説明

缶の搬送装置

【課題】マンドレルに缶を精度よく嵌合させることができ、たとえ缶がマンドレルに嵌合されなかった場合であっても、該缶に続く他の缶が連鎖的に不良缶となることを防止でき、かつ、スラッパーの部品寿命を延長できる缶の搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送方向Cに沿うように延びるとともに該搬送方向Cに向かうに従い漸次一方側に向かって傾斜し、搬送方向Cの基端部が片持ち支持され、先端部が自由端とされたスラッパー5を備え、タレットが搬送方向Cに回転することにより、ポケットに支持された缶100が、その底部100aをスラッパー5に摺接させつつ前記一方側に向けて押し込まれ、該缶100の口部100bがマンドレル20に嵌合される缶の搬送装置であって、スラッパー5は、第1弾性体8と、第1弾性体8に沿って延びるとともに、第1弾性体8よりも搬送方向Cに長い第2弾性体9と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶の製造設備に用いられる缶の搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
缶の製造設備には、例えば下記特許文献1に示されるように、有底筒状に成形された缶の口部に嵌合されることにより該缶を片持ち支持する複数のマンドレルと、該マンドレルに支持された缶の胴部に印刷を行う複数のブランケットと、を備えた印刷機が設けられている。また印刷機には、前工程(成形機側)からシュートに送られてくる缶をマンドレルに装着するための缶の搬送装置が設けられている。
【0003】
この種の缶の搬送装置は、円板状をなし中心軸を中心とした周回方向のうち缶の搬送方向に向けて回転されるタレットと、タレットの外周部に互いに等間隔をあけて複数設けられ、有底筒状の缶がその缶軸をタレットの中心軸に平行に配置するように支持されるポケットと、ポケットに缶を送る前記シュートと、ポケットに対して、タレットの中心軸方向のうち該ポケットに支持される缶の口部側である一方側に配設され、ポケットに同期するように搬送方向に向けて移動する複数の前記マンドレルと、ポケットに対して、タレットの中心軸方向のうち該ポケットに支持される缶の底部側である他方側に配設され、搬送方向に沿うように延びるとともに該搬送方向に向かうに従い漸次前記一方側に向かって傾斜し、搬送方向の基端部が片持ち支持され、先端部が自由端とされたスラッパーと、を備えている。尚、スラッパーは、摺動性のよい樹脂材料等で形成されている。
【0004】
このような構成とされた缶の搬送装置においては、タレットが搬送方向に回転することにより、図6に示されるように、ポケットに支持された缶100が、その底部100aをスラッパー110に摺接させつつ前記一方側(図6の上側)に向けて押し込まれ、該缶100の口部100bがマンドレル20に嵌合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4138941号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の缶の搬送装置においては、下記の課題があった。
すなわち、図7に示されるように、例えばマンドレル20に収まらないような成形不良の缶(以下、不良缶)100Zが搬送され、この不良缶100Zの口部100bがマンドレル20に嵌合されなかった場合には、不良缶100Zが搬送方向Cに移動するに従い不良缶100Zが自らも潰されながら漸次スラッパー110を前記他方側(図7の下側)に押し下げてしまう。これにより、スラッパー110が弾性変形して傾斜が緩くなり、この不良缶100Zに続く正常な缶100の口部100bと該缶100に対応するマンドレル20との距離が大きくなり、缶の座りが不安定になるため、前記正常な缶100がマンドレル20に嵌合できなくなり装置外に落缶したり、正常な成形缶であるにもかかわらず、マンドレル20とスラッパー110との間に不正位置にて挟まれ、潰れ不良缶となってしまう。そして一旦このような状態になると、不良缶100Zに続く複数の正常な缶100が連鎖的に潰れ不良缶となってしまい、スラッパー110を再び押し下げてしまい悪循環が生じる。よって缶100がマンドレル20に正常に嵌合されるまでの間に数十個もの不良缶が作製され、無駄になっていた。
【0007】
