説明

繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフト

【課題】軽量であって、ゴルフクラブ用シャフトとして適切な曲げ強度と、撓み性を備え、しかも曲げ疲労強度を有し、耐久性に優れたゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【解決手段】引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+35°〜+55°の角度で配向させた正バイアス層、長手方向に対して−35°〜−55°の角度で配向させた負バイアス層を有するバイアス層と、引張弾性率230〜300GPaのポリアクリロニトリル系炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して略平行に配向させたPAN系ストレート層と、引張弾性率160〜210GPaのピッチ系炭素繊維を、小口径側先端部分または長手方向の全長に亘って長手方向に対して略平行に配向させたピッチ系ストレート補強層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフトに関するものであり、より詳しくは、曲げ強度を維持して曲げ剛性が低く、しかも曲げ疲労に対する耐久性に優れる繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブ用シャフトは、曲げ強度を有すると共に、ボールインパクト時のヘッドスピードをより向上させるため、適度な曲げ剛性、いわゆるフレックスを有することが求められる。特に、女性および中高年などスイングスピードが低いゴルファーには、上級者と比べて比較的柔らかいシャフト(低曲げ剛性シャフト)が適している。
【0003】
近年では、従来のスチールシャフトに対して、炭素繊維強化複合材料(CFRP:Carbon fiber reinforced plastics)を用いたゴルフシャフトが広く使用されている。特にウッドクラブ用シャフトについてみると、そのCFRP化率はほぼ100%であると試算されている。CFRPシャフト普及の要因として以下のふたつが考えられる。まず、CFRPは金属材料と比べて高い比強度(=強度/密度)、比弾性率(=弾性率/密度)を有するため、シャフトの軽量化が可能となる。さらに、使用する炭素繊維の機械的特性(引張強度、引張弾性率)や積層時の配向角度を選択することにより、ゴルフシャフトに広い設計自由度を与えることができる。このようにCFRPを用いることにより、従来の金属材料では得られなかった機械的性能を得ることが可能となったため、スチールシャフトに替わってCFRPシャフトが広く用いられている原因である。
【0004】
しかしながら、軽量化を図った炭素繊維強化複合材料製ゴルフシャフトでは、特にヘッド側で破損を起こしやすい場合があった。この要因として、ヘッドが取り付けられる端部には特に荷重がかかり、さらに小口径であるため曲げ強度が不足することが挙げられる。このような小口径側での破壊を防止するために、炭素繊維強化複合材料製のゴルフクラブ用シャフトにおいては、シャフト全体あるいは小口径側の部分に補強層を積層して曲げ強度不足を補っているものもある。このような補強層により曲げ強度は得られても撓み性が不足することもあり、ゴルフクラブ用シャフトとして、適切な曲げ強度と、撓み性を備え、しかも軽量なものが要請されている。
【0005】
本発明者らは、軽量であって曲げ強度に優れ、しかも、低い剛性を有するシャフトとして、特定の弾性率を有する強化繊維をシャフトの長手方向に対して特定の配向角度を有して配向させた斜交層と、特定の弾性率を有する強化繊維をシャフトの長手方向に対して略平行に配向させたストレート層と、更に、特定の弾性率を有する強化繊維をシャフトの長手方向に対して略平行に配向させた補強層を有するテーパ付き中空シャフト(特許文献1、2)を既に開発した。しかしながら、これらのシャフトにおいては、曲げ強度に優れ、低い剛性を有するものの、曲げ疲労強度に欠ける場合があり、高価な強化繊維を用いているにも拘わらず、耐久性に欠ける場合があった。
【特許文献1】特開平9−141754号公報
【特許文献2】特開平9−277389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、軽量であって、ゴルフクラブ用シャフトとして適切な曲げ強度と、撓み性を備え、しかも曲げ疲労強度を有し、耐久性に優れたゴルフクラブ用シャフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ゴルフクラブ用シャフトとしての曲げ弾性や撓み性、曲げ強度を備え、しかも曲げ疲労に対して強度を有するものの素材として炭素繊維に着目し、同じ炭素繊維でも、高弾性率炭素繊維と低弾性率炭素繊維、更に、ピッチ系炭素繊維とポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)において、それぞれ特性に相違があり、これらの特性を活用することにより、適切な曲げ強度、撓み性を備え、しかも曲げ疲労強度を有するゴルフクラブ用シャフトを得られるのではないかと研究を行った。
