縫糸およびそれを用いた縫製品
【課題】本発明は、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタン類などの悪臭や、タバコ臭に多く含まれるアルデヒド類、酢酸などに対し、生地に消臭効能がなくても優れた消臭効果を発揮でき、洗濯後も消臭性の低下が殆どなく、工業用や家庭用縫製などの可縫性および縫い目の綺麗さに優れた縫糸に関するものである。
【解決手段】本発明の消臭効能を有するスパン縫糸は、上記課題を達成するため、次の構成を有する。すなわち、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた長繊維糸からなることを特徴とする縫糸である。
【解決手段】本発明の消臭効能を有するスパン縫糸は、上記課題を達成するため、次の構成を有する。すなわち、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた長繊維糸からなることを特徴とする縫糸である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、汗臭などの臭いを有効に消臭し、かつ洗濯後は、優れた回復性を有する縫糸およびそれを用いた縫製品に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、高度な消臭機能を有する繊維製品に対する要望がますます高まってきている。従来から繊維に消臭性能を付与する方法として、原糸、原綿を作製する段階で消臭剤を繊維ポリマー中に練り混んだり、後加工段階で消臭剤をバインダーで繊維表面に固着させたり、またグラフト重合方式で親水性の官能基をポリマーに導入し、脱臭を行う方法が行われている。
【０００３】
例えば、フタロシアニン多価カルボン酸を担持させた二酸化チタン微粒子を配合させたポリエステル繊維（特許文献１）や臭気成分を酸化分解する脱臭触媒を繊維に被覆させた消臭性繊維（特許文献２）等が提案されている。
【０００４】
しかしながら、消臭剤を繊維ポリマーに練り込む方法は、消臭剤の選択に当たって粒径、耐熱性、繊維ポリマーとの親和性などに制約があり、しかも繊維の物理的強度を損なうため、高強力の原糸を得るのが困難である。
【０００５】
一方、後加工方式で繊維に消臭機能を付与する方法も知られている。その付与方法としては、繊維形成後に繊維にグラフト重合する方法、グラフト重合後に酸性基を金属イオンで置換する方法等を挙げることができる（特許文献３〜６）。例えば、グラフト重合する方法は、セルロース繊維にカルボキシル基を含むビニル化合物をグラフト共重合させて、カルボキシメチル化セルロースを得るもの（特許文献３、４）である。カルボキシル基の導入により、繊維の親水性が向上すると共に、アンモニアやアミンなどの塩基性悪臭物質を吸着する機能を有する。しかし、このように得られた改質セルロース繊維は確かに一定の消臭効果があるものの、縫糸としては実用化が困難である。また、特許文献５、６にはグラフト重合後に酸性基を金属イオンで置換する方法が記載されているが、縫糸としての実用化は至っていない。
【特許文献１】特開平０７−８１２０６号公報
【特許文献２】特開平０７−１８９１２０号公報
【特許文献３】特開平０６−１８４９４１号公報
【特許文献４】特開平０６−１９２９６３号公報
【特許文献５】特許第２７０５３９６号公報
【特許文献６】特許第３２７９１２０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明の目的は、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタン類などの悪臭や、タバコ臭に多く含まれるアルデヒド類、酢酸などに対し、ある程度以上の量を使用することで優れた消臭効果を発揮でき、縫い糸としても品位に優れ、これを用いた縫製品が洗濯後も消臭性の低下が殆どなく、かつ工業用や家庭用縫製などにおいて可縫性および縫い目の綺麗さに優れた縫糸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明の消臭効能を有する縫糸は、上記課題を達成するため、次の構成を有する。すなわち、
（１）酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させたマルチフィラメントが１本以上含まれることを特徴とする縫糸。
（２）前記マルチフィラメントがポリアミド繊維であり、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換したものであることを特徴とする（１）に記載の縫糸。
【０００８】
（３）前記マルチフィラメントにヨリ係数ＫがＫ＝１．５〜５．５の範囲で下ヨリが付与されたあと、該下ヨリが付与された繊維が複数本合わさり、かつ下ヨリ方向とは反対方向に上ヨリが施されてなる縫糸であって、平均引っ張り強度が２．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上、３％伸長時の応力が０．２〜１．２ｃＮ／ｄｔｅｘ、かつ乾熱収縮率が４％以下であることを特徴とする前記（１）または（２）に記載の縫糸。
【０００９】
（４）前記（１）〜（３）のいずれかに記載の縫糸を１重量％以上使用した縫製品であって、アンモニア臭の消臭率が繰り返し３回まで９０％以上、且つ洗濯後の初回消臭率が９５％以上であることを特徴とする縫製品。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、生地に消臭機能がなくても、ある程度の量以上使用することにより、汗臭の主成分であるアンモニア、アミン類、また硫化水素、メルカプタン類等や、タバコ臭に多く含まれるアルデヒド類、酢酸などに対し、優れた消臭効果を発揮できる工業用縫製品や家庭用縫製品が得られる縫糸を提供することができる。
【００１１】
本発明の縫糸を使うことで、消臭加工した生地を使用しなくても消臭効果のある縫製品を得ることができ、デザインも制限されない。すなわち、本発明の縫糸で縫うことにより消臭機能を付与することが可能となり、加工の自由度が選べることでコスト削減にも繋がるのという利点がある。
【００１２】
また、縫糸として、十分のストレッチ性があることでスポーツウェア、インナー、Ｔシャツまたユニフォームなど幅広い生地への対応が可能である。さらに、縫糸として消臭機能の他に、工業ミシンに対応する際に、必要の特性である高強度、耐熱性も有し、縫製後の縫い目表面が綺麗に見え、品位が優れたものとなるなどの効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下、本発明の縫糸の最良の形態について説明する。
【００１４】
本発明の縫糸は、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させたマルチフィラメントを少なくとも１本を含む縫糸である。さらに、該マルチフィラメントはポリアミド繊維であり、該ポリアミド繊維は酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換したものであることが好ましい。
【００１５】
本発明に使用されるマルチフィラメントとしては、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系などの合成繊維、あるいは、レーヨンなどの半合成繊維などが用いられるが、酸性基を有するビニルポリマーをグラフト重合させることが技術的に容易であることからポリアミド繊維が好ましい。本発明でいうポリアミド繊維の主成分は、ポリアミドであれば特に限定されないが、繊維形成能および力学的特性の点でナイロン６６、ナイロン６が好ましい。また、本発明のポリアミド繊維には、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリメタアクリル酸およびその共重合体、ポリビニルアルコールおよびその共重合体、架橋ポリエチレンオキサイド系ポリマなどの吸湿・吸水物質やポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の汎用熱可塑性樹脂が本発明の目的を阻害しない範囲で含有されていてもよい。また、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料のほか従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤等が本発明の目的を阻害しない範囲で含有されていてもよい。
【００１６】
また、本発明におけるポリアミド繊維の断面形状は、丸断面、凸型断面、三角断面、マルチローバル断面、偏平断面、Ｈ型断面、π型断面、Ｃ型断面その他公知の異形断面でもよい。また、ポリアミド繊維を複数本使用する場合には、２種類以上の異形断面を混繊した断面ミックスマルチフィラメントであってもよい。
【００１７】
本発明におけるポリアミド繊維は延伸糸であっても良いし、半延伸糸（ＰＯＹ）であっても良い。また、通常の仮撚工程で作った仮撚加工糸であっても良い、仮撚加工糸とした場合、エラスチック性に富み、ボリューム感のあるミシン糸が生地によくマッチし、機能的でソフトな縫い目をつくることができ、縁縫いや飾り縫いなど、用途も多様となる。
【００１８】
また、該マルチフィラメントの総繊度としては、好ましくは３０〜３００ｄｔｅｘの範囲が、マルチフィラメント１本あたりのフィラメント本数は１２〜２００フィラメントの範囲が適している。例えば、該長繊維フィラメント糸条の総繊度が３３ｄｔｅｘでは１２本〜３０フィラメントが、４４ｄｔｅｘでは１５〜２８フィラメント、５６ｄｔｅｘでは１８〜４８フィラメントが、１００ｄｔｅｘでは２４〜７２フィラメントの糸構成であることがより好ましい。これは単繊維繊度が太くなると縫糸が硬くなり、縫い目が生地から浮き出るからである。一方、細くなると撚糸工程から最後の仕上げ工程までにおいて、毛羽発生したり強力低下を生じるので、上記の範囲がバランスの取れた条件である。
