説明

繊維構造物及びその漂白加工方法

【課題】天然繊維のCIELab法における白度が65以上になりうる酸素系漂白剤濃度で漂白を行ったとしても、人造セルロース繊維の強力低下が少ない人造セルロース繊維含有繊維構造物の酸素系漂白剤による漂白方法及びそれにより得られる繊維構造物を提供する。
【解決手段】天然繊維及び人造セルロース繊維を含有し、CIELab法における白度が65以上であり、かつ漂白処理前後の人造セルロース繊維の強力低下率が25%以下である事を特徴とする繊維構造物。蛍光染料が含有されていないことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維構造物及びその加工方法に関し、さらに詳しくは漂白された人造セルロース繊維含有繊維構造物及びその漂白加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、綿、麻、絹などの天然繊維からなる織編物等の繊維構造物は、白色製品の製造工程ではもちろんの事、染色加工の前処理工程においても染色性向上の目的で漂白を行っているが、最近は特に環境及び機器への配慮から、塩素系よりも酸素系漂白剤を用いて漂白処理を行う事が多くなっている。例えばバッチ法で綿を過酸化水素にて漂白する際の過酸化水素濃度は、0.5〜1.5%、処理温度は90〜100℃とされている(非特許文献1及び2に記載)。
一方、ビスコースレーヨン、キュプラ・アンモニウムレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース繊維(テンセル、リヨセル)などの人造セルロース繊維からなる繊維構造物は、漂白によって強力低下するため、特に要求される製品分野でのみ低濃度にて行われており、例えばバッチ法でのキュプラ・アンモニウムレーヨンの過酸化水素漂白における過酸化水素濃度は、0.08〜0.1%(0.8〜1.0g/L)、処理温度は70〜75℃とされている(非特許文献1に記載)。ちなみにキュプラ・アンモニウムレーヨンを1.5%の過酸化水素濃度で漂白を行うと、強力は30〜60%ほど低下してしまう。
【0003】
天然繊維と人造セルロース繊維は、複合させると、天然繊維の持つ嵩高さ、湿潤強度の高さといった性質と、人造セルロース繊維の持つ吸湿、吸水性の高さ、光沢、すべり性、肌への刺激の少なさ、高級感といった性質を併せ持たせる事が出来るが、これら複合生地を酸素系漂白する際、天然繊維が十分白くなる酸素系漂白剤濃度で漂白を行うと、人造セルロース繊維が極度に強力低下し、また人造セルロースが強力低下しない酸素系漂白剤濃度で漂白を行うと天然繊維が漂白不足になってしまうという問題があった。
【0004】
従来の天然繊維からなる織編物の酸素系漂白において白度を向上させる例としては、例えば過酸化水素漂白を行う際に過酸化水素安定剤を用いる例(特許文献1に記載)がある。特許文献1では、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸および/またはその塩とをラジカル重合させて得られるポリマーおよび水溶性マグネシウム化合物とを含有し、前記ポリマーとマグネシウムの重量比が1:1〜45:1である過酸化水素安定化剤を用いて高濃度のアルカリの存在下においても過酸化水素による漂白性能を維持し、繊維の白度を向上させることが記載されている。
【0005】
しかし、天然繊維と人造セルロース繊維とを複合した布帛に、過酸化水素安定剤を併用したとしても、天然繊維に十分な白度が得られる程の酸素系漂白剤濃度で漂白を行えば、結局人造セルロース繊維は強力低下を起こしてしまい、また人造セルロース繊維が強力低下しない範囲の濃度で漂白を行う限り、安定剤を用いたとしても、天然繊維に十分な白度が得られる程の白度向上効果は得られない。
【0006】
また漂白効果を向上させる例としては、例えば過酸化水素漂白を行う際に活性化剤を用いる例(特許文献2に記載)がある。特許文献2では、過酸化水素及び/又は過酸化水素添加物と、複素環内の第2アミノ基の水素原子がハロゲン原子で置換された含窒素複素脂環式化合物、又は非複素環式N−ハロ−ヒンダードアミン化合物であって、その次亜ハロゲン酸生成加水分解平衡定数が1×10−10〜5×10−6(25℃)の範囲にある少なくとも1種の活性化剤、とを含有することを特徴とする漂白剤組成物を用いて過酸化水素漂白を行う事で、低温での漂白効果を改善し、低温でもすぐれた漂白効果を発揮、かつ色柄ものに対して変退色を生じる事が極めて少ない漂白剤組成物を提供する事が記載されている。
