説明

織物

【課題】経糸及び緯糸の少なくとも一方の糸としてS撚糸及びZ撚糸を群状に織り込むことによって模様を観察することができる織物を提供する。
【解決手段】織物11を形成する経糸12を全てZ撚糸15にするとともに、緯糸13を複数本のS撚糸14からなるS撚糸群14Sと、同じく複数本のZ撚糸15からなるZ撚糸群15Zとによって織成する。そして、織物11に正面側から平行光を当て、織物11を正面から観察した場合にはS撚糸群14S又はZ撚糸群15Zの光の反射量が同じになって無地模様として観察される。一方、織物11に正面側から平行光を当て、織物11を斜め上方から観察した場合にはS撚糸群14SとZ撚糸群15Zの光の反射量が異なるため、観察者の視点に入るS撚糸群14SとZ撚糸群15Zの光量に差が生じて同じ色彩を用いても織物11の表面に縞模様を観察できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物に係り、詳しくは意匠性を向上することができる織物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、衣服の生地に用いる織物は、経糸に緯糸を織り込んで平織されている。経糸として単糸を用いる場合にはZ撚糸を、双糸を用いる場合にはS撚糸を用いている。また、緯糸として単糸を用いる場合にはZ撚糸を、双糸を用いる場合にはS撚糸を用いている。これらの平織物は、生地の表面の糸の種類、つまりS撚糸かZ撚糸かの違いに基づく模様は無地で存在しなかった。
【0003】
一方、風呂敷等の一部の布製品においては、その表面の意匠性を高めるために次のような工夫が成されている。すなわち、経糸に対し緯糸としてS強撚糸とZ強撚糸を一本又は複数本交互に織り込んだしぼ織物が提案されている。このしぼ織物は生地の表面の風合が、深くて、シャープで、方向性が交錯した趣のあるものとなっている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−264944号公報
【特許文献2】特開平01−61535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前者の織物は、糸の種類、つまりS撚糸及びZ撚糸の相違に基づく二色以上の模様は形成されることはなかった。従って、織物の表面に例えば縞模様を形成したい場合には、織物を形成した後に、染料によって縞等の模様を形成する方法と、経糸及び緯糸の少なくとも一方の糸を染料によって着色し、その着色された経糸又は緯糸を用いて縞模様等の織物を織成する手段が採用されていた。
【0006】
一方、後者のしぼ織物は、緯糸としてS強撚糸とZ強撚糸を一本又は複数本交互に織り込んでいるが、その表面全体が均一で単純なしぼ模様を呈するのみで、例えば縞模様を形成することはできなかった。
【0007】
本発明は、経糸及び緯糸の少なくとも一方の糸としてS撚糸及びZ撚糸を群状に織り込むことによって模様を観察することができる織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、経糸と緯糸よりなる織物において、前記経糸及び緯糸の少なくとも一方を同一素材及び同一番手の糸とし、複数のS撚糸よりなるS撚糸群と、複数のZ撚糸よりなるZ撚糸群が一組表れるように、又は両群が一組ずつ交互に現れるように織成したことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の少なくとも一方をブライト糸にしたことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の一方をブライト糸にし、他方をダル糸にしたことを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項において、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の少なくとも一方を単糸にしたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜4いずれか一項に記載の発明によれば、経糸及び緯糸の少なくとも一方を同一素材及び同一番手の糸とし、複数のS撚糸群と複数のZ撚糸群が一組表れるように、又は両群が一組ずつ交互に現れるように織成した。このため、例えば織物にその正面側から光を当て、織物を正面から観察した場合には、前記S撚糸群又はZ撚糸群の光の反射量が共に同じになって単なる無地模様として観察される。