説明

繊維製品用芳香組成物

【課題】保存時の低温安定性、香気持続性および香気の質に優れ、繊維の風合いを損ねない繊維製品芳香剤組成物を提供することにある。
【解決手段】(a)ベンゼン骨格とアルデヒド基を有する香料成分を0.0001〜5.0重量%、(b)アルキレンオキシドが10〜80モル付加された非イオン性界面活性剤0.01〜1.0重量%、(c)エタノール15〜60重量%及び(d)水20〜80重量%を含有する繊維製品用芳香剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用芳香剤組成物に関し、より詳しくは、液状組成物の低温安定性、香気持続性及び香気の質に優れ、繊維の風合いを損ねない繊維製品用芳香剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タオルやシーツ、枕などに吹き付けて使用するリネンウォーター、ピローミスト等の繊維製品用芳香剤には、多種多様な香料成分が配合され、嗅覚的な利点を与えている。フレグランス製品の場合、アルコールをベースとするが、繊維製品用芳香剤の場合、繊維に直接用いるため、繊維の風合いを損ねないようなベースを選択しなければならない。香料成分は水ベースの組成の場合、香料可溶化剤(界面活性剤)およびアルコールにより可溶化している。しかしながら、近年消費者の嗜好性の多様化から需要が増えている濃厚で持続性のある香りを実現するために、ベンゼン骨格とアルデヒド基を有する香料成分を高濃度で配合すると低温で香料成分が析出してしまう。
安定化のために香料成分と相溶性のよい界面活性剤あるいはアルコールを多量に配合することが考えられるが、その場合、香料成分が揮発しにくい、あるいは香りの持続性が低下する等の香りの質を損なうことになり、香りの効果が得られなくなってしまう。また、繊維製品の風合いを損ねる場合もある。
そこで少量の活性剤で低温での香料成分の析出を抑制し、香り立ちを阻害せず、連続使用においても繊維の風合いを損なうことのない繊維製品用芳香組成物が求められている。
【0003】
そこで、以上のような課題を解決するため、例えば特許文献1では特定の香料の組み合わせに対して、ノニオン界面活性剤とアルコールを含む組成物を樹脂コーティングした金属容器に収容することで液安定性や香気持続性、香気安定性に優れた繊維製品用芳香剤組成物が開示されている。
特許文献2では、香料、界面活性剤、相調整剤を含み、洗濯槽に心地よい香りを広げて洗濯後の衣料への残香性を高める方法、特許文献3では、水、アルコール、ショ糖エステルを用いる方法、特許文献4では、界面活性剤、アルコールにより香料を均一透明に可溶化して安定させる方法等が開示されている。また、特許文献5には水に不溶性ないし難溶性の香料を、蛋白質、蛋白質分解物、界面活性剤の存在下にポリヒドロキシル化合物又はその水溶液中に乳化ないし可溶化する方法、特許文献6にはヒバ油、水、親水性界面活性剤の混合液に親水性溶剤/油状油脂を加え、乳化又は半透明の液状組成物を長期間にわたり均一な混合状態を維持する方法、更に、特許文献7にはEOPO変性C1〜C6アルカノール、非イオン性乳化剤により、保存安定性を良好に保つ方法などが提案されている。
【0004】
しかし、濃厚で持続性のある香り成分として難溶性の香料を多量に配合した場合、従来技術では、保存時の液安定性と香気安定性及び繊維製品に噴霧後の香気持続性をすべて満足することは困難であった。
【特許文献1】特開2003−201669号公報
【特許文献2】特開2000−169877号公報
【特許文献3】特開昭56−2906号公報
【特許文献4】特開昭57−159707号公報
【特許文献5】特開昭58−63365号公報
【特許文献6】特開平8−245978号公報
【特許文献7】特開昭64−52470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低温安定性、香気持続性及び香気の質に優れ、繊維の風合いを損ねない繊維製品用芳香剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ベンゼン骨格とアルデヒド基を有する香料成分を特定量で配合し、さらに特定のノニオン界面活性剤、エタノール、水をそれぞれ特定量で配合することにより、低温安定性、香気持続性及び香気の質に優れ、繊維の風合いを損ねない繊維製品用芳香剤組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、(a)ベンゼン骨格とアルデヒド基を有する香料成分を0.0001〜5.0重量%、(b)アルキレンオキシドが10〜80モル付加された非イオン性面活性剤0.01〜1.0重量%、(c)エタノール15〜60重量%及び(d)水20〜80重量%を含有する繊維製品用芳香剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、低温安定性と香りの持続性、香りの質に優れ、繊維の風合いを損ねない繊維製品用芳香剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
