説明

繊維および不織布

【課題】溶融紡糸時に目ヤニの発生や糸切れがなく、風合いに優れ、臭いのないポリビニルアルコール系繊維を提供する。
【解決手段】 下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)および多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)を含有することを特徴とする繊維を用いる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂組成物(以下「PVA系繊維」と称す。)を含む繊維および不織布に関するものであり、さらに詳しくは、溶融紡糸性に優れたPVA系樹脂組成物を含有する繊維およびそれを用いた不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水溶性樹脂からなる繊維およびそれを用いた織布あるいは不織布を用いた製品が各種用途に用いられている。なかでも、水溶性樹脂であるPVA系樹脂を原料とする繊維製品は、その引張強度が高いために有用であり、様々な分野に使用されている。
【0003】
PVA系樹脂を繊維化する方法としては、PVA系樹脂の水溶液を硫酸ナトリウムなどの水溶液中にノズルから押出して凝固させる、いわゆる湿式紡糸法が一般的である。しかしながら、湿式紡糸法は、凝固性に優れた高ケン化度PVA系樹脂にしか適用できず、かかる高ケン化度PVA系樹脂は結晶性が高く、高温の水にしか溶解しないため、かかる方法では水溶性に優れたPVA系樹脂繊維を得ることは不可能であった。
また、熱可塑性樹脂の紡糸法として一般的である溶融紡糸法の場合、PVA系樹脂は溶融開始温度と熱分解温度が近く、安定した溶融紡糸は困難であった。
【0004】
かかる課題に対し、低重合度のPVA系樹脂に可塑剤として多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を含有させた、溶融紡糸性に優れた樹脂組成物を用いたPVA系樹脂繊維が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、未変性のPVAよりも、α−オレフィン等で変性されたPVA系樹脂を用いることによって、より溶融粘度が低下し、紡糸性が向上することが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物を用いたとしても、実際には200℃以上の溶融紡糸温度を必要とし、このような高温で紡糸を行うことにより、可塑剤など低分子化合物が分解・揮発して紡糸口金の周りに樹脂の固まり(目ヤニと言う)が発生し、ロングラン性や製品の品質が低下するという問題があった。また、より細い繊維を得るため、紡糸後に繊維を強く、または高速に引取る場合には、構成成分の相溶性が不充分なためか、糸切れが発生するという問題があった。
また、水溶性に優れた繊維を得るにはPVA系樹脂として低ケン化度のものを用いる必要があるが、この場合、溶融紡糸時にPVA系樹脂中の酢酸基が熱分解し、繊維に酢酸臭が残存する場合があった。
【特許文献1】特開2001−302868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、溶融紡糸時の加工性に優れ、高速での紡糸引取りが可能で、風合いに優れ、臭いのないPVA系樹脂繊維の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構造を有するPVA系樹脂(A)を用い、これに可塑剤として多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)を配合した樹脂組成物を繊維原料として用いることで、本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)および多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)を含有することを特徴とする繊維に存する。
【化1】

【発明の効果】
【0008】
本発明の効果は、PVA系樹脂として、前記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂を採用することにより、可塑剤である多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)との相溶性が格段に向上したことによって得られたものである。
【0009】
すなわち、本発明の繊維に用いられるPVA系樹脂組成物は、200℃以下の低温で溶融紡糸を行うことができるため、可塑剤の分解・揮発、および、PVA系樹脂自体の熱劣化が抑制され、ゲルや目ヤニが発生せず、ロングラン紡糸の際にも糸切れが起こらないため、生産性や製品の品質が低下することなく、安定した紡糸が容易となる。また、本発明に用いられるPVA系樹脂は、側鎖の1,2−ジオール構造のために、高ケン化度であっても結晶性が小さいため、水溶性に優れた繊維を得ることが可能である。
【0010】
本発明の繊維の特徴はPVA系樹脂としてPVAの側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を用いることである。
これに対し、PVA主鎖の主結合様式である1,3−グリコール結合を、ポリ酢酸ビニルの重合温度を通常よりも高温にすることによって頭−頭、あるいは尾−尾結合の比率を増やして得られる、主鎖1,2−グリコール結合の量が通常の値(1.8モル%程度)よりも多いPVAを溶融成形に供することが知られている(特開2001−181405号)。しかしながら、かかる主鎖1,2−グリコール結合は本発明のPVAの側鎖1,2−ジオール構造と比較して結晶性を低下させる効果が小さく、その水酸基はすべて通常のPVAと同様に二級水酸基であるため、本願で用いるPVA系樹脂(A)のような、一級水酸基に起因する強い水素結合、分子間凝集力、および可塑剤との相溶性向上効果を得ることはできない。
【0011】
また、末端に水酸基を有するα−オレフィンを共重合させて得られる側鎖にモノヒドロキシアルキル基を有するPVAを溶融成形に供することも公知(特開2001−302868号)であるが、かかる公報に例示された、主鎖に比較的長いアルキレン基を介して水酸基が結合したPVA系樹脂では溶融紡糸等の際に異常流動を起こすことがあり、紡糸性や相溶性向上効果にはさらなる改善が求められるものである。
【0012】
本発明の繊維は、不織布として良好な水溶解性・親水性が要求される各種用途、例えば、衣服、ケミカルレース等の刺繍用基材,自動車等の傷防止保護材,濾過フィルター,機密文章用の溶けてなくなる紙や洗剤・柔軟剤・農薬用の袋,医療用手術着等の用途として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0014】
本発明における繊維とは、単一繊維および複合繊維を意味する。
本発明の繊維は、主として下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)を主体とし、これに多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)を均一に混合した樹脂組成物からなる繊維であるが、求められる性能により、本発明の趣旨を阻害しない範囲において、さらに他の樹脂や添加物を均一に混合した樹脂組成物を用いたり、該樹脂組成物と他の樹脂を用いて複合繊維としてもよい。
【化2】

【0015】
