説明

繊維組織中の欠陥を検出する方法及び装置

本発明は、繊維組織(2)中の欠陥を検出する方法であって、繊維組織から信号が誘導され、繊維組織からの信号が少なくとも所定のパラメータで処理されるもの、及び繊維組織(2)中の欠陥を検出する装置であって、センサ、処理装置及び入/出力装置(11)を持ち、処理装置が、センサ及び入/出力装置と接続され、かつセンサにより繊維組織において検出される信号を少なくとも所定のパラメータで処理するように構成されかつ配置されて、繊維組織に存在する欠陥を示す出力信号を発生するものに関する。繊維組織中の欠陥を検出する方法及び装置のパラメータを、欠陥検出のため、前に置かれる特定の繊維組織に特に簡単にかつ速やかに合わせるため、所定のパラメータの物理的データ媒体(23)がセンサの前に置かれ、センサが物理的データ媒体の所定のパラメータを読取るように構成されかつ配置されているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維組織中の欠陥を検出する方法であって、繊維組織から信号が誘導され、繊維組織からの信号が少なくとも所定のパラメータで処理されるもの、及び繊維組織中の欠陥を検出する装置であって、センサ、処理装置及び入/出力装置を持ち、処理装置が、センサ及び入/出力装置と接続され、かつセンサにより繊維組織において検出される信号を少なくとも所定のパラメータで処理するように構成されかつ配置されて、繊維組織に存在する欠陥を示す出力信号を発生するものに関する。
【0002】
繊維組織中の欠陥は種々の仕方で生じる可能性がある。例として繊維組織の物理的構造の変化、色変化、欠陥のある糸、繊維組織へ持ち込まれているまちがった寸法を持つ個々の糸、糸又は繊維組織中の異物等があげられる。欠陥は通常繊維組織の現象像を乱し、このような繊維組織を前に置かれる観察者にとって大抵は明らかである。従ってこのような欠陥は望ましくなく、できるだけ速く除去されるようにする。
【背景技術】
【0003】
このような方法及び装置は国際公開第98/08080号から既に公知であり、繊維組織から撮影される画像が輝度に変換される。このような値は神経回路網として構成されるフィルタへ供給される。センサ又はカメラのちょうど前に置かれる繊維組織にフィルタパラメータを次第に合わせるため、学習段階が導入され、繊維組織にある異なる種類の欠陥及び繊維組織の欠陥のない部分が、この学習段階の間センサの前に置かれる。本来の欠陥検出の前に行われるこの過程中に、欠陥のパラメータが次第に合わされる。この過程はフィルタに対する学習段階とみなされる。学習段階中に、正しいものとみなされる出力信号が装置へ入力され、それからこの装置が入力信号を正しい出力信号と比較して、規則正しい処理のために必要とされるパラメータを得る。
【0004】
この公知の方法及び装置により、欠陥検出のため新しい織物又は面組織が導入される毎に、このような学習段階を行わねばならない。この過程は多くの時間を必要とし、この時間中に、通常の試験のための試験装置を使用することは不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許請求の範囲に記載されているように本発明は、これらの欠点を克服する。本発明は、繊維組織中の欠陥を検出する方法及び装置のパラメータを、欠陥検出のため前に置かれる特定の繊維組織に特に簡単かつ速やかに合わせる、という課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明の方法により解決され、特定の繊維組織に方法及び装置を合わせるための所定のパラメータが、読取り可能な表示例えば数及び/又はグラフの形で物理的データ媒体に記憶される。このデータ媒体はセンサの前に置かれ、センサがデータ媒体から数及び/又はグラフの表示を読取り、従ってパラメータを入力する。これらのパラメータは処理装置のメモリに記憶される。それから通常の動作のために、繊維組織がセンサの前に置かれて検査される。センサはこの繊維組織の信号又は画像を検出して、処理装置へ与える。この処理装置は信号又は画像を処理し、そのために規定されたパラメータを利用し、場合によってはメモリに記憶されておりかつ前もって物理的データ媒体から読出された適合可能なパラメータも利用する。
【0007】
本発明によれば、装置はセンサ、処理装置及び入/出力装置を持ち、処理装置がセンサ及び入/出力装置と接続され、センサにより繊維組織において検出される信号を少なくとも所定のパラメータで処理するように構成されかつ配置されて、繊維組織に存在する欠陥を表示する出力信号を発生する。センサは、所定のパラメータを数又はグラフの形で物理的データ媒体から読取るように構成されかつ配置され、データ媒体は命令付きシートとすることができ、センサの前に置くことができるように構成されている。センサは、検査すべき繊維組織から信号を検出しかつ物理的データ媒体から数又はグラフの形の所定のパラメータを読取ることができるただ1つのセンサとして構成されているのがよい。物理的データ媒体には、それぞれ異なる表示のために異なる区域を設けることができる。繊維組織からの信号を処理する際使用されるパラメータを記憶するための区域が設けられるようにする。
