説明

繊維移動を使用する角接続部

角接続部(10)、及び、第1及び第2の方向の織繊維を有する第1の織部分と、第1の方向の繊維(28)と第2の方向の犠牲繊維(26)とを有する、第1の織部分に隣接している第2の織部分と、第2の方向の犠牲繊維と選択的に係合している第1の方向の繊維を有する第3の半織部分とを含む平らな織布(20)を提供する工程を有する角接続部を形成するための方法。その方法は、少なくとも1つの方向に平らな織布を折り、第2の方向の犠牲繊維を除去する工程をさらに有しており、除去の間に、第2の方向の犠牲繊維は、第2の織部分において第3の半織部分の第1の方向の繊維によって取って代わられ、全ての側部を結合する連続した繊維を有する角接続部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全ての側部を結合する連続した繊維を有する、繊維が強化された角接続部のための予備成型品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造構成部材を製造するために強化複合材料を使用することは現在広く行われており、特に、軽量性、強度、丈夫さ、熱抵抗性、自己支持性及び形成される際の適用性といった望ましい特質が探求されている。そのような構成部材は、例えば、航空産業、航空宇宙産業、衛星産業、及びバッテリー産業において使用され、また競技用ボートや自動車といったレクリエーションや同様の数多くの分野においても利用されている。三次元布は、一般的に、他の繊維に対して垂直の方向に、すなわちX、Y、Z方向に各々伸張している繊維からなる。
【0003】
そのような繊維から形成される一般的な構成部材は、マトリックス材料の中に取り込まれた強化材料からなる。強化された構成部材は、ガラス、カーボン、アラミド(例えば、ケブラー(登録商標))、ポリエチレン、及び/又は望ましい物理的、熱的、化学的及び/又は他の性質を示す他の材料といった材料から作られ、それらの材料においては破壊応力に対して強いということが最も重要である。最終的に完成した構成部材の構成要素となるそのような強化材料を使用することによって、例えば非常に高い強度といった強化材料の望ましい特質が完成した構成部材に付与される。一般的に、構成部材用の強化材料は、強化予備成型品のための望ましい形態又は形状へと織られる、編まれる又は配置される。通常、これらの構成部材用の強化材料が選択された理由であるその特質を最適に活用することに特に注意が払われる。一般的に、そのような強化材料は、望ましい最終的な構造部材を形成するために、又は最終的な構成部材の最終製造のためのストックを製造するために、マトリックス材料と結合される。
【0004】
望ましい強化予備成型品が作られた後、マトリックス材料が導入され該予備成型品と結合することによって、強化予備成型品は前記マトリックス材料によって諸構成要素間の中間領域を充填するように包み込まれる。マトリックス材料は広く様々な種類の材料、例えばエポキシ、ポリエステル、ビニール・エステル、セラミック、カーボン及び/又は他の材料のいずれかでよく、それらの材料も望ましい物理的、熱的、化学的及び/又は他の特質を示す。マトリックスとして使用するために選択される材料は、強化予備成型品に使用されるものと同じものでもそうでなくてもよく、完全な物理的、熱的、化学的又は他の特質を有していてもそうでなくても構わない。しかし、一般的に、その材料は予備成形品のものと同じではない、又は予備成型品と同程度の物理的、熱的、化学的又は他の特質を有している。なぜなら、そもそも複数の構成要素を使用することの目的は、完成した製品に1つの構成材料を使うだけでは獲得することができない特質の組み合わせを与えることだからである。そうやって結合された後、それから強化予備成型品とマトリックス材料は加熱調整又は他の既知の方法と同様なやり方で硬化及び安定化され、望ましい構成部材を製造するための他の操作にかけられる。注意すべき重要なことは、そのように硬化された後、マトリックス材料の固化体は強化材料(例えば強化予備成型品)に非常に強力に接着するということである。結果として、完成した構成部材にかかるストレスは、諸繊維間を接着するように働くそのマトリックス材料によって、効果的に伝播され、そして該ストレスは強化予備成型品の構成材料によって支えられる。
【0005】