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)について説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)中の上記構造単位(1)の含有量は通常1〜15モル%であり、好ましくは2〜12モル%、特に好ましくは3〜8モル%である。かかる含有量が少なすぎると融点が高くなり、熱分解温度との差が小さくなるため溶融紡糸温度範囲が狭くなり、溶融紡糸性が低下する。また、ロングラン性も著しく低下する傾向がある。多すぎると金属密着性が著しく増加し、ゲルの発生や熱架橋物・熱劣化物の発生が激しくなり、安定した紡糸ができなくなる傾向にある。
また、かかる含有量を調整する際に、構造単位(1)の含有量が異なる少なくとも2種のPVA系樹脂(A)をブレンドして調整することも可能であり、そのうちの少なくとも1種が構造単位(1)を含有しないPVA系樹脂であっても構わない。
ただし、構造単位(1)を含有するPVA系樹脂と、これを含有しないPVA系樹脂をブレンドして用いる場合においても、前者が主体であることが必要であり、構造単位(1)を含有するPVA系樹脂の含有量が60〜99重量%、特に70〜99重量%の範囲が好ましく用いられる。
【0016】
このようにして構造単位(1)の含有量が調整されたPVA系樹脂に関しては、その量は重量平均で算出しても差し支えなく、正確には1H−NMRの測定結果より算出することができる。
【0017】
また、PVA系樹脂(A)のケン化度は滴定法(JIS K6726)で測定した値で通常80〜99.9モル%、好ましくは85〜99.9モル%、特に好ましくは88〜99.9モル%である。ケン化度が低すぎると酢酸臭が発生し、熱安定性が低下して、長時間溶融紡糸時の安定性、すなわちロングラン性が悪くなる傾向にある。
PVA系樹脂は、ケン化度が低いものほど融点が低下し、熱溶融成形は容易になるが、ケン化度が低すぎると酢酸臭が発生し、熱安定性が低下して、ロングラン性が悪くなる傾向にある。本発明の樹脂組成物は、PVA系樹脂として高ケン化度のものを用いても良好な熱溶融成形性を示すことを特徴とするものである。
なお、本発明におけるケン化度とは、ビニルエステル系モノマーのエステル部分と、前記1,2−ジオール構造単位に対応するコモノマーのアシルオキシ部やカーボネート部、アセタール部の総量の水酸基への変化率(モル%)で表示される。
【0018】
PVA系樹脂(A)の重合度は水溶液粘度測定法(JIS K6726)で測定した値で通常200〜1200、好ましくは250〜750、特に好ましくは300〜500である。重合度が低すぎると繊維の強度が低くなり、糸切れ等が発生しやすくなり、高すぎると押出機内でのせん断発熱の発生により、樹脂が熱分解する傾向にある。
PVA系樹脂(A)の融点は、通常90〜220℃、さらには120〜200℃、特に好ましくは150〜180℃である
【0019】
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)の製造方法については特に限定されないが、[1]コモノマーとして3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン等を用い、これらとビニルエステル系モノマーと共重合して共重合体を得、次いでこれをケン化する方法、あるいは、[2]コモノマーとしてビニルエチレンカーボネート等を用いてこれらとビニルエステル系モノマーと共重合して共重合体を得、次いでこれをケン化、脱炭酸する方法、あるいは、[3]コモノマーとして2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等を用い、これらとビニルエステル系モノマーと共重合して共重合体を得、次いでケン化し、酸触媒を用いて水性溶液(水、または水/アセトン、水/炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒等)中にて脱ケタール化する方法等が挙げられる。
【0020】
なかでも、重合が良好に進行し、1,2−ジオール構造単位をPVA中に均一に導入しやすいという製造時の利点や、得られたPVAを溶融成形する際の問題点が少ない点、さらには最終的なフィルムの特性から、製造方法[1]の方法を採用することが好ましく、特に好ましくは、共重合反応性に優れる点で3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとビニルエステル系モノマーを共重合して得られた共重合体をケン化する方法である。さらには3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとして、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いることが好ましい。また、これらの前記モノマーの混合物を用いてもよい。
【0021】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等があげられる。なかでも、経済的な観点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0022】
なお、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニルを用い、これと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701、であり、これは後述のビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4、と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
また、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数は、Cx(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.003(65℃)であり、ビニルエチレンカーボネートの場合の、Cx(ビニルエチレンカーボネート)=0.005(65℃)や、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランの場合のCx(2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)=0.023(65℃)と比較して、重合の阻害要因となって重合度が上がりにくくなったり、重合速度低下の原因となることがないことを示すものである。
【0023】
また、かかる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、その共重合体をケン化する際に発生する副生物が主構造単位である酢酸ビニル構造単位に由来するものと同一であり、その後処理に特別な装置や工程を設ける必要がない点も、工業的に大きな利点である。また、少量の不純物として3,4−ジアセトキシ−1−ブタンや1,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−1−ブタン等を含んでいても良い。
【0024】
なお、3,4−ジオール−1−ブテンは、イーストマンケミカル社から、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは工業生産用ではイーストマンケミカル社、試薬レベルではアクロス社の製品を市場から入手することができる。また、1,4―ブタンジオール製造工程中の副生成物として得られる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを利用することも出来る。また、国際公開番号WO00/24702に記載の方法で、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを合成したものを使用することもできる。
