説明

繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフト

【課題】耐衝撃性を維持しつつ、従来のものに比べ、打球感の柔らかさに優れる繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂と補強繊維とを含む、複数の繊維強化樹脂層を有し、エポキシ樹脂組成物が下記条件(a)および条件(b)を満足する繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフト。(a)オキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分を含む。(b)エポキシ樹脂成分に溶解可能な熱可塑性樹脂をエポキシ樹脂成分100質量部に対して20〜30質量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂管状体は、軽量、高強度、高剛性の利点を有するため、ゴルフクラブ用シャフト等に用いられている。繊維強化樹脂管状体をゴルフクラブ用シャフトに用いる場合、耐衝撃性および打球感の柔らかさも求められる。
【0003】
耐衝撃性を改良した繊維強化樹脂管状体としては、下記のものが知られている。
(1)有機繊維を繊維強化樹脂層に加えた繊維強化樹脂管状体(特許文献1〜6)。
(2)有機重合体からなるフィルム、テープ等を繊維強化樹脂層とともに用いた繊維強化樹脂管状体(特許文献7〜10)。
(3)ガラス繊維を含む繊維強化樹脂層を外層に用いた繊維強化樹脂管状体(特許文献11)。
(4)繊維強化樹脂層の樹脂中に特定の樹脂を用いた繊維強化樹脂管状体(特許文献12)。
【0004】
(1)〜(3)の繊維強化樹脂管状体は、衝撃吸収性に優れる異種材料を加えているため、軽量化が難しい。また、打球感の柔らかさを向上させると、耐衝撃性が不充分となる。
(4)の繊維強化樹脂管状体は、耐衝撃性がある程度向上しているものの、さらなる打球感の柔らかさの向上と、耐衝撃性の向上との両立が望まれている。
【特許文献1】特開昭51−118538号公報
【特許文献2】特開昭62−164482号公報
【特許文献3】特開平8−20651号公報
【特許文献4】特開平9−176347号公報
【特許文献5】特開平10−337346号公報
【特許文献6】特開平11−847693号公報
【特許文献7】特開平3−168197号公報
【特許文献8】特開平3−168198号公報
【特許文献9】特開平9−239082号公報
【特許文献10】特開平10−235767号公報
【特許文献11】特開平10−329247号公報
【特許文献12】特開2000−24151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐衝撃性を維持しつつ、従来のものに比べ、打球感の柔らかさに優れる繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトは、エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂と、補強繊維とを含む、複数の繊維強化樹脂層を有し、前記エポキシ樹脂組成物が、下記条件(a)および条件(b)を満足することを特徴とする。
(a)オキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分を含む。
(b)前記エポキシ樹脂成分に溶解可能な熱可塑性樹脂を、エポキシ樹脂成分100質量部に対して20〜30質量部含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトは、耐衝撃性を維持しつつ、従来のものに比べ、打球感の柔らかさに優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトは、同軸的に(すなわち断面から見て同心円状に)積層された、複数の繊維強化樹脂層を有する管状体である。
繊維強化樹脂層は、エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂と、補強繊維とを含む層であり、エポキシ樹脂組成物を補強繊維に含浸させたプリプレグを硬化して形成される。よって、硬化前のプリプレグの1枚が、硬化後の繊維強化樹脂層の1層に相当する。
【0009】
<エポキシ樹脂組成物>
エポキシ樹脂組成物は、下記条件および条件(b)、必要に応じて条件(c)を満足する組成物である。
(a)オキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂と、必要に応じてビスフェノールS型エポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂成分を含む。
(b)前記エポキシ樹脂成分に溶解可能な熱可塑性樹脂を、エポキシ樹脂成分100質量部に対して20〜30質量部含む。
