説明

縦型水道メータ

【課題】従来品より測定精度を向上させることが可能な縦型水道メータの提供を目的とする。
【解決手段】本発明によれば、傾斜筒壁80及び鍔壁81を備えることで、水道メータ10の測定精度を従来品よりも向上させることが可能である。また、本実施形態の構成によれば、羽根車40の回転が安定するので、支持ピン21が突き当たった軸受け47の偏摩耗を防止して耐久性を向上させることが可能であると共に、圧力損失を低減することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根車の下側同軸上に整流器を配置して整流器から羽根車側に流体を流し、その羽根車の回転に基づいて流量を測定する縦型水道メータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の縦型水道メータに備えた整流器としては、羽根車に流体を案内する円筒壁と、その円筒壁の中心部に配置されて羽根車を軸支する中心整流体と、中心整流体から円筒壁に向けて放射状に差し渡された複数の整流壁とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−29795号公報([0029]、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水道メータについては、計量法の特定計量器検定検査規則(JIS B 8570−2:2005を引用)に基づいて器差試験が行われており、器差が所定の流量範囲において検定公差を超えないことが合格の基準となっている。しかしながら、近年では、単に検定公差を超えないだけでなく、器差がより小さく抑えられた高精度な縦型水道メータの開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より測定精度を向上させることが可能な縦型水道メータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る縦型水道メータは、円筒壁の内部を放射状に区画してなる整流器を羽根車の下側同軸上に設けると共に、一端が整流器の下面開口に連通しかつ他端が水平方向を向いた流入口をなした導入路を有し、その流入口から導入路に流れ込んだ流体が、整流器、羽根車の順番に通過して流出口から排出される縦型水道メータにおいて、整流器には、円筒壁における流入口側に偏在しかつ円筒壁から下方に延設されて導入路内に突出した下向規制壁が備えられたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の縦型水道メータにおいて、下向規制壁は、円筒壁のうち流入口に最も近い位置から円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って導入路内への突出量が連続して徐々に小さくなるように形成されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の縦型水道メータにおいて、下向規制壁は、円筒壁のうち流入口に最も近い位置から円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って導入路内への突出量が段階的に小さくなるように形成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の縦型水道メータにおいて、整流器には、円筒壁のうち流入口とは反対側に偏在しかつ円筒壁の下端部から内側水平方向に張り出した内向規制壁が備えられたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明に係る縦型水道メータは、円筒壁の内部を放射状に区画してなる整流器を羽根車の下側同軸上に設けると共に、一端が整流器の下面開口に連通しかつ他端が水平方向を向いた流入口をなした導入路を有し、その流入口から導入路に流れ込んだ流体が、整流器、羽根車の順番に通過して流出口から排出される縦型水道メータにおいて、整流器には、円筒壁のうち流入口とは反対側に偏在しかつ円筒壁の下端部から内側水平方向に張り出した内向規制壁が備えられたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載の縦型水道メータにおいて、内向規制壁は、円筒壁のうち流入口に対して最も遠い位置から円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って内側水平方向への張り出し量が連続して徐々に小さくなるように形成されたところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項4又は5に記載の縦型水道メータにおいて、内向規制壁は、円筒壁のうち流入口に対して最も遠い位置から円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って内側水平方向への張り出し量が段階的に小さくなるように形成されたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1及び5の発明]
請求項1及び5の発明によれば、従来のものに比べて測定精度を向上させることができた。
【0014】
[請求項2及び3の発明]