【0025】
上記[2]の製法により製造された1,2−ジオール構造単位を有する水溶性PVAは、ケン化度が低い場合や、脱炭酸が不充分な場合には側鎖にカーボネート環が残存し、溶融成形時に脱炭酸することで成形物中に気泡が生じ、フィッシュアイの原因となったり、成分(B)との相溶性が低下する場合があるため、これに留意して使用する必要がある。および[3]により製造された1,2−ジオール構造単位を有する水溶性PVAも、製造方法[2]によるものと同様に、側鎖に残存したモノマー由来の官能基(アセタール環)が溶融成形時に脱離して、アルデヒド類の臭気の原因となる傾向があるため、これに留意して使用する必要がある。
【0026】
なお、共重合する際のコモノマーの使用量は、前述した一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位の所望の導入量に合わせて共重合割合を決定すればよい。
【0027】
また、本発明におけるPVA系樹脂(A)は、上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するPVA樹脂そのものに加え、本発明の効果を阻害しない範囲で少量(通常20%以下、好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下)の共重合可能な不飽和単量体を共重合したPVA樹脂を含むことを意味しており、他モノマーが多少共重合されていても、本発明の効果が得られることを意味する。
かかる不飽和単量体としては、例えば、エチレンやプロピレン等のα−オレフィン、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物などの誘導体、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル、アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などの化合物、などを挙げることができる。
【0028】
また、重合終了時にはラジカル重合において用いられる公知の重合禁止剤を反応系内に添加することが好ましく、かかる重合禁止剤としては、m−ジニトロベンゼン、アスコルビン酸、ベンゾキノン、α−メチルスチレンの二量体、p−メトキシフェノール等が挙げられる。
【0029】
このようにして得られた共重合体は、次いでケン化され、上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂(A)が得られる。
【0030】
また、本発明で使用されるPVA系(A)樹脂は、構造単位(1)を含有するPVA系樹脂とこれと異なる他のPVA系樹脂のブレンド物であってもよく、他のPVA系樹脂としては、構造単位が異なるもの、ケン化度が異なるもの、分子量が異なるものなどを挙げることができる。
【0031】
本発明の繊維に用いるPVA系樹脂組成物において、PVA系樹脂(A)はベースとなる樹脂である。その含有量は、樹脂組成物の総重量に対して通常50〜98重量%、好ましくは80〜98重量%、特に好ましくは90〜98重量%である。かかるPVA系樹脂(A)の含有量が少なすぎた場合は、繊維の強度が低下し、溶融張力が著しく減少し、溶融紡糸が不可能となる傾向がある。
【0032】
本発明では上記(A)成分と共に、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)を併用することを特徴とするものである。
以下、かかる多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)について説明する。
かかる付加物(B)は、多価アルコールの水酸基にアルキレンオキシドが付加した結果、エーテル結合および水酸基を有する化合物である。
かかる反応の模式図を、下記化学式(I)に示す。式中、R1は水酸基を1つ以上有する有機基であるが、便宜上水酸基を省略している。しかし、かかる水酸基も図示した水酸基と同様の反応をしうる。
【化3】

[式中、R1は水酸基を1つ以上有する有機基であり、R2〜R5は水素または有機基を示す。nおよびmは0以上の整数であり、その結合順序はランダム状でもブロック状でもよく、n+m>0である。]
また、アルキレンオキシドが多価アルコールの分子内または分子間の水酸基間を架橋した構造をとる場合もある。本発明で用いる多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)は、これら多価アルコールとアルキレンオキシドが反応して得られた反応物の混合物である。
【0033】
本発明では、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)の水酸基価が重要であり、付加物(B)が示す極性が樹脂(A)の極性に適する場合、両成分の相溶性がさらに向上すると推測できる。かかる付加物(B)の有する水酸基価(mgKOH/g)は、通常200〜1500mgKOH/g、好ましくは260〜935mgKOH/g、特に好ましくは315〜750mgKOH/gである。
【0034】
この付加物(B)における多価アルコールとは、複数の水酸基を有する化合物であり、通常2〜15価の多価アルコール、好ましくは2〜10価の多価アルコールであり、特に好ましくは3〜6価、殊に好ましくは3価の多価アルコールである。また、通常炭素数2〜20の多価アルコール、好ましくは炭素数3〜10の多価アルコールであり、特に好ましくは炭素数3〜6の多価アルコールである。
【0035】
かかる多価アルコール化合物は、脂肪族でも芳香族でもよいが好ましくは脂肪族アルコールであり、具体的にはグリセリン、およびジグリセリン等のグリセリン誘導体、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のポリメチレングリコール類、エチレングリコール、およびジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレングリコール誘導体、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコール等のプロピレングリコール誘導体、およびこれらの総称としてアルキレングリコール誘導体がある。