【００１９】
さらに、マルチフィラメントを構成する単糸の本数は、多い方はコアーヤーンの曲げやねじり特性が柔らかくなり可縫性が高くなり、縫い目のパッカリングが向上するなど好ましい使い方であるが、逆に染色性の濃色が得られにくくなることがある。
【００２０】
以下、本発明に使用されているマルチフィラメントの消臭機能加工（化学改質）について、さらに詳細に説明する。
本発明におけるマルチフィラメントの機能加工（化学改質）は、消臭機能を有する酸性基を有するビニルモノマーを、グラフト共重合によりマルチフィラメントを構成する素材（ポリマー）に導入する方法が用いられる。
【００２１】
グラフト共重合により導入する酸性基を有するビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸やそれらのエステルなどが好ましく挙げられる。素材（ポリマー）に共重合された酸性基により、アンモニアや硫化水素、アミン等の悪臭物質を吸着し、消臭することができる。
【００２２】
その理由としては、繊維の分子中に酸性基を導入したことから、アンモニアやアミン等の塩基性の悪臭物質に対する吸着性に優れたもので、脱臭性繊維としての作用を示すものである。即ち、アンモニア基（−ＮＨ４）はかかる酸性基にて捕捉されてアンモニア臭が消臭されることになる。
【００２３】
なお、中性洗剤にて洗濯することにより前記反応を元に戻すことが容易にできる。
【００２４】
グラフト共重合する際にはラジカル重合開始剤および還元性物質を使用し、グラフト重合反応を行うことが好ましい。
【００２５】
グラフト共重合に使用するラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではなく、公知のものなどから任意に選択できるが、中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの如き酸化力の強い物質が好ましく挙げられる。
【００２６】
また、還元性物質としても特に限定されるものではなく、公知のものなどから任意に選択できるが、中では、硫化水素、ヨウ化水素、水素化アルミニウムリチウム、二酸化イオウ、亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウムなどが好ましく挙げられる。
【００２７】
本発明においては、グラフト重合の際に用いる酸性ビニルモノマーの極性を被グラフト物に近づけ、且つ２種以上混合することにより、さらには特に好ましくはラジカル開始剤として過酸化物と還元性物質を同時に用いることにより従来の２段処理の如き煩雑さがなくなり、グラフト重合時間が短縮するとともに、グラフト率が向上出来る効果が得られる。
【００２８】
本発明においては、さらに、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換したものであることが好ましい。
【００２９】
例えば、ポリアミド繊維にグラフト重合し、さらに該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換する方法としては、上記のように酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、得られた繊維または繊維構造物を通常の染色工程により染色し、しかる後、アルカリ剤で処理してから、繊維中の酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンを含む化合物を含有する液に浸し、繊維を処理する。なお、染色工程がアルカリ条件下で行なわれる場合には、アルカリ剤による処理を必要としない。
【００３０】
金属イオン化合物の濃度は、耐久性のある脱臭効果を付与する一方、繊維強力の低下や色相の変化を防ぐ観点から、固形分換算で繊維に対して０．０５〜３重量％、さらには０．１５〜０．６重量％付着させるのが好ましい。
【００３１】
この置換処理は、通常の仕上加工工程に含めて行なってもよいし、仕上加工とは独立の工程としてもよい。後者の場合には、特定の金属イオンを含んだ処理浴中で５０〜８０℃、２０秒〜３分程度処理するのが好ましい。
【００３２】
本発明において、グラフト重合のグラフト率を５％〜２５％とすれば目的とする消臭性能を発揮できる。５％以下になると、目的とする消臭性能を達成するため縫糸としての使用量を大幅に増加させなければならなくなり、好ましくない。２５％を超えると、風合いの粗硬化、および染色時の染色ムラに繋がるので好ましくない。さらに、グラフト率は８％〜２２％の方がより好ましい。
本発明における機能加工（化学改質）は、ヨリ加工未実施のマルチフィラメントに直接施してもよいが、工程通過性を考慮すると、下ヨリをかけた後に、もしくは下ヨリ及び上ヨリをかけた後に、通常の巻き返し工程でチーズリワインドした後に施した方が好ましい。
なお、本発明においては機能加工（化学改質）を施すマルチフィラメントはポリアミド繊維が好ましいが、本発明におけるポリアミドマルチフィラメントの製造方法については次のとおりである。まず、常法によりポリアミドを溶融紡糸して未延伸糸を得、一旦パッケージに巻き取る。この未延伸糸を室内常温湿で２〜２０日間エージングした後、該未延伸糸１．１〜２．５倍に延伸して、延伸糸を得る。このときのヒーターの温度を５０〜１８０℃に加熱しておく。得られた延伸糸を巻き取り、ポリアミドルチフィラメントを得る。
本発明の縫糸は、前記機能加工（化学改質）したマルチフィラメントを少なくとも１本含むものであり、消臭機能の点からは機能加工（化学改質）したマルチフィラメントのみで構成されることが最も好ましいが、他の特性とのバランスを考慮して、本発明においてはその機能加工（化学改質）したマルチフィラメントのみならず、他の未改質（機能加工していない）のマルチフィラメントをも併せて用いることができる。これらマルチフィラメントに下ヨリを付与した後、このヨリ（下ヨリ）方向とは反対方向に、マルチフィラメントを２〜４本合わせて上ヨリをかけて撚糸することが好ましい。上ヨリをかける際のマルチフィラメントの本数が２本未満であると、縫糸としての強度が得られず、縫製中の糸切れの原因となるため、好ましくない。逆に本数が４本以上であると撚糸が困難であり、また糸の均一性が損なわれ可縫性が低下するため好ましくない。
本発明の縫糸用の下ヨリを施したマルチフィラメントを作製するに当たっては、マルチフィラメントのヨリ方向（下ヨリ方向）はＳ方向でもＺ方向でもかまわない。しかし、最終用途が縫糸であることから、下ヨリ方向はＳ方向が好ましく、ヨリ係数ＫがＫ＝１．５〜５．５の範囲で加撚したものが好ましい。下ヨリ方向をＳ方向とした場合、複数本引き揃えて上ヨリを下ヨリ方向とは逆方向のＺ方向に撚糸して（上ヨリを施して）、本発明の縫糸とする。ヨリ係数が上記の範囲に未満になると、糸の締まりが悪く、毛羽が多くなり、縫い目の品位、強力の低下に繋がるので好ましくない。反面、ヨリ係数が上記の範囲を超えると縫糸の強力が増加するが、仕上げ後の縫糸の硬直性に繋がり、可縫性に影響をもたらすことで好ましくない。さらには、縫い目の品位、可縫性を鑑み、Ｋ＝２．５〜４．５の範囲であることがより好ましい。
【００３３】
なお、ヨリ係数Ｋ ＝Ｔ／（Ｎｅ）１／２
Ｔ：糸条の１インチ（２．５４ｃｍ）当たりの撚数
Ｎｅ：糸条の英式綿番手
で表される。
【００３４】
また、上ヨリ数は上述した下ヨリ数の６０％〜９５％が好ましい。さらに好ましくは７０％以上、８５％以下である。上ヨリ数が下ヨリ数の６０％未満であると、繊維同士の空隙が大きくなり、縫製中にミシン針がそこを通過して糸切れの原因となり好ましくない。また、上ヨリ数が下ヨリ数の９５％より多くなると、トルクのバランスが悪く、縫製時の目飛びの原因となるため、好ましくない。
本発明の製造方法における下ヨリと上ヨリ付与の方法は、特に限定されるものではなく、ダブルツイスター、ダウンツイスターなどの通常の方法から任意に選択できる。
【００３５】
ヨリ工程で下ヨリ、上ヨリが施された後、収縮止めあるいはヨリ後の残留トルク消滅を目的に熱セットを施すことが好ましい。
セット後はソフト巻きを施したチーズを作成し、前述した機能加工（化学改質）方法で、機能加工を施した後、チーズ染色加工を施し、仕上げ巻きによって縫糸の製品が得られる。
【００３６】
また、事前に下ヨリを付与する前のマルチフィラメントに前述した機能加工（化学改質）方法で、機能加工を施した後、さらに他の未改質同様のマルチフィラメントと併せて上ヨリを付与した後、チーズ染色加工を施し、仕上げ巻きによって縫糸の製品を得る方法も良い。その場合、同様なポリマー構成であれば、染めむらがなくなり、好ましい。消臭効果について、後ほどの実施例で証明したように、１本以上の改質繊維があれば十分の消臭効果が得られる。
【００３７】
本発明の縫糸は、好ましい構成として、前述する化学改質に適応するポリアミド繊維から構成されてなるものであるが、縫糸としての平均引っ張り破断強度は２．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上が好ましく、さらに好ましくは３．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上である。一般的に、高い方が耐久性や可縫性が好ましく、厚地やジーンズの用途では３．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上が好ましい。また、通常の衣料用生地に用いる縫糸としては、２．５ｃＮ／ｄｔｅｘもあれば充分である。しかし、逆に６．０ｃＮ／ｄｔｅｘより高くなると、縫製品に大きな負荷をかかり、縫い目付近の生地を痛めるため好ましくなく、６．０ｃＮ／ｄｔｅｘ以下が好ましい。
【００３８】
また、縫糸として、破断強度が２．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上を達成するためには、前述したヨリ係数の選定範囲とすることによって実現できるものである。なお、ここで言及した平均引っ張り破断強度は後述（実施例の欄（２））する測定方法で求める。