請求項2の発明のように、下向規制壁は、円筒壁のうち流入口に最も近い位置から円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って導入路内への突出量が連続して徐々に小さくなるように形成すると効果的である。また、請求項3の発明のように、下向規制壁は、円筒壁のうち流入口に最も近い位置から円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って導入路内への突出量が段階的に小さくなるように形成してもよい。
【0015】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、整流器に、下向規制壁と内向規制壁との両方を備えたことで、測定精度をさらに向上させることができた。
【0016】
[請求項6及び7の発明]
請求項6の発明のように、内向規制壁は、円筒壁のうち流入口に対して最も遠い位置から円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って内側水平方向への張り出し量が連続して徐々に小さくなるように形成すると効果的である。また、請求項7の発明のように、内向規制壁は、円筒壁のうち流入口に対して最も遠い位置から円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って内側水平方向への張り出し量が段階的に小さくなるように形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水道メータの側断面図
【図2】羽根車の斜視図
【図3】整流器の斜視図
【図4】(A)整流器の側面図、(B)整流器の底面図
【図5】実施例に対する実験結果を示したグラフ
【図6】(A)従来品の水平断面における流速分布図、(B)従来品の垂直断面における流速分布図
【図7】(A)実施品1の水平断面における流速分布図、(B)実施品1の垂直断面における流速分布図
【図8】第2実施形態に係る水道メータの側断面図
【図9】実施例に対する実験結果を示したグラフ
【図10】(A)実施品2の水平断面における流速分布図、(B)実施品2の垂直断面における流速分布図
【図11】第3実施形態に係る水道メータの側断面図
【図12】実施例に対する実験結果を示したグラフ
【図13】(A)実施品3の水平断面における流速分布図、(B)実施品3の垂直断面における流速分布図
【図14】他の実施形態(1)に係る水道メータの側断面図
【図15】(A)水平断面における流速分布図、(B)垂直断面における流速分布図
【図16】他の実施形態(2)に係る整流器の底面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
本発明の水道メータ10は、所謂、縦型軸流羽根車式の水道メータであって、水道管の途中に取り付けられるメータケース11にメータ本体12を組み付けてなる。
【0019】
メータケース11には、図1における左側方に水平に開放した流入口11Aと、右側方に水平に開放した流出口11Bとが形成され、その流入口11Aから下方に延びた下側部屋13(本発明の「導入路」に相当する)と、下側部屋13の上方に位置した上側部屋14とが備えられている。また、これら上側部屋14と下側部屋13とが、連通口16を介して上下方向で連通している。そして、上側部屋14の上面に形成された上面開口15にメータ本体12が上方から挿入組付され、そのメータ本体12の下端部分が連通口16の周縁部に接合されている。なお、本実施形態では、流入口11A及び流出口11Bの口径が、例えば、50mmとなっている。
【0020】
さて、メータ本体12のうち、符号50は筒型ハウジングであって、上下に並べた1対の円筒部50A,50Bの間を複数のリブ52で連結してなる。下側円筒部50Bは上下に開放しており、この下側円筒部50B内には、羽根車40の羽根43が収容されると共に、下側円筒部50Bの下部には、整流器20が接合されている。
【0021】
そして、図1の太線矢印で示したように、図示しない水道管を通って流入口11Aから略水平方向でメータケース11内に流れ込んだ水は、下側部屋13にて流れの向きが略垂直上方に変わり、整流器20、下側円筒部50Bの順に流れて、下側円筒部50Bの上面からリブ52,52の間を通って上側部屋14に進み、上側部屋14から流出口11Bに向かう。
【0022】
図1に示すように、上側円筒部50Aの下面には、下側円筒部50Bの中心に向かって先細りとなるように軸収容部53が垂下しており、軸収容部53の内側には、羽根車40から延びたシャフト41が収容されている。
【0023】
一方、上側円筒部50Aの上面には、メータユニット60が取り付けられ、このメータユニット60は、羽根車40の回転に連動して水道メータ10を通過した水の積算流量を計数して表示する。なお、メータユニット60の上部には図示しない上蓋が備えられており、上蓋を開けるとガラス窓62を通してメータユニット60に備えた積算表示部(図示せず)を見ることができる。
【0024】
図2には、羽根車40のみが示されている。同図に示すように羽根車40は、例えば12枚の羽根43を円筒体42の外周面から放射状に張り出して備える。各羽根43は、図2における上方、即ち下流側から見たときに、各羽根43の上端縁43Aに対して下端縁43Bが、反時計回りの方向に先行して、羽根43全体がねじれた形状になっている。これにより、羽根車の下方から羽根43に水圧がかかると、羽根43の下端縁43Bが先行するように羽根車40が回転する。即ち、羽根車40は上方から見たときに反時計回りの方向に回転する。
【0025】
