説明

繊維機械用の針

【課題】繊維機械用の針、特に、フェルト針またはフォーク針について、ニードルバーとの接触を最適化したものを提供する。
【解決手段】ワーク部17は、縦軸16に沿って延び、針先18を有する。下部シャンク部20及び上部シャンク部25がワーク部17に接続し、両シャンク部は、縦軸16に沿って互いに対して同軸に延びる。上部シャンク部25に接続して針フット30が設けられ、前記針フットは保持手段32を含む。保持手段32は、横方向31に延び、2つのレッグ38、39を有するが、前記レッグは、互いに離れるように縦軸16から延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械用の針、特にフェルト針またはフォーク針に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような針は、例えば特許文献1から知られている。そこでは、針は、ワーク部、隣接するシャンク(針幹)部、及び前記シャンク部に接続する針フット(足)を有する。この針フットは、針の縦軸から半径方向に離れる方向に、そしてそれから離れて延びる保持手段を有する。例えば、針フットの保持手段は、針の製造中にワイヤブランクを曲げることにより成形することができる。
【0003】
針の作動位置において、前記針は繊維機械、例えばフェルティング機の針ホルダー内に配置される。上部シャンク部がニードルボードのボア(穴)内に収容され、ここで針フットの保持手段は、ニードルボードの上部側上の溝内に配列される。針ホルダーのニードルバーは、ニードルボードの上部側に取り付けられ、そのようにして、針フットの保持手段上に押し付けられる。保持手段が縦軸に対して正確に長方形状に曲げられなければ、点状の接点または単に非常に小さな接触面のみを有する接点が、ニードルバーと横方向要素との間に生成される。その結果、ニードルバーが損傷する可能性がある。さらには、接触部位は針の縦軸と整合しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2,857,650号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この点に鑑み、本発明の目的は、特に繊維機械の針ホルダーのニードルバーと針との間の接触を最適化する、改良した針を提供することである。
【0006】
上述した目的は、請求項1の特徴を示す針によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の針では、ワーク部、すなわち下部または第1シャンク部だけではなく、上部または第2シャンク部が、針の移動方向に実質的に延在する縦軸に対して同軸となるように配列される。これらの3つの部位の同軸配列により、針は、すなわち、さらに高い動作速度で作動中でも十分な安定性が満たされる。第2シャンク部は、針フットに接続して配列される。針フットは2つのレッグを有する保持手段として構成される。保持手段の2つのレッグは、針の縦軸から始まり、2つの反対方向に互いに離れるように延びる。そのようにして、針フットの保持手段は、横方向において針の縦軸に対して半径方向に直線に延び、針の縦軸に対して横に配列される。したがって、この針フットの保持手段は、縦軸から離れるように延在する。保持手段の長さは、好ましくは、針の縦軸の両側で針フットの保持手段の中心縦軸に沿って延びる。針フットの保持手段の縦軸は横方向を規定する。針フットの保持手段または2つのレッグの縦軸及び針の縦軸は、互いに直角に配列されることが好ましい。特定の適用状況においては、一方ではレッグの縦軸または保持手段の縦軸と、また他方では針の縦軸との間の角度は、直角から少し、すなわち1度乃至2度ほど外れていてもよい。針フットの保持手段の幅は、針フットの保持手段の中心縦軸の横方向で(法線の方向で)測定される。この法線が幅の方向を規定する。
【0008】
針の縦軸に沿った、幅方向に延在する仮想平面に対して対称に配列された保持手段により、針の縦軸と整列した、繊維機械のニードルバーの力の印加を達成することができる。さらに、あまりにも小さすぎる当接部位によって針が損傷することを防止するために、針、特にその針フットとニードルバーとの間に、具体的には、保持手段全体に沿って延在する、線状または平面状の接点を設けることが可能である。その上、保持手段は、引き抜き(pulling)、押し出し(pushing)、または押圧による再成形による、簡単な非切断方式を用いて製造することができるため、曲げることの難しい材料を針の製造に使用することが可能となる。
【0009】
針の有利な実施形態は、従属請求項に基づく。
【0010】