このように、連鎖的に不良缶が作製されることを防止する目的で、図6に示される調整ネジ120を締め付けて、スラッパー110を前記一方側(図6の上側)へ押し、該スラッパー110の傾斜をできるだけ大きくとることが行われている。この場合、不良缶100Zによって前記他方側に押し下げられたスラッパー110が復元変形しやすくなり、不良缶の連鎖数を少なくできるが、その一方で該スラッパー110の磨耗が早期に進行して、頻繁に部品交換する必要が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、マンドレルに缶を精度よく嵌合させることができ、たとえ缶がマンドレルに嵌合されなかった場合であっても、該缶に続く他の缶が連鎖的に不良缶となることを防止でき、かつ、スラッパーの部品寿命を延長できる缶の搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、円板状をなし、中心軸を中心とした周回方向のうち缶の搬送方向に向けて回転されるタレットと、前記タレットの外周部に互いに等間隔をあけて複数設けられ、有底筒状の缶が、その缶軸を前記タレットの中心軸に平行に配置するように支持されるポケットと、前記ポケットに缶を送るシュートと、前記ポケットに対して、前記タレットの中心軸方向のうち該ポケットに支持される缶の口部側である一方側に配設され、前記ポケットに同期するように前記搬送方向に向けて移動する複数のマンドレルと、前記ポケットに対して、前記タレットの中心軸方向のうち該ポケットに支持される缶の底部側である他方側に配設され、前記搬送方向に沿うように延びるとともに該搬送方向に向かうに従い漸次前記一方側に向かって傾斜し、前記搬送方向の基端部が片持ち支持され、先端部が自由端とされたスラッパーと、を備え、前記タレットが前記搬送方向に回転することにより、前記ポケットに支持された缶が、その底部を前記スラッパーに摺接させつつ前記一方側に向けて押し込まれ、該缶の口部が前記マンドレルに嵌合される缶の搬送装置であって、前記スラッパーは、第1弾性体と、前記第1弾性体に沿って延びるとともに、前記第1弾性体よりも前記搬送方向に長い第2弾性体と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る缶の搬送装置によれば、タレットが回転して、ポケットに支持された缶が搬送方向に搬送されると、該缶は、その底部がまずスラッパーの第1弾性体(及び第2弾性体)に摺接され、次いで該第1弾性体よりも搬送方向に長い第2弾性体に摺接されつつ、その口部がマンドレルに押し込まれる。このような構成により、下記の効果を奏することになる。
【0011】
すなわち、不良缶が搬送され、その口部がマンドレルに嵌合されなかった場合に、該不良缶は、搬送方向の下流側(第1弾性体の先端部付近)において第1弾性体及び第2弾性体を前記他方側に押し下げ弾性変形させるが、さらに下流側に搬送された時点で第1弾性体上からは下流側に外れるとともに、該第1弾性体は復元変形する。この不良缶に続く搬送方向上流側の正常な缶は、その底部を復元変形後の第1弾性体に摺接させながら精度よく搬送されていき、その口部がマンドレルに嵌合される。
【0012】
そして、前記正常な缶が第1弾性体上を移動する間に、前記不良缶は第2弾性体上からも落缶すること等によって装置外に外れて、該第2弾性体が復元変形する。マンドレルに嵌合された前記正常な缶は、その底部を第1弾性体から復元変形後の第2弾性体へと摺接させながら該マンドレルに深く押し込まれ、マンドレルに安定して支持される。
このように、缶(不良缶)がマンドレルに嵌合されなかった場合に、該缶に続く他の缶が確実にマンドレルに嵌合されて、連鎖的に不良缶が作製されることを防止できる。
【0013】
また、搬送方向に長い第2弾性体のバネ定数が、第1弾性体のバネ定数よりも小さいために弾性変形しやすくなっており、正常な缶が連続的に搬送されている通常の状態においては、下記のような動作となる。
すなわち、搬送方向の下流側に位置する缶の押し圧により第2弾性体はある程度前記他方側に弾性変形させられるが、第1弾性体はバネ定数が大きいために該第2弾性体ほどに弾性変形させられることはなく、該缶に続く他の缶は、第1弾性体上を精度よく搬送されていく。そして、前記他の缶が第1弾性体上を移動する間に第2弾性体が復元変形するので、前記下流側に達した他の缶は第1弾性体上から第2弾性体上へとスムースに移行するとともに、マンドレルに精度よく嵌合し深く押し込まれ、安定して支持される。
【0014】