羽根車40のうちシャフト41は円筒体42の底面中央部から上方に垂直に立ち上がっており、シャフト41と円筒体42の内側面との間がリブ46で補強されている。
【0026】
図1に示すように、シャフト41の芯部には、下端開放の空洞が形成され、その空洞内に、後述する整流器20に備えた支持ピン21が挿入されて、支持ピン21の先端が空洞の奥部に備えた軸受け47に突き当てられている。
【0027】
シャフト41の上端部とメータユニット60(詳細には、積算表示部)を構成する図示しないギアとの間は、例えば、マグネットカップリング(図示せず)によって連結されており、これにより羽根車40の回転がメータユニット60のギアの回転として伝達される。
【0028】
さて、整流器20は、円筒壁27の中心部に中心整流体22を備え、中心整流体22から円筒壁27に向かって例えば6枚の整流壁70が放射状に延びて円筒壁27の内部を6つの通過領域R1に区画した構造をなしている。
【0029】
円筒壁27は上下方向に開放しており、上面開口の内径が下面開口の内径よりも若干大きくなっている。中心整流体22は、円筒壁27の上端寄り位置に配置されている。中心整流体22は、下方に向かって丸みを帯びて先細りとなったドーム状をなす。また、ドームの中心部、即ち中心整流体22の中心部には、上下方向に貫通した支持孔が形成されており、この支持孔に軸芯部22Aが固定されている。そして軸芯部22Aの上端からは垂直に支持ピン21が起立しており、その支持ピン21は、前述の如くシャフト41の空洞内に挿入されて、羽根車40を回転可能に支持している。なお、軸芯部22Aからは、例えば6つのリブ26が放射状に延び、これらリブ26の延長線上に整流壁70が形成されている。
【0030】
複数の整流壁70は、円筒壁27の周方向で均等配置されており、上下方向に関しては円筒壁27の軸線方向に平行になっている。整流壁70の上端面は、円筒壁27及び中心整流体22の上端面と面一となっている。また、整流壁70の下端縁は、中心整流体22から円筒壁27に向かうに従って次第に下方へ向うように傾斜しており、円筒壁27側の下端縁は、中心整流体22の下端部よりも下側に位置している。これら隣り合った整流壁70,70と、円筒壁27及び中心整流体22とで囲まれた通過領域R1が整流器20(円筒壁27)の周方向に6つ並んで形成され、これら通過領域R1をそれぞれ流体が通過可能となっている。
【0031】
さて、図4(A)に示すように、整流器20のうち円筒壁27の下端部には下向規制壁80が一体形成されている。図1に示すように下向規制壁80は、円筒壁27から下方に延設されてメータケース11の下側部屋13内に突出しており、その突出量が、流入口11Aに最も近い位置から円筒壁27の周方向に沿った両側方に離れるに従って連続して徐々に小さくなっている。即ち、同図に示すように、下向規制壁80の下端縁がテーパー状に傾斜している。なお、下向規制壁80の下端縁の水平線に対する傾斜角度θ1は約10度となっている。
【0032】
また、図4(B)に示すように、整流器20のうち円筒壁27の下面開口の縁部からは円筒壁27の内側水平方向に内向規制壁81が張り出している。内向規制壁81は、各整流壁70の下端部より下側位置でかつ流出口11Bに近い側に偏在して設けられ、所謂、三日月状をなしている。詳細には、内向規制壁81は、円筒壁27のうち流出口11B側の約半周に亘って形成されており、その張り出し量は、流出口11Bに最も近い部分で最大であり、流出口11Bから円筒壁27の周方向に離れる(流入口11Aに近づく)に従って連続して徐々に小さくなっている。この内向規制壁81により、整流器20に形成された6つの通過領域R1のうち、流出口11Bに近い側に配置された3つの通過領域R1の一部がそれぞれ下方から覆われている。
【0033】
次に上記構成からなる本実施形態の動作を説明する。
図1の太線矢印で示したように、メータケース11の流入口11Aより下側部屋13に流入した水は、下側部屋13にて流れの向きが略垂直上方に変わり、整流器20の内側に形成された各通過領域R1を通って羽根車40へと向かう。そして羽根車40は、整流器20を通過した水を各羽根43で受けて回転する。羽根車40を通過した水は、筒型ハウジング50のリブ52,52の間からメータ本体12の側方に流出し、メータケース11の上側部屋14を経て流出口11Bへと向かう。また、羽根車40の回転は図示しないマグネットカップリングを介してメータユニット60に伝達され水の流量が計測表示される。
【0034】
[実施例1]
本発明に係る下向規制壁80及び内向規制壁81の効果を調べるべく以下の実験を行った。実験の手順は以下の通りである。
まず、上記第1実施形態と同一構造を有した本発明の実施品としての水道メータ10(以下、適宜「実施品1」という)と、整流器20に下向規制壁80及び内向規制壁81の何れも設けられていない点のみが実施品1と異なる従来の水道メータ(以下、適宜「従来品」という)とを製作した。
【0035】
次に、これら各水道メータ(実施品1、従来品)に対して、計量法の特定計量器検定検査規則に規定されている試験方法(JIS B 8570−2:2005の「7.2 器差試験」)で器差試験を行った。即ち、予め設定した流量で通水して、そのときの計量値(水道メータの表示値)を求めた。なお、本実施例では、定格最大流量Q3を40m3/h、限界流量Q4を50m3/h、定格最小流量Q1を0.4m3/h、転移流量Q2を0.64m3/hに設定した。
【0036】