【0007】
しかし特許文献2記載の方法では、しみ汚れなどの繊維表層部分にある物質に対する漂白には効果があるものの、例えば綿の内部に存在するリグニンなどの黄色物質は十分に漂白する事は出来ず、十分な白度が得られ難い。また、特許文献2記載の方法では、被処理物を事前に水などで湿潤させることなく漂白浴中に投入しているが、例えばキュプラ・アンモニウムレーヨンなどは乾燥状態のままいきなりアルカリ性の浴中に投入すると急激な膨潤と収縮を起こすため、結果シワの発生や風合い変化を起こしてしまうが、これを防止するための加工方法については記載されていない。
また、これらの生地の白度を上げるため、漂白後、または漂白と同時に蛍光染色を行うことがあるが、蛍光染色を行った生地は、蛍光染料の耐光堅牢度の低さからくる退色の問題がある。
【0008】
これらのように、綿、麻、絹などの高濃度の漂白剤での漂白が必要な天然繊維と人造セルロース繊維とを複合した生地を酸素系漂白剤で漂白して白色製品を製造する事は、これまで非常に困難であった。
【非特許文献1】林茂助ら著、染色加工講座4 −精練・漂白及び浸染I−、共立出版株式会社、昭和40年11月1日発行、32,62ページ
【非特許文献2】日本繊維機械学会 繊維工学刊行委員会編、繊維工学[V] 染色仕上、社団法人 日本繊維機械学会、昭和59年10月30日、18,19ページ
【特許文献1】特開2003−095622号公報
【特許文献2】特公平08−013996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、高濃度の酸素系漂白剤濃度で漂白を行ったとしても、人造セルロース繊維の強力低下が少ない人造セルロース繊維含有繊維構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、上記課題を達成するために本願で特許請求される発明は以下の通りである。
(1)天然繊維及び人造セルロース繊維を含有し、CIELab法における白度が65以上であり、かつ漂白処理前後の人造セルロース繊維の強力低下率が25%以下である事を特徴とする繊維構造物。
(2)蛍光染料が含有されていないことを特徴とする上記(1)記載の繊維構造物。
(3)天然繊維及び人造セルロース繊維を含有する繊維構造物を、酸素系漂白剤にて漂白するに際し、ラジカル捕捉剤を用いる事を特徴とする繊維構造物の漂白加工方法。
(4)漂白加工後の繊維構造物のCIELab法における白度が65以上であり、かつ漂白処理前後の人造セルロース繊維の強力低下率が25%以下である事を特徴とする上記(3)記載の繊維構造物の漂白加工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、高濃度の酸素系漂白剤による漂白後も人造セルロース繊維の強力低下の少ない、天然繊維及び人造セルロース繊維を含有する繊維構造物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳説する。本発明の繊維構造物は、綿、麻、絹などの天然繊維と、ビスコースレーヨン、キュプラ・アンモニウムレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース繊維(テンセル、リヨセル)、酢酸セルロース繊維(セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)などの人造セルロース繊維とを混用することを特徴とする。
天然繊維の特性と人造セルロース繊維の特定を併せ持たせるためには、天然繊維に対する人造セルロース繊維の混率は10〜90%であることが好ましく、より好ましくは30〜70%である。
繊維構造物の形態には特に制限はなく、例えば、織編物、不織布、繊維製品から、ワタ、糸条などのいずれの形態でも良く、組織、構造には全く左右されず、すべてに適用される。
