説明

繊維製品用水性しわ減少剤組成物

【課題】スーツや制服等に使用されるしわを減少させるための組成物の提供。
【解決手段】以下を含むことを特徴とする繊維製品用水性しわ減少剤組成物:(A)以下の構造式(1)で表される化合物(A1)及びグリセリン変性シリコーンオイル(A2)から選択される少なくとも1種のシリコーン化合物;


・・・・・(1)(B)ポリエーテル変性シリコーン;(C)低級アルコール;及び(D)水。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品に発生するしわ、特に衣類の着用じわを減少させる、繊維製品用水性しわ減少剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スーツや制服等は、家庭で普通に行われている水による洗濯が困難であり、通常はクリーニング店等でドライクリーニング処理される。一方で着用じわは、衣類を一度着用すると発生し、発生したしわは衣類の外観を損なうため、可能な限り除去されることが好ましい。
クリーニング店に処理を依頼すると当然にコストがかかることから、衣類を着用した後に発生する着用じわを除去するためだけにクリーニング店に処理を依頼することは過度な経済的負担を生じさせる。従って、一般家庭においてこれら着用じわを除去するため、アイロンがけを行ったりズボンプレッサーを使用した処理が行われてきた。しかしながら、これらの作業は手間がかかると共に、これらの処理により衣類に加えられる熱等によってスーツや制服の風合いを損なう場合がある。
そこで従来より、アイロンやズボンプレッサーを使用せずに着用じわを減少させる方法として、衣類に水性組成物をスプレーすることによりしわを除去する方法が提案されている。以下の特許文献1〜7は、スーツや制服等に使用されるしわを減少させるための組成物及びこれに関係する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−500493号公報
【特許文献2】特表2003−518568号公報
【特許文献3】特開平10−46471号公報
【特許文献4】国際公開01/31114号パンフレット
【特許文献5】特表2003−513176号公報
【特許文献6】特開2000−178882号公報
【特許文献7】特開2003−096667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献に挙げられたような方法は、アイロン等に比べ作業は楽であり、数分程度座った場合に付く軽いしわに対しては効果はあるものの、長い時間座った場合に付くしわや、湿った状態で付くしわ等の強固なしわに対しては満足のいく着用じわの減少効果を得ることが困難であった。従って、本発明は、軽いしわだけでなく強固なしわも減少できる繊維製品用水性しわ減少剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、十分な着用じわ減少効果を発揮できる水性組成物を得るために鋭意検討を行った結果、珪素を含んだ特定の化合物を組み合わせることで係る目的を達成できることを見出し本発明に至った。
即ち本発明は、
〔1〕成分(A)〜(D)を含むことを特徴とする繊維製品用水性しわ減少剤組成物に関する:
(A)以下の構造式(1)で表される化合物(A1)及びポリグリセリン変性シリコーンオイル(A2)から選択される少なくとも1種のシリコーン化合物;
【0006】
【化1】

・・・・・(1)
【0007】
(式中、R1はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2は一般式-CxH2xO(C2H4O)y(C3H6O)zR4(R4は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは2〜4の整数、yは5〜15の整数、zは0〜10の整数である。)で示される有機基であり、R3はR1又はR2であるが、nが0のときは少なくとも1つのR3がR2であり、mは0〜10の整数、nは0〜10の整数であり、(m+n)は1〜20である。)
(B)以下の構造式(2)で表されるポリエーテル変性シリコーン;
【0008】
【化2】

・・・(2)
【0009】
(式中、R5は水素又は炭素数1〜3の1価の炭化水素基、p、q、s及びtは各ユニットの平均付加モル数を表し、pは1〜50、qは0〜20、sは50〜400、tは1〜40の範囲であり、重合形態はランダム付加又はブロック付加のどちらでも良い。)
(C)低級アルコール;及び
(D)水。
〔2〕また本発明は、(A)成分が(A1)である、〔1〕に記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物に関する。
〔3〕また本発明は、(A)成分が、以下の構造式(3)又は(4)で表される化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物に関する:
【0010】
【化3】