設定流量毎に各水道メータ(実施品1、従来品)の器差を算出して図5に示すようにグラフ(器差曲線)化した。なお、同グラフには検定公差(器差の許容値)が太線で示されている。
【0037】
さらに、解析ソフトを使って各水道メータ(実施品1、従来品)に同一流量で通水した状態のシミュレーションを行い、メータケース11内における流速分布を解析した。なお、図6及び図7には、各水道メータのメータケース11内における流速分布が色の濃淡で示されている。
【0038】
[実験結果]
図5のグラフに基づき実施品1と従来品とを比較すると、従来品では、定格最小流量Q1から限界流量Q4までの全域に亘って、器差を検定公差以内とすることができたものの、1〜50m3/hの流量範囲で、器差が+0.7%〜−2%の間で変動し、器差曲線の直線性が低かった。これは、水の流れが整流器20の流出口11Bに近い側の通過領域R1に集中した結果、図6の流速分布図に示すように整流器20の周方向に並んだ各通過領域R1における流速にばらつきが生じ、羽根車40の回転が不安定になった為と推測される。
【0039】
これに対し、実施品1では、定格最小流量Q1から限界流量Q4までの全域に亘って器差を検定公差以内とすることができ、しかも、1〜50m3/hの流量範囲では、器差をほぼ0%とすることができた。即ち、器差曲線の直線性が従来品よりも向上することが分かった。これは、図7(B)に示すように、整流器20に下向規制壁80を設けたことで、整流器20の流入口11Aに近い側の通過領域R1に水が誘導されかつ、内向規制壁81を設けたことで、流出口11Bに近い側の通過領域R1において水が整流器20の中心(中心整流体22)側に誘導され、その結果、図7(A)に示すように、各通過領域R1における流速のばらつきが改善されて、羽根車40の回転が安定したからであると推測される。
【0040】
このことから、上述した下向規制壁80及び内向規制壁81を備えることで、水道メータ10の測定精度を従来よりも向上させることが可能であることが分かった。また、本実施形態の構成によれば、羽根車40の回転が安定するので、支持ピン21が突き当たった軸受け47の偏摩耗を防止して耐久性を向上させることが可能であると共に、圧力損失を低減することが可能である。
【0041】
[第2実施形態]
第2実施形態の水道メータ90は、図8に示されており、整流器20に内向規制壁81が設けられていない点のみが、上記第1実施形態とは異なる。その他の構成については上記第1実施形態と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
[実施例2]
本発明に係る下向規制壁80の効果を調べるべく、上記実施例1と同様の実験を行った。即ち、上記第2実施形態と同一形状とした本発明の実施品としての水道メータ90(以下、適宜「実施品2」という)に対して、上記実施例1と同様な方法で器差試験を行い、設定流量毎に器差を算出して図9に示すようにグラフ(器差曲線)化した。なお、図9には、実施品2と従来品の器差曲線が対比して示されている。
【0043】
また、解析ソフトを使って、実施品2に所定流量で通水した状態のシミュレーションを行い、メータケース11内における流速分布を解析した。なお、図10には、実施品2のメータケース11内における流速分布が色の濃淡で示されている。
【0044】
[実験結果]
図9のグラフに示すように、本実施品2によっても、流量1〜50m3/hの範囲で、器差を±0.5%以内とすることができ、器差曲線の直線性が従来品よりも向上することが分かった。これは、図10(B)に示すように整流器20に下向規制壁80を設けたことで、整流器20の流入口11Aに近い側の通過領域R1に水が誘導され、その結果、図10(A)に示すように整流器20の各通過領域R1における流速のばらつきが改善されて、羽根車40の回転が安定したからであると推測される。
【0045】
このことから、整流器20の下端部に下向規制壁80のみを設けた構成でも、水道メータ90の測定精度を従来よりも向上させることが可能であることが分かった。
【0046】
[第3実施形態]
第3実施形態の水道メータ95は、図11に示されており、整流器20に下向規制壁80が設けられていない点のみが上記第1実施形態とは異なる。
【0047】
[実施例3]
本発明に係る内向規制壁81の効果を調べるべく、上記実施例1と同様の実験を行った。即ち、上記第3実施形態と同一形状とした本発明の実施品としての水道メータ95(以下、適宜「実施品3」という)に対して、上記実施例1と同様な方法で器差試験を行い、設定流量毎に器差を算出して図12に示すようにグラフ(器差曲線)化した。なお、図12には、実施品3と従来品の器差曲線が対比して示されている。
【0048】
また、解析ソフトを使って、実施品3に所定流量で通水した状態のシミュレーションを行い、実施品3のメータケース11内における流速分布を解析した。なお、図13には、実施品3のメータケース11内における流速分布が色の濃淡で示されている。
【0049】
[実験結果]
図12のグラフに示すように、本実施品3では流量1.5〜50m3/hの範囲における器差を、従来品よりも小さく抑えることができることが分かった。
【0050】
このことから、整流器20の下端部に内向規制壁81のみを設けた構成でも、水道メータの測定精度を従来よりも向上させることが可能であることが分かった。
【0051】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0052】
