説明

縮合複素環化合物および有機発光素子

【課題】極めて純度のよい発光色相を呈し、高効率で高輝度、高寿命の光出力を有する有機発光素子用材料を提供する。
【解決手段】下記一般式[1]で示される部分構造を有する縮合複素環化合物。


(式中、X1乃至X10は、環を構成する炭素原子または窒素原子を示し、X1乃至X10の少なくとも一つは窒素原子を表す。R1およびR2は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、縮合多環芳香族基などを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,縮合複素環骨格を有する有機発光素子用材料及びそれを使用した有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、電極間に蛍光性又は燐光性有機化合物を含む薄膜を挟持させて、各電極から電子及びホール(正孔)を注入することにより、蛍光性又は燐光性化合物の励起子を生成させ、この励起子が基底状態に戻る際に放射される光を利用する素子である。有機発光素子における最近の進歩は著しく、その特徴は低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、薄型、軽量の発光デバイス化の可能性であることから、広汎な用途への可能性を示唆している。
【0003】
しかしながら、現状では更なる高輝度の光出力あるいは高変換効率が必要である。また、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気などによる劣化等の耐久性の面で未だ多くの問題がある。さらにはフルカラーディスプレイ等への応用を考えた場合、色純度の良い青、緑、赤色発光が必要となるが、これらの問題に関してまだ十分でない。
【0004】
ところで、本発明の化合物に関連する化合物は、非特許文献1乃至4に開示されている。しかし、非特許文献1,2ではアザベンソフルオランテン骨格を有する化合物の発癌性に関する研究が主である。また、非特許文献3には特定の位置に窒素原子を有する無置換のアザベンソフルオランテン化合物の発光スペクトルが記載されているが、紫外領域に発光ピークを有していることから、発光物質としての有用性が低いものと考えられる。
【0005】
また、ベンソフルオランテン骨格に窒素原子を二つ以上導入したジアザベンソフルオランテン骨格を有する化合物を利用した有機発光素子が、特許文献1乃至3に開示されている。しかし、特許文献1,2では、ジアザベンソフルオランテン骨格が縮環した化合物であるため、その発光色は青色よりも長波長側の発光色に限定され、特に赤色に限定された発光材料を提供するものである。また、特許文献3では主に電子輸送材料として使用され、一部青色発光材料としての記載もあるが、発光効率が著しく低いものである。
【0006】
また、特許文献4にはベンゾフルオランテン骨格にベンゼン環が縮合し、窒素原子が一つ導入されたアザナフトアントラセン骨格を有する化合物を用いた有機発光素子が記載されているが、その骨格起因より緑色発光材料に限定されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−160489号公報
【特許文献2】特開2003−212875号公報
【特許文献3】特開2006−16363号公報
【特許文献4】特開2000−311786号公報
【特許文献5】特開2005−68367号公報
【非特許文献1】J.Chem.Soc.3920(1964)
【非特許文献2】Compt.Rend.258(12),3387(1964)
【非特許文献3】Tetrahedron30,813(1974)
【非特許文献4】Monatsh.fur Chem.129,1035(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、極めて純度のよい発光色相を呈し、高効率で高輝度、高寿命の光出力を有する有機発光素子用材料を提供することにある。
【0009】
さらには製造が容易でかつ比較的安価に作成可能な有機発光素子を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の縮合複素環化合物は、下記一般式[1]で示される部分構造を少なくとも一つ有することを特徴とする。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式[1]において、X1乃至X10は、環を構成する、置換基Rを有する炭素原子、または窒素原子を示す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基、または単結合を表わす。ただし、X1乃至X10の少なくとも一つは窒素原子を表す。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよく、隣接する置換基は環構造を形成していてもよい。
【0014】
1およびR2は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基、または単結合を表わし、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0015】
本発明の縮合複素環化合物は、ベンゾフルオランテン骨格に窒素原子を特定の位置に導入した含窒素芳香族複素環を有することから安定な非晶質膜性を形成することができ、優れた電子輸送性を示す。さらに窒素原子を導入する位置、及び置換基の種類と導入する位置との多様な組み合わせにより、幅広い発光色を呈し、分子振動が制御された発光スペクトルの単分散化及び半値幅を減少させることが可能であり色純度のよい発光材料を提供することができる。
【0016】
また、本発明の縮合複素環化合物を含有する有機発光素子は、低い印加電圧で高輝度な発光が得られ、耐久性にも優れている。特に、縮合複素環化合物を発光層のゲストに用いた有機発光素子は、優れた効果を奏する。即ち、適切な分子修飾によって、発光ピークが430nm以上460nm以下を示す極めて純度のよい青色発光色相から、590nm以上630nm以下の赤色発光色相までの幅広い発光色相を呈する拡張性を持つ。しかも、低い印加電圧で高輝度な発光が得られ、耐久性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明の縮合複素環化合物について説明する。
【0019】
本発明の縮合複素環化合物は、上記一般式[1]で示される部分構造を少なくとも一つ有するが、一般式[1]中のRは、以下のいずれかであることが好ましい。
水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基、または単結合
また、R1およびR2は、以下のいずれかであることが好ましい。
置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基、または単結合
本発明の縮合複素環化合物の一例としては、一般式[1]中のR、R1、R2のいずれもが、単結合でない化合物が挙げられる。
【0020】
他の例としては、下記一般式[2]で示される化合物が挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
(一般式[2]において、X1乃至X10は、環を構成する、置換基Rを有する炭素原子、または窒素原子を示し、X1乃至X10の少なくとも一つは窒素原子を表す。置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
Yは、単結合あるいは置換あるいは無置換のアルカン、置換あるいは無置換のアルケン、置換あるいは無置換のアルキン、置換あるいは無置換のアミン、置換あるいは無置換の芳香環、置換あるいは無置換の複素環、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族、置換あるいは無置換の縮合多環複素環から誘導されるn価の連結基を表す。
【0024】
1およびR2は、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わし、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
YはX1乃至X10の炭素原子、R1およびR2いずれかと結合している。
【0026】
nは2以上10以下の整数を表す。)
【0027】
また、他の例としては、下記一般式[3]で示される化合物が挙げられ、更に具体的には、下記一般式[4][5]で示される化合物が挙げられる。
【0028】
【化3】

【0029】
(一般式[3]において、Zは環構造を表す。
【0030】
1乃至X8は、環を構成する、置換基Rを有する炭素原子、または窒素原子を示し、X1乃至X8の少なくとも一つは窒素原子を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わす。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
1およびR2は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わし、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよい。)
【0032】
【化4】

【0033】
(一般式[4]において、X1乃至X8は、環を構成する、置換基Rを有する炭素原子、または窒素原子を示し、X1乃至X8の少なくとも一つは窒素原子を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わす。
【0034】
1乃至R10はハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わし、R1乃至R10はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0035】
【化5】