・・・・・(3)
【0011】
(式中、R6はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R7は一般式-CxH2xO(C2H4O)yR8(R8は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは2〜4の整数、yは5〜15の整数である。)で示される有機基である。)
【0012】
【化4】

・・・・(4)
【0013】
(式中、R9はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R10は一般式-CxH2xO(C2H4O)yR11(R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは2〜4の整数、yは5〜15の整数である。)で示される有機基であり、mは1〜6の整数である)。
〔4〕また本発明は、(A)/(B)の質量比率が1/20〜20/1である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物に関する。
〔5〕また本発明は、pHが4〜10である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物に関する。
〔6〕また本発明は、スプレー容器に収納されてなる、〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記のような組成物により、アイロンやズボンプレッサー等のように衣類に熱をかけることなく衣類の着用じわを減少させることができる。また、従来検討されてきた組成物と比較して高い着用じわの減少効果を得ることができる。本発明の組成物は長期保存後もしわ減少効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の繊維製品用水性しわ減少剤組成物(以下、水性組成物)は、前記(A)(B)のような特定のポリエーテル変性シリコーン化合物、(C)低級アルコール、(D)水及び必要に応じてその他任意の成分を含む。以下に各成分を説明する。
(A)成分
(A)成分は、以下の構造式(1)で表される化合物(A1)及びグリセリン変性シリコーンオイル(A2)から選択される少なくとも1種のシリコーン化合物である;
【0016】
【化5】

・ ・・・・・(1)
【0017】
(式中、R1はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2は一般式-CxH2xO(C2H4O)y(C3H6O)zR4(R4は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは2〜4の整数、yは5〜15の整数、zは0〜10の整数である。)で示される有機基であり、R3はR1又はR2であるが、nが0のときは少なくとも1つのR3がR2であり、mは0〜10の整数、nは0〜10の整数であり、(m+n)は1〜20である。)。
(A)成分は、着用じわを除去する効果を繊維製品用水性しわ減少剤組成物に与える。
【0018】
本発明における(A)成分は、構造式(1)で表される化合物(A1)及びグリセリン変性シリコーンオイル(A2)から選択される少なくとも1種のシリコーン化合物である。(A1)と(A2)とはしわ減少効果において差異はないが、(A1)を配合した水性組成物は、(A2)を配合した水性組成物よりも繊維製品に対してより速やかに浸透でき、従ってしわ減少効果が早期に発現する点でより優れている。
上記(A1)成分として上記式(1)の化合物の中でも、特に以下の式(3)又は(4)で表される化合物がより好ましい。
【0019】
【化6】

・・・・・(3)
【0020】
式(3)中のR6はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。R7は一般式-CxH2xO(C2H4O)yR8で示される有機基であり、R8は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは水素又はメチル基である。xは2〜4、好ましくは3又は4の整数である。yは3〜20、好ましくは5〜15、さらに好ましくは6〜13の整数である。
【0021】
【化7】

・・・・(4)
【0022】
式(4)中、R9はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。R10は一般式-CxH2xO(C2H4O)yR11で示される有機基であり、R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは水素又はメチル基である。xは2〜4、好ましくは3又は4の整数である。yは3〜20、好ましくは5〜15、さらに好ましくは6〜13の整数である。mは1〜6、好ましくは2〜4の整数である。
上記式(3)及び(4)の化合物は、より高い除しわ性能を得ることができる点でより好ましい。またその中でも特に式(3)の化合物を選択することが、繊維製品に水性組成物を速やかに浸透させてしわを速く除去できると言う点からより好ましい。
【0023】
(A1)のシリコーン化合物は、例えばオルガノハイドロジェンポリシロキサンとポリオキシアルキレンアリルエーテルとを付加させる等の公知の方法で製造することができる。また、市場で入手可能な物としては、SILWET L−77(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。
(A2)のポリグリセリン変性シリコーンオイルは、例えばオルガノハイドロジェンポリシロキサンとグリセリンモノアリルエーテルとを白金触媒存在下で付加反応させる等の公知の方法で製造することができる。例えば市場で入手可能な物として、KF−6100、KF−6104、KF−6105(信越化学株式会社製)が挙げられる。
【0024】
(B)成分
(B)成分は、以下の構造式(2)で表されるポリエーテル変性シリコーンである;
【0025】
【化8】

