説明

繊維製品処理剤組成物

【課題】 比較的親水性の香料の吸着性を高めることができ、繊維製品に残る香りのバリエーションを広げることが可能な繊維製品処理剤組成物の提供。
【解決手段】 (a)一般式(1)で表される化合物及び(b1)logPowが3.0以上、5.0以下の香料を、(a)成分/(b1)成分=98/2〜20/80の質量比で含有する繊維製品処理剤組成物、並びにこの繊維製品処理剤組成物を、水を媒体として繊維製品に接触させる、(b1)成分の繊維製品への吸着を促進させる方法。
【化1】


〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数であり、複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、香りに対する意識の高まりから、衣料用洗浄剤や仕上げ剤などの繊維製品処理剤に残香性のある香料を用いて、洗濯終了後にも繊維製品に香りが持続する技術が開発されている。これらは、親油性の高い揮発蒸散しにくい香料成分を用いる技術が一般的であるが、このような香料成分は匂い立ちが悪く、重厚な香りの香料成分が多いため、残る香調はこれらの香りで決定されてしまう。一方、親水性の高い香料、或いは比較的親水性の香料成分は匂い立ちに優れ、親油性の香料成分に比べ素材数が多くあることから、さまざまな香りの設計が可能である。しかし、繊維製品への吸着性が乏しいため、処理された繊維製品の香りが弱く、更に持続性も弱くなってしまう事から、親水性の高い香料、或いは比較的親水性の香料成分の吸着性を改善し、繊維製品に残留する香調のバリエーションを広げる技術が強く求められている。
【0003】
一方、ケイ酸エステル化合物は残香性を付与する技術として知られている。ケイ酸エステルを含有する繊維製品処理剤は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等に開示されており、特に特許文献4には香料組成物との併用が記載されている。
【特許文献1】特開昭54−59498号公報、
【特許文献2】特開昭54−93006号公報、
【特許文献3】特開昭55−127314号公報、
【特許文献4】特表2003−526644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4に記載されている技術は、ケイ酸エステルの加水分解物が香料成分として用いられ、繊維製品に付着したケイ酸エステルが徐々に加水分解することで香りの持続性を向上させる技術であるため、アルコール系の香料成分に限られる点や、水が存在しなければ香りがしないなどの課題がある。ケイ酸エステルの賦香技術で用いられるアルコール系の香料は種類に限りがあり、衣類に残る香りのバリエーションを広げることはケイ酸エステルの賦香技術だけでは対応できない。また、特定のケイ酸エステルが比較的親水性の香料成分の繊維製品への吸着性を向上させる点については示唆するものではない。特許文献4は他の香料成分との併用が具体的に例示されているが、これらは香料の一部としてケイ酸エステル化合物を用いる技術であり、比較的親水性の香料成分とケイ酸エステルを特定の比率で含有させた場合の効果については示唆するものではない。
【0005】
従って本発明の課題は、衣料用洗浄剤や仕上げ剤等の繊維製品処理剤を用いて繊維製品を処理した場合に香料の吸着性、特に比較的親水性の香料の吸着性を高めることができ、繊維製品に残存する香調のバリエーションを広げ、さまざまな香りを長時間にわたり強く賦香する事ができる繊維製品処理剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分及び(b1)成分を、(a)成分/(b1)成分=98/2〜20/80の質量比で含有する繊維製品処理剤組成物、並びにこの繊維製品処理剤組成物を、水を媒体として繊維製品に接触させる、(b1)成分の繊維製品への吸着を促進させる方法を提供する。
(a):一般式(1)で表される化合物
【0007】
【化2】

【0008】
〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
(b1):logPowが3.0以上、5.0以下の香料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、香料の吸着性、特に比較的親水性の香料の繊維製品への吸着性を高めることができ、繊維製品に残る香りのバリエーションを広げ、さらにその香りを長時間にわたり強く賦香する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、上記一般式(1)で表される化合物である。
【0011】
一般式(1)において、Xは−OH、−R1又は−OR2、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数であり、複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。
【0012】