【0008】
ここで、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)は、ポリアクリロニトリル繊維を焼成して得られる炭素繊維であり、ピッチ系炭素繊維は、石油ピッチ、コールタール等を焼成して得られる炭素繊維である。更に、これらの炭素繊維はその焼成温度により機械的特性が異なる炭素繊維となる。PAN系の場合、1500〜3000℃で焼成すると、引張弾性率が230〜600GPa、引張強度が3500〜6000GPa程度の高強度、高弾性率炭素繊維となる。ピッチ系の場合、2500〜3000℃の温度で焼成すると、一般的に引張弾性率が400〜1000GPa程度、引張強度が2500〜5000MPa程度の高弾性率炭素繊維が得られ、1500〜2400℃の温度で焼成すると、一般的に引張弾性率が50〜210GPa程度、引張強度が1000〜4000MPa程度の低弾性炭素繊維が得られる。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、PAN系炭素繊維は圧縮破断歪が小さく、圧縮応力を受けた場合圧縮破壊を起こしやすいが、ピッチ系低弾性率炭素繊維は圧縮破断歪が大きいことを見い出し、このPAN系炭素繊維をシャフトの長手方向に略平行に配向させたストレート層と、圧縮破断歪が大きく圧縮破壊を起こしにくいピッチ系低弾性率炭素繊維を、シャフトの長手方向に平行に配向させたストレート補強層とを組み合わせて設けることにより、シャフトの静的曲げ強度を向上させることができることの知見を得た。更に、PAN系炭素繊維を含むストレート層と、ピッチ系炭素繊維を含むストレート補強層の引張弾性を特定の関係とすることにより、その界面に生じるせん断応力を小さくすることができることの知見を得た。炭素繊維の材質を選択して弾性率を特定し繊維の配向方向を特定した積層構造とすることにより、曲げ強度に優れ、且つ低い剛性を有し、曲げ疲労強度を有し、耐久性に優れたゴルフクラブ用シャフトが得られることの知見を得て、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+35°〜+55°の角度で配向させた正バイアス層、および引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して−35°〜−55°の角度で配向させた負バイアス層を有するバイアス層と、引張弾性率230〜300GPaのPAN系炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたPAN系ストレート層と、引張弾性率160〜210GPaのピッチ系炭素繊維を、小口径側先端部分に長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたピッチ系ストレート補強層とを有することを特徴とする繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフトに関する。
【0011】
また、本発明は、引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+35°〜+55°の角度で配向させた正バイアス層、および引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して−35°〜−55°の角度で配向させた負バイアス層を有するバイアス層と、引張弾性率230〜300GPaのPAN系炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたPAN系ストレート層と、引張弾性率160〜210GPaのピッチ系炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたピッチ系ストレート補強層とを有することを特徴とする繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフトに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、軽量であって、ゴルフクラブ用シャフトとして適切な曲げ弾性率と、撓み性を備え、しかも曲げ強度、曲げ疲労強度を有し、耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+35°〜+55°の角度で配向させた正バイアス層、および引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して−35°〜−55°の角度で配向させた負バイアス層を有するバイアス層と、引張弾性率230〜300GPaのPAN系炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたPAN系ストレート層と、引張弾性率160〜210GPaのピッチ系炭素繊維を、小口径側先端部分または長手方向全長に亘って長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたピッチ系ストレート補強層とを有するものであれば、特に制限されるものではない。
