説明

繊維素材からなる成形品を製造するための装置および方法

【課題】成形品の特性とその利用可能性とが改善された、繊維素材からなる三次元の成形品を製造する技術を提供する。
【解決手段】複数部材構成型枠の内側が少なくとも部分的に成形品の輪郭を規定するものであり、型枠の内部空間内へ繊維を吹き込むステップと、繊繊を型枠の内側に堆積するステップと、成形品を形作るために繊維を連結するステップとを含み、繊維は、型枠内への吹き込みの際に少なくとも部分的に内部空間において1つ以上の電場を印加されることによって、繊維が少なくとも部分的に、成形品における繊維の1つ以上の所望の優先方向と少なくとも一致している、電場の方向に沿って配向される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具体的にはマットあるいはクッション状の固形物である繊維素材からなる三次元の成形品を、複数部材構成型枠である、孔を有し、少なくとも1つの内部空間を有する型枠を用いて製造するための方法であって、複数部材構成型枠の内側が少なくとも部分的に成形品の輪郭を規定し、繊維素材を型枠の内部空間に吹き込むステップと、繊維を型枠の内側に堆積するステップと、成形品を形作るために繊維を連結するステップとを含む方法に関する。この種の成形品は、好ましくは自動車産業において、特に、例えばボンネットの下の遮音マットや、例えばレッグルームやトランク内、あるいは座席クッションやフロアカーペットなどにおけるライニング用マットとして用いられる。
また本発明は、繊維素材からなる三次元の成形品を製造するための装置であって、少なくとも1つの内部空間を有する、複数部材構成型枠であって、この複数部材構成型枠の内側が少なくとも部分的に製造すべき成形品の輪郭を規定するものと、繊維を型枠の内部空間に吹き込むための1つ以上のノズルと、内部空間から空気を排出し、繊維を型枠の内側において堆積するための空気開口部と、成形品を形作るために繊維を連結するための手段とを有する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
この種の方法あるいは装置は、例えば国際特許公開公報WO2009/062646から公知であり、この文献は繊維素材からなる三次元の成形品を製造するための装置を開示している。ここでは、上型と下型の2つの部品からなる型枠が使用される。その際、上型と下型の各内側は、成形品の輪郭を部分的に規定する。上型と下型の間の空間内に繊維が空気流によって複数のノズルを通じて吹き込まれる。空気流は、上型と下型の開口部を通じて逃れるため、繊維が上型と下型の内側に対して堆積される。その後、繊維は必要に応じてさらに局所的に圧縮され、次のステップにおいて熱供給によって互いに接着される。繊維の冷却後、完成した成形品を最終的に型枠から取り外すことが可能となる。その際、繊維は型枠においていわゆる不織フリースを形成する。フリースの繊維は、自身の配向性がランダムとなった形で配置される。
【0003】
本発明は、この種の成形品が自身の製品固有である特性を鑑みた場合、より良好な形で後日の利用に対して適用されるべきであるという認識に基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許公開公報WO2009/062646
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、成形品の特性とその利用可能性とを改善するために、繊維素材からなる三次元の成形品を製造するための方法と装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、マット状あるいはクッション状の三次元成形品を、少なくとも1つの内部空間を有する複数部材構成型枠を用いて繊維から製造するための方法に関しては、当該複数部材構成型枠の内側が少なくとも部分的に成形品の輪郭を規定するものであり、型枠の内部空間内へ繊維を吹き込むステップと、繊繊を型枠の内側に堆積するステップと、成形品を形作るために繊維を連結するステップとを含み、前記繊維は、型枠内への吹き込みの際に少なくとも部分的に内部空間において1つ以上の電場を印加されることによって、前記繊維が少なくとも部分的に、成形品における繊維の1つ以上の所望の優先方向と少なくとも一致している、電場の方向に沿って配向されることによって解決される。
【0007】