1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基を示すが、置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、nが0の場合には、炭素数6〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましく、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数6〜18の直鎖アルキル基が更に好ましく、炭素数10〜18の直鎖アルキル基が更により好ましい。
【0013】
2は炭素数6〜22、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜15の炭化水素基を示すが、炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基又はアルキルアリール基が好ましく、特に分岐構造を有するアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が、繊維製品への(b1)成分の吸着性を向上させる観点から好適である。
【0014】
一般式(1)において、nが0の場合には、4個のXのうち2〜4個、好ましくは3又は4個が−OR2であり、残りが−R1である化合物が好適である。
【0015】
n=0の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化3】

【0017】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。〕
一般式(1)において、nが1〜15の場合には、nは平均値を示し、全てのX及びYに対して、1/10以上、好ましくは1/8以上が−OR2であり、残りが−R1である化合物が好適であり、全てのX及びYが−OR2である化合物が特に好ましい。nとしては、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0018】
nが1〜15の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−3)又は(1−4)で表される化合物が挙げられる。
【0019】
【化4】

【0020】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。mは1〜15の数を示し、Tは、−OR2又は−R1を示す。〕
一般式(1)で表される化合物は、特許文献1や特許文献4などに記載されている方法で入手することができる。
【0021】
[(b1)成分及びその他の香料成分]
本発明の(b1)成分はlogPowが3.0以上、5.0以下の香料である。(b1)成分は一般的には香り立ちに優れ、素材数が多くあることから、さまざまな香りを繊維製品に付与できるが、繊維製品処理時に繊維製品に吸着し難く、これら香料成分の吸着性を向上させることが重要である。本発明は(b1)成分の吸着性を向上させる技術として特に優れるものである。
【0022】
ここでlogPowとは、化学物質の1−オクタノール/水分配係数で、f値法(疎水性フラグメント定数法)により計算で求められた値をいう。具体的には、化合物の化学構造を、その構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数(f値)を積算して求めることができ、CLOGP3 Reference Manual Daylight Software 4.34, Albert Leo, David Weininger, Version 1, March 1994を参考にすることができる。
【0023】
(b1)成分としては、i)α−ピネン(4.18)、β−ピネン(4.18)、カンフェン(4.18)、リモネン(4.35)、テルピノーレン(4.35)、ミルセン(4.33)、p−サイメン(4.07)から選ばれる炭化水素系香料、ii)サンダルマイソールコア(3.9)、サンタロール(3.9)、l−メントール(3.2)、シトロネロール(3.25)、ジヒドロミルセノール(3.03)、エチルリナルール(3.08)、ムゴール(3.03)、ネロリドール(4.58)から選ばれるアルコール系香料、iii)アルデヒドC−111(4.05)、グリーナール(3.13)、マンダリンアルデヒド(4.99)、シトラール(3.12)、シトロネラール(3.26)、アミルシンナミックアルデヒド(4.32)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.85)、リリアール(3.86)、ジヒドロジャスモン(3.13)、l−カルボン、イオノンα(3.71)、メチルイオノンα(4.24)、メチルイオノンG(4.02)から選ばれるアルデヒド、ケトン系香料、iv)ヘプチルアセテート(3.36)、シトロネリルアセテート(4.20)、ゲラニルアセテート(3.72)、リナリルアセテート(3.50)、エチルシンナメート(3.0)、ベンジルサリシレート(4.2)、イソブチルサリシレート(3.92)から選ばれるエステル系香料、v)チモール(3.40)、バニトロープ(3.11)から選ばれるフェノール系香料、vi)セドロキサイド(4.58)、シトロネリルエチルエーテル(4.36)、アネトール(3.31)、ネロリンヤラヤラ(3.24)、エステラゴール(3.1)、メチルイソオイゲノール(3.0)から選ばれるエーテル系香料を挙げることができる。なお、( )内はlogPow値である。
【0024】
