説明

繊維化樹脂及びその繊維化樹脂により成型された構造物

【課題】 液体樹脂本来の特性を損うことなく、使用に適した粘度を選択でき、しかも液だれ現象が生じない繊維化樹脂及びその繊維化樹脂により成型された構造物を得ること。
【解決手段】 液体状態の樹脂11と、その液体樹脂の温度より高い温度に加温した太さ50ミクロン以下、長さ20ミリメートル以下の繊維10とを混練し、上記繊維10の表面に上記液体樹脂11を飽和状態になるまで付着被覆させた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はバインダー(結合剤)として使用される繊維化樹脂及びそれを使用した構造体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】一般に、接着剤として接着面に塗ったり、コーティング材として平面に塗布したり、或はセメントやアスファルトのようなバインダー(結合剤)として骨剤等の別の固形物と混ぜ合わせて混合物を作って適宜形状の構造体を構築する等のために、液体樹脂が使用されている。
【0003】ところが、上記液体樹脂はその流動性のためにその使用条件が制約される。すなわち、液体樹脂を厚く塗布したり盛り付ける場合、特に垂直状に置かれた壁面に、刷毛やヘラ或はスプレーガン等を使って塗布する場合には、塗布した液体樹脂が固化するまでの間に自重によって下方に移動する液だれ現象が生じ、塗布面が均一に仕上がらないばかりか、固化が完全に実行できない等の問題がある。
【0004】そこで、塗布面に液体樹脂を液だれしない程度の厚さで塗布し固化させ、その塗布面に同じ作業を何回となく繰り返しながら目的の厚さにする必要がある。
【0005】また、セメントやアスファルトのようなバインダー(結合剤)として使用する場合は、液体樹脂を別の固形物と混ぜ合わせて混合物を作り、適宜形状の構造物の材料として使用するが、この混合物を型枠等に入れてブロックや構造体を作ったり、或は路面や土木建築構造物等の構造体を作る場合も、被結合体に被覆させた液体樹脂が固化するまでの間に液だれ現象を起し、図11R>1(a),(b)のように固形物1の隙間を通って下方に液体樹脂2だけが沈下し、構造物の上部と下部では著しく液むらが生じ、構造体の強度や結合状況が均一にならず、十分な強度が期待できない場合がある。したがって、上記混ぜ合わせる固形物の粒径の1.5倍〜2倍程度の厚みのものしか作ることができない等の問題がある。
【0006】そこで、液だれ現象を少なくするために、液体樹脂に増粘剤や添加物を加え粘度を高める工夫をしたものも提案されているが、粘度を必要以上に高めると、作業性が悪くなり、また必要以上に液体樹脂を使用する結果となり、適性粘土の領域では液体樹脂の液だれ現象を完全に解消することは不可能である。
【0007】また、ロックウール(岩綿)と液体樹脂を混ぜ合わせ、さらに増粘剤を加え粘度を高める方法も提案されているけれども、ロックウールは液体樹脂と混ぜ合わせる段階でバラバラになり粉体化する。すなわち、ロックウールは岩石を高熱で溶融し冷却させることによって作られ、太さ7ミクロン長さ20ミリメートル程度の繊維状に加工され、綿の様な形態になっているが、ロックウールの繊維化した一本一本の糸上の物質は岩石を細かくした集合体であり、微力な外圧力で簡単にバラバラな粉末状なってしまい繊維としての形態を保つことはできない。しかも、ロックウールの素材そのものは液体樹脂を吸収したり含浸したりするような性質はなく、単に粉体化したロックウールの表面に樹脂が付着しているだけのものであり、単に増粘作用をさせ粘度を高めようとするだけのものである。しかし、この粉体化したロックウールは表面に空気中の水分を付着させるため、液体樹脂の増粘剤としては樹脂その物の特性に対してマイナスの要因となり必ずしも適当ではない。