さらに、本発明の縫糸は３％伸長時の応力が０．２〜１．２ｃＮ／ｄｔｅｘであることが好ましい。これは特に目飛びの発生に関係し、３％伸長時の応力を大きくする程、縫製時に針糸のループ形状が大きくなり安定化し、ルーパーによる下糸通しミスがなくなることに繋がるので０．２ｃＮ／ｄｔｅｘ以上にすることが好ましい。また、１．２ｃＮ／ｄｔｅｘを超えると、ループ形状が小さくなり、あるいは不安定な形になることにより、目飛びの現象に繋がるので、好ましくない。
さらにまた、本発明の縫糸は、１８０℃における乾熱収縮率は４％以下が好ましい。これは縫製後にアイロンなどの熱処理を受けた時、又は洗濯された時、縫製品が収縮を起こさないようにし、パッカリングを防止して縫製品の品質を著しく低下させることを防止するためである。なお、ここで言及した乾熱収縮率は後述（実施例の欄（１））する測定方法で求める。
ここで言及した４％以下の乾熱収縮率を実現できたのは、前述した機能加工によるものである。すなわち、通常のポリアミドマルチフィラメントからなる縫い糸について、ポリアミド繊維は収縮が高いという特徴があるため、縫い糸としても収縮が高くなる傾向がある。しかし、本発明における機能加工によれば、消臭効果を付与するだけでなく、ポリアミドマルチフィラメント用いた場合における縫糸の収縮を抑えることができるのである。
【００３９】
また、本発明の縫糸の毛羽数としては、１ｍｍ以上３ｍｍ未満の毛羽で２０〜１５０個／１０ｍの範囲の毛羽指数を有することが好ましい。１ｍｍ以上３ｍｍ未満の毛羽数がこの範囲であると、縫い目が綺麗なほか、滑り特性が安定化し目飛び糸切れが減少する等安定した可縫性を得ることができる。該毛羽指数が２０個／１０ｍ以下とすると、針熱の散熱がうまくいかずに、高速縫製において耐熱性が低下するなどの欠点が出てくる。一方、１５０個／１０ｍを超えると、滑り特性が不安定となり目飛び糸切れが増加し、さらに毛羽が目立ち過ぎて、縫い目の品位が悪くなる。
【００４０】
また、３ｍｍ以上５ｍｍ未満の毛羽が１〜１０個／１０ｍであることが好ましい。３ｍｍ以上５ｍｍ未満の毛羽が１個／１０ｍ未満であると、縫製時に針熱を放熱する効果が低く、縫糸切れの原因となるため、好ましくない。一方、３ｍｍ以上５ｍｍ未満の毛羽が１０個／１０ｍより多くなると、強力のバラツキが大きくなり、縫製時に糸切れなどのトラブルに繋がるので、好ましくない。
【００４１】
また、５ｍｍ以上の毛羽が３個／１０ｍ以下であることが好ましい。５ｍｍ以上の毛羽が３個／１０ｍ以上であると、強力のバラツキが大きくなり、縫製中や縫い目の糸切れの原因となるため好ましくない。
本発明の製造方法においては、マルチフィラメントに機能加工を施した後、チーズ染色することが好ましい。チーズ染色の方法は、とくに限定されるものではなく、ポリエステル縫糸だと分散染料による染色やカチオン染色など、ナイロン縫糸だと反応染料や酸性染料などの方法から任意に選択できる。
【００４２】
また、本発明の縫糸を製造する方法において、チーズ染色後に仕上げ油剤を付与することが好ましい。仕上げ油剤の付与方法はとくに限定されるものではないが、毛羽の発生が少なく余計な油剤を吸い上げる心配がないオイリングローラによる油剤の付与方法がより好ましい。
また、本発明の縫糸を製造する方法における仕上げ油剤の種類はとくに限定されるものではなく、公知の仕上げ油剤から任意に選択できるが、平滑性の良さや低コストの面からシリコンを主体とした仕上げ油剤を用いることがより好ましい。
本発明の縫糸を後述する評価方法（実施例の欄（５））で消臭効果を確認しところ、消臭性能のない生地に、縫製品全重量に対して１重量％以上を縫製することが好ましい。１重量％以上とすることにより、汗臭の主成分であるアンモニア臭に対する消臭率が、繰り返し測定３回まで９０％以上を保持し、５回まででも８０％以上を保持と優れた性能を有する。さらに、一般の家庭洗濯（１回）後の消臭率が９５％以上と、洗濯を行っても優れた消臭性能を示す。さらに好ましくは５重量％以上である。
なお、本発明の縫糸を用いて縫製品を作製する場合には、汗をかきやすい箇所や汚れやすい箇所に本発明の縫糸を用いることが効果的である。例えば、衣服の脇の下や襟などである。
【実施例】
【００４３】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、測定方法は以下のとおりとした。
【００４４】
（１）見掛け繊度、番手、乾熱収縮率、沸騰水収縮率
ＪＩＳ Ｌ１０１３（１９９９）に準拠して１水準につき２０サンプル測定し、それぞれについて、その平均値を算出した。
【００４５】
（２）平均引っ張り破断強度、平均引っ張り破断伸度
計測器工業（株）製ＳＴＡＴＩＭＡＴ ＭＥにより、つかみ長２００ｍｍ、引張速度１００％／ｍｉｎで、１水準につき２０サンプルの測定を行い、平均引っ張り破断強力（ｃＮ）及び平均引っ張り破断伸度（％）を求めた。
【００４６】
平均引っ張り破断強度（ｃＮ／ｄｔｅｘ）は平均引っ張り破断強力と（１）で測定した見掛け繊度から算出した。
【００４７】
（３）毛羽数
ＪＩＳ Ｌ１０９５（１９９９）（一般紡績糸試験法）９．２２ Ｂ法に準じ、測定装置は敷島テクノ（株）製 Ｆ−ＩＮＤＥＸ ＴＥＳＴＥＲを用いて測定した。
速度３０ｍ／ｍｉｎで解舒しながら静電式コンデンサを使用して、各々の糸の直径に対して１ｍｍ以上、３ｍｍ以上及び５ｍｍ以上はみ出ている表面毛羽本数を数えたものである。表中のデータは長さ１０ｍ当たりの毛羽数（個／１０ｍ）であり、各毛羽長さについてそれぞれ１０回測定した平均値である。
【００４８】
（４）消臭性能
［消臭評価用サンプル作成］
消臭効果のないベース布であるポリエステル標準織物タフタに対し、本発明の縫糸を１重量％以上の割合で簡易縫製品を作成し、消臭効果を確認した。本評価には、約１．３ｇ（１５ｃｍ×１５ｃｍ）のポリエステル標準織物タフタに、重量％で換算した縫糸長さで縫製し、準備した。
【００４９】
［アンモニア臭］
５００ｃｃのふたつきポリエチレン容器に０．２８％のアンモニア水溶液を８０μｌ滴下し、次いで同容器に上記の試料を投入して密閉し、アンモニアを気化させた。初期アンモニア濃度及び２０分室温で放置後の容器から採取した気体中の残存アンモニア濃度を（株）ガステック製ガス検知管を用いて測定した。
初期アンモニア濃度は約２００ｐｐｍであり、２０分後の値が２０ｐｐｍ以下であれば、良好なアンモニア脱臭性を有する。
【００５０】
［硫化水素臭］
５００ｃｃのふたつきポリエチレン容器に０．５％の硫化ナトリウム水溶液を３０μｌ、０．５％の硫酸１００μｌを滴下し、次いで同容器に上記の試料を投入して密閉し、硫化水素ガスを発生させた。初期硫化水素濃度及び２０分室温で放置後の容器から採取した気体中の残存硫化水素濃度を（株）ガステック製ガス検知管を用いて測定した。
【００５１】
初期硫化水素濃度は約２０ｐｐｍであり、２０分後の値が２ｐｐｍ以下であれば、良好な硫化水素脱臭性を有する。
【００５２】
［消臭率、繰り返し測定］
消臭率は、以下の式により算出した。
【００５３】
消臭率＝｛１−（残留ガス濃度）／（初期ガス濃度）｝×１００
また、繰り返し測定については、試料を１回測定したあと、洗濯せずにそのまま、次の５００ｃｃのふた付きポリエチレン容器に入れ、同じ条件で連続的に測定するものである。
【００５４】
［洗濯条件］
洗濯は、一般家庭で用いられる中性洗剤を使い、２槽式洗濯機で、洗濯（水温４０℃）×５分×１回、すすぎ（水温４０℃）×５分×２回で行った。浴比は試料：水＝１：３０（重量比）とした。
【００５５】
なお、洗濯後の消臭率測定は、洗濯後のサンプルを自然風乾したあと、そのまま同じ方法再測定を行った。
【００５６】
（６）縫製性評価方法
Ａ．高速可縫性（前進縫い）：Ｔ／Ｃブロード生地を１０枚重ねて２ｍ縫製可能なミシン機で、糸切れがなく縫製できる最高回転数（針／分）を測定した。測定は、１０００〜５０００（針／分）の範囲でテストした。
【００５７】
Ｂ．バック可縫性（バック縫い）：Ｔ／Ｃブロード生地を４枚重ね、ミシン機で１５００（針／分）で１ｍ縫製したときにおける糸切れ回数（平均回数／１０回）を測定した。評価基準は下記の通りとした。
× ：縫製不可もしくは６回以上
△ ：３〜５回
○ ：１〜２回
○○：０回。
【００５８】
Ｃ．ジグザグステッチ縫い（家庭用途）：Ｔ／Ｃブロード生地を２枚重ね、ミシン機でジグザグステッチ（縫いピッチ１．４ｍｍ、ジグザグ幅：４ｍｍ）で０．５ｍ縫製したときにおける、縫い目欠点（目飛び、縫い目不良個数）の発生回数を測定した。針回転数は３００ｓｐｍ（ステッチ／ｍｉｎ）とした。評価基準は下記の通りとした。
× ：６回以上
△ ：３〜５回
○ ：１〜２回
○○：０回。
【００５９】
Ｄ．縫い目品位：Ａ項の高速可縫性（前進縫い）評価において、１０００（針／分）の回転数で縫製したサンプルを目視評価した。
△ ：毛羽が多い。
○ ：毛羽を発見できる。
○○：殆ど毛羽が目立たない。
【００６０】
実施例１、４及び参考例１
まず、強度５．４ｃＮ／ｄｔｅｘのポリアミドフィラメント１１０Ｔ−３０ｆの糸条をダウンツイスターにおけるヨリ係数Ｋ＝４．０にヨリをかける。ヨリ方向はＳ方向とした。その後のヨリ止め処理として、９５℃で３０分間スチームセットを施した。
【００６１】
そして、該マルチフィラメントの３本縫糸を製造するため、ヨリ方向をＺ方向、上ヨリ数を下ヨリ係数の８０％に設定して、上記の下ヨリ糸３本をダウンツイスターにて撚糸し、３子ヨリ糸を製造した。その後のヨリ止め処理として、９５℃で３０分間スチームセットを施した。
【００６２】
続いてソフトチーズに巻き上げた後、通常のチーズ染色機に詰め込み、常法により精練した後、当該３子ヨリ糸に対しアクリル酸４ｗｔ％、メタクリル酸を１２ｗｔ％、過硫酸ナトリウムのホルマリン縮合物を３ｗｔ％含む処理浴を調製し、４０℃から１℃／分の速度で昇温し、８０℃で６０分間液中加熱処理を施し、グラフト加工した。