特に(b1)成分として、リモネン(4.35)、エストラゴール(3.1)、l−メントール(3.2)、シトロネロール(3.25)、シトラール(3.12)、シトロネラール(3.26)、イソブチルサリシレート(3.8)、アミルシンナミックアルデヒド(4.32)、ジヒドロジャスモン(3.13)、イオノンα(3.71)、メチルイオノンα(4.24)、メチルイオノンG(4.02)、ベンジルサリシレート(4.2)が香り立ちがよいため、また爽やかな香りを繊維製品に付与できるため好適である。
【0025】
本発明では、(b1)成分以外の香料成分を含有する香料組成物として使用することが出来る。比較的親油性の高いlogPowが5を超える香料成分〔以下(b2)成分という〕としては、β−カリオフィレン(6.45)、トリメチルウンデセナール(5.16)、ヘキシルサリシレート(5.09)、アンブロキサン(5.27)、テンタローム(5.7)、パールライド(5.7)等を挙げることができる。
【0026】
さらに、親水性の高いlogPowが3未満の香料成分〔以下(b3)という〕としては、テルピネオール(2.6)、ゲラニオール(2.77)、リナロール(2.55)、ミルセノール(2.61)、ネロール(2.77)、シス−ジャスモン(2.64)、フェニルエチルアセテート(2.13)、アリルアミルグリコレート(2.51)、リファローム(2.26)、シス−3−ヘキシルアセテート(2.34)、スチラリルアセテート(2.27)、o−t−ブチルシクロヘキサノン(2.27)、p−t−ブチルシクロヘキサノン(2.27)、アセチルオイゲノール(2.83)、シンナミルアセテート(2.35)、オイゲノール(2.40)、イソオイゲノール(2.58)、モスシンス(2.94)、アニソール(2.06)、メチルオイゲノール(2.78)、クマリン(1.4)等を挙げることができる。
【0027】
本発明の(b1)成分を含有する香料としては、少なくとも(b1)成分と(b2)成分を含有するものが好ましく、(b2)成分の香りと、(b1)成分の香りが相まって、種々な香りを繊維製品に残香させることが可能となる。全香料中の香料成分(b1)の含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。また、全香料中の(b2)成分の含有量は、10〜50質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましく、残りが(b3)成分である香料が最も好適である。(b1)成分と(b1)+(b2)成分の質量比は、10/90〜100/0が好ましく、20/80〜100/0がより好ましく、30/70〜100/0が更に好ましい。以下、(b1)、(b2)および(b3)成分の混合物を(b)成分という。
【0028】
[繊維製品処理剤組成物]
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(b1)成分の繊維製品への吸着性を向上させ、香り立ちに優れ、バリエーションの広い香りを持続させる観点から、(a)成分と(b1)成分とを、(a)成分/(b1)成分=98/2〜20/80の質量比で含有する。(a)成分/(b1)成分の質量比は、90/10〜30/70が好ましく、85/15〜40/60がより好ましい。
【0029】
本発明の繊維製品処理剤組成物は香料の希釈剤や保留剤を含有することが出来る。希釈剤、保留剤の好適な例としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ペンジルベンゾエート、流動パラフィン,イソパラフィン、油脂等を挙げることができる。(b)成分と保留剤の合計に対する保留剤の割合は0〜20質量%が好ましい。
【0030】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、柔軟剤、賦香剤、糊剤、スタイルケア剤等に香りのコントロールを目的として応用することが出来る。
【0031】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、一般家庭における洗濯工程のすすぎの段階で濯ぎ水に添加される繊維製品処理剤として用いられるのが好ましく、具体的には柔軟剤組成物に応用することが好ましい。
【0032】
本発明を柔軟剤組成物に応用する場合には、(c)成分として柔軟基剤を含有することが好ましい。柔軟基剤としては、炭素数10〜22の炭化水素基を1〜3個有する3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物〔以下(c1)成分という〕、及び(a)成分以外のシリコーン化合物〔以下(c2)成分という〕から選ばれる化合物が好ましい。
【0033】
(c1)成分としては、エステル結合又はアミド結合を有していても良い炭素数12〜22の炭化水素基を1〜3個と残りが炭素数1〜3のアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基である3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物が好ましい。(c1)成分の具体例としては、下記(c11)〜(c13)の化合物を挙げることができる。
【0034】
