説明

繊維製品の漂白洗浄方法

【課題】手洗いにより繊維製品を漂白洗浄する際に、より高い漂白洗浄効果が得られる漂白方法を提供する。
【解決手段】(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー10〜1500ppm、(b)過酸化水素50〜10000ppm、及び水を含有するpHが7〜11の漂白洗浄液を用いて繊維製品の漂白洗浄を行う、繊維製品の漂白洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の漂白洗浄方法及びこれに用いる漂白洗浄液、並びに該漂白洗浄液の調製に用いられる液体又は粉末の漂白洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用洗剤による洗濯だけでは落ちない汚れ、ニオイがある場合、過酸化水素を含む液体漂白剤を使って、漂白が行われる。
【0003】
漂白剤の使用方法としては、生活情報ハンドブック「清潔な暮らしの科学(生活編)」発行日1994年8月20日、編集、発行/花王生活科学研究所の73項〜78項の「漂白」に記載されている洗濯機で洗剤と一緒に使う方法、原液をかけてから(塗布)洗濯する方法、つけ置きする方法が一般的である。また、洗剤においては、同文献の70項〜73項に記載の「手洗い」方法があるが漂白剤使用時には行わないのが一般的である。これは過酸化水素が皮膚に対して刺激があるためであり、トイレタリー分野においては技術常識である。しかしながら、漂白剤を使用し、手洗いすると非常に高い漂白効果が期待されるため、漂白剤系での手洗い方法が強く求められている。
【0004】
特許文献1には特定の高分子化合物を含有する手洗い用洗剤組成物が記載されており、同文献には過酸化水素放出化合物である過炭酸ナトリウムなどの無機化酸化物を含有できることが記載されている。また、特許文献2には特定の高分子化合物を含有する、粘度安定性に優れた液体漂白剤組成物が記載されている。
【特許文献1】国際公開第2005/078059号パンフレット
【特許文献2】特開2005−170983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、「手肌に対する刺激」より過酸化水素量を制限することが示されており、手洗い処理の際に過酸化水素濃度を高めてより高い漂白洗浄効果を得るという示唆はない。特許文献2も手洗い処理の観点から、より高い漂白洗浄効果を得ることは言及されていない。
【0006】
本発明の課題は、繊維製品を漂白洗浄、特に手洗いにより漂白洗浄する際に、より高い漂白洗浄効果が得られる漂白方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー10〜1500ppm、(b)過酸化水素50〜10000ppm、及び水を含有するpHが7〜11の漂白洗浄液を用いて繊維製品の漂白洗浄を行う、繊維製品の漂白洗浄方法に関する。又、特に繊維製品を手洗いする、繊維製品の漂白洗浄方法に関する。
【0008】
また、本発明は、(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー10〜1500ppm、(b)過酸化水素50〜10000ppm、及び水を含有し、20℃でのpHが7〜11である、繊維製品用漂白洗浄液に関する。
【0009】
また、本発明は、(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマーを0.1〜5質量%、(b)過酸化水素を0.1〜15質量%含有し、水により希釈して上記本発明の漂白洗浄液として使用される、液体漂白洗浄剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー〔以下、(a)成分という〕を0.1〜30質量%、(b’)水中で過酸化水素を放出する無機塩〔以下、(b’)成分という〕を3〜60質量%、(c)アルカリ剤〔以下、(c)成分という〕を0.1〜40質量%含有し、水により希釈して上記本発明の漂白洗浄液として使用される、粉末漂白洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、漂白洗浄、特に手洗いにより、より高い漂白効果が得られる繊維製品の漂白洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<(a)成分>
本発明では、(a)成分として、平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマーが用いられる。
【0013】
〔曳糸性の定義〕
ここで、曳糸性とは、物体の伸張特性が現れる、所謂、「糸を曳く」性質であり、例えば「納豆の糸曳き」等がその顕著な例として挙げられる。
曳糸性は液状組成物を低速度で滴下あるいはその一端を保持して伸張した際に、破断して液滴を形成することなく連続した糸状構造体を呈する性質であり、例えば「動植物の粘液の糸曳き」等が例として挙げられる。ちなみに曳糸性は液状組成物の弾性的緩和現象のひとつであり、表面張力や粘度とは全く独立の物性であることが知られている。ここで、通常のポリマー溶液であっても、前述のように例えば基剤濃度が100g/L以上の高濃度であれば、上記の曳糸性挙動を呈することはしばしばあるが、懸かる系は極めて粘度が高く、ポリマー溶液は著しく流動性に欠ける。本発明でいう曳糸性とは、特殊な有機ポリマーの水系液状組成物が、極めて稀薄な濃度下で高い流動性を保ちながら発現し得る曳糸性を指す。
【0014】
〔有機ポリマーの曳糸性の定義〕
本発明でいう曳糸性を有する有機ポリマー(以下、曳糸性有機ポリマーという)は、その水溶液が前記の曳糸性を呈する、有機ポリマーのことである。この曳糸性有機ポリマーは、一般に、高分子量の有機高分子が発現する所謂「増粘性有機ポリマー」とは異なる。
