説明

繊維製品処理剤組成物

【課題】ミント系香料を徐放し長時間かけて花粉症等の鼻詰まり症状の緩和効果を与えることができる繊維製品処理剤組成物の提供。
【解決手段】(a)ミント系香料と、(b)4級アンモニウム基及び/又は3級アミノ基を有する特定の化合物(b1)、4級アンモニウム基及び/又は3級アミノ基を有するモノマー由来の構成単位を分子中に特定割合で含有する高分子化合物(b2)及びシリコーン化合物(b3)から選ばれる少なくとも1種と、水を特定割合で含有する繊維製品処理剤組成物、並びに繊維製品処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉症等の鼻詰まり症状を緩和する繊維製品処理剤組成物、及びこの繊維製品処理剤組成物を用いる繊維製品処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症等のアレルギー性鼻炎を持つ人は、各種食品添加物や環境汚染等の複合的要因といわれ、年々増加傾向にある。このようなアレルギー性鼻炎の症状は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりなどとして現れ、従来からこれらの症状を予防、緩和するための各種対処法が試みられている。その対処法として、マスクや飲み薬・点鼻薬が使用されている。一方、ミント系香料は、ガムやのど飴に使用されており、鼻がスースーするなど、鼻詰まりの改善効果が一般的に知られている。衛生用品へのミント系香料の利用技術としては、特許文献1にミント系香料を粒状化又は基体に含浸させて、徐放性抗アレルギー剤又は徐放性抗アレルギー製剤として用いた日常衛生用品が開示されている。一方、繊維製品処理によるアレルギー性鼻炎への対処技術としては、例えば、特許文献2に花粉が繊維製品に付着しにくくなる処理が施された繊維製品が開示されている。しかしながら、日常生活において、特別な衛生用品を用いず恒常的にアレルギー性鼻炎を緩和する技術はいまだに満足できるものはない。
【0003】
【特許文献1】特開2002−370974号公報
【特許文献2】特開2004−346467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
花粉症等のアレルギー性鼻炎の人にとって、その症状であるくしゃみ、鼻水、鼻詰まりを緩和することが望まれている。その対処法として、マスクをすることがあるが、これは、マスクをしている間は効果があるものの、長時間にかけてマスクをすることはわずらわしい。またミント系香料の入ったガムやのど飴の鼻詰まりの改善効果は一時的なものである。
【0005】
本発明の課題は、ミント系香料を徐放し長時間かけて花粉症等の鼻詰まり症状の緩和効果を与えることができる繊維製品処理剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び水を含有し、(a)成分と(b)成分の配合割合(a)/(b)(質量比)が0.0003/1〜50/1である繊維製品処理剤組成物、並びにこの繊維製品処理剤組成物を洗濯時のすすぎの工程で用いる繊維製品処理方法を提供する。
(a)成分:ミント系香料
(b)成分:一般式(1)又は(2)で表される化合物(b1)、4級アンモニウム基及び/又は3級アミノ基を有するモノマー由来の構成単位を分子中に10〜100モル%含有する高分子化合物(b2)、及びシリコーン化合物(b3)から選ばれる少なくとも1種
【0007】
【化2】

【0008】
〔一般式(1)及び(2)中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、エステル基及び/又はアミド基で分断されている総炭素数12〜30の炭化水素基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、少なくとも一つがエステル基及び/又はアミド基で分断されている総炭素数12〜30の炭化水素基であり、R24は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。X-は、陰イオン基である。〕
【発明の効果】
【0009】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、処理した繊維あるいは衣料にミント系香料の高い保留効果を示し、花粉症等の鼻詰まり症状を緩和する効果を付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[(a)成分]
本発明の(a)成分のミント系香料とは、ミント様の香気を有する香料をいう。ミント様の香気を有する香料としては、1−メントン、1−メントール、1−カルボン、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ハッカオイル、ペニーロイヤルオイル、d−プレゴン、ピペリトンが挙げられる。ミント様の香気を嗅ぐことによって花粉症等の鼻詰まり症状の緩和効果を与えることができる。
【0011】
[(b)成分]
本発明の(b)成分は、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物(b1)、4級アンモニウム基及び/又は3級アミノ基を有するモノマー由来の構成単位を分子中に10〜100モル%含有する高分子化合物(b2)、及びシリコーン化合物(b3)から選ばれる少なくとも1種である。
【0012】
本発明で用いられる一般式(1)又は(2)で表される化合物(b1)としては、特に下記一般式(1−1)〜(1−3)で表される化合物及び下記一般式(2−1)〜(2−3)で表される化合物が好適である。
【0013】
【化3】

【0014】