【0013】
繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、エアジェット精紡糸等の紡績糸、マルチフィラメント原糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。特に、仮撚加工糸については、例えば特開2002−327343号公報記載のセルロース捲縮仮撚糸を用いる事も出来る。
【0014】
尚、本発明の目的を損なわない範囲内で通常50質量%以下の範囲内で、上記天然繊維及び人造セルロース繊維以外の他の合成繊維例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系等の弾性繊維等の各種合成繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)等の合成繊維の一種又は二種以上を混紡(混綿、フリース混紡、スライバー混紡、コアヤーン、サイロスパン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、混繊(沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸、沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸さらには異収縮混繊糸との混繊を含む)、交撚、諸撚糸、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚(先撚同方向仮撚や先撚異方向仮撚)、位相差仮撚、仮撚加工後に後混繊)、2フィード(同時フィードやフィード差をつけた)空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0015】
CIELab法における白度とは、測色機の設定を、光源C、鏡面光沢、光源の紫外線領域を含み、視野を2度に設定して測色を行った場合の生地の白度を言う。本発明の繊維構造物はCIELab法による白度が65以上であり、好ましくは67.5以上である。
本発明の繊維構造物における漂白処理前後の人造セルロース繊維の強力低下率とは、漂白処理前の繊維構造物から抜き出した人造セルロース繊維サンプル、および、漂白処理後の繊維構造物から抜き出した人造セルロース繊維サンプルを、温度20℃、湿度65RH%の環境下で1日調湿した後強力を測定し、漂白前後の強力の差を漂白前の生地の強力で割った値であり、式(1)で示される。
強力低下率(%)={(漂白前の強力−漂白後の強力)/漂白前の強力}×100
・・・(1)
ここで、漂白前の強力とは漂白前の繊維構造物から抜き出したサンプルの強力、漂白後の強力とは漂白後の繊維構造物から抜き出したサンプルの強力を示す。
【0016】
本発明の繊維構造物における漂白処理前後の人造セルロース繊維の強力低下率は25%以下であることが特徴である。好ましくは22.5%以下、より好ましくは20%以下である。
CIELab法による白度が65以上であり、かつ漂白処理前後の人造セルロース繊維の強力低下率が25%以下である本発明の繊維構造物を得るための好適な漂白方法について、以下に記載する。
【0017】
本発明における漂白方法は、バッチ式あるいは連続式、のいずれの方法でも行う事が出来るが、バッチ式で行う方が好ましい。また本発明に用いられる漂白機としては、ウインス、オーバーマイヤー、ジッガー等のバッチ式漂白機や、J−ボックス、L−ボックス、パーブルレンジなどの連続漂白機等による連続式漂白機を用いる事が出来るが、好ましくはバッチ式漂白機を用いる方が良い。
漂白剤には、過酸化水素、過酸化ソーダ、過ホウ酸ソーダ、過マンガン酸カリウム、過酢酸等の酸素系漂白剤が好ましく用いられるが、特に好ましくは過酸化水素である。
【0018】