本発明に於いて曳糸性有機ポリマーは、好ましくはその、濃度30.0g/L以下の水溶液が曳糸性を呈する有機ポリマーであり、より好ましくはその、濃度10g/L以下の水溶液が曳糸性を呈する有機ポリマーであり、さらに好ましくはその濃度5g/L以下の水溶液が曳糸性を呈する有機ポリマーである。
【0015】
本発明において、有機ポリマーの曳糸性の有無は、以下の方法で判定する。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.07質量%と無水炭酸ナトリウム0.07質量%を含有する水溶液に、その水溶液粘度が約500mPa・s、約200mPa・s、約100mPa・s、約20mPa・s(B型粘度計、0°DH、60r/min、25℃で測定した値)となるポリマー濃度で有機ポリマーを添加した混合水溶液を調製し、得られた混合水溶液の曳糸性を下記〔曳糸性判定法〕に準じた方法で判定し、いずれかの粘度で曳糸性を有する場合、曳糸性有機ポリマーとする。
【0016】
〔曳糸性判定法〕
先端内径1mmのパスツールピペット(ガラス、例えばASAHITECHNO GLASS、IK−PAS−5P)より静かに滴下操作をした際に、糸を曳いた水溶液を、本発明において曳糸性を呈する水溶液とする。長く糸を曳く溶液を強い(又は高い)曳糸性を持つ水溶液とする。水溶液は25℃で、よく攪拌して判定に用い、少なくともパスツールピペットの先端を落下地点から5mm離して滴下操作を行うこととする。曳糸性の強い水溶液に関しては、より高い位置から滴下操作を行うと、より確認しやすい。滴下操作は複数回行って確認しても構わない。通常、滴下操作の際に確認される「糸」は、1mmより幅が細いものである。本物性については、サーモハーケ社伸張粘度測定装置CaBER1(Capillary Breakup Extensional Rheometer)のような機器により測定することもできる。
【0017】
本発明の曳糸性有機ポリマーは、漂白剤組成物や洗剤組成物に通常使用されないものである。曳糸性有機ポリマーとしては、架橋型のポリマーと非架橋型ポリマーが挙げられ、中でも、非架橋型のポリマーほど高曳糸性であり、本発明において好ましい。
【0018】
曳糸性有機ポリマーとして、具体的には、エチレンオキサイド、アクリル酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチルメタクリル酸、ビニルアルコール、グルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸からなる群から選ばれる一種以上の単量体に由来する重合体又は共重合体、また糖骨格を有する多糖類として、澱粉、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒアルロン酸等が挙げられる。中でも、エチレンオキサイド、アクリル酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチルメタクリル酸、ビニルアルコール、グルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸からなる群から選ばれる一種以上の単量体に由来する重合体又は共重合体、また糖骨格を有する多糖類として、澱粉、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が好ましい。アクリル酸重合体又はその塩、アクリルアミド重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸重合体又はその塩、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体又はその塩、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。経済性等の観点から、アクリル酸重合体又はその塩、アクリルアミド重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸重合体又はその塩、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体又はその塩、ポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0019】
ここで、ポリエチレンオキサイドは、本発明の曳糸性ポリマーとして高いすべり性を発揮する。しかしながら、ポリエチレンオキサイドは、洗濯液中で(ノニオン界面活性剤である)ポリオキシエチレンアルキルエーテルと共存すると、特異的な相互作用により、そのすべり性付与能を失う。従って、本発明のすべり性改善方法において、曳糸性有機ポリマーがポリエチレンオキサイドである場合洗濯液はポリオキシエチレンアルキルエーテルを実質的に含有しない方が好ましい。好ましくは、洗濯液はポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを実質的に含有しないことである。ここで実質的に含有しないとは、洗濯液中の濃度として、100mg/L以下である。70mg/L以下がより好ましく、50mg/L以下がより好ましく、30mg/Lがより好ましく、洗濯液に含有されないことが最も好ましい。また、ポリエチレンオキサイドに対する質量比として、12倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましく、5倍以下がより好ましく、1倍以下がより好ましく、洗濯液に含有されないことが最も好ましい。
【0020】
なお、液体洗剤等の増粘剤として用いられることの多い架橋型アクリル系ポリマー(住友精化社製アクペック、BFグッドリッチ社製カーボポール等)は、その水溶液がチキソトロピー性を示すほど増粘した系であっても曳糸性が抑制されるものであり、本発明においては曳糸性をもたない有機ポリマーと判定される。
【0021】
