説明

繊維構造物

【課題】洗濯耐久性のある撥水性、撥油性および防汚性を有する繊維構造物を安定に供給する。
【解決手段】繊維表面に、トリアジン環含有樹脂皮膜または、フッ素系撥水撥油樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜を介して、親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂と非親水性のフッ素系撥水撥油樹脂からなる樹脂皮膜で被覆された繊維を用いてなる繊維構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯耐久性のある撥水性、撥油性、防汚性を有する繊維構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維構造物の防汚性を改善する要求は高く、改善する方法が種々提案されている。水性汚れもしくは油性汚れがつきにくくかつ落ちやすい性能を付与するために、加工剤の観点からは、親水性基を含有したフッ素系樹脂(特許文献1、2)が開発されている。また、繊維表面を親水性樹脂により被膜した後、親水基を有する撥水撥油性樹脂の層を形成する繊維構造物(特許文献3)、含フッ素重合体と親水、制電重合体からなる被膜を形成する繊維製品(特許文献4)が提案されている。
【0003】
しかしながら、親水基を有する撥水撥油剤の繊維表面への固着は、架橋剤や触媒などを併用しても洗濯耐久性が不十分である。親水性樹脂の被膜上に、親水基を有する撥水撥油性樹脂の層を形成するものは、親水と撥水の相反する性質を有するため樹脂の接着は弱く、十分な耐久性を得ることは困難であり、親水層の形成後に撥水撥油層を形成する二段階の処理を必要とするもので経済的な問題もふくんでいる。含フッ素重合体と親水、制電重合体からなる被膜を形成する方法は、含フッ素重合体で高い撥水性能を付与することを目的としたものである。防汚性に関する記述はないものの、汚れが拡散しにくいという性能は期待される。しかしながら含フッ素重合体に親水性成分がないので特に油性の汚れが強固に結合し、付着した汚れは洗濯などで脱落しにくいという欠点を有するものである。
【0004】
また、親水性フッ素系撥水撥油剤と非親水性のフッ素系撥水撥油剤を混合して使用する防汚布帛(特許文献5)が提案され、摩耗に対する防汚耐久性が検討されている。しかしながら、この技術では撥水性の洗濯耐久性に乏しく、スポーツ用途などの高度な撥水性を要求される分野では商品展開しにくいのが現状である。
【特許文献1】特開平3−70757号公報
【特許文献2】特開昭61−266487号公報
【特許文献3】特許第3748592号公報
【特許文献4】特開昭55−148281号公報
【特許文献5】特許3852156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、洗濯耐久性に優れた撥水性、撥油性および防汚性を有する繊維構造物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用する。
(1) 繊維表面に、トリアジン環含有樹脂皮膜または、フッ素系撥水撥油樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜を介して、親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂と非親水性のフッ素系撥水撥油樹脂からなる樹脂皮膜で被覆された繊維を用いてなる繊維構造物。
(2) 該トリアジン環含有樹脂皮膜または、フッ素系撥水撥油性樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜の膜厚が、5nm以上、100nm以下である上記(1)記載の繊維構造物。
(3) 該繊維構造物の洗濯20回後の撥水性が3級以上、かつ、撥油性が4級以上である上記(1)または(2)に記載の繊維構造物。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗濯耐久性のある撥水性、撥油性および防汚性を有する繊維構造物を安定に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、前記課題、つまり洗濯耐久性に優れた防汚機能を付与することについて鋭意検討した結果、繊維表面に、トリアジン環含有樹脂皮膜または、フッ素系撥水撥油性樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜を介して、親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂と非親水性のフッ素系撥水撥油樹脂からなる樹脂皮膜を形成することにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0009】
本発明の繊維構造物に使用される繊維素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどや、これらに第三成分を共重合してなる芳香族ポリエステル系繊維、L−乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族ポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維、木綿、絹および羊毛などの天然繊維などが挙げられる。本発明では、これらの繊維を単独または2種以上の混合物として使用することができるが、ポリエステル系繊維またはポリアミド系繊維を主成分にした繊維が好ましく使用される。
