説明

缶入り汁粉飲料及びその製造方法

【課題】レトルト殺菌や長期保存によって具材が溶けて型崩れしたり、缶の壁面に付着して飲用が困難になることがない缶入り汁粉飲料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】餡子を含む汁粉液中にナタデココを含有してなり、好ましくは、3mm〜10mm角のダイス形状を有するナタデココを含有してなることを特徴とする缶入り汁粉飲料によれば、レトルト殺菌や長期保存によって具材が溶けて型崩れしたり、缶の壁面に付着して飲用が困難になることを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶入り汁粉飲料及びその製造方法に関し、特に、レトルト殺菌によって型崩れしないナタデココを含有する缶入り汁粉飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汁粉には、小豆等の豆類を水で煮込み、砂糖を用いて甘く味付けされた餡子が含まれる。汁粉は、煮込まれた豆類の状態によっては、善哉と呼ばれることもある。こうした汁粉の中に、餅や白玉団子のような弾力性のある食感を有する具材を配合したものが古くから知られている。
【0003】
近年、汁粉を缶に充填した缶入り汁粉飲料が上市されている。こうした缶入り汁粉飲料は、上記の汁粉を缶に充填することにより製造される。缶入り飲料では、通常、出荷前に120℃〜125℃で20分〜40分程度のレトルト殺菌が行われる。このため、餅や白玉団子等の具材を配合した汁粉を缶に充填し、缶入り汁粉飲料とした場合には、レトルト殺菌による加熱で具材が溶けて型崩れしてしまうという問題があった。
【0004】
また、缶入り汁粉飲料は、その流通過程で長期間保存されることも多い。このため、具材として配合された餅や白玉団子が、長期保存中に水分を吸収してしまう結果、型崩れしたり、缶の壁面に付着して飲用が困難になるという問題があった。
【0005】
そこで、レトルト殺菌や長期保存による具材の型崩れを回避すべく、餅米粉、でんぷん、pH調整剤、及び糖類からなる混合物に、多糖類増粘剤を添加して調製した餅を用いた汁粉が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、長期保存による具材の型崩れを回避すべく、寒天を含む汁粉液中にアルファ化した餅を配合して固化させた汁粉が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平09−028299号公報
【特許文献2】特開平08−126474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された汁粉であっても、レトルト殺菌や長期保存による具材の型崩れを十分に回避できていないのが現状である。また、これらの汁粉は、具材の型崩れ防止を目的として多糖類増粘剤や寒天等を添加する必要があったことから、このような本来必要でない成分を添加することなく、レトルト殺菌や長期保存による具材の型崩れを十分に回避できる缶入り汁粉飲料の開発が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レトルト殺菌や長期保存によって具材が溶けて型崩れしたり、缶の壁面に付着して飲用が困難になることがない缶入り汁粉飲料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、具材の種類に着目して鋭意研究を重ねた。その結果、缶入り汁粉飲料の具材として一般的な餅や白玉団子の代わりにナタデココを用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 餡子を含む汁粉液中にナタデココを含有してなることを特徴とする缶入り汁粉飲料。
【0010】
