説明

織機用横糸供給装置

【課題】カーボン繊維等の大形テープ状給糸体を織機の横糸に直接使用可能にし、給糸体を小形に分割する手間が無くして、作業効率が向上し、貯留部分の小形化と送り出しの高速化で、ジェットルーム等の高速織機にも、使用可能とする。
【解決手段】本発明では横糸を給糸体から、送り出す駆動部分を制御するモータに、高速で応答するサーボモータを使用し、このモータと織機の回転を検出するエンコーダとの同期比率運転により織機1回転に対して1ピックの横糸長さを正確に高速で送り出す方法を提供している。又給糸体の巻き径が変化するのを、給糸体のデータ、又は貯留部分での貯留長さ、あるいは横糸フィーラに並設した横糸先端検出フィーラによる信号で制御する方法を提案している。貯留部分については、1ピックの送り出し期間における、横入れ休止期間のみ、貯留動作を行い、出来るだけ貯留長さを短くして、横入れの安定をしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテープ状の横糸を織機に供給する方法の改良技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、フィーダと呼ばれる装置のドラム上に横糸を巻き、このドラム上の糸を解除する方法で横入れ張力を安定させて、横入れするのが一般的な方法で有った。開示の事例として公開特許公報昭57−6615や公開特許公報昭61−2312などが有る。しかしこの方法では横糸に撚りが生じて、テープ状の横糸を撚り無しで横入れすることが出来ない。
【0003】
又最近は撚りが生じないように、給糸体からダンサーロールを使用して貯留し、この貯留部分の横糸を横入れする物がある。しかしこの方法ではダンサーロールを利用するため貯留部分が大きくなり、取り扱いが容易で無く、又応答が遅くて高速化出来ない不便が有った。そこで新しい方法として、特願2005−320363を本出願人が出願した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人が出願した方法では、小さい給糸体の横入れは可能であるが、特にカーボン繊維の給糸体では重量が7〜8Kgとなり、1ピック毎の加速、減速が困難であった。さらに高速織機での要望もあり、給糸体の大型化や織機の高速化に対応した、テープ状横糸の供給装置が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では横糸給糸体をサーボモータにより駆動可能にして、織機の回転と同期させながら連続回転し、給糸体の巻き径変化に対する、1ピック長さの変化に対しては、あらかじめ、給糸体の巻き径データの有る物はこのデータを利用し、データが無い物は横入れ休止期間の横糸貯留部分での横糸長さを測定するか、横入れされた横糸長さを測定することにより、巻き径補正を行い、1ピック長さを正確に高速で送り出すようにした。又貯留部分を設ける必要が有るが、1ピックの休止期間だけでよく、長さが比較的に短くて、装置が小型化された。
【発明の効果】
【0006】
カーボン繊維等の大形テープ状給糸体を織機の横糸に直接使用可能にし、給糸体を小形に分割する手間が無くなり、作業効率が向上した。貯留部分の小形化と送り出しの高速化で、ジェットルーム等の高速織機にも、使用可能となった。貯留部分での貯留長さが短くなり、さらに横入れ期間には張力が低くなるように貯留用エァーの圧力を低くして、横入れ時の張力を低くし横入れミスが出ないようにしたので、織物欠点が少なくなり、織物品質も向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1、図2で本発明の動作方法を説明する。横糸給糸リール1には横糸給糸リール駆動用モータMが機械的に結合されている。横糸7は横糸給糸リール1から送り出される。送り出された横糸7はガイド2とガイド3の間の上部に取り付けられた、貯留用エァーノズル11からの気流により、下方に押し込められる。
この下方部分には横糸7に接触しない程度の大きさで、図1の中の想像線で囲まれた部分に、透明なプラスチックで作られる、透明ダクト4が設けられる。