しかし、織物に例えばその正面側から光を当て、織物を斜め上方から観察した場合には、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の光の反射量が撚方向の相違によって異なるので、S撚糸群及びZ撚糸群に明度差が生じて少なくとも二箇所に明度差の異なる模様を観察することができ、意匠性を向上することができる。織物に照射された光の反射量は、織物に対する光源の位置と、織物を観察する視点の位置とによって変化するので、明度差も変化し、模様も変化するため、趣のある織物となる。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の少なくとも一方をブライト糸にしたことから、そのブライト糸よりなるS撚糸群又はZ撚糸群における光の反射量が多く、撚方向の相違に基づく模様の変化を明瞭に観察することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の一方をブライト糸にし、他方を低明度のダル糸にしたので、ブライト糸よりなるS撚糸群又はZ撚糸群の光の反射量が多くて高明度に観察される場合には、低明度のダル糸を用いたZ撚糸群又はS撚糸群の光の反射量が低明度のため、少なくとも二箇所に明度差による模様を観察できる。また、ブライト糸よりなるS撚糸群又はZ撚糸群の光の反射量が少なくて低明度に観察される場合には、低明度のダル糸を用いたZ撚糸群又はS撚糸群の光の反射量も低明度のため、織物全体が低明度となって模様が殆ど観察できない。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の少なくとも一方を単糸にしたので、双糸以上の糸と比較してS撚糸群及びZ撚糸群の表面の光の反射量の差が大きくなって、模様の明度差を高めることができる。即ち、S撚り単糸及びZ撚り単糸は多数の繊維が同じ撚り角でS撚り方向及びZ撚り方向に撚られているので、単糸表面への光の入反射方向が単調となって明度差が強く表れる。しかし、例えば双糸の場合には、それを構成する単糸の繊維の撚り角と、両単糸相互の撚り角が異なるために、双糸表面への光の入反射方向が複雑となって明度差が弱く表れる。このため、単糸を用いた織物は双糸を用いた織物と比較して、模様の明度差を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明を具体化した織物の斜視図。
【図2】織物の部分拡大平面図。
【図3】(a)及び(b)は、S撚糸及びZ撚糸の部分拡大正面図。
【図4】織物の別の実施形態を示す斜視図。
【図5】織物の別の実施形態を示す平面図。
【図6】(a)及び(b)は織物の別の実施形態を示す斜視図。
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は織物の別の実施形態を示す平面図。
【図8】経糸と緯糸のS撚糸群と、Z撚糸群の甘撚りと普通撚りの組み合わせパターン並びに単糸及び双糸の組み合わせパターンを示す説明図。
【図9】織物の用途の実施例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を縞模様が観察できる織物に具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、織物11は多数本のブライト糸よりなる経糸12と、多数本の同じくブライト糸よりなる緯糸13とによって平織に織成されている。緯糸13は連続して織り込まれた8本のS撚糸14によって形成されたS撚糸群14Sと、このS撚糸群14Sの隣に連続して織り込まれた8本のZ撚糸15によって形成されたZ撚糸群15Zとを一組ずつ交互に繰り返し織成して形成されている。前記経糸12は全て紡績された単糸であって、この実施形態ではZ撚糸15を用いている。また、S撚糸14及びZ撚糸15も全て紡績された単糸である。
【0017】
上述したブライト糸とは、艶のある糸であり、この実施形態においては、ポリエステルの紡績糸、又はマーセライズ加工により光沢が付与されたコットンの紡績糸を用いている。レーヨンやブライト感のあるモダクリル繊維等であってもよい。さらに、超長綿糸或いは絹糸であってもよく、芯糸に光沢のあるフィラメントを螺旋状にカバーリングした糸であってもよい。
【0018】
次に、上記のように構成された織物11の作用について説明する。
