説明

織ネーム及びその製造方法、衣料

【課題】織ネームの任意の箇所を手でも簡単に切り取り可能とする。
【解決手段】製造装置1は、アクリル酸ブチルと、アクリル酸-2-エチルヘキシルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリル酸とを等分に混合してなる合成樹脂を織ネーム素材10に塗布する樹脂塗布部2と、塗布した合成樹脂を定着させる定着部3と、織ネーム素材10を個々の織ネーム11に切断する切断部4とを備える。この合成樹脂の塗布により、織ネーム11は任意の箇所が手でも簡単に切り取り可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tシャツ等の衣料に縫着される織ネームとその製造方法と、当該織ネームを付してなる衣料とに関する。
【背景技術】
【0002】
Tシャツ等の衣料において、襟の裏側等には、織ネーム(「織レーベル」や「織ラベル」とも称される)が付されている。この織ネームは、サイズや洗濯適合の表示や、メーカー名、ブランド名等を表示するもので、特許文献1,2に示すように、複数の織ネームが連続状に繋がるテープ状の織ネーム素材を製織した後、個々の織ネームごとに切断して製造され、襟の裏側等の衣料の所定位置に縫着される。
【0003】
【特許文献1】特開平6−341029号公報
【特許文献2】特開2001−301067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コスト低減の目的から、Tシャツ等の衣料は外国のメーカーで製造され、日本に輸入される場合が多い。よって、織ネームも現地で製造されて衣料に縫着されるため、現地でのメーカー名等が表示されることがある。しかし、国内に入荷後は、輸入した国内メーカーや小売業者が新たに表示タグ等を付して販売するため、織ネームに付された現地メーカー名等が不要となる。よって、例えば織ネームの上側にサイズ等の必要な表示があり、下側に現地メーカー名等の不要な表示があったり、織ネーム全体に不要な表示があったりした場合は、織ネームの下側部分や織ネーム全体をハサミ等の工具によって切り取る必要が生じ、非常な手間となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、織ネームの任意の箇所を手でも簡単に切り取り可能となり、取扱いに至便となる織ネーム及びその製造方法、さらには当該織ネームを付した衣料を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、衣料の所定位置に付される織ネームであって、表面に、アクリル酸ブチルと、アクリル酸-2-エチルヘキシルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリル酸とを混合してなる合成樹脂を塗布したことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、織ネームの製造方法であって、複数の織ネームが連続状に製織されるテープ状の織ネーム素材の表面に、アクリル酸ブチルと、アクリル酸-2-エチルヘキシルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリル酸とを混合してなる合成樹脂を塗布した後、加圧して合成樹脂を定着させ、個々の織ネームごとに切断することを特徴とするものである。
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の織ネームを所定位置に付してなる衣料としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハサミ等の工具を使用しなくても織ネームの任意の箇所を手で簡単に切り取ることができる。よって、不要な表示の切除や織ネーム全体の切除が容易に行え、取扱いに至便となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、織ネームの製造装置の概略図で、製造装置1は、樹脂塗布部2と、定着部3と、切断部4とを備える。ここでは複数の織ネームが連続状に繋がるテープ状に製織され、ローラ状に巻回される織ネーム素材10を、図示しない送り機構によって樹脂塗布部2から順番に供給することで、織ネームを製造可能としている。この織ネーム素材10は、例えばアセテートからなる120デニールの縦糸及び横糸を用いて、周知の織機により繻子織で製織されるもので、個々の織ネーム11には、上側にサイズ等の必要表示12が、下側に現地メーカー名等の不要表示13が夫々二段に表示されている。
【0009】
樹脂塗布部2には、合成樹脂を貯留して加熱するタンク5と、そのタンク5から合成樹脂が供給され、周面に吐出孔を形成した上下一対のローラ6,6とが備えられている。このローラ6,6間に織ネーム素材10を通過させることで、織ネーム素材10の両面に合成樹脂を塗布することができる。ここで塗布される合成樹脂は、
1.アクリル酸ブチル
2.アクリル酸−2−エチルヘキシル
3.メタクリル酸メチル
4.アクリル酸ヒドロキシエチル
5.アクリル酸
の5つの樹脂成分を等分に配合してなる合成樹脂が用いられる。
【0010】
次に,定着部3には、上下一対の加圧ローラ7,7が備えられている。すなわち、樹脂塗布部2で合成樹脂が塗布された織ネーム素材10を加圧ローラ7,7間に通過させることで、塗布された合成樹脂が織ネーム素材10の表面に定着することになる。
こうして織ネーム素材10の両面に樹脂加工を施した後、切断部4において、ヒートカット等の周知の切断方法によって織ネーム素材10を個々の織ネーム11,11・・に切断する。この織ネーム11の上端をTシャツ等の衣料14の襟の裏側に縫着すると、図2に示すように、織ネーム11付きの衣料14が得られる。
【0011】
この織ネーム11は、表面に施された樹脂加工によってせん断強度が低下しており、図3(A)のように任意の箇所で端部からせん断力を加えることで、容易に切断することができる。よって、織ネーム11の不要表示13を切除したい場合は、ハサミ等の工具を使用しなくても手で簡単に切り取ることができ、図3(B)のように必要表示12のみを残した織ネーム11とすることができる。
【0012】
このように、上記形態の織ネーム11及び衣料14によれば、織ネーム11の表面に、アクリル酸ブチルと、アクリル酸-2-エチルヘキシルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリル酸とを混合してなる合成樹脂を塗布したことで、ハサミ等の工具を使用しなくても織ネーム11の任意の箇所を手で簡単に切り取ることができる。よって、不要な表示の切除が容易に行え、取扱いに至便となる。
【0013】
なお、合成樹脂の塗布方法としてはローラによるものに限らず、スプレーによって織ネーム素材の両面に合成樹脂を噴霧したり、ペースト状とした合成樹脂中に浸漬させたりしてもよい。また、定着方法も加圧ローラに限らず、上下の型によるプレス等、周知の方法も採用できる。
さらに、上記形態では織ネームの一部のみを切除する例で説明しているが、織ネーム自体が不要となる場合は衣料への縫着部位際で切り取ることで織ネーム全体を切除することも可能である。
その他、衣料としてはTシャツ以外にワイシャツやセーター、デニムやパンツ等の他の衣料でもよいし、織ネームを付ける場所も襟の裏側に限らず、衣料に応じて他の位置に変更して差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】織ネームの製造装置の概略図である。
【図2】織ネーム付き衣料の説明図である。
【図3】(A)(B)は織ネームの切り取り状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1・・製造装置、2・・樹脂塗布部、3・・定着部、4・・切断部、5・・タンク、6・・ローラ、7・・加圧ローラ、10・・織ネーム素材、11・・織ネーム、12・・必要表示、13・・不要表示、14・・衣料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣料の所定位置に付される織ネームであって、表面に、アクリル酸ブチルと、アクリル酸-2-エチルヘキシルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリル酸とを混合してなる合成樹脂を塗布したことを特徴とする織ネーム。
【請求項2】
複数の織ネームが連続状に製織されるテープ状の織ネーム素材の表面に、アクリル酸ブチルと、アクリル酸-2-エチルヘキシルと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリル酸とを混合してなる合成樹脂を塗布した後、加圧して前記合成樹脂を定着させて、個々の織ネームごとに切断することを特徴とする織ネームの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の織ネームを所定位置に付してなる衣料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−53482(P2010−53482A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220085(P2008−220085)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(397044647)株式会社増惣 (2)
【出願人】(596111841)キャブ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】