また、従来のように、スラッパーを復元変形させやすくする目的で傾斜を大きくとる必要がないことから、スラッパーの傾斜を緩やかに設定できるとともに該スラッパーの磨耗を確実に抑制でき、部品寿命を延長できる。
このように、本発明によれば、材料費用(缶)の無駄を省いて生産性を向上でき、かつ、設備費用を削減することができるのである。
【0015】
また、本発明に係る缶の搬送装置において、前記第1弾性体と前記第2弾性体とは、前記搬送方向の基端部で互いに連結され、前記搬送方向の先端部で互いに分離されていることとしてもよい。
【0016】
この場合、第1弾性体と第2弾性体とが搬送方向の基端部(上流側部分)で互いに連結されているので、これら第1、第2弾性体同士の間に段差が生じにくくなり、缶の搬送がよりスムースに行える。さらに、第1弾性体と第2弾性体とを一体に形成すれば、使用部材の数を削減できる。
【0017】
また、本発明に係る缶の搬送装置において、前記スラッパーは、前記一方側を向くとともに、缶の底部に摺接される摺動部材と、前記摺動部材の前記他方側に配置されて該摺動部材と一体に弾性変形可能とされた板状の弾性部材と、を備えたこととしてもよい。
【0018】
この場合、摺動部材によりスラッパーと缶の底部とのすべり性が確保され、缶の搬送がスムースに行われる。また、弾性部材によりスラッパーが確実に弾性変形及び復元変形して、前述した作用により缶の口部がマンドレルに精度よく安定して嵌合される。
すなわち、従来では、スラッパーを樹脂材料等からなる単一材料で形成していたため、すべり性及び弾性を両方確保することが難しかったが、本発明によればこれら機能の両立が容易かつ確実に行える。また、摺動部材として、すべり性・耐磨耗性を考慮した材料を用いることで、高速運転中における缶の底部への傷付きが防止され、缶のマンドレルへの供給がよりスムースとなるので好ましい。
【0019】
また、本発明に係る缶の搬送装置において、前記第2弾性体は、前記タレットの径方向に沿う両側から前記第1弾性体を挟むように形成されていることとしてもよい。
【0020】
この場合、搬送方向の下流側において缶をマンドレルに深く押し込むように作用する第2弾性体が、第1弾性体を挟むように形成されているので、該第2弾性体が缶の底部を安定して押し込みやすい。
【0021】
また、本発明に係る缶の搬送装置において、前記第1弾性体の基端部から先端部までの長さは、前記搬送方向に隣り合う前記ポケット同士の配置間隔Pに対して、0.5×P〜1.0×Pに設定され、前記第2弾性体の基端部から先端部までの長さは、前記配置間隔Pに対して、0.8×P〜2.5×Pに設定されることとしてもよい。
【0022】
この場合、第1弾性体の長さが、ポケット同士の配置間隔Pに対して、0.5×P〜1.0×Pに設定されているので、不良缶が搬送されて第1弾性体の先端部付近に位置した際に、該不良缶に続く正常な缶が第1弾性体の基端部に配置される。そして、正常な缶が第1弾性体上を移動し始める初期段階において、前記不良缶は第1弾性体上から下流側に外れ第2弾性体上に移行して、該第1弾性体は復元変形する。これにより、前記正常な缶は、第1弾性体上を精度よく搬送され、その口部がマンドレルに確実に嵌合される。
【0023】
さらに、第2弾性体の長さが、ポケット同士の配置間隔Pに対して、0.8×P〜2.5×Pに設定されているので、前述のように正常な缶が第1弾性体上を移動している間に、前記不良缶が第2弾性体から下流側に外れて、第2弾性体が復元変形する。このように、正常な缶が第1弾性体上から第2弾性体上に移行する前に該第2弾性体が確実に復元変形するので、該正常な缶は、その底部を第1弾性体から復元変形後の第2弾性体へと摺接させながら該マンドレルに深く押し込まれることになり、マンドレルに安定して支持される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る缶の搬送装置によれば、マンドレルに缶を精度よく嵌合させることができ、たとえ缶がマンドレルに嵌合されなかった場合であっても、該缶に続く他の缶が連鎖的に不良缶となることを防止でき、かつ、スラッパーの部品寿命を延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る缶の搬送装置の要部を説明する正面図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図であり、搬送される缶、マンドレル及びスラッパーを説明する図である。
【図3】図2において、不良缶が搬送された場合のスラッパーの動作を説明する図である。