・・・(2)
【0026】
式(2)中、R5は水素又は炭素数1〜3の1価の炭化水素基である。p、q、s及びtは各ユニットの平均付加モル数を表す。pは1〜50、好ましくは3〜30、さらに好ましくは7から20である。qは0〜20、好ましくは0〜10、さらに好ましくは0〜5である。sは50〜400、好ましくは100〜300、さらに好ましくは150から300である。tは1〜40、好ましくは3〜30、さらに好ましくは5〜20である。なお、式(2)中における繰り返し単位の重合形態はランダム付加又はブロック付加のどちらでも良い。
【0027】
前記式(2)で示されるポリエーテル変性シリコーンは、Si−H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ポリオキシアルキレンアリルエーテルとを付加反応させる等の従来公知の方法により製造することができる。
ポリエーテル変性シリコーンの具体的な例としては、東レ・ダウ コーニング(株)製のSH3775C等が挙げられる。
【0028】
(C)成分
(C)成分は低級アルコールであり、水溶性の低い(B)成分を溶解し、容易に組成物を調製するために添加する。本発明の分野で使用できるいかなる低級アルコールも使用できるが、具体的には炭素数1〜3のアルコールを使用するのが好ましい。特にメタノール、エタノール及びイソプロパノールが好ましく、安全性の面からエタノールがより好ましい。
【0029】
(D)成分
(D)成分は水であり、蒸留水、イオン交換水及び水道水等の別は問わない。
【0030】
その他の成分
本発明の目的を損なわない範囲において、以下の任意成分を水性組成物に配合できる。
(i)界面活性剤
本発明の分野において通常使用されているいかなる界面活性剤も使用でき、例えば以下のものが挙げられる:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩等のカチオン界面活性剤;脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、アルキルポリグリコシド、アルキルポリグリセリルエーテル、アルキルポリグリセリルエステル、アルキルアミンオキシド等のノニオン界面活性剤。
(ii)その他溶剤
本発明の分野において通常使用されているいかなる溶剤が使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等のグリコール系溶剤、グリセリン、ソルビトール等のポリオール系溶剤が挙げられる。
(iii)香料
例えば、水性組成物その物又は水性組成物により処理された繊維製品に香り付けをするために、香料を水性組成物に配合できる。本発明の分野において通常使用されているいかなる香料が使用でき、例えば特開2002−146399号公報に記載されているような香料成分、溶剤、安定化剤を含有する香料組成物が挙げられる。
(iv)pH調整剤
例えば、水性組成物に含まれる成分の安定性を確保するために、pH調整剤を水性組成物に配合できる。本発明の分野において通常使用されているいかなるpH調整剤も使用できる。酸として、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等のカルボン酸が挙げられる。アルカリとして、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられ、両性化合物としては、ヒスチジン等のアミノ酸が挙げられる。
【0031】
各成分の含有量
以下に、本発明の水性組成物における各成分の含有量を説明する。なお、「質量%」とは、水性組成物全体における、各成分の質量%を意味する。
本発明の水性組成物において、(A)成分の含有量は、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であることが好ましい。(A)成分の含有量を0.01質量%以上にすることにより、水性組成物が十分な着用じわ除去効果を発揮できる。また、本発明の水性組成物において、(A)成分の含有量は、5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であることが好ましい。(A)成分の含有量を5質量%以下とすることにより、水性組成物を散布した繊維製品にしみが発生することを防ぐことができる。
【0032】
本発明の水性組成物において、(B)成分の含有量は、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であることが好ましい。(B)成分の含有量を0.01質量%以上にすることにより、水性組成物が十分な着用じわ除去効果を発揮できる。また、本発明の水性組成物において、(B)成分の含有量は、5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であることが好ましい。(B)成分の含有量を5質量%以下とすることにより、水性組成物を散布した繊維製品にしみが発生することを防ぐことができる。
本発明の水性組成物は、上記(A)成分と(B)成分を併用することにより、より優れた着用じわ除去効果を得ることができるが、(A)成分と(B)成分の質量による含有比率を(A)/(B)で表した場合、好ましくは1/20〜20/1,より好ましくは1/15〜15/1、さらに好ましくは1/10〜10/1、特に好ましくは1/5〜5/1、最も好ましくは1/3〜3/1である場合に、さらにより優れた着用じわ除去効果を得ることができる。
【0033】