〔式中、R1及びR3はそれぞれ独立に、炭素数12〜26、好ましくは12〜20の炭化水素基である。R5は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はR1−COO(CH2)d−又はR1−CONH(CH2)e−で表される基、好ましくはメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基である。R6は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基である。d及びeはそれぞれ2又は3の数である。Y-は陰イオン、好ましくはハロゲンイオン、硫酸イオン又は炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオンである。〕
【0015】
一般式(1−1)〜(1−3)で表される化合物は、例えば上記好ましいアルキル組成を有する脂肪酸と対応するモノアルキルジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンとの脱水エステル化反応、あるいは好ましいアルキル組成を有する脂肪酸低級アルキル(炭素数1〜3)エステルとモノアルキルジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンとのエステル交換反応等で製造することができる。
【0016】
一般式(2−1)〜(2−3)で表される化合物は、一般式(1−1)〜(1−3)で表される化合物を、ジアルキル硫酸(炭素数1〜3)、ハロゲン化アルキル(炭素数1〜3)から選ばれるアルキル化剤を用いて4級化反応を行うことで製造することができる。
【0017】
脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルは、牛脂、ヒマワリ油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、大豆油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等から選ばれる油脂をケン化し、そのまま、或いは硬化、部分硬化して得られる脂肪酸組成のもの、又は油脂を硬化、部分硬化した後、ケン化して得られる脂肪酸組成のものが好適である。
【0018】
エステル化反応あるいはエステル交換反応における脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルとモノアルキルジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンとのモル比率は、1.4:1〜2.2:1が好ましく、1.6:1〜2.0:1がより好ましい。
【0019】
本発明で用いられる4級アンモニウム基及び/又は3級アミノ基を有するモノマー由来の構成単位(以下モノマー構成単位Aという)を分子中に10〜100モル%含有する高分子化合物(b2)としては、モノマー構成単位Aを分子中に10〜80モル%含有する高分子化合物が好ましく、10〜60モル%含有する高分子化合物がより好ましく、20〜60モル%含有する高分子化合物が特に好ましい。
【0020】
モノマー構成単位Aは、4級アンモニウム基(複数であってもよい)を有するモノマー(以下、モノマーA1という)を重合するか又は3級アミノ基(複数であってもよい)を有するモノマー(以下、モノマーA2という)を重合して得られるモノマー由来の構成単位であってもよく、3級アミノ基を4級化して4級アンモニウム化したものであってもよい。
【0021】
4級アンモニウム基を有するモノマーA1の好ましい例として、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0022】
【化4】

【0023】
〔式中、R1a、R1b及びR1cは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。Zは炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR1g−、−CONHR1g−、−OCOR1g−、−R1h−OCO−R1g−から選ばれる基である。ここでR1g及びR1hは、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R1dは炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR1a1bC=C(R1c)−Z−で表される基である。R1eは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はベンジル基であり、R1fはヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基もしくは硫酸エステル基で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はベンジル基であり、R1fがアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はベンジル基の場合は、nは1で、Y-は陰イオンを示す。また、R1fがカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基を含む場合、nは0で、Y-は存在せず、R1f中のこれらの基は陰イオンとなる。Y-の陰イオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸イオン、ヒドロキシイオンを挙げることができる。〕
【0024】
より具体的に好ましい例としては、アクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N−(ω−アルケニル(炭素数3〜10))−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数3〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩が挙げられ、特にジアリルジメチルアンモニウム塩が良好である。