【0036】
(一般式[5]において、X1乃至X18は、環を構成する置換基Rを有する炭素原子または窒素原子を示し、X1乃至X18の少なくとも一つは窒素原子を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わす。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
1乃至R4はハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わし、R1乃至R4はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0038】
さらに好ましい化合物としては、アザベンゾフルオランテン構造を有する化合物が挙げられる。より好ましくは、一般式[1]乃至[4]において、X1あるいはX2が窒素原子である化合物、一般式[5]において、X1、X2、X17、X18のうち少なくとも一つが窒素原子である化合物が挙げられる。
【0039】
本発明の縮合複素環化合物は有機発光素子用材料として使用できる。その中で、発光層用として使用する場合、発光層において単独で用いること、及びドーパント(ゲスト)材料、ホスト材料の目的で使用でき、高効率発光し、長い期間高輝度を保ち、通電劣化が小さい素子を得ることができる。
【0040】
発光層が、キャリア輸送性のホスト材料とゲストからなる場合、発光にいたる主な過程は、以下のいくつかの過程からなる。
1.発光層内での電子・ホールの輸送。
2.ホストの励起子生成。
3.ホスト分子間の励起エネルギー伝達。
4.ホストからゲストへの励起エネルギー移動。
【0041】
それぞれの過程における所望のエネルギー移動や、発光はさまざまな失活過程と競争でおこる。
【0042】
EL素子の発光効率を高めるためには、発光中心材料そのものの発光量子収率が大きいことは言うまでもない。しかしながら、ホスト−ホスト間、あるいはホスト−ゲスト間のエネルギー移動が如何に効率的にできるかも大きな問題となる。また、通電による発光劣化は今のところ原因は明らかではないが、少なくとも発光中心材料そのもの、または、その周辺分子による発光材料の環境変化に関連したものと想定される。
【0043】
そこで本発明者らは種々の検討を行い、一般式[1]で表される縮合複素環化合物を、特に発光層のホストまたはゲストに用いた素子が高効率発光し、長い期間高輝度を保ち、通電劣化が小さいことを見出した。
【0044】
通電による発光劣化の原因の一つとして、発光層の薄膜形状の劣化による発光劣化が考えられる。この薄膜形状の劣化は、駆動環境の温度、素子駆動時の発熱等による有機薄膜の結晶化に起因すると考えられている。これは、材料のガラス転移温度の低さに由来すると考えられ、有機EL材料は高いガラス転移温度を有する事が望まれている。本発明の縮合複素環化合物は高いガラス転移温度を有し、有機EL素子の高耐久化を期待する事が出来る。
【0045】
また、本発明の縮合複素環化合物は電気陰性度の高い原子を縮環芳香環構造中に挿入することにより、還元電位が高く電子受容性の大きいことに特徴がある材料である。そして、一般式[1]乃至[5]で表される化合物のRおよびYの選択により還元電位をコントロールすることで電子移動度を調節することが可能となる。これにより、種々のホスト材料との組み合わせにより一般式[1]乃至[5]で表される化合物のRおよびYを適切に選択することで、駆動電圧が低く長い期間高輝度を保ち、通電劣化の減少を可能にすることを見出した。
【0046】
さらに、一般式[1]で示される分子構造を一般式[2]乃至[5]で表されるように適切に分子修飾することにより、純青から赤色までの幅広い発光色を呈することが可能となり、一般式[1]で示される分子構造を拡張性のある発光材料であることを見出した。
【0047】
また、高効率の光出力を有する有機電解発光素子を提供するためには、有機電解発光素子に用いる発光材料の量子収率を高めることが不可欠である。主に縮合多環芳香族に窒素原子を導入した場合、導入する位置によっては三重項のn−π*軌道がTnレベル(nは1以上)の軌道となる。そして、このn−π*軌道(三重項)がS1軌道とエネルギー的に近接している場合、S1軌道からn−π*軌道へのエネルギー失活が起こりやすく、発光材料の量子収率の低下が引き起こりやすい。しかし、窒素原子を導入する位置及び分子骨格に導入する置換基の種類を適切に選択することによって、n−π*軌道(三重項)とS1軌道とのエネルギー差を大きくし量子収率の低下を改善することができる。分子軌道計算により、窒素原子を導入する位置をシュミレーションし、量子収率を高く維持できる分子骨格の設計により一般式[1]で示されるX1およびX2の位置に窒素原子を導入することがより好ましい。
【0048】
さらに窒素原子を導入する位置のみならず分子骨格に導入する置換基の位置及び種類を適切に設計することにより、分子振動が制御された発光スペクトルの単分散化及び半値幅を減少させることが可能であり色純度のよい発光材料を提供することができる。
【0049】
さらに、一般式[1]で示されるR1、R2に置換基を導入することで、化合物間の分子会合を防ぐことにより、有機電解発光素子の発光材料として使用する際に、発光材料自身の分子会合による長波長化を防ぎ、色純度のよい有機電解発光素子を提供できる。
【0050】
さらに、一般式[1]で示されるX9およびX10の位置は反応性が高く、この位置に置換基を導入した構造として、例えば一般式[3]で表されるZのように環構造を導入することで化学的安定性が増すことができる。
【0051】
本発明は、以上の考察のもとに分子設計し発明がなされたものである。
【0052】
上記一般式[1]乃至[5]において、置換あるいは未置換のアルキル基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0053】
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−オクチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、パーフルオロブチル基、5−フルオロペンチル基、6−フルオロヘキシル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、ヨードメチル基、2−ヨードエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、4−フルオロシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等
【0054】
置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基、カルバゾイル基などが挙げられる。なかでも、導電性や、ガラス転移温度の観点から、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、カルバゾイル基が好ましい。
【0055】
置換あるいは未置換のアラルキル基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0056】
ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルイソプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、9−アントリルメチル基、2−(9−アントリル)エチル基、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2―クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロベンジル基、2―ブロモベンジル基、3−ブロモベンジル基、4−ブロモベンジル基等
【0057】
置換あるいは未置換のアリール基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0058】
フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−トリフルオロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、メシチル基、4−tert−ブチルフェニル基、ジトリルアミノフェニル基、ビフェニル基
【0059】
置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0060】
ナフチル基、アセナフチレニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、クリセニル基、ジベンゾクリセニル基、ベンゾアントリル基、ジベンゾアントリル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペンタセニル基、フルオレニル基、9,9−ジヒドロアントリル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基等
【0061】
置換あるいは未置換の複素環基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0062】
ピリジル基、ピロリル基、ビピリジル基、メチルピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ターピロリル基、チエニル基、ターチエニル基、プロピルチエニル基、フリル基オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基等
【0063】
置換あるいは無置換の縮合多環複素環基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0064】
キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、キナゾリニル基、フェナントリジニル基、インドリジニル基、フェナジニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、ジアザフルオレニル基
【0065】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0066】
上記置換基がさらに有しても良い置換基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0067】
メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基などのアルキル基、フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、チエニル基、ピロリル基、などの複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基などのアミノ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基
【0068】
以下、本発明の縮合複素環化合物の具体的な構造式を示す。但し、これらは代表例を例示しただけで、本発明は、これに限定されるものではない。
【0069】
[化合物例1]
【0070】
【化6】

【0071】
Y:フェニレン基、ビフェニレン基などの2価以上の連結基。
1,R2:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基、ブチル基などのアルキル基。
【0072】
1,R2が異なる場合は、下表に示すR1,R2はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
[化合物例2]
【0081】
【化7】

【0082】
Y:フェニレン基、ビフェニレン基などの2価以上の連結基。
1,R2:少なくとも一方がピリジル基などの複素環基あるいはキノリル基である縮合多環複素基。
【0083】
1,R2が異なる場合は、下表に示すR1,R2はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0084】
【表8】

【0085】
【表9】

【0086】
[化合物例3]
【0087】
【化8】

【0088】
Y:ナフチレン基、アンスリレン基、フルオレニレン基などの縮合多環芳香族からなる2価以上の連結基。
1,R2:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基などのアルキル基である化合物例。
【0089】
1,R2が異なる場合は、下表に示すR1,R2はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0090】
【表10】

【0091】
【表11】

【0092】
【表12】

【0093】
【表13】

【0094】
【表14】

【0095】
【表15】

【0096】
【表16】

【0097】
[化合物例4]
【0098】
【化9】

【0099】
Ar1,Ar2:フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、あるいはナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
1,R2:水素原子またはメチル基、エチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基。
【0100】
Ar1,Ar2が異なる場合は、下表に示すAr1,Ar2はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0101】
【表17】