【0008】
本発明により得られる利点は、特に、検査装置のパラメータを合わせる過程が非常に僅かな時間しか必要としないことである。従って新しい繊維組織が検査のために設けられる時、装置の通常の動作が長い時間中断されることはない。更に装置への所定のパラメータの入力は非常に簡単であり、操作を習得した操作員によって行うことができる。例えば命令付きシート又はカードのような物理的データ媒体の準備は、装置とは別個に、例えば計算機(パソコン)、スキャナ、プリンタ等のような公知の機器で作業できる専門家によって行うことができる。
【0009】
例により添付図面を参照して本発明が以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、公知のように織物2のような繊維組織を織る機構1の一部を示している。織物2中の欠陥を検出する装置3は機械1に取付けられ、機械1にある織物2のなるべく全幅にわたって延びている。織物2は、矢印4により示される方向に動く。装置3は、装置3の運転を開始するキー6及び装置の運転に関連する通報用の表示装置7を持つ小さい入/出力装置5も含んでいる。
【0011】
図2は装置3の要素の概略図を示している。センサ8は、織物、布、不織布又は類似の繊維組織であってもよい繊維組織9の近くに示されている。処理装置10は、それぞれ1つのバス12及び13を介してセンサ8及び入/出力装置11に接続されている。処理装置10はメモリ14、入力インタフェース15及びプロセッサ16を含んでいる。入力インタフェース15は、バス12を介してセンサ8に接続されている。処理装置10のこれらの要素の間のデータの伝送は、特に矢印17,18,19で示すように行わなくてもよい。センサ8はなるべくCCDカメラとして、CIS(密着型イメージセンサ)として、又は異なるように画像センサとして構成されている。センサ8が繊維組織9から誘導されるアナログ信号を発生する場合、アナログ/ディジタル変換器20を設けることもできる。センサ8は、検査すべき繊維組織9又はセンサ8の前に置かれる異なる種類の物理的データ媒体23から信号を読取ることができる。別の構成によれば、センサ8は、限られた範囲21にわたって延びかつこの範囲21の前に置かれる物理的データ媒体23からの信号を読取るように構成されている特別なセンサ8aを含むこともできる。処理装置10は、検査される繊維組織に存在する欠陥を表示する出力信号を出力するための出力端35としての導線又はバスも持っている。
【0012】
図3は、図1に示されているような装置の一部の拡大図を示している。繊維2及びキー6と表示装置7を持つ入/出力装置5のような公知の要素が再び認められる。装置3の範囲21には、装置3用の命令媒体としての1枚の紙、1片の織物又はプラスチックのような物理的データ媒体23を導入するための引込み口22が設けられている。このような命令媒体は、手で引込み口22へ供給するか、又は織物2に取付け、従って引込み口22を利用することなく導入することができる。
【0013】
図4は、複数の範囲24,25,26に分割できるこのようなデータ媒体23又は命令媒体の1つの側を示し、各範囲は異なる種類の情報を含んでいる。例えば範囲24は、人間の眼で読取り可能な情報を含むことができる。このような情報は装置の操作者により読取られ、繊維組織の特別な種類、顧客、時間、機械等に関係づけることができる。範囲25は、ここでは明らかに織物のような繊維組織の特定の種類、欠陥の種類、先行する取扱いについての情報を含むことができる。範囲25は、センサ8により読取ることができる命令を含むこともできる。範囲25は、プロセッサ16(図2)に対して規定されているパラメータについての数又はグラフの情報を含むことができる。例えば画像を持つ更に別の範囲も設けることができる。このような画像は繊維組織にある異なる種類の欠陥も示すことができる。
【0014】
図5は、例えば図4に示すような物理的データ媒体23を提供するために使用できる可能な機器を示している。この図には、プリンタ28及びスキャナ29に接続されている計算機(PC)27が認められる。もちろん計算機27は主装置3、ディスプレイ31、キーボード32及びマウス33も含んでいる。
【0015】
運転の際例えば1片の織物2のような特定の繊維組織の検査を開始する前に、物理的データ媒体23を準備せねばならない。このデータ媒体は、命令付きシート、又はこの織物2及び織物から得られるデータの処理の際使用されるパラメータについての情報を持つ他のメモリ手段であってもよい。データを持つ物理的データ媒体23は、例えば装置3の製造者により製造されるか又は装備される。装置3の開発中又は製造前の最初の実験中に、既知の生じ得る欠陥、繊維組織の既知の種類及び使用されるセンサの特性を考慮することによって、所定のパラメータを決定することが可能である。これらの所定のパラメータが一旦わかっていると、これらが1組の物理的データ媒体23に記憶される。このような組は、与えられた機械で又は特定の顧客により製造可能な繊維組織の最大又はすべての可能な種類のためにそれぞれ1つの物理的データ媒体を含むことができる。