【0025】
3級アミノ基を有するモノマーA2の好ましい例として、下記一般式(4)で表される化合物を挙げることができる。
【0026】
【化5】

[式中、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e及びZは、前記記載と同じ。]
【0027】
より具体的に好ましい例としてはN,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミノアルキル(炭素数1〜5)アクリレート(又はメタクリレート)、N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミノアルキル(炭素数1〜5)アクリルアミド、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数3〜10))−N−アルキル(炭素数1〜3)アミンが挙げられ、ジアリルメチルアミンが特に好ましい。
【0028】
モノマーA2を4級化する場合は、4級化剤としてメチルクロリド、メチルブロミド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、モノクロロ酢酸又はその塩、エチレンオキシド(以下、EOと表記する)、プロピレンオキシド(以下、POと表記する)、グリシジルエーテルを用いて行うことが好ましい。尚、EO、PO、グリシジルエーテルを使用する場合は、予め硫酸、塩酸、炭素数1〜12のカルボン酸、アリルスルホン酸などでモノマー単位を中和した後反応させることが好ましい。
【0029】
高分子化合物(b2)は、4級アンモニウム基を有するモノマー由来の構成単位(以下モノマー構成単位A1という)及び/又は3級アミノ基を有するモノマー由来の構成単位(以下モノマー構成単位A2という)(複数種であってもよい)からなる高分子化合物のみならず、モノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2(複数種であってもよい)と他のモノマー由来の構成単位(以下、モノマー構成単位Bという)とからなる高分子化合物であってもよい(モノマーA2を使用する場合は、アミン型のモノマー構成単位を有していてもよい。)。この場合、モノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2とモノマー構成単位B(複数種であってもよい)との配列様式は、ブロック、交互、周期、統計(ランダムを含む)、グラフト型の何れであってもよい。
【0030】
モノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2とモノマー構成単位Bとからなる高分子化合物は、例えば、それぞれの前駆体モノマーを共重合することによって得ることができる。この場合、モノマー構成単位Bとしては、下記のモノマー群(i)〜(iv)から選ばれるモノマー由来のモノマー構成単位が好ましく、(i)〜(iii)記載のモノマー由来のモノマー構成単位がより好ましく、特に本発明の効果を得る観点から(i)又は(ii)のモノマー由来のモノマー構成単位が最も好ましい。
【0031】
(i)アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸塩、スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩、リン酸モノ−ω−メタクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜12)から選ばれる陰イオン基含有モノマー
【0032】
(ii)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドンから選ばれるアミド基含有モノマー
【0033】
(iii)アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1〜5)、アクリル酸(又はメタクリル酸)2−ヒドロキシエチル、アクリル酸(又はメタクリル酸)−N,N−ジメチルアミノアルキル(炭素数1〜5)、酢酸ビニルから選ばれるエステル基含有モノマー
【0034】
(iv)エチレン、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、n−ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、n−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンから選ばれるモノマー
【0035】
モノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2とモノマー構成単位Bを有する高分子化合物は前記のような共重合による合成方法の他、モノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2を含む高分子化合物に前記(i)〜(iv)のモノマー、特に好ましくは前記(i)、(ii)のモノマーをグラフト重合して得てもよいし、前記(i)〜(iv)のモノマーを含む重合体に前記一般式(3)及び/又は一般式(4)で表されるモノマーをグラフト重合して得てもよいし、前記(i)〜(iv)のモノマーを含む重合体、特に好ましくは前記(i)、(ii)のモノマーを含む重合体に前記一般式(4)で表されるモノマーをグラフト重合した後、これを4級化してもよい。