しばしば、単純な寸法形態、例えばプレート状、シート状、長方形は正方形状といった形態以外の構成で構成部材を製造することが望ましい。例えば、複合三次元構成部材には、複合三次元予備成型品が必要である。複合構成部材を獲得するための1つの方法として、基礎寸法形状を望ましいより複雑な形態へと結合するやり方がある。そのようなやり方の一般的な結合の1つは、垂直及び横断補強材を形成するために、複数の構成部材を互いに角度を付けて(一般的には直角)結合することであり、それによって上記の望ましい形態になる。結合された構成部材をそのような角度のついた配列にする通常の目的は、1つ以上の端部壁又は例えば“T”字型交差部を含む強化構造を形成するために望ましい形状を作り出すことである。構成部材を結合させるもう1つ別の目的は、圧力や張力といった外力にさらされるときに変形や不具合に対する抵抗力を生むように、強化予備成型品及び構成構造の最終的な結合を強くすることである。したがって、構成構造間、すなわち補強材と基礎部又はパネル部分との間のそれぞれの接合点を可能な限り強くすることが重要である。強化予備成形構成それ自体に望ましい非常に高い強度を与えるならば、もしそれが適切に結合されてなければ接合点の弱さが構造の“くさり(chain)”における“弱い輪(weak link)”になってしまう。
【0006】
これまで、強化複合構造を製造するために、構成部材又は強化予備成型品を結合させるための様々な方法が使用されてきた。パネル要素と角度の付いた補強材を互いに分離して形成及び硬化するやり方が提案されており、ここで該補強材は、1つのパネル接触表面を有している、又は2つに分岐した共平面のパネル接触表面を形成するために1つの端部において分岐している。それから、2つの構成部材は、熱硬化によって又は接着材料によって、補強材要素のパネル接触表面を他の構成部材の接触表面に接着することによって結合される。しかし、張力が硬化されたパネル又は構成部材構造の外面に加えられているとき、許容できないほどの低い値の負荷はしばしば、接触面において補強材要素をパネルから分離する“剥がし”力となってしまう。
【0007】
そのような構成部材の接触面に金属ボルト又はリベットが使用されることがあるが、そのような付加物は、構成部材構造の一体性を少なくとも部分的に破壊及び弱くし、重量を増加させ、コストを増やし、そのような要素と周囲の材料との間で熱膨張係数に違いを生むので受け入れがたい。
【0008】
上記問題を解決するための他のやり方として、強化するための繊維を接合点の領域に導入するために、構成部材の一方を他方の構成部材へと縫いつけ、その縫い糸を前記目的のために利用するといった、結合領域に高い強度を有する繊維を導入するコンセプトに基づいた方法がある。そのようなやり方の1つが、特許文献1及びその方法の分割された片割れである特許文献2に示されている。これらの文献は、接着結合繊維パイルから作られた第1及び第2の構成部材パネルの間に作られている接合部を開示している。第1のパネルは、先行技術のやり方で2つの分岐した共平面パネル接触表面を形成するために1つの端部において分岐しており、そして該第1のパネルは両方のパネルを通して硬化されていない柔軟な構成部材を縫うことによって第2のパネルに結合されている。それから、パネルと糸は“共硬化される”、すなわち同時に硬化される。しかし、このプロセスは、予備成型品のなかに第3の糸又は繊維を導入することを必要とするといった、複数の工程によって構成されなければならない予備成型品を必要とする。
【0009】
交差している構成の他の例が、特許文献3に記載されている。ここにおいて、該特許文献は本明細書に組み込まれる。この文献は、三次元強化予備成型品を形成するために、強化予備成型品に予備成形パネルを結合させるための手段を開示している。2つの個々の予備成型品は、糸状のもの又は糸の形態にある強化繊維の手段によって接合部で互いに結合されている。2つの予備成型品が1つに結合される又は縫い合わされると、その予備成型品にマトリックス材料が導入される。しかし、このプロセスは多くの利点を有す一方、それらの予備成型品が個々に織られ又は作られ、続いて別個の工程で一つに縫い合わされる必要がある。さらに、付加的に導入された糸又は繊維が予備成型品と接触してしまう。
【0010】
接合部の強さを改善するための他の例が、特許文献4に記載されている。しかし、この方法は、別個に作られた異なる要素が第3の糸又は繊維によって縫い合わされて1つに結合されるやり方のため、前述した方法と同様である。
【0011】
先行技術は強化構成部材の構造的一体性に基づく改善を求めており、ある程度は成功しているのであるが、その上のさらなる改善をめざし、別個のパネル及び硬い要素の接合又は機械的連結をすることとは異なるアプローチを通して問題を解決するやり方が存在する。その1つのアプローチは、特殊な機械で織三次元構造を作り出すやり方である。しかし、簡単な構造を作り出すために必要な織機は非常に高価でなかなか手に入らない。