図2に示すように、平行光源21によって、織物11の表面に光が矢印方向に照射されると、前記S撚糸14及びZ撚糸15に照射される光の反射量が図3(a),(b)に示すように異なるために、S撚糸群14SとZ撚糸群15Zによって反射される光の反射量も異なる。図3(a),(b)においては、S撚糸14及びZ撚糸15を形成する繊維14a,15aは実際には多数本用いられているが、説明の便宜上数本に限定している。この図3(a)から明らかなようにS撚糸14においては各繊維14aによって平行光源21側に折り返すように反射される光の反射量が多くなり、観察者の視点22に入射される光の量が少なくなり暗く観察される。反対に、Z撚糸15においては、繊維15a,15aの谷部15bとほぼ平行に光が照射されるので、平行光源21側に折り返すように反射される光の量が少なくなり、観察者の視点22に入射される光の量が多くなり明るく観察される。
【0019】
従って、図1に示すように、平行光源21が右斜め上方にあって織物11の観察者の視点22が左側にある場合に、緯糸13を形成するS撚糸群14Sが暗く観察され、Z撚糸群15Zが明るく観察される。このため、S撚糸群14SとZ撚糸群15Zにより観察される光に明度差が生じて縞模様を観察することができる。また、経糸12は全てZ撚糸15によって形成されているので、図1に示すように反射量の少ない低明度の色彩として観察される。
【0020】
上述したように、経糸12と緯糸13の材質として、同じ材質のものを用いるとともに、同じ色彩のものを用いても、S撚糸群14SとZ撚糸群15Zの光の反射量の相違による明度差により織物11に縞模様を観察することができる。織物11に照射された平行光源21から該平行光源21側への光の反射量は、織物11及び平行光源21が所定位置に保持されている状態では一定である。しかし、織物11を観察する視点22の位置が変化すると、観察される光の明度差も変化し、縞模様も変化するため、趣のある織物11となる。
【0021】
図1では織物11を小面積に限定して表示しているので、全体に縞模様を観察することができるが、織物11が広い面積の場合には、無模様として観察される部分も存在し、縞模様は局部的に観察されることになる。
【0022】
前記実施形態では、S撚糸14及びZ撚糸15を共に単糸としたので、双糸以上の乱反射し易い糸と比較して、平行光源21から照射された光の平行光源21側へ折り返す光の反射量が大きくなり、縞模様の明度差を高めることができる。即ち、S撚糸14及びZ撚糸15は多数の繊維が同じ撚り角でS撚り方向及びZ撚り方向に撚られているので、単糸表面への光の入反射方向が単調となって明度差が強く表れる。しかし、例えば双糸の場合には、それを構成する単糸の繊維の撚り角と、両単糸相互の撚り角が異なるために、双糸表面への光の入反射方向が複雑となって明度差が弱く表れる。このため、単糸を用いた織物は双糸を用いた織物と比較して、模様の明度差を高めることができる。
【0023】
双糸として、二本のS撚り単糸をS撚り双糸としたS撚り双糸群と、二本のZ撚り単糸をZ撚り双糸としたZ撚り双糸群を組み合わせた織物と、二本のS撚り単糸をS撚り双糸としたS撚り双糸群と、二本のS撚り単糸をZ撚り双糸としたZ撚り双糸群を組み合わせた織物は、実験の結果、模様を観察することができた。しかし、ニ本のS撚り単糸をZ撚り双糸としたZ撚り双糸群と、二本のZ撚り単糸をS撚り双糸としたS撚り双糸群を組み合わせた織物は、模様が殆ど観察されなかった。これは双糸の表面への光の入反射方向と、該双糸を構成する両単糸相互の表面への光の入反射方向とが互いに相違して打ち消し合うためと考えられる。
【0024】
前記実施形態では、S撚糸群14SのS撚糸14と、Z撚糸群15ZのZ撚糸15のそれぞれの本数を8本としたので、8本以下の撚糸群と比較して観察される縞模様の幅を広くして目立つ縞模様にすることができ、意匠性を向上することができる。加えて、S撚糸群14SのS撚糸14とZ撚糸群15ZのZ撚糸15の本数をそれぞれ30本以上にしたので、29本以下の撚糸群と比較して現れる模様の幅をさらに広くして目立つ模様にすることができ、意匠性をさらに向上することができる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
図9はシャツ、ジャケット、カーテン、壁紙、帽子、壁紙及びテーブルクロスに用いられる経糸12と緯糸13の素材、ブライト糸(B)又はダル糸(D)、普通撚糸(図中「普撚」で示す)又は甘撚糸(図中「甘撚」で示す)、番手、本数、S撚糸群14Sの幅、Z撚糸群15Zの幅寸法についての実施例を示す。なお、シャツと帽子はエステルとレーヨンの混紡である。図中経糸側に表示した「−」はどちらにも該当しないものである。
【0026】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 図4に示すように、経糸12としてS撚糸群14SとZ撚糸群15Zとを一組ずつ交互に繰り返し配列するようにしてもよい。この場合には、織物11の表面模様は市松模様として観察される。
【0027】