本発明では曳糸性有機ポリマーとして、平均分子量が150万以上の水溶性有機ポリマーが好ましく用いられる。平均分子量が大きい有機ポリマーほど、より少量で目的とする「すべり性」を実現することができる。平均分子量が150万以上の曳糸性有機ポリマーであれば、洗濯液のような低い基質濃度においても十分な皮膚保護性を付与することができる。より希薄濃度でも十分な「皮膚保護性」を実現するという点から、平均分子量は200万以上が好ましく、250万以上がより好ましく、300万以上がさらに好ましい。一方、溶解性の観点からは、平均分子量は、10000万以下が好ましく、3000万以下がより好ましく、2000万以下がさらに好ましい。
【0022】
本発明の曳糸性有機ポリマーとしては、構成モノマーの60モル%以上がスルホン酸基又はその塩型の基、又は硫酸基又はその塩型の基を有するポリマー(以下、スルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーという)が挙げられる。スルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーは、ビニル系重合体であっても良いし、縮合重合系ポリマーであっても良いし、ポリエーテル系ポリマーであっても良い。
【0023】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーがビニル系重合体である場合、モノマーユニットであるスルホン酸基及び/又はその塩型の基、及び/又は硫酸基及び/又はその塩型の基を有するビニル系構成モノマーとしては例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−アルキル(炭素数1〜4)プロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニル硫酸、等のモノマー由来の基等が挙げられる。中でも、重合性が高く、高分子量体を得やすいことから、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−アルキル(炭素数1〜4)プロパンスルホン酸、及びスチレンスルホン酸由来の基が好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びスチレンスルホン酸由来の基がさらに好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸由来の基がさらに好ましい。
これらの構成モノマーは、酸型で用いても良いし、そのスルホン酸基及び/又は硫酸基の一部、又は全てを塩基で中和して塩型の基にして用いても良い。
【0024】
スルホン酸基又は硫酸基の塩型の基を形成する対イオンとしては、金属イオン、アンモニウムイオン、総炭素数1〜22のアルキルもしくはアルケニルアンモニウムイオン、炭素数1〜22のアルキル若しくはアルケニル置換ピリジニウムイオン、総炭素数1〜22のアルカノールアンモニウムイオンが挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオンの様なアルカリ金属のイオン、又はアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがさらに好ましい。
【0025】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーにおいて、前記構成モノマーは、単独で又は2種類以上を併用してもよく、構成モノマーが2種以上である場合、これらの構成モノマーの配置としては、特に限定はなく、ランダム配置でも交互配置でもブロック配置でもよい。
【0026】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーがビニル系重合体である場合、ビニル系重合体の合成法は特に限定されず、公知の方法を選択できる。例えば、スルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を含有するビニル系モノマーを単独重合しても良いし、これとスルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を含有しない他のモノマーとを前者のモル分率が60モル%以上となる比率で共重合しても良い。あるいはまた、既存の任意のポリマーに、構成モノマーの60モル%以上の比率でスルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を導入して用いても良い。
【0027】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーがビニル系重合体である場合、ビニル系重合体をスルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を含有するモノマーの単独又は共重合によって得る方法、重合様式としては、バルク重合や沈澱重合をおこなうことも可能ではあるが、よりすべり性付与能の高いポリマーを得るため、また重合の制御の容易さの点から、水溶液重合、又は逆相懸濁重合法にて合成することが好ましい。
【0028】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーがビニル系重合体である場合、ビニル系重合体を合成するにあたり、重合法はラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、いかなる方法によっても良いが、ビニル系重合体がラジカル重合により合成する場合はラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤を用いても良いし、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を用いても良いし、これらと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス型開始剤系として用いても良いし、紫外線や電子線、γ線等を照射して重合を開始しても良い。なお、これらの重合開始剤の使用量は前記ビニル系モノマーに対して0.0001〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.001〜1.5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%である。