本発明のモノマー構成単位Bで最も好ましいものは、カルボン酸基、スルホン酸基から選ばれる1つ以上の基を有する[但し4級アンモニウム基を有さない]モノマー、すなわち前記(i)のモノマー由来のモノマー構成単位(以下モノマー構成単位B1とする)である。
【0036】
高分子化合物(b2)はいかなる重合法によって得てもよいが、ラジカル重合法が特に好ましく、塊状、溶液、又は乳化系にてこれを行うことができる。
【0037】
高分子化合物(b2)は、モノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2の単一重合体並びにモノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2及びモノマー構成単位Bのコポリマーから選ばれる重合体の複数種の混合物であってもよい。
【0038】
高分子化合物(b2)のより好ましい構成は、モノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2とモノマー構成単位B1の合計が全モノマー構成単位に対して50〜100モル%のものであり、最も好ましくはモノマー構成単位A1及び/又はモノマー構成単位A2とモノマー構成単位B1のモル比が、[モノマー構成単位A1+モノマー構成単位A2]/[モノマー構成単位A1+モノマー構成単位A2+モノマー構成単位B1]=0.3〜0.99のものであり、特には0.4〜0.99ものである。
【0039】
高分子化合物(b2)の重量平均分子量は好ましくは1000〜1000万、より好ましくは1000〜500万、特に好ましくは1000〜50万である。なお、重量平均分子量はポリエチレングリコールを標準とし、溶離液としてリン酸バッファーを用いて測定することができる。
【0040】
本発明で用いられるシリコーン化合物(b3)としては、ジメチルシリコーン(ジメチルポリシロキサン)、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、アミノ変性シリコーンなどが挙げられ、これらを1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0041】
シリコーン化合物(b3)の分子構造は、直鎖状であっても分岐や架橋していてもよい。また、変性シリコーン化合物は1種類の有機官能基により変性されていても構わないし、2種以上の有機官能基により変性されていてもよい。
【0042】
シリコーン化合物(b3)は、オイルまたは任意の乳化剤によって分散された乳化物を用いることができる。
【0043】
シリコーン化合物(b3)としては、洗濯工程のすすぎ時に使用したときの衣類への吸着性の観点からアミノ変性シリコーンが好適である。
【0044】
アミノ変性シリコーンとしては、GE東芝シリコーン(株)製のTSF4708、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSF8451C、SF8452C、SF8457C、信越化学工業(株)製のKF862、KF8001、KF880、KF−864等を挙げることができる。
【0045】
本発明の(b)成分は、繊維製品に吸着する事によって風合いを向上させる性質を持つ。
【0046】
[その他の成分]
本発明では、任意ではあるが貯蔵安定性を向上させる目的から非イオン性界面活性剤(以下(c)成分という)を含有することが好ましく、(c)成分を用いると、貯蔵安定性を著しく向上させることができる。
【0047】
(c)成分としては、アルキル基の炭素数が10〜24の1級アルコール、又は2級アルコールに、オキシエチレン基を付加させたポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。アルキル基の炭素数は、10〜18がより好ましく、特に10〜14が好ましい。オキシエチレン基の平均付加モル数は、2〜100モルが好ましく、2〜50モルがより好ましく、特に2〜30モルが好ましい。
【0048】
本発明に用いられる水は、水中に微量に存在するカルシウム、マグネシウム等の硬度成分や鉄等の重金属を除去した水が好ましく、イオン交換水又は蒸留水を用いることができる。また、水を殺菌あるいは滅菌する目的から少量の塩素を含有しても差し支えない。
【0049】
[繊維製品処理剤組成物]
本発明の繊維製品処理剤組成物は、上記(a)成分、(b)成分及び水を含有し、更に(c)成分を含有することが好ましい。
【0050】
本発明の組成物中の(a)成分の含有量は、鼻詰まり症状の緩和と、組成物の貯蔵安定性の観点から、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜4質量%がより好ましく、0.2〜3質量%が更に好ましい。
【0051】
本発明の組成物中の(b)成分の含有量は、(a)成分の保留効果と貯蔵安定性の観点から、0.01〜30質量%が好ましいが、(b)成分として、化合物(b1)、化合物(b2)、化合物(b3)のいずれを用いるかにより、本発明の組成物中の好ましい含有量の範囲が異なる。
【0052】
即ち、化合物(b1)を用いる場合、組成物中の化合物(b1)の含有量は、(a)成分の保留効果と貯蔵安定性の観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%が更に好ましい。化合物(b2)を用いる場合、組成物中の化合物(b2)の含有量は、(a)成分の保留効果と貯蔵安定性の観点から、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。化合物(b3)を用いる場合、組成物中の化合物(b3)の含有量は、(a)成分の保留効果と貯蔵安定性の観点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましい。
【0053】
