説明

缶開封器

【課題】金属缶の天板を安全かつ容易に開封できるとともに、内容物の移し変え作業を効率よく行うことができる缶開封器を提供する。
【解決手段】缶開封器1は、金属缶16に対して側板18と天板17の接続部分を切断することにより既存の注ぎ口(図示せず)よりも大きな開口部を形成する装置であり、平面視直角二等辺三角形の二辺をなす金属製の切断板2及びガイド部3と、切断板2の上部に設置されるスペーサ5,5及び取付具6と、切断板2の上方に設置されるハンドル7と、平面視して直角二等辺三角形の二辺をなす切断板2の内側に配置され取付具6を用いて切断板2の上方に固設される折り曲げ具8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、18リットル缶等の金属缶の天板を開封する缶開封器に係り、特に、内容物の移し変え作業を効率よく行うことができる缶開封器に関する。
【背景技術】
【0002】
気密性が高く、塗料や食用油などの保存用容器として用いられる金属缶は、通常、まとめて運搬したり、貯蔵したりする際の邪魔にならないように、持ち手がないか、又は小さく作られている。従って、頻繁に持ち上げたり、傾けたりする作業には適していない。そのため、一旦開封した後は、小型の容器に内容物を移し変えることが行われる。しかしながら、上記金属缶においては、一般に、天板に設けられた注ぎ口が小さく、内容物の移し変え作業に時間がかかるという課題があった。また、注ぎ口が天板の縁から離れているため、全ての内容物を完全に缶から出すことができずに「注ぎ残し」が生じてしまうという課題があった。
そこで、このような課題に対処するべく、従来、18リットル缶等の金属缶の天板を開封する技術について様々な研究や開発がなされており、それに関してこれまでにも既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ペール缶などの中型缶の蓋又は底蓋を円滑に切開できる「缶カッター」に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、缶形状に沿った円弧状部分及び端部が直角に折れ曲がった形状を有する切開板と、この切開板の内側近傍に設けられる噛付き阻止片とを備えるものである。
このような構造の「缶カッター」においては、床上等に載置された缶カッターに対して缶を押し下げると、底蓋に切開板がくい込んで切開するという作用を有する。また、噛付き阻止片が底蓋の切開された縁部分を押し曲げて、切開板と切開された縁部分との間の噛付きを阻止するという作用を有する。
【0004】
特許文献2には、「足踏み型缶切り具」という名称で、18リットル缶等の中型缶の天板コーナーを開孔するための缶切り具に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、足踏み動作によって切り刃を縦杆に沿って下降させて天板コーナーを開孔させるとともに、てこ杆を用いて開孔部の切り片を内側に折り込むことを特徴とするものである。
このような構造の「缶切り具」においては、縦杆等のガイド作用により天板コーナーに対して安定状態で切り込みを行うことができる。また、足踏み動作によって切り刃を押し込むため、切り刃に力が加わり易い。従って、熟練者でなくとも上記作業を容易に行うことができる。さらに、切り片が内側に折り込まれるため、安全である。
【0005】
特許文献3には、ブリキ板等で形成された四角柱状缶の内部から充填物を取り出すための開口を缶蓋に開設するための「缶の開蓋装置」に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、缶の側壁表面に添設可能な内面形状を有するとともに折曲部が中間に縦設されたガイド手段と、缶の側壁の厚さ分の間隔をあけてこのガイド手段に並設される略三角形状の開缶刃とを備えるものである。そして、開缶刃の折曲部内面方向に下部を残して突部が形成されたことを特徴とする。
このような構造によれば、ガイド手段によって缶が支持されるため、刃先が缶蓋に対して正確に配置されるという作用を有する。そして、折曲部に突出部が形成されているので開蓋縁が上向きにならないように蓋を開くことが可能となっている。
【特許文献1】特開2004−182333号公報
【特許文献2】特開2001−287792号公報
【特許文献3】実開平01−035897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術である特許文献1に開示された発明においては、切開された縁部分が噛付き阻止片によって折り曲げられるものの、折り曲げ角度を調整できないため、所望の大きさの開口部を確保できないおそれがある。また、本発明は、缶の持ち難さの改善を目的とするものではない。従って、従来技術と同様に、缶を持ち上げたり、傾けたりすることが容易でないという課題を有している。
【0007】
また、特許文献2に開示された発明において、てこ杆を用いて切り片を缶の内側に折り込むには、操作杵を外側下方に倒す必要がある。この場合、操作杆が操作者の邪魔になるおそれがある。また、本発明によっても内容物の移し変え作業の効率は改善されない。
【0008】