上記課題は、繊維から三次元成形品を製造するための装置に関しては、少なくとも1つの内部空間を有するとともに、その内側が少なくとも部分的に製造すべき成形品の輪郭を規定する複数部材構成型枠と、繊維を内部空間に対して吹き込むための1つ以上のノズルと、内部空間から空気を逃し、繊維を型枠の内側に対して堆積させるための、型枠に形成された空気開口部と、成形品を形作るために繊維を連結するための手段とを備え、内部空間に対して少なくとも1つ以上の電場を印加し、1つ以上の電場を生成するための手段が設けられており、繊維の前記型枠内への吹き込みの際に前記電場によって少なくとも部分的に成形品における繊維の1つ以上の所望の優先方向と少なくともおおむね一致している電場の方向に沿って繊維が配向されることによって解決される。
【0008】
本発明による方法あるいは装置によって、型枠の内部空間において繊維が1つ以上の電場あるいは電場の各力線に沿って配向されるようになる。その後、繊維は所定の優先方向に向かって型枠の内側に堆積される。型枠が完全にこのように配向される繊維によって充填されると繊維が互いに接着され、接着時に1つ以上の電場の配向を保持する。こうして自身の繊維が所定の領域あるいは成形品全体において配向されているような成形品が形成される。電場または力線の方向は、繊維の方向が所定の特性の1つ以上の優先方向と一致するように選択される。こうすることによって成形品の利用可能性が高くなるため、これらの成形品が例えばそこで生じる負荷が成形品に対して不適切であったようなその他の領域に対して適用することが可能となる。例えば、所定の利用法において成形品が所定の負荷方向を受ける場合、繊維がこの負荷方向に対して平行に配向されるように電場の方向を選択する。こうすることによって自身の外部から付与される力に対する復元力が改善される。これによって成形品の性能と寿命とが極めて高くなる。
【0009】
吹き込みの前または途中あるいはその両方で繊維に電荷が付与され、さらに追加的なあるいは選択的に既に荷電された繊維の電荷が強化されることが好ましい。こうして繊維が1つ以上の電場に対して配向されるため、繊維が1つ以上の所望する繊維の優先方向を有する成形品を形成する。既に荷電された繊維については、これらの電荷が強化されることによって繊維がより迅速且つ確実に電場の力線に沿って内部空間で配向され、最終的に製造された成形品においても相応に配向された形で設けられるようになる。
【0010】
電場をより容易且つ安価に製造するためには、電場を型枠の電導性を有する部分を用いて生成することが有利である。型枠の電導性を有する部分は、電場あるいは力線の方向が繊維の所望される優先方向に相当するように設けられている。型枠の電導性を有する部分は、互いに対して絶縁されていてもよい。こうすることによって電場を生成するための別途手段が不要となり、この方法をより安価に実施することが可能となる。
【0011】
電場の均一性を高めて同時に可能な限り簡単なメンテナンスを可能にするために、少なくとも1つの電場を複数部材構成型枠の外面あるいは外側にオフセットされて設けられた電極によって生成してもよい。これによって電極に対する接近性と電極のメンテナンスが容易となる。さらに電極の位置づけに際しては、考慮すべき例えば突起などの境界条件がより少なくなるため、電極をより大きくすることが可能となり、電極の各縁における電場の境界効果の影響がより小さくなるため、各電極間の電場の均一性にとって有利となる。
【0012】
電場を生成するために必要な余分な手段を可能な限り少なくするためには、繊維素材を内部空間に対して吹き込む作業が自身も少なくとも1つの電場についての電極として形成されている、少なくとも1つのノズルによって実施されることが有利である。この際、ノズルは互いに対して絶縁された部分から構成されていることによって、異なる方向において個々の独立した部分電場を形成するようにしてもよい。しかしながらもちろん複数のノズルが電極として形成されていてもよい。
【0013】
電場のための対応する第2の電極は、必ずしも同様にノズルの形状を有する必要はなく、例えばその他の有利な形状を有することが可能であり、具体的には電極が必要に応じて互いに対して電気的に絶縁されている、型枠の電導性を有する部分によって形成されていてもよい。
【0014】
本発明による装置においては、未荷電の繊維を荷電し、追加的あるいは選択的に既に荷電された繊維の電荷を強化することが可能であるように繊維を荷電するための手段が設けられていると好適である。未荷電の繊維を使用する場合には、これらを荷電しない限りは電場において配向されない。したがって繊維の荷電のための手段が設けられた場合、装置の柔軟性が極めて改善される。加えて既に荷電された繊維の電荷がこれらの手段によって強化される。例えば摩擦によって既にある程度でありながら小さいものにすぎず、電場によって十分な形であるいは十分に迅速な形で配向されるには弱すぎる電荷を有する繊維は、より強く荷電されるため、これらの繊維が確実に電場によって型枠の内部空間において配向される。
【0015】