【0012】
他のアプローチとしては、二次元構造を織り、パネルが一体的に強化されるように該構造を折りたたむ、すなわち糸が平面基部又はパネル部分と補強材との間に連続的に織り込まれるようにするやり方がある。しかし、一般的に、このやり方では予備成型品が折られるときに、該予備成型品のゆがみが結果として生じる。予備成型品が折られるときに、その織繊維の長さがあるべき長さとは異なってしまうことによって、そのゆがみは生じる。これによって、織繊維の長さが短すぎる領域にくぼみやしわが生じ、そして繊維の長さが長すぎる領域ではよじれが生じる。これのゆがみは予備成型品の表面における望ましくない異常の原因となり、構成部材の強度及び頑丈性を減少させる。このことはカッティング及びダーティング(cutting and darting)によって解消されるが、そのような作業はかなりの仕事であり、また予備成型品の一体性を傷つける可能性があるので望ましくない。
【0013】
ここにおいて本明細書に組み込まれる特許文献5は、繊維を織る間にある繊維をある領域において短くし他の繊維を他の領域において長くするといったように繊維の長さを調節することによって、二次元織予備成型品を折る際に生じるゆがみに関する問題を解決している。予備成型品を折る際に繊維の長さは等しくされ、折られた状態に滑らかに移行している。しかし、この織予備成型品は、1つの方向、すなわち縦繊維方向においてにしか強化又は硬化を与えることができない。
【0014】
硬化されたパネルを構成するための他のアプローチが特許文献6に記載されており、そこでは縦及び横方向に強化した硬化パネルを作る方法が開示されている。そこで開示されているように、この方法では、過剰に織る(over weaving)ことによって、又は単に予備成型品のパネル部分を重点的に織ることによって、2つの方向における強化を実現している。だがこの方法は、作られる補強材の高さ限定する。さらに、この方法は、予備成型品が3つの糸を使用して織られることを必要とする。3番目の糸は補強材を予備成型品のパネルに固定するものであるが、それは2つの糸の間で周期的にのみ織られる。したがって、パネル部分が十分に一体的に織られた結合部と比較して弱くなってしまうので、補強材が完全に一体的に織られることがない。
【0015】
さらなるアプローチが特許文献7に記載されており、それはここにおいて本明細書に組み込まれる。特許文献7では、三次元構成部材構造のための強化に適した布が開示されている。繊維強化は、通常の織機械で織られることでなされる。まず織られた2つの二次元構造から始まり、それらが三次元構造へと形成されるのであり、特に該三次元構造は深い谷部を有している。このようにするために、強化布は織部分において縦又は横繊維がそれぞれの上に置かれ、絡み合わないようにする。布が引っ張られて又は折られて形成されるときに、この部分において繊維が独立して動き、互いに滑動することが可能となる。もしその部分が長方形又は正方形であるならば、最終的な構造において圧縮カラムとして働く角部を作り出すように一方向に整列するために、縦及び横繊維の両方がそれら自体及び互いの上に折られるといったやり方で折られることが可能である。
【特許文献1】米国特許第4331495号明細書
【特許文献2】米国特許第4256790号明細書
【特許文献3】米国特許第6103337号明細書
【特許文献4】米国特許第5429853号明細書
【特許文献5】米国特許第6446675号明細書
【特許文献6】米国特許第6019138号明細書
【特許文献7】米国特許第6733862号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、繊維によって強化された複合構成部材へと加工され得る三次元予備成型品は、二次元積層複合体と比較して強さが向上しているために望ましい。これらの予備成型品は、面外荷重を運ぶための複合体を必要とする分野において特に有用である。しかし、これまでに説明した構造のなかで最も多くの利点を有しているこういった特許文献7に記載のものでさえ、多くの角部を有する3つの平面のうち2つの平面においてしか繊維を連続的に強化することができない。
【0017】
したがって、通常の織機で織られることが可能で、角接続部の全ての三次元平面において繊維を強化することが可能な、3方向における強化を提供する織られた角部の予備成型品又は接続部が求められている。
【0018】
さらに、より大きな予備成型品又は構造へとそのような角接続部を統合することが求められている。
【0019】
本発明の目的は、上述した従来技術の予備成型品を改良することである。