【0014】
本発明のゴルフクラブ用シャフトに設けられるバイアス層は、シャフトの長手方向の全長に亘って設けられ、長手方向に対して+35°〜+55°の角度で炭素繊維を配向させた正バイアス層と、長手方向に対して−35°〜−55°の角度で炭素繊維を配向させた負バイアス層からなる。バイアス層における炭素繊維の配向方向がシャフトの長手方向に対して±35°〜±55°であれば、シャフトに求められる適度なねじり強度およびねじり剛性を得ることができる。正バイアス層と負バイアス層は便宜上の名称であって、シャフトの長手方向に対して一方の炭素繊維が+35°〜+55°方向に配向し、他方の炭素繊維がその方向と90°回転した方向に配向したものであればよく、これらのいずれが下層でも上層でもよく、交互に積層してもよい。また、場合によっては、バイアス層として、正バイアス層と負バイアス層とを別個に設けず、平織りなどの織物プリプレグを用いて二方向性のバイアス層とすることも可能である。正バイアス層、負バイアス層は、各1層でもよく、それぞれ複数層、例えば2〜10層設けてもよく、2〜8層がより好ましく、複数層の場合は、これらが同数であることが好ましく、交互に積層して設けることもできる。
【0015】
バイアス層に用いられる炭素繊維は、引張弾性率が230〜900GPaの炭素繊維であり、300〜800GPaであることが好ましい。引張弾性率が230GPa以上であれば、ゴルフシャフトに適したなねじり剛性を得ることができ、900GPa以下であれば、高いねじり剛性に加えて、ゴルフシャフトとして十分なねじり強度を得ることができる。引張弾性率が300GPa以上、800GPa以下であれば、上記の効果をより顕著に得ることができる。引張弾性率は、JIS R7601−1986法により測定した値である(以下同じ)。
【0016】
また、炭素繊維の引張強度が2000〜6000MPaであることが好ましく、より好ましくは2500〜6000MPaである。炭素繊維の引張強度がこの範囲であると、ゴルフシャフトとして十分なねじり強度を得ることができる。引張強度は、JIS R7601−1986法により測定した値である(以下同じ)。
【0017】
更に、炭素繊維の引張破断歪が0.4〜3.0%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3.0%である。炭素繊維の引張破断歪がこの範囲であると、ゴルフシャフトとして十分なねじり強度を得ることができる。引張破断歪は、JIS R7601−1986法により測定した値である(以下同じ)。
【0018】
更に、炭素繊維の圧縮破断歪が0.1〜1.4%であることが好ましく、より好ましくは0.15〜1.4%である。炭素繊維の圧縮破断歪がこの範囲であると、ゴルフシャフトとして十分なねじり強度を得ることができる。圧縮破断歪は、炭素繊維を一方向に配向させ、エポキシ樹脂を含浸・硬化した一方向CFRP強化材を用いて、JIS K7076−1991法により測定した値である(以下同じ)。
【0019】
上記バイアス層に用いられる炭素繊維は、上記特性を有するものであれば、PAN系炭素繊維でもピッチ系炭素繊維でもいずれのものでも適用することができる。
【0020】
本発明のゴルフクラブ用シャフトに設けられるPAN系ストレート層は、シャフトの長手方向の全長に亘って設けられ、長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたPAN系炭素繊維からなる。PAN系ストレート層における炭素繊維の配向角度がシャフトの長手方向に対して+5°〜−5°の略平行であれば、ゴルフシャフトとして十分な曲げ強度と適度な撓み性、すなわち曲げ剛性を得ることができる。PAN系ストレート層は1層でもよいが、複数層、例えば2〜10層を設けてもよく、好ましくは2〜8層である。
【0021】
PAN系ストレート層に用いられる炭素繊維は、PAN系炭素繊維である。ストレート層がPAN系炭素繊維を含むことにより、適度な曲げ剛性を得ることができる。ゴルフシャフトの曲げ剛性は高ければ優れているのではなく、適度な柔軟性を有することが重要である。すなわち、スィング中に生じるシャフトの撓りによりヘッドスピードが増加し、ボール飛距離の向上につながる。ストレート層にPAN系炭素繊維を用いることにより、ゴルフシャフトに適度な曲げ剛性を付与することができる。PAN系ストレート層に用いられるPAN系炭素繊維は、引張弾性率が230〜400GPaの高強度炭素繊維であり、230〜300GPaであることが好ましい。引張弾性率が230GPa以上であれば、高い曲げ強度と適度な撓み性を得ることができ、400GPa以下であれば、ゴルフシャフトとして十分な曲げ強度と適度な撓み性を得ることができる。引張弾性率が230GPa以上、300GPa以下であれば、上記の効果をより顕著に得ることができる。
【0022】
また、PAN系炭素繊維の引張強度が2000〜6000MPaであることが好ましく、より好ましくは2500〜6000GPaである。PAN系炭素繊維の引張強度がこの範囲であると、高い曲げ強度を得ることができる。
【0023】