(c)前記エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂の平行光線透過率が、30%以上である。
【0010】
条件(a)について:
(オキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂)
オキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂(以下、エポキシ樹脂(a1)と記す。)は、下記式(1)に示すオキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂(a1)を含むことにより、補強繊維との良好な接着性を発現し、繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトとしたときに、良好な耐衝撃性を得ることができる。
【0011】
【化1】

【0012】
ただし、Rは、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を示す。
オキサゾリドン環構造は、エポキシ環とイソシアネートとの反応により形成できる。
市販されているエポキシ樹脂(a1)としては、旭化成エポキシ社製のAER4151、AER4152等が挙げられる。
【0013】
(ビスフェノールS型エポキシ樹脂)
ビスフェノールS型エポキシ樹脂(以下、エポキシ樹脂(a2)と記す。)は、下記式(2)に示す構造を有するエポキシ樹脂である(ただし、オキサゾリドン環構造を有するものを除く)。エポキシ樹脂(a1)とエポキシ樹脂(a2)とを組み合わせることにより、耐熱性が向上する。
【0014】
【化2】

【0015】
市販されているエポキシ樹脂(a2)としては、大日本インキ化学工業社製のEXA1514等が挙げられる。
【0016】
(エポキシ樹脂成分)
エポキシ樹脂成分は、エポキシ樹脂(a1)およびエポキシ樹脂(a2)を除く、他のエポキシ樹脂(以下、エポキシ樹脂(a3)と記す。)を含んでいてもよい。
エポキシ樹脂(a3)としては、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等。)、脂環式または脂肪族のエポキシ樹脂、ノボラックタイプのエポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等。)、アミノグリシジルタイプのエポキシ樹脂、アミノフェノールタイプのエポキシ樹脂、ナフタレン骨格構造を含むエポキシ樹脂、特殊骨格構造を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。また、難燃性を付与するために、ハロゲン等を付加したエポキシ樹脂を用いてもよい。
エポキシ樹脂(a3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
エポキシ樹脂成分中のエポキシ樹脂(a1)の割合は、接着性の点から、下記条件(a’)を満足するような割合が好ましい。
(a’)下記式(3)で求められるオキサゾリドン環の割合が、3〜50%である。
オキサゾリドン環の割合(%)=(オキサゾリドン環のモル数)/(エポキシ樹脂成分中の全エポキシ基のモル数)×100 ・・・(3)。
【0018】
条件(b)について:
(エポキシ樹脂成分に溶解可能な熱可塑性樹脂)
エポキシ樹脂成分に溶解可能な熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(b1)と記す。)としては、フェノキシ樹脂、PVF(ポリビニルホルマール)等が挙げられ、エポキシ樹脂成分との相溶性が高く、硬化中に相分離しにくく、平行光線透過率を低下させない点から、フェノキシ樹脂が好ましい。
【0019】
市販されているフェノキシ樹脂としては、下記のものが挙げられる。
新日鐵化学製のエスポキシSP−50、
ジャパンエポキシレジン社製のjER1256、jER4250、jER4275、jER1255HX30、jER5580BPX40、YX8100BH30、
ダウケミカル社製のDER684EK40、
東都化成社製のフェノトートYP50、YP50S、YP70、YPB−40AM40、
UCC社製のPKHH、PKHJ、PKHM−30等。
フェノキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂(b1)の量は、エポキシ樹脂成分100質量部に対して20〜30質量部であり、25〜30質量部が好ましい。熱可塑性樹脂(b1)の量が20質量部以上であれば、柔らかい打球感を実感できる。熱可塑性樹脂(b1)の量が30質量部を超えるとプリプレグ製造工程における通過性が悪化しやすくなる。
【0021】
条件(c)について:
エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂の平行光線透過率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。平行光線透過率が30%未満では、透明性が悪くなり、プリプレグを硬化した際の外観が悪くなる。