さらに、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール等の2価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジ−2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、トリ−2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、ポリ−2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、等の水酸基を有するアミン類、およびこれらの2量体、3量体等の誘導体、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−(2−ヒドロキシプロピル)プロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等の3価アルコール類、ペンタエリスリトール、およびジ−ペンタエリスリトール、トリ−ペンタエリスリトール、ポリ−ペンタエリスリトール等のペンタエリスリトール2量体、3量体等のペンタエリスリトール誘導体、および4価アルコール類、トリメチロールメタン、およびジ−トリメチロールメタン、トリ−トリメチロールメタン、ポリ−トリメチロールメタン等のトリメチロールメタン2量体、3量体等のトリメチロールメタン誘導体、トリメチロールエタン、およびジ−トリメチロールエタン、トリ−トリメチロールエタン等のトリメチロールエタン2量体、3量体等のトリメチロールメタン誘導体、トリメチロールプロパン、およびジ−トリメチロールプロパン、トリ−トリメチロールプロパン等のトリメチロールプロパン2量体、3量体等のトリメチロールプロパン誘導体、およびこれらのトリメチロールアルカン2量体、3量体等のトリメチロールアルカン誘導体、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、グルコース、アラビニトール等の糖類、または5価および6価アルコール類、またはこれらとモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等のカルボン酸とのエステル化物などを挙げることができる。また、これらの性状としては、粉末状、顆粒状、液体状、ペースト状、エマルジョン状等任意の形態のものが使用可能である。
【0036】
また、かかる多価アルコール化合物の中でも、グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン誘導体が、PVA系樹脂(A)との相溶性が高い点で好ましく、かかる中でもグリセリンが相溶性・非ブリード性の点で殊に好ましい。
【0037】
この付加物(B)に用いるアルキレンオキシドとは、分子内にエポキシ環を少なくとも1つ有する化合物であり、エポキシ環を1つ有する化合物を1価のアルキレンオキシドとすると、通常1〜3価のアルキレンオキシド、好ましくは1価のアルキレンオキシドである。また、通常炭素数2〜20の多価アルキレンオキシド、好ましくは炭素数2〜10のアルキレンオキシドであり、特に好ましくは炭素数2〜6のアルキレンオキシドである。
【0038】
一価のアルキレンオキシドとは、具体的には、下記一般式(2)で表すことができる。
【化4】

[式中、R2〜R5は、水素原子または有機基をあらわす。]
【0039】
上記一般式(2)におけるR2ないしR5は、代表的には水素原子である。
上記一般式(2)における有機基としては、特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基、シクロブタン、シクロペンタン、シクロへキサン等のシクロアルキル基、シクロアルケニル基等の脂環式炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。 かかる有機基としては、通常炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基、特に好ましくは炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である。これらの炭化水素基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0040】
一般式(2)で表されるエポキシ化合物の具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン等のエポキシブタン類、1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン等のエポキシペンタン類、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン等のエポキシヘキサン類、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシへプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシへプタン、3−エチル−1,2−エポキシへプタン、3−プロピル−1,2−エポキシへプタン、3−ブチル−1,2−エポキシへプタン、4−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−プロピル−1,2−エポキシへプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシへプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシへプタン、2−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−エチル−3,4−エポキシへプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシへプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシヘプタン等のエポキシヘプタン類、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン等のエポキシオクタン類、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン等のエポキシノナン類、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン等のエポキシデカン類、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、4,5−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン等のエポキシウンデカン類、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン等のエポキシドデカン類、およびこれら炭素数2〜15の脂肪族エポキシ化合物があげられる。
【0041】
また、R8〜R11はそれぞれ結合した環であってもよく、例えば1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデカン等の脂環式エポキシ化合物があげられる。
【0042】
なかでも、好ましくはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、最も好ましいのはエチレンオキシドである。
【0043】
付加物(B)における、多価アルコール1モルに対するアルキレンオキシドが反応して付加した含有量は、平均して、通常1〜12モル、好ましくは2〜9モル、特に好ましくは2〜6モルである。更に詳しく記載するならば、PVAのケン化度が100〜98モル%の場合は、1〜4モル付加品が好ましく、ケン化度88〜97.9モル%の場合は、5〜9モル付加品が好ましい。かかるアルキレンオキシドの含有量が少なすぎた場合は、紡糸性が劣る傾向があり、多すぎた場合には、PVA系樹脂との相溶性が低下する傾向がある。
【0044】
付加物(B)として最も好ましいものは、グリセリンにエチレンオキサイドが付加した化合物であり、以下に示す化合物(3)である。
かかる付加物(B)を含む市販品として、日本油脂(株)社製“ユニオックスG−150” “ユニオックスG−180”があげられる。
【化5】

[式中、l,o,pは0以上の整数であり、l+o+p=2〜6である。]
【0045】