【0102】
【表18】

【0103】
【表19】

【0104】
【表20】

【0105】
[化合物例5]
【0106】
【化10】

【0107】
Ar1,Ar2:少なくとも一方がフルオランテニル基、ピレニル基、クリセニル基などの4環以上の縮合多環芳香族基
1,R2:水素原子またはメチル基、エチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基。
【0108】
Ar1,Ar2が異なる場合は、下表に示すAr1,Ar2はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0109】
【表21】

【0110】
【表22】

【0111】
【表23】

【0112】
【表24】

【0113】
[化合物例6]
【0114】
【化11】

【0115】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基などのアルキル基。
Ar:ナフチル基、フルオレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基などの縮合多環芳香族基。
【0116】
2,R3が異なる場合は、下表に示すR2,R3はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0117】
【表25】

【0118】
【表26】

【0119】
【表27】

【0120】
【表28】

【0121】
【表29】

【0122】
【表30】

【0123】
【表31】

【0124】
【表32】

【0125】
[化合物例7]
【0126】
【化12】

【0127】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基などのアルキル基。
Ar:ジフェニルアミノ基などの置換アミノ基。
【0128】
2,R3が異なる場合は、下表に示すR2,R3はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0129】
【表33】

【0130】
【表34】

【0131】
【表35】

【0132】
[化合物例8]
【0133】
【化13】

【0134】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
3,R4:水素原子あるいはメチル基などのアルキル基。
【0135】
【表36】

【0136】
【表37】

【0137】
【表38】

【0138】
[化合物例9]
【0139】
【化14】

【0140】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはナフチル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
4:水素原子あるいはメチル基などのアルキル基。
【0141】
【表39】

【0142】
[化合物例10]
【0143】
【化15】

【0144】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
4:水素原子あるいはメチル基などのアルキル基。
【0145】
【表40】

【0146】
【表41】

【0147】
[化合物例11]
【0148】
【化16】

【0149】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
3,R4:水素原子あるいはメチル基などのアルキル基。
【0150】
【表42】

【0151】
【表43】

【0152】
【表44】

【0153】
[化合物例12]
【0154】
【化17】

【0155】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2乃至R4:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
【0156】
【表45】

【0157】
【表46】

【0158】
[化合物例13]
【0159】
【化18】

【0160】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
3,R4:メチル基などのアルキル基。
【0161】
【表47】

【0162】
[化合物例14]
【0163】
【化19】

【0164】
1:水素原子またはメチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基などのアルキル基。
【0165】
【表48】

【0166】
【表49】

【0167】
[化合物例15]
【0168】
【化20】

【0169】
Y:フェニレン基、ビフェニレン基などの2価以上の連結基。
1,R2:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基、ブチル基などのアルキル基。
【0170】
1,R2が異なる場合は、下表に示すR1,R2はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0171】
【表50】

【0172】
【表51】

【0173】
【表52】

【0174】
【表53】

【0175】
[化合物例16]
【0176】
【化21】

【0177】
Ar1,Ar2:フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、あるいはナフチル基、フルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
1,R2:水素原子またはメチル基、エチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基。
【0178】
Ar1,Ar2が異なる場合は、下表に示すAr1,Ar2はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0179】
【表54】

【0180】
【表55】

【0181】
[化合物例17]
【0182】
【化22】

【0183】
1:水素原子またはメチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基などのアルキル基。
Ar:フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基などの縮合多環芳香族基。
【0184】
2,R3が異なる場合は、下表に示すR2,R3はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0185】
【表56】

【0186】
【表57】

【0187】
【表58】

【0188】
[化合物例18]
【0189】
【化23】

【0190】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
3,R4:水素原子あるいはメチル基などのアルキル基。
【0191】
【表59】

【0192】
【表60】

【0193】
[化合物例19]
【0194】
【化24】

【0195】
1:水素原子またはメチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
4:水素原子あるいはメチル基などのアルキル基。
【0196】
【表61】

【0197】
【表62】

【0198】
【表63】

【0199】
[化合物例20]
【0200】
【化25】

【0201】
1:水素原子またはメチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基、トリル基などのアリール基またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基などのアルキル基。
【0202】
【表64】

【0203】
【表65】

【0204】
[化合物例21]
【0205】
【化26】

【0206】
Ar1,Ar2:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
1,R2:水素原子またはメチル基、エチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基。
【0207】
Ar1,Ar2が異なる場合は、下表に示すAr1,Ar2はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0208】
【表66】

【0209】
【表67】

【0210】
[化合物例22]
【0211】
【化27】

【0212】
1:水素原子またはメチル基などのアルキル基。
2,R3:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基などのアルキル基
Ar:フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基などの縮合多環芳香族基。
【0213】
2,R3が異なる場合は、下表に示すR2,R3はそれぞれが入れ替わっていてもよい。
【0214】
【表68】

【0215】
【表69】

【0216】
【表70】

【0217】
[化合物例23]
【0218】
【化28】

【0219】
1:水素原子またはメチル基、エチル基などのアルキル基。
2:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基
3,R4:水素原子あるいはメチル基などのアルキル基。
【0220】
【表71】

【0221】
[化合物例24]
【0222】
【化29】

【0223】
1:水素原子またはメチル基などのアルキル基
2,R3:フェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基
4:水素原子あるいはメチル基などのアルキル基。
【0224】
【表72】

【0225】
【表73】

【0226】
[化合物例25]
【0227】
【化30】

【0228】
1:水素原子またはメチル基などのアルキル基
2,R3:フェニル基、トリル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基、またはメチル基などのアルキル基。
【0229】
【表74】

【0230】
【表75】

【0231】
[化合物例26]
【0232】
【化31】

【0233】
1:水素原子またはフェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
2:水素原子またはフェニル基、ビフェニル基などのアリール基、あるいはナフチル基、フルオレニル基、ピレニル基などの縮合多環芳香族基。
【0234】
【表76】

【0235】
[化合物例27]
【0236】
【化32】

【0237】
1:水素原子またはフェニル基などのアリール基、またはフルオレニル基などの3環以下の縮合多環芳香族基。
2:水素原子またはフェニル基、ビフェニル基などのアリール基、あるいはナフチル基、フルオレニル基、ピレニル基などの縮合多環芳香族基。
【0238】
【表77】