(1)に係る缶入り汁粉飲料は、具材として従来一般的な餅や白玉団子の代わりに、ナタデココを配合したことを特徴とする新規な汁粉飲料である。ナタデココは、ココナッツジュースにナタ菌を加えて醗酵、凝固させたセルロース・ゲルからなるものであり、熱に強い性質を有する。このため、缶入り飲料の製造の際に通常行われるレトルト殺菌のように、120〜130℃の加熱を施した場合であっても、セルロース・ゲルの構造が破壊されることがなく、その形状を維持できる。従って、(1)に係る缶入り汁粉飲料によれば、レトルト殺菌による具材の型崩れや、缶の壁面への付着を回避でき、飲用が困難になることもない。
【0011】
また、餅や白玉団子と異なり、ナタデココは長期間の保存を行った場合であっても、水分を吸収して形状が変化してしまうことがない。このため、(1)に係る缶入り汁粉飲料によれば、長期保存による具材の型崩れや、缶の壁面への付着を回避でき、飲用が困難になることもない。
【0012】
さらには、(1)に係る缶入り汁粉飲料は、汁粉の具材として新規なナタデココを配合していることから、ナタデココ本来の食感を楽しめるとともに、汁粉とナタデココの融合から生み出される従来にはないおいしさを感じることができる。
【0013】
(2) 前記ナタデココが、長辺が3mm〜10mmの直方体形状を有することを特徴とする(1)記載の缶入り汁粉飲料。
【0014】
(3) 前記ナタデココが、3mm〜10mm角のダイス形状を有することを特徴とする(1)記載の缶入り汁粉飲料。
【0015】
(2)に係る缶入り汁粉飲料又は(3)に係る缶入り汁粉飲料は、直方体形状又はダイス形状のナタデココを含有することから、切り餅風の視覚的効果を付与できるとともに、飲用者がナタデココ本来の食感を楽しむことができる。また、ナタデココの大きさを、長辺が3mm〜10mm又は3mm〜10mm角とすることにより、ナタデココが沈降して飲用が困難となったり、缶の飲み口をナタデココが通過できずに飲用が困難となることを回避できる。
【0016】
(4) 前記ナタデココが、前記缶入り汁粉飲料中に3質量%〜50質量%の範囲で含有されていることを特徴とする(1)から(3)いずれか記載の缶入り汁粉飲料。
【0017】
(4)に係る缶入り汁粉飲料は、汁粉飲料全体に対してナタデココが3質量%〜50質量%の割合で含有されている。これにより、飲用者がナタデココの食感やおいしさ、視覚的効果をより確実に得ることができる。
【0018】
(5) 前記餡子が、前記汁粉液中に5質量%〜50質量%の範囲で含有されていることを特徴とする(1)から(4)いずれか記載の缶入り汁粉飲料。
【0019】
(5)に係る缶入り汁粉飲料は、汁粉液中に餡子が5質量%〜50質量%の範囲で含有されている。これにより、飲用者が汁粉本来のおいしさを十分に感じることができるとともに、適度な流動性を付与でき、ナタデココが沈降して飲用が困難となることを抑制できる。
【0020】
(6) 餡子を缶に充填する工程と、ナタデココを含有する調合液を、前記餡子が充填された缶に充填する工程と、前記餡子及び前記ナタデココを含有する調合液が充填された缶を密閉し、レトルト殺菌する工程と、を含むことを特徴とする缶入り汁粉飲料の製造方法。
【0021】
(6)に係る缶入り汁粉飲料の製造方法は、先ず、缶内に餡子を充填した後、予めナタデココを含有させておいた調合液を充填し、缶内で均一に混合させることを特徴とする。この製造方法によれば、所望の量のナタデココと餡子とを缶に分配することができるため、常に品質が一定の缶入り汁粉飲料を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱に強い性質を有するナタデココを具材として加えることにより、レトルト殺菌や長期保存によって具材が溶けて型崩れしたり、缶の壁面に付着して飲用が困難になることがない缶入り汁粉飲料、及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の缶入り汁粉飲料及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0024】
本発明の缶入り汁粉飲料は、餡子を含む汁粉液中にナタデココを含有してなることを特徴とする。即ち、本発明の汁粉飲料は、従来の汁粉飲料の具材として通常用いられている餅や白玉団子の代わりに、ナタデココを用いたことを特徴とする。
【0025】
[ナタデココ]