(c11)炭素数12〜22、好ましくは炭素数14〜20、より好ましくは炭素数16〜18のアルキル基又はアルケニル基を2個と残りが炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である4級アンモニウム塩(塩としてはクロル塩、炭素数1〜12の脂肪酸塩、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステル塩)
(c12)アルカノイル基又はアルケノイル基の炭素数11〜21、好ましくは13〜19、より好ましくは15から17であるアルカノイル(アルケノイル)オキシエチル基、もしくはアルカノイル(アルケノイル)アミノプロピル基を1又は2個と残りが炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である3級アミン又はその酸塩(酸塩としては塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭素数1〜12の脂肪酸塩)
(c13)トリエタノールアミンと、炭素数12〜22、好ましくは14〜20、特に好ましくは16〜18の脂肪酸、又は脂肪酸低級アルキルエステル、脂肪酸クロリドから選ばれる脂肪酸誘導体、好ましくは脂肪酸とのエステル化反応生成物をアルキル化剤、好ましくはメチルクロリド、ジメチル硫酸又はジエチル硫酸により4級化した4級アンモニウム塩(塩としてはクロル塩、炭素数1〜12の脂肪酸塩、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステル塩)。
【0035】
(c2)成分としては、水不溶性のシリコーン化合物が好適である。ここで水不溶性化合物とは20℃のイオン交換水1Lに溶解する量が1g以下の化合物である。具体的にはジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
【0036】
本発明では特に分子量千〜100万、好ましくは3千〜100万、特に好ましくは5千〜100万、25℃における粘度が2〜100万mm2/s、好ましくは500〜100万mm2/s、特に好ましくは1千〜100万mm2/sのジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上が好ましい。アミノ変性ジメチルポリシロキサンのアミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、1,500〜40,000g/molが好ましく、2,500〜20,000g/molがより好ましく、3,000〜10,000g/molが更に好ましい。
【0037】
本発明では特に(c1)成分と(c2)成分を併用することが好ましく(c1)成分/(c2)成分を質量比で60/1〜1/50、好ましくは60/1〜1/20、更に好ましくは50/1〜1/10で含有することが好適である。
【0038】
本発明の(a)成分、(b)成分、及び任意ではあるが柔軟剤組成物に応用する場合には必要な成分である(c)成分は水に対して不溶な化合物であるため、水性の組成物の形態として用いる場合には、組成物中に安定に溶解、分散、乳化させる目的から非イオン界面活性剤〔以下(d)成分という〕を含有することが好適である。
【0039】
(d)成分としては、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤がより好ましい。
【0040】
2a−A−〔(R2bO)p−R2cq (2)
〔式中、R2aは、炭素数8〜18、好ましくは炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R2bは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R2cは、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子であり、pは2〜100、好ましくは5〜80、より好ましくは5〜60、更に好ましくは10〜60の数であり、Aは−O−、−COO−,−CON−又は−N−であり、Aが−O−又は−COO−の場合qは1であり、Aが−CON−又は−N−の場合qは1又は2である。〕
一般式(2)の化合物の具体例としては、以下の式(2−1)〜(2−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0041】
2a−O−(C24O)r−H (2−1)
〔式中、R2aは前記の意味を示す。rは8〜100、好ましくは10〜60の数である。〕
2a−O−(C24O)s−(C36O)t−H (2−2)
〔式中、R2aは前記の意味を示す。s及びtはそれぞれ独立に2〜40、好ましくは5〜40の数であり、(C24O)と(C36O)はランダム又はブロック付加体であってもよい。〕
【0042】
【化5】

【0043】
〔式中、R2aは前記の意味を示す。Aは−N<又は−CON<であり、u及びvはそれぞれ独立に0〜40の数であり、u+vは5〜60、好ましくは5〜40の数である。R2d、R2eはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。〕