【0010】
また、ポリウレタン系弾性糸を用いたり、ポリトリメチレンテレフタレートとしては、単独糸のみならず、粘度差や重合度差、収縮性能差等を有する2種以上のポリトリメチレンテレフタレートを用いてなるバイメタル構造に代表されるコンジュゲート糸、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとのコンジュゲート糸等を使用することができる。
【0011】
本発明で用いられる繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸および混繊糸等のフィラメントヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸など各種形態の繊維であってもよい。
【0012】
本発明の繊維構造物には、前記繊維を使用してなる編物、織物または不織布などの布帛状物、あるいは紐状物等が含まれる。
【0013】
本発明のトリアジン環含有樹脂とは、トリアジン環含有化合物を重合成分としてなる樹脂を意味し、トリアジン環含有化合物とはトリアジン環を含有し、重合性官能基を少なくとも2個有する化合物であり、例えば下記式1で示されるものが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明では、上記一般式で表されるもの以外に、上記化合物のエチレン尿素共重合化合物、ジメチロール尿素共重合化合物、ジメチロールチオ尿素共重合化合物、酸コロイド化合物なども使用することができる。
【0016】
本発明のトリアジン環含有樹脂皮膜または、フッ素系撥水撥油樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜(以下、トリアジン環含有樹脂皮膜と、フッ素系撥水撥油樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜とを、トリアジン環等含有樹脂被膜という)の形成方法は次のとおりである。
【0017】
上記樹脂皮膜を形成するためのモノマーと、触媒からなる水系液を繊維上に付与した後、重合すべく熱処理を行う。
【0018】
かかる触媒としては、酢酸、蟻酸、アクリル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸、硫酸、過硫酸、塩酸、燐酸などの酸類およびこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などであり、これらの一種以上を使用することができる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好ましく使用できる。かかる触媒は、重合性単量体の使用量に対して0.1〜20重量%の割合で使用することが好ましい。
【0019】
重合のための熱処理は、好ましくは50〜180℃の温度で0.1〜30分間の条件で乾熱処理または蒸熱処理するものであるが、蒸熱処理の方が繊維表面に均一な皮膜を形成しやすく、かつ皮膜強度も高く、風合いが柔軟である。蒸熱処理は、好ましくは80〜160℃の飽和水蒸気または過熱水蒸気が用いられる。より好ましい飽和水蒸気は90〜130℃であり、過熱水蒸気は110〜160℃であり、いずれも数秒から数分の処理を行う。かかる蒸熱処理を行った後、未反応の単量体や触媒の除去、また染色堅牢度の確保のために、50〜95℃の温度で湯洗いか、ノニオン界面活性剤や炭酸ソーダ、ハイドロサルファイトなどを使用した洗浄を行うことが好ましい。トリアジン環含有樹脂の付着量は繊維重量に対して好ましくは0.2から5重量%であり、より好ましくは0.5〜3重量%である。
【0020】
本発明において、フッ素系撥水撥油樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜を形成する場合、トリアジン環含有化合物とフッ素化合物の混合溶液を用いて、前記と同様の処理を行うことにより被膜を形成することができる。該トリアジン環含有化合物とフッ素化合物の混合重量比(トリアジン環含有化合物/有機フッ素化合物)が、1/0.001〜1であることが好ましい。ただし、かかる処理の後に行うフッ素系撥水撥油樹脂を形成するための化合物による処理時に、該処理剤の濡れ性、浸透性を阻害しないよう、被膜形成後に乾燥、熱処理を行う場合は撥水性を3級以下、好ましくは2級以下になるように混合比を決定することが好ましい。トリアジン環含有樹脂被膜とともに用いるフッ素系撥水撥油樹脂において用いられるフッ素化合物は、該処理の後に行うフッ素系撥水撥油樹脂に用いられるフッ素化合物と同種の化合物であっても、また異種の化合物であっても使用することができる。
【0021】
本発明のトリアジン環等含有樹脂被膜は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い100000倍で観察した厚みが5nm以上、100nm以下であることが好ましい。上記の形成方法で作成することにより、かかる膜厚の被膜が形成されるものである。本発明は、トリアジン環等含有樹脂被膜に無機粒子を含有させることができる。無機粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。該粒子の粒子径としては、数平均粒子経で5〜400nmであることが好ましく、さらには10〜100nmのものを使用することが好ましい。無機粒子は水分散体の状態で使用するのが好ましい。無機粒子は重合性モノマーの水溶液に混合して使用することができ、重合性モノマーとの重量混合比は、モノマー1に対して好ましくは0.03〜1.0であり、より好ましくは0.05〜0.5である。該粒子の混合により、トリアジン環等含有樹脂被膜の形成性が向上し、強靱な被膜を形成できるので耐久性を更に高めることができる。トリアジン環等含有樹脂被膜形成時に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の化合物、例えば吸水剤、吸湿剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、増摩剤、有機粒子、制電剤、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、着色剤、深色剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤などを添加してもかまわない。