針フットの保持手段及び針の上部シャンク部は、針ホルダー内に針を支持するように配置された針のT字状保持領域を形成する。好ましくは、保持手段は、またいわゆる幅方向において保持手段の縦方向に対して横断する方向に、針の縦方向に沿って広がる仮想の対称平面に対して対称である。本実施形態では、針は特に繊維機械の針ホルダー内に、場所を節約できる方式で配列することができる。したがって、針の縦軸への力の印加が確実となる。
【0011】
有利な実施形態では、針フットの保持手段は、上部シャンク部から離れて向いあうその側面で両レッグ上に支持部位を有するが、前記支持部位は、特に横方向に、保持手段の長さ全体に沿って設けられている。そうすることにより、支持部位は、針の縦軸の方向に向かった表面法線を有した支持面として構成することができる。この結果、針フットの保持手段と針ホルダーのニードルバーとの間に、特に、大面積の穏やかな接点を形成することが可能となる。
【0012】
幅方向における針フットの保持手段の幅の平均値、または少なくとも上部シャンク部への移行部位における保持手段の幅が、上部シャンク部の直径よりも小さければ、針が針ホルダーのニードルボードに配列される際に、針の密度を増大させることができる。針の動作位置において、針フットの保持手段が配置されている、ニードルボードの上部側に設けられた溝は、保持手段に合ったより小さな幅を有することができるため、より多くの溝をニードルボード上に設けられる。
【0013】
好ましい例示的な実施形態において、針フットの保持手段の断面は、円形の輪郭から外れた断面形状を有する。例えば、これは、楕円形、長円形、多角形、具体的には、長方形または六角形または三角形であってもよい。例えば、保持手段の隅角領域または端部領域は、半径を有するか或いは弓状であってもよく、隅角のない、或いは端部のない側方向表面が保持手段上に得られる。所望の断面形状を得るために、保持手段は、非切断製造技術によって針ブランクから形成されていてもよいが、例えば、引き抜き、押し出し、または圧力によって再成形することができる。簡単な方式で、曲げることの難しい材料から保持手段を形成することも可能となる。
【0014】
針の他の好ましい実施形態では、上部シャンク部の断面は、円形の輪郭から外れた断面形状を有していてもよい。その際、上部シャンク部の断面の面積が下部シャンク部の断面の面積に実質的に対応すれば、有利である。そして、下部シャンク部の直径を有するブランクから上部シャンク部を簡単に作製することができる。同時に、下部シャンク部の直径に対して上部シャンク部の直径を拡大させることができる。
【0015】
本発明の実施形態の更なる詳細は、本件の記載、図面または特許請求の範囲によって明らかになる。本件の記載は、本発明の実施形態の実質的な詳細及び別の状況に限定される。図面は、追加の詳細を示しているが、補足的なものとして見なされなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】部分的に断面で示されている、針ホルダーの内に配置された針の例示的な実施形態の概略側面図である。
【図2】針の針フットの保持手段及び上部シャンク部の正面図である。
【図3】針の縦軸に沿って矢印IIIに従った、図1及び図2の針の平面図である。
【図4a】針フットの保持手段の断面形状の図である。
【図4b】針フットの保持手段の断面形状の図である。
【図4c】針フットの保持手段の断面形状の図である。
【図4d】針フットの保持手段の断面形状の図である。
【図4e】針フットの保持手段の断面形状の図である。
【図4f】針フットの保持手段の断面形状の図である。
【図5a】上部シャフトシャンクの断面形状の図である。
【図5b】上部シャフトシャンクの断面形状の図である。
【図5c】上部シャフトシャンクの断面形状の図である。
【図5d】上部シャフトシャンクの断面形状の図である。
【図5e】上部シャフトシャンクの断面形状の図である。
【図5f】上部シャフトシャンクの断面形状の図である。
【図6】ニードルボードの上部側から見た、針ホルダーのニードルボード部の一部分の平面図である。
【図7】図6のニードルボードの、線X−Xに沿った部分的断面図である。
【図8a】ニードルボードの上部側に設けられた溝の溝断面形状の図である。
【図8b】ニードルボードの上部側に設けられた溝の溝断面形状の図である。
【図8c】ニードルボードの上部側に設けられた溝の溝断面形状の図である。
【図8d】ニードルボードの上部側に設けられた溝の溝断面形状の図である。
【図8e】ニードルボードの上部側に設けられた溝の溝断面形状の図である。
【図8f】ニードルボードの上部側に設けられた溝の溝断面形状の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、針15の概路図である。