【0008】すなわち、液体樹脂が液体の領域である限りに於ては、液だれ現象を取り除くことは不可能であり、液だれ現象が生じなくなるまで粘度を高めれば、結果として、固体樹脂になってしまい、樹脂そのものが本来持ち合わせている粘性や揮発性によって一部の硬化現象が始まり、内部硬化を生じたり、樹脂そのものの性能や特性に大きな悪影響を及ぼす。したがって、このような液体樹脂を塗布させたり、別の固形物と混ぜ合わせて混合物を作ったりすることは容易にはできず、またできたとしても適正なものにはならない等の問題がある。
【0009】本発明はこのような点に鑑み、液体樹脂本来の特性を損なうことなく、使用に適した粘度を選択でき、しかも液だれ現象が生じない繊維化樹脂及びその繊維化樹脂により成型された構造物を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、液体状態の樹脂と、その液体樹脂の温度より高い温度に加温した、太さ50ミクロン以下長さ20ミリメートル以下の繊維とを混練し、上記繊維の表面に上記液体樹脂を飽和状態になるまで付着被覆させ、或は繊維の内部にも液体樹脂を飽和状態になるまでしみ込ませたことを特徴とする繊維化樹脂である。
【0011】また、第2の発明は、液体状態の樹脂と、その液体樹脂の温度より高い温度に加温した繊維とを混練し、少なくとも上記繊維の表面に液体樹脂を飽和状態になるまで付着被覆させた繊維化樹脂と、細粒径の固形物からなる骨材とを混練し、その混練した状態の混合物によって所定形状に成型固化したことを特徴とする構造体である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】太さ50ミクロン以下、長さ20ミリメートル以下に加工した天然繊維や化学繊維等の繊維10を液体樹脂11の温度より数度高い温度に加温して液体樹脂11に浸し、上記繊維が吸湿性や吸水性がある場合には、その繊維の内部に飽和状態になるまでしみ込ませる。次に、上記繊維表面に充分被覆するのに足りる量の液体樹脂を飽和状態になるまでさらに供給する。また吸湿性や吸水性の無い繊維、つまり繊維の内部にしみ込む要因がない繊維については、繊維の表面を充分被覆するのに足りる量の液体樹脂を飽和状態になるまで供給する。
【0014】このようにして液体樹脂で飽和状態になった繊維を多量集め、これをゆっくりと混ぜ合わせることによって、図1(a)、(b)に示すようなペースト状の新しい物質に練り上げる。この状態は、繊維10と繊維10がその表面を被覆した液体樹脂11の粘性により、並行に重なり、また連なり、或は縦列的に重なり、または連なり、無作為に絡み合い、結果としてペースト状態の液体樹脂が被覆された繊維の集合体であり、この集合体によって繊維化樹脂12が形成される。
【0015】液体樹脂の粘度は、通常1〜50ポイズの範囲であるが、上述のように液体樹脂を繊維に飽和状態になるまで供給し、混ぜ合わせ練り上げることにより5000ポイズから400000ポイズの粘度を有した樹脂に変化させることができる。すなわち、繊維の1本1本がそれぞれその表面が厚膜状に液体樹脂で被覆され、さらに繊維と繊維が複雑に絡み合った状態であることによって上記高粘度が得られる。
【0016】通常、液体樹脂の粘度と繊維の物性によって違いはあるが、液体樹脂1W%に対して繊維は0.05W%〜0.5w%で飽和状態になり、このように液体樹脂が繊維に飽和状態で付着している場合には液体樹脂だけが沈澱することはない。
【0017】ところで、繊維に液体樹脂を浸し混ぜ合わせて飽和状態にさせる場合には、単に液体樹脂と繊維とを混合させるだけでは、繊維に液体樹脂の被覆に依る適正な一体化は必ずしも得ることができず、被覆した液体樹脂の状況によって接着強度が影響され、適正な接着強度も期待できず、場合によっては固化後、接着構造内部における繊維と樹脂の剥離現象を生じることがある。
【0018】そこで、本発明においては、前述のように、繊維に液体樹脂を浸し混ぜ合わせて飽和状態にさせる場合に、繊維が液体樹脂の温度より1℃以上、繊維と液体樹脂が変質しない範囲内で加温されている。したがって、上記加温によって繊維の体積が熱膨張により増大し、同時に表面積が増加し、その時点で飽和状態とさせられるため、飽和後常温に下がった時点では繊維の表面に被覆された液体樹脂の膜厚が増大し、これにより完成した繊維化樹脂の接着強度が増大し、繊維の液体樹脂の吸着性が十分高められる。