【0020】
本発明の他の目的は、全ての側部を結合する連続した繊維を有する角接続部と、該角接続部を形成する方法とを提供することである。
【0021】
本発明のまた別の目的は、平らに織られた織布から形成される全ての側部を結合する連続した繊維を有する角接続部と、該角接続部を形成する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、第1及び第2の方向に織られた繊維又は糸を有する第1の織部分と、第1の織部分に隣接している、第1の方向の繊維と第2の除去又は犠牲繊維とを有する第2の織部分と、第2の方向の犠牲繊維と選択的に係合している第1の方向の繊維を有している第3の半織部分と、を含む角接続部である。そこにおいて、第2の方向の犠牲繊維を除去する際、第3の半織部分の第1の方向の繊維は、第2の織部分の第2の方向の犠牲繊維に取って代わり、全ての側部を結合する連続した繊維を有する角接続部を形成する。
【0023】
さらに、本発明は、第1及び第2の方向の織られた繊維を有する第1の織部分と、第1の織部分に隣接している、第1の方向の繊維と第2の方向の犠牲繊維とを有する第2の織部分と、第2の方向の犠牲繊維と選択的に係合している第1の方向の繊維を有している第3の半織部分とを含む平らな織布を提供する工程を有する角接続部を形成するための方法である。さらに、その方法は、少なくとも1つの方向に平らな織布を折り、第2の方向の犠牲繊維を除去する工程を有しており、除去の間に、第2の織部分において第2の方向の繊維が第3の半織部分の第1の方向の繊維によって取って代わられ、全ての側部を結合する連続した繊維を有する角接続部を形成する。
【0024】
角接続部が作られたら、それは既存の方法で複合部材へと作り上げられる、又は後に複合部材へと作り上げられるより大きな予備成型品又は構造に取り込まれる。
【0025】
本発明を特徴付ける新規性に関する様々な特徴は、付属しており及び本開示の一部を形成している請求項において特に示されている。本発明、その利点及びそれを使用することで得られる特定の目的をより理解するために、続く記載を参照していただきたい。そこには、対応する構成要素が同じ参照番号によって示されている付属の図面で説明されている本発明の好ましい実施形態が記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明をより完全に理解するために、以下の記載及び付属の図面を参照していただきたい。
【0027】
本発明は、繊維強化された角予備成型品又は角接続部、及び全ての側部を結合する連続した繊維を有する繊維強化角接続部を形成する方法である。図1に角接続部10が示されている。角接続部10は、互いに垂直な3つの側部12、14及び16から構成されている。そのような接続部は、幾つかの独立した部材が1つに結合される角部においてしばしば使用される。そういった接続部は、航空宇宙構造におけるリブ/スパー(spar)/外板の交点、及び機体のフレーム/縦通材/外板の交点で一般的に使用されている。
【0028】
複合構造において、角接続部を他の構成部材と同じ材料から作ることには利点がある。なぜなら、全ての部材が同じ熱膨張係数を有することになるからである。また、接続部がそれぞれの側部を結合する連続した繊維を有していることが望ましい。こうすることで3つの“L”字型構成部材を上から覆って結合することができるようになるのであるが、接続部となっている部材の結合線は一般的に不具合が始まるポイントなり得る弱い領域である。したがって、本発明の繊維強化角接続部は、角部の3つの周囲全てに連続的な繊維を有する一体的な織予備成型品に向けられている。
【0029】
角接続部の製造は3つの工程でなされる。第1は、図2に示されている平らな予備成型品20を通常の織機を使用して織る工程である。次は、平らな予備成型品を固定具に固定し、予備成型品の特定の領域にある繊維を他の領域へと引っ張る工程である。それについての詳細は後述する。最後は、除去可能又は犠牲繊維を取り除き、図8に示されている最終的な角接続部110とする工程である。第2の工程は“繊維移動”工程として言及され、その詳細は図3〜8に示されている。
【0030】
最初の平らな予備成型品20が図2に概略的に示されている。平らな予備成型品20は、角接続部110に残り続ける、平らな予備成型品20へと織られる第1の繊維と、角接続部110を形成する際に除去される犠牲又は第2の繊維とに関して記されている。
【0031】
図2はA1区間とA2区間を描写している。A1区間及びA2区間は縦及び横方向に第1の繊維で織られている。これらの区間は、図8に示されている角接続部110の左上部116と下側部112を形成する。
