説明

繊維ウェブを処理するための構造化針

反復して貫通することで繊維ウェブを処理する構造化針は、柄、当該柄の端部を構成する作業部分先端、及び当該作業部分先端に形成された多枝凹部を有する。多枝凹部は複数の一般に溝形の枝からなる。枝の少なくとも幾つかは180°と異なる角度で互いに指向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルト、繊維バット、織物又はメリヤス生地に作用する構造化針に関する。これらをまとめて繊維ウェブと呼ぶ。構造化針は、所望の構造を得るために一般に予め凝縮された(予め強化された)生地に作用する針を意味する。
【背景技術】
【0002】
多数の種類の構造化針がフェルトの製造において使用される。構造化針はたいていの場合構造化機械の針ボードに多数固定され、針ボードが振れ運動を行う際に繊維バットのような予め凝縮された生地を反復して貫通する。この操作により繊維バットの構造化が行われる。
【0003】
この操作のためにしばしば構造化針が使用される。その先端は溝状凹部を具備する。この構成の結果、構造化すべきバットの個々のフィラメントが構造化針の先端にある凹部で捕らえられ、予め凝縮されたバットを押し通される。このような構造化針は特許文献1に記載されている。構造化針(この文献ではフォーク針と称される)の先端に設けられた凹部は、多かれ少なかれ等しい又は異なる長さの先端により片側に形成される。
【0004】
特許文献2は、作業部分の先端に凹部を具備した構造化針(この文献ではフェルト針と称される)を開示する。著しく平坦な凹部はほぼ三角形断面の溝状構造を有する。
【0005】
特許文献3は、その作業部分の先端が長方形断面の溝で形成された凹部を具備した構造化針(この文献ではフェルト針と称される)を示す。溝底部は溝の長手方向に湾曲している。
【0006】
特許文献4に開示されているように、溝は構造化針の作業部分に延び、それで作業部分の先端を超えて作業部分と平行に延びる。さらに、作業部分の先端の領域で溝は広く開口し、溝フランクはほぼ互いに直角を形成する。さらに特許文献4では、作業部分の、ナイフ状の背部で互いに分離した2つの相互に平行に指向したノッチ(切れ込み)が開示されている。この構造化針は複数の先端を有し、その間に生地に押し込もうとするフィラメントが収容される。しかしながら、凹部に横断して延びるフィラメントは中央先端で切り離される。
【0007】
作業部分の先端の形状の異なる構造は操作の間、構造化針の特性に影響する。しかしながら、公知の構造化針の効率は限定されたままであり、予め強化されたバットから所望の構造フェルトが得られるまで比較的多数の個々の穴が必要であることが分かる。
【0008】
【特許文献1】US3792512
【特許文献2】US4309800
【特許文献3】US3727276
【特許文献4】GE2038478
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、従来技術の針に比べて効率の増加した改良構造化針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的及び明細書が進むに連れて明らかになる他の事項は本発明により実現される、簡単に述べれば、構造化針は作業部分先端に多枝凹部を具備している。
【0011】
よって、本発明に従う構造化針は作業部分先端の凹部構造により従来技術の針と異なる。結局、多枝凹部は、互いにそして構造化針に対して様々に指向したフィラメントを捕らえることができる。公知の構造化針は、作業部分先端に設けられた溝(凹部)と多かれ少なかれ平行なフィラメントだけを予め凝縮された生地に押し通すのに対し、本発明に従う構造化針はその多枝構造のために様々な向きを有するフィラメントも掴むことができる。従って、例えば多枝凹部の枝の1つとほぼ平行なだけのフィラメントも捕らえられる。このようにして、ニードルパンチ当たりに押し通されるフィラメントの数が大きくなるので、構造化針の効率は増加し、従って予め凝縮された生地のより大きい供給速度が可能になり、構造化機械の生産性が増大する。言い換えれば、ニードルパンチ当たりの構造化効率が増大する。さらに、本発明に従う構造化針を使用することで、構造化製品の外観が従来通りに作られたフェルトの外観とは対照的に故意に変更又は成形される。とにかく本発明に従う構造化針を用いて、作業及び支出の過度の出費だけを有する従来の構造化針により得られるフェルトの表面構造が創出されてもよい。これら利点は、今までの場合のように、単一の選択された方向に指向したフィラメントだけというよりもむしろ、多数の又は全ての方向に向いたフィラメントが予め凝縮された生地を押し通されるという事実から得られる。
