説明

繊維消臭処理剤ならびにこれにより処理された繊維製品

【課題】 本発明は繊維製品を処理することで消臭ないし防臭効果を発揮する繊維製品処理剤ならびにこれにより処理された繊維製品に関する。
消臭したい現場ではその場の空気を浄化するとともに、その消臭効果を持続させたい。そのためには、居住空間に各種存在する繊維製品に直接処理をして消臭材として機能させる。
【解決手段】インド南部からニューギニアにかけて分布するフタバガキ科の樹木で、Vatica属あるいはCotylelobium属に属するレサックの樹材を粉砕し、レサック抽出物の水分散液からなる繊維消臭処理剤を得た。抽出物にはバチカノールCが含まれている。
前記本発明の繊維消臭処理剤を現場で直接噴霧または含浸して、表面に処理剤を付着させた繊維製品は、においの付着した繊維表面を覆うことで消臭し、さらに乾燥した繊維消臭処理剤が繊維表面に微細に分散して気中のにおい成分を吸着する、そして、常在菌にたいして抗菌性を有することから、尿、汗その他体液が菌により分解して新たなにおいを発生することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維製品を処理することで消臭ないし防臭効果を発揮する繊維製品処理剤ならびにこれにより処理された繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、居住空間においては、壁紙、ソファー等の家具や寝具、照明器具の笠、カーテンや絨毯等の装飾品に紙や布等の繊維製品が使用されている。また、日本の家屋では、障子や襖などの建具にも紙が多く使用されている。これら、紙、布等の繊維製品は、高級感、質感、色や柄の豊富さ等の意匠性とともに、保温性、吸湿性、防音性等の素材特有の性質からも、快適な居住空間を実現するために欠かせないものである。近年、国民生活意識の多様化により生活臭に対する関心はますます高まってきており、衣料分野、生活関連分野、介護分野、衛生材料分野、インテリア分野および産業資材分野において、消臭機能や制菌機能を持つ製品が多数上市されている。
これらの製品の中で、消臭ならびに制菌機能を付与する方法としては、吸水性ポリマーに金属錯体を担持させる方法(特許文献1参照)、植物などの抽出物に含まれる消臭性を示す成分を繊維などに含浸、乾燥させることにより臭気を抑制する方法(特許文献2参照)、光触媒機能をもつ金属酸化物を利用し、臭気成分を光分解する方法(特許文献3参照)、およびポリカルボン酸化合物を含有した消臭剤を用いる方法(特許文献4参照)などがあげられる。
【0003】
また、日常生活においても、衣服や身の回りの繊維製品に、タバコや飲食飲酒後の移り香、あるいは、汗などの体臭や生活臭気や複合臭気等が付着して残留し、その臭気が不快に感じられることがよくある。しかしながら、芳香剤を利用した方法では、その芳香剤と臭気との混合された臭気が新たな別の不快臭気となったり、十分なマスキング効果を出すのに多量に芳香剤を使用したために芳香が強くなりすぎてかえって不快に感じられたり、また、臭気の原因成分の分解等に作用していないので、芳香剤が揮散した後に再度、臭気が感じられる場合も多く、根本的な解決とはならず、また、効果としては不充分なものであった。
また、洗濯時生乾きのにおいを防止するため抗菌剤で処理する例もある(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平5−277143号公報
【特許文献2】特開平9−271484号公報
【特許文献3】特開平10−259521号公報
【特許文献4】特開2003−88549号公報
【特許文献5】特開2001−192969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消臭したい現場ではその場の空気を浄化するとともに、その消臭効果を持続させたい。そのためには、居住空間に各種存在する繊維製品に処理をして消臭材として機能させることに想到し本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らはフタバガキ科のレサックの樹材からの抽出物が大きな消臭効果のあることを見出した。本発明は上記に鑑みなされたもので、請求項1の発明はフタバガキ科レサック樹材の、水または水可溶性の溶剤による抽出物を含有することを特徴とする繊維消臭処理剤である。
請求項2の発明は、下記化1に示す構造を有するスチルベン四量体化合物を含有することを特徴とする繊維消臭処理剤である。
【0006】
【化1】