【0016】
別の可能性は、図5に示されているような装置を、与えられた機械例えば織械の操作員が利用できるようにすることである。所定のパラメータを決定するため、例えば1片の織物2がスキャナ29上に置かれ、そこで走査され、結果が計算機27へ伝送される計算機27は、使用される糸の寸法、糸が設けられる密度、糸又はグレースケール値、柄又は意匠等のような織物の構成についての情報を含むことができる。織物2からの信号又は画像を検査するために装置3が使用する原理又はアルゴリズムは既知であり、プログラムとしてこの計算機27に記憶されていることを前提とする。このようなプログラムは、織物2中の欠陥の検出の際使用される閾値又は他の基準の値と共に、主装置30に記憶することができる。国際公開第98/08080号及び第00/06823号は、織物からの信号の処理方法、及び織物又は他の繊維組織中の許容できる欠陥と許容できない欠陥との間の限界を決定するため閾値を決定する方法を開示している。主装置30には、検査アルゴリズムを使用する際及び欠陥の検出の際注意せねばならない限界値の決定のために必要な値が記憶されている。記憶すべき値の上述したこれらの種類は実際に公知であり、従ってこれ以上説明されない。
【0017】
これらの入力及び場合によってはキーボード32を介して与えられる別の入力に基いて、計算機27においてプログラムが実行され、その結果として、例えば命令付きシート23のような物理的データ媒体に記憶されるデータを供給する。このシートには、処理装置10が必要としかつ装置3のセンサ8により読取ることができる情報が記憶されている。入/出力装置5にあるキー6は、通常の検査のための作動状態と、センサ8により物理的データ媒体23から読取られた情報を処理装置10のメモリ14へロードするための作動状態との間で、装置を切換えるのに役立つ。さて図2を参照すると、ローディングの際入力インタフェース15が、大体においてパラメータの値から成る情報をバス12からメモリ14へ矢印で示すようにロードすると言うことができる。これに反し入力インタフェース15は、通常の作動状態で、バス12から矢印19で示すようにプロセッサ16へデータを移す。このような場合移されるデータは、センサ又はカメラ8が出力するような色又はグレーレベルの種々の値を持つ画素を表わすか、又はデータが赤外線又は他の波長により発生可能な別の出力を表わすこともできる。図2に示すように作動状態の間の切換えは、入/出力装置11からプロセッサ16への命令により開始される。
【0018】
織物中の欠陥が検出されると、それに反応する複数の可能性がある。その1つは、織物1を停止させることである。他の可能性は、表示装置7に表示するか、両者を組合わせることである。検出される欠陥を単に数えることもできる。
【0019】
物理的データ媒体又はシート28の範囲26(図4)に記憶されているパラメータの典型的な値は、フィルタ特性を決定する値、閾値のための種々の値であり、このような閾値は、前に置かれる織物、編物又は不織布の構造に応じて異なることができる。
【0020】
範囲25(図4)において、縦糸及び横糸、欠陥、しみについての情報及び更に決定すべき他の情報(TBD)を作ることができる。このような情報は、操作者が手で入力することができる。従って範囲25において、鉛筆でX印を付けることができる領域35のような複数の領域が検出される。範囲25の領域に存在するか又は存在しないX印は、装置3に対する命令の群を形成する。例えば領域35にあるX印は、10〜20cmの長さを持つ縦糸中の欠陥は考慮すべきでないか、又は付加的な段階で特別に処理されるべきであることを、装置3に教えることができる。範囲25に記憶されている情報は、必ずしも検出過程で利用されなくてもよいが、このような情報が検出された欠陥に反応するのに寄与する次の段階で利用されるようにする。例えばこれらの情報は、このような反応がどれだけ速くなければならないか、又は欠陥についての情報がどこへまず向けられねばならないか、又は検出された欠陥についての統計が作られるべきか、またどのように作られるべきかを、規定することができる。
【0021】