【0019】このようにして本発明においては液体部分を取り除いた状態と同様の繊維化樹脂となり、垂直状に置いた壁面に塗布する場合でも、液体樹脂の場合と同等の作業方法で塗布出来ると共に、液だれ現象が無いために使用目的に合わせて被覆の厚さも調整出来る。その上表面の仕上がりや、被覆体の強度や諸性能も均一な物になり、樹脂の特性を充分に引き出す事ができる。
【0020】また、本発明による繊維化樹脂であれば、樹脂による沈下現象(液だれ現象)は生じることがなく、その上樹脂その物の特性を損なう事もない。さらにこの繊維化樹脂で容積構造体を作る場合、容積構造体全体のうち、どの部分に対しても均一な状態で繊維化樹脂が行当たり、接着強度や結合状況や諸特性も樹脂本来の特質をそのまま発揮できる。また、従来の液体樹脂では、樹脂その物の物性が非常に微細な液体粒子の集合体により液体を構成しているため、固形物と固形物の間の空隙はそのまま空間として残るか、液体樹脂で充満されるかの状況であったが、本発明による繊維化樹脂を使用した場合は、固形物の表面が繊維化樹脂で被覆した状態で固形物と固形物が混ぜ合わされ、その混合物が型枠等に打設されるので、固形物が最終的に振動や転圧によって固定置された時には、それまでの作業工程間に固形物と固形物が擦り合わされたりして、固形物に被覆した繊維化樹脂が絡み合い、結果として、図2(a),(b)に示すように固形物13と固形物13の間にある空隙は、固形物に被覆した繊維化樹脂12の一部により蜘の巣の様な状況で繊維が張り合い、網目状態の繊維化樹脂フィルターが無作為的に且つ立体的に出来上がる。そして、この状態で容積構造体がそれぞれ各樹脂の特性や作業性に合致した硬化方法によって固化される事により、その形状を維持したまま構造体を完成させる事が出来る。
【0021】この方法によって固化した構造体の接着強度は、繊維化樹脂その物の強度を発揮すると共に、固化した後の含有成分の溶出はほとんどなく、また、繊維化樹脂は液体樹脂の特性をそのまま何ら損なうことなく引き継いでいるため、使用目的によって多種多様に選択出来る現状の液体樹脂材料選定に於いて、何ら特別の配慮の必要がない。
【0022】その上、現状産業界で使用されている強化プラスチックと対比した場合でも、強化プラスチックは液体樹脂の中にガラス繊維で織った布状の物を挟み込んで固化させる事により、液体樹脂の固化強度だけでは得られなかった高強度を生み出す事に成功しているが、その製作工程では高度の成形技術を余儀なく必要とされている。
【0023】繊維化樹脂の場合は、繊維を液体樹脂で飽和状態にさせた物であり、既に繊維化樹脂が強化プラスチックと同等の性能を持っている。
【0024】また、繊維化樹脂は液体樹脂と同様に固化の手段も、硬化剤による二液性でも、加熱による熱可塑性でも、空気中の水分に反応させる酸化性でも、何れの場合に対しても何ら特別な手段を講じる必要はなく、使用方法も多様に選択できる。
【0025】以下、本発明による繊維化樹脂及びその繊維化樹脂を接着剤、コーティング材、成形材、及びバインダーとして使用したものの実施例を説明する。
【0026】実施例1吸湿性や吸水性の無い繊維の中からガラス繊維太さ7ミクロン以下、長さ8ミリメートル以下の物を選び45ポイズの粘度の液体樹脂1W%に対して40℃に加温したガラス繊維0.05W%を5分の1づつ液体樹脂に充分浸し、攪拌装置でゆっくりガラス繊維を解しながら攪拌した。
【0027】繊維に飽和状態になるまで5分の1づつ液体樹脂を供給しながら、ゆっくり混合させ攪拌作業を繰り返し行い、液体樹脂の液体が目視出来なくなる状態に成るまで攪拌し飽和状態に至った。
【0028】出来上がった繊維化樹脂は1200000ポイズの粘度を有し、やわらかいペースト状の繊維の集合体であり、使用に際して何ら支障は認められなかった。