【0029】
また、ビニル系重合体がアニオン重合により合成する場合には、重合開始剤としてナフチルナトリウム等のアルカリ金属の芳香族錯体やリチウム、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、メチルリチウム又はフルオレニルリチウム等の有機リチウム化合物(アルキルリチウム化合物)を用いても良いし、又は有機マグネシウム化合物、好適にはフェニルマグネシウムブロマイド又はブチルマグネシウムブロマイド等のグリニヤール化合物、又はジベンジルマグネシウム、ジブチルマグネシウム又はベンジルピコリルマグネシウム等のジオルガノマグネシウム化合物を用いても良い。なお、これらの重合開始剤の使用量は前記ビニル系モノマーに対して0.0001〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.001〜1.5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%である。
【0030】
一方、ビニル系重合体がカチオン重合により合成する場合には、重合開始剤としてトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のブレンステッド酸を用いても良いし、水/三フッ化ホウ素、水/三塩化ホウ素、水/塩化アルミニウム、水/臭化アルミニウム、水/四塩化錫、トリクロロ酢酸/四塩化錫、塩化水素/三塩化ホウ素又は塩化水素/三塩化アルミニウム等のブレンステッド酸/ルイス酸混合物を用いても良く、またトリチルカチオン、トロピリウムカチオン等の有機カチオン類、又は塩化アセチル/ヘキサフルオロアンチモン酸銀又は塩化アセチル/過塩素酸銀等のオキソカルベニウムイオンを生じる混合物が用いられる。なお、これらの重合開始剤の使用量は前記ビニル系モノマーに対して0.0001〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.001〜1.5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%である。
【0031】
また、ビニル系重合体を、スルホン酸基(及び/又はその塩型の基)及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を有するモノマーと共重合しうる他のモノマーとの共重合体として得る場合、スルホン酸基(及び/又はその塩型の基)及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を有する構成モノマー以外の構成モノマーに関し、スルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーが水溶性を維持できる限り、特に限定はない。そのような共重合性モノマーとして以下のものを例示できる。
【0032】
(メタ)アクリル酸[(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの混合物のことをいう]及びその塩類、スチレンカルボン酸及びその塩類、マレイン酸系モノマー[無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、並びにマレイン酸モノアミド又はそれらの2種類以上からなる混合物]及びその塩類並びにイタコン酸及びその塩類等であり、これらから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのうち、共重合が容易であることから、(メタ)アクリル酸及びその塩類、スチレンカルボン酸及びその塩類が好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩類がより好ましい。ここで塩類を形成する対イオンとしては、前記の対イオンであればよい。
【0033】
また、リン酸基(又はその塩型の基)又はホスホン酸基(又はその塩型の基)を有するビニル系構成モノマーも共重合しても良い。例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜4)リン酸、ビニルホスホン酸等が挙げられる。ここで塩類を形成する対イオンとしては、前記の対イオンであればよい。
【0034】
さらに、以下のモノマーも共重合してもよい。
1)無置換、あるいは窒素上の水素原子を炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和のアルキル基又はアラルキル基で置換した(メタ)アクリルアミド類。例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が好ましい。
【0035】
2)(メタ)アクリル酸エステル類。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。
【0036】
また、本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーは、架橋体であっても良い。但し、架橋の程度としては、ゲル化を生じさせない程度が好ましい。即ち、ポリマー重合時に使用する架橋剤量としては構成モノマー中0〜0.001モル%が好ましい。
【0037】