更に、PAN系炭素繊維の引張破断歪が1.0〜3.0%であることが好ましく、1.2〜3.0%であることがより好ましい。炭素繊維の引張破断歪がこの範囲であると、高い曲げ強度を得ることができる。
【0024】
更に、PAN系炭素繊維の圧縮破断歪が0.8〜1.4%であることが好ましく、1.0〜1.4%であることがより好ましい。ストレート層に用いるPAN系炭素繊維は、大きい圧縮破断歪を有することが好ましいが、現在のところ、PAN系炭素繊維として1.4%を越える圧縮破断歪を有する製品は開発されていない。したがって、ゴルフシャフトとして求められる曲げ強度を得るためには、現在生産されているPAN系炭素繊維のなかで大きい圧縮破断ひずみを有するものを用いる必要があり、炭素繊維の圧縮破断歪が上記の0.8〜1.4%の範囲であることが好ましい。。
【0025】
本発明のゴルフクラブ用シャフトに設けられるピッチ系ストレート補強層は、シャフトの小口径側先端部分に設けても、また、シャフトの長手方向の全長に亘って設けもよく、長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたピッチ系炭素繊維からなる。ピッチ系ストレート補強層における炭素繊維の配向角度がシャフトの長手方向に対して+5°〜−5°の略平行であれば、曲げ強度と撓み性を得ることができる。ピッチ系ストレート補強層は1層でもよいが、複数層を設けてもよく、小口径側先端部分に設ける場合は小口径側先端において、また、長手方向の全長に亘って設ける場合は全長に亘って、例えば、2〜15層とすることができ、3〜10層とすることがより好ましい。
【0026】
ピッチ系ストレート補強層に用いられる炭素繊維は、引張弾性率が160〜210GPaの低弾性率のピッチ系炭素繊維である。低弾性率のピッチ系炭素繊維を含むストレート補強層を設けることにより、PAN系ストレート層の圧縮破壊を抑制することができ、さらにPAN系ストレート層/ピッチ系ストレート補強層の界面におけるせん断疲労破壊の発生を防止することが可能となるため、曲げ強度および曲げ疲労特性、すなわち耐久性を著しく向上させることができる。ピッチ系ストレート補強層に用いられるピッチ系炭素繊維の引張弾性率は、180〜210GPaであることが好ましい。引張弾性率が160GPa以上であれば、曲げ強度と撓み性を向上させることができ、210GPa以下であれば、撓み性を向上させることができる。引張弾性率が180GPa以上であれば、上記の効果をより顕著に得ることができる。
【0027】
また、このようなピッチ系炭素繊維の圧縮破断歪が1.5〜3.5%であることが好ましく、1.6〜3.5%であることがより好ましい。炭素繊維の圧縮破断歪がこの範囲であると、曲げ強度を向上させ、さらに疲労破壊を抑制するうえでも高い補強効果を得ることができる。
【0028】
また、ピッチ系炭素繊維の引張強度が2000〜4000MPaであることが好ましく、より好ましくは2500〜4000MPaである。ピッチ系炭素繊維の引張強度がこの範囲であると、曲げ強度を向上させ、疲労破壊を抑制するうえで高い補強効果を得ることができる。
【0029】
更に、ピッチ系炭素繊維の引張破断歪が1.0〜2.5%であることが好ましく、1.2〜2.5%であることがより好ましい。炭素繊維の引張破断歪がこの範囲であると、曲げ強度をを向上させ、疲労破壊を抑制するうえで高い補強効果を得ることができる。
【0030】
このようなピッチ系ストレート補強層を小口径側先端部に設ける場合は、小口径側先端から長手方向に対して10〜40%の範囲、または小口径側先端から長手方向の100〜450mmの範囲で設けることが好ましい。補強層がこの範囲であれば、軽量であって、曲げ強度、撓み性を向上させることができる。
【0031】
上記正バイアス層および負バイアス層を有するバイアス層、PAN系ストレート層およびピッチ系ストレート補強層の積層順はいずれであってもよいが、図1に示すように、下層から正バイアス層1aおよび負バイアス層1bを有するバイアス層、PAN系ストレート層2およびピッチ系ストレート補強層3と順次積層して設けることが好ましい。このような積層構造を有することにより、ゴルフクラブのシャフトとして、適切な曲げ強度、撓み性、ねじり強度およびねじり剛性を得ることができる。
【0032】
このようなゴルフクラブ用シャフトの製造方法を、以下に説明する。
【0033】
各層に用いる炭素繊維をプリプレグとして形成する。プリプレグは各炭素繊維を一方向として引き揃えマトリックス樹脂を含漬させシート状にすることにより作製することができ、これらは市販のものを使用することもできる。プリプレグに使用可能な樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等から選ばれる熱硬化性樹脂が用いられ、好ましくはエポキシ樹脂を挙げることができる。これらのプリプレグにおける各層の炭素繊維の目付は通常30〜180g/m2、好ましくは50〜150g/m2の範囲である。プリプレグの炭素繊維の目付がこの範囲であると、各層において後述するマンドレルへの巻き付けを容易に行なうことができる。また、プリプレグに含まれる樹脂の目付は、7.5〜120g/m2とすることができる。プリプレグの樹脂の目付が7.5g/m2以上であると、後述するマンドレルへの巻き付けを容易に行なうことができ、120g/m2以下であると高炭素繊維含有率のシャフトを容易に製造することができ、引張弾性率、撓み性、曲げ強度、疲労強度を得ることができる。