本発明の水性組成物において、(C)成分の含有量は、(B)成分を溶解できる量であれば、特に制限されない。例えば、具体的には1質量%以上、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であることが好ましい。また、本発明の水性組成物において、(C)成分の含有量は、50%以下、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であることが好ましい。(C)成分の含有量は、経済的な観点から50質量%以下にすることがより好ましい。
本発明の水性組成物において、(D)成分の含有量は、上記(A)〜(C)成分、及び配合する場合には前記その他の成分の含有量の残部である。その他の成分は、前記のように本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0034】
水性組成物の製造方法
水性組成物の製造方法は特に制限が無く、本発明の分野で通常使用されるいかなる製造方法も適用できる。
【0035】
水性組成物の性質
本発明の組成物のpHは特に限定されない。しかしながら、(A)成分が加水分解されることを防止して、水性組成物の貯蔵安定性を確保するために、上記pH調整剤を用いて水性組成物のpHを一定の範囲にすることが好ましい。このようなpHの範囲は例えば、下限が好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上であり、上限は好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
本発明の組成物のpHは、25℃において、ガラス電極を用いpHメータにより測定することができる。
【0036】
水性組成物の使用方法
本発明の水性組成物を、繊維製品に使用する使用方法としては、特に限定はされないが、繊維製品を組成物中に浸漬した後風乾してもよいし、組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に対して組成物を噴霧した後風乾してもよい。特に、家庭においても手軽に実施できる簡便性や、必要量の組成物を繊維製品のしわになっている部位にのみ作用できるという経済性の点から、組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に噴霧して使用する方法が好ましい。更に、風乾する前に手で軽くしわを伸ばすことは、着用じわ除去性の点から好ましい。
スプレー容器としては、エアゾールスプレー容器、トリガースプレー容器(直圧型あるいは蓄圧型)、フィンガースプレー容器等が挙げられる。エアゾールスプレー容器の例としては、特開平9−3441、及び特開平9−58765号公報等に記載されているものが挙げられる。また、噴射剤としてはLPG(液化プロパンガス)、DME(ジメチルエーテル)、炭酸ガス、窒素ガス等が挙げられ、これらは単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。トリガースプレー容器の例としては、特開平9−268473号公報、特開平9−256272号公報、特開平10−76196号公報等に記載のものが挙げられる。フィンガースプレー容器の例としては、特開平9−256272号公報等に記載のものが挙げられる。
本発明の水性組成物を対象となる繊維製品に噴霧して使用する場合の使用量は、繊維製品の質量に対して、下限が好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、上限は好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。使用量がこの範囲内にあると、着用じわ除去性及び経済性に優れるので好ましい。
【0037】
また、本発明の水性組成物は、プラスチック製容器に収納することができる。プラスチック製容器としては、ボトル容器や詰替え用のスタンディングパウチ等が挙げられる。スタンディングパウチとしては、例えば、特開2000−72181号公報に記載のものが挙げられるが、材質としては、内層に100〜250μmの線状低密度ポリエチレン、外層に15〜30μmの延伸ナイロンの二層構造又は15μmの延伸ナイロンを中間層、15μmの延伸ナイロンを外層にした三層構造のスタンディングパウチが保存安定性の点から好ましい。
本発明の水性組成物を使用する対象の繊維製品としては、特に限定はされないが、例えば、Yシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、テーブルクロス、ランチョンマット、カーテン等が挙げられる。また、対象とする繊維製品の素材も、特に限定はされないが、例えば、綿、ウール、麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、テンセル、ポリノジック等の再生繊維及びこれら各種繊維の混紡品、混織品、混編品等が挙げられ、その中でも、普段の手入れが困難なウール及びその混紡品において、本発明の組成物の効果が顕著に発揮される。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明する。
【0039】
水性組成物の調製
以下の表1に記載された配合量で水性組成物を調製した。各成分の詳細は以下の通りである。なお、以下の表において数値は質量部を表し、(D)成分の精製水の添加量は、合計量を100質量部とした場合の残部である。また、組成物のpHは、株式会社堀場製作所ガラス電極式水素イオン濃度指示計型式F−52、電極型式9611を用い、25℃で測定した。
(A)成分
【0040】
【化9】