架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル化合物;N−メチルアリルアクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸等のアクリルアミド化合物;ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルエチレン尿素等のジビニル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルアンモニウム塩、ペンタエリスリトールのアリルエーテル化体、分子中に少なくとも2個のアリルエーテル単位を有するスクローゼのアリルエーテル化体等のポリアリル化合物;ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0038】
これらの架橋剤の中では、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルが好ましい。
【0039】
また、上記架橋性モノマーとの共重合以外に1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン等のエポキシ化合物を用いる反応を用いて架橋しても良いし、また、重合時の自己架橋、ポリマー同士の架橋反応、放射線の照射等の方法による共有結合性架橋、金属イオン等を介したイオン結合性架橋、水素結合を介した架橋、部分的な結晶構造に由来した架橋、ヘリックス構造に由来した架橋等、何れの架橋法を行っても良い。
【0040】
また、本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーが非ビニル系重合体である場合、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミドといった縮合重合系ポリマーであっても良いし、ポリエーテル系ポリマーであっても良い。あるいはまた、既存の任意の縮合重合系ポリマー、又はポリエーテル系ポリマーに、構成モノマーの60モル%以上の比率でスルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、及び/又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を導入して用いても良い。
【0041】
かかるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーは、洗剤が扱う代表的な汚れ粒子である、泥やすすといった固体粒子を考えた場合、洗濯液中で、これらのいずれの汚れ粒子とも親和性が低いと考えられる。このため、泥、すす、いずれの粒子が洗濯浴中に存在する場合であっても、該ポリマーの高重合体がすべり性を発現できるような濃度で洗濯液中に存在する場合において、複数の粒子に同時に吸着して凝集の原因とならないと考えられ、従って繊維と粒子のバインダーとなって汚れが衣類に再付着しにくい。すなわち本発明の曳糸性有機ポリマーがスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーである場合においては、ポリマーを構成するモノマーの内、これらのスルホン酸系モノマー、硫酸系モノマーのモル分率が多いものほど好ましい。
【0042】
スルホン酸基(及び/又はその塩型の基)、又は硫酸基(及び/又はその塩型の基)を含有する構成モノマーの量は、全構成モノマー中において60モル%以上が好ましく、66モル%以上がより好ましく、85モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。
【0043】
本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーとしては、平均分子量が50万以上の分子が用いられる。平均分子量が大きい分子ほど、より少量で目的とする「すべり性」を実現することができる。平均分子量は150万以上であり、200万以上が好ましく、250万以上がさらに好ましく、300万以上がさらに好ましく、450万以上がさらに好ましく、500万以上がさらに好ましく、600万以上がさらに好ましい。ただし、溶解性の観点からは、平均分子量は、3000万以下が好ましく、2000万以下がより好ましい。
【0044】
また、本発明におけるスルホン酸基及び/又は硫酸基含有ポリマーの物性においても、「すべり性」の発現に好適な物性は、「曳糸性」である。曳糸性の高いポリマーほど、より少量の配合量で「すべり性」を発現させることができる。本発明においては、曳糸性が高いとは、より低濃度の水溶液、及びより低い粘度の水溶液が曳糸性を呈することを意味する。分子量が高く、架橋性の低い直鎖状のポリマーほど曳糸性が高く、良く「すべり性」を発現し、本発明において好ましいポリマーである。
【0045】
〔平均分子量の定義〕
本発明に用いる有機ポリマーの平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)測定により決定できる。標準サンプルにはポリエチレンオキサイド(PEO)を使用し、PEO換算分子量を用いる。なお本発明においては、数平均分子量や重量平均分子量ではなく、GPC溶出曲線の検出強度が最も高い留分のPEO換算値(以下、ピークトップ分子量と言う)をもって、平均分子量とする。即ち、例えば「平均分子量が150万以上の有機ポリマー」とは、そのピークトップ分子量がPEO換算分子量にして150万以上の値を呈する有機ポリマーを示す。
【0046】
〔GPC法測定条件〕