上述の多価アルコールおよびアルキレンオキシドを反応させる方法は特に限定するものではない。例えば水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物またはカリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルコキシド等の強塩基を触媒として、前記多価アルコールと共に加熱融解し、ここにアルキレンオキシドを吹き込みや滴下にて加える方法がある。
【0046】
本発明の繊維に用いるPVA系樹脂組成物中における(A)成分と(B)成分の割合は重量比にて、通常80/20〜98/2、好ましくは90/10〜98/2、得に好ましくは95/5〜98/2である。(B)成分が少なすぎた場合は、溶融紡糸時に糸切れが発生し、延伸性が劣る傾向があり、多すぎた場合には、強度が低下する傾向がある。また、成形物表面にブリードしてくる可能性がある。
【0047】
本発明の繊維に用いる樹脂組成物には、公知の添加剤を20重量%以下の割合で配合して使用することもできる。かかる添加剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール類、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール等の糖アルコール類等の可塑剤、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪族アミド化合物、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪族アミド化合物、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪族金属塩、分子量が500〜10000程度の低分子量エチレン、低分子量プロピレン等の低分子量ポリオレフィン等の滑材、およびホウ酸、リン酸等の無機酸、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、防腐剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填剤等があげられ、これらは必要に応じて適宜配合される。
【0048】
本発明の繊維に用いる樹脂組成物を調製するには、予めPVA系樹脂(A)と付加物(B)をドライブレンドした後、溶融混練してペレット化する方法や、溶融混練機に別々に一定割合で仕込みながら混練して、ペレット化する方法が挙げられる。
【0049】
本発明の繊維に用いる樹脂組成物の融点は、通常70〜220℃、好ましくは130℃以上200℃未満、特に好ましくは150〜180℃である。本発明におけるPVA系樹脂(A)の分解開始温度は、通常230〜250℃であり、かかる温度よりも融点が大幅に低い温度であるために、高温における成形加工を行っても、樹脂組成物の劣化がなく繊維とすることができる。
【0050】
本発明の繊維に用いる樹脂組成物のメルトフローレイト(MFR、190℃、荷重2160g)は、通常10〜100g/min、さらには15〜80g/min、特に好ましくは20〜50g/minである。MFRが大きすぎた場合には繊維強度が低下し、小さすぎた場合には延伸性が上がらない結果となる傾向がある。本発明のMFRは、JIS K 7210に準拠して求めることができる。
【0051】
次に、本発明の繊維の製造法について説明する。
紡糸法としては、特に限定されないが、公知の溶融紡糸機を用い、単一ノズルまたは複合ノズルから紡糸する方法があげられる。
紡糸温度は、樹脂組成物が溶融し、かつ変質しない温度で実施されればよい。かかる温度は、通常120〜230℃であり、好ましくは150℃以上210℃未満、特に好ましくは170〜190℃である。かかる温度が高すぎた場合には樹脂自体の分解が始まり、低すぎた場合には押出成型機のトルクがかかりすぎて溶融成形不可能という状態に陥る傾向がある。
【0052】
本発明の繊維は通常単一繊維として紡糸されるが、織布または不織布としたときの強度、柔軟性を良好とする為および表面親水性の付与のため、水溶性除去部分を含んだ繊維を紡糸するために、本願の樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂との複合繊維として紡糸されてもよい。以下、複合繊維中の本願の樹脂組成物を(α)成分、熱可塑性樹脂を(β)成分として略記する。本願でいう複合繊維とは、単繊維中に成分の異なる2種類以上の樹脂が2相以上存在する繊維のことを意味し、モノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよい。
【0053】
複合繊維の場合、複合化される熱可塑性樹脂としては特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系重合体、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系重合体等のホモポリマーあるいは共重合体、三元共重合体から任意に一あるいは二以上選択して使用することができる。
【0054】
繊維の横断面形状としては特に限定せず、例えば円形、楕円形、のみならず中空、三角形、四角形、菱形、星形、偏平形等の異型等いずれであってもよい。複合繊維の形状としては、例えば芯鞘型複合繊維、偏心鞘芯型複合繊維、並列型複合繊維、分割型複合繊維、海島型複合繊維が挙げられる。
【0055】
芯鞘型の場合は、鞘部分が(α)成分、芯部分が(β)成分である場合、および鞘部分が(β)成分、芯部分が(α)成分である場合のどちらでも採用可能である。表面親水性を求める場合は、鞘部分が(α)成分、芯部分が(β)成分となり、延伸性および強度を持った親水性繊維が完成する。また、中空繊維を求める場合は、鞘部分が(β)成分、芯部分が(α)成分となり、芯も複数本存在してもよい。次にこの芯部分を水溶解させることで、様々な中空繊維を作製できる。
【0056】
分割型の場合は、(α)成分によって(β)成分が複数のセグメントに分割された場合、および(β)成分が(α)成分によって複数のセグメントに分割された場合のどちらでも採用可能であるが、好ましくは(β)成分が(α)成分によって複数のセグメントに分割されたものである。分割形状は公知の形状を採用することができるが、通常放射状に偶数分割されたものであり、好ましくは放射状に4〜8分割されたものである。
【0057】
その他、海島構造の場合は、海成分と島成分に(α)成分・(β)成分を用いることにより、その配分比を調整することで、水溶解性・親水性・耐水性をコントロールした繊維が作製できる。また、島成分が(α)成分の時、その部分を水溶解して除去することにより、繊維の表面改質が可能である。
以上述べたように、(α)成分を含む混合紡糸を行うことにより、繊維の水溶性コントロール、風合い改善、表面改質、(α)成分を水溶解除去することによって得られる機能性繊維(中空繊維等)、等様々な繊維を作成することができる。更に成分比を調整することで、機能性の制御も可能である。
【0058】
複合繊維中の本発明の樹脂組成物(α)と前記熱可塑性樹脂(β)の複合比(容積比)は、通常1/9〜9/1、好ましくは2/8〜8/2、特に好ましくは3/7〜7/3であり、目的とする最終製品にふさわしい物性となるよう適宜調節する。本発明の樹脂組成物の複合比が小さすぎると親水性が全く発揮できなくなり、逆に多すぎると水中で水溶解するか分散状態になる傾向がある。
【0059】
得られた繊維は、必要に応じて延伸される。その際の延伸温度は通常75〜190℃、延伸倍率は通常1.5〜8倍である。
【0060】
また、得られた繊維は、必要に応じて捲縮付与装置で捲縮を与え、所定の長さに切断してもよい。
【0061】