【0008】
この目的は貯留用エァーノズル11からの気流により横糸が安定した状態で下降するために設けられ、以後この出願に記載する貯留部分とはこの透明ダクト4の内部を指すものとする。透明ダクト4の下部の前後に横糸7が最下降した位置を検出する、投光装置5と受光装置6が設けられている。横糸7はガイド3を出て、クランパー固定部14とクランパー可動部13の間を通過して、横入れ用ノズル15に導かれる。横入れ用ノズル15は織機の横入れタイミング、クランク軸の角度で60°から300°の範囲で図示していない横入れ装置から、横入れ用流体、水又は空気が供給され横入れが行われる。
【0009】
貯留用エァーノズル11の動作を詳しく説明すると、エァーコンプレッサーなどの、エァー源に接続された横入れ休止期間に動作する電空比例弁8と,横入れ期間に動作する電空比例弁9の調整は、横入れ休止期間、貯留に必要な空気圧力になるように電空比例弁8の設定電圧を与え、電空比例弁9には横入れの抵抗が出来るだけ小さく、又この部分での横糸7が絡み合わない程度の圧力に設定する。この空気圧力の切り替えは、織機回転検出用エンコーダE2を制御装置17に取り込み、横入れ期間と休止期間を判別して、3方電磁弁10を切り替えて行い、貯留用エァーノズル11に供給する。
【0010】
貯留用エァーノズル11はこの空気圧力をガイド2とガイド3の間の横糸7に吹き付ける。横入れ休止期間では、横入れ用ノズル15は横入れ動作を停止し、クランパー駆動用ソレノイド12に制御装置2から駆動信号が与えられクランパー駆動部13が動作して、横糸7はクランパー固定部14との間でクランプされている。一方、横糸給糸リール1には横糸給糸リール駆動用モータMから回転力が与えられて回転を続けており、ここから送り出される横糸7は貯留用エァーノズル11の空気圧力により、ガイド2とガイド3間に貯留される。
【0011】
このとき、透明ダクト4の下部に取り付けられている、投光装置5と受光装置6で横入れ開始直前の横糸7の下降位置を確認して、横糸7の送り出し量が1ピック長さに適しているかどうかを判断する。適正であれば制御装置17内部に設定した、織機回転検出用エンコーダE2とM用エンコーダE1との同期比率の割合を変更しない。このとき、横糸給糸リール1の巻き径が小さくなり、横糸7の送り出し量が1ピック長さに不足すると判断されるときは、制御装置2に設定された、横糸給糸リール1の巻き径データ値を変更し、織機との同期比率の割合を変更して横糸給糸リール駆動用モータMを増速して対応する。
【0012】
横糸給糸リール駆動用モータMの駆動は制御装置17からの指令をサーボアンプ18に送り込み、これにより行われる。横糸給糸リール駆動用モータMには機械的に連結された、M用エンコーダE1が取り付けられており、この信号はサーボアンプ18と制御装置17にフィードバックされている。前者は速度安定のため、後者は横糸給糸リール1の回転量を間接的に取り込むために使用される。
【0013】
1ピックの長さ例として、織り幅2.1mのときの貯留量は横入れ期間60°から300°横入れ休止期間300°から60°とすれば2.1mの3分の1の0.7mとなりこれがガイド2とガイド3の間でおれ曲がれば約35Cmとなり、投光装置5と受光装置6の横糸7の検出領域は10Cm程度で良いが、織機の織り幅を考慮して20Cm程度が良い。又横糸7の貯留部での最下部のタイミングは約60°となり、このタイミングで受光装置6からの情報を読み込む。
【0014】
横入れタイミングになると、3方電磁弁10が電空比例弁8から、横入れ空気圧力側の電空比例弁9に接続を切り替え、クランパー駆動用ソレノイド12がOFFとなり、クランパー駆動部13が開放の位置に動作し、横入れ用ノズル15からの噴射圧力により、横糸7が図示していない、縦糸開口部分へ横入れされる。このとき貯留部分の横糸7が自由飛走と呼ばれる状態で横入れされる。
【0015】
さらに貯留部分の横糸7が無くなると、横糸給糸リール1からの送り出し速度、すなわち拘束飛走と呼ばれる速度で横入れされる。横入れが完了すると、再び横入れ休止期間にはいる。以上横糸給糸リール1の巻き径の減少を貯留部に設けられた投光装置5と受光装置6で行う方法を説明した。しかしあらかじめ横糸給糸リール1の巻き径データがあれば、これを利用する方が良い。