【0022】
本発明においては、上記トリアジン環等含有脂被膜上に親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂と非親水性フッ素系撥水撥油樹脂からなる皮膜が形成されているものである。
【0023】
本発明の親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂としては、樹脂の骨格の一部に、親水基および/または親水性セグメントを有するフッ素系撥水撥油樹脂が好ましく用いられる。親水基を有するものとしては、例えば下記式2で示されるものが挙げられ、親水性セグメントを有するものとしては、下記式3で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
本発明の非親水性フッ素系撥水撥油樹脂としては、例えば下記式4で表される1種または2種以上の化合物からなる重合体または共重合体が挙げられ、あるいはこれら以外の重合性化合物、例えばアクリル酸、メタクリル酸、スチレン、塩化ビニル系化合物、ポリエチレングリコールとの共重合体を含むものである。
【0027】
【化4】

【0028】
本発明の親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂と非親水性のフッ素系撥水撥油樹脂の混合比は、親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂固形分1に対して非親水性フッ素系撥水撥油樹脂固形分が1.5以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜0.9である。非親水性フッ素系撥水撥油樹脂固形分が0.3を下回ると撥水撥油性の耐久性が低下し、1を超えると撥水撥油性は高くなるが防汚性が低下する傾向にある。
フッ素系撥水撥油樹脂皮膜の加工方法としては、水系液または溶剤系液に、トリアジン環含有化合物の被膜を形成した繊維構造物を浸漬して、目標とする付着量になるようにマングルなどで絞り、好適には100〜150℃の温度で乾燥し、好適には160〜190℃の温度で熱処理するか、希釈液に浸漬したまま温度を60〜130℃にして繊維表面に吸着させることで製造することができるが、この方法に限定されるものではない。フッ素系撥水撥油樹脂の付着量は、繊維重量に対して好ましくは0.1〜8重量%であり、より好ましくは0.5〜4重量%である。該フッ素系撥水撥油樹脂からなる樹脂被膜は、トリアジン環含有化合物、イソシアネート系化合物のうちの少なくとも一種を含有していることが好ましい。トリアジン環含有化合物としては、前記した皮膜形成に使用するものと同種のものを使用してもよく、異種のものでも使用することができる。イソシアネート系化合物としては、イソシアネート基を亜硫酸ソーダ、メチルエチルケトンノキシムなどのオキシム系化合物などによりブロック化したイソシアネート基を2個以上持つ化合物が使用できる。更に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の化合物、例えば、吸水剤、吸湿剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、増摩剤、無機粒子、有機粒子、制電剤、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、着色剤、深色剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤などを添加することができる。
【0029】
本発明の繊維構造物は、洗濯20回後の撥水性が3級以上、撥油性が4級以上である。フッ素系撥水撥油樹脂被膜が単独で繊維に直接固着するのではなく、トリアジン環等含有樹脂被膜を介して固着することによって、洗濯耐久性が大幅に向上し、洗濯20回後も撥水性が3級以上、撥油性が4級以上という高い性能を示すものである。
【0030】
さらに、かかるトリアジン環含有化合物等含有樹脂被膜の膜厚を好ましくは5〜100nmに形成することにより、その膜厚の薄さゆえに、洗濯による樹脂の脱落が更に抑えられ、洗濯耐久性を格段に向上させるものである。このような高い撥水性、撥油性を示すことから、本発明の繊維構造物は優れた防汚性を示す。
【0031】
本発明の繊維構造物は、下記測定法により測定したときの食品防汚性が4級以上であることが好ましい。
(測定方法)
試験片をガラス板上に置き、汚染剤を試験片の中央部に滴下し、その上に厚さ1mmの5cm×5cmのガラス板を置き、該ガラス板の上に200gの荷重を乗せて1分間放置する。汚染剤の滴下量は、液体のものは0.1cc、ペースト状のものは0.1gとする。
【0032】