平行光線透過率は、エポキシ樹脂組成物を硬化させて、厚さ2mmの板を成形し、JIS K7105の測定法Aに従って測定する。
【0022】
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含むことが好ましい。
硬化剤としては、通常のエポキシ樹脂に用いられる硬化剤が挙げられ、例えば、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、グアニジン系硬化剤、ルイス酸系硬化剤、ウレア系触媒等が挙げられ、硬化性、硬化後の物性に優れる点から、ジシアンジアミドが好ましい。
【0023】
ジシアンジアミドの量は、エポキシ樹脂成分への溶解性の点から、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、0.5〜2.5質量部がより好ましい。ジシアンジアミドの量が多い場合、硬化条件によっては若干のジシアンジアミドの溶け残りが発生し、エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂中に微量であるが残存する。残存するジシアンジアミドは、水分により白濁する可能性があり、外観を損ねるおそれがある。また、ジシアンジアミドは極性が強く、添加量が多いと、溶解している熱可塑性樹脂(b1)が硬化時に相分離し、析出して、エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂が不透明となってしまうことがある。
【0024】
硬化剤としては、ジシアンジアミドとウレア系触媒との組み合わせが好ましい。ジシアンジアミドは、エポキシ樹脂成分への溶解性がよくないため、ジシアンジアミドをエポキシ樹脂成分に溶解させるためには、エポキシ樹脂成分を160℃以上に加熱することが必要であるが、ウレア系触媒を共存させることにより、溶解温度を下げることができる。
【0025】
エポキシ樹脂組成物は、その性能を損なわない範囲で、前記成分を除く成分(例えば、靭性付与剤、フィラー、着色剤等。)を含んでいてもよい。
【0026】
靭性付与剤としては、反応性エラストマー、ハイカーCTBN変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ニトリルゴム添加エポキシ樹脂、架橋アクリルゴム微粒子添加エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマー添加エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0027】
フィラーとしては、無機微粒子(マイカ、アルミナ、タルク、微粉状シリカ、ウォラストナイト、セピオライト、塩基性硫酸マグネシウム、亜鉛末、アルミニウム粉等。)、有機微粒子(アクリル微粒子、エポキシ樹脂微粒子、ポリウレタン微粒子等。)等が挙げられる。
【0028】
着色剤としては、有機顔料(アゾ顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料等。)、無機顔料(二酸化チタン、黄鉛、コバルトバイオレット、ベンガラ等。)等が挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂組成物の調製方法としては、熱可塑性樹脂(b1)を、エポキシ樹脂成分の一部または全部に完全に溶解し、その後、硬化剤を加える方法が実用的である。
【0030】
<補強繊維>
補強繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、スチール繊維等が挙げられ、繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトの機械特性に優れる点から、炭素繊維が特に好ましい。炭素繊維としては、引張強度が4000MPa以上であり、引張伸度が1.7%以上である高強度、高伸度の炭素繊維が好ましい。
【0031】
補強繊維の形態としては、ミルドファイバー、チョップドファイバー、連続繊維、連続繊維を一方向に引き揃えた繊維束、クロス(織物)、トウ、マット、ニット、スリーブ等が挙げられ、積層構成によって自由に設計強度を変更できる点から、連続繊維を一方向に引き揃えた繊維束が好ましい。
【0032】
<繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフト>
繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトは、補強繊維の配向角が繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトの長手方向に対して20〜90゜である特定の繊維強化樹脂層を含むことが好ましい。特定の繊維強化樹脂層を含む繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトは、曲げ強度、つぶし強度を維持でき、座屈破壊に耐え得る。