【0239】
本発明の縮合複素環化合物はベンゾフルオランテン骨格の特定の位置に窒素原子が少なくとも一つ導入された含窒素芳香族複素環構造を有する。そのため安定な非晶質膜性を形成することができ、優れた電子輸送性を示す。これらの特徴から、電荷輸送性材料として電子写真感光体、有機電界発光素子、光電変換素子、有機太陽電池等に好適に使用できる。また、有機電界発光素子に適用すると、高い発光効率と素子の低電圧化に寄与することができるため、有機電界発光素子材料として好適である。
【0240】
次に、本発明の有機発光素子について詳細に説明する。
【0241】
本発明の有機発光素子は、少なくとも一方が透明か半透明な電極材料によって形成される陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に狭持された一または複数の有機化合物を含む層を少なくとも有する有機発光素子である。好ましくは、一対の電極間に電圧を印加することにより発光する電界発光素子である。
【0242】
そして有機化合物を含む層の少なくとも一層、好ましくは発光領域のある少なくとも一層、より好ましくは発光層が、上記本発明の縮合複素環化合物の少なくとも一種を含有する。
【0243】
また、縮合複素環化合物を含む層がホストとゲストの2つ以上の化合物からなる場合、該ホストまたはゲストが本発明の縮合複素環化合物であることが好ましい。なお、本発明におけるゲストとは、有機EL素子の発光領域において、正孔と電子の再結合に応答して主として光を発する化合物のことであり、発光領域を形成する他の化合物(ホスト)に含有させるものである。
【0244】
本発明の縮合複素環化合物をゲストとして用いる場合の含有量としては、0.01重量%以上80重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.1重量%以上30重量%以下であり、特に好ましくは、0.1重量%以上15重量%以下である。ゲスト材料はホスト材料からなる層全体に均一あるいは濃度勾配を有して含まれるか、あるいはある領域に部分的に含まれてゲスト材料を含まないホスト材料層の領域があってもよい。
【0245】
また、本発明の縮合複素環化合物をゲストとして用いる場合、ゲストよりもエネルギーギャップ(UV測定の光学吸収端から算出した値)の大きいホストを含むことが好ましい。これによりゲストからホストへのエネルギー移動を制御し、ゲストのみからの発光により発光効率を高めることができる。
【0246】
また、本発明の縮合複素環化合物をゲストとして用いる場合、ゲストの還元電位がホストの還元電位より0.3V以上高いことが好ましい。これにより駆動電圧が低く長い期間高輝度を保ち、通電劣化の減少を可能にすることができる。
【0247】
本発明の縮合複素環化合物を含む層は、発光層のみでもよいが、必要に応じ、発光層以外の層(例えば正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、電子障壁層など)に適用することができる。
【0248】
本発明の有機発光素子においては、本発明の縮合複素環化合物を真空蒸着法や溶液塗布法により陽極及び陰極の間に形成する。その有機層の厚みは10μmより薄く、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.5μm以下の厚みに薄膜化することが好ましい。
【0249】
図1乃至図5に本発明の有機発光素子の好ましい例を示す。
【0250】
図1は、本発明の有機発光素子の一例を示す断面図である。図1は、基板1上に、陽極2、発光層3及び陰極4を順次設けた構成のものである。ここで使用する発光素子は、それ自体でホール輸送能、エレクトロン輸送能及び発光性の性能を単一で有している化合物を使う場合や、それぞれの特性を有する化合物を混ぜて使う場合に有用である。
【0251】
図2は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図2は、基板1上に、陽極2、ホール輸送層5、電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。この場合は、発光物質としてホール輸送性かあるいは電子輸送性のいずれか、あるいは両方の機能を有している材料をそれぞれの層に用い、発光性の無い単なるホール輸送物質あるいは電子輸送物質と組み合わせて用いる場合に有用である。また、この場合、発光層は、ホール輸送層5あるいは電子輸送層6のいずれかから成る。
【0252】
図3は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図3は、基板1上に、陽極2、ホール輸送層5、発光層3,電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。これは、キャリヤ輸送と発光の機能を分離したものであり、ホール輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した化合物を適時組み合わせて用いられ、極めて材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の化合物が使用できる。そのため、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層3に各キャリヤあるいは励起子を有効に閉じこめて、発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0253】
図4は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図4は、図3に対して、ホール注入層7を陽極2側に挿入した構成であり、陽極2とホール輸送層5の密着性改善あるいはホールの注入性改善に効果があり、低電圧化に効果的である。
【0254】
図5は本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図5は、図3に対してホールあるいは励起子(エキシトン)が陰極4側に抜けることを阻害する層(ホール/エキシトンブロッキング層8)を、発光層3、電子輸送層6間に挿入した構成である。イオン化ポテンシャルの非常に高い化合物をホール/エキシトンブロッキング層8として用いる事により、発光効率の向上に効果的な構成である。
【0255】
ただし、図1乃至図5はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明の有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、ホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成されるなど多様な層構成をとることができる。
【0256】
本発明の有機発光素子は、図1乃至図5のいずれの形態でも使用することができる。
【0257】
特に、本発明の縮合複素環化合物を用いた有機層は、発光層、電子輸送層あるいはホール輸送層として有用であり、また真空蒸着法や溶液塗布法などによって形成した層は結晶化などが起こりにくく経時安定性に優れている。
【0258】
本発明は、特に発光層の構成成分として、本発明の縮合複素環化合物を用いるが、必要に応じてこれまで知られている低分子系およびポリマー系のホール輸送性化合物、発光性化合物あるいは電子輸送性化合物などを一緒に使用することもできる。
【0259】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0260】
正孔(ホール)注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入を容易にし、また注入されたホールを発光層に輸送する優れたモビリティを有することが好ましい。正孔注入輸送性能を有する低分子および高分子系材料としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0261】
トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、およびポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子
【0262】
本発明の有機発光素子において使用される化合物以外に使用できる主に発光機能に関わる材料としては、以下に示す化合物が挙げられる。
【0263】
縮合環芳香族化合物(例えばナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、コロネン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、ルブレンなど)、キナクリドン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、ナイルレッド、ピラジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、有機金属錯体(例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体)およびポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)誘導体等の高分子誘導体
【0264】
電子注入輸送性材料としては、陰極からの電子の注入を容易にし、注入された電子を発光層に輸送する機能を有するものから任意に選ぶことができ、ホール輸送材料のキャリア移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入輸送性能を有する材料としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0265】
オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体等
【0266】
本発明の有機発光素子において、本発明の化合物を含有する層およびその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。特に塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0267】
上記結着樹脂としては、広範囲な結着性樹脂より選択できる。例えば、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0268】
ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等
【0269】
また、これらは単独または共重合体ポリマーとして1種または2種以上混合してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0270】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は単独で用いるか、あるいは複数併用することもできる。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成をとることもできる。
【0271】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、ルテニウム、チタニウム、マンガン、イットリウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはリチウム−インジウム、ナトリウム−カリウム、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム、マグネシウム−インジウム等、複数の合金として用いることができる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で用いるか、あるいは複数併用することもできる。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成をとることもできる。
【0272】
本発明で用いる基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜などを用いて発色光をコントロールする事も可能である。
【0273】
なお、作成した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属などをカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0274】
本発明の素子は、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を作成し、それに接続して作成することも可能である。
【0275】
また、素子の光取り出し方向に関しては、ボトムエミッション構成(基板側から光を取り出す構成)および、トップエミッション(基板の反対側から光を取り出す構成)のいずれも可能である。
【実施例】
【0276】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0277】
<実施例1>[例示化合物No.1308の製造方法]
本発明の例示化合物1308は、例えば以下に説明するような方法により製造できる。
【0278】
(1)中間体化合物1:3−(9,9−ジメチル−9H−フルオレ−2−イル)−フロ[3,4−c]−ピリジン−1−(3H)−オンの合成
【0279】
【化33】

【0280】
窒素雰囲気下、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン4.35g(30.8mmol)をテトラヒドロフラン(60ml)の溶媒に溶解させ、−30℃に冷却した。その後、ノルマルブチルリチウム17.5mL(1.6mmol/L溶液28.0mmol)をゆっくり滴下した。滴下後、0℃まで昇温させ15分攪拌した後、−70℃まで冷却した。−70℃下でイソニコチノニトリル1.46g(14.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(30ml)を15分かけて滴下した。70℃下でさらに30分攪拌した後、9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−カルバルデヒド6.24g(28.1mmol)のテトラヒドロフラン溶液(15ml)を10分かけて滴下した。−70℃下でさらに30分攪拌した後、0℃までゆっくり昇温させ、水を加えて反応を停止した。クロロホルムを加え有機層を分離し水で4回洗浄後、溶媒を留去して得られた残渣にクロロホルム(50ml)、シリカゲル10gを加え、3時間加熱還流下攪拌した。室温まで冷却後、再度溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=2:1)で精製し、中間体化合物1を2.41g得た。
【0281】
(2)例示化合物1308の合成
【0282】
【化34】