さらに、前記の(a)ベンゼン骨格とアルデヒド基を有する香料成分がベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、ピペロナール、シクラメンアルデヒド、バニリンから選ばれる1種または2種以上である繊維製品用芳香剤組成物を提供する。
【0010】
本発明の組成物における上記(a)成分の配合量は、組成物に対して0.0001〜5.0重量%であり、好ましくは0.005〜5.0重量%、より好ましくは0.01〜5.0重量%である。5.0質量%より多い場合、組成物は白濁や分離を生じたり、繊維製品に使用した際にシミの状態になるという不都合が生じる。また、0.0001質量%より少ない場合、香気やその持続性が悪くなる。
【0011】
本発明の組成物における上記(a)成分として、具体的にはベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、ピペロナール、シクラメンアルデヒド、バニリンなどが挙げられるが、特にピペロナールが好ましい。
【0012】
本発明の組成物における上記(b)成分の配合量は、組成物全量に対して0.01〜1.0重量%であり、好ましくは0.05〜1.0重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%である。1.0重量%より多い場合、繊維製品に使用した際にべとつきやシミを生じる。また、0.01重量%より少ない場合、香料を可溶化できず、組成物は白濁や分離を生じる。
【0013】
本発明の(b)成分は、アルキレンオキシドが10〜80モル付加された非イオン性界面活性剤であり、好ましくはアルキレンオキシドの付加モル数が20〜80、さらに好ましくは40〜60である。また、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキサイドでもプロピレンオキサイドでもよいが、好ましくはエチレンオキサイドを付加したものである。アルキレンオキシドを付加する非イオン界面活性剤の種類は特に制限されるものではないが、例えば硬化ヒマシ油やソルビタン脂肪酸エステルにアルキレンオキシドを付加したノニオン界面活性剤が好ましく、特に硬化ヒマシ油が好ましい。
【0014】
本発明の(c)成分の配合量は、組成物全量に対して15〜60重量%であり、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは30〜40重量%である。60重量%より多い場合、繊維製品に使用した際にアルコールの基剤臭が顕著になり不快感を生じる。また、15重量%より少ない場合、組成物は白濁や分離を生じ、繊維製品に使用したときに乾きが遅く、使用性が悪くなる。
【0015】
本発明の繊維製品用芳香剤組成物は、(d)成分の水を20〜80重量%含む。好ましくは30〜80重量%であり、さらに好ましくは40〜75重量%である。
【0016】
本発明の繊維製品芳香剤組成物には上記(a)〜(d)成分以外にも、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜成分を配合することができ、例えば、均一透明な液状態を保つ範囲で、上記(a)以外の香料成分を含有することができる。また、その他の成分として、必要に応じて殺菌剤、紫外線防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、酸やアルカリ等のpH調整剤が使用できる。
【0017】
本発明の繊維製品用芳香剤組成物は、上記必須成分及び必要に応じて上記任意成分を常法に準じて混合することによって、均一透明な液状組成物として調製することが望ましい。
【0018】