【００６３】
続いて、１３０℃で４０分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、縫糸を製造した。得られた縫糸を２ｍ（実施例１）、０．７３ｍ（実施例４）、０．１８ｍ（参考例１）使用してポリエステル織物タフタに縫製し、評価した。
【００６４】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表１、２に示した。
【００６５】
実施例２
実施例１と同様に作製したポリアミドフィラメントの３子撚り糸をソフトチーズに巻き上げた後、染色機に詰め込み、常法により精練した後、当該３子撚り糸に対しアクリル酸４ｗｔ％、メタクリル酸を１２ｗｔ％、過硫酸アンモニウムを１ｗｔ％、亜硫酸ナトリウムのホルマリン縮合物を３ｗｔ％含む処理浴を調製し、４０℃から１℃／分の速度で昇温し、８０℃で６０分間液中加熱処理を施しグラフト加工した。
【００６６】
次にこのものを水洗したあと、同様にパッケージ染色機で炭酸ナトリウムが被処理物に対し２０ｗｔ％になるように処理浴を調整し、８０℃×３０分間、加熱処理後、繊維内部に導入したカルボキシル基をＮａに置換させた。
【００６７】
その後、同様にパッケージ染色機で硫酸亜鉛が被処理物に対し２０ｗｔ％になるように処理浴を調整し、８０℃×３０分間、置換反応をさせた。次に、１３０℃で４０分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、縫糸を製造した。
【００６８】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表１に示した。
【００６９】
実施例３
実施例１と同様に作製したポリアミドフィラメントの３子撚り糸をソフトチーズに巻き上げた後、染色機に詰め込み、常法により精練した後、当該３子撚り糸に対しアクリル酸４ｗｔ％、メタクリル酸を１２ｗｔ％、過硫酸アンモニウムを１ｗｔ％、亜硫酸ナトリウムのホルマリン縮合物を３ｗｔ％含む処理浴を調製し、４０℃から１℃／分の速度で昇温し、８０℃で６０分間液中加熱処理を施しグラフト加工した。
【００７０】
次にこのものを水洗したあと、同様にパッケージ染色機で炭酸ナトリウムが被処理物に対し２０ｗｔ％になるように処理浴を調整し、８０℃×３０分間、加熱処理後、繊維内部に導入したカルボキシル基をＮａに置換させた。
【００７１】
その後、同様にパッケージ染色機で硫酸銅が被処理物に対し１５ｗｔ％になるように処理浴を調整し、８０℃×３０分間、置換反応をさせた。
【００７２】
次に、１３０℃で４０分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、縫糸を製造した。
【００７３】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表１に示した。
【００７４】
実施例５、６
実施例１と同様に作製したグラフト化ナイロンマルチフィラメントを用いて、下撚り条件以外は実施例１と同じである。撚糸条件につき、下ヨリ係数Ｋ＝１．０（実施例５）、６．０（実施例６）を施して、評価した。
【００７５】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表１、２に示した。
【００７６】
実施例７
強度５．４ｃＮ／ｄｔｅｘのポリアミドフィラメント１１０Ｔ−３０ｆの糸条３本それぞれをダウンツイスターにおけるヨリ係数Ｋ＝４．０にヨリをかける。ヨリ方向はＳ方向とした。その後のヨリ止め処理として、９５℃で３０分間スチームセットを施した。
【００７７】
続いてその中の１本をソフトチーズに巻き上げた後、通常のチーズ染色機に詰め込み、常法により精練した後、該糸に対しアクリル酸４ｗｔ％、メタクリル酸を１２ｗｔ％、過硫酸ナトリウムのホルマリン縮合物を３ｗｔ％含む処理浴を調製し、４０℃から１℃／分の速度で昇温し、８０℃で６０分間液中加熱処理を施し、グラフト加工した。
【００７８】
続いて、残りの２本と合わして、ヨリ方向をＺ方向、上ヨリ数を下ヨリ係数の８０％に設定して、上記の下ヨリ糸３本をダウンツイスターにて撚糸し、３子ヨリ糸を製造した。その後のヨリ止め処理として、９５℃で３０分間スチームセットを施した。
【００７９】
１３０℃で４０分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、縫糸を製造した。続いて、得られた縫糸を２ｍを使用してポリエステル織物タフタに縫製し、評価した。
【００８０】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表２に示した。
【００８１】
比較例１
固有粘度（ＩＶ）が０．６７±０．０２のホモＰＥＴを溶融し、紡糸温度３００℃で３６孔の口金で吐出し、紡糸速度１０００ｍ／ｍｉｎで引き取り、３３６Ｔ−３６ｆの未延伸糸ＵＹを得た。さらに、ホットロール３段式の延伸機を用いて、ホットロール温度が７５℃、トータル延伸倍率６倍で延伸し、次いで一旦引き取ることなく、連続して７％でリラックスして巻き取り、１１０デシテックス、３０フィラメントの延伸糸を得た。該延伸糸を用いて、実施例と同じ撚糸条件、染色条件で縫糸を仕上げた。
【００８２】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表２に示した。
【００８３】
比較例２
実施例１の機能加工をせずに、それ以外は同じプロセスで作製したナイロンマルチフィラメントを用いて、評価した。
【００８４】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表２に示した。
【００８５】
【表１】
【００８６】
【表２】
【００８７】
実施例１の縫糸は、高速可縫性、自動機対応などのあらゆる工業用途において優れた性能をもっており、さらに家庭用などで使われている複雑なジグザグステッチにも対応可能であった。また、消臭効果においては、消臭評価時に使用した縫糸の量が５．５重量％であるが、アンモニア臭、硫化水素に対しする繰り返し消臭率が３回まで９０％以上であり、優れた消臭効果を持っていることが分かった。さらに洗濯したところ、元のレベルの消臭率に回復した。
【００８８】
また、実施例２の縫糸の消臭効果においては、アンモニアについてやや実施例１より劣るものの、硫化水素への消臭効果については実施例１より優れた結果となった。
【００８９】
実施例３の縫糸の消臭効果においては、アンモニアについてやや実施例１より劣るものの、硫化水素への消臭効果については実施例１より優れた結果となった。
【００９０】
実施例４について、消臭評価時に使用した縫糸の量が２重量％となり、アンモニア、硫化水素についてやや実施例１より劣るものの、十分効果があるとも言える。
【００９１】
実施例５については、消臭効果には問題はないが、下ヨリ係数Ｋが低いため、糸同士の結束の良くなくて、毛羽が発生してしまい、また縫糸の強度が低くなり、可縫性評価では糸切れによる高速可縫性には低い結果となっている。
【００９２】
一方、実施例６では、下撚りが多めに入っているため、縫糸が硬直になり、やはり可縫性評価はやや低い結果となっている。
【００９３】
実施例７では、グラフト化したナイロン糸は１本しか入れていないが、消臭効果につき問題ないレベルであった。
【００９４】
比較例１では高速可縫性などが全く問題ないが、消臭効果ではが初回から９０％を下回って、消臭効果は非常に低いことが分かった。
【００９５】
比較例２では、通常のナイロンであるため、若干消臭効果があるものの、実施例１〜６と比較し、劣る結果となった。また、前述したような機能加工は施していないため、収縮がわりと高くて、縫い目品位の評価では良い結果が得られなかった。
【００９６】
参考例１について、消臭評価時に使用した縫糸の量が０．５重量％であるため、消臭効果はあるものの実施例１よりは劣る結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【００９７】
本発明によれば、生地に消臭効能がなくても、縫糸により消臭効果を発揮できる。さらに、縫糸として高強度、優れた耐熱性による工業用における高速可縫性、自動機対応縫製性、バック縫製、ならびに家庭用における、ジグザグステッチなど複雑のパターンにも対応できる。さらに縫い目の綺麗さなどを要求される一般衣料用として、例えばハリ・腰風合いに優れた特徴を活かした高級婦人衣料や、ストレッチ性を要求されるスポーツウェア、紳士パンツなど、さらに洗濯の回数が比較的に少ないユニフォームなどに、優れた消臭機能を付与することができるものである。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、汗臭などの臭いを有効に消臭し、かつ洗濯後は、優れた回復性を有する縫糸およびそれを用いた縫製品に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、高度な消臭機能を有する繊維製品に対する要望がますます高まってきている。従来から繊維に消臭性能を付与する方法として、原糸、原綿を作製する段階で消臭剤を繊維ポリマー中に練り混んだり、後加工段階で消臭剤をバインダーで繊維表面に固着させたり、またグラフト重合方式で親水性の官能基をポリマーに導入し、脱臭を行う方法が行われている。
【０００３】
例えば、フタロシアニン多価カルボン酸を担持させた二酸化チタン微粒子を配合させたポリエステル繊維（特許文献１）や臭気成分を酸化分解する脱臭触媒を繊維に被覆させた消臭性繊維（特許文献２）等が提案されている。
【０００４】
しかしながら、消臭剤を繊維ポリマーに練り込む方法は、消臭剤の選択に当たって粒径、耐熱性、繊維ポリマーとの親和性などに制約があり、しかも繊維の物理的強度を損なうため、高強力の原糸を得るのが困難である。
【０００５】