荷重とガラス板を取り除いて、試験片を濾紙の上に移してティッシュペーパーをかぶせ、その上からローラー掛けして汚れを拭き取り、水平状態で24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【0033】
また、本発明の繊維構造物は、下記測定法により測定したときの口紅防汚性が4級以上であることが好ましい。
(測定方法)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製の口紅RS366を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて口紅を布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【0034】
また、本発明の繊維構造物は、下記測定法により測定したときのファンデーション防汚性が4級以上であることが好ましい。
(測定方法)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製のファンデーションオークル30を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させてファンデーションを布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
また、本発明の繊維構造物は、下記測定法により測定したときの皮脂汚染の防汚性が4級以上であることが好ましい。
(測定方法)
日本家政学会誌 Vol46 No3 265〜269(1995)に記載されている皮質汚染剤を25φのゴム栓の表面に0.006gを均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて皮質汚染剤を布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【0035】
また、本発明の繊維構造物は、下記測定法により測定したときの泥防汚性が4級以上であることが好ましい。フッ素系撥水撥油剤の離形効果により洗濯での脱落性を促進させるものである。
(測定方法)
赤玉土/黒土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製する。10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【0036】
本発明の繊維構造物は、耐久性の高い撥水性、撥油性を有し、上記の洗濯汚れ除去性能を発揮するため、衣料品、寝装品、インテリア品、産業資材品等として好適に用いられる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中における各種性能は、下記の方法で評価したものである。
<撥水性>
JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(1998)に規定されるスプレー法で測定した。
<撥油性>
AATCC TM−1966に規定される方法で測定した。
<防汚性>
(防汚性a:食品汚れ)
(1)汚染剤
(a) 液体
(イ)ウスターソース(カゴメウスター醸熟)を常温で使用。
【0038】
(ロ)コーヒー(ネスカフェゴールドブレンド/ブライト/砂糖)を90℃で使用。
【0039】
(ハ)醤油(キッコーマン)を常温で使用。
【0040】
(ニ)ゴマ油(かど屋純正ゴマ油)を常温で使用。
【0041】
(b) ペースト
(ホ)ケチャップ(カゴメトマトケチャップ)を常温で使用。
(2)試験手順
(a)10cm×10cmの試験片を採取する。
【0042】
(b) 試験片を10cm×10cmのガラス板上に置き、汚染剤を試験片の中央部に滴下し、その上に厚さ1mmの5cm×5cmのガラス板を置き、該ガラス板の上に200gの荷重を乗せて1分間放置する。
【0043】
汚染剤の滴下量は、液体のものは0.1cc、ペースト状のものは0.1gとする。
【0044】
(c) 荷重とガラス板を取り除いて、試験片を濾紙の上に移してティッシュペーパーをかぶせ、その上からローラー掛けして汚れを拭き取り、水平状態で24時間放置して自然乾燥する。
【0045】
(d)汚染後の試験片を、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度をJIS染色堅ロウ度用汚染判定用グレースケールで等級判定し、「洗濯除去性」とする。
(防汚性b:口紅汚れ)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製の口紅RS366を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて口紅を布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度をJIS染色堅ロウ度用汚染判定用グレースケールで等級判定し、「洗濯除去性」とする。
(防汚性c:ファンデーション汚れ)
25φのゴム栓の表面に資生堂(株)製のファンデーションオークル30を0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させてファンデーションを布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度をJIS染色堅ロウ度用汚染判定用グレースケールで等級判定し、「洗濯除去性」とする。
(防汚性d:皮脂汚れ)