【0029】また、繊維として綿や絹のような天然繊維や、ガラス、炭素、アルミ、セラミック等の化学繊維を使用し、それぞれの組合せに於いても、液体樹脂1W%に対して繊維0.01W%〜0.2W%の範囲でそれぞれ飽和状態になった。
【0030】また、極端に粘度の低い粘度1の液体樹脂、1W%に対してその液体樹脂より20℃だけ温度が高くなるように加温した繊維0.1W%を浸し混ぜ合わせ、ゆっくり攪拌し飽和状態にした繊維化樹脂に対し、増粘剤を0.01W%〜0.05W%を加え、粘度調整をすることにより、50000ポイズから400000ポイズの範囲で粘度を調整する事が出来た。何れの場合も、繊維化した樹脂の状況を目視し繊維化樹脂が完成された事を確認できた。
実施例245℃のガラス繊維(太さ7ミクロン長さ3ミリメートルに加工した物)50グラムを容器に入れ充分ほぐし更に、20℃のエポキシ系液体合成樹脂を500グラムづつ加えゆっくり混ぜ合わせ混練しながらエポキシ系液体合成樹脂を更に500グラムづつ加え総量1500グラムで飽和状態に成った事を確認出来、繊維化樹脂を完成させた。
【0031】次に、出来上がった繊維化樹脂に固化させるための硬化剤をエポキシ系液体合成樹脂の総量に対して重量比で50W%を加え、更に混練し繊維化樹脂接着剤とし、図3に示したように縦300ミリメートル、横300ミリメートル、厚さ10ミリメートルの木板14の片面に繊維化樹脂接着剤12をヘラと刷毛を使って約0.2ミリメートルの厚さで塗布し、その面に、一辺が50ミリメートルの立方体に加工した木材、ゴム、金属、セメントコンクリート等の各材質で出来たブロック状固形物の一面を接着面とし接着剤を塗布した木板14の片面に乗せ接着をした。
【0032】固化後、それぞれのブロックの被接着面先端に加重を掛け接着強度を試みたが、接着面の剥離は全く認められず木片が割れてしまった。
【0033】また、図4に示したように、木材、ゴム、金属、セメントコンクリート等各材質の一辺が50ミリメートルの立方体に加工したブロック状固形物15の一面に繊維化樹脂接着剤12を約0.2ミリメートルの厚さで塗布し、同じ材質同志の接着と、違う材質との接着を試みたが、通常使用に耐え得る接着強度の有ることが認められた。
【0034】以上の結果、ガラス繊維にエポキシ系液体合成樹脂を飽和状態にさせて出来上がった繊維化樹脂が接着剤として充分性能を保持していることを確認することができた。
実施例350℃に加温した炭素繊維(太さ5ミクロン長さ5ミリメートルに加工した物)50グラムを容器に入れ充分ほぐし更に、20℃のポリエステル系液体合成樹脂を500グラムずつ加え、ゆっくり混ぜ合わせ混練しながらポリエステル系液体合成樹脂を更に500グラムずつ加えながら混練を繰り返し、総量1700グラムで飽和状態になったのを確認でき繊維化樹脂を完成させた。
【0035】次に、出来上った繊維化樹脂を固化させるため硬化剤をポリエステル系液体合成樹脂に対して重量比3w%を加え混練し、成形材として使用した。
【0036】図5(a)、(b)に示したような金属製の成形型16に完成したポリエステル系繊維化樹脂12を注入し図6に示したような密閉できる容器17(内容積200ミリリットル肉厚10ミリメートル)及び蓋18を成形し固化させ完成させた。
【0037】更に、完成したポリエステル系繊維化樹脂の密閉容器の中に、PCB(97%)を入れ密封し、溶出検査を行なったところ成分溶出はなく完全に封じ込めができた。また、容器自体の強度も、通常の液体合成樹脂による成形品に比較して、繊維が含まれているため強度が上回っていることも確認できた。
【0038】以上の結果、炭素繊維にポリエステル系液体合成樹脂を飽和状態にさせて出来上がった繊維化樹脂を成形材として使用でき、その上、強化プラスチック同等の強度があり、更にPCBの封じ込めもできることが確認できた。