本発明の繊維製品処理剤組成物を柔軟剤組成物に応用する場合には柔軟効果を向上させる目的から脂肪酸〔以下(e1)成分という〕を含有することが好適であり、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、ベヘニン酸等の炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、特にパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が好適である。
【0044】
本発明の組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的から必要に応じて(f)成分として無機塩を含有することができる。無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが貯蔵安定性の点から好ましい。
【0045】
本発明の組成物は、貯蔵安定性を改善する目的で(g)成分として炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物を含有してもよい。配合できる(g)成分としては、トリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0046】
本発明の組成物は、必要に応じて(h)成分として溶剤を含有してもよい。溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる溶剤が好ましく、特にエタノールが匂いの点から好ましい。
【0047】
本発明の繊維製品処理剤組成物を柔軟剤組成物に応用することができる。この場合には、組成物中の(a)成分の含有量は、0.1〜6.0質量%が好ましく、0.2〜3.0質量%がより好ましく、0.3〜1.0質量%が更に好ましい。また、組成物中の(b1)成分の含有量は、0.02〜1.5質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましく、0.08〜0.8質量%が更に好ましい。また、組成物中の(b)成分の含有量は、0.1〜1.5質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましく、0.3〜0.8質量%が更に好ましい。また、(a)成分と(b)成分の割合は、(a)成分/(b)成分の質量比で20/80〜90/10が好ましく、30/70〜90/10がより好ましく、40/60〜90/10が更に好ましい。さらに組成物中の(c1)成分の含有量は、3〜30質量%がより好ましく、3〜25質量%がより好ましく、3〜20質量%が更に好ましい。また、組成物中の(c2)成分の含有量は、0.3〜15質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましく、0.5〜8質量%が更に好ましい。組成物中の(d)成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜9質量%がより好ましく、0.5〜8質量%が更に好ましい。保存安定性の観点から(a)成分と(d)成分の割合は、(a)成分/(d)成分の質量比で3/97〜90/10が好ましく、5/95〜50/50がより好ましく、10/90〜30/70が更に好ましい。また、組成物中の(e)成分の含有量は、0.2〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましく、0.3〜4質量%が更に好ましい。組成物中の(f)成分の含有量は、0.0005〜5質量%が好ましく、0.001〜4質量%がより好ましく、0.005〜3質量%が更に好ましい。組成物中の(g)成分の含有量は、0.01〜15質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。組成物中の(h)成分の含有量は、0.2〜25質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましく、0.3〜5質量%が更に好ましい。
【0048】
[(b1)成分の繊維製品への吸着を促進させる方法]
本発明における(b1)成分の繊維製品への吸着を促進させる方法は、本発明の繊維製品処理剤組成物を、水を媒体として繊維製品に接触させる方法である。
【0049】
本発明の繊維製品処理剤組成物を繊維製品に接触させる工程としては、一般家庭の洗濯工程のすすぎの段階が好ましく、繊維製品1kgに対して、(a)成分及び(b1)成分の合計が0.01〜0.5g、更に0.02〜0.3g、特に0.03〜0.2gになるように濯ぎ水に添加することが好ましい。
【0050】
一般に(a)成分、及び(b1)成分を含む(b)成分は水に不溶の化合物であるため、濯ぎ水に添加する場合には、(a)成分及び(b)成分を濯ぎ水に均一に溶解、分散、乳化させることが好適であり、そのためには(d)成分が重要な役割を果たす。本発明では(d)成分を(a)成分と(b)成分の合計に対して好ましくは1/20〜20/1の質量比、より好ましくは1/15〜15/1の質量比、特に好ましくは1/10〜10/1の質量比で濯ぎ水に共存させることが好ましい。洗濯工程のすすぎの段階で繊維製品に接触させた後は通常の脱水/乾燥を行う。
【0051】