【図4】図1のスラッパーの弾性部材を示す図である。
【図5】本実施形態のスラッパーの変形例を説明する図である。
【図6】従来の缶の搬送装置において、搬送される缶、マンドレル及びスラッパーを説明する図である。
【図7】図6において、不良缶が搬送された場合のスラッパーの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係る缶の搬送装置1は、成形機と印刷機とを備えた缶の製造設備において、前記印刷機に設けられるものである。缶の製造設備は、成形機にて板状の基材を有底筒状の缶100に成形加工し、印刷機にてこの缶100の胴部に印刷加工を施す。
図1及び図2において、缶の搬送装置1は、成形機から印刷機に符号Xで示される向きに送られてくる缶100を、搬送方向Cに搬送しつつマンドレル20に嵌合させる。そして、印刷機において、マンドレル20に装着された缶100の胴部にブランケットからインキが転写されることにより、印刷が施される。
【0027】
缶の搬送装置1は、円板状をなし、中心軸を中心とした周回方向のうち缶100の搬送方向Cに向けて回転されるタレット2と、タレット2の外周部に互いに等間隔をあけて複数設けられ、有底筒状の缶100が、その缶軸をタレット2の中心軸に平行に配置するように支持されるポケット3と、ポケット3に缶100を送るシュート4と、ポケット3に対して、タレット2の中心軸方向のうち該ポケット3に支持される缶100の口部100b側である一方側(図2の上側)に配設され、ポケット3に同期するように搬送方向Cに向けて移動する複数のマンドレル20と、ポケット3に対して、タレット2の中心軸方向のうち該ポケット3に支持される缶100の底部100a側である他方側(図2の下側)に配設され、搬送方向Cに沿うように延びるとともに該搬送方向Cに向かうに従い漸次前記一方側に向かって傾斜し、搬送方向Cの基端部(図2の左端部)が片持ち支持され、先端部(図2の右端部)が自由端とされたスラッパー5と、を備えている。そして、タレット2が搬送方向Cに回転することにより、ポケット3に支持された缶100が、その底部100aをスラッパー5に摺接させつつ前記一方側に向けて押し込まれ、該缶100の口部100aがマンドレル20に嵌合されるようになっている。
【0028】
図1は、缶の搬送装置1をタレット2の中心軸方向から見た正面図であり、この正面図にはタレット2の外周部の一部が示されている。タレット2の外周部には、前記ポケット3を有する缶搬送部材6が、周方向均等に複数配設されている。缶搬送部材6は、その径方向外方を向く外面が大きく切り欠かれるように凹状をなしており、この凹状の部分がポケット3となっている。また、缶搬送部材6におけるポケット3の搬送方向Cとは反対側(すなわち搬送方向Cの上流側)の部分は、前記反対側へ向かうに従い漸次タレット2の径方向内方に向かうように傾斜しており、この缶搬送部材6の前記反対側に隣り合う他の缶搬送部材6のポケット3の搬送方向C側の端部に滑らかに連なるように形成されている。
【0029】
ポケット3は、径方向外方及び搬送方向Cに向けて開口するように形成されており、タレット2の中心軸に垂直な断面が凹円弧状となっている。詳しくは、ポケット3の前記断面の曲率半径は、缶100の前記断面における外周面の曲率半径と略同一に設定されていて、缶100がポケット3に支持された状態で、該ポケット3の内面が缶100の外周面のうち周方向の1/3程度に略隙間なく当接するようになっている。
【0030】
シュート4は、内部に缶100を転走可能な筒状や枠状等に形成されており、その先端がタレット2の外周部に向けて開口している。そして、搬送方向Cに移動する缶搬送部材6がシュート4の先端開口に接近して該先端開口前を通過する際に、各缶搬送部材6のポケット3に缶100が順次受け渡されるようになっている。
【0031】
図2において、マンドレル20は、円柱状をなしており、その軸がタレット2の中心軸に平行に延びて配設されている。マンドレル20は、各ポケット3に支持された缶100の缶軸の略延長線上に位置するように複数配設されており、缶搬送部材6の移動に同期するように搬送方向Cに移動可能とされている。マンドレル20の他方側の端部の外径は、缶100の口部100bの内径よりも僅かに小さく設定されており、前記端部に缶100の口部100bが嵌合可能となっている。また、マンドレル20の他方側の端部には、缶100をバキューム吸引するための孔(不図示)が開口している。
【0032】