【0018】
[01]針15は、縦軸18に沿って延在するワーク部17を有し、ここで、針先18は、前記ワーク部に設けられている。針先18が、針15の第1の自由端部19を示す。
【0019】
[02]ワーク部17に隣接して、縦軸16に対して同軸に、またワーク部17に対して同軸に延びるのは下部シャンク部20である。下部シャンク部20は、ワーク部17の直径Cよりも大きい直径Dを持つ円状断面を有する。針15のシャンク部20またはワーク部17の直径は、円筒の側方向円筒面の可能な最小の直径に対応し、前記側方向円筒面は、縦軸16に対して同軸に延在されて、それぞれのシャンク部を完全に囲む。こうすることにより、各部位のいずれの部分も、側方向円筒面を通して延在しない。ワーク部17及び下部シャンク部20の異なる直径によって、これらの2つの部位17、20は、円錐状の第1の移行領域(transition region)21によって互いに連結され、前記領域は、ワーク部17から下部シャンク部20までに連続して広くなる。
【0020】
[21]第1の移行領域の外部面は、側方向円筒面の例に従って、切頭円錐の外部面を示す。その変形例から考えると、移行領域21は、また端部がないように形成されていてもよい。さらに、この領域で針の曲げ剛性を増加させるために、第1の移行領域21の上に補強リブを設けることが可能である。
【0021】
[03]上部シャンク部25は、円状断面を有する下部シャンク部20に接続し、前記上部シャンク部の断面は、最も簡単な場合、図1乃至図5に概略的に示されているように、潜在的に同じく円状であり得る。
【0022】
[04]図1の例示的な実施形態によれば、第1の段差部26が下部シャンク部20と上部シャンク部25との間に形成され、前記段差部は、上部シャンク部25の直径Eが下部シャンク部20の直径Dよりも大きいことから、環状面の形状を有する。
【0023】
[05]針フット30は、上部シャンク部25に当接しており、前記針フットは、実質的に直線に延在する保持手段32を有する。この保持手段32は、針15の縦軸16に対して横切る横方向31に沿って延在する。
【0024】
保持手段32は、互いに離れるように、縦軸16から延びる2つのレッグ38、39を有する。保持手段32は単一片で構成されて、2つのレッグ38、39が縫い目や継ぎ目が無く、互いにスムーズに当接し、移行部を有していない。横方向31において、保持手段32は、一方のレッグ39上の第1の自由端部35から、他方のレッグ38上の第2の自由端部35'に延びる。2つの自由端部35、35'の間の保持手段32、及び針フット30の長さLは、上部シャンク部25の直径よりも大きく、したがって上部シャンク部25に対面する保持手段32の底面側で、2つのレッグ38、39のそれぞれの上に当接部位82を形成する。
【0025】
縦軸16に横方向であり、かつ針フット30の縦方向に対して横方向である幅方向34(図2)において、保持手段32は、保持手段32の断面形状の関数として、多様な地点でその大きさが異なってもよい、幅B'を有する。図1乃至図3の例示的な実施形態では、保持手段32の断面は長方形であるため、幅は、針15の縦軸16に沿って各々の地点で一定である。別の断面形状について考えると、幅B'は、保持手段32の多様な地点でその大きさが異なってもいてもよい。そうすることにより、保持手段32の幅B'の平均値は、上部シャンク部25の直径Eよりも小さい。好ましくは、保持手段32の幅B'は、針フット30の長さの各地点に沿って、上部シャンク部25の直径Eよりもさらに小さい。
【0026】
保持手段32の断面は、横方向31にその全体延在部に沿って変わることなく保持してもよい。しかし、断面形状の所望の形態によっては、保持手段32が上部シャンク部25に接続されているその中心領域86(図3)における断面を、中心領域86に隣接する2つのレッグ端部87、88とは異なる方式で構成する必要性があるかもしれない。当接部位82は、レッグの端部87、88に形成される。レッグ端部87、88の長さは、当接部位82の長さと同等であって、レッグ38、39の長さよりは小さい方が好ましい。
【0027】
当接部位82に対向するその上部側において、保持手段32は、支持部位90を有し、前記支持部位は、両レッグ38、39の上に設けられて、保持手段32の全体に沿って横方向31に延在することが好ましい。本実施形態の好ましい変形例からみると、支持部位90は、支持面90'として平面で構成されて、レッグ38、39の全長にわたって延びる。したがって、支持面90'は、針フット30及び/または保持手段32の全長を含んでいる。
【0028】
