手方向中央及び長手方向両端に、薄肉部12cと連接して、ハードディスク90の表面に当接する面部12dを設けてもよい。また更に、この場合、図17の断面図に示すように、薄肉部12c及び面部12dの外周に、リブ12eを設けてハードディスク90からの放熱を促進してもよい。更に、リブ12eは突起に換えてもよく、緩衝材11において前述のような薄肉部や面部を設けてもよく、緩衝材は本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態とすることができる。また更に、本発明の緩衝性樹脂組成物は、マイクホルダや各種モータのインシュレータや防振ブッシュ等種々の用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】緩衝性を評価するための落下試験の方法を模式的に表す説明図である。
【図2】実施例及び比較例の緩衝性の測定結果である。
【図3】実施例及び比較例の表面抵抗及び体積抵抗の測定結果である。
【図4】実施例及び比較例の熱伝導率の測定結果である。
【図5】実施例の硬度測定結果である。
【図6】黒鉛を更に充填した場合の実施例の体積抵抗測定結果である。
【図7】黒鉛を更に充填した場合の実施例の熱伝導率測定結果である。
【図8】黒鉛を更に充填した場合の実施例の硬度測定結果である。
【図9】PTFE粉末を更に充填した場合の実施例の緩衝性測定結果である。
【図10】PTFE粉末を更に充填した場合の実施例の体積抵抗測定結果である。
【図11】PTFE粉末を更に充填した場合の実施例の熱伝導率測定結果である。
【図12】PTFE粉末を更に充填した場合の実施例の硬度測定結果である。
【図13】緩衝材の第1実施例の構成を表す斜視図である。
【図14】緩衝材の第2実施例の構成を表す斜視図及び断面図である。
【図15】その緩衝材の変形例の構成を表す斜視図である。
【図16】その緩衝材の更なる変形例の構成を表す斜視図及び断面図である。
【図17】その緩衝材の更に他の変形例の構成を表す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…試験片 3…レバー 5…衝突面 7…加速度計 10…測定サンプル
11,12…緩衝材 11a,12a…溝 12b…開口部 12c…薄肉部
12d…面部 12e…リブ 90…ハードディスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマに、軟化剤、及び、気相成長炭素繊維を充填してなることを特徴とする緩衝性樹脂組成物。
【請求項2】
上記エラストマがスチレン系エラストマであり、
上記軟化剤が鉱物油であることを特徴とする請求項1記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項3】
上記気相成長炭素繊維が5wt%以上充填されたことを特徴とする請求項1または2記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項4】
アスカーFP硬度が50〜95であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項5】
上記エラストマに、更に黒鉛を充填してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項6】
上記黒鉛が粒状であることを特徴とする請求項5記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項7】
上記エラストマに、更にフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、及びポリアミド樹脂の中から選ばれるいずれか1種または2種以上の樹脂によって形成された平均粒子径0.5〜80μmの樹脂粉末を充填してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項8】
上記樹脂粉末が、ポリテトラフルオロエチレンによって形成されたことを特徴とする請求項7記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項9】
体積抵抗率が1×10-1〜1×106 Ω・cmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項10】
エラストマに、軟化剤、及び、人造黒鉛を充填してなることを特徴とする緩衝性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物を用いて、ハードディスクの外周を覆う形状に構成されたことを特徴とする緩衝材。
【請求項12】
上記ハードディスクの、少なくとも長手方向及び幅方向の4辺を連続的に覆う形状に構成され、伸縮することによってその内側に上記ハードディスクを装着可能に構成されたことを特徴とする請求項11記載の緩衝材。
【請求項1】
エラストマに、軟化剤、及び、気相成長炭素繊維を充填してなることを特徴とする緩衝性樹脂組成物。
【請求項2】
上記エラストマがスチレン系エラストマであり、
上記軟化剤が鉱物油であることを特徴とする請求項1記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項3】
上記気相成長炭素繊維が5wt%以上充填されたことを特徴とする請求項1または2記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項4】
アスカーFP硬度が50〜95であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項5】
上記エラストマに、更に黒鉛を充填してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項6】
上記黒鉛が粒状であることを特徴とする請求項5記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項7】
上記エラストマに、更にフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、及びポリアミド樹脂の中から選ばれるいずれか1種または2種以上の樹脂によって形成された平均粒子径0.5〜80μmの樹脂粉末を充填してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項8】
上記樹脂粉末が、ポリテトラフルオロエチレンによって形成されたことを特徴とする請求項7記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項9】
体積抵抗率が1×10-1〜1×106 Ω・cmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物。
【請求項10】
エラストマに、軟化剤、及び、人造黒鉛を充填してなることを特徴とする緩衝性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の緩衝性樹脂組成物を用いて、ハードディスクの外周を覆う形状に構成されたことを特徴とする緩衝材。
【請求項12】
上記ハードディスクの、少なくとも長手方向及び幅方向の4辺を連続的に覆う形状に構成され、伸縮することによってその内側に上記ハードディスクを装着可能に構成されたことを特徴とする請求項11記載の緩衝材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−176766(P2006−176766A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340335(P2005−340335)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]