【0283】
窒素雰囲気下、2−ヨード−9,9−ジメチル−9H−フルオレン2.94g(9.19mmol)をヘプタン(88mL)に溶解させ、−30℃に冷却した。その後、ノルマルブチルリチウム5.7mL(1.6mmol/L溶液9.12mmol)をゆっくり滴下した。−30℃下で30分攪拌した後、0℃まで昇温させ10分攪拌した後、−50℃まで冷却した。−50℃下で中間体化合物1(1.48g、4.52mmol)のトルエン溶液(90mL)を滴下し、0℃までゆっくり昇温させた。0℃にて水を加え反応を停止した後、酢酸を5mL添加した。トルエンを加え有機層を分離し水で2回洗浄後、溶媒を留去して得られた残渣にキシレン(45mL)を加え、続いてアセナフチレン1.39g(9.13mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物1.75g(9.20mmol)を加えた。そして、加熱還流下8時間攪拌した。室温まで冷却後水を加え反応を停止し、炭酸ナトリウムを加えクロロホルムで2回抽出を繰り返し、有機層を分離した。水で有機層を2回洗浄した後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=30:1)で精製し、例示化合物1308を0.38g得た。
【0284】
Waters社製の質量分析装置を用い、この化合物のM+である636.3を確認した。
【0285】
さらに、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した(図6)。
【0286】
例示化合物1308のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク435nm、半値幅62nmであり、色純度の優れた青色発光スペクトルを示した(図13)。
【0287】
実施例1の2−ヨード−9,9−ジメチル−9H−フルオレンの代わりに以下の化合物を用いた他は実施例1と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
【0288】
(例示化合物No.1404):1−ブロモ−ピレン
【0289】
さらに、実施例1の2−ヨード−9,9−ジメチル−9H−フルオレン及び9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−カルバルデヒドの代わりにそれぞれ以下の化合物を用いた他は実施例1と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(例示化合物No.1410):1−ブロモ−ピレン、ピレン−1−カルバルデヒド
(例示化合物No.1425):3−ブロモ−フルオランテン、フルオランテン−3−カルバルデヒド
(例示化合物No.1322):4−ブロモ−2−tert−ブチル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン、2−tert−ブチル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−4−カルバルデヒド
【0290】
さらに、実施例1のイソニコチノニトリルの代わりにピコリン酸を用いる以外は実施例1と同様の方法で例示化合物No.2511を合成する事が出来る。
【0291】
<実施例2>[例示化合物No.1309の製造方法]
【0292】
【化35】

【0293】
J.Org.Chem.31,248(1966)に記載の方法に従い、例示化合物No.1308を出発原料に用いることにより、例示化合物No.1309を合成することができる。以下にその具体的方法を示す。
【0294】
窒素雰囲気下,水素化ナトリウムのジメチルスルホキシド懸濁液を70℃に加熱し,例示化合物No.1308のジメチルスルホキシド溶液を水素化ナトリウムの懸濁液に滴下する。70℃下で4時間攪拌した後、室温まで冷却後し水を加え反応を停止し、クロロホルムで2回抽出を繰り返し、有機層を分離する。溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル系)で精製し、例示化合物1309を得ることができる。
【0295】
<実施例3>[例示化合物No.1303の製造方法]
(1)中間体化合物3:3−フェニルフロ[3,4−c]ピリジン−1(3H)−オンの合成
【0296】
【化36】

【0297】
窒素雰囲気下、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン14.35g(105.5mmol)をテトラヒドロフラン(200ml)の溶媒に溶解させ、−30℃に冷却した。その後、ノルマルブチルリチウム60mL(1.6mmol/L溶液 96.1mmol)をゆっくり滴下した。滴下後、0℃まで昇温させ15分攪拌した後、−70℃まで冷却した。−70℃下でイソニコチノニトリル5.00g(48.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(100ml)を15分かけて滴下した。70℃下でさらに30分攪拌した後、ベンズアルデヒド10.2g(96.1mmol)のテトラヒドロフラン溶液(50ml)を5分かけて滴下した。−70℃下でさらに30分攪拌した後、0℃までゆっくり昇温させ、水を加えて反応を停止した。クロロホルムを加え有機層を分離し水で4回洗浄後、溶媒を留去して得られた残渣にクロロホルム(50ml)、シリカゲル35gを加え、6時間加熱還流下攪拌した後、酢酸を加えさらに加熱還流下3時間攪拌した。室温まで冷却後、再度溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=8:1)で精製し、中間体化合物3を2.06g得た。
【0298】
(2)例示化合物1303の合成
【0299】
【化37】

【0300】
窒素雰囲気下、ヘプタン30mLにフェニルリチウム6.3mL(1.04mmol/L溶液6.55mmol)を滴下し、−50℃下まで冷却した。−50℃下で中間体化合物3(1.00g、4.73mmol)のトルエン溶液(55mL)を滴下し、0℃までゆっくり昇温させた。0℃にて水を加え反応を停止した後、酢酸を5mL添加した。得られた固形物をろ過しヘプタンで固形物を洗浄した。
【0301】
続いて、得られた固形物をキシレン30mLに溶かし、パラトルエンスルホン酸一水和物2.70g(14.19mmol)、4,7−ジ−ターシャリーブチルアセナフチレン3.11g(11.76mmol)を加えて、加熱還流下26時間攪拌した。室温まで冷却後、水を加え反応を停止し、炭酸ナトリウムを加えクロロホルムで2回抽出を繰り返し、有機層を分離した。水で有機層を2回洗浄した後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、例示化合物1303を0.37g得た。
【0302】
なお、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した(図7)。
【0303】
例示化合物1303のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク422nm、半値幅58nmであり、色純度の優れた青色発光スペクトルを示した(図14)。
【0304】
<実施例4>[例示化合物No.1536の製造方法]
(1)中間体化合物4:4−ブロモ−7,12−ジフェニルアセナフト[1,2−g]イソキノリン及び中間体化合物5:3−ブロモ−7,12−ジフェニルアセナフト[1,2−g]イソキノリンの合成
【0305】
【化38】

【0306】
窒素雰囲気下、ヘプタン30mLにフェニルリチウム6.3mL(1.04mmol/L溶液6.55mmol)を滴下し、−50℃下まで冷却した。−50℃下で中間体化合物3(0.925g、4.52mmol)のトルエン溶液(55mL)を滴下し、0℃までゆっくり昇温させた。0℃にて水を加え反応を停止した後、酢酸を5mL添加した。得られた固形物をろ過しヘプタンで固形物を洗浄した。
【0307】
続いて、得られた固形物をキシレン90mLに溶かし、パラトルエンスルホン酸一水和物4.83g(25.39mmol)、5−ブロモアセナフチレン2.55g(11.04mmol)を加えて、加熱還流下30時間攪拌した。室温まで冷却後、水を加え反応を停止し、炭酸ナトリウムを加えクロロホルムで2回抽出を繰り返し、有機層を分離した。水で有機層を2回洗浄した後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、中間体化合物4及び5の混合物(中間体化合物4:中間体化合物5=1:1)を0.43g得た。
【0308】
なお、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した(図8)。
【0309】
(2)例示化合物No.1536の合成
【0310】
【化39】