本発明の繊維製品用芳香剤組成物の容器は特に制限されるものではなく、使用形態などによって適宜選定することができるが、繊維製品に適用する際の使用性を考慮すれば、スプレータイプの容器が好適であり、スプレー容器としては、ディスペンサータイプのポンプスプレー容器、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)などを用いることができる。
【0019】
本発明の繊維製品用芳香剤組成物を使用対象とする繊維製品は、その種類が特に制限されるものではなく、例えばシーツ、ピローケース、タオル等の布製品、衣類、カーテン、カーペット、靴等、多岐にわたって使用することができ、これら繊維製品は、綿や麻等の植物繊維及び羊毛や絹等の動物繊維を含む天然繊維から製造したものでも、ポリエステル、ナイロン等の化学繊維から製造したものでもよく、特に限定されない。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。以下に、下記実施例及び比較例で採用した評価方法を示す。
【0021】
<低温安定性>配合直後の組成物をガラス製サンプルビン(50ml)に40g入れ、蓋を閉めて、−5℃に貯蔵し、沈殿・析出の有無を目視にて確認し、発生までの期間を評価した。なお、最長で30日間評価し、変化のなかったものは「安定」とした。
【0022】
<香りの持続性>綿100%平織り白色の布(15cm×15cm)に試料を0.5g噴霧し、香りの持続性について3人の専門パネラーにより評価した。各パネラーの評価点の平均で総合評価した。
【0023】
評価基準:
3点:噴霧直後と同等の香りが30分以上持続する
2点:噴霧直後と同等の香りが5分以上30分未満持続する
1点:噴霧直後と同等の香りが5分未満しか持続しない
香りの持続性総合評価基準
○:各パネラーの評価点の平均が2.5点以上
△:各パネラーの評価点の平均が2点以上2.5点未満
×:各パネラーの評価点の平均が2点未満
【0024】
<香りの質>綿100%平織り白色の布(15cm×15cm)に試料を0.5g噴霧し、香りの質について3人の専門パネラーにより評価した。各パネラーの評価点の平均で総合評価した。
【0025】
各パネラーの評価基準
3点:エタノール臭が気にならない
2点:エタノール臭がわずかに気になる
1点:エタノール臭が気になる
香りの質総合評価基準
○:各パネラーの評価点の平均が2.5点以上
△:各パネラーの評価点の平均が2点以上2.5点未満
×:各パネラーの評価点の平均が2点未満
【0026】
<繊維の風合い>綿100%平織り白色の布(15cm×15cm)に試料を10g噴霧し、乾燥後の風合いについて3人の専門パネラーにより評価した。各パネラーの評価点の平均で総合評価した。
【0027】
各パネラーの評価基準
3点:試料未噴霧の布と比較して、同等。
2点:試料未噴霧の布と比較して、わずかにゴワゴワする。
1点:試料未噴霧の布と比較して、ゴワゴワする。
繊維の風合い総合評価基準
○:各パネラーの評価点の平均が2.5点以上
△:各パネラーの評価点の平均が2点以上2.5点未満
×:各パネラーの評価点の平均が2点未満
【0028】
[実施例1〜2及び比較例1〜6]表1に示す組成となるように、各成分を常法に準じて、配合、混合して、均一な透明液状組成物を調製して、実施例1〜2及び比較例1〜6の繊維製品用芳香剤組成物を得た。各繊維製品用芳香剤組成物について、上記評価方法に従って、低温安定性、香りの持続性、香りの質、繊維の風合いを評価した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベンゼン骨格とアルデヒド基を有する香料成分を0.0001〜5.0重量%、(b)アルキレンオキシドが10〜80モル付加された非イオン性界面活性剤0.01〜1.0重量%、(c)エタノール15〜60重量%及び(d)水20〜80重量%を含有する維製品用芳香剤組成物。
【請求項2】
請求項1の(a)がベンゼン骨格とアルデヒド基を有する香料成分がベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、ピペロナール、シクラメンアルデヒド、バニリンから選ばれる1種または2種以上である繊維製品用芳香剤組成物。



【公開番号】特開2009−35828(P2009−35828A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199592(P2007−199592)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】