なお、繊維の繊維度および繊維径は特に限定されるものではなく、成形方法および用途等に応じて好ましい値が選択されるが、繊維度は通常0.01〜10デニール、好ましくは0.1〜4デニールであり、繊維径は通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μmである。ただし、特殊用途では極細・ナノ繊維の領域の繊維径を作製する場合もある。このような範囲に設定することにより、繊維強度と柔軟性、水溶性が得られ、特にケミカルレース基材用織布としたときの強度と低温での良好な水溶性が両立するという効果を奏するようになる。
【0062】
なお、本発明の繊維は、通常、不織布または織布として用いるが、特に不織布として用いるのが望ましい。また、単繊維として用い、中空または板状基材に捲き付けて配設した形で用いてもよい。
【0063】
得られた繊維を用いて不織布を作成する方法については特に限定されず、不織布の形態としては、カード法、エアレイ法などにより得た乾式ウェブ、湿式法により得た湿式ウェブを単独、またはこれらを少なくとも1層含み2層以上に積層したものをニードルパンチ法またはスパンレース法などによる機械的交絡処理、熱ロール法、熱風接着法、超音波接合法などの熱接合処理、またはそれらの組み合わせにより不織布が作成される。
【0064】
また、本発明の繊維となる樹脂組成物は、樹脂組成物から直接不織布とする例えばスパンボンド法・メルトブローン法等の成形法に適している。上記スパンボンド法とは、溶融押出機によりポリマーを溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸ヘッドに導いてノズル孔から吐出させ、この吐出糸条を冷却装置により冷却した後、エアジェットノズル等の吸引装置を用いて、目的の繊度となるように高速気流で牽引した後、開繊しながら移動式の捕集面の上に堆積させてウェブを形成させ、このウェブを加熱等により部分圧着して巻き取ることによって長繊維不織布を得る方法である。なかでも原料から直接製造することができ、長繊維であるため強度に優れた不織布が得られることから、スパンボンド法が好ましく用いられる。
【0065】
例えば、繊維ウェブにスパンレース処理を施し、分割型複合繊維を分割させて繊度0.5デニール以下の極細繊維を形成させるとともに繊維間を交絡させるとよい。
【0066】
このようにして得られた不織布の目付けや見掛け密度は特に限定されるものではないが、目付けは通常15〜200g/m2、好ましくは20〜100g/m2、特に好ましくは30〜80g/m2、であり、目付けが小さすぎた場合には、不織布として刺繍用基布と
した場合、刺繍針が折れるという問題が発生し、風合いにも欠ける傾向があり、大きすぎた場合には不織布の強度が弱くなる傾向がある。
【0067】
このようにして得られた本発明の繊維からなる不織布は、その特性の一つとして、水溶性に優れるものである。従って、例えば、かかる不織布をケミカルレース基材用のような刺繍用基材に使用した場合、低温で基材が水溶解するため、刺繍自体の退色や刺繍糸の劣化が抑制され好ましいものである。その他、不織布として良好な水溶解性・親水性が要求される各種用途、例えば、衣服、自動車等の傷防止保護材,濾過フィルター,機密文章用の溶けてなくなる紙や洗剤・柔軟剤・農薬用の袋,医療用手術着等の用途としても有用である。
【実施例】
【0068】
つぎに、本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。また、以下、「部」および「%」は重量基準である。
【0069】
製造例1
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.5部、メタノール20.5部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン11.0部(8モル%対仕込み酢酸ビニル)を酢酸ビニルの初期仕込み率10%、酢酸ビニル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを9時間等速滴下の条件で仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
【0070】
ついで、上記メタノール溶液をメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して10.5ミリモルとなる割合で加えて4時間ケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で、固液分離により分離し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中70℃、12時間で乾燥することにより目的のPVA系樹脂を作製した。
【0071】
得られたPVA系樹脂(A1)のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、98.9モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、300であった。融点は示差熱分析装置DSCで測定したところ168℃であった。また、前記式(1a)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、1H−NMR(300MHzプロトンNMR、d6−DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、8モル%であった。([図1]参照)
【0072】
[1,2−ジオール構造単位の含有量算出法]
1H−NMRにおいて前記構造式(1)で表される1,2−ジオールを示すピークは、[図1]においてA(4.2〜4.3ppm)、B(3.4〜3.6ppm)、C(1.7〜1.9ppm)の3つがある。これは、下記化学式(1a’)に示したプロトンとそれぞれ一致する。
【化6】

また、主鎖に直接結合する水酸基を示すピークは、a1(4.6ppm),a2(4.4ppm),a3(4.2ppm)で表され、主鎖のメチレンを示すピークは、b1(1.0〜1.7ppm)で表される。
変性度は、それぞれのピークの積分値より、下記式にて求めた。
【0073】
【数1】

【0074】
【数2】

【0075】
【数3】

【0076】
【数4】

【0077】
製造例2
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.0部、メタノール23.8部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン8.2部(6モル%対仕込み酢酸ビニル)を酢酸ビニルの初期仕込み率10%、酢酸ビニル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを9時間等速滴下の条件で仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
【0078】
ついで、上記メタノール溶液をメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して10.5ミリモルとなる割合で加えて4時間ケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で、固液分離により分離し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中70℃、12時間で乾燥することにより目的のPVA系樹脂を作製した。
【0079】