【0012】
多枝凹部は、例えば針中央で一体になる大きめ又は小さめの深さの複数の溝形ノッチを有する。好ましくは、ノッチはU形断面を有する、すなわちノッチ底部はノッチフランクへのエッジのない移行部を有する。しかしながら、それに代えて、構造化プロセスに影響する長方形又は三角形の断面を有するノッチを設けることも可能である。好ましくは、ノッチは全てほぼ同じ幅及び同じ深さを有する。この配置は、生地に大きなダメージを与えることなく、非常に効率的な構造化プロセスになる。針の磨耗は比較的僅かであり、ほんの僅かなフィラメントが引き裂かれ又は切断されるにすぎない。
【0013】
原則として、中央針軸に向かって星状に集まったノッチが一様な角度分布で配置されるようにすることが可能である。しかしながら、異なる角度間隔、例えば規則的に交互になる角距離でノッチを配置することも可能である。この特徴により、フェルトの外観に故意に影響を与えることができる。
【0014】
ノッチの間に、鋭利でない端部を有する、全体として王冠を構成する突出部が形成されると好ましい。しかしながら、好ましい実施形態によれば、突出部は、共通平面にある、好ましくは直接中央凹部の境界を成す尖った端部を有する。この特徴により、僅かな磨耗しか受けない非常に効率的な構造化針が得られ、実質的にフィラメントにダメージを与えない。
【0015】
ノッチは作業部分先端の隣接領域に限られるか、構造化針の作業部分先端に沿って延びてもよい。さらに、作業部分は、フィラメントを捕らえ、これらを予め凝縮された生地に押し込むための付加的な構造要素を具備してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、ランダムな繊維又はウェブからなるフェルトを構造化し又は織物若しくはメリヤス生地を構造化するための構造化針1を示す。構造化針1は、針1の針ボードへの固定を容易にするために一方の端部3に角度のついた部分を有する柄2を有する。柄2は複数の位置4,5,6で直径が減少しており、ほぼ円錐状の移行領域が得られる。従って、構造化針1は一方の端部3から反対側の端部7まで複数の段階でテーパーがついている。位置6と端部7の間に位置した柄2の最終部分は、丸い又は多角形の断面を有し好ましくは滑らかな作業部分8を意味する。
【0017】
柄端部7において、作業部分8は、本発明の好ましい実施形態を示す図2,3及び4に別個に示された作業部分先端11を有する。作業部分8が円又は多角形断面を有するかどうかに依存して、作業部分先端11は円錐台又は角錐台の基本形状を有する。柄端部7では作業部分先端11は僅かに丸みを帯び、従って球状先端を有する基本形状になっている。球状先端に多枝凹部12が形成される。好ましくは縦柄軸18を中心に配置された中央凹部17に合体する多数のノッチ13,14,15,16をそこに設けることで、多枝凹部12の枝が得られる。特に、柄軸18が作業部分8の縦軸と一致する。
【0018】
図4に見られるように、ノッチ13〜16は90°の一定の角度間隔で配置され、従って凹部12に十字構造を与える。ノッチ13〜16は等しい長さであり、柄端部7の方向に中央凹部17に向かって傾斜した底部を有する。ノッチ13〜16は作業部分8の方向に外側に上がり、作業部分先端11の外側面にある開いた端部を有する。ノッチ13〜16の断面はU形であり、それぞれのノッチ13〜16の底部は段階も突起もなく隣接するノッチフランクに合体する。それぞれのノッチ13〜16の向き合ったフランクは互いに鋭角を形成する。しかしながら、必要ならば、フランクは互いに平行に指向してもよい。
【0019】
ノッチ13〜16の間に、図4に観察されるように突出部21,22,23,24が形成される。これらは上部平面図、すなわち軸18に平行な方向に見て、柄端部7を観測者に向けると、三角形の形状である。突出部21〜24の外側面は球状に湾曲すると好ましく、それぞれの先端25,26,27,28で終端する。これらの先端は中央軸18に垂直な共通の平面にあると好ましい。それに代えて、特に磨耗を減らすために先端25〜28は丸みを帯びてもよい。
【0020】