保持手段32は、仮想対称平面に対して対称となるように構成され、前記平面は、縦軸16に沿って幅方向34に大きくなる。この対称平面から始まって、保持手段32の2つのレッグ38、39は、互いに反対に離れるように延びる。
【0029】
図4a乃至図4fは、針フット30の保持手段32の可能な多様な断面形状を示している。レッグ端部38、39または全体保持手段32の断面の形態は、特に、支持部位90がより線形的であるか、或いは、より平面的な形態の支持面90'を有するという点で異なる。これは、レッグ端部38、39に設けられた当接部位82にも同様に適用されて、前記当接部位は、同じく、潜在的に線形的であるか、または、その代わりに平面的な当接面82'の形態を有し得る。図4aでは、楕円形の断面形状が提供され、ここで、楕円輪郭の副頂点の領域においてフラットな領域が設けられて、一方では、平面状の支持面90'が、その他方では、平面状の当接面82'が、それぞれ形成される。楕円形状輪郭の主軸は、幅方向34に延びる。図4fに提案された断面は、図4aと同一の実施形態に対応するが、これは、90度回転して、楕円輪郭の主軸が縦軸16の方向に延びるようになる。したがって、楕円断面形状の2つの主頂点の領域において、一方では支持部位90が設けられ、その他方では当接部位82が設けられている。
【0030】
[15]幅の平均値、特に、保持手段32の幅は、幅方向34におけるいずれの地点でも、上部シャンク部25の直径Eより小さい。保持手段32の断面は、楕円形(レーストラック形状を有する)または長円形であってもよい。図4bにかかる例示的な実施形態では、保持手段32の断面は多角形であり、例えば正八角形を示す。このような多角形の隅角は、さらにラウンド加工することもでき、例えば、図4cの長方形を参照して示されているような半径を有することができる。図4d及び図4eにかかる2つの例示的な実施形態では、保持手段32の断面は、三角形の形状を有する。図4cと同様に、図4dによる三角形の断面形状の隅角領域は、半径を有する。図4eによる断面の隅角領域での半径は、図4dに示された実施形態の変形例の場合よりも、明らかに小さい。図4dとは異なり、図4eによる三角形断面での三角形の辺は、外向きに突出する。
【0031】
第1の段差部26及びワーク部17に対向する下部シャンク部20の反対側には、上部シャンク部25が接続している。上部シャンク部25だけではなく、下部シャンク部20及びワーク部17は、縦軸16に対して同軸に配列される。図1乃至図3にかかる実施形態の変形例では、上部シャンク部25の断面は円形状である。その可能な変形例は、任意の他の断面形状を提供することができるが、ここで上部シャンク部25の幾つかの断面形状が、図5a乃至図5fに例として示されている。断面の輪郭は、多角形、例えば、正方形、楕円形(レーストラックの形状)、または長円形、十字形または三角形であってもよい。上部シャンク部25は、らせんのようにねじられた形状に構成することができる。上部シャンク部25の外部面67の上に端部のない表面移行部を得るために、半径または膨出部(bulge)が、端部または隅角の領域に設けられても良い。
【0032】
上部シャンク部25の円周にわたって規則的に分布した当接部位60は、針15の縦軸16の周りで共通の側方向円筒面61の上に配置されている。設けられた当接部位60の個数は、上部シャンク部25の断面形状の関数である。当接部位60が側方向円筒面61上のより大きな表面領域にわたって配列されれば、2つの対向した当接部位60だけで十分であるだろう。好ましくは、3つ、4つ、またはさらにより多くの当接部位60が、上部シャンク部25の外部面67上で規則的に円周上に分布される。
【0033】
当接部位60の外部において、上部シャンク部25は、当接部位60の共通の側方向円筒面61を超えて縦軸16に対して半径方向に突出する、いずれの領域も有していない。したがって、当接部位60以外の、上部シャンク部25の外部面67は、側方向円筒面61の内部にある。シャンク部25がらせん(図示省略)形状にねじれていると、当接部位60は、側方向円筒面61上でこのらせんに追従する。らせん形状にねじられた上部シャンク部25は、縦軸16の周りに上部シャンク部25をねじらせることにより、任意の断面輪郭を有して形成することができる。
【0034】
[09]上部シャンク部25は、例えば、多角形、具体的には図5aに示されているように、長方形または正方形の断面を有していてもよい。多角形のそれぞれの隅角は、針の縦軸16から同等の距離を有し、縦軸16に沿った縦方向での上部シャンク部25に沿って延在する縦方向の端部は、縦方向の当接部位60を形成するようになる。
【0035】