【0311】
窒素雰囲気下、中間体化合物4及び5の混合物0.30g(0.62mmol)と4,4,5,5−テトラメチル−2−(ナフタレン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン0.11g(0.62mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム0.04g(0.03mmol)をトルエン15mL、エタノール8mL、10%炭酸ナトリウム水溶液6mLの混合溶媒に懸濁させた。この溶液を過熱還流下1時間攪拌し、中間体化合物4及び中間体化合物5の消失を確認した後、室温まで冷却し、水を添加して反応を停止した。有機層を分離した後、水で有機層を2回洗浄した。その後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、例示化合物1536の混合物1536−1と1536−2を1:1の組成比で0.192g得た。
【0312】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)により、この化合物のM+である531.9を確認した。
【0313】
さらに、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した(図9)。
【0314】
例示化合物1536のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク439nm、半値幅59nmであり、色純度の優れた青色発光スペクトルを示した(図15)。
【0315】
また、実施例4のイソニコチノニトリルの代わりにピコリン酸を用い、4,4,5,5−テトラメチル−2−(ナフタレン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロランを用いる代わりに、2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]−フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを用いる以外は、実施例4と同様な方法で例示化合物2611を合成することができる。
【0316】
また、実施例4のイソニコチノニトリルの代わりにピリミジン−4−カルボン酸を用い、4,4,5,5−テトラメチル−2−(ナフタレン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロランを用いる代わりに、2−(フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン用いる以外は実施例4と同様の方法で例示化合物No.3101を合成する事が出来る。
【0317】
また、実施例4のイソニコチノニトリルの代わりにピリミジン−4−カルボン酸を用い、4,4,5,5−テトラメチル−2−(ナフタレン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロランを用いる代わりに、2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]−フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを用いる以外は、実施例4と同様な方法で例示化合物3109を合成することができる。
【0318】
<実施例5>[例示化合物No.1540の製造方法]
【0319】
【化40】

【0320】
窒素雰囲気下、中間体化合物4及び5の混合物0.50g(1.03mmol)と4,4,5,5−テトラメチル−2−(ナフタレン−1−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン0.19g(1.10mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム0.06g(0.05mmol)をトルエン25mL、エタノール13mL、10%炭酸ナトリウム水溶液10mLの混合溶媒に懸濁させた。この溶液を過熱還流下2時間攪拌し、中間体化合物4及び中間体化合物5の消失を確認した後、室温まで冷却し、水を添加して反応を停止した。有機層を分離した後、水で有機層を2回洗浄した。その後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、例示化合物1540の混合物1540−1と1540−2を1:1の組成比で0.476g得た。
【0321】
NMR測定によりこの化合物の構造を確認した(図10)。
例示化合物1540のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク434nm、半値幅62nmであり、色純度の優れた青色発光スペクトルを示した(図16)。
【0322】
<実施例6>[例示化合物No.1515の製造方法]
【0323】
【化41】

【0324】
窒素雰囲気下、中間体化合物4及び5の混合物0.30g(0.62mmol)と2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]−フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン0.34g(0.64mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム0.04g(0.03mmol)をトルエン15mL、エタノール8mL、10%炭酸ナトリウム水溶液6mLの混合溶媒に懸濁させた。この溶液を過熱還流下2時間攪拌し、中間体化合物4及び中間体化合物5の消失を確認した後、室温まで冷却し、水を添加して反応を停止した。有機層を分離した後、水で有機層を2回洗浄した。その後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、例示化合物1515の混合物1515−1と1515−2を1:1の組成比で0.372g得た。
【0325】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)により、この化合物のM+である807.85を確認した。
【0326】
さらに、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した(図11)。
【0327】
例示化合物1515のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク461nm、半値幅58nmの青色発光スペクトルを示した(図17)。
【0328】
また、実施例6において、2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]−フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの代わりに以下の化合物を用いる以外は実施例6と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(例示化合物1501):2−(フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
【0329】
(例示化合物1529):7,12−ジフェニル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−アセナフト[1,2−g]イソキノリン
(例示化合物1534):4,4,5,5−テトラメチル−2−(ピレン−1−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン
【0330】
(例示化合物1517):2−(7,12−ビス(2,7−ジ−tert−ブチル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−4−イル)ベンゾ[k]フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
【0331】
<実施例7>[例示化合物No.1901の製造方法]
【0332】
【化42】

【0333】
J.Org.Chem.66,94(2001)に記載の方法に従い、窒素雰囲気下、ジグライム9mLにターシャリーブトキシカリウム3.03g(27mmol)、DBN4.47g(36mmol)を加え加熱還流下1時間攪拌した。その後、例示化合物1515 0.13g(1.23mmol)を一度に加え、さらに加熱還流下2時間攪拌した。室温まで冷却した後氷浴で5℃まで冷却し、水、クロロホルムを順次添加した。有機層を分離した後、飽和塩化アンモニウム水溶液水で2回洗浄した後さらに有機層を2回水洗し、溶媒を留去して得られた残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製し、例示化合物1901を0.80g得た。
【0334】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)により、この化合物のM+である805.31を確認した。
【0335】
さらに、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した(図12)。
【0336】
例示化合物1901のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク597nm、半値幅21nmであり、色純度の優れた赤色発光スペクトルを示した(図18)。
【0337】
また、実施例7において、例示化合物1515の代わりに以下の化合物を用いる以外は実施例7と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(例示化合物1701):例示化合物1501
(例示化合物1927):例示化合物1517
(例示化合物2301):例示化合物1517
(例示化合物2321):例示化合物1301
(例示化合物2701):例示化合物2601
(例示化合物2801):例示化合物2611
(例示化合物2919):例示化合物2511
(例示化合物3201):例示化合物3101
(例示化合物3301):例示化合物3109
(例示化合物3413):例示化合物3008
【0338】
<実施例8>[例示化合物No.3512の製造方法]
本発明の例示化合物3512は、例えば以下に説明するような方法により製造できる。
【0339】
(1)中間体化合物6:3−メトキシナフタレン−2−イルボロン酸の合成
【0340】
【化43】

【0341】
窒素雰囲気下、2−メトキシナフタレン15.0g(94.9mmol)をテトラヒドロフラン(300ml)に溶解させ0℃に冷却した後、ノルマルブチルリチウム238mL(1.6mmol/L溶液190mmol)をゆっくり滴下した。滴下後2時間0℃下で攪拌した後−10℃まで冷却し、トリメチルボレート33mL(340mmol)を10分かけて滴下した。室温まで昇温させ終夜で攪拌した後、0.2規定の塩酸を加えて反応を停止した。クロロホルムを加え有機層を分離し飽和塩化アンモニウム水溶液水で1回、水で4回洗浄後、溶媒を留去した。得られた残渣にヘプタン、トルエンを加え再結晶することで精製し、中間体化合物6を4.81g得た。
【0342】
(2)中間体化合物7:3−ヒドロキシナフタレン−2−イルボロン酸の合成
【0343】
【化44】

【0344】
窒素雰囲気下、中間体化合物6の4.81g(23.8mmol)を塩化メチレン(96ml)に溶解させ0℃に冷却した後、トリブロモボレートの塩化メチレン溶液71mL(1.0mmol/L溶液71mmol)を15分かけて滴下した。滴下後室温まで昇温させ5時間攪拌した後、反応溶液を水に転送して反応を停止した。クロロホルムを加え有機層を分離し水で3回洗浄後、溶媒を留去した。得られた残渣にメタノール、ヘプタンを加え結晶を析出させた後、これをろ過することで中間体化合物7を3.96g得た。
【0345】
(3)中間体化合物7から例示化合物3512までの合成ルート
【0346】
【化45】

【0347】
中間体化合物7を出発原料に上記合成ルートにて6工程の反応を経て例示化合物3512を合成することができる。
【0348】
また、実施例8の2−(フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの代わりに、4,4,5,5−テトラメチル−2−(ピレン−1−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン用いる以外は実施例8と同様の方法で例示化合物No.3509を合成する事が出来る。
【0349】
<実施例9>
図3に示す構造の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
【0350】
基板1としてのガラス基板上に、陽極2としての酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜したものを透明導電性支持基板として用いた。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いで純水で洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄したものを透明導電性支持基板として使用した。
【0351】
正孔輸送材料として下記構造式で示される化合物13を用いて、濃度が0.1wt%のクロロホルム溶液を調製した。
【0352】
【化46】