既に説明されかつなるべくシート、紙又はプラスチックから成る物理的データ媒体23は、情報の運搬のため、クレジットカード又はいわゆるスマートカード又は他の電子記憶媒体34のように構成することができる。このような場合プリンタ28は、カード書込み機又は電子的に記憶されている情報を出力する別の装置に代えることができ、情報を図に示してないが見えないようにすることができる。この場合物理的データ媒体34にある情報は、検査される繊維組織を表わすように構成されている普通のセンサ8により読取ることができず、装置3なるべく入/出力装置5にある固有のセンサ8aが必要である。この場合装置5は、クレジットカード又は他の手段のように構成されかつ中へ導入されることができる物理的データ媒体34から読取るか又は場合によってはそれへ書込むため、特別なインタフェース又は接続部を含んでいる。物理的データ媒体34は、装置3又は5が記録したデータを記憶できるように、構成することもできる。データ媒体は、例えば作動状態において求められた情報又は結果を記憶することができる。このような情報は、欠陥の種類、欠陥の位置及び/又は欠陥の数に関係することができ、物理的データ媒体が図5に示す装置へ再び導入される時、例えば出力される報告のような書類を刷り上げるために用いることができる。記憶されている情報は、人間の眼により物理的データ媒体23から読取ることができる形でも出力することができる。例えば情報をメモリチップへ読込むかロードする適当な機器によりスキャナ29を代えることによって、図5に示されている装置は、電子記憶媒体34を作成するように構成されかつ配置されることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による装置の斜視図を示す。
【図2】図1による装置の一部の概略図を示す。
【図3】図1による装置の詳細図を示す。
【図4】所定のパラメータを入力するために使用されるような物理的データ媒体の図を示す。
【図5】本発明に関連して利用可能な別の機器の図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維組織(2,9)中の欠陥を検出する方法であって、繊維組織から信号が誘導され、繊維組織からの信号が少なくとも所定のパラメータで処理されるものにおいて、
所定のパラメータが読取り可能な表示で物理的データ媒体(23)に記録され、
物理的データ媒体からパラメータが読取られ、繊維組織の信号を処理する際使用するため記憶され、
繊維組織(2,9)が検査のため前に置かれ、
繊維組織から信号が誘導され、
繊維組織(2,9)からの信号が、物理的データ媒体(23)からの記憶されているパラメータで処理される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
パラメータが数又はグラフの形で物理的データ媒体に記憶されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
繊維組織(2,9)中の欠陥を検出する装置であって、
センサ(8)、処理装置(10)及び入/出力装置(11)を持ち、
処理装置が、センサ及び入/出力装置と接続され、かつセンサにより繊維組織において検出される信号を少なくとも所定のパラメータで処理するように構成されかつ配置されて、繊維組織に存在する欠陥を示す出力信号を発生するものにおいて、
所定のパラメータの物理的データ媒体(23)がセンサの前に置かれ、センサ(8,8a)が物理的データ媒体の所定のパラメータを読取るように構成されかつ配置されている、ことを特徴とする装置。
【請求項4】
処理装置(10)が計算機(16)、センサ(8,8a)に接続される入力インタフェース(16)、及びセンサにより読取られる所定のパラメータを記憶するメモリ(14)を持っていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
センサ(8,8a)が、検査すべき繊維組織(2,9)から信号を検出しかつ物理的データ媒体(23)から所定のパラメータを読取ることができるただ1つのセンサとして構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
物理的データ媒体(23)が命令付きシートであることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
物理的データ媒体(23)が電子記憶媒体であることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
異なる種類の情報用の異なる区域(24,25,26)が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の装置に使用される物理的データ媒体。
【請求項9】
パラメータを記憶するための区域(26)が設けられて、繊維組織からの信号の処理の際使用されることを特徴とする、請求項7に記載の物理的データ媒体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−513327(P2006−513327A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565874(P2004−565874)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/CH2003/000820
【国際公開番号】WO2004/063446
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(503169552)ウステル・テヒノロジーズ・アクチエンゲゼルシヤフト (37)
【Fターム(参考)】