・ 図5に示すように、例えば20本のS撚糸14よりなるS撚糸群14S及び20本のZ撚糸15よりなるZ撚糸群15Zを共に、例えば白色(第1の色彩)の糸を用い、Z撚糸群15Zに連なる例えば20本のS撚糸群14S及び20本のZ撚糸15のZ撚糸群15Zを共に黄色(第2の色彩)の糸を用いるようにしてもよい。この場合には、白色(第1の色彩)の濃淡と黄色(第2の色彩)の濃淡が交互に現れるので、計四種類の縞模様を観察することができ、意匠性をさらに向上することができる。なお、第1及び第2の色彩は、例えば、白対緑、黄対橙、白対灰等様々な色彩の組み合わせが考えられる。
【0028】
・ 図6(a)に示すように、前記緯糸のS撚糸群14Sをブライト糸とし、Z撚糸群15Zをダル糸又はセミダル糸にしてもよい。この実施形態で用いるダル糸として、例えば酸化アンチモンを主体とする難燃剤を5〜60重量%含有するハロゲン含有繊維のスパン糸がある。前記ハロゲン含有繊維は、アクリロニトリル40〜70重量%、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有単量体60〜30重量%及びスルホン酸基を含有する単量体0〜3重量%よりなる共重合体で構成されている。
【0029】
この別例においては、ブライト糸のS撚糸群14Sの反射量の変化によって、縞模様の態様が変化する。このため、例えば図6(a)に示すように平行光源21が左斜め上方にあって織物11を手前から見たときには、S撚糸群14Sの光の平行光源21側への反射量が少なくなって視点22に入る光が高明度となり、縞模様が観察される。反対に、図6(b)に示すように平行光源21が右斜め上方にあって、手前から視たときにはS撚糸群14Sの光の平行光源21側への反射量が多くなって視点22に入る光が低明度となり、縞模様が殆ど観察されないことになる。
【0030】
上記別例において、前記緯糸13のS撚糸群14Sをダル糸又はセミダル糸とし、Z撚糸群15Zをブライト糸にしてもよい。又、図示しないが経糸12をS撚糸群14SとZ撚糸群15Zで構成し、S撚糸群14Sをダル糸又はセミダル糸とし、Z撚糸群15Zをブライト糸にしてもよい。さらに、経糸12のS撚糸群14Sをブライト糸とし、Z撚糸群15Zをダル糸又はセミダル糸にしてもよい。
【0031】
・ 図7(a)に示すように、緯糸13のみに一組のS撚糸群14SとZ撚糸群15Zが表れるようにしてもよい。図7(b)に示すように、経糸12のみに一組のS撚糸群14SとZ撚糸群15Zが表れるようにしてもよい。図7(c)に示すように、緯糸13及び経糸12にS撚糸群14SとZ撚糸群15Zが一組ずつ表れるようにしてもよい。この場合には、明度差が三段階に変化するので、三種類の模様を観察することができる。図7(d)に示すように、緯糸13のみにS撚糸群14SとZ撚糸群15Zが交互に二組、又は図示しないが三組以上交互に表れるようにしてもよい。図7(e)に示すように、経糸12のみにS撚糸群14SとZ撚糸群15Zが交互に二組、又は図示しないが三組以上交互に表れるようにしてもよい。図7(f)に示すように、経糸12及び緯糸13にS撚糸群14SとZ撚糸群15Zがそれぞれ二組、又は図示しないが三組以上交互に表れるようにしてもよい。さらに、図示しないが、経糸12及び緯糸13に用いるS撚糸群14SとZ撚糸群15Zの両群の折り込み組数は、経糸12が例えば3〜50組の中から任意の組数に、緯糸13が例えば3〜50組の中から任意の組数に設定が可能である。
【0032】
・ 前記経糸12及び緯糸13のS撚糸群14SとZ撚糸群15Zの糸の単糸と双糸の組み合わせとして、図8に示すように例えば1〜16のパターンが考えられる。図8中、「単」を「甘撚糸」、「−」を、「普通撚糸」としてもよい。又、図8中、「単」を「強撚糸」、「−」を、「普通撚糸」としてもよい。さらに、図8中、「単」を「ブライト糸」、「−」を、「ダル糸又はセミダル糸」としてもよい。
【0033】
・ 図示しないが、S撚糸群14SとZ撚糸群15Zの間に、S撚糸群14SとZ撚糸群15Zの色彩と異なる例えば灰、赤、黄或いは青等の色糸よりなる色糸群を織り込むようにしてもよい。又、S撚糸群14S及びZ撚糸群15Zの間にカバーリング糸を一本以上織り込んでもよい。
【0034】
・ 図示しないが、S撚糸群14SとZ撚糸群15Zの各糸の太さ(番手)や打ち込み密度を変化させてもよい。