【0353】
この溶液を上記のITO電極上に滴下し、最初に500RPMの回転で10秒、次に1000RPMの回転で40秒スピンコートを行い、膜を形成した。この後10分間、80℃の真空オーブンで乾燥し、薄膜中の溶剤を完全に除去し、ホール輸送層5を製膜した。
【0354】
次に、ホール輸送層5の上に前記例示化合物1308と、以下に構造式を示す化合物14を重量比5:95で共蒸着して30nmの発光層3を設けた。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1nm/sec以上0.2nm/sec以下の条件で製膜した。
【0355】
【化47】

【0356】
更に電子輸送層6として2、9−ビス[2−(9,9‘−ジメチルフルオレニル)]−1、10−フェナントロリンを真空蒸着法にて30nmの膜厚に形成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1nm/sec以上0.2nm以下/secの条件であった。
【0357】
次に、フッ化リチウム(LiF)を先ほどの有機層の上に、真空蒸着法により厚さ0.5nm形成し、更に真空蒸着法により厚さ100nmのアルミニウム膜を設け電子注入電極(陰極4)とする有機発光素子を作成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は、フッ化リチウムは0.01nm/sec、アルミニウムは0.5nm/sec以上1.0nm/sec以下の条件で成膜した。
【0358】
得られた有機EL素子は、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。
【0359】
この様にして得られた素子に、ITO電極(陽極2)を正極、Al電極(陰極4)を負極にして、4Vの印加電圧で、発光効2.0lm/Wの青色発光が観測された。また、CIE色度はx=0.15,y=0.10と色純度の良好な青色発光が観測された。
【0360】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、電流密度を30mA/cm2に保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度690cd/m2から100時間後563cd/m2と輝度劣化は小さかった。
【0361】
なお、例示化合物1308および化合物14のエネルギーギャップは日立(株)のUV測定器U−3010で光学吸収測定を行った。例示化合物1308の希薄溶液の光学吸収端は426nmを示し、これからエネルギーギャップを2.91eVと算出した。化合物14のスピンコート膜の光学吸収端は417nmを示し、これからエネルギーギャップを2.97eVと算出した。
【0362】
<実施例10>
実施例9の化合物14の代わりに下記構造式で示される化合物15を用いた以外は実施例9と同様の方法により素子を作成した。
【0363】
【化48】

【0364】
本実施例の素子は4Vの印加電圧で、発光効率2.2lm/W青色発光が観測された。また、CIE色度はx=0.15,y=0.10と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0365】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、電流密度を30mA/cm2に保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度931cd/m2から100時間後690cd/m2と輝度劣化は小さかった。
【0366】
なお、化合物15のエネルギーギャップは日立(株)のUV測定器U−3010で光学吸収測定を行い、そのスピンコート膜の光学吸収端405nmからエネルギーギャップを3.06eVと算出した。
【0367】
<実施例11>
図4に示す構造の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
【0368】
基板1としてのガラス基板上に、陽極2としての酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜したものを透明導電性支持基板として用いた。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いで純水で洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄したものを透明導電性支持基板として使用した。
【0369】
正孔注入材料として下記構造式で示される化合物16を用いて、濃度が0.1wt%のクロロホルム溶液を調製した。
【0370】
【化49】

【0371】
この溶液を上記のITO電極上に滴下し、最初に500RPMの回転で10秒、次に1000RPMの回転で40秒スピンコートを行い、膜を形成した。この後10分間、80℃の真空オーブンで乾燥し、薄膜中の溶剤を完全に除去し、ホール注入層7を製膜した。
次に、ホール注入層7の上にホール輸送層として前記化合物13を真空蒸着法にて15nmの膜厚にホール輸送層5を形成した。
【0372】
その上に、例示化合物1303と、以下に構造式を示す化合物17を重量比5:95で共蒸着して30nmの発光層3を設けた。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1nm/sec以上0.2nm/sec以下の条件で製膜した。
【0373】
【化50】

【0374】
更に電子輸送層6として2、9−ビス[2−(9,9‘−ジメチルフルオレニル)]−1、10−フェナントロリンを真空蒸着法にて30nmの膜厚に形成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1〜0.2nm/secの条件であった。
【0375】
次に、フッ化リチウム(LiF)を先ほどの有機層の上に、真空蒸着法により厚さ0.5nm形成し、更に真空蒸着法により厚さ100nmのアルミニウム膜を設け電子注入電極(陰極4)とする有機発光素子を作成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は、フッ化リチウムは0.01nm/sec、アルミニウムは0.5〜1.0nm/secの条件で成膜した。
【0376】
得られた有機EL素子は、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。
【0377】
この様にして得られた素子に、ITO電極(陽極2)を正極、Al電極(陰極4)を負極にして、4.9Vの印加電圧で、発光効率1.39lm/Wの青色発光が観測された。また、CIE色度はx=0.15,y=0.08と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0378】
なお、例示化合物1303および化合物17のエネルギーギャップは日立(株)のUV測定器U−3010で光学吸収測定を行った。例示化合物1303の希薄溶液の光学吸収端は419nmを示し、これからエネルギーギャップを2.96eVと算出した。化合物17のスピンコート膜の光学吸収端は390nmを示し、これからエネルギーギャップを3.18eVと算出した。
【0379】
<実施例12>
実施例11の化合物17の代わりに前記化合物14を用い、例示化合物1303の代わりに例示化合物1536を用いる以外は実施例11と同様の方法により素子を作成した。
本実施例の素子は4.7Vの印加電圧で、発光効率2.65lm/Wの青色発光が観測された。また、CIE色度はx=0.14,y=0.13と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0380】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、電流密度を30mA/cm2に保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度1178cd/m2から100時間後1021cd/m2と輝度劣化は小さかった。
【0381】
なお、例示化合物1536のエネルギーギャップは日立(株)のUV測定器U−3010で光学吸収測定を行い、その希薄溶液の光学吸収端438nmからエネルギーギャップを2.83eVと算出した。
【0382】
<実施例13>
実施例11の化合物17の代わりに前記化合物14を用い、例示化合物1303の代わりに例示化合物1515を用い、化合物14と例示化合物1515の重量比を2:98で共蒸着した以外は実施例11と同様の方法により素子を作成した。
【0383】
本実施例の素子は4.4Vの印加電圧で、発光効率5.03lm/Wの青色発光が観測された。また、CIE色度はx=0.14,y=0.21と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0384】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、電流密度を30mA/cm2に保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度2118cd/m2から100時間後2031cd/m2と輝度劣化は小さかった。
【0385】
なお、例示化合物1515のエネルギーギャップは日立(株)のUV測定器U−3010で光学吸収測定を行い、その希薄溶液の光学吸収端454nmからエネルギーギャップを2.73eVと算出した。
【0386】
<比較例1>
実施例10の例示化合物1308の代わりに下記構造式で示される化合物18を用いた以外は実施例10と同様の方法により素子を作成した。
【0387】
【化51】

【0388】
本例の素子は4Vの印加電圧で、発光効率1.9lm/Wの発光が観測された。
【0389】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、電流密度を30mA/cm2に保ち20時間電圧を印加したところ、初期輝度840cd/m2から20時間後に406cd/m2と初期の輝度と比べて半分以下の輝度になった。
【0390】
<実施例14>
以下の化合物をサイクリックボルタンメトリー法により酸化還元電位を測定した結果を下表に示す。
【0391】
実施例10の発光層に用いたゲスト(例示化合物1308)
比較例1の発光層に用いたゲスト(化合物18)
実施例10と比較例1に共通で発光層に用いたホスト(化合物15)
【0392】
なお、測定は、前記各化合物の1×10-4mol/L以上1×10-6mol/L以下のN,N−ジメチルホルムアミド溶液中で、下記条件で行った。
【0393】
支持電解物質:0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムパークロレイト
温度:25℃
参照電極:Ag/AgNO3
対向電極:白金電極を
作用電極:グラシックカーボン
【0394】
【表78】