これ以外の方法としては、一般家庭の洗濯において洗剤と共に添加する方法、スプレーにより繊維製品に直接噴霧する方法、ローラー等で塗布する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0052】
実施例及び比較例で用いた各配合成分をまとめて以下に示す。
【0053】
(a)成分
(a−1):下記合成例1で得られたオクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステル
(a−2):下記合成例2で得られたテトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シラン
(a−3):下記合成例3で得られたポリ(4−メトキシフェニルメトキシ)シロキサン
(b)成分
(b1−1):エストラゴール(logPow=3.1)
(b1−2):イソブチルサリシレート(logPow=3.8)
(b1−3):ベンジルサリシレート(logPow=4.2)
(b2−1):パールライド(logPow=5.7)
(b2−2):テンタローム(logPow=5.7)
(b3−1):クマリン(logPow=1.4)
(b3−2):オイゲノール(logPow=2.4)
(c)成分
(c1−1): N−(3−アミノプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミンと硬化牛脂脂肪酸を1/1.9のモル比で公知の方法に従って脱水縮合させ、反応物中の脂肪酸含量が5質量%になった時点で反応を終了させて得られた反応生成物であり、下記式(3)で表されるアミンを95質量%含有するもの。
【0054】
【化6】

【0055】
(式中、Rは硬化牛脂脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基を示す。)
その他の成分
(d−1):炭素数12の飽和アルコールにエチレンオキシドを平均20モル付加させたもの
(f−1):塩化カルシウム
(g−1):硬化牛脂脂肪酸1.7モルとグリセリン1モルの脱水縮合物(脱水縮合物中の未反応脂肪酸含有量は3質量%)
(h−1):エタノール
合成例1:オクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステル[トリス(2−フェニルエチルオキシ)オクチルシラン]の合成
300mLの四つ口フラスコにオクチルトリエトキシシラン83.01g(0.30mol)、フェニルエチルアルコール127.76g(0.83mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.857mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110〜115℃で2.5時間攪拌した。2.5時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら110〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、オクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステルを含む173.61gの淡黄色油状物を得た。
【0056】
合成例2:ケイ酸テトラキス(cis−3−ヘキセニル)エステル[テトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シラン]の合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン35.45g(0.17mol)、cis−3−ヘキセノール64.74g(0.65mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.34mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら118〜120℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら112〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、テトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シランを含む66.17gの薄茶色油状物を得た。
【0057】
合成例3:ポリ(4−メトキシフェニルメトキシ)シロキサンの合成
100mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン72.96gと水酸化カリウム0.24g、イオン交換水0.4mLを入れ、窒素気流下120〜125℃、33kPa〜101kPa(常圧)で約37時間反応を行った。この間イオン交換水を0.4mL追加した。反応後、33kPaで更に2時間反応させた後、冷却、濾過を行い、67.29gのエトキシシランの縮合物を淡黄色液体として得た。
【0058】
続いて、100mLの四つ口フラスコに先のテトラエトキシシラン縮合物25.00gと4−メトキシフェニルメタノール56.39g、4.8%水酸化ナトリウム水溶液0.17gを入れ、エタノールを留出させながら95〜119℃でさらに2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら116〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、58.83gのポリ(4−メトキシフェニルメトキシ)シロキサンを淡黄色油状物として得た。