[10]図5bは、上部シャンク部25の楕円形(レーストラック形状)、または長円形の断面形状を示している。当接部位60は、主頂点の領域に設けられる。副頂点の領域において、楕円または長円がフラットになって、上部シャンク部25は、副頂点の領域の2つの対向する側面上に平らな外部面部位67を有するようになり、前記外部面部位は、2つの当接部位60の間の凹部65を示す。
【0036】
[11a]或いは、上部シャンク部25の断面は、さらに、例えば図5c及び図5dから明らかであるように、星形または十字形の輪郭を有していてもよい。星形の断面輪郭は、多数個の星状突起(star point)68を有し、ここで当接部位60は、その半径方向の最外側端部に形成される。凹部65は、2つの隣接した星状突起68の間に設けられる。図5cにかかる例示的な実施形態では、上部シャンク部25の星形の断面輪郭は、円周上に一様に分布した星状突起68を含み、前記星状突起は、縦軸16の周りの中心領域から外向きに延びて、そうすることで、その半径方向の最外側端部に向かって先端に行くほど細くなる。この半径方向の最外側端部において、星状突起68は丸みをつけられ、好ましくはいずれの鋭い端部も当接部位60に形成されない。凹部65の外部面部位67は、V字状に、内向きに凹状に湾曲される。星状突起68の間の移行部は端部がない。図示の実施形態を変形することにより、4つより多くの星状突起68を付与することも可能である。
【0037】
[11b]図5dの十字形状断面では、当接部位60は、半径方向において外向きに凸状に湾曲し、ここで曲率は、特に側方向円筒面61と同等の半径を有する。当接部位60の間の凹部65は、上部シャンク部25の凹状に湾曲された外部面部位67によって形成され、前記外部面部位は、上部シャンク部25の断面から見るとき、弓形状を示す。
【0038】
[12]図5e及び図5fの2つの断面形状は、上部シャンク部25のための三角形の断面形状を提供する。図5eの例示的な実施形態において、上部シャンク部25の3つの外部面部位67は、外向きに凸状に湾曲される。三角形の頂点は、また半径を有して設けられ、上部シャンク部25の全体の外部面が、鋭い端部及び隅角を有することなく構成される。この頂点は、当接部位60を示し、共通の側方向円筒面61上に配置される。当接部位60の間の湾曲した外部面部位67は、凹部65を示す。
【0039】
[13]図5fに示された三角形の断面形状では、凹部65は、上部シャンク部25の3つの平らな外部面部位67によって形成され、前記外部面部位は、規則的に円周上に分布される。円周方向から見れば、当接部位60は、これらの平らな外部面の間に設けられ、前記当接面は、例えば半径を有して、外向きに湾曲し。当接部位60の半径は、側方向円筒面61の半径程大きな最大の大きさを有し、図6fにかかる好ましい例示的な実施形態においては、共通の側方向円筒面61の半径よりも小さい。
【0040】
[14]上述した上部シャンク部25の断面形状の例示的な実施形態は、図5a乃至図5fに示された好ましい実施形態から逸脱してもよい。例えば、多角形状の断面の隅角及び端部は、湾曲されるか或いは半径を有して、隅角及び端部のない上部シャンク部25の外部面が達成されるようにする。全ての例示的な実施形態において、上部シャンク部25の断面形状の対称は、上部シャンク部25の重心が縦軸16上に位置するように選択される。
【0041】
針15のシャンク部20、25、またはワーク部17の直径は、針の縦軸16に対して同軸に配列された円筒の側方向円筒面61の可能な最小の直径として定義され、ここで側方向円筒面61は、各部位を完全に囲んでいる。そうすることにより、囲まれた部位17、20、25のいずれの部分も、側方向円筒面61を通して延在しない。
【0042】
上部シャンク部25の直径Eは、側方向円筒面61の直径に対応する。一例によると、上部シャンク部25の直径Eは、下部シャンク部20の直径Dよりも大きい。したがって、環形の面26が2つのシャンク部20、25の間の移行領域に形成されて、前記環形の面は、針15の縦軸16に対して同軸に延在する。上部及び下部シャンク部20、25の断面積は、同一の大きさを有するのが好ましいが、或いは、わずかに相異していてもよい。
【0043】
針15は、繊維機械、例えば、フェルティング機に用いるためのものである。これを達成するために、針15は、繊維機械の針ホルダー45内に挿入され、前記機械は、図1に部分断面図で概略的に示されている。
【0044】
[06]以下の説明において、例えば、ニードルボードは、加工されるべき平面状の繊維材料の上に配列されると仮定する。基本的に、このようなニードルボードは、さらにまたはそれに代えて、同じく平面状の繊維材料の下に配列されることも可能である。
【0045】