本発明の組成物中の(a)成分と(b)成分の配合割合は、(a)成分の保留効果の観点から、(a)/(b)(質量比)=0.0003/1〜50/1が好ましいが、(b)成分として、化合物(b1)、化合物(b2)、化合物(b3)のいずれを用いるかにより、(a)成分と(b)成分の配合割合の好ましい範囲が異なる。
【0054】
即ち、化合物(b1)を用いる場合、(a)/(b1)(質量比)は、(a)成分の保留効果の観点から、0.0003/1〜5/1が好ましく、0.0003/1〜1/1がより好ましく、0.004/1〜0.1/1が更に好ましい。化合物(b2)を用いる場合、(a)/(b2)(質量比)は、(a)成分の保留効果の観点から、0.001/1〜50/1が好ましく、0.002/1〜30/1がより好ましく、0.02/1〜20/1が更に好ましい。化合物(b3)を用いる場合、(a)/(b3)(質量比)は、(a)成分の保留効果の観点から、0.0005/1〜50/1が好ましく、0.001/1〜30/1がより好ましく、0.01/1〜4/1が更に好ましい。
【0055】
本発明の(c)成分は任意ではあるが、貯蔵安定性の観点から含有することが好ましい。本発明の組成物中の(c)成分の含有量は、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%である。
【0056】
本発明では上記成分を水に溶解、又は分散させた水溶液の形態である。水は組成物中に30〜95質量%、更に40〜85質量%含有することが好ましい。
【0057】
本発明の組成物は、貯蔵安定性の観点から、組成物の25℃におけるpHを1〜8.5、更に1〜8、特に2〜8に調整することが好ましい。本発明の組成物のpHは、冷却後(25℃)、本発明の組成物の原液を、(株)堀場製作所製pHメータD−52S、pH電極6367−10Dを用いて測定した値である。
【0058】
[繊維製品処理方法]
本発明の繊維製品処理剤組成物を用いて繊維を処理する方法は特に限定されないが、本発明の繊維製品処理剤組成物を洗濯時のすすぎの工程で用いることが好ましい。
【0059】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維に対し、0.1〜3.0質量%用いて処理することが好ましく、0.2〜1.5質量%用いて処理することがより好ましい。
【0060】
本発明において処理に適する繊維製品を構成する繊維の種類は特に限定されず、木綿、麻、絹、獣毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート、キュプラ等の再生セルロース繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維、及びこれらの混紡繊維が挙げられる。
【実施例】
【0061】
合成例1
未硬化牛脂脂肪酸とトリエタノールアミンを反応モル比1.7/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で定法に従って脱水縮合反応を行い、N,N−ジ未硬化牛脂由来アルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチルアミンを主成分とした脱水縮合物を得た。次に、この縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、エタノール溶媒存在下、定法に従って4級化を行い、N,N−ジ未硬化牛脂由来アルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを主成分とし、エタノールを15質量%含有する第4級アンモニウム塩混合物を得た。
【0062】
実施例1〜3及び比較例1
下記配合成分を用い、下記調製方法に従い、表1に示す組成の繊維製品処理剤組成物を調製した。得られた繊維製品処理剤組成物について、下記方法でミント系香料の徐放性試験を行った。結果を表1に示す。
【0063】
<配合成分>
(a−1):ペパーミントオイル
(b−1):合成例1で得たN,N−ジ未硬化牛脂由来アルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを主成分とする反応物。
(b−2):塩化ジアリルジメチルアンモニウムの重合体(マーコート100;Calgon製)
(b−3):アミノ変性シリコーン化合物(KF−864;信越化学工業製)
(c−1):炭素数12の直鎖の1級アルコールにエチレンオキサイドを平均21モル付加させた非イオン性界面活性剤
【0064】
<繊維製品処理剤組成物の調製方法>
上記成分を用いて出来あがり質量が200gとなるように繊維製品処理剤組成物を調製した。300mLビーカーに、所要量の(c)成分、及び必要な量の95%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温後、一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌し(300r/min)、溶解させた。次に、(b)成分を添加し、60℃において5分攪拌した。その後、(a)成分を添加し、60℃において2分攪拌した。次に、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら25℃に冷却した。目標のpHにするために必要な20質量%塩酸水溶液を添加した。出来あがり質量にするのに必要な量の25℃のイオン交換水を添加し、5分間攪拌後、繊維製品処理剤組成物を得た。なお、表1に示すpHは冷却後(25℃)のpHである。
【0065】
<ミント系香料の徐放性試験>
表1記載の繊維製品処理剤組成物を用い、下記処理方法で木綿タオルを処理し、脱水後、25℃、40%の環境下に干した。タオルを干した直後、12時間後、3日後、7日後にミント系香料の匂いを10人のパネラーにより下記の基準で官能評価し、10人のパネラーの平均値を表1に示した。