繊維強化樹脂管状体は、さらに、アングル層およびストレート層を有することが好ましい。
【0033】
繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトは、例えば、マンドレル(芯金)の全長または一部に、プリプレグまたは積層プリプレグを、内側からアングル層とストレート層とを組み合わせつつ所望の枚数巻き付け、加熱、加圧処理により成形して得ることができる。
【0034】
プリプレグは、エポキシ樹脂組成物を補強繊維に含浸させることにより得ることができる。エポキシ樹脂組成物を補強繊維に含浸させる方法としては、公知の方法を用いればよい。プリプレグの厚さ、繊維目付、樹脂含有率等は、各層に必要とされる厚さ、巻き径等から適宜選択すればよい。
【0035】
以上説明した本発明の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトにあっては、特定のエポキシ樹脂(a1)を含むエポキシ樹脂成分および特定量の熱可塑性樹脂(b1)を含むエポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂を含むため、耐衝撃性を維持しつつ、従来のものに比べ、打球感の柔らかさに優れる。
また、本発明の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトにあっては、特定のエポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂を含むため、曲げ強度、ねじり強度、つぶし強度、シャルピー衝撃強度等に優れる。よって、繊維強化複合材料層の積層数を減少させて軽量化した場合にも、繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトに必要とされる剛性、強度を充分に有することができる。よって、耐衝撃性を維持しつつ、軽量化も可能となる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
エポキシ樹脂(a1)〜(a3)、熱可塑性樹脂(b1)、硬化剤としては、表1に示すものを用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
(エポキシ樹脂組成物の調製)
表2に示す配合でエポキシ樹脂組成物A〜Dを調製した。
【0039】
エポキシ樹脂組成物Aの調製:
jER828にYP50Sを加え、150℃で2時間撹拌して溶解した。その後、AER4152およびEXA1514を加え、溶解した。その後、DICY7およびとDCMU99を加え、分散してエポキシ樹脂組成物Aを得た。
【0040】
エポキシ樹脂組成物Bの調製:
jER828、jER1002、jER154を150℃で加熱混合した。その後、DICY7およびDCMU99を加え、分散してエポキシ樹脂組成物Bを得た。
【0041】
エポキシ樹脂組成物Cの調製:
YP50の量を変更した以外は、エポキシ樹脂組成物Aと同様にして、エポキシ樹脂組成物Cを得た。
【0042】
エポキシ樹脂組成物Dの調製:
各エポキシ樹脂、YP50Sの量を変更した以外は、エポキシ樹脂組成物Aと同様にして、エポキシ樹脂組成物Dを得た。
【0043】
【表2】

【0044】
(プリプレグの製造)
プリプレグ1の製造:
エポキシ樹脂組成物Aを、ロールコーターを用いて離型紙上に27g/mで均一に塗布した。ついで炭素繊維(三菱レイヨン社製、商品名「パイロフィルTR50S」)を125g/mとなるように1方向に引き揃えた繊維束を、離型紙に塗布したエポキシ樹脂組成物Aで上下から挟み込んで炭素繊維にエポキシ樹脂組成物Aを含浸させて、樹脂含有率30質量%、炭素繊維目付125g/mのプリプレグ1を得た。
【0045】
プリプレグ2の製造:
エポキシ樹脂組成物Aの代わりにエポキシ樹脂組成物Bを用いた以外は、プリプレグ1と同様にして、プリプレグ2を得た。
【0046】
プリプレグ3の製造:
エポキシ樹脂組成物Aの代わりにエポキシ樹脂組成物Cを用いた以外は、プリプレグ1と同様にして、プリプレグ3を得た。
【0047】
プリプレグ4の製造:
エポキシ樹脂組成物Aの代わりにエポキシ樹脂組成物Dを用いた以外は、プリプレグ1と同様にして、プリプレグ4を得た。
しかし、エポキシ樹脂組成物Dの粘度が高いため、炭素繊維への含浸性に劣り、十分な品質のプリプレグは得られなかった。
【0048】
(ゴルフクラブ用シャフトの製造)
マンドレル(芯金)として、図1に示すマンドレル1および図2に示すマンドレル2を用意した。
プリプレグを、図3または図4に示す所定の大きさに裁断し、マンドレル上に巻き付け、積層する、シートラップ法によりゴルフクラブ用シャフトを製造した。
【0049】
<ゴルフクラブ用シャフトの特性>
(振動数)