(1)上記第1及び第2実施形態では、下向規制壁80の下端縁がテーパー状をなしていたが、図14に示す水道メータ100のように、下向規制壁85は、円筒壁27のうち流入口11Aに最も近い位置から円筒壁27の周方向に沿った両側方に向かうに従って下側部屋13への突出量が段階的に小さくなるように形成してもよい。
【0053】
解析ソフトを使って、この水道メータ100に所定流量で通水した状態のシミュレーションを行い、メータケース11内における流速分布を解析した結果、図15(B)に示すように、本実施形態の構成であっても、整流器20の流入口11Aに近い側の通過領域R1に水が誘導され、その結果、図15(A)に示すように、各通過領域R1における流速のばらつきが改善されることが分かった。従って、本実施形態の構成であっても羽根車40の回転を安定させることが可能であり、測定精度の向上を図ることが可能である。
【0054】
(2)図16に示すように、内向規制壁81は、円筒壁27のうち流出口11Bに最も近い位置から円筒壁27の周方向に沿った両側方に向かうに従って内側水平方向への張り出し量が段階的に小さくなるように構成してもよい。
【0055】
(3)下向規制壁80及び内向規制壁81を整流器20とは別部品で構成して、整流器20の下端部に嵌合可能な構造としてもよい。このようにすれば、従来の整流器を流用し、その整流器に下向規制壁80及び/又は内向規制壁81を嵌合するという容易な変更により、水道メータの測定精度を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
10,90,95,100 水道メータ(縦型水道メータ)
11 メータケース
11A 流入口
11B 流出口
13 下側部屋(導入路)
20 整流器
27 円筒壁
40 羽根車
80,85 下向規制壁
81 内向規制壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒壁の内部を放射状に区画してなる整流器を羽根車の下側同軸上に設けると共に、一端が前記整流器の下面開口に連通しかつ他端が水平方向を向いた流入口をなした導入路を有し、その流入口から導入路に流れ込んだ流体が、前記整流器、前記羽根車の順番に通過して流出口から排出される縦型水道メータにおいて、
前記整流器には、前記円筒壁における前記流入口側に偏在しかつ前記円筒壁から下方に延設されて前記導入路内に突出した下向規制壁が備えられたことを特徴とする縦型水道メータ。
【請求項2】
前記下向規制壁は、前記円筒壁のうち前記流入口に最も近い位置から前記円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って前記導入路内への突出量が連続して徐々に小さくなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の縦型水道メータ。
【請求項3】
前記下向規制壁は、前記円筒壁のうち前記流入口に最も近い位置から前記円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って前記導入路内への突出量が段階的に小さくなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の縦型水道メータ。
【請求項4】
前記整流器には、前記円筒壁のうち前記流入口とは反対側に偏在しかつ前記円筒壁の下端部から内側水平方向に張り出した内向規制壁が備えられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の縦型水道メータ。
【請求項5】
円筒壁の内部を放射状に区画してなる整流器を羽根車の下側同軸上に設けると共に、一端が前記整流器の下面開口に連通しかつ他端が水平方向を向いた流入口をなした導入路を有し、その流入口から導入路に流れ込んだ流体が、前記整流器、前記羽根車の順番に通過して流出口から排出される縦型水道メータにおいて、
前記整流器には、前記円筒壁のうち前記流入口とは反対側に偏在しかつ前記円筒壁の下端部から内側水平方向に張り出した内向規制壁が備えられたことを特徴とする縦型水道メータ。
【請求項6】
前記内向規制壁は、前記円筒壁のうち前記流入口に対して最も遠い位置から前記円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って内側水平方向への張り出し量が連続して徐々に小さくなるように形成されたことを特徴とする請求項4又は5に記載の縦型水道メータ。
【請求項7】
前記内向規制壁は、前記円筒壁のうち前記流入口に対して最も遠い位置から前記円筒壁の周方向に沿った両側方に向かうに従って内側水平方向への張り出し量が段階的に小さくなるように形成されたことを特徴とする請求項4又は5に記載の縦型水道メータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−15541(P2013−15541A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235561(P2012−235561)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2006−168974(P2006−168974)の分割
【原出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】