[07]針ホルダー45は、ニードルボード46及びニードルバー47を有する。溝48は、ニードルボード46に設けられ、前記溝は、上部側44に向かって開放されており、一方向において互いから離れて、互いに平行に延びる。溝48は、溝の開放側に隣接した、対向して配列された溝側面55を有するが、前記側面は、溝の幅方向92で溝48の境界を規定し、前記幅方向は、針がニードルボード46に挿入された状態における針15の幅方向34に対応する。2つの溝側面55は、溝基部70を通じて互いに連結される。
【0046】
[08]2つの隣接した溝48は、ストリップ49の形で一定の間隔で分離されている。複数個のボア51は、上部側44からニードルボード46を通して対向する下部側50に延びる。上部側44の領域において、ボア51は、溝48内で終わる。ボアの中心軸52は、溝幅方向92にそれぞれの溝48を通して延びる(大体に中心を取る)。いくつかのボア51が、それぞれの溝48に沿って設けられる。
【0047】
[24]この場合、針ホルダー45は、具体的に図示しないフェルティング機に設けられる。その場合、ニードルボード46は、実質的に水平方式で配列される。針15は、それぞれのボア51を通じて挿入され、上部シャンク部25は、それの当接部位60がそれぞれのボア51の内部面に当接し、前記ボアは、当接部位60のための対向当接面56を備える。この結果として、針15がニードルボード46内で、その縦軸16に対して半径方向に支持されるように配列される。針のワーク部17は、常に縦軸16に対して対称に構成される必要はないため、縦軸16の周りの所望の回転位置に収まり、その位置は、針ホルダー45内の針によって占有されるところとなる。この回転位置を事前に指定し、さらに、フェルティング作業中にこれを維持するために、針15の針フット30の保持手段32が溝48内に配列されて、前記溝は、上部側44の領域において、それぞれの針15が配置されるボア51を通して延びる。そのようにして、溝48の溝側面55は、それ自体で保持手段32のための回転当接部として作用し、針15が、その縦軸16の周りに回転できなくなるか、或いはただ保持手段32と溝側面55との間のあそびに応じてのみ、その縦軸16の周りに回転できる。好ましくは、保持手段32は、幅方向34において針15の作動位置から見るとき、溝48内にあそびがないように配列される。
【0048】
保持手段32のレッグ38、39の2つのレッグ端部87、88の当接部位82または当接面82'は、溝基部70に対して当接する。2つのレッグ端部87、88は、ボア51を超えて溝48の反対側に突出る。
【0049】
[25]フェルティング工程の間に、作業方向は、針15の縦軸16に平行に整列される。ニードルバー46は、ニードルボード46の上部側44に配置され、図1及び図2に概略的に示されているように、針15が、作業方向にて縦軸16に対して平行に固定される。フェルティング工程の間に、針ホルダー45は、それに固定された針15と共に作業方向で上下に移動して、具体的に図示しない支持部上に配置された繊維材料を加工する。
【0050】
ニードルボード46の針15は、それぞれのボア51内に配列されていてもよい。作業方向に対応する縦軸16の方向に針15を固定するために、ニードルバー47は、保持手段32の支持面90'または支持部位90と当接する。
【0051】
ニードルボード46の溝48の断面は、図7に示されている長方形状とは異なる形状を有することが可能であり、溝断面を、保持手段32またはレッグ87、88の断面に適応させることができる。これ位に、溝48は、保持手段32、またはそのレッグ端部87、88の断面形状にも対応する、任意の断面形状を有することもできる。この際、溝48内の保持手段32の支持部は、ただ針15のねじれを防止し、ニードルボード46内への挿入の際に針15の所望の回転位置を前もって決めるために配置されるので、溝48内に延在するレッグ端部87、88の断面に対する、溝48の断面の正確な合致は要求されない。
【0052】
図8a乃至図8fは、溝48の可能性のある異なった断面形状を示す。
【0053】
[16]溝48の全ての断面形状を考えると、溝側面55と溝基部70との間の移行領域における溝の幅Bは、ボア51の直径よりも小さい。さらに、溝側面55または溝基部70上の眺望部位(viewed site)の関数として変更することができる、溝幅Bの平均値は、ボア51の直径よりも小さい。そうすることにより、図8a、図8b、図8d及び図8fの溝直径の場合の溝幅Bは、いずれの地点でもボア51の直径より小さくすることができる。溝幅Bの平均値は、ボア51の直径の略半分であってもよい。
【0054】