本発明で用いられるナタデココは特に限定されず、従来公知のナタデココが用いられる。具体的には、ココナッツジュースにナタ菌を加えて醗酵させた後、凝固させることにより得られたナタデココが用いられる。得られたナタデココは、グラインダ等で所定の大きさに細片化されて汁粉飲料中に配合されることが好ましい。細片化されることにより、ナタデココが缶の飲み口を通過することができ、缶入り汁粉飲料として飲用が容易となる。
【0026】
本発明で用いられるナタデココは、その形状は特に限定されず、歪な形状であってもよいが、直方体形状又はダイス形状を有することが好ましい。直方体形状又はダイス形状のナタデココを用いることにより、切り餅風の視覚的効果を付与できるうえ、ナタデココ本来の食感をより感じることができる。
【0027】
また、本発明で用いられるナタデココが直方体形状である場合には、長辺の長さが3mm〜10mmであることが好ましい。長辺の長さが3mm未満のナタデココを用いた場合には、ナタデココ本来の食感を感じ難くなるため好ましくない。長辺の長さが10mmを超えるナタデココを用いた場合には、缶の飲み口をナタデココが通過できずに飲用が不可能となるおそれがあるため好ましくない。より好ましい長辺の長さは、4mm〜6mmである。
【0028】
また、本発明で用いられるナタデココがダイス形状である場合には、3mm〜10mm角の大きさであることが好ましい。3mm角未満のナタデココを用いた場合には、ナタデココ本来の食感を感じ難くなるため好ましくない。10mm角を超える大きさのナタデココを用いた場合には、缶の飲み口をナタデココが通過できずに飲用が不可能となるおそれがあるため好ましくない。ナタデココのより好ましい大きさは、4mm〜6mm角である。
【0029】
ナタデココの含有量は、缶入り汁粉飲料全体に対して3質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。ナタデココの含有量が3質量%未満である場合には、飲用者がナタデココの食感や視覚的効果を感じ難くなるため好ましくない。ナタデココの含有量が50質量%を超える場合には、汁粉液との味のバランスが崩れるため好ましくない。より好ましいナタデココの含有量は、缶入り汁粉飲料全体に対して5質量%〜30質量%の範囲である。
【0030】
[汁粉液]
本発明では、餡子を含有した従来公知の汁粉液を用いることができ、特に限定されない。餡子は小豆等の豆類を甘く煮ることにより得られる。餡子を含む汁粉液は、原料となる小豆をはじめとした豆類に、適量の砂糖及び水を加えた後、煮て味付け等する常法により製造できる。また、餡子に、水及び砂糖を主成分とする調合液を混合して汁粉液を製造することもできる。後述する好ましい製造方法を考慮すると、後者の方法により汁粉液を製造することが好ましい。
【0031】
本発明で用いられる汁粉液中には、餡子が5質量%〜50質量%の範囲で含有されていることが好ましい。汁粉液中における餡子の含有量が5質量%未満である場合には、飲用者が汁粉本来のおいしさを十分に感じることができないため好ましくない。また、餡子の含有量が50質量%を超える場合には、流動性が低下して飲用が困難となるおそれがある。汁粉液中における餡子のより好ましい含有量は、10質量%〜30質量%の範囲内である。
【0032】
[製造方法]
本発明に係る缶入り汁粉飲料の製造方法としては特に限定されず、従来の缶入り汁粉飲料と同様の製造方法により製造することができる。ただし、小豆等の餡子の固形物をポストミックス(調合液より先に固形原料のみ缶に充填)により充填した後、餅に見立てたナタデココをプレミックス(調合液とともに缶に充填)してから充填することが好ましい。具体的には、餡子を缶に充填する工程と、ナタデココを含有する調合液を、前記餡子が充填された缶に充填する工程と、前記餡子及び前記ナタデココを含有する調合液が充填された缶を密閉し、レトルト殺菌する工程と、を含むことを特徴とする製造方法を利用して製造されることが好ましい。
【0033】