【0034】
このような各層のプリプレグを各層の巻回数に従って、裁断する。正バイアス層原型、負バイアス層原型、PAN系ストレート層原型、およびピッチ系ストレート補強層原型の裁断形状としては台形となる。またピッチ系ストレート補強層をシャフトの小口径側にのみ積層する場合、プリプレグの裁断形状は三角形となる。
【0035】
このように裁断した各層の原型をマンドレルに順次巻き付ける。この積層工程に先立って、マンドレルに離型剤、例えば、ダイキン工業(株)製フッ素系離型剤、ダイフリーGA−6010などを塗布しておき、脱芯が容易となるようにすることができる。バイアス層については、正バイアス層原型と負バイアス層原型とを半周分ずらして重ね、マンドレルに巻き付けることができる。各層の原型を巻き付けた後、シュリンクテープを巻き、プリプレグの樹脂の硬化温度に応じて加熱硬化する。例えば、プリプレグの樹脂がエポキシ樹脂の場合は、130℃に加熱し、脱泡硬化することができる。
【実施例】
【0036】
次に本発明について実施例より詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
バイアス層として、日本グラファイトファイバー(株)製ピッチ系炭素繊維XN−50(繊維の引張弾性率:520GPa、密度2.1g/cm3)にエポキシ樹脂(密度1.2g/cm3)を含浸させたシート状の一方向炭素繊維プリプレグを用いた。このXN−50プリプレグに含まれる単位面積当たりの炭素繊維質量は125g/m2、プリプレグ全質量に対するエポキシ樹脂の比率(エポキシ樹脂含有量)は30.0質量%、プリプレグ1枚の厚さは0.1mmである。
【0037】
PAN系ストレート層として、東レ(株)製PAN系炭素繊維T800H(繊維の引張弾性率:294GPa、密度1.9g/cm3)にエポキシ樹脂(密度1.2g/cm3)を含浸させたシート状の一方向炭素繊維プリプレグを用いた。このT800Hプリプレグに含まれる単位面積当たりの炭素繊維質量は110g/m2、エポキシ樹脂含有量は33.0質量%、プリプレグ1枚の厚さは0.1mmである。
【0038】
ピッチ系ストレート補強層として、日本グラファイトファイバー(株)製ピッチ系炭素繊維XN−20(繊維の引張弾性率:196GPa、密度2.0g/cm3)にエポキシ樹脂(密度1.2g/cm3)を含浸させたシート状の一方向炭素繊維プリプレグを用いた。このXN−20プリプレグに含まれる単位面積当たりの炭素繊維質量は110g/m2、プリプレグ全質量に対するエポキシ樹脂の比率(エポキシ樹脂含有量)は33.0質量%、プリプレグ1枚の厚さは0.1mmである。
【0039】
まず、図2に示すように、正バイアス層プリプレグ10a、負バイアス層プリプレグ10b、PAN系ストレート層プリプレグ20、ピッチ系ストレート補強層プリプレグ30を、図示の裁断寸法、炭素繊維の配向方向(CF配向方向)で裁断した。
【0040】
バイアス層プリプレグの場合、炭素繊維がシャフト長手方向に対して+45°(正のバイアス層)および−45°(負のバイアス層)に配向するようにプリプレグを裁断した。マンドレル4の直径が軸方向長さに比例して変化するため、プリプレグの形状は台形とした。長さ1145mm、シャフト先端側に相当する側のプリプレグ幅32mm、グリップ側に相当する側の幅90mmとなるようにプリプレグを切り出した。
【0041】
PAN系ストレート層プリプレグの場合、炭素繊維の配向方向がシャフトの長手方向と平行となるように裁断した。プリプレグ長さ1145mm、シャフト先端側に相当する側のプリプレグ幅54mm、グリップ側に相当する側の幅142mmとした。
【0042】
ピッチ系ストレート補強層プリプレグを積層する場合、シャフト径が小さい側ほど、より多くのプリプレグを巻きつける構造とするため、ピッチ系ストレート補強層プリプレグの形状は三角形とした。また曲げ強度特性を高めるため、炭素繊維の配向方向はシャフトの長手方向と平行とした。ピッチ系ストレート補強層プリプレグの寸法は、シャフト軸方向長さ300mm、シャフト先端側に相当する側のプリプレグ幅264mmとした。
【0043】
次に、マンドレルに各プリプレグを巻きつけた。マンドレルは、材質はSUS304、寸法は、長さ1145mm、シャフト先端側に相当する小口径側の直径5.0mm、グリップ側に相当する大口径側の直径13.5mmのものを用い、マンドレルには、脱芯が容易となるように、予め、離型剤を塗布した。
【0044】
初めに最内層として、バイアス層プリプレグをマンドレルに積層した。バイアス層プリプレグの積層数は、正および負のバイアス層がそれぞれ2周ずつ、合計4周分となった。なお、バイアス層プリプレグを積層する場合、正および負のバイアス層プリプレグをマンドレル円周の1/2ずらして、正負のバイアス層が90°の位相を有するように重ねた後、マンドレルに巻きつけた。
【0045】