カラムはPW/GMPWXL/GMPWXL(東ソー(株)製)、溶離液に0.2Mリン酸バッファー(KH2PO4、Na2HPO4、pH=7)/CH3CN=9/1(質量比)を用い、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/min、サンプル濃度は1〜100μg/mLとする。検出器は、RALLS(90°光散乱解析計)を用いる。尚、RID(示差屈折計)を用いても平均分子量の概算値は見積もることができる。RIDを用いたGPC分析は、例えば、カラム:GMPWXL+GMPWXL、溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1(質量比)、カラム温度:40℃、流速:0.5mL/min、濃度:0.05mg/mLとして測定する。
【0047】
<(b’)成分>
(b’)成分は、水中で過酸化水素を放出する無機塩であり、(b)成分である過酸化水素の供給源である。(b’)成分は、無機過酸化物が挙げられ、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過燐酸塩、過珪酸塩等が挙げられる。なかでも、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムが好ましい。
【0048】
<漂白洗浄液>
本発明の繊維製品の漂白洗浄方法では、(a)成分10〜1500ppm、(b)成分50〜10000ppm、及び水を含有するpHが7〜11の漂白洗浄液が用いられる。漂白洗浄液中の(a)成分の含有量は、10〜1000ppm、更に50〜10000ppmが好ましい。また、漂白洗浄液中の(b)成分の含有量は、50〜5000ppm、更に100〜5000ppmが好ましい。漂白洗浄液のpHは、9〜11が好ましい。
【0049】
また、漂白洗浄液では、(a)成分と(b)成分の質量比が、(a)/(b)で1/1000〜1/1であることが、洗浄性能と手に対する低刺激性の観点から好ましく、より好ましくは1/500〜1/2、更に好ましくは1/300〜1/10である。
【0050】
本発明に用いられる漂白洗浄液は、(a)成分を0.1〜5質量%、(b)成分を0.1〜15質量%含有する液体漂白洗浄剤組成物を、水により希釈して調製することができる。この液体漂白洗浄剤組成物は20℃でのpHが7〜11であることが好ましい。
【0051】
本発明に用いられる漂白洗浄液は、上記の液体漂白洗浄剤組成物をそのまま或いは水等で希釈して調製することができるが、かかる組成物は、更に(d)多価アルコール系水溶性溶剤及びアルコキシレート系水溶性溶剤から選ばれる水溶性溶剤〔以下、(d)成分という〕を含有することが、手荒れ防止性の観点で好ましい。すなわち、上記の液体漂白洗浄剤組成物に(d)成分を配合しておき、これを希釈して(d)成分を含有する漂白洗浄液を調製することができる。液体漂白洗浄剤組成物は、(d)成分を0.1〜5質量%含有することが好ましい。(d)成分としては、(d2)炭素数2〜12の多価アルコール、(d3)下記の一般式(I)で表される化合物、(d5)下記の一般式(II)で表される化合物が好ましい。
1O[(C24O)x/(C36O)y]R2 (I)
3OCH2CH(OH)CH2OH (II)
〔式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示すが、R1及びR2の双方が水素原子となる場合を除く。xは0〜10の数を、yは0〜10の数を示すが、x及びyの双方が0である場合を除く。(C24O)と(C36O)はランダム付加でもブロック付加でも何れでも良い。R3は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕
【0052】
(d1)の炭素数2〜12の多価アルコールとしては、イソプレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0053】
(d2)の化合物は、一般式(I)において、R1、R2がアルキル基である場合の炭素数は1〜4が特に好ましい。また、一般式(I)中、エチレンオキサイド及びプロピレンオキシドの平均付加モル数のx及びyは、それぞれ0〜10の数である(x及びyの双方が0である場合を除く)が、これらの付加順序は特に限定されず、ランダム付加したものであってもよい。(d3)の化合物の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=2〜3)ポリオキシプロピレン(p=2〜3)グリコールジメチルエーテル(pは平均付加モル数を示す)、ポリオキシエチレン(p=3)グリコールフェニルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等が挙げられる。このうち、洗浄力及び使用感の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=1〜4)グリコールモノフェニルエーテルが好ましい。
【0054】
(d3)の化合物としてはアルキルグリセリルエーテル化合物が好適なものとして例示され、好ましくはR3が炭素数3〜8のアルキル基の化合物である。
【0055】
これらのなかでも、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレン(p=1〜4)モノフェニルエーテルから選ばれる水溶性溶剤が好ましい。
【0056】
また、本発明に用いられる漂白洗浄液は、(a)成分を0.1〜30質量%、(b’)成分を3〜60質量%、(c)アルカリ剤〔以下、(c)成分という〕を0.1〜40質量%含有する粉末漂白洗浄剤組成物を、水により希釈して調製することができる。
【0057】
(c)成分としては、従来知られているアルカリ剤を配合することが好ましい。アルカリ剤の例としては、デンス灰やライト灰と総称される炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにJIS1号、2号、3号珪酸ナトリウム等の非晶質のアルカリ金属珪酸塩、結晶性アルカリ金属珪酸塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。前記粉末漂白洗浄剤組成物中のアルカリ剤の含有量は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、12質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、配合のバランスの観点から、30質量%以下が好ましい。