【0041】
(A1)
A1-1: R1=CH3、R2(x=3、y=11、z=0、R4=H)、R3=CH3、m=0、n=1
A1-2: R1=CH3、R3の1方はCH3、もう1方はR2(x=3、y=11、z=0、R4=CH3、 m=3、n=0
A1-3: R1=CH3、R2(x=3、y=15、z=0、R4=H)、R3=CH3、m=10、n=3
A1-4: SILWET L-77(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
(A2)
A2-1: KF-6100(信越化学株式会社製グリセリン変性シリコーンオイル)
【0042】
(A)成分の合成方法を、A1-1成分を例にとって説明する。攪拌装置、凝縮機、温度計および窒素挿入口を備えた1Lの4つ口フラスコに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(CH33SiO(CH3)(H)SiOSi(CH33を100g、イソプロピルアルコールを50g、ポリオキシエチレン化合物CH2=CHCH2O−(C24O)11Hを50g、付加反応用触媒塩化白金を0.2gを投入して、これらを窒素雰囲気下、110℃で3時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去することにより(A−1)を得た。
(B)成分
【0043】
【化10】

【0044】
B-1: s=210、t=9、p=10、q=0、R5=CH3
B-2: s=70、t=3、p=15、q=0、R5=H
B-3: s=40、t=3、p=15、q=0、R5=H
C: 合成エタノール(日本合成アルコール株式会社)
【0045】
(B)成分の合成方法を、B-1成分を例にとって説明する。攪拌装置、凝縮機、温度計および窒素挿入口を備えた1Lの4つ口フラスコに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(CH33SiO{(CH32SiO}210{(CH3)HSiO}9Si(CH33を100g、イソプロピルアルコールを50g、ポリオキシエチレン化合物CH2=CHCH2O(C24O)10CH3を11g、付加反応用触媒塩化白金酸を0.2g、2%酢酸ナトリウムのイソプロピルアルコール溶液を0.3g投入して、これらを窒素雰囲気下、90℃で3時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去することにより(B−1)を得た。
【0046】
評価方法
<除しわ性評価方法>
(評価布の作成方法)
ウールサージ(谷頭商店、10cm×20cm)の質量の10質量%に当たるイオン交換水を、前記ウールサージに対して噴霧した後、2つ折りにし、2Kgの荷重を1時間かけ、1時間吊り干ししたものを試験布とした。
(除しわ性評価)
市販ディスペンサー(スタイルガード・スーツ用、70mL、ライオン株式会社製の内容物を抜いた後、容器をイオン交換水で数回すすぎ、乾燥させたもの)を用いて、以下の表1に記載された組成の各組成物を、前記試験布の質量に対して約40質量%に当たる量を前記試験布に対して噴霧して軽く手で引っ張り、20℃、50%RH条件下にて1晩吊り干しした後、しわの取れ具合を判定した。なお、評価布への噴霧は、組成物を調製後、1週間以内のものを使用した(室温放置)。
(判定方法)
5人のパネラーにより下記基準で判定し、その平均点を求めた。◎、○、□が好ましい。判定結果を表1に示す。
4.5<点数≦5:◎
4<点数≦4.5:○
3<点数≦4:□
2<点数≦3:△
1≦点数≦2:×
5点:全くしわがない。
4点:ほとんどしわがない。
3点:僅かにしわが残っている。
2点:相当しわが残っている。
1点:著しくしわが残っている。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、本発明の範囲にある実施例1〜10は、十分な除しわ性能を発揮している。これに対してA成分及びB成分を含まない比較例1及び2、さらにB成分が本発明の範囲から外れている比較例については、十分な除しわ性能が発揮されていない。
【0049】
(保存試験後の除しわ性評価)
表2に記載の組成物50mLを、50mLの容量のスクリューキャップ付きガラス瓶中に収納密閉し、50℃の恒温室中で1ヶ月保存した後、室温に戻した。その後は、(除しわ性評価)と同じ方法で除しわ性を評価した。なお、pHの調整はpH6はヒスチジン、pH2および4は塩酸、pH9は水酸化ナトリウムを用いて行った。pHの測定は、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(株式会社堀場製作所製)を用い、25℃で行った。なお、校正には株式会社堀場製作所製、標準溶液を用いた。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例17〜23の結果から、特にpHが4〜9の範囲内にある場合、保存安定性に優れた組成物が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)〜(D)を含むことを特徴とする繊維製品用水性しわ減少剤組成物:
(A)以下の構造式(1)で表される化合物(A1)及びポリグリセリン変性シリコーンオイル(A2)から選択される少なくとも1種のシリコーン化合物;
【化1】