ウッド用のゴルフクラブ用シャフトについては、シャフト細径側先端部に196gの重りを装着し、アイアン用のゴルフクラブシャフトについては、シャフト細径側先端部に285gの重りを装着した。
シャフト太径側先端部から、シャフト太径側先端部から180mmの位置までを、市販のゴルフクラブタイミングハーモナイザー(藤倉ゴム工業社製)に空気圧300KPaで固定した。装着した重り部分に手で振動を加え、ゴルフクラブ用シャフトの固有振動数を測定した。
【0050】
(シャフトねじれ角)
ウッド用のゴルフクラブ用シャフトについては、シャフト細径側先端から、シャフト細径側先端部から50mmの位置までと、シャフト細径側先端部から1035mmの位置から、シャフト細径側先端部から1067mmの位置までを固定し、シャフトに1lb・ftのトルクを負荷したしたときのねじれ角を測定した。
アイアン用のゴルフクラブ用シャフトについては、シャフト細径側先端から、シャフト細径側先端部から50mmの位置までと、シャフト細径側先端部から880mmの位置から、シャフト細径側先端部から912mmの位置までを固定し、シャフトに1lb・ftのトルクを負荷したしたときのねじれ角を測定した。
【0051】
(キックポイント)
シャフトキックポイントゲージ(フォーティーン社製、FG−105RM)を用いて、シャフトを両端から圧縮したときに、シャフトが湾曲する頂点とシャフト細径側先端部からの距離を測定し、シャフト全長との比率を求めた。
【0052】
(重心)
シャフト細径側先端部からシャフトの重心までの長さを測定し、シャフト全長に対する比率を求めた。
【0053】
(アイゾット衝撃試験)
シャフトを、シャフト細径側先端部から長さ60mmに切り出してアイゾット衝撃試験片とした。アイゾット衝撃試験は、JIK K7110に準拠した上島製作所製のアイゾット衝撃試験機(容量29.4N・m)に、図5に示す治具10を固定し、図6に示すように治具10にアイゾット衝撃試験片12を30mm挿入して、治具10の上面から22mm位置でハンマーにより打撃して衝撃吸収エネルギーを測定した。なお、治具10の上部(打撃側)には、あらかじめ2Rの面取りを施してあり、アイゾット衝撃試験片12と治具10との隙間は接着しなかった。また、アイゾット衝撃試験片12には、切り込み(ノッチ)を施さなかった。
【0054】
<ゴルフクラブの特性>
(振動数)
組み立てたゴルフクラブについて、シャフト太径側先端部から、シャフト太径側先端部から180mmの位置までを、ゴルフクラブタイミングハーモナイザー(藤倉ゴム工業社製)に空気圧300KPaで固定した。ゴルフクラブヘッドの部分に手で振動を加え、ゴルフクラブの固有振動数を測定した。
【0055】
(クラブバランス)
ゴルフクラブのクラブバランスを、14インチバランス計(鴨下精衡所社製、スイングバランサーII)を用いて測定した。
【0056】
〔実施例1〕
プリプレグ1を、図3に示す第1〜6の巻き付けシートの形状、大きさに裁断した。第1、3〜6の巻き付けシートについては、炭素繊維の配向方向がシャフト長手方向と一致するように裁断した。また、第2の巻き付けシートについては、炭素繊維の配向方向がシャフト長手方向に対して+45°と−45°となるように2枚のシートに裁断したのち、該2枚のシートを、マンドレルの細径側で8mm、太径側で21mmずらして重ね合わせた。
【0057】
ついで、マンドレル1の細径側先端部から100mmの位置から、細径側先端部から1290の位置まで、第1〜6の巻き付けシートを、図3に示すように順次巻き付けた。その上に、厚さ30μm×幅20mmのポリプロピレンテープを、2mmピッチで巻き付け緊縛し、これを145℃で2時間加熱して、プリプレグ1を硬化した。その後、マンドレルを抜き取り、ポリプロピレンテープを外して、両端を各11mm切断して、長さ1168mmとした。ついで、研磨機を用いて表面を研磨し、ウッド用のゴルフクラブ用シャフトを得た。ゴルフクラブ用シャフトの特性を表3に示す。
【0058】
得られたゴルフクラブ用シャフトを、クラブ長が45インチになるようグリップ側を切断し、ヘッド(体積:380cc、質量:198g、ロフト角:10度)および市販のグリップを装着し、長さ45インチ(1143mm)の試験用のドライバーゴルフクラブを得た。ゴルフクラブの特性を表4に示す。
【0059】
〔比較例1〕
プリプレグ1の代わりにプリプレグ2を用いた以外は、実施例1と同様にしてウッド用のゴルフクラブシャフトを得た。ゴルフクラブ用シャフトの特性を表3に示す。
得られたゴルフクラブ用シャフトを用い、実施例1と同様にてドライバーゴルフクラブを得た。ゴルフクラブの特性を表4に示す。
【0060】
〔比較例2〕
プリプレグ1の代わりにプリプレグ3を用いた以外は、実施例1と同様にしてウッド用のゴルフクラブシャフトを得た。ゴルフクラブ用シャフトの特性を表3に示す。
得られたゴルフクラブ用シャフトを用い、実施例1と同様にてドライバーゴルフクラブを得た。ゴルフクラブの特性を表4に示す。
【0061】
〔実施例2〕