【0007】
但し、Rは水素、メチル基又はアセチル基であり、C1とC2、又はD1とD2は入れ替わってもよい。
【0008】
請求項3の発明は、フタバガキ科レサック樹材の、水または水可溶性の溶剤による抽出物を付着せしめたことを特徴とする消臭処理繊維製品である。
【0009】
請求項4の発明は、上記化1に示す構造を有するスチルベン四量体化合物を付着せしめたことを特徴とする消臭処理繊維製品である。
【0010】
請求項5の発明は、前記請求項1または請求項2に記載した繊維消臭処理剤を、居住空間でそこに存在する繊維製品に直接噴霧または含浸して、繊維表面に処理剤を付着させることを特徴とする繊維製品消臭処理方法である。
請求項6の発明は、フタバガキ科レサック樹材の、水または水可溶性の溶剤による抽出物を含有することを特徴とする靴または靴下の消臭処理剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[繊維消臭処理剤]
本発明の繊維消臭処理剤は、フタバガキ科レサック樹材の、水または水可溶性の溶剤による抽出物を含有することを特徴とする。レサックはインド南部からニューギニアにかけて分布するフタバガキ科の樹木で、Vatica属あるいはCotylelobium属に属する。レサックは樹脂分が多く、常法により溶剤抽出できる。溶剤は、アセトン、エーテル、アルコール、石油ベンジン等通常用いられる溶剤を使用することも出来るが、水可溶性の溶剤を用いることが後で水に分散しようとするとき分散しやすく好ましい。さらには、水単独でも、樹材を微粉砕し煮沸することで、有効成分たるスチルベン四量体化合物を抽出することができる。水可溶性の溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン等を用いることが出来る。人に対する安全性からエタノールを好ましく使うことができる。
フタバガキ科レサック樹材は南洋材として知られ、Cotylelobium属ではC.flavum Pierre、C.malayanum V.SL.、C.melanoxylon Pierre、C.burckii Heim、C.lanceolatum Craiv、C.beccarii Pierre、C.harmandii Heimなどがあげられる。Vatica属ではV.blancona Elm、V.elliptica Foxw、V.mangachapoi Blco、V.mindanensis Foxw、V.obtusifolia ELM、V.pachyphylla Merr、V.papuana Dyer、V.whitfordii Foxw、V.albiramis V. Sl.、V.bancana Scheff、V.dulitensis Sym、V.maingayi Dyer、V.mangachapoi Bluco、V.marilima V. Sl.、V.micrantha V. Sl.、V.oblongifolia Hook. f.、V.sarawakensis Heim、V.scortechinii Brandis、V. umbonata Burck、V. bantamensis Burck、V. borneensis Burck、V. coriacea Ashton、V. cupularis V. Sl.、V. granulata V. Sl.、V. havilandii Brandis、V. odorata Sym、V. pedcellata Brandis、V. parvifolia Ashton、V. ramiflora V. Sl.、V. salawakensis V. Sl.、V. staphiana V. Sl.、V. venulosa Bl.、V. verrucosa Burck、V. vinosa Ashton、V.bella V. Sl.、V. cinerea King、V. cuspidate Sym.、flavida Foxw.、V. heteroptera Sym.、V. lobata Foxw.、V. lowii King、V. nitens King、V. pallida Dyer、V. patula Sym.、V. perakensis King、V. ridleyana Brandis、V. wallichii Dyer、V. celebica V. Sl.、V. flavovirens V. Sl.、V. rassak Bl.、V. subcordata Haillier、V. astrotricha、V. philastreana Pierre、Vatica sp. 、V. tonkinensis A. Chev.、Vatica chinensis Linn. 、V. obscure Trim.、V. lanceifolia Bl.、Vatica rassak、Vatica paucifloraなどがあげられる。Upuna属ではUpuna borneesis Sym.があげられる。Vatica属のレサック類が好ましく用いられる。
【0012】
レサック抽出物を作るには、前記フタバガキ科の樹木で、Vatica属あるいはCotylelobium属に属するレサックの樹材を粉砕した木粉粒を溶剤に浸漬し、木粉粒を濾別することで抽出物が得られる。あるいは、木粉粒を溶剤でソックスレイ抽出または水蒸気蒸留により抽出してもよい。
レサック類樹材の抽出物には、特徴的なバチカノール類が含有されている。バチカノール類はポリフェノールであるスチルベンオリゴマーであり、代表的なバチカノールCは以下の化1に示す構造式のRがすべて水素である化合物である。このバチカノールCは、レスベラトロールを基本単位とするスチルベン四量体化合物であり、分子式C56H42O12、分子量906、淡黄色不定晶(粉末状)の天然物由来の有機化合物である。このバチカノールの有する多量のフェノール性OH基がにおい成分と結びつき、においを不揮発化して消臭効果を有すると考えられる。
【0013】
【化1】