特に好適な形態は、荷電のための手段が少なくとも1つのノズルまたはノズルの供給管あるいはその両方に設けられることである。荷電手段がノズルに設けられる場合、コンパクトである装置の構造が得られる。この手段が少なくとも1つのノズルのための供給管に設けられる場合、繊維は内部空間への吹き込みの前に既に所望の電荷を得ることが可能である。これよって一方ではノズルを比較的簡単且つ安価に製造することが可能となる。また同時に型枠の内部空間の電場に対する荷電のための手段による影響が、ノズル自体に荷電のための手段が設けられる場合には避けられることから、1つ以上の電場による繊維の内部空間における確実な配置が得られる。
【0016】
繊維を荷電するための手段は、環状電極を有することが好ましい。こうすることによって、例えば環状電極を直接供給管の部分として構成することや単に供給管の外面の周りにおいて配置することによって、特に簡単に1つ以上のノズルのための既存の供給管そのものに対して手段を一体化することが可能となる。
【0017】
可能な限り安価に製造し、電場を生成する手段を簡単に配置するためには、プレート状あるいは棒状あるいはそれらを組み合わせた電極を用いることも可能である。その際、例えば型枠の一方側では棒状電極を配置し、対向する面にはプレート状電極を配置するなど、電場を生成するために両種の電極を一緒に使用することも可能である。この場合、棒状電極からの力線は自身の表面に対して垂直に延伸し、プレート状電極の表面の上において平行に終端する。
【0018】
装置を可能な限りコンパクトに構成することが可能であるようにするためには、複数部材構成型枠からなる少なくとも1つの部分を少なくとも部分的に電極として構成することが好適である。このように型枠に電極を「埋め込み」することによって一方では型枠の構造をコンパクトにすることが可能となり、他方では電場の均一性を妨害し得る電場の領域において障害となる別途供給管を設ける必要がないため、電場が均一となる。
【0019】
装置のメンテナンスのために容易な接近性を可能にするためには、複数部材構成型枠から構成されている型枠の外面に電極が配置されており、特に複数部材構成型枠が部分的に非導電性である素材からなることが好適である。電極が外面に設けられると外側から接近しやすくなる。同時に特に複数部材構成型枠が部分的に非電導性の素材から製造されることによってファラデー効果による電場の部分的な遮蔽を防止する。その際、型枠を電導性および非電導性の素材を用いてこのような構成にすることによって、1つ以上の電場の電界強度および配置を目標とされる形で影響するためにファラデー効果を利用することも可能となる。
【0020】
電極が複数部材構成型枠の外面に設けられる場合、これらが複数部材構成型枠と連結される必要はない。例えば電極を複数部材構成型枠より離れて位置づける場合、型枠あるいは少なくとも型枠の部分よりもかなり大きく構成することが可能である。同時にこのことによって電場における境界効果(電極の縁における力線の隆起;直接対向するプレート状電極の場合にはプレート間の内部空間においてのみ実質的に均一である電場を有する)が防止される。
【0021】
装置をさらにコンパクトに構成するためには、少なくとも1つのノズルが電極として構成されていることが有利である。その際、電場を形成する手段を構成するのは別の形状を有する電極を有する1つのノズルであっても2つの相当するノズルであってもよい。
【0022】
可能な限り欠陥のない成形品の製造を確証し、電場を生成する手段間の短絡などを防止するためには、電気的に絶縁するための手段が特に複数部材構成型枠の部分間に設けられていることが有利である。これによって電導性の領域が互いに絶縁されるため、欠陥のない成形品を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】繊維を吹き込む前の本発明における複数部材構成型枠の斜視図である。
【図2】電場が負荷されている状態で繊維を吹き込む間における図1における本発明による型枠を示す図である。
【図3】電場が負荷されていない状態における図2による型枠を示す図である。
【図4】配置された繊維あるいは配置されない繊維によって製造された成形品の断面図である。
【図5】本発明による複数部材構成型枠を示す図である。
【図6】上型または下型の斜視図である。
【図7】電極を有する供給管の一部分の斜視図である。
【図8】繊維配向装置の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下における実施形態の説明、ならびに図面から明らかとなる。
【0025】