一方、後加工方式で繊維に消臭機能を付与する方法も知られている。その付与方法としては、繊維形成後に繊維にグラフト重合する方法、グラフト重合後に酸性基を金属イオンで置換する方法等を挙げることができる（特許文献３〜６）。例えば、グラフト重合する方法は、セルロース繊維にカルボキシル基を含むビニル化合物をグラフト共重合させて、カルボキシメチル化セルロースを得るもの（特許文献３、４）である。カルボキシル基の導入により、繊維の親水性が向上すると共に、アンモニアやアミンなどの塩基性悪臭物質を吸着する機能を有する。しかし、このように得られた改質セルロース繊維は確かに一定の消臭効果があるものの、縫糸としては実用化が困難である。また、特許文献５、６にはグラフト重合後に酸性基を金属イオンで置換する方法が記載されているが、縫糸としての実用化は至っていない。
【特許文献１】特開平０７−８１２０６号公報
【特許文献２】特開平０７−１８９１２０号公報
【特許文献３】特開平０６−１８４９４１号公報
【特許文献４】特開平０６−１９２９６３号公報
【特許文献５】特許第２７０５３９６号公報
【特許文献６】特許第３２７９１２０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明の目的は、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタン類などの悪臭や、タバコ臭に多く含まれるアルデヒド類、酢酸などに対し、ある程度以上の量を使用することで優れた消臭効果を発揮でき、縫い糸としても品位に優れ、これを用いた縫製品が洗濯後も消臭性の低下が殆どなく、かつ工業用や家庭用縫製などにおいて可縫性および縫い目の綺麗さに優れた縫糸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明の消臭効能を有する縫糸は、上記課題を達成するため、次の構成を有する。すなわち、
（１）酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させたマルチフィラメントが１本以上含まれることを特徴とする縫糸。
（２）前記マルチフィラメントがポリアミド繊維であり、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換したものであることを特徴とする（１）に記載の縫糸。
【０００８】
（３）前記マルチフィラメントにヨリ係数ＫがＫ＝１．５〜５．５の範囲で下ヨリが付与されたあと、該下ヨリが付与された繊維が複数本合わさり、かつ下ヨリ方向とは反対方向に上ヨリが施されてなる縫糸であって、平均引っ張り強度が２．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上、３％伸長時の応力が０．２〜１．２ｃＮ／ｄｔｅｘ、かつ乾熱収縮率が４％以下であることを特徴とする前記（１）または（２）に記載の縫糸。
【０００９】
（４）前記（１）〜（３）のいずれかに記載の縫糸を１重量％以上使用した縫製品であって、アンモニア臭の消臭率が繰り返し３回まで９０％以上、且つ洗濯後の初回消臭率が９５％以上であることを特徴とする縫製品。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、生地に消臭機能がなくても、ある程度の量以上使用することにより、汗臭の主成分であるアンモニア、アミン類、また硫化水素、メルカプタン類等や、タバコ臭に多く含まれるアルデヒド類、酢酸などに対し、優れた消臭効果を発揮できる工業用縫製品や家庭用縫製品が得られる縫糸を提供することができる。
【００１１】
本発明の縫糸を使うことで、消臭加工した生地を使用しなくても消臭効果のある縫製品を得ることができ、デザインも制限されない。すなわち、本発明の縫糸で縫うことにより消臭機能を付与することが可能となり、加工の自由度が選べることでコスト削減にも繋がるのという利点がある。
【００１２】
また、縫糸として、十分のストレッチ性があることでスポーツウェア、インナー、Ｔシャツまたユニフォームなど幅広い生地への対応が可能である。さらに、縫糸として消臭機能の他に、工業ミシンに対応する際に、必要の特性である高強度、耐熱性も有し、縫製後の縫い目表面が綺麗に見え、品位が優れたものとなるなどの効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下、本発明の縫糸の最良の形態について説明する。
【００１４】
本発明の縫糸は、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させたマルチフィラメントを少なくとも１本を含む縫糸である。さらに、該マルチフィラメントはポリアミド繊維であり、該ポリアミド繊維は酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換したものであることが好ましい。
【００１５】
本発明に使用されるマルチフィラメントとしては、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系などの合成繊維、あるいは、レーヨンなどの半合成繊維などが用いられるが、酸性基を有するビニルポリマーをグラフト重合させることが技術的に容易であることからポリアミド繊維が好ましい。本発明でいうポリアミド繊維の主成分は、ポリアミドであれば特に限定されないが、繊維形成能および力学的特性の点でナイロン６６、ナイロン６が好ましい。また、本発明のポリアミド繊維には、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリメタアクリル酸およびその共重合体、ポリビニルアルコールおよびその共重合体、架橋ポリエチレンオキサイド系ポリマなどの吸湿・吸水物質やポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の汎用熱可塑性樹脂が本発明の目的を阻害しない範囲で含有されていてもよい。また、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料のほか従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤等が本発明の目的を阻害しない範囲で含有されていてもよい。
【００１６】
また、本発明におけるポリアミド繊維の断面形状は、丸断面、凸型断面、三角断面、マルチローバル断面、偏平断面、Ｈ型断面、π型断面、Ｃ型断面その他公知の異形断面でもよい。また、ポリアミド繊維を複数本使用する場合には、２種類以上の異形断面を混繊した断面ミックスマルチフィラメントであってもよい。
【００１７】
本発明におけるポリアミド繊維は延伸糸であっても良いし、半延伸糸（ＰＯＹ）であっても良い。また、通常の仮撚工程で作った仮撚加工糸であっても良い、仮撚加工糸とした場合、エラスチック性に富み、ボリューム感のあるミシン糸が生地によくマッチし、機能的でソフトな縫い目をつくることができ、縁縫いや飾り縫いなど、用途も多様となる。
【００１８】
また、該マルチフィラメントの総繊度としては、好ましくは３０〜３００ｄｔｅｘの範囲が、マルチフィラメント１本あたりのフィラメント本数は１２〜２００フィラメントの範囲が適している。例えば、該長繊維フィラメント糸条の総繊度が３３ｄｔｅｘでは１２本〜３０フィラメントが、４４ｄｔｅｘでは１５〜２８フィラメント、５６ｄｔｅｘでは１８〜４８フィラメントが、１００ｄｔｅｘでは２４〜７２フィラメントの糸構成であることがより好ましい。これは単繊維繊度が太くなると縫糸が硬くなり、縫い目が生地から浮き出るからである。一方、細くなると撚糸工程から最後の仕上げ工程までにおいて、毛羽発生したり強力低下を生じるので、上記の範囲がバランスの取れた条件である。
【００１９】
さらに、マルチフィラメントを構成する単糸の本数は、多い方はコアーヤーンの曲げやねじり特性が柔らかくなり可縫性が高くなり、縫い目のパッカリングが向上するなど好ましい使い方であるが、逆に染色性の濃色が得られにくくなることがある。
【００２０】
以下、本発明に使用されているマルチフィラメントの消臭機能加工（化学改質）について、さらに詳細に説明する。
本発明におけるマルチフィラメントの機能加工（化学改質）は、消臭機能を有する酸性基を有するビニルモノマーを、グラフト共重合によりマルチフィラメントを構成する素材（ポリマー）に導入する方法が用いられる。
【００２１】
グラフト共重合により導入する酸性基を有するビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸やそれらのエステルなどが好ましく挙げられる。素材（ポリマー）に共重合された酸性基により、アンモニアや硫化水素、アミン等の悪臭物質を吸着し、消臭することができる。
【００２２】
その理由としては、繊維の分子中に酸性基を導入したことから、アンモニアやアミン等の塩基性の悪臭物質に対する吸着性に優れたもので、脱臭性繊維としての作用を示すものである。即ち、アンモニア基（−ＮＨ４）はかかる酸性基にて捕捉されてアンモニア臭が消臭されることになる。
【００２３】
なお、中性洗剤にて洗濯することにより前記反応を元に戻すことが容易にできる。
【００２４】
グラフト共重合する際にはラジカル重合開始剤および還元性物質を使用し、グラフト重合反応を行うことが好ましい。
【００２５】
グラフト共重合に使用するラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではなく、公知のものなどから任意に選択できるが、中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの如き酸化力の強い物質が好ましく挙げられる。
【００２６】
また、還元性物質としても特に限定されるものではなく、公知のものなどから任意に選択できるが、中では、硫化水素、ヨウ化水素、水素化アルミニウムリチウム、二酸化イオウ、亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウムなどが好ましく挙げられる。
【００２７】