図1において、スラッパー5は、搬送方向Cに沿うように直線状に延びる帯板状をなしており、その搬送方向Cの基端部が基台7に支持されている。基台7は、シュート4の先端開口と該先端開口前を通過する缶搬送部材6との間において、該缶搬送部材6の他方側に配置されている。基台7の一方側を向く面は、摺動性のよい材料で形成されている。
【0033】
そして、スラッパー5は、第1弾性体8と、第1弾性体8に沿って延びるとともに、第1弾性体8よりも搬送方向Cに長い第2弾性体9と、を備えている。本実施形態では、第1弾性体8と第2弾性体9とは、搬送方向Cの基端部で互いに連結されて基台7に支持され、搬送方向Cの先端部で互いに分離されている。詳しくは、第1弾性体8と第2弾性体9とは、前記基端部以外の部分が互いに分離されているとともに、それぞれ独立して弾性変形可能となっている。
【0034】
図1に示される正面視において、第1弾性体8は、その一方側に露出する面がI字状をなし、第2弾性体9は前記露出する面がU字状をなしている。第2弾性体9は、タレット2の径方向に沿う両側から第1弾性体8を幅方向に挟むように、かつ、第1弾性体8の搬送方向C側の端部を囲むように形成されている。
【0035】
また、第1弾性体8の基端部から先端部までの長さ(搬送方向Cに沿う長さ)L1は、搬送方向Cに隣り合うポケット3同士の配置間隔Pに対して、0.5×P〜1.0×Pに設定され、第2弾性体9の基端部から先端部までの長さL2は、前記配置間隔Pに対して、0.8×P〜2.5×Pに設定されている。尚、ここで言う長さL1、L2とは、第1、第2弾性体8、9のうち、基台7よりも搬送方向C側に位置する一方側に露出された部分(すなわち缶100の底部100aに摺接される部分)の長さである。また、搬送方向Cに隣り合うポケット3同士の配置間隔Pとは、これらポケット3に支持される缶100の缶軸同士の軸間距離である。また、スラッパー5全体としての前記径方向の長さ(幅)は、缶100の半径程度となっている。
【0036】
また、図2に示されるように、スラッパー5が搬送方向Cに向かうに従い一方側に向かって傾斜する傾斜角θは、3°〜11°の範囲内に設定されている。本実施形態では、この傾斜角θが7.5°程度とされている。
【0037】
また、スラッパー5は、一方側を向くとともに、缶100の底部100aに摺接される摺動部材10と、摺動部材10の他方側に配置されて該摺動部材10と一体に弾性変形可能とされた板状の弾性部材11と、を備えた二重構造となっている。摺動部材10は、すべり性・耐磨耗性に優れた材料からなり、具体的には、例えばPET樹脂、PEEK樹脂等が用いられる。また、弾性部材11には、金属製の板バネ等が用いられる。
【0038】
図4は、スラッパー5の弾性部材11を示す正面図である。弾性部材11は、搬送方向Cに長い帯板状をなしており、その矩形状の基端部(図4における左端部)11Aが基台7に固定支持される。また、弾性部材11の基端部11A以外の部分(図4において基端部11Aの右側部分)のうち、幅方向(図4の上下方向)の中央にI字状の第1弾性体部分11Bが形成され、該第1弾性体部分11Bを幅方向両側から挟むようにU字状の第2弾性体部分11Cが形成されている。
【0039】
また、図中に符号12で示すものは、弾性部材11を厚さ方向に貫通する取付ネジ孔であり、これら取付ネジ孔12に一方側へ向けてネジが挿通されるとともに摺動部材10のネジ穴(不図示)にねじ込まれることにより、弾性部材11と摺動部材10とが一体とされる。尚、前記ネジを用いる代わりに、接着剤や両面接着テープ等を用いて弾性部材11と摺動部材10とを一体に積層しても構わない。
【0040】
また、摺動部材10は、搬送方向Cに長い帯板状をなしており、その外形は、弾性部材11の外形に対して長さ方向(図4の左右方向)及び幅方向の大きさが略同一であり、厚さ方向には若干大きくなっている。また特に図示しないが、摺動部材10においても弾性部材11と同様に、矩形状の基端部10A、I字状の第1弾性体部分10B、及び、U字状の第2弾性体部分10Cが形成されている。
【0041】
そして、摺動部材10と弾性部材11とが積層されたスラッパー5において、第1弾性体部分10Bと11Bとが一体とされ第1弾性体8となり、第2弾性体部分10Cと11Cとが一体とされ第2弾性体9となり、基端部10Aと11Aとが一体とされ基台7に固定されるようになっている。