【0016】
巻き径データが有る場合いは、このデータをタッチパネル16から制御装置17へ設定しておく、データとして、外形寸法、巻き回数、胴径寸法が入力される。制御装置17には、M用エンコーダE1の回転が取り込まれており、この回転量から横糸給糸リール1の巻き戻し量を計算し、巻き径を巻き戻し量だけ、小さく変更して制御する。当然この場合いは投光装置5と受光装置6は不要であるが安全装置として利用可能である。
【0017】
織機の起動と停止時の説明をすると、準備スイッチ19を動作して貯留部に必要長さの横糸を貯留して、織機を起動する。このとき織機は横入れ休止の角度から起動が行われる。横糸給糸リール駆動モータMは、横入れ開始期間から織機回転検出用エンコーダE2との同期運転を行う。このとき、横糸給糸リール駆動モータMは織機との同期遅れが多少発生するが、サーボモータを使用しているので、加速性能が良く、横入れ完了までに遅れを取り戻して、1ピックの横糸長さを確保する。以後横糸給糸リール駆動モータMは織機回転検出用エンコーダE2と完全な同期運転を行う。
【0018】
糸切れや横入れミスで織機を停止するときは横入れ完了の300°近くのタイミングで運転、停止の判断をしている。このとき停止する必要があるときは、織機側では運転信号をOFFにしてブレーキを掛けて停止するが織機の慣性で約1回転してから停止する。これから織機を180°の最大開口位置に逆転して不良糸の後に入れた1ピックの糸を抜き、さらに1回転逆転して不良糸を抜く。さらに織機を横入れ可能位置まで逆転して起動する。
【0019】
このとき横入れは、運転信号が無くなってからも、織機は1回転するので制御装置17への運転信号が無くなっても1回転する間は織機回転検出用エンコーダE2との同期比率運転を継続できるように、タイマー機能が入れてある。織機を逆転して不良糸を処理するときは、織機と同期比率運転は制御装置17への運転信号が入力されないので動作しない。織機を起動するときは、前に説明した、準備スイッチ19を操作して横入れ休止期間に貯留部分に貯留すべき横糸7を準備してから起動する。
【0020】
図3に巻き径補正方法の別の方法を示す。図1では貯留部分に投光装置5と受光装置6による方法を示したが、図3においては、横糸検出フィーラF1の近傍に並設した横糸先端検出フィーラF2による方法を示す。この方法は横入れされた、糸長さが横糸先端検出フィーラF2の部分に達するか、否かにより横糸給糸リール1の巻き径データを補正するものである。取り込み方法は図2の受光装置6に代えて、横糸が到達するタイミング約クランク軸の角度300°で判断する。この方法は安価では有るが、精度は余り良くない。又横糸給糸リール1の外形を光学的に測定して制御する方法も考えられるが現在は精度が悪く実用化が困難な状況である。
【0021】
以上ジェットルールでの利用方法で説明してきたが、片側レピァ織機での利用方法を説明しておく、片側
レピァ織機では横入れが横入れ用ノズル15に代わって、図示していないレピァバンドの先端に取り付けられた、レピァヘッドにより行われる。レピァヘッドは織機の回転角度約60°からレピァバンドの前進により、図示していない開口部分により開口したたて糸部分に入り、織機の回転角度180°でクランパー固定部14とクランパー可動部13近傍で横糸7を把持してから後進して、たて糸の間に横入れする。
【0022】
このとき、クランパー13は当然開放の位置になっている。又貯留部分の横糸の長さは1例として織り幅2.1mなら、横入れ休止期間とレピァバンドの前進期間で約1.4mになり折れ曲がりを考えるとガイド2とガイド3からの横糸7の折れ曲がり長さは0.7mになり透明ダクト4の長さは0.8m程度でよい。レピァバンドによる横入れでは、横入れ期間に貯留部の横糸7が無くなるまでに、1ピックに必要な、不足分の横糸7が横糸給糸リール1から貯留部分に送り出されてくる。
【0023】