【0032】
B1区間は、縦糸方向における第1の繊維と、横糸方向における犠牲繊維とを有している。横繊維はほとんどの縦糸の上に浮かんでいるが、1つの(及び1つだけの)特定の縦繊維の周りで輪を作っている。横繊維は縦繊維の1つの周りだけで輪を作っているので、半織(semi−woven)状態となっている。この縦繊維は最終的には、図8に示されている角接続部110の右上側部114を形成するために、B2区間にある犠牲横繊維の部分へと動かされる。B2区間は、横糸方向にある犠牲繊維と、それを織っている縦糸方向にある第1の繊維とを有している。B1区間における縦繊維は最終的にその横繊維に取って代わる。
【0033】
C1区間は、縦糸方向において織られていない第1の繊維を有している。この区間において横繊維は存在しない。この超過した繊維は最終的に除去される。C2区間は、横糸方向にある犠牲繊維を織っている縦糸方向にある犠牲繊維を有している。この区間は、繊維が移動する間においてB2区間を安定させるものであり、最終的に除去される。図3に、平らな予備成型品の等角図が示されている。
【0034】
最初の予備成型品の織区間に関して、使用される繊維のタイプ又は基本的な織パターンには制限がないことを注意する。最初の予備成型品は多層設計であってもよい。より複雑な設計は繊維移動プロセスをより難しくするだろうが、しかしそれも本発明の範囲に入るものである。
【0035】
図3から5へ続けて示されているように、角接続部110の形成は、図3において22と24で示されている2つの折り線に沿って予備成型品が折られることから始まる。線22及び24に沿って完全に折ったところが、図4及び5にそれぞれ示されている。
【0036】
図5に示されているように、接続部は繊維移動工程を容易にするための場所に置かれる。繊維移動は、予備成型品20からB2区間にある犠牲横繊維26の各々を引っ張ることによってなされる。これがなされるとき、B1区間にある縦繊維28は、犠牲横繊維26によって占められていた場所へと引っ張られる。それから、B1区間における特定の縦繊維28は、自らの周りで輪を作っていた犠牲横繊維26によってもともと占められていたB2区間にある場所を占領する。このプロセスは図5から7に続けて示されている。
【0037】
形成プロセスにおける最終工程は、28aにおける過剰な繊維を除去することである。これは、図7に示されているように、完全に引っ張られてB1区間からB2区間及び全てのC2区間(30で示されている)まで通じている縦繊維からなっている。図8に、最終的にできあがった角接続部110が示されている。図にあるように、全ての角の付近に連続した繊維が存在している。それから、角接続部110は1つの複合部材とされ強化要素として使用される、又は複合部材とされる又は望ましく使用されるより大きな予備成型品又は構造の中に組み込まれる。
【実施例】
【0038】
この方法の効果を検証するために試作の予備成型品を製造した。この予備成型品は、様々な繊維に対してこのアプローチを適用できることを実証するために、及び最終的にできあがる予備成型品における繊維の道筋を明確にするために、アラミド、カーボン及びガラスの繊維を組み合わせて使用して織られた。使用された繊維はリストに挙げられたものであり、複合構造において前述のように使用される一般的な強化繊維であるが、本発明は目的に適した材料から作られたいかなる繊維も適用可能であり、したがってここに記載された材料に限定されはしないことを注意する。この予備成型品は通常のシャトル織機を用いて織られた。平らな予備成型品は図9に示されている。図2に規定されている領域A1〜C2が容易に同定され得るように、そこにはグリッドが重ね合わせ表示されている。
【0039】
図9に示されている予備成型品は平織りパターンを使用して織られている。このパターンは他の一般的なパターン、例えば綾織り又はサテン織りと比較して多くのしわを含んでいることから選択されており、これは単層布における繊維移動プロセスにとって最も困難な状況に挑戦するためである。前述したように、いかなる織パターンも使用することが可能である。変化することがない唯一のパターンは、各々の横繊維が1つの縦繊維の周りで輪を作らねばならないB1区間におけるものである。加えて、織工程は、B1区間の左下部から右上部へと進む。
【0040】
図9に示されている予備成型品は、形成固定具/繊維移動補助具に固定さており、そこで折りたたまれて、繊維移動プロセスのB1区間及びB2区間が準備される。固定具に固定された試作の予備成型品は図10及び11に示されている。
【0041】