このように、スラッパー5の第1、第2弾性体8、9同士は一体に形成されており、互いに同一材料からなるので、第1弾性体8のバネ定数に対して、搬送方向Cに長い第2弾性体9のバネ定数が小さくなっている。
【0042】
以上の構成とされた本実施形態に係る缶の搬送装置1によれば、タレット2が中心軸回りに回転して、ポケット3に支持された缶100が搬送方向Cに搬送されると、該缶100は、その底部100aがまずスラッパー5の第1弾性体8(及び第2弾性体9)に摺接され、次いで該第1弾性体8よりも搬送方向Cに長い第2弾性体9に摺接されつつ、その口部100bがマンドレル20に押し込まれる。このような構成により、下記の効果を奏することになる。
【0043】
すなわち、不良缶100Zが搬送され、その口部100bがマンドレル20に嵌合されなかった場合に、該不良缶100Zは、搬送方向Cの下流側(第1弾性体8の先端部付近)において自らは潰されながらも第1弾性体8及び第2弾性体9を他方側に押し下げ弾性変形させるが、さらに下流側に搬送された時点で第1弾性体8上からは下流側に外れるとともに、該第1弾性体8は復元変形する(図3参照)。この不良缶100Zに続く搬送方向C上流側の正常な缶100は、図3に2点鎖線で示すように、その底部100aを復元変形後の第1弾性体8に摺接させながら精度よく搬送されていき、その口部100bがマンドレル20に嵌合される。
【0044】
そして、前記正常な缶100が第1弾性体8上を移動する間に、前記不良缶100Zは第2弾性体9上からも下流側、若しくは落缶により装置外に外れて、該第2弾性体9が復元変形する。図2に示されるように、マンドレル20に嵌合された前記正常な缶100は、その底部100aを第1弾性体8から復元変形後の第2弾性体9へと摺接させながら該マンドレル20に深く押し込まれ、マンドレル20に安定して支持される。尚、缶100の口部100bがマンドレル20に嵌合される際には、マンドレル20の他方側の端部の孔からバキューム吸引が行われており、口部100bがより深く嵌合しやすくなっている。
このように、缶100(不良缶100Z)がマンドレル20に嵌合されなかった場合であっても、該缶100(不良缶100Z)に続く他の缶100が確実にマンドレル20に嵌合されて、連鎖的に不良缶が作製されることを防止できる。
【0045】
また、搬送方向Cに長い第2弾性体9のバネ定数が、第1弾性体8のバネ定数よりも小さいために弾性変形しやすくなっており、正常な缶100が連続的に搬送されている通常の状態においては、下記のような動作となる。
すなわち、搬送方向Cの下流側(第1弾性体8の先端部付近)に位置する缶100の押し圧により第2弾性体9はある程度他方側に弾性変形させられるが、第1弾性体8はバネ定数が大きいために該第2弾性体9ほどに弾性変形させられることはなく、該缶100に続く他の缶100は、第1弾性体8上を精度よく搬送されていく。そして、前記他の缶100が第1弾性体8上を移動する間に第2弾性体9が復元変形するので、前記下流側に達した他の缶100は第1弾性体8上から第2弾性体9上へとスムースに移行するとともに、マンドレル20に精度よく嵌合し深く押し込まれ、安定して支持される。具体的に、本実施形態においては、例えば2000cpmであっても安定して缶を搬送(生産)できる。
【0046】
また、従来(図6参照)のように、スラッパー110を復元変形させやすくする目的で傾斜を大きくとる必要がないことから、本実施形態においては、スラッパー5の傾斜角θが、3°〜11°と小さく設定されている。このように、スラッパー5の傾斜角θを緩やかに設定できるため、該スラッパー5と缶100の底部100aとの摩擦抵抗が十分に低減されるとともに、スラッパー5の磨耗が確実に抑制されて、部品寿命が延長される。尚、前記傾斜角θが3°未満であると、缶100がマンドレル20に嵌合するまでの搬送距離が無駄に長くなったり、マンドレル20に缶100を十分に押し込めなくなったりするため好ましくない。また、前記傾斜角θが11°を超えると、スラッパー5の磨耗を抑制する効果が十分に得られなくなる。
【0047】
このように、本実施形態の缶の搬送装置1によれば、材料費用(缶100)の無駄を省いて生産性を向上でき、かつ、設備費用を削減することができるのである。
【0048】
また、第1弾性体8と第2弾性体9とが搬送方向Cの基端部(上流側部分)で互いに連結されているので、これら第1、第2弾性体8、9同士の間に段差が生じにくくなり、缶100の搬送がよりスムースに行える。さらに、本実施形態のように、第1弾性体8と第2弾性体9とを一体に形成すれば、使用部材の数を削減できる。