日本家政学会誌 Vol.46 No3 265〜269(1995)に記載されている下記汚染剤を調合し、該汚染剤を25φゴム栓の表面に0.006g均一に塗布し、布地に押し当ててゴム栓を45°回転させて皮脂汚れを布地に汚染させる。該汚染布を24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度をJIS染色堅ロウ度用汚染判定用グレースケールで等級判定し、「洗濯除去性」とする。
<皮脂汚れ汚染剤>
(1)汚染剤成分と分量
(A)有機質成分
(a)油性汚垢成分
オレイン酸 14.2g
トリオレイン 7.8g
オレイン酸コレステロール 6.1g
流動パラフィン 1.3g
スクアレン 1.3g
コレステロール 0.8g
(b)蛋白質
ゼラチン 3.5g
(B)無機質成分
赤黄色土 15.0g
カーボンブラック 0.25g
(2)汚染液の作り方
1000mLのビーカーに、水質硬度80mg/L以下の水850mLにゼラチンを投入し、45℃を超えない温度で溶解する。その後、カーボンブラックを投入して、ホモジナイザー(攪拌機)でカーボンブラックが十分に分散するまで攪拌した後、12〜72時間自然放置する。その後、ホモジナイザーで3分間攪拌した後赤黄色土を投入してホモジナイザーで約30分攪拌する。次いで油性汚垢成分を投入して約2分間攪拌する。
(防汚性e:泥汚れ)
赤玉土/通常の土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製する。10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度をJIS染色堅ロウ度用汚染判定用グレースケールで等級判定し、「洗濯除去性」とする。
(洗濯耐久性)
自動反転渦巻き電気洗濯機に、JIS K 337に規定される弱アルカリ性合成洗剤を0.2%の濃度になるように溶解し、浴比1:50で、40±2℃の温度で、強条件で10分洗濯し、次いで排水しオーバーフロー水洗10分×2回をする工程を1回としてこれを20回繰り返した後、風乾した。該洗濯布を前記した方法で防汚性を測定し、洗濯耐久性能を評価した。
(実施例1〜12、比較例1〜5)
ポリエチレンテレフタレートからなる84デシテックス、72フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して平織り物を製織した後、該織物を95℃の温度でオープンソーパー式連続精練機により精練し、次いで60℃の温度で湯洗、水洗し、次いで130℃の温度で乾燥した後、液流染色で130℃の温度で蛍光白色に染色、湯水洗、130℃で乾燥し、170℃の温度でピンテンターセットして、タテ糸密度/ヨコ糸密度138/90本/2.54cmの織物を得た。該染色布に次に示す繊維表面被覆処理、撥水撥油処理を施し得られた布帛の性能を評価した結果を表1に示した。
<繊維表面被覆処理>
(a)ベッカミンM−3(大日本インキ化学工業(株)製 トリアジン環含有化合物 固形分80%)
(b)F−200((株)京絹化成製 フッ素系撥水撥油剤 固形分20%)
(c)NKガードSR−108(日華化学(株)製 フッ素樹系撥水撥油剤 固形分20%)
樹脂(a)単独及び(a)に(b)または(c)を、表1に示す割合で混合し、触媒として過硫酸アンモニウム3g/Lを溶解した水系液に染色布を浸漬し、水系液の付着量が90重量%になるようにマングルで絞り、105℃の飽和水蒸気雰囲気中で5分の処理を行った。
【0046】
次いで、70℃の温度で湯洗し、水洗し、130℃の温度で乾燥し、160℃の温度でピンテンターセットした。
<撥水撥油処理>
(イ)F−470((株)京絹化成製 非親水フッ素系撥水撥油剤 固形分20%)
(ロ)F−200((株)京絹化成製 非親水フッ素系撥水撥油剤 固形分20%)
(ハ)NKガードSR−108(日華化学(株)製 親水性フッ素系撥水撥油剤 固形分20%)
(ニ)アサヒガードAG−1100(旭硝子(株)製 親水性フッ素系撥水撥油剤 固形分18%)
上記化合物を表1に示す割合で用いた水系液に、ベッカミンM−3(大日本インキ(株)製 トリアジン環含有化合物 固形分80%)を3g/L、ベッカミンアクセレレータACX(大日本インキ化学工業(株)製 触媒 固形分35%)1g/Lを溶解して処理液を調整し、染色布を浸漬して水系液の付着量が90%になるようにマングルで絞り、130℃の温度で乾燥し、170℃の温度でピンテンターセットした。
【0047】
表1、2から、本発明によるものは、耐久性に優れた撥水性、撥油性、防汚性を兼ね備えたものであることがわかる。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表面に、トリアジン環含有樹脂皮膜または、フッ素系撥水撥油樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜を介して、親水性成分を有するフッ素系撥水撥油樹脂と非親水性のフッ素系撥水撥油樹脂からなる樹脂皮膜で被覆された繊維を用いてなる繊維構造物。
【請求項2】
該トリアジン環含有樹脂皮膜または、フッ素系撥水撥油性樹脂およびトリアジン環含有樹脂皮膜の膜厚が、5nm以上、100nm以下である請求項1記載の繊維構造物。
【請求項3】
該繊維構造物の洗濯20回後の撥水性が3級以上、かつ、撥油性が4級以上である請求項1または2に記載の繊維構造物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料品。

【公開番号】特開2008−303511(P2008−303511A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153658(P2007−153658)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】