プリプレグ1を、図4に示す第1〜5の巻き付けシートの形状、大きさに裁断した。第2〜5の巻き付けシートについては、炭素繊維の配向方向がシャフト長手方向と一致するように裁断した。また、第1の巻き付けシートについては、炭素繊維の配向方向がシャフト長手方向に対して+45°と−45°となるように2枚のシートに裁断したのち、該2枚のシートを、マンドレルの細径側で10mm、太径側で20mmずらして重ね合わせた。
【0062】
ついで、マンドレル2上に、第1〜5の巻き付けシートを、図4に示すように順次巻き付けた。その上に、厚さ30μm×幅20mmのポリプロピレンテープを、2mmピッチで巻き付け緊縛し、これを145℃で2時間加熱して、プリプレグ1を硬化した。その後、マンドレルを抜き取り、ポリプロピレンテープを外して、両端を各10mm切断して、長さ940mmとした。ついで、研磨機を用いて表面を研磨し、アイアン用のゴルフクラブ用シャフトを得た。ゴルフクラブ用シャフトの特性を表3に示す。
【0063】
得られたゴルフクラブ用シャフトを、クラブ長が37インチになるようグリップ側を切断し、#7アイアン用ヘッド(質量:278g、ロフト角:32度)および市販のグリップを装着し、長さ37インチ(940mm)の試験用のアイアンゴルフクラブを得た。ゴルフクラブの特性を表4に示す。
【0064】
〔比較例3〕
プリプレグ1の代わりにプリプレグ2を用いた以外は、実施例2と同様にしてアイアン用のゴルフクラブシャフトを得た。ゴルフクラブ用シャフトの特性を表3に示す。
得られたゴルフクラブ用シャフトを用い、実施例2と同様にてアイアンゴルフクラブを得た。ゴルフクラブの特性を表4に示す。
【0065】
〔比較例4〕
プリプレグ1の代わりにプリプレグ3を用いた以外は、実施例2と同様にしてアイアン用のゴルフクラブシャフトを得た。ゴルフクラブ用シャフトの特性を表3に示す。
得られたゴルフクラブ用シャフトを用い、実施例2と同様にてアイアンゴルフクラブを得た。ゴルフクラブの特性を表4に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
(実打試験)
テスターである上級者ゴルファー4名に、実施例1、比較例1、2のドライバーゴルフクラブを用いて各5球打ってもらい、柔らかい打球感が得られるかを評価した。4名のテスター全員が比較例1および比較例2に比べて実施例1のドライバーゴルフクラブの打球感の方が柔らかく感じると回答した。
さらに、実施例2、比較例3、4のアイアンゴルフクラブを用いて同様に実打試験を実施した。4名のテスターのうちの2名が比較例3および比較例4に比べて実施例2のアイアンゴルフクラブの打球感の方が柔らかく感じると回答し、2名が実施例2と比較例3とで打球感の柔らかさが同等と回答した。結果を表5に示す。
【0069】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトは、耐衝撃性を維持しつつ、従来のものに比べ、打球感の柔らかさに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例で用いたマンドレル1の形状、大きさを示す図である。
【図2】実施例で用いたマンドレル2の形状、大きさを示す図である。
【図3】マンドレル1に巻き付ける、巻き付けシートの形状、大きさおよび巻き付け順序を示す図である。
【図4】マンドレル2に巻き付ける、巻き付けシートの形状、大きさおよび巻き付け順序を示す図である。
【図5】アイゾット衝撃試験に用いた治具を示す斜視図である。
【図6】アイゾット衝撃試験の様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
12 アイゾット衝撃試験片(繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂組成物を硬化させた樹脂と、補強繊維とを含む、複数の繊維強化樹脂層を有し、
前記エポキシ樹脂組成物が、下記条件(a)および条件(b)を満足する、繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフト。
(a)オキサゾリドン環構造を有するエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分を含む。
(b)前記エポキシ樹脂成分に溶解可能な熱可塑性樹脂を、エポキシ樹脂成分100質量部に対して20〜30質量部含む。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−112626(P2009−112626A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290806(P2007−290806)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(506266746)エムアールシーコンポジットプロダクツ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】