【0049】
また、スラッパー5は、摺動部材10と弾性部材11とを備えた二重構造とされている。よって、摺動部材10によりスラッパー5と缶100の底部100aとのすべり性が確保され、缶100の搬送がスムースに行われる。また、弾性部材11によりスラッパー5が確実に弾性変形及び復元変形して、前述した作用により缶100の口部100bがマンドレル20に精度よく安定して嵌合される。
【0050】
すなわち、図6に示される従来の構成では、スラッパー110をベークライト等の樹脂材料からなる単一材料で形成しており、すべり性及び弾性を両方確保することが難しかった。具体的に、すべり性を確保するには十分な弾性を得ることができず、図6に示されるように、調整ネジ120により強制的に弾性復元力を付与する複雑な構成となり、調整作業に熟練を要していた。一方、図2に示される本実施形態の二重構造のスラッパー5によれば、摺動部材10によりすべり性が確保され、弾性部材11により弾性が確保されて、これらが一体とされた簡単な構成により、前述の機能(すべり性及び弾性)の両立が容易かつ確実に行える。また、本実施形態のように、摺動部材10として、すべり性・耐磨耗性を考慮した材料(PET樹脂、PEEK樹脂等)を用いることで、高速運転中における缶100の底部100aへの傷付きが防止され、缶100のマンドレル20への供給がよりスムースとなるので好ましい。
【0051】
また、スラッパー5の第2弾性体9は、タレット2の径方向に沿う両側から第1弾性体8を幅方向に挟むように形成されているので、前記幅方向に沿う長さが確保されていて、缶100の底部100aを安定して押し込みやすい。
【0052】
また、第1弾性体8の長さL1が、ポケット3同士の配置間隔Pに対して、0.5×P〜1.0×Pに設定されているので、不良缶100Zが搬送されて第1弾性体8の先端部付近に位置した際に、該不良缶100Zに続く正常な缶100が第1弾性体8の基端部に配置される。そして、正常な缶100が第1弾性体8上を移動し始める初期段階において、前記不良缶100Zは第1弾性体8上から下流側に外れ第2弾性体9上に移行して、該第1弾性体8は復元変形する。これにより、前記正常な缶100は、第1弾性体8上を精度よく搬送され、その口部100bがマンドレル20に確実に嵌合される。
【0053】
さらに、第2弾性体9の長さL2が、ポケット3同士の配置間隔Pに対して、0.8×P〜2.5×Pに設定されているので、前述のように正常な缶100が第1弾性体8上を移動している間に、前記不良缶100Zが第2弾性体9から下流側に外れて、第2弾性体9が復元変形する。このように、正常な缶100が第1弾性体8上から第2弾性体9上に移行する前に該第2弾性体9が確実に復元変形するので、該正常な缶100は、その底部100aを第1弾性体8から復元変形後の第2弾性体9へと摺接させながら該マンドレル20に深く押し込まれることになり、マンドレル20に安定して支持される。
【0054】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前述の実施形態では、スラッパー5の第1弾性体8と第2弾性体9とは、搬送方向Cの基端部で互いに連結されて基台7に支持されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、第1弾性体8と第2弾性体9とは、互いに別体とされて基台7に支持されていても構わない。
【0055】
また、第1弾性体8は、缶100の底部100aに摺接される面がI字状をなし、第2弾性体9は前記摺接される面がU字状をなしているとしたが、これに限定されるものではない。また、第2弾性体9が、タレット2の径方向に沿う両側から第1弾性体8を幅方向に挟むように、かつ、第1弾性体8の搬送方向C側の端部を囲むように形成されているとしたが、これに限定されるものではない。
【0056】
図5(a)〜(c)に示されるものは、本実施形態のスラッパー5の変形例である。尚、これらスラッパー5において基台7に支持される基端部5a(図5の左側端部)は、実際には該基端部5a以外の部分(基端部5aよりも搬送方向C側に位置する、一方側に露出されるとともに底部100aに摺接される部分)からは一段後退して形成されているが、図ではこれを省略している。