図1において本発明による装置のための複数部材構成型枠1が示されている。ここで型枠1は、2つの有孔であるトレイ状の部分、すなわち上型Oおよび下型Uからなり、これらは自身の間において製造すべき成形品の形を有する内部空間Iを形成する。上型Oまたは下型Uの外面において、内部空間Iにおいて作用する電場Eの生成のために機能する2つのプレート状の電極2a、2bが配置されている。図1における下型Uの右側において、内部空間Iに、内部空間Iに対して繊維F1、F2を吹き込むためのノズルDが配置されている。さらにノズルDには繊維F1、F2を吹き込む際にこれらを静電荷するための電極2cが内部空間Iにおいて取り付けられている。内部空間に対して繊維F1、F2を吹き込む前、遅くともその製造途中で電場Eが印加される。
【0026】
図2において繊維1がノズルDを通じて上型Oと下型Uとの間の内部空間Iへの方向4に向かって吹き込まれる状態が示されている。吹き込み時およびその際に生じる乱流時において、繊維F1は内部空間Iにおいて電場Eが有効であった場合であっても当初はまだ配向されていない。空気流を緩和することによって繊維F1、F2はさらに内部空間I内に侵入する際に運動エネルギーを失い、その後電場Eの力によって力線、すなわち図2において型枠の上面および下面に対して略垂直に延伸する力線に応じて、プレート状電極2aからプレート状電極2bに向かって互いに平行に配向される(繊維F2)。
【0027】
(図示されない)次のステップにおいて、繊維F2は自身の相当する配向において上型Oまたは下型Uの内側に沿って配置される一方、吹き込まれた空気が有孔である上型および下型から逃れる。内部空間Iが完全に(配向された)繊維F2によって充填されると繊維F2同士が例えばヒートシールによって互いに連結される。その後、必要に応じて型枠あるいは接着された繊維F2が冷却される。こうして型枠1を開くことによって取り出すことが可能である硬い成形品が形成される。
【0028】
図3において、内部空間Iにおいて電場Eが生じていない場合に、繊維F1が内部空間Iにおいてとる繊維F1の配向が具体的に示されている。繊維F1は、互いに対して任意の形で配向されており、修正されていない繊維F1を有するいわゆる不織フリースを形成している。
【0029】
図4aまたは4bにおいて、成形品5であって、一方では電場Eによって荷電された繊維F2を用いて製造されたもの(図4a)と他方では内部空間Iにおいて電場Eが存在しない形で製造された、未配向の繊維F1を含む成形品5の断面図が示されている。さらに、こうして製造された成形品5に対して上から作用する力Fが示されている。図4aにおいて繊維F2はこの作用する力Fに対して平行に配向されているのに対し、図4bにおいては上から作用する力Fに対して特定ではない、すなわち偶然の配向をとる。図4aにおいて繊維F2が成形品5に対して作用する力Fに対して平行に配向されるため、図4aにおける成形品は、復元力、すなわち力Fと反対方向に作用する力が繊維F2が成形品5に対して作用する力Fに対して平行に配向されている場合に最も大きくなるため、図4bにおける成形品5の復元力Rよりもかなり大きな復元力Rを有する。繊維F2を1つ以上の優先方向、ここでは図4aにおいて成形品に対して作用する力に対して平行に配向することによって、成形品の疲労のない復元力、よって自身の寿命が著しく改善される。
【0030】
図5において上型Oと下型Uとからなる、本発明による型枠1が示されている。両方の型枠は、それ自体公知である有孔であり、互いに対して着脱可能な形で連結されている壁部材から製造される。繊維を吹き込む際に上型と下型とが閉じられた箱を形成する。吹き込まれた繊維を接着した後、この箱は公知のように開かれる。
【0031】
下型Uの右側の側壁においてこの側壁に対して略垂直に繊維素材を型枠1の内部空間Iに対して吹き込むためのノズルDが配置されている。ノズルDは、吹き込む際に繊維F1、F2を静電荷するための電極2cを担持している。さらに、上型Oの一部が電極2aとして、またこれに伴って同様に下型Uの一部も電極2bとして構成されている。電極2aおよび2bの間、場合によっては電極2cとの組み合わせにおいて電圧を印加することによって電場Eを生成することも可能である。電極における電圧は、5kV/cm〜10kV/cm、特に6kV/cm〜8kV/cmの電界強度が形成されるように選択される。
【0032】
上型Oおよび下型Uは、空気流が内部空間Iから再び出るために役立つ、ザル状に配置された孔5を有する。空気が逃げることによって繊維F1、F2が上型Oおよび下型Uの内側に対して移動されてここに堆積するため、内部空間Iに完全に繊維F1、F2が充填された場合に繊維F1、F2が互いに対して接着することによって成形品を製造することが可能となる。その際、上型Oおよび下型Uは、部分的に非電導性の素材から形成することが可能であるが、その場合各電極2a、2bは当然電導性の素材からなる。
【0033】