向き合ったノッチ13,16;14,15は軸18に交差する線であって、互いに90°で交差するそれぞれの線上にある。しかしながら、90°より小さい交差も可能であり、この場合ノッチ13〜16はXパターンで配置され、従って交互に広い・狭い突出部21〜24を形成する。
【0021】
以下の議論では、前記の構造化針1の操作を説明する。
【0022】
図1の相互に平行な多数の構造化針1が針ボードに固定され、ランダムな繊維からなるウェブに向かって指向している。構造化針1は同一構造であり整列している。それに代えて、さらに、従来の構造化針を針ボードに取り付けることも可能である。この場合、従来の針と本発明に従う針が個々に又はグループで交互になる。
【0023】
ランダム繊維ウェブを凝縮させるため、すなわち所望のフェルトを形成するため、構造化針1が少なくともそれらの作業部分8でランダム繊維ウェブを反復して貫通するように、針ボードは高速で連続して移動する。同時に、ランダム繊維ウェブは針ボードの下をゆっくり進み、それでそれぞれの穿孔ステップが行われる際にそれぞれの構造化針1は新たな位置のウェブを貫通する。
【0024】
穿孔ステップの途中で、作業部分先端11はその経路に位置するフィラメントを捕らえ、フィラメントをウェブに押し込む。ウェブの前進運動に対して縦と横断方向の両方に配置されたフィラメントは、作業部分先端11の王冠形状の構造のために捕らえられる。突出部21〜24は軸18と同心のリングであって、中央凹部17を取り囲むリングを形成する。
【0025】
図5,6及び7に示された実施形態では、作業部分先端11は6つのノッチ13,14,15,16,16a,16bを具備する。これらは互いに60°の間隔で配置され、軸18と同心の中央凹部17において合体し、多枝凹部12’が形成される。ノッチ13〜16b及びそれらの間に位置する突出部21,22,23,24,24a,24bの構造に関して、図2〜4に示された実施形態に関連して説明した考察と同じ考察が当てはまる。突出部21〜24bは尖った端部を有し、その4つが図6では見え、25,26,28a,28bで示される。突出部の端部及び突出部21〜24bの境界を定める端部は、フィラメントを優しく処理するために丸みを帯びてもよい。
【0026】
図5,6及び7の実施形態は、特にフィラメントの向きに関わらずフィラメントを捕らえ、これらをランダム繊維ウェブに押し込むように設計される。作業部分先端11は、比較的短く厚いフォークの先端が軸18と同心の円に沿って配置された多先端フォークとしても考えられる。
【0027】
作業部分先端11の別な実施形態は図8に示される。この実施形態は3つのノッチ13,14,15しか有しない。これらは中央凹部17で合体し、従って多枝凹部12’’を形成する。ノッチ13,15は近くに隣接しており、これらはノッチ14と120°より大きい角度を画定する。従って、ノッチ13,14,15の間に位置する突出部21,22,23はサイズが異なる。作業部分先端のこの実施形態に組み込まれた構造化針は、多かれ少なかれ軸18と平行に指向した、この向きから大きくずれないフィラメントを捕らえることに関し、ある性能を有する。それにもかかわらず、フィラメントを捕らえる傾向は、たった1つの、完全な、枝分かれしていない凹部を有する従来のフォーク針の場合よりも大きい。
【0028】
前記の実施形態の全てにおいて、軸18とほぼ同心に、中央凹部17の真ん中に付加的な突出部が設けられてもよい。さらに、中央凹部17を深くし又は軸18と平行若しくはそれとある角度で作業部分8に沿ってノッチ13〜16(16a,16b)を配置することも可能である。
【0029】
前記の好ましい実施例を要約すると、本発明に従う構造化針1は、その自由端に、作業部分先端11で終端する作業部分8を有する。作業部分先端は、多枝構造を有する凹部12(図2,3,4の実施形態),12’(図5,6,7の実施形態)又は12’’(図8の実施形態)を具備している。従って、針軸18の周りに配置され、中央凹部17を取り囲む少なくとも3つの突出部21,22,23が設けられる。突出部の間に、ノッチ13,14,15(又は溝状若しくはスロット状の凹部)が配置され、ランダム繊維ウェブ又は予め凝縮されたバットのフィラメントを捕らえ、運ぶ。
【0030】
より一般的には、本発明の構造化針の多枝凹部は、ノッチなどの複数の溝形状又はスロット形状の枝からなる構造であり、枝の少なくとも幾つかは180°と異なる角度で互いに指向する。