【0014】
化1に示す構造を有するスチルベン四量体化合物では、Rは水素、メチル基又はアセチル基であり、C1とC2、又はD1とD2は入れ替わってもよい。 レサックを含むフタバガキ科の天然の植物では前記バチカノールCだけを単独に含有しているのではなく、スチルベン四量体の置換基Rが水素、メチル基又はアセチル基である化合物の混合物であり、置換基あるいは構造異性体により、バチカノールC,バチカノールB,バチカノールF,イソバチカノールB,イソバチカノールC等と呼ばれ,またスチルベンのオリゴマーであることから多量体が存在し、三量体ではバチカノールA,バチカノールE,バチカノールG,六量体ではバチカノールD,七量体ではバチカノールJ,が存在する。表1はフタバガキ科の樹材と含有している化合物を示す。
【0015】
【表1】

【0016】
記号 ○:それぞれの化合物を含有している樹材
・ :vaticanolを含有している樹材
樹材略号 HU;Hopea utilis、 HP;Hopea parviflora、 DG;Dipterocarpus grandiflorus、 VI;Vateria indica、 SH;Sorea hemsleyana
表1よりVatica属の樹材であるVatica rassakは特徴的にvaticanol化合物を含有しており、また、Vatica属以外のDipterocarpus grandiflorus、 Vateria indica、 Sorea hemsleyanaもvaticanolの一部を含有していることがわかる。レサック樹材からの抽出物はこれらバチカノールの混合物であるが、その特徴づけるものとして化1に示す構造を有するスチルベン四量体化合物で、Rは水素、メチル基又はアセチル基のものを選び、さらには置換基Rが水素であるバチカノールCを含有する抽出物を本願を特徴付けるものとするところである。
【0017】
繊維消臭処理剤としては、水媒体に分散することが環境、安全性の面からも好ましい。レサックの抽出を水可溶性の溶剤、例えばエタノールで行い、得られた抽出液から溶剤を留去して析出物を得る。この析出物の定量を再び少量のエタノールに溶解し、多量の水を加えることで水分散したレサック抽出物の繊維消臭処理剤を作ることが出来る。
レサック抽出物の濃度は用途に応じて適宜選択することができる。水分散する場合1wt%までは容易に分散できるが10wt%をこえるとアルコールを加えないと分散は困難になる。スプレイして消臭する場合、0.025w%でも充分な効果を有するが、0.001w%以下にまで薄めると効果は低い。
また、バチカノールCはOH基が多く水に可溶のため、樹材を微粉砕すれば水で煮沸することでも抽出することができる。微粉樹材を予めアルコールに漬けてから煮沸することも有効である。
【0018】
レサック抽出物は黄褐色であるが、抽出の過程で、あるいは原料の樹材や粉砕した木粉粒が時間の経過とともに赤褐色に濃色化する。繊維消臭処理剤として濃色化は望ましくない。この着色を減ずるために、レサック抽出液に活性炭を加え濾別することで消臭効果を有しながら減色した抽出物を得ることが出来た。活性炭の他にも、活性白土、アルミナ、シリカゲル等を用いることが出来る。
[繊維消臭処理方法]
本発明の繊維消臭処理剤の主体はポリフェノールのオリゴマーであり、スプレイした気中でにおい成分に作用するだけでなく、繊維製品表面に残留してにおい成分を除去することができる。さらに本品は天然物由来の抽出品であるだけでなく、常在菌にたいして抗菌性を有する。
【0019】