【0039】実施例4天然繊維の錦糸と絹糸をそれぞれ50%ずつの量で長さ5ミリメートルに加工した60℃の繊維50グラムを掻き混ぜなから充分解しながら15℃のビニールエステル系液体合成樹脂を500グラムずつ加え、ゆっくり混ぜ合わせ混練しながらビニールエステル系液体合成樹脂を更に500グラムずつ加えながら混練を繰り返し、総量2000グラムで飽和状態になったのを確認でき繊維化樹脂を完成させた。更に、粘度を調整するために増粘剤を総量10グラムを2回に分けて加え混練し、ビニールエステル系繊維化樹脂を作業のしやすい粘度に調整した。次に、出来上がった繊維化樹脂を固化させるための硬化剤を加え混練しコーティング材として使用した。
【0040】図7に示したように、ひび割れしたセメントコンクリート製平板19を垂直に立てて置きヘラを使用してひび割れ部分の隙間にビニールエステル系繊維化樹脂12を充填し、次に平板の片面全面に約3ミリメートルの厚さで塗布した。
【0041】この作業実施で、ひび割れ部分の充填効果と接着効果及び塗布の際の液だれ現象有無の確認と作業性等を確認したが、それぞれの効果も作業性も非常に良好で、また、液だれ現象も全く認められなかった。固化後、ひび割れ部分や塗布した面の接着強度、表面強度は充分有り、また、ひび割れ部分からの漏出も認められなかった。
【0042】以上の結果、天然繊維にビニールエステル系液体合成樹脂を飽和状態にさせて出来上った繊維化樹脂をコーティング材として使用でき、その上、液だれ現象が全くなく、粘度調整によって作業性も良いことが確認できた。
【0043】実施例5太さ7ミクロン、長さ3ミリメートルのガラス繊維50%と長さ6ミリメートルのガラス繊維50%を混ぜ合わせ加工した物23キログラムを掻き混ぜながら充分に解し、35℃に加温して混練用攪拌装置に入れ、15℃のポリエステル系液体合成樹脂477キロラムを攪拌装置で混練させながら加え、約5分後に飽和状態を確認し繊維化樹脂を完成させた。更に、増粘剤を1キログラムを加え150000ポイズの粘度を有したポリエステル系繊維化樹脂を約500キログラム完成させた。この繊維化樹脂をバインダー(結合剤)として使用し各種固形物を骨材にして容積構造体を製作した。
【0044】骨材には、砂利(粒径2〜8ミリメートル)、砕石(粒径2〜20ミリメートル)、川砂、廃材(プラスチック、ガラス、貝殻、ゴム、金属スラグ、木片、籾殻、陶磁器、セメントやアスファルトコンクリート)を3〜10ミリメートルの粒径に加工した物、等を選び使用した。
【0045】図8に示したような縦300ミリメートル横300ミリメートル厚さ30ミリメートルの平板ブロック20を先に述べた各種骨材を使用して作製した。
【0046】先ず始めに、骨材をセメントコンクリートやモルタル等を混練する時に使用するミキサーに投入(一種類)し、投入した骨材重量に対して4w%〜10w%の繊維化樹脂を加え、ミキサーにより攪拌混練し骨材と繊維化樹脂の混合物を作った。約5分間攪拌し繊維化樹脂12が骨材21の表面に厚膜状に被覆しているのが確認できた。次に繊維化樹脂を固化させるための硬化剤を、使用した繊維化樹脂に対して重量比3w%を混合物に投入し混練した。
【0047】できあがった骨材混合物を平板ブロックの型枠内に投入しながら、型枠全体に軽い振動を与え金ゴテで表面を押さえながら仕上げた。固化後できあがった平板ブロック状の容積構造体を型枠から外しポリエステル系繊維化樹脂バインダーで別の固型物と接着し、容積構造体を完成させられることを確認できた。
【0048】以上の結果、繊維化樹脂は、多種多様の固形物を骨材として使用するために、最も適したバインダー(結合剤)であると共に、作業性に於いても何ら特殊性も見当らず、完成した構造体の強度や諸特性も非常に優れていることがわかった。
【0049】実施例6太さ7ミクロン、長さ0.3ミリメートルの非常に短く加工した45℃に加温したガラス繊維23キログラムを、混練用攪拌装置に入れ、15℃のポリエステル系液体合成樹脂430キログラムとウレタン系液体合成樹脂47キログラムを予め混ぜ合わせた物477キログラムを投入し、攪拌装置でゆっくり混練させ、約5分後に飽和状態を確認し、繊維化樹脂を完成させた。この状態で0.3ミリメートルの短いガラス繊維が被覆した樹脂の粘性によって連なり、長い繊維の様に糸を引くような状況が確認できた。次に増粘剤を5キログラム加え粘度を200000ポイズに高め、使用に適した粘度に調整した。このポリエステルウレタン系繊維化樹脂をバインダー(結合剤)として使用し、砂利と砕石を骨材にして路盤の表面舗装材を作り路面舗装を施工した。