得られたPVA系樹脂(A2)のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、98.9モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、300であった。また、前記式(1a)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ6モル
%であった。そして、その融点は190℃であった。
【0080】
製造例3
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.3部、メタノール20.8部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン10.9部(8モル%対仕込み酢酸ビニル)を酢酸ビニルの初期仕込み率10%、酢酸ビニル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを9時間等速滴下の条件で仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.26モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
【0081】
ついで、上記メタノール溶液をメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して7.0ミリモルとなる割合で加えて2時間ケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で、固液分離により分離し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中70℃、12時間で乾燥することにより目的のPVA系樹脂を作製した。
【0082】
得られたPVA系樹脂(A3)のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、96.0モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、300であった。また、前記式(1a)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ8モル
%であった。そして、その融点は158℃であった。
【0083】
製造例4
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.5部、メタノール27.4部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン4.1部(3モル%対仕込み酢酸ビニル)を酢酸ビニルの初期仕込み率10%、酢酸ビニル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを9時間等速滴下の条件で仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.22モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
【0084】
ついで、上記メタノール溶液をメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して4.0ミリモルとなる割合で加えて2.5時間ケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で、固液分離により分離し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中70℃、12時間で乾燥することにより目的のPVA系樹脂を作製した。
【0085】
得られたPVA系樹脂(A4)のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、88.8モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、300であった。また、前記式(1a)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ3モル
%であった。そして、その融点は175℃であった。
【0086】
実施例1
(ポリビニルアルコール系樹脂組成物の作製)
PVA系樹脂(A)として、A1を用い、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)として、グリセリンにエチレンオキシドを2モル%反応させた化合物(”ユニオックスG−180”日本油脂(株)製)を用い、(A)成分を95重量部、(B)成分を5重量部、すなわち、(A)/(B)=95/5重量比となるように配合し、二軸押出機を用い、下記の条件にて樹脂温190℃で溶融押出ペレット化した。得られた樹脂組成物を以下のように評価した。
【0087】
ペレット化条件
押出機 :単軸押出機(15mmφ L/D=60)
スクリューパターン=フルフライト CR=3.12
温度パターン:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D
=90/120/150/170/180/180/
190/190/190℃
スクリーンメッシュ:90/90
スクリューパターン:フルフライト
スクリュー回転数:250rpm
その他:真空ベント 冷却ベルト ペレタイザー
【0088】
[評価]
<MFR>
得られたペレットを使用し、MFR(190℃、荷重2160g)測定した。結果を表2に示す。
【0089】
<融点>
DSCにて融点を測定した。結果を表2に示す。測定条件は下記に示す。
FirstRun:−30〜215℃、(10℃/min昇温)
SecondRun:−30〜230℃、(10℃/min昇温)
【0090】
得られた樹脂組成物を、図1に示すような装置を用いて190℃にて溶融紡糸した。
押出機 :単軸押出機(30mmφ L/D=22)
スクリューパターン=フルフライト CR=3.12
温度パターン:C1/C2/C3/C4/A/D
=170/180/190/190/190/190℃
紡糸ヘッド径:0.5mmφ 紡糸本数12穴
メッシュ :4層(80/100/250/50メッシュ)
吐出量 :0.7g/min (1穴あたり)
【0091】
[評価]
<紡糸引取り速度>
紡糸時に紡糸ノズル部の空気圧力を1.0kg/cm2、2.5kg/cm2、4.5kg/cm2と段階的に変化させ、最も低い空気圧力にて糸切れが起こったときの繊維径か
ら、下記式を利用して紡糸引取り速度を算出した。結果を表2に示す。
式中、比重は1.2、吐出量の単位は(g/min)である。
【数5】

【0092】
得られた繊維について、以下のように評価した。
[評価]
<繊維径>
得られた繊維の径を測定した。結果を表2に示す。
【0093】
<加工性>
上記で得られた樹脂を溶融成形した場合の加工性について、押出機内のトルク安定性、押出機から吐出する際の吐出量の変動、可塑剤の揮発性、目ヤニの発生、紡糸時の熱劣化物および架橋ゲルの発生、フィルターの目詰まりや糸切れしない等のロングラン性を総合的に評価した。
◎・・・紡糸が可能であり、問題なく紡糸できた。
○・・・紡糸が可能であるが、吐出が不安定であった。
△・・・紡糸は可能であるが、可塑剤の揮発(発煙)や目ヤニが発生し
長時間にわたる紡糸作業ができなかった。
×・・・頻繁な糸切れが発生し、紡糸不可能であった。
【0094】
<繊維の風合い>
パネラー5名により、本発明の樹脂組成物を用いて得られた繊維束を手で触り、その感触をポリプロピレン樹脂繊維束と比較して評価した。
◎・・・繊維が柔らかく、表面がサラサラした感触だった。