続いてPAN系ストレート層プリプレグを積層した。PAN系ストレート層プリプレグの積層数は、バイアス層プリプレグの外側3周分となった。
【0046】
さらに、ピッチ系ストレート補強層プリプレグをシャフトの先端側、PAN系ストレート層の外側に積層した。シャフト小口径端部での積層数は10周分となった。このとき、シャフトの軸方向距離に比例して巻き付け回数が減少し、300mmの箇所では巻付け回数が0周となった。
【0047】
以上のプリプレグ積層工程が終了した後、ポリプロピレン製熱収縮テープを巻きつけることによりプリプレグを固定した。ポリプロピレンテープは厚さ30μm、幅10mmのものを用いた。次に硬化炉内で、130℃、1時間の加熱によりエポキシ樹脂を硬化した後、熱収縮テープを除去し、マンドレルを抜き取ることにより、ゴルフクラブ用シャフトを得た。ゴルフクラブ用シャフトの寸法は、長さ1145mm、先端側外径8.50mm、グリップ側外径15.01mmであり、質量は52gとなった。
【0048】
得られたゴルフクラブ用シャフトについて、特性の測定を行った。
【0049】
先端側350mmを切り出し、静的三点曲げ試験を、製品安全協会、「ゴルフクラブ用シャフトの認定基準及び基準確認方法」に準拠して行った。支点間距離を300mmとし、支点間の中央に曲げ荷重を負荷した。荷重負荷部(圧子)半径は75mm、支持部半径は12.5mmである。試験速度は5mm/分とした。表1に示すように、得られたゴルフクラブ用シャフトは最大曲げ荷重は835N(75.0kgf)であり、高い曲げ強度特性を有していた。
【0050】
また、先端側350mmを切り出し、曲げ疲労試験を実施した。支点間距離を300mmとし、支点間の中央に繰り返し曲げ荷重を負荷した。荷重負荷部(圧子)半径は75mm、支持部半径は12.5mmである。繰り返し負荷条件について、最大荷重470N、最小荷重47Nとして荷重比(最小荷重/最大荷重)0.1により、曲げ荷重を負荷した。繰り返し周波数は1Hzとした。表1に示すように、得られたゴルフクラブ用シャフトは100万回の繰り返し負荷によっても疲労破壊を起こさず、高い曲げ疲労特性を有していた。
[比較例1]
実施例1で用いたピッチ系ストレート補強層の代わりに、東レ(株)製PAN系炭素繊維T700S(繊維の引張弾性率:230GPa、密度1.8g/cm3)にエポキシ樹脂(密度1.2g/cm3)を含浸させたシート状の一方向炭素繊維プリプレグを用いた。このT700Sプリプレグに含まれる単位面積当たりの炭素繊維質量は110g/m2、プリプレグ全質量に対するエポキシ樹脂の比率(エポキシ樹脂含有量)は30.0質量%、プリプレグ1枚の厚さは0.1mmである。
【0051】
その他は実施例1と同様にしてゴルフクラブ用シャフトを作製し、得られたゴルフクラブ用シャフトについて、実施例1と同様にして特性を測定した。表1に示すように、最大曲げ荷重は523N(53.3kgf)であり、920回の繰り返し負荷によって疲労破壊を起こした。曲げ強度特性、曲げ疲労特性は実施例1で得られたゴルフクラブ用シャフトと比べて低かった。
[比較例2]
実施例1で用いたピッチ系ストレート補強層の代わりに、日本グラファイトファイバー(株)製ピッチ系炭素繊維XN−10(繊維の引張弾性率:110GPa、密度1.7g/cm3)にエポキシ樹脂(密度1.2g/cm3)を含浸させたシート状の一方向炭素繊維プリプレグを用いた。このXN−10プリプレグに含まれる単位面積当たりの炭素繊維質量は100g/m2、プリプレグ全質量に対するエポキシ樹脂の比率(エポキシ樹脂含有量)は33.0質量%、プリプレグ1枚の厚さは0.1mmである。
【0052】
その他は実施例1と同様にしてゴルフクラブ用シャフトを作製し、得られたゴルフクラブ用シャフトについて、実施例1と同様にして特性を測定した。表1に示すように、最大曲げ荷重は750N(76.4kgf)であり、60万回の繰り返し負荷によって疲労破壊を起こした。曲げ強度特性は実施例1で得られたゴルフクラブ用シャフトと同様であったが、曲げ疲労特性は低かった。
【0053】
以上の曲げ試験結果から、各ゴルフシャフトの曲げ特性を比較すると次の通りになる。
静的曲げ強度特性 実施例1≒比較例2>比較例1
曲げ疲労特性 実施例1>比較例2>比較例1
まず、静的曲げ強度特性について検証する。実施例1(XN−20:引張弾性率196GPa)および比較例2(XN−10:引張弾性率110GPa)において、ストレート補強層として用いた炭素繊維は、いずれもピッチ系低弾性率炭素繊維であるのに対し、比較例1の場合には、PAN系炭素繊維(T700S:引張弾性率230GPa)を用いた。ピッチ系低弾性率炭素繊維の特長は、PAN系炭素繊維と比べて大きい圧縮破断歪を有することである。XN−10、XN−20の圧縮破断歪は概ね1.7〜2.0%であり、T700Sの圧縮破断歪1.4%と比べて大きい、すなわちピッチ系低弾性率炭素繊維は圧縮破壊を起こしにくい特性を有する。逆にPAN系炭素繊維は応力を受けた場合に圧縮破壊を起こしやすい。
【0054】