図10には、繊維移動の前の予備成型品が示されている。図11には、繊維移動の間の予備成型品が示されている。カウルプレート(caul plates)は、繊維移動の間における予備成型品の様々な部分を安定させ、ゆがみを最小化するのに役立つ。繊維移動プロセスを完了した後、犠牲繊維が除去され、図12に示されている角接続部ができあがる。連続したアラミド繊維120、カーボン繊維122及びガラス繊維124が様々な各所の角に存在していることを注意する。
【0042】
図12に示されている角接続部は機械で織られたものであるが、繊維移動は人の手によってなされた。予備成型品を折りたたみ、犠牲横糸を除去するために必要な個々の工程は、容易に自動化される。例えば、製造環境においては、平らな予備成型品が連続的に折られ、ロール状に丸められることも可能である。それから、この平らな予備成型品のロールは、折る工程、繊維移動工程及び最終除去工程をなす第2の機械にかけられ得る。その後、それは複合構造そのものになる、又は複合部材へと形成されるより大きな予備成型品構造へと組み込まれる。
【0043】
本発明は、これまで角接続部の形成をまず第1に記載してきた。応用として、そのような角接続部は、機械の2つ以上の区間の結合部の強化が望まれる状況において使用されることも可能である。例えば、それは、航空宇宙産業において、外板材料と長手方向及び横断方向に外板を支持する補強材との間の結合を強化するためにしばしば必要である。そのような例が図13に示されており、そこでは外板材料200は一体化縦通材202を有している。外板200の支持を助けるために、支持部204が外板200に取り付けられている。支持部に設けられたねずみ穴(mouse hole)206によって、その支持部を外板200の縦通材202の上に配置することが可能である。これらの結合部を強化するために、角接続部208が縦通材202と支持部204の交点の1つ以上の側部に適用される。
【0044】
本発明のもう1つの実施例が図14に示されており、そこでは支持部210が上記のプロセスで形成され、角の3つの平面の交点を横断する連続した繊維で形成された角208の設計内において一体化している。この設計によって強さが増加することは容易にわかるので、図13に示されているような強化角部の設置をやめることも可能である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態及びその変形態がこれまで詳細に記載されてきたのであるが、本発明はこの詳細な実施形態及び変形態に限定されることはなく、及び付属の請求項に規定されている本発明の精神及び範囲から逸脱することがない限り他の変形態及び類似形態が当業者によってなされてもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明にしたがう角接続部の等角図である。
【図2】本発明にしたがう、平らに織られた角接続部の平面図である。
【図3】図2の平らに織られた角接続部の等角図である。
【図4】1番目の折り工程の後の、図2の平らに織られた角接続部を示している。
【図5】2番目の折り工程の後の、図2の平らに織られた角接続部を示している。
【図6】繊維が移動されている間の、図2の平らに織られた角接続部を示している。
【図7】繊維移動が完了した後の、図2の平らに織られた角接続部を示している。
【図8】図2の平らに織られた角接続部の最終的な構造を示している。
【図9】図2に示されているタイプの平らに織られた角接続部の実際の試作品を示している。
【図10】図9の平らに織られた角接続部を折って織るプロセスを示している。
【図11】図9の平らに織られた角接続部を折って織るプロセスを示している。
【図12】図9の平らに織られた角接続部の最終的な構造を示している。
【図13】強化部材としての角接続部の実施例を示している。
【図14】より大きな予備成型品又は構造の一部として統合された角接続部を示している。
【符号の説明】
【0047】
10 角接続部
12 側部
14 側部
16 側部
20 平らな予備成型品
22 折り線
24 折り線
26 横繊維
28 縦繊維
28a 過剰な繊維
30 C2区間
110 最終的な角接続部
112 角接続部の下側部
114 角接続部の右上側部
116 角接続部の左上部
120 アラミド繊維
122 カーボン繊維
124 ガラス繊維
200 外板材料
202 縦通材
204 支持部
206 ねずみ穴
208 角接続部
210 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折られた平らな織布から形成されている角接続部であって、