本発明においては、グラフト重合の際に用いる酸性ビニルモノマーの極性を被グラフト物に近づけ、且つ２種以上混合することにより、さらには特に好ましくはラジカル開始剤として過酸化物と還元性物質を同時に用いることにより従来の２段処理の如き煩雑さがなくなり、グラフト重合時間が短縮するとともに、グラフト率が向上出来る効果が得られる。
【００２８】
本発明においては、さらに、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換したものであることが好ましい。
【００２９】
例えば、ポリアミド繊維にグラフト重合し、さらに該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換する方法としては、上記のように酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、得られた繊維または繊維構造物を通常の染色工程により染色し、しかる後、アルカリ剤で処理してから、繊維中の酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンを含む化合物を含有する液に浸し、繊維を処理する。なお、染色工程がアルカリ条件下で行なわれる場合には、アルカリ剤による処理を必要としない。
【００３０】
金属イオン化合物の濃度は、耐久性のある脱臭効果を付与する一方、繊維強力の低下や色相の変化を防ぐ観点から、固形分換算で繊維に対して０．０５〜３重量％、さらには０．１５〜０．６重量％付着させるのが好ましい。
【００３１】
この置換処理は、通常の仕上加工工程に含めて行なってもよいし、仕上加工とは独立の工程としてもよい。後者の場合には、特定の金属イオンを含んだ処理浴中で５０〜８０℃、２０秒〜３分程度処理するのが好ましい。
【００３２】
本発明において、グラフト重合のグラフト率を５％〜２５％とすれば目的とする消臭性能を発揮できる。５％以下になると、目的とする消臭性能を達成するため縫糸としての使用量を大幅に増加させなければならなくなり、好ましくない。２５％を超えると、風合いの粗硬化、および染色時の染色ムラに繋がるので好ましくない。さらに、グラフト率は８％〜２２％の方がより好ましい。
本発明における機能加工（化学改質）は、ヨリ加工未実施のマルチフィラメントに直接施してもよいが、工程通過性を考慮すると、下ヨリをかけた後に、もしくは下ヨリ及び上ヨリをかけた後に、通常の巻き返し工程でチーズリワインドした後に施した方が好ましい。
なお、本発明においては機能加工（化学改質）を施すマルチフィラメントはポリアミド繊維が好ましいが、本発明におけるポリアミドマルチフィラメントの製造方法については次のとおりである。まず、常法によりポリアミドを溶融紡糸して未延伸糸を得、一旦パッケージに巻き取る。この未延伸糸を室内常温湿で２〜２０日間エージングした後、該未延伸糸１．１〜２．５倍に延伸して、延伸糸を得る。このときのヒーターの温度を５０〜１８０℃に加熱しておく。得られた延伸糸を巻き取り、ポリアミドルチフィラメントを得る。
本発明の縫糸は、前記機能加工（化学改質）したマルチフィラメントを少なくとも１本含むものであり、消臭機能の点からは機能加工（化学改質）したマルチフィラメントのみで構成されることが最も好ましいが、他の特性とのバランスを考慮して、本発明においてはその機能加工（化学改質）したマルチフィラメントのみならず、他の未改質（機能加工していない）のマルチフィラメントをも併せて用いることができる。これらマルチフィラメントに下ヨリを付与した後、このヨリ（下ヨリ）方向とは反対方向に、マルチフィラメントを２〜４本合わせて上ヨリをかけて撚糸することが好ましい。上ヨリをかける際のマルチフィラメントの本数が２本未満であると、縫糸としての強度が得られず、縫製中の糸切れの原因となるため、好ましくない。逆に本数が４本以上であると撚糸が困難であり、また糸の均一性が損なわれ可縫性が低下するため好ましくない。
本発明の縫糸用の下ヨリを施したマルチフィラメントを作製するに当たっては、マルチフィラメントのヨリ方向（下ヨリ方向）はＳ方向でもＺ方向でもかまわない。しかし、最終用途が縫糸であることから、下ヨリ方向はＳ方向が好ましく、ヨリ係数ＫがＫ＝１．５〜５．５の範囲で加撚したものが好ましい。下ヨリ方向をＳ方向とした場合、複数本引き揃えて上ヨリを下ヨリ方向とは逆方向のＺ方向に撚糸して（上ヨリを施して）、本発明の縫糸とする。ヨリ係数が上記の範囲に未満になると、糸の締まりが悪く、毛羽が多くなり、縫い目の品位、強力の低下に繋がるので好ましくない。反面、ヨリ係数が上記の範囲を超えると縫糸の強力が増加するが、仕上げ後の縫糸の硬直性に繋がり、可縫性に影響をもたらすことで好ましくない。さらには、縫い目の品位、可縫性を鑑み、Ｋ＝２．５〜４．５の範囲であることがより好ましい。
【００３３】
なお、ヨリ係数Ｋ ＝Ｔ／（Ｎｅ）１／２
Ｔ：糸条の１インチ（２．５４ｃｍ）当たりの撚数
Ｎｅ：糸条の英式綿番手
で表される。
【００３４】
また、上ヨリ数は上述した下ヨリ数の６０％〜９５％が好ましい。さらに好ましくは７０％以上、８５％以下である。上ヨリ数が下ヨリ数の６０％未満であると、繊維同士の空隙が大きくなり、縫製中にミシン針がそこを通過して糸切れの原因となり好ましくない。また、上ヨリ数が下ヨリ数の９５％より多くなると、トルクのバランスが悪く、縫製時の目飛びの原因となるため、好ましくない。
本発明の製造方法における下ヨリと上ヨリ付与の方法は、特に限定されるものではなく、ダブルツイスター、ダウンツイスターなどの通常の方法から任意に選択できる。
【００３５】
ヨリ工程で下ヨリ、上ヨリが施された後、収縮止めあるいはヨリ後の残留トルク消滅を目的に熱セットを施すことが好ましい。
セット後はソフト巻きを施したチーズを作成し、前述した機能加工（化学改質）方法で、機能加工を施した後、チーズ染色加工を施し、仕上げ巻きによって縫糸の製品が得られる。
【００３６】
また、事前に下ヨリを付与する前のマルチフィラメントに前述した機能加工（化学改質）方法で、機能加工を施した後、さらに他の未改質同様のマルチフィラメントと併せて上ヨリを付与した後、チーズ染色加工を施し、仕上げ巻きによって縫糸の製品を得る方法も良い。その場合、同様なポリマー構成であれば、染めむらがなくなり、好ましい。消臭効果について、後ほどの実施例で証明したように、１本以上の改質繊維があれば十分の消臭効果が得られる。
【００３７】
本発明の縫糸は、好ましい構成として、前述する化学改質に適応するポリアミド繊維から構成されてなるものであるが、縫糸としての平均引っ張り破断強度は２．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上が好ましく、さらに好ましくは３．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上である。一般的に、高い方が耐久性や可縫性が好ましく、厚地やジーンズの用途では３．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上が好ましい。また、通常の衣料用生地に用いる縫糸としては、２．５ｃＮ／ｄｔｅｘもあれば充分である。しかし、逆に６．０ｃＮ／ｄｔｅｘより高くなると、縫製品に大きな負荷をかかり、縫い目付近の生地を痛めるため好ましくなく、６．０ｃＮ／ｄｔｅｘ以下が好ましい。
【００３８】
また、縫糸として、破断強度が２．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上を達成するためには、前述したヨリ係数の選定範囲とすることによって実現できるものである。なお、ここで言及した平均引っ張り破断強度は後述（実施例の欄（２））する測定方法で求める。
さらに、本発明の縫糸は３％伸長時の応力が０．２〜１．２ｃＮ／ｄｔｅｘであることが好ましい。これは特に目飛びの発生に関係し、３％伸長時の応力を大きくする程、縫製時に針糸のループ形状が大きくなり安定化し、ルーパーによる下糸通しミスがなくなることに繋がるので０．２ｃＮ／ｄｔｅｘ以上にすることが好ましい。また、１．２ｃＮ／ｄｔｅｘを超えると、ループ形状が小さくなり、あるいは不安定な形になることにより、目飛びの現象に繋がるので、好ましくない。
さらにまた、本発明の縫糸は、１８０℃における乾熱収縮率は４％以下が好ましい。これは縫製後にアイロンなどの熱処理を受けた時、又は洗濯された時、縫製品が収縮を起こさないようにし、パッカリングを防止して縫製品の品質を著しく低下させることを防止するためである。なお、ここで言及した乾熱収縮率は後述（実施例の欄（１））する測定方法で求める。
ここで言及した４％以下の乾熱収縮率を実現できたのは、前述した機能加工によるものである。すなわち、通常のポリアミドマルチフィラメントからなる縫い糸について、ポリアミド繊維は収縮が高いという特徴があるため、縫い糸としても収縮が高くなる傾向がある。しかし、本発明における機能加工によれば、消臭効果を付与するだけでなく、ポリアミドマルチフィラメント用いた場合における縫糸の収縮を抑えることができるのである。
【００３９】
また、本発明の縫糸の毛羽数としては、１ｍｍ以上３ｍｍ未満の毛羽で２０〜１５０個／１０ｍの範囲の毛羽指数を有することが好ましい。１ｍｍ以上３ｍｍ未満の毛羽数がこの範囲であると、縫い目が綺麗なほか、滑り特性が安定化し目飛び糸切れが減少する等安定した可縫性を得ることができる。該毛羽指数が２０個／１０ｍ以下とすると、針熱の散熱がうまくいかずに、高速縫製において耐熱性が低下するなどの欠点が出てくる。一方、１５０個／１０ｍを超えると、滑り特性が不安定となり目飛び糸切れが増加し、さらに毛羽が目立ち過ぎて、縫い目の品位が悪くなる。
【００４０】
また、３ｍｍ以上５ｍｍ未満の毛羽が１〜１０個／１０ｍであることが好ましい。３ｍｍ以上５ｍｍ未満の毛羽が１個／１０ｍ未満であると、縫製時に針熱を放熱する効果が低く、縫糸切れの原因となるため、好ましくない。一方、３ｍｍ以上５ｍｍ未満の毛羽が１０個／１０ｍより多くなると、強力のバラツキが大きくなり、縫製時に糸切れなどのトラブルに繋がるので、好ましくない。