比較例1の場合には、ストレート補強層も、PAN系ストレート層いずれも圧縮破壊を起こしやすい。その結果、曲げ荷重を受けた場合に圧縮支配による破壊挙動を示すため、曲げ強度が低くなったと考えられる。一方、実施例1および比較例2の場合には、圧縮破壊しやすいPAN系ストレート層を圧縮破壊を起こしにくいピッチ系低弾性率炭素繊維のピッチ系ストレート補強層で覆うことにより、PAN系ストレート層の圧縮破壊が抑制されると考えられる。このように、異なる機械的特性を有するPAN系およびピッチ系低弾性率炭素繊維を組み合わせたハイブリッド構造により、実施例1および比較例2は高い曲げ強度を有していたと推論することができる。
【0055】
次に、曲げ疲労特性について検証する。比較例1の曲げ疲労特性が最も低かった原因として、PAN系炭素繊維を用いたPAN系ストレート層とPAN系炭素繊維を用いたストレート補強層のいずれも圧縮支配による曲げ破壊を起こしやすく、その静的曲げ荷重が実施例1および比較例2と比べて低かったことが挙げられる。一方、実施例1と比較例2は同等の静的曲げ強度を有していたにも関わらず、実施例1のほうが高い曲げ疲労特性を有していた。この要因として、ピッチ系ストレート補強層およびPAN系ストレート層に用いた炭素繊維の引張弾性率の差が、比較例2と比べて小さいことが挙げられる。すなわち、引張弾性率の異なる炭素繊維を組み合わせる場合、弾性率の差が大きいほど、両者の界面に高いせん断応力が発生し、層間破壊の原因となる場合がある。比較例2の場合には、ピッチ系ストレート補強層(繊維の引張弾性率110GPa)の弾性率がPAN系ストレート層(294GPa)の約1/3であり、両者の弾性率の差が大きい。これに対して実施例1の場合、ピッチ系ストレート補強層(繊維の引張弾性率196GPa)とPAN系ストレート層(294GPa)の弾性率の差が比較例2と比べて小さい。すなわちピッチ系ストレート補強層とPAN系ストレート層界面に発生するせん断応力が比較例2の場合と比べて小さいため、実施例1が高い曲げ疲労特性を有していたと理解することができる。
【0056】
【表1】

【0057】
[実施例2]
バイアス層、PAN系ストレート層および最外層であるピッチ系ストレート補強層として、実施例1と同じ炭素繊維プリプレグを使用した。図3は、マンドレルおよび各層プリプレグの裁断寸法である。マンドレルとして、材質SUS304、長さ1145mm、シャフト先端側に相当する小口径側の直径6.5mm、グリップ側に相当する大口径側の直径13.0mmのものを用いた。正および負のバイアス層プリプレグとして、長さ1145mm、シャフト先端側に相当する側のプリプレグ幅43mm、グリップ側に相当する側の幅86mmとして、長手方向の全長に設けるようにプリプレグを裁断し、正および負のバイアス層の積層数をそれぞれ2層、合計4層とした。またPAN系ストレート層プリプレグとして、プリプレグ長さ1145mm、シャフト先端側に相当する側のプリプレグ幅70mm、グリップ側に相当する側の幅140mmとして、長手方向の全長に設けるように裁断し、積層数を3層とした。さらにピッチ系ストレート補強層プリプレグとして、長さ1145mm、シャフト先端側に相当する側のプリプレグ幅50mm、グリップ側に相当する側の幅100mmとして、長手方向の全長に設けるように裁断し、積層数を2層とした。各層プリプレグの積層順序、製造方法は、実施例1と同様にしてゴルフクラブ用シャフトを作製した。ゴルフクラブ用シャフトの寸法は、長さ1145mm、先端側外径8.45mm、グリップ側外径14.96mmであり、質量は63gとなった。
【0058】
得られたゴルフクラブ用シャフトについて、実施例1と同様にして、先端側350mmに加え、グリップ側350mmについても曲げ強度特性を測定した。表2に示すように、先端側最大曲げ荷重は542N(55.3kgf)であり、グリップ側最大曲げ荷重は435N(44.4kgf)で、高い曲げ強度特性を有していた。
【0059】
また、曲げ疲労試験については、繰り返し負荷条件について、先端側試験体には最大荷重370N、最小荷重37Nとして荷重比(最小荷重/最大荷重)0.1により、曲げ荷重を負荷し、グリップ側試験体には最大荷重340N、最小荷重34Nとして荷重比(最小荷重/最大荷重)0.1として曲げ荷重を負荷した他は実施例1と同様にして行った。表2に示すように、先端側試験体、グリップ側試験体いずれも、100万回の繰り返し負荷によっても疲労破壊を起こさず、高い曲げ疲労特性を有していた。
[比較例3]
実施例2で用いたピッチ系ストレート補強層の代わりに、東レ(株)製PAN系炭素繊維T700S(引張弾性率:230GPa、密度1.8g/cm3)にエポキシ樹脂(密度1.2g/cm3)を含浸させたシート状の一方向炭素繊維プリプレグ(比較例1のストレート補強層に用いたものと同様のもの)を用いた他は、実施例2と同様にしてゴルフクラブ用シャフトを作製し、得られたゴルフクラブ用シャフトについて、実施例2と同様にして特性を測定した。表2に示すように、先端側試験体とグリップ側試験体の最大曲げ荷重は、それぞれ414N(42.2kgf)、378N(38.5kgf)であり、曲げ疲労破壊は、それぞれ1050回、780回で生じた。曲げ強度特性、曲げ疲労特性は実施例2で得られたゴルフクラブ用シャフトと比べて低かった。
[比較例4]