・・・・・(1)

(式中、R1はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2は一般式-CxH2xO(C2H4O)y(C3H6O)zR4(R4は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは2〜4の整数、yは5〜15の整数、zは0〜10の整数である。)で示される有機基であり、R3はR1又はR2であるが、nが0のときは少なくとも1つのR3がR2であり、mは0〜10の整数、nは0〜10の整数であり、(m+n)は1〜20である。)
(B)以下の構造式(2)で表されるポリエーテル変性シリコーン;
【化2】

・・・(2)

(式中、R5は水素又は炭素数1〜3の1価の炭化水素基、p、q、s及びtは各ユニットの平均付加モル数を表し、pは1〜50、qは0〜20、sは50〜400、tは1〜40の範囲であり、重合形態はランダム付加又はブロック付加のどちらでも良い。)
(C)低級アルコール;及び
(D)水。
【請求項2】
(A)成分が(A1)である、請求項1に記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が、以下の構造式(3)又は(4)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物:
【化3】

・・・・・(3)

(式中、R6はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R7は一般式-CxH2xO(C2H4O)yR8(R8は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは2〜4の整数、yは5〜15の整数である。)で示される有機基である。)
【化4】

・・・・(4)

(式中、R9はフェニル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R10は一般式-CxH2xO(C2H4O)yR11(R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは2〜4の整数、yは5〜15の整数である。)で示される有機基であり、mは1〜6の整数である)。
【請求項4】
(A)/(B)の質量比率が1/20〜20/1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物。
【請求項5】
pHが4〜10である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物。
【請求項6】
スプレー容器に収容されてなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維製品用水性しわ減少剤組成物。

【公開番号】特開2010−255170(P2010−255170A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86228(P2010−86228)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】