【0059】
実施例1〜3及び比較例1〜4
最終の繊維製品処理剤組成物が300gになるように、表1に示す配合成分を表1に示す割合で用い、下記方法により表1に示す組成の繊維製品処理剤組成物1〜4を調製した。
【0060】
<繊維製品処理剤組成物の調製法>
一枚の長さが2.5cmのタービン型羽根が3枚ついた攪拌羽根をビーカー底面より1cm上部に設置した、500mLのガラスビーカーに必要量の95質量%イオン交換水を入れ、ウォーターバスで62℃まで昇温した。500rpmで攪拌しながら、融解した(d)成分を添加した。次に(c)成分と、(g)成分及び(h)成分を予め予備混合し、70℃で溶融させた予備混合物を添加した。次に所定のpHにするのに必要な量の35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、5分間攪拌した後、5℃のウォーターバスで30℃まで冷却し、(f)成分を添加し更に5分間混合した。更に、(a)成分および(b)成分を攪拌しながら添加し、最後に再度pHを確認し、必要に応じて35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを調整した。表1の組成においては、(c1−1)は、ほぼすべて塩酸塩の状態で組成物に存在する。なお、表1中、(c1−1)の数値はそれ自体(有効分)の配合量である。
【0061】
【表1】

【0062】
上記方法で得られた繊維製品処理剤組成物を用い、下記方法で繊維製品に処理し、香料吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
<繊維製品処理剤組成物による処理および香料吸着率の測定方法>
(1) 前処理
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製 アタック)を用いて、木綿タオル24枚を日立全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)。
(2) 繊維製品への組成物の処理
National 電気バケツN-BK2-Aに、5Lの水道水を注水し、繊維製品処理剤組成物を10g/衣料1.0kgとなるように溶解(処理浴の調製)させ、上述の方法で前処理を行った2枚の木綿タオルを5分間浸漬し、処理した。
【0064】
香料の吸着率は、処理前の処理浴中の香料含有量(x)と処理後の香料含有量(y)の差分〔(x)−(y)〕をタオルに吸着している量として、処理前の香料含有量(x)に対する割合(百分率)、すなわち、〔(x)−(y)〕/(x)×100を香料の吸着率とする。その結果を表2に示す。なお、処理前後の試験用処理液中の香料の含有量は、下記の液体クロマトグラフィー装置を用いて測定した。
【0065】
液体クロマトグラフィー装置:HITACHI L−6000
カラム:Lichrospher 100 RP−18(e) 5μm 125mm×4φ
カラム温度:40℃
溶離剤:アセトニトリル/水=7/3(質量比)の混合溶液
流速:1.0mL/min
検出器:UV(220nm)
【0066】
【表2】

【0067】
実施例4
表3に示す組成の香料1〜3を用いて、表4〜6に示す組成の繊維製品処理剤組成物を調製した。得られた繊維製品処理剤組成物を用い、実施例1と同様の方法で前処理をした木綿タオルについて同様に柔軟処理を行った。処理後の木綿タオルを、25℃、40%RHにて24時間乾燥させ、残香性の比較官能評価を行った。官能評価結果は、(a)成分を配合していない組成物(ブランク1)と比較して香り強度が強いと答えたパネラーの人数(/10人)で示した。なお、表4では、(a)成分の代わりに、(a−1)成分を合成する際に使用した香料であるフェニルエチルアルコールを加えた組成物(ブランク2)に対しても、同様の香り強度の評価を行った結果を示した。
【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
以上の結果より、(a)成分を配合することにより、(b1)成分の吸着率が向上し、その残香性は官能評価においても認識されることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b1)成分を、(a)成分/(b1)成分=98/2〜20/80の質量比で含有する繊維製品処理剤組成物。
(a):一般式(1)で表される化合物
【化1】

〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
(b1):logPowが3.0以上、5.0以下の香料
【請求項2】
請求項1記載の繊維製品処理剤組成物を、水を媒体として繊維製品に接触させる、(b1)成分の繊維製品への吸着を促進させる方法。

【公開番号】特開2009−256818(P2009−256818A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104416(P2008−104416)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】