本発明における漂白剤濃度および漂白温度は、一般的な天然繊維からなる繊維構造物の条件で行えばよい。酸素系漂白剤濃度は、連続法においては15〜70g/リットル(1.5〜7.0%)、バッチ法においては5〜15g/リットル(0.5〜1.5%)の範囲が好ましく、漂白温度は60℃以上100℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以上100℃以下である。漂白時間も漂白温度に合わせて適宜設定すればよく、好ましくは15〜120分、更に好ましくは20〜60分である。また浴比は用いる漂白機によって適宜設定すればよいが、バッチ式漂白機の場合、好ましくは1:15〜1:50であり、更に好ましくは1:15〜1:30である。昇温速度は漂白機の性能上問題ない範囲で設定すればよく、好ましくは2〜5℃/分である。
【0019】
本発明の繊維構造物は、酸素系漂白剤にて漂白するに際し、ラジカル捕捉剤を用いる事によって好適に得られる。本発明に用いられるラジカル捕捉剤とは、酸素系漂白時に浴中で生成されるヒドロキシラジカルを捕捉するものであればその構造は特に限定するものではないが、好ましくはヒンダート系、アミン系のラジカル捕捉剤である。ラジカル捕捉剤は、常温より100℃までの温度で用いることが出来る。浴中への添加は、漂白温度に到達するまでに行えばよいが、好ましくは漂白開始時に行うと良い。
ラジカル捕捉剤の添加量は、漂白浴比、酸素系漂白剤濃度によって発生するヒドロキシルラジカルを補足しうる量だけ用いればよい。ラジカル捕捉剤を添加する上限には特に制限は無いが、好ましくは酸素系漂白剤の添加量に対して5〜100重量%、更に好ましくは15〜80重量%である。添加量が漂白剤に対して5重量%以下となると、人造セルロース繊維の強力低下防止効果は不十分となる。また、過剰な添加は実用上好ましくない。
【0020】
また本発明において、酸素系漂白の系に添加することができる添加剤としては、苛性ソーダ、ソーダ灰、アンモニア水などに代表されるアルカリ成分、過酸化水素漂白安定剤(ケイ酸塩、りん酸塩、ポリカルボン酸類および錯塩形成物質など)、キレート剤(アミノカルボン酸素、重合リン酸系など)、キレート分散剤、浸透剤、消泡剤などがあり、ラジカル捕捉剤と共に通常のごとく任意に用いる事が出来る。
【0021】
本発明においては、漂白を行う前に事前に人造セルロース含有繊維構造物を水に湿潤させておくことがより好ましい。その際の水温については特に限定するものではないが、好ましくは100℃以下である。仮に人造セルロース繊維構造物を乾燥状態のまま漂白浴中に投入した場合、アルカリなどの影響により人造セルロース繊維が急激な膨潤あるいは収縮を起こし、結果シワの発生や風合い変化が起こってしまう可能性がある。湿潤方法は特に限定するものではなく、例えば過酸化水素を用いてバッチ式で行う際には、予め水を投入した漂白機へ繊維構造物を投入し生地を十分湿潤リラックスさせてから、添加剤、ラジカル捕捉剤、過酸化水素の順に漂白機に投入すればよい。
【0022】
本発明は、漂白のみを行う場合でも精練と漂白または漂白と蛍光染色を同時に行う場合でも有効であるが、蛍光染色を行わなくても十分な漂白効果を得ることができることを特徴とする。蛍光染色を行わず、蛍光染料が含有されていない本発明の繊維構造物は、蛍光染料の耐光堅牢度の低さからくる、退色の問題が無いという利点があり好ましい。精錬や蛍光染色を行う場合の精練剤、蛍光染料、染色助剤については特に制限は無く、ラジカル捕捉剤と共に通常のごとく任意に用いる事が出来る。
本発明により漂白後得られる生地を染色する際は、通常のごとく行う事が出来る。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。漂白後の処理物の評価は、以下のようにして行った。
1)処理物の測色
過酸化水素漂白を行った生地について、COLOR−EYE3000分光光度計(マクベス社製)を用い、光源C、鏡面光沢、光源の紫外線領域を含み、視野を2度に設定、色差式:CIELab法により、白度(WI値)を測定した。白度の数値が大きいほど生地の白度は高い。
2)引張強力測定
過酸化水素漂白を行う前後の生地について、人造セルロース繊維の糸の強力を万能引張強伸度測定機テンシロンRTM−100(オリエンテックコーポレーション製)を用いて温度20℃、湿度65RH%の環境下で測定した。
3)総合評価
上記1)〜2)の項目について下記のように総合判断した。
◎:非常に優れている。
○:優れている。
×:不適である