【0058】
本発明に用いられる漂白洗浄液が(d)成分を含有する場合、(d)成分の漂白洗浄液中の濃度は10〜10000ppmが好ましく、100〜3000ppmがより好ましい。
【0059】
本発明に用いられる漂白洗浄液は、(a)〜(d)成分以外に、漂白剤や漂白洗浄剤に配合される成分を含有することができる。例えば、漂白活性化剤、キレート剤を含有することができる。
【0060】
漂白活性化剤としては、アルカノイル基の炭素数が6〜14のアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、アルカノイル基の炭素数が6〜14のアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる漂白活性化剤が挙げられる。
【0061】
上記漂白活性化剤において、アルカノイル基の炭素数は、好ましくは8〜14、更に好ましくは8〜13である。より具体的に好ましい例としてはオクタノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸等のアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸;オクタノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ノナノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、デカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸等のアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩が挙げられる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。
【0062】
これらの中でも特にノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ノナノイルオキシ−p−ベンゼンカルボン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸及びこれらの塩が漂白効果の点から好ましく、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸及びこの塩が漂白効果の点で最も好ましい。
【0063】
また、漂白活性化剤として、下記一般式(III)で表される有機過酸を用いることもできる。一般式(III)中のnは3〜7が好ましい。
【0064】
【化1】

【0065】
〔式中、nは1〜15の整数、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を表す。〕
【0066】
漂白活性化剤の漂白洗浄液中の濃度は10〜1000ppmが好ましく、50〜800ppmがより好ましい。なかでも、一般式(III)で表される有機過酸の漂白洗浄液中の濃度は10〜1000ppmが好ましく、50〜800ppmがより好ましい。
【0067】
また、キレート剤は、漂白効果を向上させる観点から好ましい成分である。キレート剤としては、(1)フィチン酸等のリン酸系化合物又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、(2)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸およびその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、(3)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、(4)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、(5)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、(6)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸などの有機酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、(7)ゼオライトAに代表されるアルミノケイ酸のアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩、(8)アミノポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、又はポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩を挙げることができる。
【0068】
キレート剤の漂白洗浄液中の濃度は10〜500ppmが好ましく、20〜200ppmがより好ましい。
【0069】
<繊維製品の漂白洗浄方法>
本発明の繊維製品の漂白洗浄方法では、前記特定の漂白洗浄液を用いて、繊維製品の漂白洗浄を行う。洗濯機等による機械洗浄や漬け置きによる洗浄においても漂白洗浄効果は得られるが、特に手洗いが好ましい。
【0070】
繊維製品の手洗いは、例えば、所定容器(バケツ、たらい、洗面器等)内に前記漂白洗浄液を投入し、繊維製品を接触させ、手で擦り合わせることで行われる。予め一定時間浸漬した後、手洗いを行ってもよい。漂白洗浄液の温度は5〜40℃が好ましい。
【0071】
本発明の漂白洗浄方法を行う環境、被洗浄物の種類、被洗浄物の量、漂白洗浄液の量、容器サイズ等は限定されない。