図5(a)の例では、スラッパー5は、搬送方向Cに沿う円弧状に延びて形成されている。この場合、例えば、搬送される缶100の缶軸軌跡上にスラッパー5を配置でき、前述の押し込み動作をより安定させることができる。尚、本実施形態で説明したように、スラッパー5を直線状に形成した場合には、該スラッパー5に対する缶100の底部100aの摺接部分を分散できるので、底部100aに摺接痕がつきにくくなる。
【0057】
また、図5(b)(c)の例では、第1、第2弾性体8、9は、缶100の底部100aに摺接される面がともにI字状をなしている。図5(b)においては、第2弾性体9は、第1弾性体8に対してタレット2の径方向外方にのみ配置されている。また、図5(c)においては、第1弾性体8は、第2弾性体9の前記径方向外方と径方向内方とに2つ設けられている。このように、第1弾性体8及び第2弾性体9の相対位置や形状は本実施形態に限定されるものではなく、また、これら第1、第2弾性体8、9が複数設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 缶の搬送装置
2 タレット
3 ポケット
4 シュート
5 スラッパー
8 第1弾性体
9 第2弾性体
10 摺動部材
11 弾性部材
20 マンドレル
100 缶
100a 缶の底部
100b 缶の口部
C 搬送方向
L1 第1弾性体の長さ
L2 第2弾性体の長さ
P ポケットの配置間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状をなし、中心軸を中心とした周回方向のうち缶の搬送方向に向けて回転されるタレットと、
前記タレットの外周部に互いに等間隔をあけて複数設けられ、有底筒状の缶が、その缶軸を前記タレットの中心軸に平行に配置するように支持されるポケットと、
前記ポケットに缶を送るシュートと、
前記ポケットに対して、前記タレットの中心軸方向のうち該ポケットに支持される缶の口部側である一方側に配設され、前記ポケットに同期するように前記搬送方向に向けて移動する複数のマンドレルと、
前記ポケットに対して、前記タレットの中心軸方向のうち該ポケットに支持される缶の底部側である他方側に配設され、前記搬送方向に沿うように延びるとともに該搬送方向に向かうに従い漸次前記一方側に向かって傾斜し、前記搬送方向の基端部が片持ち支持され、先端部が自由端とされたスラッパーと、を備え、
前記タレットが前記搬送方向に回転することにより、前記ポケットに支持された缶が、その底部を前記スラッパーに摺接させつつ前記一方側に向けて押し込まれ、該缶の口部が前記マンドレルに嵌合される缶の搬送装置であって、
前記スラッパーは、
第1弾性体と、
前記第1弾性体に沿って延びるとともに、前記第1弾性体よりも前記搬送方向に長い第2弾性体と、を備えたことを特徴とする缶の搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の缶の搬送装置であって、
前記第1弾性体と前記第2弾性体とは、前記搬送方向の基端部で互いに連結され、前記搬送方向の先端部で互いに分離されていることを特徴とする缶の搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の缶の搬送装置であって、
前記スラッパーは、
前記一方側を向くとともに、缶の底部に摺接される摺動部材と、
前記摺動部材の前記他方側に配置されて該摺動部材と一体に弾性変形可能とされた板状の弾性部材と、を備えたことを特徴とする缶の搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の缶の搬送装置であって、
前記第2弾性体は、前記タレットの径方向に沿う両側から前記第1弾性体を挟むように形成されていることを特徴とする缶の搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の缶の搬送装置であって、
前記第1弾性体の基端部から先端部までの長さは、前記搬送方向に隣り合う前記ポケット同士の配置間隔Pに対して、0.5×P〜1.0×Pに設定され、
前記第2弾性体の基端部から先端部までの長さは、前記配置間隔Pに対して、0.8×P〜2.5×Pに設定されることを特徴とする缶の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−180173(P2012−180173A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44003(P2011−44003)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】