【0066】
・木綿タオルの処理方法
市販の木綿タオル2.3kgを全自動洗濯機(ナショナル製、NA−F60E)を用いて洗濯/柔軟処理した。
洗濯コース:標準コース、洗濯水:20℃に調温した市水40L、洗剤名:アタック(花王(株)製)、洗剤使用量:20g/30L、繊維製品処理剤組成物使用量:10g(全自動洗濯機の柔軟剤自動投入口に投入)
【0067】
・匂いの官能評価基準
3点;ミント系香料が強く香る
2点;ミント系香料が香る
1点;ミント系香料がわずかに香る
0点;ミント系香料が全く香らない
2点〜3点の時、繊維製品処理後のミント系香料の香りが充分に認識でき、鼻詰まり症状の緩和効果があるといえる。
【0068】
【表1】

【0069】
*1:pH調整剤;20質量%塩酸水溶液
実施例4及び比較例2〜4
下記配合成分を用い、実施例1と同様の調製方法に従い、表2に示す組成の繊維製品処理剤組成物を調製した。得られた繊維製品処理剤組成物の鼻詰まり症状緩和効果を下記の方法で評価した。結果を図1に示す。
【0070】
<配合成分>
(a−1)、(b−1)及び(c−1)は実施例1と同じ
(a’−1):ローズオイル(比較の香料)
【0071】
【表2】

【0072】
*1:pH調整剤;20質量%塩酸水溶液
【0073】
<鼻詰まり症状緩和効果の評価法>
市販のトレーナー(Big Jemuson、綿100%)を、表2記載の繊維製品処理剤組成物を用いて下記方法で処理し、日頃、鼻粘膜が敏感な(鼻詰まりしやすい)研究員のパネラー20人が、午前8時から午後7時まで着用した。脱衣後、市販の洗剤で洗濯し、再び表2記載の繊維製品処理組成物を用いて下記方法で処理し、同様に着用してもらった。5回着用後に、研究員から着用時の「鼻詰まり感」について感想を聴取し、着用時に鼻詰まり感が減った人の割合と、鼻詰まり感が着用前と変わらなかった人の割合を図1に示した。
・処理方法:トレーナー2.3kgを全自動洗濯機(ナショナル製、NA−F60E、水量40L(市水)、標準コース)に入れ、繊維製品処理組成物20gを洗濯機の柔軟剤自動投入口に入れた。洗濯終了後、25℃40%RHで乾燥させた。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例4及び比較例2〜4の鼻詰まり症状緩和効果の評価結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び水を含有し、(a)成分と(b)成分の配合割合(a)/(b)(質量比)が0.0003/1〜50/1である繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:ミント系香料
(b)成分:一般式(1)又は(2)で表される化合物(b1)、4級アンモニウム基及び/又は3級アミノ基を有するモノマー由来の構成単位を分子中に10〜100モル%含有する高分子化合物(b2)、及びシリコーン化合物(b3)から選ばれる少なくとも1種
【化1】

〔一般式(1)及び(2)中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、エステル基及び/又はアミド基で分断されている総炭素数12〜30の炭化水素基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、少なくとも一つがエステル基及び/又はアミド基で分断されている総炭素数12〜30の炭化水素基であり、R24は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。X-は、陰イオン基である。〕
【請求項2】
組成物中の(a)成分の含有量が0.01〜5質量%、(b)成分の含有量が0.01〜30質量%である請求項1記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
(b)成分が、一般式(1)又は(2)で表される化合物(b1)であり、(a)成分と化合物(b1)の配合割合(a)/(b1)(質量比)が0.0003/1〜5/1で、組成物中の化合物(b1)の含有量が1〜30質量%である請求項1又は2記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
(b)成分が、高分子化合物(b2)であり、(a)成分と化合物(b2)の配合割合(a)/(b2)(質量比)が0.001/1〜50/1で、組成物中の化合物(b2)の含有量が0.01〜10質量%である請求項1又は2記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
(b)成分が、シリコーン化合物(b3)であり、(a)成分と化合物(b3)の配合割合(a)/(b3)(質量比)が0.0005/1〜50/1で、組成物中の化合物(b3)の含有量が0.1〜20質量%である請求項1又は2記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項6】
洗濯時のすすぎの工程で用いる請求項1〜5いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜5いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物を洗濯時のすすぎの工程で用いる繊維製品処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−291382(P2008−291382A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137471(P2007−137471)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】