【００４１】
また、５ｍｍ以上の毛羽が３個／１０ｍ以下であることが好ましい。５ｍｍ以上の毛羽が３個／１０ｍ以上であると、強力のバラツキが大きくなり、縫製中や縫い目の糸切れの原因となるため好ましくない。
本発明の製造方法においては、マルチフィラメントに機能加工を施した後、チーズ染色することが好ましい。チーズ染色の方法は、とくに限定されるものではなく、ポリエステル縫糸だと分散染料による染色やカチオン染色など、ナイロン縫糸だと反応染料や酸性染料などの方法から任意に選択できる。
【００４２】
また、本発明の縫糸を製造する方法において、チーズ染色後に仕上げ油剤を付与することが好ましい。仕上げ油剤の付与方法はとくに限定されるものではないが、毛羽の発生が少なく余計な油剤を吸い上げる心配がないオイリングローラによる油剤の付与方法がより好ましい。
また、本発明の縫糸を製造する方法における仕上げ油剤の種類はとくに限定されるものではなく、公知の仕上げ油剤から任意に選択できるが、平滑性の良さや低コストの面からシリコンを主体とした仕上げ油剤を用いることがより好ましい。
本発明の縫糸を後述する評価方法（実施例の欄（５））で消臭効果を確認しところ、消臭性能のない生地に、縫製品全重量に対して１重量％以上を縫製することが好ましい。１重量％以上とすることにより、汗臭の主成分であるアンモニア臭に対する消臭率が、繰り返し測定３回まで９０％以上を保持し、５回まででも８０％以上を保持と優れた性能を有する。さらに、一般の家庭洗濯（１回）後の消臭率が９５％以上と、洗濯を行っても優れた消臭性能を示す。さらに好ましくは５重量％以上である。
なお、本発明の縫糸を用いて縫製品を作製する場合には、汗をかきやすい箇所や汚れやすい箇所に本発明の縫糸を用いることが効果的である。例えば、衣服の脇の下や襟などである。
【実施例】
【００４３】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、測定方法は以下のとおりとした。
【００４４】
（１）見掛け繊度、番手、乾熱収縮率、沸騰水収縮率
ＪＩＳ Ｌ１０１３（１９９９）に準拠して１水準につき２０サンプル測定し、それぞれについて、その平均値を算出した。
【００４５】
（２）平均引っ張り破断強度、平均引っ張り破断伸度
計測器工業（株）製ＳＴＡＴＩＭＡＴ ＭＥにより、つかみ長２００ｍｍ、引張速度１００％／ｍｉｎで、１水準につき２０サンプルの測定を行い、平均引っ張り破断強力（ｃＮ）及び平均引っ張り破断伸度（％）を求めた。
【００４６】
平均引っ張り破断強度（ｃＮ／ｄｔｅｘ）は平均引っ張り破断強力と（１）で測定した見掛け繊度から算出した。
【００４７】
（３）毛羽数
ＪＩＳ Ｌ１０９５（１９９９）（一般紡績糸試験法）９．２２ Ｂ法に準じ、測定装置は敷島テクノ（株）製 Ｆ−ＩＮＤＥＸ ＴＥＳＴＥＲを用いて測定した。
速度３０ｍ／ｍｉｎで解舒しながら静電式コンデンサを使用して、各々の糸の直径に対して１ｍｍ以上、３ｍｍ以上及び５ｍｍ以上はみ出ている表面毛羽本数を数えたものである。表中のデータは長さ１０ｍ当たりの毛羽数（個／１０ｍ）であり、各毛羽長さについてそれぞれ１０回測定した平均値である。
【００４８】
（４）消臭性能
［消臭評価用サンプル作成］
消臭効果のないベース布であるポリエステル標準織物タフタに対し、本発明の縫糸を１重量％以上の割合で簡易縫製品を作成し、消臭効果を確認した。本評価には、約１．３ｇ（１５ｃｍ×１５ｃｍ）のポリエステル標準織物タフタに、重量％で換算した縫糸長さで縫製し、準備した。
【００４９】
［アンモニア臭］
５００ｃｃのふたつきポリエチレン容器に０．２８％のアンモニア水溶液を８０μｌ滴下し、次いで同容器に上記の試料を投入して密閉し、アンモニアを気化させた。初期アンモニア濃度及び２０分室温で放置後の容器から採取した気体中の残存アンモニア濃度を（株）ガステック製ガス検知管を用いて測定した。
初期アンモニア濃度は約２００ｐｐｍであり、２０分後の値が２０ｐｐｍ以下であれば、良好なアンモニア脱臭性を有する。
【００５０】
［硫化水素臭］
５００ｃｃのふたつきポリエチレン容器に０．５％の硫化ナトリウム水溶液を３０μｌ、０．５％の硫酸１００μｌを滴下し、次いで同容器に上記の試料を投入して密閉し、硫化水素ガスを発生させた。初期硫化水素濃度及び２０分室温で放置後の容器から採取した気体中の残存硫化水素濃度を（株）ガステック製ガス検知管を用いて測定した。
【００５１】
初期硫化水素濃度は約２０ｐｐｍであり、２０分後の値が２ｐｐｍ以下であれば、良好な硫化水素脱臭性を有する。
【００５２】
［消臭率、繰り返し測定］
消臭率は、以下の式により算出した。
【００５３】
消臭率＝｛１−（残留ガス濃度）／（初期ガス濃度）｝×１００
また、繰り返し測定については、試料を１回測定したあと、洗濯せずにそのまま、次の５００ｃｃのふた付きポリエチレン容器に入れ、同じ条件で連続的に測定するものである。
【００５４】
［洗濯条件］
洗濯は、一般家庭で用いられる中性洗剤を使い、２槽式洗濯機で、洗濯（水温４０℃）×５分×１回、すすぎ（水温４０℃）×５分×２回で行った。浴比は試料：水＝１：３０（重量比）とした。
【００５５】
なお、洗濯後の消臭率測定は、洗濯後のサンプルを自然風乾したあと、そのまま同じ方法再測定を行った。
【００５６】
（６）縫製性評価方法
Ａ．高速可縫性（前進縫い）：Ｔ／Ｃブロード生地を１０枚重ねて２ｍ縫製可能なミシン機で、糸切れがなく縫製できる最高回転数（針／分）を測定した。測定は、１０００〜５０００（針／分）の範囲でテストした。
【００５７】
Ｂ．バック可縫性（バック縫い）：Ｔ／Ｃブロード生地を４枚重ね、ミシン機で１５００（針／分）で１ｍ縫製したときにおける糸切れ回数（平均回数／１０回）を測定した。評価基準は下記の通りとした。
× ：縫製不可もしくは６回以上
△ ：３〜５回
○ ：１〜２回
○○：０回。
【００５８】
Ｃ．ジグザグステッチ縫い（家庭用途）：Ｔ／Ｃブロード生地を２枚重ね、ミシン機でジグザグステッチ（縫いピッチ１．４ｍｍ、ジグザグ幅：４ｍｍ）で０．５ｍ縫製したときにおける、縫い目欠点（目飛び、縫い目不良個数）の発生回数を測定した。針回転数は３００ｓｐｍ（ステッチ／ｍｉｎ）とした。評価基準は下記の通りとした。
× ：６回以上
△ ：３〜５回
○ ：１〜２回
○○：０回。
【００５９】
Ｄ．縫い目品位：Ａ項の高速可縫性（前進縫い）評価において、１０００（針／分）の回転数で縫製したサンプルを目視評価した。
△ ：毛羽が多い。
○ ：毛羽を発見できる。
○○：殆ど毛羽が目立たない。
【００６０】
実施例１、４及び参考例１
まず、強度５．４ｃＮ／ｄｔｅｘのポリアミドフィラメント１１０Ｔ−３０ｆの糸条をダウンツイスターにおけるヨリ係数Ｋ＝４．０にヨリをかける。ヨリ方向はＳ方向とした。その後のヨリ止め処理として、９５℃で３０分間スチームセットを施した。
【００６１】
そして、該マルチフィラメントの３本縫糸を製造するため、ヨリ方向をＺ方向、上ヨリ数を下ヨリ係数の８０％に設定して、上記の下ヨリ糸３本をダウンツイスターにて撚糸し、３子ヨリ糸を製造した。その後のヨリ止め処理として、９５℃で３０分間スチームセットを施した。
【００６２】
続いてソフトチーズに巻き上げた後、通常のチーズ染色機に詰め込み、常法により精練した後、当該３子ヨリ糸に対しアクリル酸４ｗｔ％、メタクリル酸を１２ｗｔ％、過硫酸ナトリウムのホルマリン縮合物を３ｗｔ％含む処理浴を調製し、４０℃から１℃／分の速度で昇温し、８０℃で６０分間液中加熱処理を施し、グラフト加工した。
【００６３】
続いて、１３０℃で４０分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、縫糸を製造した。得られた縫糸を２ｍ（実施例１）、０．７３ｍ（実施例４）、０．１８ｍ（参考例１）使用してポリエステル織物タフタに縫製し、評価した。
【００６４】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表１、２に示した。
【００６５】
実施例２
実施例１と同様に作製したポリアミドフィラメントの３子撚り糸をソフトチーズに巻き上げた後、染色機に詰め込み、常法により精練した後、当該３子撚り糸に対しアクリル酸４ｗｔ％、メタクリル酸を１２ｗｔ％、過硫酸アンモニウムを１ｗｔ％、亜硫酸ナトリウムのホルマリン縮合物を３ｗｔ％含む処理浴を調製し、４０℃から１℃／分の速度で昇温し、８０℃で６０分間液中加熱処理を施しグラフト加工した。
【００６６】
次にこのものを水洗したあと、同様にパッケージ染色機で炭酸ナトリウムが被処理物に対し２０ｗｔ％になるように処理浴を調整し、８０℃×３０分間、加熱処理後、繊維内部に導入したカルボキシル基をＮａに置換させた。
【００６７】
その後、同様にパッケージ染色機で硫酸亜鉛が被処理物に対し２０ｗｔ％になるように処理浴を調整し、８０℃×３０分間、置換反応をさせた。次に、１３０℃で４０分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、縫糸を製造した。
【００６８】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表１に示した。
【００６９】
実施例３
実施例１と同様に作製したポリアミドフィラメントの３子撚り糸をソフトチーズに巻き上げた後、染色機に詰め込み、常法により精練した後、当該３子撚り糸に対しアクリル酸４ｗｔ％、メタクリル酸を１２ｗｔ％、過硫酸アンモニウムを１ｗｔ％、亜硫酸ナトリウムのホルマリン縮合物を３ｗｔ％含む処理浴を調製し、４０℃から１℃／分の速度で昇温し、８０℃で６０分間液中加熱処理を施しグラフト加工した。
【００７０】
次にこのものを水洗したあと、同様にパッケージ染色機で炭酸ナトリウムが被処理物に対し２０ｗｔ％になるように処理浴を調整し、８０℃×３０分間、加熱処理後、繊維内部に導入したカルボキシル基をＮａに置換させた。
【００７１】