このことから、本品の繊維処理方法のひとつは、個々の繊維製品をひとの居住しない別のところで個別に処理するのではなく、人の居住する空間でそこに存在する繊維製品に繊維消臭処理剤を直接噴霧または含浸して、繊維表面に処理剤を付着させることによる。ひとの居住する空間とは、住宅の居間、寝室、台所、トイレ、納戸、あるいは病院や介護施設、飲食店の部屋、さらには車両、船舶、航空機の客室等があり、そこにはカーペットやラグ、マット等の敷物、カーテン、壁紙、障子、畳、あるいはソファー、椅子、ベッド、布団、敷布、さらにはタオル、シャツ、衣服等各種の繊維製品が存在している。これらの現地にある繊維製品に本発明の繊維消臭処理剤を現場で直接噴霧または含浸して、繊維表面に処理剤を付着させることにより、噴霧したミストが空中に漂う間ににおい成分と反応して行う消臭、ミストがにおいの付着した繊維表面を覆い濡れた状態で作用する消臭、さらに乾燥した繊維消臭処理剤が繊維表面に分散して気中のにおい成分を吸着する消臭、そして、常在菌にたいして抗菌性を有することから、尿、汗その他体液が菌により分解して新たなにおいを発生することを防ぐことができる。人の居住する空間全体に噴霧することは、一部の繊維製品だけを消臭化するよりも全体の消臭面積を大きくでき消臭効果をより大きくすることが出来る。
【0020】
もうひとつの繊維処理方法は繊維製品の洗濯時、すすぎ時に本発明の繊維消臭処理剤を添加する、あるいは脱水した繊維製品に本発明の繊維消臭処理剤を噴霧することである。本発明の繊維消臭処理剤の抗菌作用により、常在菌の繁殖による生乾きのにおいを防止し、乾燥後は消臭繊維製品として機能することができる。
[消臭処理繊維製品]
前記本発明の繊維消臭処理剤を現場で直接噴霧または含浸して、表面に処理剤を付着させた繊維製品は、においの付着した繊維表面を覆うことで消臭し、さらに乾燥した繊維消臭処理剤が繊維表面に微細に分散して気中のにおい成分を吸着する、そして、常在菌にたいして抗菌性を有することから、尿、汗その他体液が菌により分解して新たなにおいを発生することを防ぐことができる。消臭面積を大きくする点で、カーペットのように起毛した繊維製品をより好ましく用いることができる。
【実施例1】
【0021】
レサック樹材を粉砕し、その木粉粒340gに95%エタノール850mlを加えて一夜放置した後濾過し、濾液からエタノールを減圧留去した。この析出物0.2gを5mlのエタノールで溶解し、400mlの水を加えて撹拌し、レサック抽出物の水分散液を得た。
【実施例2】
【0022】
Vatica rassakの樹材を粉砕し、その木粉粒500gに70%エタノール5Lを加えて、50〜55℃で2時間還流したのち濾過し、濾液からエタノールを減圧留去した。蒸発残分中バルカノールCを約10%含有していた。この析出物0.2gを5mlのエタノールで溶解し、400mlの水を加えて撹拌し、レサック抽出物の0.05%水分散液を得た。
【実施例3】
【0023】
実施例2のVatica rassakにかえてVateria indicaの樹材を用い、実施例2と同様の操作で抽出物の0.05%水分散液を得た。
【比較例】
【0024】
実施例2のVatica rassakにかえてバチカノールを含まないHopea utilisの樹材を用い、実施例2と同様の操作で抽出物の0.05%水分散液を得た。
【実施例4】
【0025】
1mm以下に粉砕したレサック樹材40gに水400gを加えて2時間煮沸した。ろ紙で樹材を除去しレサックの水抽出液を得た。
【実施例5】
【0026】
Vatica rassakの樹材を粉砕し、その木粉粒150gに90%エタノール1.5Lを加えて、70〜80℃で2時間還流したのち濾過した。分取した濾液からエタノールを加熱留去し、蒸発残分の重量を測った結果、濾液中の蒸発残分は2.5%あった。この濾液30mLに1.5Lの水を加えて撹拌し、レサック抽出物の0.05%水分散液を得た。
[評価方法I]
実施例2,3,4および比較例の樹材抽出物水分散液を、10cm×10cmの不織布に目付量約2g/100平方cm程度噴霧し風乾して消臭処理繊維試料を得た。この試料を5Lのテドラーバッグにいれ、3Lの所定の初期濃度のにおい成分ガスを送入する。2時間後の濃度を検知管で測定した。
におい成分として、イソ吉草酸、アンモニアを試験した。