【0395】
表1の結果及び実施例10と比較例1の結果から、発光層に用いるホスト材料とゲスト材料の還元電位の差が有機電界発光素子の通電劣化の減少に関連を示している。すなわち、発光層に用いたゲストとして、例示化合物1308の還元電位は−2.03Vであり、化合物18の還元電位−2.17Vよりも高い。また、発光層に用いた共通のホストと例示化合物1308との還元電位の差が0.34Vと大きいことから、例示化合物1308は化合物18よりも電子親和力が大きい耐久性に優れた材料である。化合物15をホスト材料として用いる場合、発光層内でホスト材料の還元電位よりも0.3V以上高いゲスト材料である例示化合物1308と組み合わせることで長時間高輝度を保ち、定電流通電劣化の減少を可能していることがわかった。
【0396】
<実施例15>[例示化合物No.1635の製造方法]
【0397】
【化52】

【0398】
窒素雰囲気下、キシレン100mLにターシャリーブトキシナトリウム0.192g(2.0mmol)、中間体化合物4及び5の混合物0.48g(1.0mmol)とジ−4−t−ブチルフェニルアミン0.44g(1.50mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム 0.10g、トリt−ブチルフォスフィン 0.050gをキシレン100mLに懸濁させた。この溶液を過熱還流下5時間攪拌し、中間体化合物4及び中間体化合物5の消失を確認した後、室温まで冷却し、水を添加して反応を停止した。有機層を分離した後、水で有機層を2回洗浄した。その後、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘプタン=1:1)で精製し、例示化合物1653の混合物1653−1と1653−2を1:1の組成比で0.483g得た。
【0399】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)により、この化合物のM+である684を確認した。
【0400】
さらに、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した(図19)。
【0401】
例示化合物1653のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク529nm、半値幅66.3nmであり、色純度の優れた緑色発光スペクトルを示した。
【0402】
また、実施例15において、ジ−4−t−ブチルフェニルアミンの代わりに以下の化合物を用いる以外は実施例15と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(ジ−4−メチルフェニルアミン):例示化合物1625
(カルバゾール):例示化合物1636
【0403】
<実施例16>
実施例11の化合物17の代わりに下記化合物19を用い、例示化合物1303の代わりに例示化合物1635を用い、化合物19と例示化合物1635の重量比を5:95で共蒸着した以外は実施例11と同様の方法により素子を作成した。
本実施例の素子は4.3Vの印加電圧で、発光効率8.74lm/Wの緑色発光が観測された。また、CIE色度はx=0.39,y=0.59と色純度の良好な緑色の発光が観測された。
【0404】
さらに、この素子に大気雰囲気下、電流密度を165mA/cm2に保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度15700cd/m2から100時間後12420cd/m2と輝度劣化は小さかった。
【0405】
【化53】

【図面の簡単な説明】
【0406】
【図1】本発明の有機発光素子の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図6】例示化合物1308の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図7】例示化合物1303の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図8】中間体化合物4及び5の混合物の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図9】例示化合物1536の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図10】例示化合物1540の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図11】例示化合物1515の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図12】例示化合物1901の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図13】例示化合物1308のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図14】例示化合物1303のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図15】例示化合物1536のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図16】例示化合物1540のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図17】例示化合物1515のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図18】例示化合物1901のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図19】例示化合物1653の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0407】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 ホール輸送層
6 電子輸送層
7 ホール注入層
8 ホール/エキシトンブロッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示される部分構造を少なくとも一つ有することを特徴とする縮合複素環化合物。
【化1】

(一般式[1]において、X1乃至X10は、環を構成する、置換基Rを有する炭素原子、または窒素原子を示す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基、または単結合を表わす。ただし、X1乃至X10の少なくとも一つは窒素原子を表す。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよく、隣接する置換基は環構造を形成していてもよい。
1およびR2は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基、または単結合を表わし、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記Rは、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基、または単結合を表わし、R1およびR2は、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基、または単結合を表わすことを特徴とする請求項1に記載の縮合複素環化合物。
【請求項3】
前記R、R1、R2のいずれもが、単結合でないこと特徴とする請求項1または2に記載の縮合複素環化合物。
【請求項4】
下記一般式[2]で示されることを特徴とする請求項1または2に記載の縮合複素環化合物。
【化2】

(一般式[2]において、X1乃至X10は、環を構成する、置換基Rを有する炭素原子、または窒素原子を示し、X1乃至X10の少なくとも一つは窒素原子を表す。置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
Yは、単結合あるいは置換あるいは無置換のアルカン、置換あるいは無置換のアルケン、置換あるいは無置換のアルキン、置換あるいは無置換のアミン、置換あるいは無置換の芳香環、置換あるいは無置換の複素環、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族、置換あるいは無置換の縮合多環複素環から誘導されるn価の連結基を表す。
1およびR2は、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わし、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよい。
YはX1乃至X10の炭素原子、R1およびR2いずれかと結合している。
nは2以上10以下の整数を表す。)
【請求項5】
下記一般式[3]で示されることを特徴とする請求項1または2に記載の縮合複素環化合物。
【化3】

(一般式[3]において、Zは環構造を表す。
1乃至X8は、環を構成する、置換基Rを有する炭素原子、または窒素原子を示し、X1乃至X8の少なくとも一つは窒素原子を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わす。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
1およびR2は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わし、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
下記一般式[4]で示されることを特徴とする請求項5に記載の縮合複素環化合物。
【化4】

(一般式[4]において、X1乃至X8は、環を構成する、置換基Rを有する炭素原子、または窒素原子を示し、X1乃至X8の少なくとも一つは窒素原子を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わす。
1乃至R10はハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わし、R1乃至R10はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
下記一般式[5]で示されることを特徴とする請求項5に記載の縮合複素環化合物。
【化5】

(一般式[5]において、X1乃至X18は、環を構成する置換基Rを有する炭素原子または窒素原子を示し、X1乃至X18の少なくとも一つは窒素原子を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わす。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
1乃至R4はハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基、シアノ基から選ばれる基を表わし、R1乃至R4はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記X1あるいはX2が窒素原子であることを特徴とする請求項1乃至6に記載の縮合複素環化合物。
【請求項9】
前記X1、X2、X17、X18のうち少なくとも一つが窒素原子であることを特徴とする請求項7に記載の縮合複素環化合物。
【請求項10】
少なくとも一方が透明か半透明な電極材料によって形成される陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機化合物を含む1または複数の層を有する有機発光素子において、前記有機化合物を含む層のうち少なくとも一層が、請求項1乃至8のいずれかに記載の縮合複素環化合物を少なくとも1種以上含むことを特徴とする有機発光素子。
【請求項11】
前記縮合複素環化合物を含む層が、ホストとゲストの少なくとも2種の化合物から構成されることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記ゲストが前記縮合複素環化合物であり、前記ホストが該縮合複素環化合物よりもエネルギーギャップの大きい化合物であることを特徴とする請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記ゲストの還元電位が前記ホストの還元電位より0.3V以上高いことを特徴とする請求項11または12に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記縮合複素環化合物を含む層が、発光領域のある少なくとも一層であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記発光領域のある少なくとも一層が発光層であることを特徴とする請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記一対の電極間に電圧を印加することにより発光する電界発光素子であることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項に記載の有機発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2008−56658(P2008−56658A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118218(P2007−118218)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】