・ 前記経糸12及び緯糸13の少なくとも一方を、S撚糸群14SとZ撚糸群15Zが少なくとも一組、又は両群が一組ずつ交互に現れるように織成し、前記S撚糸群14SのS撚糸14及びZ撚糸群15ZのZ撚糸15の少なくとも一方をブライト糸にし、他の撚糸をダル糸又はセミダル糸にしてもよい。これらの場合には、織物11に例えば平行光源21から光が照射されると、前記S撚糸群14SのS撚糸14及びZ撚糸群15ZのZ撚糸15の平行光源21側への反射量の相違によって、視点22により観察されるS撚糸群14S及びZ撚糸群15Zの光に明度差が生じる。そのため、少なくとも二箇所に明度差の異なる模様を観察することができ、意匠性を向上することができる。
【0035】
・ 上記各実施形態において、前記経糸12及び緯糸13の少なくとも一方のS撚糸群14S及びZ撚糸群15Zを三子撚糸以上としてもよい。
・ 上記各実施形態において、前記S撚糸群14SとZ撚糸群15Zの糸の本数を、それぞれ2本、3本、4本、5本、6本又は7本以上としてもよい。又、前記S撚糸群14SとZ撚糸群15Zの本数をそれぞれ8本以上としてもよい。さらに、両糸群の糸の本数をそれぞれ10本、15本、20本、25本又は30本以上にしてもよく、これらの場合には、9本、14本、19本、24本又は29本以下の本数の撚糸群と比較して縞模様の幅をさらに広くして目立つ縞模様を観察することが可能となる。
(定義)
この明細書において、織物とは、緯糸挿入経編み機により製造された布地も含むものとする。また、S撚糸又はZ撚糸とは、撚りの付与された単糸、双糸、三子撚糸以外に、芯糸にフィラメントをS撚螺旋状又はZ撚螺旋状にカバーリングした糸も含むものとする。
(技術的思想)
前記実施形態から把握される請求項以外の技術的思想について以下に説明する。
(イ)請求項1〜4のいずれか一項において、緯糸のみにS撚糸群とZ撚糸群が一組表れるようにしたことを特徴とする織物。
(ロ)請求項1〜4のいずれか一項において、経糸のみにS撚糸群とZ撚糸群が一組表れるようにしたことを特徴とする織物。
【0036】
上述した(イ)又は(ロ)記載の発明は、二種類の模様を観察することができる。
(ハ)請求項1〜4のいずれか一項において、緯糸及び経糸にS撚糸群とZ撚糸群がそれぞれ一組表れるようにしたことを特徴とする織物。
【0037】
上述した(ハ)記載の発明は三種類の模様を観察することができる。
(ニ)請求項1〜4のいずれか一項において、緯糸のみにS撚糸群とZ撚糸群が交互に複数組表れるようにしたことを特徴とする織物。
(ホ)請求項1〜4のいずれか一項において、経糸のみにS撚糸群とZ撚糸群が交互に複数組表れるようにしたことを特徴とする織物。
【0038】
上述した(ニ)又は(ホ)記載の発明は、縞模様を観察することができる。
(ヘ)請求項1〜4のいずれか一項において、経糸及び緯糸にS撚糸群とZ撚糸群が交互に複数組表れるようにしたことを特徴とする織物。
【0039】
上述した(ヘ)記載の発明は、市松模様を観察することができる。
【符号の説明】
【0040】
11…織物、12…経糸、13…緯糸、14…S撚糸、15…Z撚糸、14S…S撚糸群,15Z…Z撚糸群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸よりなる織物において、前記経糸及び緯糸の少なくとも一方を同一素材及び同一番手の糸とし、複数のS撚糸よりなるS撚糸群と、複数のZ撚糸よりなるZ撚糸群が一組表れるように、又は両群が一組ずつ交互に現れるように織成したことを特徴とする織物。
【請求項2】
請求項1において、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の少なくとも一方をブライト糸にしたことを特徴とする織物。
【請求項3】
請求項1において、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の一方をブライト糸にし、他方をダル糸にしたことを特徴とする織物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記S撚糸群のS撚糸及びZ撚糸群のZ撚糸の少なくとも一方を単糸にしたことを特徴とする織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−42922(P2011−42922A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242432(P2010−242432)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【分割の表示】特願2004−288976(P2004−288976)の分割
【原出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(597152423)糀屋紡織株式会社 (2)
【Fターム(参考)】