実施例2で用いたピッチ系ストレート補強層の代わりに、日本グラファイトファイバー(株)製ピッチ系炭素繊維XN−10(繊維の引張弾性率:110GPa、密度1.7g/cm3)にエポキシ樹脂(密度1.2g/cm3)を含浸させたシート状の一方向炭素繊維プリプレグ(比較例2のストレート補強層に用いたものと同様のもの)を用いた他は、実施例2と同様にしてゴルフクラブ用シャフトを作製し、得られたゴルフクラブ用シャフトについて、実施例2と同様にして特性を測定した。表2に示すように、先端側試験体とグリップ側試験体の最大曲げ荷重は、それぞれ562N(57.3kgf)、444N(45.3kgf)であり、曲げ疲労破壊は、それぞれ86万回、56万回で生じた。曲げ強度特性は実施例2で得られたゴルフクラブ用シャフトと同等であったが、曲げ疲労特性は低かった。
【0060】
【表2】

【0061】
結果から、本発明のゴルフクラブ用シャフトは、曲げ荷重、すなわち曲げ強度が高く、曲げ疲労強度が高いことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のゴルフクラブ用シャフトの概略構成を示す図である。
【図2】本発明のゴルフクラブ用シャフトの製造方法の一例を示す図である。
【図3】本発明のゴルフクラブ用シャフトの製造方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1a 正バイアス層
1b 負バイアス層
2 PAN系ストレート層
3 ピッチ系ストレート補強層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+35°〜+55°の角度で配向させた正バイアス層、および引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して−35°〜−55°の角度で配向させた負バイアス層を有するバイアス層と、引張弾性率230〜300GPaのPAN系炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたPAN系ストレート層と、引張弾性率160〜210GPaのピッチ系炭素繊維を、小口径側先端部分に長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたピッチ系ストレート補強層とを有することを特徴とする繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフト。
【請求項2】
バイアス層、PAN系ストレート層およびピッチ系ストレート補強層を、この順番で順次積層させたことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフト。
【請求項3】
ピッチ系ストレート補強層を、小口径側先端から長手方向に対して10〜40%の範囲、または小口径側先端から長手方向の100〜450mmの範囲で設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフト。
【請求項4】
引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+35°〜+55°の角度で配向させた正バイアス層、および引張弾性率230〜900GPaの炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して−35°〜−55°の角度で配向させた負バイアス層を有するバイアス層と、引張弾性率230〜300GPaのPAN系炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたPAN系ストレート層と、引張弾性率160〜210GPaのピッチ系炭素繊維を、長手方向の全長に亘って長手方向に対して+5°〜−5°の角度で配向させたピッチ系ストレート補強層とを有することを特徴とする繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフト。
【請求項5】
バイアス層、PAN系ストレート層およびピッチ系ストレート補強層を、この順番で順次積層させたことを特徴とする請求項4に記載の繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフト。
【請求項6】
ドライバー用またはフェアウエイウッド用であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の繊維強化複合材料製ゴルフクラブ用シャフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−528(P2007−528A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186813(P2005−186813)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(595173824)日本グラファイトファイバー株式会社 (2)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】