○・・・繊維の柔らかさが少し不足しており、硬い感触であった。
×・・・繊維自体が湿っており、ベタベタした感触であった。
【0095】
<繊維の臭い>
パネラー5名により、本発明の樹脂組成物を用いて得られた繊維束のにおいを嗅ぎ、臭気の程度を評価した。
◎・・・無臭であった。
○・・・かすかに熱劣化臭がした。
×・・・熱劣化臭および酢酸臭が明らかにわかった。
【0096】
実施例2
実施例1において、PVA系樹脂(A)として、A2を使用した以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0097】
実施例3
実施例1において、PVA系樹脂(A)としてA3を使用し、(A)成分を90重量部、(B)成分を10重量部、すなわち、(A)/(B)=90/10重量比となるように配合した以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った
【0098】
実施例4
実施例1において、PVA系樹脂(A)としてA3を使用し、付加物(B)としてグリセリンにエチレンオキシドを6モル%反応させた化合物を用い、さらに(A)成分を98重量部、(B)成分を2重量部、すなわち、(A)/(B)=98/2重量比となるように配合した以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0099】
実施例5
実施例1において、PVA系樹脂(A)としてA3を使用し、付加物(B)としてグリセリンにエチレンオキシドを3モル%反応させた化合物を用いた以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0100】
実施例6
実施例1において、PVA系樹脂(A)としてA3を使用し、付加物(B)としてグリセリンにエチレンオキシドを4モル%反応させた化合物を用いた以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0101】
実施例7
実施例1において、PVA系樹脂(A)としてA4を使用し、付加物(B)としてグリセリンにエチレンオキシドを6モル%反応させた化合物を用い、さらに(A)成分を98重量部、(B)成分を2重量部、すなわち、(A)/(B)=98/2重量比となるように配合した以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0102】
比較例1
実施例1において、PVA系樹脂(A)として、上記構造式(1a)に示す構造単位を含有しない、未変性のポリビニルアルコール樹脂を使用した以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0103】
比較例2
実施例1において、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)を配合しなかった以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0104】
比較例3
実施例3において、付加物(B)に代えてグリセリン(”RG”日本油脂(株)製)を用いた以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0105】
比較例4
実施例1において、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)に代えて重合度300のポリエチレングリコール(”PEG300”日本油脂(株)製)を用いた以外は同様に繊維を得て、同様に評価を行った。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
上記結果から、実施例品はいずれも融点が低い樹脂組成物が得られ、190℃にて紡糸した場合の加工性が良好であり、紡糸引取り速度が大きい値でも紡糸できたため、強度が強く、従来得られなかったような繊維径の細い繊維が得られた。かかる繊維は風合いがよくにおいも無い、優れた繊維であった。
これより、かかる繊維を例えばスパンボンド法等により直接成形して得られた不織布は、成形性が良好であり、強度に優れ、かつ繊維径が細いために水溶性に優れることが容易に推測できるものである。
しかしながら、何ら変性されていない一般的なPVAを用いた比較例1は、同190℃にて溶融紡糸することができなかった。また、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)を含有しない上記構造式(1a)に示す構造単位を含有するPVAのみを用いた比較例2では、樹脂組成物が半未溶融状態であったため糸切れが多発し、紡糸することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の繊維は、不織布として良好な水溶解性・親水性が要求される各種用途、例えば、衣服、ケミカルレース等の刺繍用基材,自動車等の傷防止保護材,濾過フィルター,機密文章用の溶けてなくなる紙や洗剤・柔軟剤・農薬用の袋,医療用手術着等の用途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】製造例1において得られたNMRチャートである。
【図2】実施例における紡糸に用いる装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0111】
1 押出機
2 紡糸ヘッド
3 引き取り装置
4 繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)および多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)を含有することを特徴とする繊維。
【化1】

【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、ビニルエステル系モノマーと3,4−ジアシロキシ−1−ブテンの共重合物をケン化して得られたものであることを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項3】
多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)における、多価アルコール1モルに対するアルキレンオキシドの平均付加量が1〜12モルであることを特徴とする請求項1または2記載の繊維。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系記樹脂(A)および多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(B)の割合が、重量比にて(A)/(B)=80/20〜98/2であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の繊維。
【請求項5】
繊維の径が、0.1μm〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の繊維。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の繊維からなる不織布。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−13558(P2009−13558A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150502(P2008−150502)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】