この製造方法は、先ず、缶内に餡子を充填した後、予めナタデココを含有させておいた調合液を充填し、缶内で均一に混合させることを特徴とする。この製造方法によれば、所望の量のナタデココと餡子とを缶内に分配することができるため、常に品質が一定の缶入り汁粉飲料を提供することができる。
【0034】
ナタデココを含有する汁粉液を缶内に充填した後、缶を密閉してレトルト殺菌が行われる。レトルト殺菌を行うことにより、汁粉飲料中の菌を失活させ、衛生的に安全な缶入り汁粉飲料を提供できる。ここで、レトルト殺菌の加熱温度は100℃〜130℃であり、より好ましくは110℃〜120℃である。また、レトルト殺菌の加熱時間は、3分間〜15分間であり、より好ましくは5分間〜12分間である。
【0035】
このようにして製造された缶入り汁粉飲料は、レトルト殺菌によって具材が溶けて型崩れしたり、缶の壁面に付着して飲用が困難になることがない。また、長期保存によっても、具材が水分を吸収して型崩れしたり、缶の壁面に付着して飲用が困難になることもない。本発明に係る缶入り汁粉飲料は、ホットドリンクとしてのみならずコールドドリンクとして提供することもでき、飲用者はナタデココ本来の食感と、汁粉とナタデココの融合から生み出される従来にはないおいしさを感じることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例]
小豆100g、砂糖100g、及び水100gを加えた後、煮て味付けすることにより餡子を製造した。その一方で、5mm角のダイス形状を有するナタデココを30g用意し、砂糖100g及び水570gからなる調合液に含有させた。そして、予め用意した缶の中に、先ず、製造した餡子を充填した。次いで、ナタデココを含有させた調合液を充填し、均一に混合することにより、1kgの汁粉飲料を製造した。製造した汁粉飲料におけるナタデココの含有量は、汁粉飲料の総質量に対して3質量%であった。また、汁粉飲料中には、砂糖200g、小豆100g、及び水670gが含まれていた。
【0038】
続いて、汁粉飲料が充填された缶を密閉し、缶を130℃で50分間加熱してレトルト殺菌を行い、缶入り汁粉飲料を製造した。
【0039】
[比較例]
5mm角のダイス形状を有するナタデココの代わりに、5mm角の切り餅を用いた以外は、同様の方法により缶入り汁粉飲料を製造した。
【0040】
[評価]
実施例及び比較例により得られた缶入り汁粉飲料について、レトルト殺菌による具材の型崩れの有無、長期保存による具材の型崩れの有無、缶の壁面への具材の付着の有無について調べた。また、官能評価も併せて行った。
【0041】
その結果、本実施例により得られた缶入り汁粉飲料は、比較例の缶入り汁粉飲料に比して、レトルト殺菌や長期保存によって具材が溶けて型崩れしたり、缶の壁面に付着して飲用が困難になることがないことが確認された。また、本実施例により得られた缶入り汁粉飲料は、ナタデココ本来の食感と、汁粉とナタデココの融合から生み出される従来にはないおいしさを感じることができるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
餡子を含む汁粉液中にナタデココを含有してなることを特徴とする缶入り汁粉飲料。
【請求項2】
前記ナタデココが、長辺が3mm〜10mmの直方体形状を有することを特徴とする請求項1記載の缶入り汁粉飲料。
【請求項3】
前記ナタデココが、3mm〜10mm角のダイス形状を有することを特徴とする請求項1記載の缶入り汁粉飲料。
【請求項4】
前記ナタデココが、前記缶入り汁粉飲料中に3質量%〜50質量%の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の缶入り汁粉飲料。
【請求項5】
前記餡子が、前記汁粉液中に5質量%〜50質量%の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1から4いずれか記載の缶入り汁粉飲料。
【請求項6】
餡子を缶に充填する工程と、
ナタデココを含有する調合液を、前記餡子が充填された缶に充填する工程と、
前記餡子及び前記ナタデココを含有する調合液が充填された缶を密閉し、レトルト殺菌する工程と、を含むことを特徴とする缶入り汁粉飲料の製造方法。