【0031】
本発明に従う構造化針は、ランダム繊維ウェブ又は予め凝縮されたバットを扱うのに適合し、織物やメリヤス生地などのよく整列した糸パターンを有する平らな織物の後処理にも適合する。本発明に従う構造化針はさらに、織物や編み生地などの例えば平らなランダム繊維要素又は例えば付加的なやはり平らなよく整列した要素を有する組み合わせの平らな製品を製造するのに適合する。本発明に従う構造化針は高精度の繊維捕獲及び繊維前進効率を有し、フィラメントへ僅かなダメージしか与えず作動する。
【0032】
本発明の前記の説明は様々な変形、変化及び適合を許容することが理解され、付属の請求項と等価の意味及び範囲内でも同じことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に従う構造化針の概略側面正面図である。
【図2】図1に示された構造化針の作業部分の先端の好ましい実施形態の拡大概略側面正面図である。
【図3】図2に示された作業部分の先端の斜視図である。
【図4】図2及び3に示された作業部分の先端の上部平面図である。
【図5】作業部分の先端の別な好ましい実施形態の斜視図である。
【図6】図5に示された作業部分の先端の側面正面図である。
【図7】図5に示された作業部分の先端の上部平面図である。
【図8】作業部分の先端のまた別な好ましい実施形態の上部平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 構造化針
2 柄
3 端部
4 位置
5 位置
6 位置
7 端部
8 作業部分
11 作業部分先端
12 多枝凹部
13 ノッチ
14 ノッチ
15 ノッチ
16 ノッチ
17 中央凹部
18 軸
21 突出部
22 突出部
23 突出部
24 突出部
25 先端
26 先端
27 先端
28 先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄、当該柄の端部を構成する作業部分先端、及び当該作業部分先端に形成された多枝凹部を有する構造化針。
【請求項2】
前記多枝凹部が星形であることを特徴とする請求項1に記載の構造化針。
【請求項3】
前記多枝凹部が複数のノッチで形成されることを特徴とする請求項1に記載の構造化針。
【請求項4】
前記ノッチが互いに一様な角度で間隔を置いていることを特徴とする請求項3に記載の構造化針。
【請求項5】
隣接するノッチの角度間隔が一様でないことを特徴とする請求項3に記載の構造化針。
【請求項6】
前記多枝凹部が中央凹部を有し、前記ノッチが当該中央凹部に合体することを特徴とする請求項3に記載の構造化針。
【請求項7】
前記柄が中央縦軸を有し、前記中央凹部が当該軸を中心に配置されることを特徴とする請求項6に記載の構造化針。
【請求項8】
前記作業部分先端が外側表面を有し、さらにそれぞれの前記ノッチが当該外側表面で終端する開口端部を有することを特徴とする請求項6に記載の構造化針。
【請求項9】
さらに前記ノッチの間に配置された突出部を有し、当該突出部が全体として王冠形のアセンブリを形成することを特徴とする請求項3に記載の構造化針。
【請求項10】
それぞれの前記突出部が尖った端部を有することを特徴とする請求項9に記載の構造化針。
【請求項11】
前記柄が中央縦軸を有し、さらに当該軸に平行な方向に前記作業部分先端を見たときに前記突出部が三角形であることを特徴とする請求項9に記載の構造化針。
【請求項12】
柄、当該柄の端部を構成する作業部分先端、及び当該作業部分先端に形成された多枝凹部を有する構造化針であって、前記多枝凹部が複数の一般に溝形の枝から構成され、少なくとも幾つかの前記枝が180°と異なる角度で互いに指向している構造化針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−537365(P2007−537365A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512118(P2007−512118)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005278
【国際公開番号】WO2005/113875
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)
【Fターム(参考)】