【実施例】
【0072】
〔実施例1〜15及び比較例1〜5〕
表1に示す漂白洗浄液(残部は水である)を用いて、手洗いにより繊維製品を手洗いで漂白洗浄した際の漂白洗浄効果及び手への刺激性を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
<手洗い方法>
25℃に調整した8.9mgCaCO3/Lに相当する2Lの硬水(Ca/Mgモル比7/3)を直径30cm、深さ13cm、容量8.2Lのポリプロピレン製洗面器(ヤザキ製)の中に満たし、表1中の配合成分を含む液体漂白洗浄剤組成物を各成分の濃度が表1の通りとなる量で水中に投入した後、水が洗面器より飛散しない程度に手で攪拌し漂白洗浄液とした。攪拌開始から30秒後に、下記のとおり調製したミートソース汚染布を洗面器の中の漂白洗浄液に十分に濡れるように浸し、10分浸漬した。その後汚染布の1枚目と2枚目の汚れを付着させている面同士を10回こすり合わせる。3枚目と4枚目も同様の処理を行った。その際の手に対する刺激の有無を10人の専用パネラーで評価し、下記の基準で判定した。
判定基準
5…手に刺激を感じた人数が0人。
4…手に刺激を感じた人数が1〜2人。
3…手に刺激を感じた人数が3人。
2…手に刺激を感じた人数が4〜5人。
1…手に刺激を感じた人数が6人以上。
【0074】
その後、乾燥させて、次式により漂白洗浄率を算出した。漂白洗浄率は4枚の平均値とした。溶液のpH調整は水酸化ナトリウム水溶液、硫酸水溶液にて行った。
【0075】
【数1】

【0076】
反射率は日本電色工業(株)製NDR−10DPで460nmフィルターを使用して測定した。
【0077】
(ミートソース汚染布の調製法)
カゴメ(株)製ミートソース(完熟トマトのミートソース/内容量259gの缶詰)の固形分をメッシュ(目開き;500μm)で除去した後、得られた液を煮沸するまで加熱した。この液に木綿金布#2003を浸し、約15分間煮沸した。そのまま火からおろし約2時間程度放置し室温まで冷却した後、布を取りだし、余分に付着している液をへらで除去し、自然乾燥させた。その後プレスし、10cm×10cmの試験布として実験に供した。
【0078】
【表1】

【0079】
(注)表中の成分は以下のものである。
・a−1:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムのホモポリマー(重量平均分子量200万)
・a−2:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムのホモポリマー(重量平均分子量300万)
・a−3:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムのホモポリマー(重量平均分子量620万)
・a−4:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム/アクリル酸=95/5(モル比)のコポリマー(重量平均分子量450万)
・a−5:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム/アクリル酸=95/5(モル比)のコポリマー(重量平均分子量780万)
・a−6:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの架橋ポリマー(重量平均分子量500万)
・a’−1:東レ(株)ポリマーSH200Fluid 100000CS(ジメチルシリコーン系ポリマー、重量平均分子量100万)
・d−1:グリセリン
・d−2:ポリオキシエチレンモノフェニルエーテル(エチレンオキサイド平均付加モル数3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー10〜1500ppm、(b)過酸化水素50〜10000ppm、及び水を含有するpHが7〜11の漂白洗浄液を用いて繊維製品の漂白洗浄を行う、繊維製品の漂白洗浄方法。
【請求項2】
繊維製品を手洗いする、請求項1記載の繊維製品の漂白洗浄方法。
【請求項3】
(a)/(b)の質量比が1/1000〜1/1である請求項1又は2記載の漂白洗浄方法。
【請求項4】
(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマー10〜1500ppm、(b)過酸化水素50〜10000ppm、及び水を含有し、20℃でのpHが7〜11である、繊維製品用漂白洗浄液。
【請求項5】
繊維製品の手洗い処理用に用いられる請求項4記載の繊維製品用漂白洗浄液。
【請求項6】
(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマーを0.1〜5質量%、(b)過酸化水素を0.1〜15質量%含有し、水により希釈して請求項4又は5記載の漂白洗浄液として使用される、液体漂白洗浄剤組成物。
【請求項7】
更に(d)多価アルコール系水溶性溶剤及びアルコキシレート系水溶性溶剤から選ばれる水溶性溶剤を0.1〜5質量%含有する、請求項6記載の液体漂白洗浄剤組成物。
【請求項8】
(a)平均分子量150万以上の曳糸性を有する有機ポリマーを0.1〜30質量%、(b’)水中で過酸化水素を放出する無機塩を3〜60質量%、(c)アルカリ剤を0.1〜40質量%含有し、水により希釈して請求項4又は5記載の漂白洗浄液として使用される、粉末漂白洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−121254(P2010−121254A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298310(P2008−298310)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】