【0050】骨剤は、砂利(粒径3〜8ミリメートル)と砕石(粒径3〜15ミリメートル)を選び使用した。
【0051】先ず始めに、幅員5メートル延長10メートルの路盤を用意し、延長を2分割の5メートルずつに分け、基礎路盤材を二種類にし、一方では砕石層22を厚さ150ミリメートルとし他方ではアスファルトコンクリート層23を厚さ50ミリメートルとし、その基礎路盤の上面に厚さ30ミリメートルで繊維化樹脂バインダーを使用した表面舗装材を施工した。
【0052】次に、砂利24の2立米(約3.4トン)を生コンクリート用の大型ミキサー車に投入し繊維化樹脂バインダー12を砂利24の重量比6%、約204キログラムを加え、ミキサーを回転させ10分間混練した。砂利の表面に繊維化樹脂が厚膜状に被覆しているのが確認できたので、更に、硬化剤4キログラム加え1分間混練し表面舗装材を完成させた。
【0053】次に、完成した舗装材をミキサー車から取出し路面に直接投下させ、レーキで敷き均し、コンパクターで振動を与えながら転圧し、最後に金ゴテで仕上げ施工を完了した。
【0054】図9に示したように、完成した表層路盤は、樹脂の液だれは全くなく、適切な空隙があり、均一な断面構造が得られた。
【0055】次に、砕石25の立米(約3.3トン)を大型ミキサー車を使用して、砂利の場合と同様の作業で表面舗装材を完成させた。路面敷き均しはアスファルト舗装に使用するフィニッシャー(路盤材敷き転圧機械)を使用し機械施工を行なった。フィニッシャーはミキサー車から舗装材を投下し、後はフィニッシャーが自走しながら敷き均し、更に、振動を与えながら路面を押さえ仕上げる機能を持った機械なので、人力による作業が大巾に削減できた。
【0056】完成した表層路盤は、図10に示したように、樹脂の液だれは全くなく、適切な空隙があり、均一な断面構造が得られた。
【0057】以上の結果、繊維化樹脂は現在一般に使用されている土木建築機械設備やその道具をそのまま使用できることの他、使用及び作業方法も何ら特種性は無く、かえって作業性が非常に良く、完成した表層路盤も優れた構造体であり、繊維化樹脂がバインダーとして充分な素材であることが確認できた。
【0058】
【発明の効果】本発明における繊維化樹脂は、前述のように構成したので、繊維の表面に飽和状態に成るまで被覆させ、被覆した表面の樹脂の粘性によって繊維と繊維が複雑に絡み合いペースト状の新たな物質を構成し、液だれ現象を解消することができた。その上、多種多様な繊維と、多種多様な樹脂の組合せにより新たな優れた特性を持った繊維化樹脂を作り出すことができ、今までの液体樹脂では不可能であった利用領域まで、使用することができるようになった。また、繊維化樹脂は、既に樹脂と繊維が一体化しているため強化プラスチックと同等若しくはそれ以上の強度特性があり、樹脂を繊維化したために利用の仕方によっては様々な新たな特性を生み出すことが可能である。
【0059】繊維化樹脂を接着剤として利用した場合、液だれ現象が無いため、容器から取り出す際も、塗布、盛り付け、注入等の作業に於いても、接着剤の垂れ流れにより回りを汚したり、塗布ムラを生じたりすることはなくなり、結果として、接着剤の無駄使いは減少し接着強度も向上する。
【0060】また繊維化樹脂をコーティング材や防護膜材等に利用した場合、液だれ現象がないため、前記の特徴の他に、目的の塗膜厚を一回の作業で均一に塗布することができる。しかも接着強度も塗膜強度も非常に優れている。
【0061】繊維化樹脂を成形材として利用した場合、前記の特徴の他に、繊維化樹脂が既に繊維を含んでいるために、強化プラスチックと同等もしくはそれ以上の強度を得られ、而もそのために成形工程中にガラス繊維の布を挟み込む必要もない。したがって、成形作業の簡略化が期待でき、成形製品強度も非常に優れた物が得られる。