図6aにおいて型枠1の金型枠Uが示されている。この下型Uは、有孔板5を有し、通常は陰極を構成する。さらに下型Uは、実質的にトレイ状に形成されており、下型Uの縁が全体として実質的に四角形の断面を有する。
【0034】
図6b、6cにおいて図6aの下型Uに対応する、実質的に同じ構造を有し、陽極を構成する上型Oが示されている。上型Oは、非電導性の素材からなり、その外面に直接電極2aが設けられるか(図6b)あるいは上型Oそのものが全体として電極2aとして構成され(図6c)上型Oの縁において円周状に設けられる電気的な絶縁6を有するため、内部空間Iを形成するために上型Oが下型Uの上に設置された場合、上型Oと下型Uとが互いに対して電気的に絶縁されている。
【0035】
図7において、ノズルDへの供給管Zが示されており、その内部において繊維素材が方向Rにおいて空気流によって搬送されてその後ノズルDを通じて内部空間I内へと搬送される。帯電のために供給管Zの外面において環状電極2dが配置されており、これが荷電されていない繊維F1、F2を荷電し、既に荷電されている繊維F1、F2の電荷をさらに強化することによって、繊維F1、F2が吹き込まれた後に電場Eの影響下において内部空間Iにおいて配向される。この際、電極2dは、ノズルDあるいは吹き込み開口部の直前に設けられており、供給管Z内において配置される金属製のパイプ部分2dか、図示される樹脂製の供給管ホースZの外面に配置されている環状電極2dを有する。当然、本発明の枠内においてその他の形の電極を設けることも可能である。
【0036】
本発明の特に好ましい実施形態が図8において示されている。図において繊維がノズルに到達するまで繊維を予備配向するための装置10の断面図が示されている。
【0037】
配向装置は、上から導入された繊維(場合によってはある程度分離することによって互いに小さな片としてだけでつながっているもの)を左側に向かって送り込みローラ対12a、12bに対して供給するための回動する供給ベルト11からなる。このローラ対は、2つの反対方向に回動する、互いに対してわずかなスリット(隙間)を有して平行に配置されているローラであり、自身の外側における周面が粗面化、具体的には軽く鋸歯化されている。これらは供給ベルト11から来る繊維を掴んで自身らの間のスリットを通って繊維をさらに左側に搬送する。その場合、詰まりを防止するために両方のローラの少なくとも1つが垂直方向に対してばね力に抗うようにスライド可能に設けられていてもよい。
【0038】
ここで重要なのは、繊維が比較的大きな回転するシリンダ13によって捉えられることである。このシリンダは、略半円筒状の外壁14に対してわずかな距離をおく形で囲まれている。粗い、具体的には鋸歯状であるシリンダの外表面によって、シリンダは繊維をシリンダ13と外壁14との間に存在するスリットを通って引っ張る。その場合、その際に繊維は外壁14による摩擦によって徐々に多かれ少なかれシリンダ13の回転方向に向かって配向される、すなわち好ましく円周方向に配向される。この配向において、繊維はシリンダ13が半回転、部分的には1回転半した後、出力用スリット15へと到達し、そこから繊維はさらに1つ以上のノズル、すなわち型枠1内へと搬送される。
【0039】
シリンダ13からの繊維の取り外しと、出力用スリット15において繊維を下に放出する管16への受け渡しを改善するためには、移行領域に対して例えば接線空気流を付与することが望ましい。この空気流は、繊維をさらに管16を通って型枠1内へと搬送することも担う。
【0040】
シリンダ13を通って繊維を捉える際に繊維に対して及ぼされる摩擦力によって、繊維は搬送方向における好ましい形の配向をなす。この機械的な予備配向によって型枠内において後に印加されるつ以上の電場を用いての配向が容易となる。
【0041】
1つ以上のノズルに対して繊維が供給される前に繊維が予備配向されることは、前述においてはスリットにおける摩擦力が配向力を生成するような機械的なドラムを用いて実施されると説明された。しかしながら、本発明の枠内において繊維の予備配向を他の機械的な方法あるいは空気圧によって得ることも当然含まれる。
【0042】
要約すれば、本発明は簡単な方法によって成形品を製造するための繊維が1つ以上の優先方向に配向されることによって完成された成形品において繊維が所定の方向に配置され、よって条件に応じた使用における成形品の所望される特性が強化されるという利点を得られる。これによって特に剛性、柔軟性およびその結果として成形品の寿命を目的に応じたものとして実現することが可能となる。
【0043】
以下に、本発明による好適な実施形態を列挙する;
*未荷電の繊維F1、F2に対して吹き込みの前またはその途中あるいはその両方において静電荷が付与され、追加的にあるいは選択的に既に荷電された繊維F1、F2の電荷が強化される。