【0024】
[実施例1]
キュプラ・アンモニウムレーヨン糸(旭化成せんい株式会社製ベンベルグ)168dtex/90f及び綿60/−を、大隈モラート24G 30インチを用いて生地表面にキュプラ・アンモニウムレーヨン糸、裏面に綿が来るようにプレーティング天竺を編成した。ループ長3.0mm/目であった。
次に、ウインス染色機に該編地1000gを軟水15Lと共に投入し、編地を十分湿潤させた後、過酸化水素漂白安定剤(日華化学製ネオレートPH−55F)19.5g、ラジカル捕捉剤(日華化学製クロークスPO)45g、35%過酸化水素水150gの順で添加し、漂白温度95℃、漂白時間30分、昇温速度3℃/分の条件で過酸化水素漂白処理を行った。
漂白後の生地を、軟水15Lに酢酸(和光純薬製特級)15mlを添加した処理液に投入し、処理温度50℃、処理時間20分にて処理を行った。
結果白色に漂白され、かつ風合いの変化のない編地を得た。得られた編地を測色及び編地をデニットし、キュプラ・アンモニウムレーヨン糸の強力と伸度を測定した結果を表1に示したが、複合生地は十分な白さを得ている事、またキュプラ・アンモニウムレーヨン糸の強力低下率は極めて少ない事が確認できた。
【0025】
[実施例2]
過酸化水素漂白を行う際、過酸化水素漂白安定剤の代わりに炭酸ナトリウム(和光純薬製特級)40gを用いる事以外は実施例1と同様に処理を行った。
結果白色に漂白され、かつ風合いの変化のない編地を得た。得られた編地を測色及び編地をデニットし、キュプラ・アンモニウムレーヨン糸の強力と伸度を測定した結果を表1に示したが、複合生地は十分な白さを得ている事、またキュプラ・アンモニウムレーヨン糸の強力低下率は極めて少ない事が確認できた。
【0026】
[比較例1]
過酸化水素漂白を行う際、ラジカル捕捉剤を添加しない事以外は実施例1と同様に処理を行った。
結果白色に漂白された編地を得た。得られた編地を測色及び編地をデニットし、キュプラ・アンモニウムレーヨン糸の強力と伸度を測定した結果を表1に示したが、生地は十分な白さを得ている反面、キュプラ・アンモニウムレーヨン糸の強伸度は実用に満たないほど大きく低下した。
【0027】
[比較例2]
過酸化水素漂白を行う際、35%過酸化水素水を15g投入する事ラジカル捕捉剤を添加しない事以外は実施例1と同様に処理を行った。
結果黄色がかった編地を得た。得られた編地を測色及び編地をデニットし、キュプラ・アンモニウムレーヨン糸の強力と伸度を測定した結果を表1に示したが、キュプラ・アンモニウムレーヨン糸の強力低下は少ない反面、生地の白度は十分な白さを得ていなかった。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の加工方法及びそれにより得られる繊維構造物は、従来困難であった綿などに代表される天然繊維と人造セルロース繊維の複合繊維構造物を天然繊維の白度が65以上になる酸素系漂白剤濃度で漂白ができ、それにより新規の繊維構造物を製造できうるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維及び人造セルロース繊維を含有し、CIELab法における白度が65以上であり、かつ漂白処理前後の人造セルロース繊維の強力低下率が25%以下である事を特徴とする繊維構造物。
【請求項2】
蛍光染料が含有されていないことを特徴とする請求項1記載の繊維構造物。
【請求項3】
天然繊維及び人造セルロース繊維を含有する繊維構造物を、酸素系漂白剤にて漂白するに際し、ラジカル捕捉剤を用いる事を特徴とする繊維構造物の漂白加工方法。
【請求項4】
漂白加工後の繊維構造物のCIELab法における白度が65以上であり、かつ漂白処理前後の人造セルロース繊維の強力低下率が25%以下である事を特徴とする請求項3記載の繊維構造物の漂白加工方法。

【公開番号】特開2006−45722(P2006−45722A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229293(P2004−229293)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】