[17]図8aにおいて、溝の断面は、チャンネル状の溝基部70を有したU字状である。その変形例である形状が図8fに示されており、ここで溝基部70は、2つの表面部位70a、70bからなる。2つの表面部位70a、70bのそれぞれは、2つの溝側面55のうちの1つと接続されて、例えば、略60゜の傾斜角で中心軸52に向かって傾斜する。溝の中心で、2つの表面部位70a、70bは、端部を形成しながら互いに対して当接し、二重の傾斜角を成す。
【0055】
[18]図8b及び図8cは、台形の断面を有する別の溝の形状を示しており、ここで溝基部70は、幅方向34に中心軸52に対して横に延在する。2つの溝側面55は、ボア51の中心軸52に対して傾斜する。図8cによると、ニードルボード46の上部側44における溝48の幅Bは、ボア51の直径に対応する。ニードルボード46の上部側44から延在する2つの溝側面55が、ボア51の中心軸52の方向に傾斜するように配列されることにより、溝48の平均幅はボア51の直径よりも小さい。
【0056】
[19]図8d及び図8eは、三角形の溝断面を示しており、ここで溝基部70は、2つの溝側面55の移行領域で端部によって形成され、前記端部は、溝48の延在方向に延びる。溝側面55は、互いに対してV字状に配列されて、鋭角を形成する。
【0057】
[20]針15は、例えばワイヤピンである針ブランクから、非常に簡単な方式で作製することができる。針ブランクの直径は、下部シャンク部20の直径Dに対応して、針ブランクが、この部位で変わることなく保持されるようにする。上部シャンク部25及び/または針フット30は、例えば、引き抜き、押し出し、または圧力による再成形によって、特に、圧出による等の非切断製造技術によって形成される。針15は、全体が、特に、さらにそれ自体見たとき、それぞれのそのワーク部17、その下部及び上部シャンク部20、25だけではなく、そのフット30が、継ぎ目のない一体の一様な材料から連続的に製造される。これは、上部シャンク部25の領域及び針フット30の領域で針ブランクを再成形し、所望の断面形状を付与する、簡単なかつ費用効果の高い可能性を意味する。この再成形プロセスの間に、上部シャンク部25の断面の面積は、好ましくは不変に保持されて、下部シャンク部20の面積に対応するようになる。
【0058】
本発明は、繊維機械用の針15、特にフェルト針またはフォーク針に関する。ワーク部17は縦軸16に沿って延び、針先18を有する。下部シャンク部20及び上部シャンク部25はワーク部17に接続し、両シャンク部は縦軸16に沿って互いに対して同軸に延びる。上部シャンク部25に接続して、針フット30が設けられ、前記針フットは保持手段32を有する。保持手段32は横方向31に延び、2つのレッグ38、39を有し、前記レッグは互いに離れるように縦軸16から延びる。
【符号の説明】
【0059】
15 針
16 縦軸
17 ワーク部
18 針先
19 15の第1の自由端部
20 下部シャンク部
21 第1の移行領域
25 上部シャンク部
26 第1の段差部、環状面
30 針フット(足)
31 横方向
32 保持手段
34 幅方向
35 39での自由端部
35' 38での自由端部
38 32のレッグ
39 32のレッグ
41 第2の移行領域
44 46の上部側
45 針ホルダー
46 ニードルボード
47 ニードルバー
48 溝
49 ストリップ
50 46の下部側
51 ボア(穴)
52 51の中心軸
55 溝側面
56 対向当接面
60 当接部位
61 側方向円筒面
65 凹部
67 外部面部位
68 星状突起
70 溝基部
70a 70の表面部位
70B 70の表面部位
82 当接部位
82' 当接面
86 32の中心領域
87 38のレッグ端部
88 39のレッグ端部
90、90' 支持部位
92 溝幅方向
B' 32の幅
B 溝幅
C 17の直径
D 20の直径
E 25の直径
L 32の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針先(18)を有し、縦軸(16)に沿って延在するワーク部(17)と、
前記ワーク部(17)に接続する下部シャンク部(20)と、前記下部シャンク部(20)には上部シャンク部(25)が接続して、前記2つのシャンク部(20、25)は、前記縦軸(16)に沿って互いに対して同軸に延び、
前記上部シャンク部(25)に接続し、保持手段(32)を有する針フット(30)とからなり、
前記保持手段(32)は、前記縦軸(16)を横切って横方向(31)に延在し、前記縦軸(16)から始まって、互いに離隔して延在する2つのレッグ(38、39)を有する
特に、フェルト針またはフォーク針のような繊維機械用の針。
【請求項2】
前記保持手段(32)は、仮想対称平面に対して対称であり、前記対称平面は、幅方向(34)において横方向(31)に横切って前記縦軸(16)に沿って延在する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項3】