従い、横入れ完了時点で貯留部分の横糸7はほとんど無くなるが、制御誤差の安全を考えて、少し横糸7を貯留部分に残すように設定することも可能である。タッチパネル16や制御装置2はジェットルールで使用した物が利用できる。投光装置5と受光装置6も使用できるが、制御装置2での貯留部での横糸7の読み込みタイミングはクランク軸の180°近くになる。又3方電磁弁10の切り替えタイミングもこのタイミングで切り替えられる。その他の部品もほとんどがジェットルームの説明したときの物が使用される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は巻き径が大きく、重量の大きい鉄板や電線を送り出して、切断する機械や鉄板を直接供給して加工するプレス機械などに利用する用途などが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本装置を構成する概念図である。
【図2】本装置を構成するブロック図である。
【図3】横入れされた、横糸先端を検出する概念図である。
【符号の説明】
【0026】
1 横糸給糸リール
2 ガイド
3 ガイド
4 透明ダクト
5 投光装置
6 受光装置
7 横糸
8 電空比例弁
9 電空比例弁
10 3方電磁弁
11 貯留用エァーノズル
12 クランパー駆動用ソレノイド
13 クランパー駆動部
14 クランパー固定部
15 横入れ用ノズル
16 タッチパネル
17 制御装置
18 サーボアンプ
19 準備スイッチ
M 横糸給糸リール駆動用モータ
E1 M用エンコーダ
E2 織機回転検出用エンコーダ
F1 横糸検出フィーラ
F2 横糸先端検出フィーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機用の横糸供給装置において、あらかじめ横糸を巻いた給糸の巻き径と、織り幅から1ピックに必要な横糸長さを設定し、この条件から、給糸体を駆動するモータの回転数を計算し、織機の回転を検出するエンコーダと同期比率運転を行う。時間の経過により、給糸体の巻き径の減少をあらかじめ設定した、給糸体の巻き径と巻き回数、胴径から求め、給糸体の巻き径補正をした状態で同期比率運転を継続する。この間、1ピック毎の横入れ休止期間には横糸を一時的に貯留して、横糸を供給する方法。
【請求項2】
織機用の横糸供給装置において、あらかじめ横糸を巻いた給糸の巻き径と、織り幅から1ピックに必要な横糸長さを設定し、この条件から、給糸体を駆動するモータの回転数を計算し、織機の回転を検出するエンコーダと同期比率運転を行う。時間の経過により、給糸体の巻き径の減少を横入れ休止期間の貯留長さで測定し、この長さから、給糸体の巻き径補正をした状態で同期比率運転を継続する。この間、1ピック毎の横入れ休止期間には横糸を一時的に貯留して、横糸を供給する方法。
【請求項3】
織機用の横糸供給装置において、あらかじめ横糸を巻いた給糸の巻き径と、織り幅から1ピックに必要な横糸長さを設定し、この条件から、給糸体を駆動するモータの回転数を計算し、織機の回転を検出するエンコーダと同期比率運転を行う。時間の経過により、給糸体の巻き径の減少を反給糸側の横糸到達長さから判断して、給糸体の巻き径補正をした状態で同期比率運転を継続する。この間、1ピック毎の横入れ休止期間には横糸を一時的に貯留して、横糸を供給する方法。
【請求項4】
請求項1、2及び3において、横入れ休止期間の貯留装置にエァーの風圧を利用し、風圧のエァー源を、横入れ期間と休止期間の2つを準備しておき、電磁弁で必要な横入れ期間と休止期間のタイミングで切り替える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−217799(P2007−217799A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35913(P2006−35913)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(300072266)有限会社エィブィアール (8)
【出願人】(393019665)
【Fターム(参考)】