その後、同様にパッケージ染色機で硫酸銅が被処理物に対し１５ｗｔ％になるように処理浴を調整し、８０℃×３０分間、置換反応をさせた。
【００７２】
次に、１３０℃で４０分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、縫糸を製造した。
【００７３】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表１に示した。
【００７４】
実施例５、６
実施例１と同様に作製したグラフト化ナイロンマルチフィラメントを用いて、下撚り条件以外は実施例１と同じである。撚糸条件につき、下ヨリ係数Ｋ＝１．０（実施例５）、６．０（実施例６）を施して、評価した。
【００７５】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表１、２に示した。
【００７６】
実施例７
強度５．４ｃＮ／ｄｔｅｘのポリアミドフィラメント１１０Ｔ−３０ｆの糸条３本それぞれをダウンツイスターにおけるヨリ係数Ｋ＝４．０にヨリをかける。ヨリ方向はＳ方向とした。その後のヨリ止め処理として、９５℃で３０分間スチームセットを施した。
【００７７】
続いてその中の１本をソフトチーズに巻き上げた後、通常のチーズ染色機に詰め込み、常法により精練した後、該糸に対しアクリル酸４ｗｔ％、メタクリル酸を１２ｗｔ％、過硫酸ナトリウムのホルマリン縮合物を３ｗｔ％含む処理浴を調製し、４０℃から１℃／分の速度で昇温し、８０℃で６０分間液中加熱処理を施し、グラフト加工した。
【００７８】
続いて、残りの２本と合わして、ヨリ方向をＺ方向、上ヨリ数を下ヨリ係数の８０％に設定して、上記の下ヨリ糸３本をダウンツイスターにて撚糸し、３子ヨリ糸を製造した。その後のヨリ止め処理として、９５℃で３０分間スチームセットを施した。
【００７９】
１３０℃で４０分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、縫糸を製造した。続いて、得られた縫糸を２ｍを使用してポリエステル織物タフタに縫製し、評価した。
【００８０】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表２に示した。
【００８１】
比較例１
固有粘度（ＩＶ）が０．６７±０．０２のホモＰＥＴを溶融し、紡糸温度３００℃で３６孔の口金で吐出し、紡糸速度１０００ｍ／ｍｉｎで引き取り、３３６Ｔ−３６ｆの未延伸糸ＵＹを得た。さらに、ホットロール３段式の延伸機を用いて、ホットロール温度が７５℃、トータル延伸倍率６倍で延伸し、次いで一旦引き取ることなく、連続して７％でリラックスして巻き取り、１１０デシテックス、３０フィラメントの延伸糸を得た。該延伸糸を用いて、実施例と同じ撚糸条件、染色条件で縫糸を仕上げた。
【００８２】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表２に示した。
【００８３】
比較例２
実施例１の機能加工をせずに、それ以外は同じプロセスで作製したナイロンマルチフィラメントを用いて、評価した。
【００８４】
得られた縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表２に示した。
【００８５】
【表１】
【００８６】
【表２】
【００８７】
実施例１の縫糸は、高速可縫性、自動機対応などのあらゆる工業用途において優れた性能をもっており、さらに家庭用などで使われている複雑なジグザグステッチにも対応可能であった。また、消臭効果においては、消臭評価時に使用した縫糸の量が５．５重量％であるが、アンモニア臭、硫化水素に対しする繰り返し消臭率が３回まで９０％以上であり、優れた消臭効果を持っていることが分かった。さらに洗濯したところ、元のレベルの消臭率に回復した。
【００８８】
また、実施例２の縫糸の消臭効果においては、アンモニアについてやや実施例１より劣るものの、硫化水素への消臭効果については実施例１より優れた結果となった。
【００８９】
実施例３の縫糸の消臭効果においては、アンモニアについてやや実施例１より劣るものの、硫化水素への消臭効果については実施例１より優れた結果となった。
【００９０】
実施例４について、消臭評価時に使用した縫糸の量が２重量％となり、アンモニア、硫化水素についてやや実施例１より劣るものの、十分効果があるとも言える。
【００９１】
実施例５については、消臭効果には問題はないが、下ヨリ係数Ｋが低いため、糸同士の結束の良くなくて、毛羽が発生してしまい、また縫糸の強度が低くなり、可縫性評価では糸切れによる高速可縫性には低い結果となっている。
【００９２】
一方、実施例６では、下撚りが多めに入っているため、縫糸が硬直になり、やはり可縫性評価はやや低い結果となっている。
【００９３】
実施例７では、グラフト化したナイロン糸は１本しか入れていないが、消臭効果につき問題ないレベルであった。
【００９４】
比較例１では高速可縫性などが全く問題ないが、消臭効果ではが初回から９０％を下回って、消臭効果は非常に低いことが分かった。
【００９５】
比較例２では、通常のナイロンであるため、若干消臭効果があるものの、実施例１〜６と比較し、劣る結果となった。また、前述したような機能加工は施していないため、収縮がわりと高くて、縫い目品位の評価では良い結果が得られなかった。
【００９６】
参考例１について、消臭評価時に使用した縫糸の量が０．５重量％であるため、消臭効果はあるものの実施例１よりは劣る結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【００９７】
本発明によれば、生地に消臭効能がなくても、縫糸により消臭効果を発揮できる。さらに、縫糸として高強度、優れた耐熱性による工業用における高速可縫性、自動機対応縫製性、バック縫製、ならびに家庭用における、ジグザグステッチなど複雑のパターンにも対応できる。さらに縫い目の綺麗さなどを要求される一般衣料用として、例えばハリ・腰風合いに優れた特徴を活かした高級婦人衣料や、ストレッチ性を要求されるスポーツウェア、紳士パンツなど、さらに洗濯の回数が比較的に少ないユニフォームなどに、優れた消臭機能を付与することができるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させたマルチフィラメントが１本以上含まれることを特徴とする縫糸。
【請求項２】
前記マルチフィラメントがポリアミド繊維であり、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換したものであることを特徴とする請求項１に記載の縫糸。
【請求項３】
前記マルチフィラメントにヨリ係数ＫがＫ＝１．５〜５．５の範囲で下ヨリが付与されたあと、該下ヨリが付与された繊維が複数本合わさり、かつ下ヨリ方向とは反対方向に上ヨリが施されてなる縫糸であって、平均引っ張り強度が２．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上、３％伸長時の応力が０．２〜１．２ｃＮ／ｄｔｅｘ、かつ乾熱収縮率が４％以下であることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の縫糸。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれかに記載の縫糸を１重量％以上使用した縫製品であって、アンモニア臭の消臭率が繰り返し３回まで９０％以上、且つ洗濯後の初回消臭率が９５％以上であることを特徴とする縫製品。
【請求項１】
酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させたマルチフィラメントが１本以上含まれることを特徴とする縫糸。
【請求項２】
前記マルチフィラメントがポリアミド繊維であり、酸性基を有するビニルモノマーをグラフト共重合させた後、該酸性基の水素イオンをＺｎ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ＋、Ｍｎ２＋、Ａｇ＋、およびＦｅ２＋からなる群より選ばれた１種以上の金属イオンで置換したものであることを特徴とする請求項１に記載の縫糸。
【請求項３】
前記マルチフィラメントにヨリ係数ＫがＫ＝１．５〜５．５の範囲で下ヨリが付与されたあと、該下ヨリが付与された繊維が複数本合わさり、かつ下ヨリ方向とは反対方向に上ヨリが施されてなる縫糸であって、平均引っ張り強度が２．５ｃＮ／ｄｔｅｘ以上、３％伸長時の応力が０．２〜１．２ｃＮ／ｄｔｅｘ、かつ乾熱収縮率が４％以下であることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の縫糸。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれかに記載の縫糸を１重量％以上使用した縫製品であって、アンモニア臭の消臭率が繰り返し３回まで９０％以上、且つ洗濯後の初回消臭率が９５％以上であることを特徴とする縫製品。
【公開番号】特開２００９−２２１６３５（Ｐ２００９−２２１６３５Ａ）
【公開日】平成２１年１０月１日（２００９．１０．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−６８９３２（Ｐ２００８−６８９３２）
【出願日】平成２０年３月１８日（２００８．３．１８）
【出願人】（０００００３１５９）東レ株式会社 (7,677)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１０月１日（２００９．１０．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年３月１８日（２００８．３．１８）
【出願人】（０００００３１５９）東レ株式会社 (7,677)
【Ｆターム（参考）】
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