前記保持手段(32)は、前記上部シャンク部(25)から離れるように対向するその側面で両レッグ(38、39)の上に支持部位(90、90')を有し、前記支持部位は、全体の前記保持手段(32)に沿って、特に横方向(31)に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項4】
前記下部シャンク部(20)及び/または前記上部シャンク部(25)及び/または前記針フット(30)の保持手段(32)が、それぞれ、その全体にわたって一定の断面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項5】
前記下部シャンク部(20)及び/または前記上部シャンク部(25)は、円形状断面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項6】
幅方向(34)で測定された前記針フット(30)の保持手段(32)の幅は、前記上部シャンク部(25)の直径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項7】
前記保持手段(32)の断面は、円形の輪郭から外れた断面形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項8】
前記保持手段(32)の断面は、楕円形状または長円形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項9】
前記保持手段(32)の断面は、多角形、とりわけ、長方形状または六角形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項10】
前記保持手段(32)の断面は、三角形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項11】
前記保持手段(32)の断面形状の隅角及び/または端部は、湾曲されている
ことを特徴とする請求項9または10に記載の繊維機械用の針。
【請求項12】
前記上部シャンク部(25)の断面は、円形の輪郭から外れた断面形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項13】
前記上部シャンク部(25)の断面の面積は、前記下部シャンク部(20)の断面の面積に実質的に対応する
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項14】
前記上部シャンク部(25)の断面は、特に、前記上部シャンク部の円周にわたって規則的に配置した当接部位(60)を有し、前記当接部位は、前記縦軸(16)の周りで共通の側方向円筒面(61)上に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項15】
1以上の前記当接部位(60)は、前記側方向円筒面(61)上にらせん形状に延在し、または、多数の前記当接部位(60)は、前記側方向円筒面(61)上にらせん形状に配列される
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械用の針。
【請求項16】
いくつかの平行に延在する溝(48)が上部側(44)に設けられているニードルボード(46)を有し、それぞれの当該溝(48)に沿って当該上部側(44)から対向する下部側(50)に当該ニードルボード(46)を通して完全に延びる、幾つかのボア(51)が離れて設けられ、当該ボア(51)は、当該針(15)が当該ニードルボード(46)に挿入されている状態で当該針の上部シャンク部(25)を収容し、保持手段(32)の2つのレッグ(38、39)は、当該ボア(51)の中心軸(52)から、反対方向に離れるように、当該ボア(51)を通して延在する溝(48)内に延びる
前記請求項のうちのいずれか1項に記載された針(15)用の繊維機械の針ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図8f】
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【公開番号】特開2010−209506(P2010−209506A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−27012(P2010−27012)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)
【Fターム(参考)】