【0062】繊維化樹脂をバインダー(結合剤)として利用した場合、液だれ現象が無いため、前記の特徴の他に、固形物を骨材として繊維化樹脂と混ぜ合わせ繊維化樹脂混合物を作りこれを材料として如何なる容積形状の構造体であっても、構築することができる。
【0063】この場合、液だれがないため構造物のどの部分についても均一できれいな出来上がりとなり、骨材と骨材との接着強度は強化プラスチックと同等若しくはそれ以上に強いため、構造体の変形はほとんどない。その上、骨材と骨材との間の空隙も繊維化樹脂で蜘蛛の巣状で固化しているため強く、長期間その形状を維持できる。また、固形物を混ぜ合わせるため、固形物の表面は繊維化樹脂で厚膜状に被覆されるため、固形物の含有成分の溶出は殆どない。そのために、固形物として、産業廃棄物を30ミリメートル以下の粒径に加工さえしてしまえば、あらゆる廃棄物を骨材(固形物)として再利用することができる。また、本発明による構造体は、空隙率が30%〜18%有るので、単位体積重量が軽く、吸音効果、透水効果、に優れ、通気性が良く熱による表面温度の上昇を防ぐ効果も有る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)はペースト状態の繊維化樹脂の状況図とその部分拡大図。
【図2】(a)、(b)は繊維化樹脂バインダーで作った構造体の断面構造図と部分拡大図。
【図3】木板に繊維化樹脂接着剤を塗布し、それにブロックを接着させた状況図。
【図4】諸材質のブロックとブロックを接着させた状況図。
【図5】(a)、(b)は容器成形に使用した金属製の成形片の容器部分断面図と蓋部分断面図。
【図6】成形によって完成したポリエステル系繊維化樹脂の密閉容器外観図。
【図7】(a)、(b)はひび割れしたコンクリート平板に繊維化樹脂を注入及びコーティングした状況図及び部分拡大図。
【図8】繊維化樹脂バインダーを使用して製作した平板ブロックの一部拡大断面図。
【図9】繊維化樹脂バインダーと砂利の混合物による路面舗装の断面図。
【図10】繊維化樹脂バインダーと砕石の混合物による路面舗装の断面図。
【図11】(a)、(b)は液だれ現象が生じた不均一な構造体の断面図及び部分拡大図。
【符号の説明】
10 繊維
11 液体樹脂
12 繊維強化樹脂
13 固形物
14 木板
15 ブロック状固形物
16 成形型
17 容器
18 蓋
19セメントコンクリート製平板
20 平板ブロック
21 骨材
22 採石層
23 アスファルトコンクリート層
24 砂利
25 砕石

【特許請求の範囲】
【請求項1】液体状態の樹脂と、その液体樹脂の温度より高い温度に加温した太さ50ミクロン以下、長さ20ミリメートル以下の繊維とを混練し、上記繊維の表面に上記液体樹脂を飽和状態になるまで付着被覆させたことを特徴とする繊維化樹脂。
【請求項2】繊維の内部にも液体樹脂を飽和状態になるまでしみ込ませたことを特徴とする請求項1記載の繊維化樹脂。
【請求項3】砕石、砂等の細粒径の固形物からなる骨材と混合混練され、上記骨材を互いに結合することを特徴とする、請求項1または2記載の繊維化樹脂。
【請求項4】液体状態の樹脂とその液体樹脂の温度より高い温度に加温した繊維とを混練し、少なくとも上記繊維の表面に液体樹脂を飽和状態になるまで付着被覆させた繊維化樹脂と、細粒径の固形物からなる骨材とを混練し、その混練した状態の混合物によって所定形状に成型固化したことを特徴とする構造体。
【請求項5】繊維化樹脂と骨材との混練した状態の混合物を型枠等に入れることにより成型したことを特徴とする請求項4記載の構造体。
【請求項6】繊維化樹脂と骨材との混練した状態の混合物を層状に敷設することにより路面舗装として構成したことを特徴とする請求項5記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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