【0027】
実施例2,3,4,5の繊維試料は消臭機能を有する。
[評価方法II]
寝たきり老人を介護している部屋で、実施例2の樹材抽出物水分散液をカーペット、寝具、カーテンに噴霧した。老人臭、排泄臭が消失するとともに、3日間消臭が維持できた。
[評価方法III]
トイレのマット、壁紙に実施例2の樹材抽出物水分散液を噴霧した。アンモニア臭が消えるとともに、尿が飛び散っても、アンモニア臭が出ることはなかった。
[評価方法IV]
繊維の消臭効果は以下のように試験した。タバコ臭または焼き肉臭を付着させた綿布(5×10cm)を半分に切断し、その一方に希釈した消臭スプレイ剤をトリガースプレーで20cmの距離から3回スプレー(付着量約0.06g)し、1000mlの三角フラスコに入れ、直後及び60分後に5人のパネラーによって以下の評価基準で評価を行った。
(評価基準)
臭気強度0:タバコ臭又は焼き肉臭を感じない。
臭気強度1:タバコ臭又は焼き肉臭と断定できない。
臭気強度2:タバコ臭又は焼き肉臭とわかるが弱い。
臭気強度3:タバコ臭又は焼き肉臭と明らかにわかる。
臭気強度4:タバコ臭又は焼き肉臭を強く感じる。
臭気強度5:タバコ臭又は焼き肉臭を強烈に感じる
靴下の消臭効果は以下のように試験した。左右の靴下の一方の内部に希釈した消臭スプレイ剤をトリガースプレーで10cmの距離から3回スプレー(付着量約0.06g)する。直後及び1日後に5人のパネラーによって両者を比較し以下の評価基準で評価を行った。
(評価基準)
臭気強度0:靴下の臭を感じない。
臭気強度1:靴下の臭と断定できない。
臭気強度2:靴下の臭とわかるが弱い。
臭気強度3:靴下の臭と明らかにわかる。
臭気強度4:靴下の臭を強く感じる。
臭気強度5:靴下の臭を強烈に感じる
靴の消臭効果は以下のように試験した。革靴およびブーツの左右の一方の内部皮革繊維面に希釈した消臭スプレイ剤をトリガースプレーで3回スプレー(付着量約0.06g)する。直後及び1日後に5人のパネラーによって両者を比較し以下の評価基準で評価を行った。
(評価基準)
臭気強度0:靴のむれた臭を感じない。
臭気強度1:靴のむれた臭と断定できない。
臭気強度2:靴のむれた臭とわかるが弱い。
臭気強度3:靴のむれた臭と明らかにわかる。
臭気強度4:靴のむれた臭を強く感じる。
臭気強度5:靴のむれた臭を強烈に感じる
【0028】
【表2】

【0029】
表2の結果から明らかなように本発明はタバコ臭と焼き肉臭、靴下、靴いずれのにおいに対しても、高い消臭効果を示した。
[評価方法V]
実施例2記載のvatica属のレサックから抽出したバチカノールC含有レサック抽出物の0.05%水分散液を使って以下の評価を行った。
清浄空気を満たした3Lのポリエチレンテレフタレート製の臭い袋に、3μlの臭い成分を注入して気化させ臭気含有空気を作った。レサック抽出物の0.05%水分散液または参照として清浄水を入れたスプレイ容器を封入した1Lの臭い袋に前記臭気含有空気を送入して臭気評価の準備とした。臭い袋の中でレサック抽出物液または水を3回または6回スプレイし、その直後および30分後に3人の被験者が袋の臭いを嗅ぎ消臭の程度を判断した。臭いがなければ2;効果あり。臭いが残れば0;効果なし。臭いが薄まれば1;やや効果あり。として表にあらわす。臭い成分として体臭に対応してイソ吉草酸、生ごみに対応してトリメチルアミン、トイレ臭にたいしてアンモニアを対象として選んだ。前記臭気含有空気中でスプレイするに加えて、臭い成分を直接ろ紙に加えて浸漬し、そのろ紙にスプレイする方法でも評価した。さらに加えて、臭気含有空気を満たした袋の中にレサック抽出物の0.05%水分散液を浸漬した紙を装入して袋内に臭気減少を評価した。結果を次の表に示す。同様に実施例5のvatica属ではないフタバガキ科でバチカノールを含有するVateria indicaの樹材からの抽出物も評価した。
イソ吉草酸の評価結果