*1つ以上の電場Eが前記型枠1の電導性を有する部分2a、2bを介して印加される。
*1つ以上の電場Eが、前記型枠1にあるいは前記型枠1に対して距離をあけて前記型枠の外側に設けられた電極2a、2bによって印加される。
*電場を作り出すために5kV/cm〜10kV/cm、特に6kV/cm〜8kV/cmの電界強度が使用される。
*最小長さが約10mm、好ましくは約15mm、特には20mmであり、最大長さが約60mm、好ましくは約50mm、特には約40mmである繊維を使用する。
*繊維素材F1、F2の内部空間I内への吹き込みは、少なくとも1つの電場Eのための電極2a、2bとして形成されている、少なくとも1つのノズルDを通じて実施される。
*型枠1に吹き込む前の繊維F1、F2は、少なくとも部分的に機械的な配向、特に繊維の流れ方向に対して略平行である配向を有する。
*繊維F1、F2を荷電する荷電手段2dが設けられることによって未荷電の繊維F1、F2が荷電されるか、または既に荷電された繊維F1、F2の電荷が強化されるかあるいはその両方が行われる。
*前記荷電手段2dが少なくとも1つのノズルDまたは少なくとも1つのノズルDのための供給管Zあるいはその両方に配置されている。
*電場Eを生成するための手段2a、2bが環状、プレート状、棒状のいずれかあるいはその組み合わせ形状の電極2a、2bを含む。
*複数部材構成型枠1の少なくとも一部分が、少なくとも部分的に電極2a、2bとして構成されている
*複数部材構成型枠1の外面の上に電極2a、2bが配置され、前記複数部材構成型枠1が部分的に非電導性の素材から製造されている。
*少なくとも1つのノズルDが電極2a、2bとして構成されている。
*複数部材構成型枠1の部材間を電気的に絶縁するための手段6が配置される。
*1つ以上のノズルDの上流側において繊維配向装置10が前置される。
*繊維配向装置10が、繊維F1、F2を摩擦しながら対向する壁14に沿って案内する可動式搬送ユニット13を有する。
【0044】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1、F2 繊維
I:内部空間
1:複数部材構成型枠
O:上型
U:下型
D:ノズル
E:電場
2a、2b:電場を生成するための手段(電極)
5:空気開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット状あるいはクッション状の三次元成形品を、少なくとも1つの内部空間(I)を有する複数部材構成型枠(1)を用いて繊維(F1、F2)から製造するための方法であって、
当該複数部材構成型枠(1)の内側が少なくとも部分的に成形品の輪郭を規定するものであり、型枠(1)の内部空間(I)内へ繊維(F1、F2)を吹き込むステップと、繊繊を型枠(1)の内側に堆積するステップと、成形品を形作るために繊維(F1、F2)を連結するステップとを含み、
前記繊維(F1、F2)は、型枠(1)内への吹き込みの際に少なくとも部分的に内部空間(I)において1つ以上の電場(E)を印加されることによって、前記繊維(F1、F2)が少なくとも部分的に、成形品における繊維(F1、F2)の1つ以上の所望の優先方向と少なくとも一致している、電場(E)の方向に沿って配向される三次元成形品製造方法。
【請求項2】
未荷電の繊維(F1、F2)に対して吹き込みの前またはその途中あるいはその両方において静電荷が付与され、追加的にあるいは選択的に既に荷電された繊維(F1、F2)の電荷が強化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の電場(E)が前記型枠(1)の電導性を有する部分(2a、2b)を介して印加されることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の電場(E)が、前記型枠(1)にあるいは前記型枠(1)に対して距離をあけて前記型枠の外側に設けられた電極(2a、2b)によって印加されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電場を作り出すために5kV/cm〜10kV/cm、特に6kV/cm〜8kV/cmの電界強度が使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
最小長さが約10mm、好ましくは約15mm、特には20mmであり、最大長さが約60mm、好ましくは約50mm、特には約40mmである繊維を使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