第1及び第2の方向に織られた繊維を有する第1の織部分と、
第1の方向の繊維と第2の方向の犠牲繊維とを有する、第1の織部分と隣接している第2の織部分と、
第2の方向の犠牲繊維と選択的に係合している第1の方向の繊維を有する第3の半織部分と、
からなり、前記第2の方向の犠牲繊維を除去することで、前記第3の半織部分の前記第1の方向の繊維は、前記第2の織部分の第2の方向の犠牲繊維に取って代わり、全ての側部を結合する連続した繊維を有する角接続部を形成する、前記角接続部。
【請求項2】
第1の方向の繊維は縦繊維であり、第2の方向の繊維は横繊維であり、第2の方向の犠牲繊維は横繊維であることを特徴とする請求項1に記載の角接続部。
【請求項3】
平らな織布は多層布であることを特徴とする請求項1に記載の角接続部。
【請求項4】
第1及び第2の方向の繊維は、ガラス、カーボン、セラミック、アラミド及びポリエチレン繊維からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の角接続部。
【請求項5】
第1及び第2の方向の繊維は、複合部材を作り出すマトリックス材料に包み込まれることを特徴とする請求項1に記載の角接続部。
【請求項6】
より大きな予備成型品又は構造へと統合されることを特徴とする請求項1に記載の角接続部。
【請求項7】
前記より大きな予備成型品又は構造は、複合部材を作り出すマトリックス材料に包み込まれることを特徴とする請求項6に記載の角接続部。
【請求項8】
角接続部を形成する方法であって、
第一及び第2の方向の織られた繊維を有する第1の織部分と、第1の方向の繊維と第2の方向の犠牲繊維とを有する、第1の織部分と隣接している第2の織部分と、第2の方向の犠牲繊維と選択的に係合している第1の方向の繊維を有する第3の半織部分と、を含む平らな織布を用意する工程と、
少なくとも1つの方向に前記平らな織布を折る工程と、
前記第2の方向の犠牲繊維を除去する工程と、
からなり、除去工程の間に、前記第2の方向の犠牲繊維は、前記第2の織部分において第3の半織部分の第1の方向の繊維によって取って代わられ、全ての側部を結合する連続した繊維を有する角接続部を形成する、前記角接続部を形成する方法。
【請求項9】
複合部材を作り出すマトリックス材料で第1及び第2の方向の繊維を包み込む工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の織部分の第2の方向の犠牲繊維を除去した後に、前記第2の織部分の端部を超えて伸張している、第3の半織部分の第1の方向の繊維の部分を切断する工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の織部分の一部を除去する工程をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の方向の織繊維は縦糸であり、第2の方向の繊維は横繊維であり、第2の方向の犠牲繊維は横繊維であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
平らな織布は多層布であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
第1及び第2の方向の繊維をガラス、カーボン、セラミック、アラミド及びポリエチレン繊維からなる群から選択する工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記角接続部はより大きな予備成型品又は構造に包含されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記より大きな予備成型品又は構造は、複合部材を作り出すマトリックス材料に包み込まれることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−515058(P2009−515058A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538905(P2008−538905)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040555
【国際公開番号】WO2007/055877
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508135080)アルバニー エンジニアード コンポジッツ インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】