【0030】
注;被験者3名のそれぞれの評価結果を併記。
2;効果あり。1;やや効果あり。 0;効果なし。
トリメチルアミンの評価結果

【0031】
注;被験者3名のそれぞれの評価結果を併記。
2;効果あり。1;やや効果あり。 0;効果なし。
アンモニアの評価結果

【0032】
注;被験者3名のそれぞれの評価結果を併記。
2;効果あり。1;やや効果あり。 0;効果なし。
比較例および水だけをスプレイした場合に比べ、実施例2の試料を用いたときは明らかに消臭の効果を有している。同様に、バチカノールを含有している実施例3の試料でも消臭の効果がみられる。また、水で抽出した実施例4の抽出液でもイソ吉草酸、トリメチルアミン、アンモニアに対し同様に消臭効果があった。
[評価方法VI]
[ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験]
実施例5記載のvatica属のレサックから抽出したバチカノールC含有レサック抽出物の0.05%水分散液を検体として、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals 404(2002)に準拠し、ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験を行った。
検体0.5mLを約2cm×3cmに裁断したガーゼパッチに均一に塗布し、ウサギ3匹の無傷及び有傷皮膚に4時間閉鎖適用した。その結果、除去後1時間に2例で非常に軽度な紅斑が見られたが、48時間までに消失した。
Federal Register(1972)に準拠して求めた一次刺激性インデックス(P.I.I.)は0.3となり、ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験において、検体は「無刺激性」の範疇に入るものと評価された。
[評価方法VII]
[ウサギを用いた眼刺激性試験]
実施例5記載のvatica属のレサックから抽出したバチカノールC含有レサック抽出物の0.05%水分散液を検体として、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals 405(2002)に準拠し、ウサギを用いた眼刺激性試験を行った。ウサギ3匹の片眼に検体を0.1mL点眼した結果、点眼後1,24,48及び72時間の各観察時間において刺激反応は見られなかった。
Draze法に従って算出した観察期間中の平均合計評点の最高は0であった。
以上の結果から、ウサギを用いた眼刺激性試験において、検体は「無刺激性」の範疇にあるものと評価された。
[評価方法VIII]
[雌マウスを用いた急性経口毒性試験]
実施例5記載のvatica属のレサックから抽出したバチカノールC含有レサック抽出物の0.05%水分散液を検体として、雌マウスを用いた急性経口毒性試験(限度試験)を行った。
試験群には20mL/kgの用量の検体原液を、対象群には注射用水を雌マウスに単回経口投与し、14日間観察を行った。その結果、観察期間中に異常及び死亡例は認められなかった。このことから、検体のマウスにおける単回経口投与によるLD50値は、雌では20mL/kg以上であるものとかんがえられた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の繊維消臭処理剤は天然抽出物由来で無臭であり、動物試験でも安全であるので、ひとの居住する空間の現場で直接噴霧、含浸処理ができ、居住空間の繊維製品全体に担持することで消臭面積を大きく有効にすることができる。得られた消臭処理繊維製品は繊維表面に消臭剤が担持されていてにおい成分を吸着するとともに、常在菌にたいする抗菌性も付与するので菌による分解でにおいを発生することもなく、快適な生活環境を供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタバガキ科レサック樹材の、水または水可溶性の溶剤による抽出物を含有することを特徴とする繊維消臭処理剤。
【請求項2】
下記化1に示す構造を有するスチルベン四量体化合物を含有することを特徴とする繊維消臭処理剤。
【化1】


但し、Rは水素、メチル基又はアセチル基であり、C1とC2、又はD1とD2は入れ替わってもよい。
【請求項3】
フタバガキ科レサック樹材の、水または水可溶性の溶剤による抽出物を付着せしめたことを特徴とする消臭処理繊維製品。
【請求項4】
上記化1に示す構造を有するスチルベン四量体化合物を付着せしめたことを特徴とする消臭処理繊維製品。
【請求項5】
前記請求項1または請求項2に記載した繊維消臭処理剤を、居住空間でそこに存在する繊維製品に直接噴霧または含浸して、繊維表面に処理剤を付着させることを特徴とする繊維製品消臭処理方法。
【請求項6】
フタバガキ科レサック樹材の、水または水可溶性の溶剤による抽出物を含有することを特徴とする靴または靴下の消臭処理剤。