繊維素材(F1、F2)の内部空間(I)内への吹き込みは、少なくとも1つの電場(E)のための電極(2a、2b)として形成されている、少なくとも1つのノズル(D)を通じて実施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記型枠(1)に吹き込む前の繊維(F1、F2)は、少なくとも部分的に機械的な配向、特に繊維の流れ方向に対して略平行である配向を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項による方法を実施する、繊維(F1、F2)から三次元成形品を製造するための装置であって、
少なくとも1つの内部空間(I)を有するとともに、その内側が少なくとも部分的に製造すべき成形品の輪郭を規定する複数部材構成型枠(1)と、繊維(F1、F2)を内部空間(I)に対して吹き込むための1つ以上のノズル(D)と、内部空間(I)から空気を逃し、繊維(F1、F2)を型枠(1)の内側に対して堆積させるための、型枠(1)に形成された空気開口部(5)と、成形品を形作るために繊維(F1、F2)を連結するための手段とを備え、
内部空間(I)に対して少なくとも1つ以上の電場(E)を印加し、1つ以上の電場(E)を生成するための手段(2a、2b)が設けられており、繊維(F1、F2)の前記型枠(1)内への吹き込みの際に前記電場(E)によって少なくとも部分的に成形品における繊維(F1、F2)の1つ以上の所望の優先方向と少なくともおおむね一致している電場(E)の方向に沿って繊維(F1、F2)が配向されることを特徴とする三次元成形品製造装置。
【請求項10】
繊維(F1、F2)を荷電する荷電手段(2d)が設けられることによって未荷電の繊維(F1、F2)が荷電されるか、または既に荷電された繊維(F1、F2)の電荷が強化されるかあるいはその両方が行われることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記荷電手段(2d)が少なくとも1つのノズル(D)または少なくとも1つのノズル(D)のための供給管(Z)あるいはその両方に配置されていることを特徴とする請求項9〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
電場(E)を生成するための手段(2a、2b)が環状、プレート状、棒状のいずれかあるいはその組み合わせ形状の電極(2a、2b)を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記複数部材構成型枠(1)の少なくとも一部分が、少なくとも部分的に電極(2a、2b)として構成されていることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記複数部材構成型枠(1)の外面の上に電極(2a、2b)が配置され、前記複数部材構成型枠(1)が部分的に非電導性の素材から製造されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つのノズル(D)が電極(2a、2b)として構成されていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記複数部材構成型枠(1)の部材間を電気的に絶縁するための手段(6)が配置されることを特徴とする請求項9〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
1つ以上のノズル(D)の上流側において繊維配向装置(10)が前置されていることを特徴とする請求項9〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記繊維配向装置(10)が、繊維(F1、F2)を摩擦しながら対向する壁(14)に沿って案内する可動式搬送ユニット(13)を有することを特徴とする請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−80188(P2011−80188A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225115(P2010−225115)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(599098714)ロベルト・ビュルクレ・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BUERKLE GMBH
【住所又は居所原語表記】STUTTGARTER STRASSE 123, D‐72250 FREUDENSTADT, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】