特許文献3に開示された考案においては、突出部によって開蓋縁が折り曲げられて開口部が形成されるものの、十分な大きさの開口部が形成されないおそれがある。また、本考案は、内容物の移し変え作業の効率の改善を目的とするものではない。
【0009】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、金属缶の天板を安全かつ容易に開封できるとともに、内容物の移し変え作業を効率よく行うことができる缶開封器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、金属缶の天板を開封する缶開封器において、平面視直角三角形の二辺をなし、かつ、正面視して頂点を下に向けた三角形状をなす金属製の切断板と、平面視して切断板の外側に位置するように金属缶の側板を挿入可能な間隔をあけて切断板に並設されるガイド部と、切断板の上方に設置されるハンドルと、切断板の上部に設置される取付具と、平面視して切断板の内側に配置され天板の少なくとも一部を折り曲げ可能に取付具を用いて切断板の上方に固設される折り曲げ具とを備え、切断板は正面視三角形の斜辺を構成する端縁に切刃が形成されたことを特徴とするものである。
上記構成の缶開封器においては、金属缶の側板に沿って直線的に上昇又は下降するように切断板をガイド部が案内するという作用を有する。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の缶開封器において、折り曲げ具は、取付具に固設される取付板と、この取付板に立設される支持板と、この支持板にそれぞれ基端部が枢設される押圧用アーム及びリンクと、一端が押圧用アームの基端部及びリンクの先端部にそれぞれ枢設される駆動レバーと、押圧用アームの下面前方に設置される押板とを備え、押圧用レバーは駆動レバーの回動に連動して押板を用いて天板の少なくとも一部を180度に折り曲げ可能に回動し、この折り曲げられた天板は押板と取付板によって挟持されることを特徴とするものである。
上記構成の缶開封器においては、天板が180度折り曲げられることにより金属缶のコーナーに通常設けられる既存の注ぎ口よりも大きな開口部が形成されるという作用を有する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の缶開封器において、折り曲げ具は、天板を180度折り曲げた場合に押圧用レバーの回動が拘束され、この押圧用レバーの拘束状態は駆動レバーの回動によって解除されることを特徴とするものである。
このような缶開封器によれば、押板に下向きの力が加わった場合でも駆動レバーを操作しない限り、押板と取付板の位置関係が維持されるため、缶開封器を引き上げる際に、折り曲げ具が天板を保持するという作用を有する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の缶開封器において、ガイド部は平面視直角三角形の二辺をなし、かつ、切刃の表面を被覆可能に正面視V字状をなすことを特徴とするものである。
このような構造の缶開封器においては、操作者が切刃に触れて怪我をするおそれがない。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の缶開封器において、支持板は、金属缶の側板を切断板とガイド部の間に挿入した状態で平面視して切断板の直角三角形の頂点を通る金属缶の第一の対角線に対して平行に設置されることを特徴とするものである。
このような構造の缶開封器においては、押板を回動させる力が天板に対して第一の対角線を中心として左右対称に、すなわち、均等に加えられるという作用を有する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の缶開封器において、ハンドルは、平面視して金属缶の第一の対角線を挟んで対称に、かつ、第一の対角線に対して平行に配置される一対の押圧部と、平面視して第一の対角線に直交する第二の対角線上に配置される把持部とからなることを特徴とするものである。
このような構造の缶開封器においては、一対の押圧部に加えられた力が切断板を介して金属缶の天板に対して均等に加わるという作用を有する。また、把持部を持って金属缶を持ち上げた場合、金属缶が傾き難いという作用を有する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の缶開封器において、切断板は開口部を有することを特徴とするものである。
このような構造の缶開封器においては、開口部を設けることにより、切断板が金属缶の内容物に接触する面積が小さくなるため、切断板に対する内容物の粘性抵抗が小さくなるという作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の缶開封器においては、金属缶の天板に対し、所望の箇所に切刃を正確にあてるとともに、切刃を押し下げる力を天板に効率よく伝えることができる。従って、天板の所望の箇所を正確、かつ容易に切断することが可能である。
【0018】
本発明の請求項2に記載の缶開封器においては、金属缶の内容物の移し変え作業に要する時間を短縮することができる。また、いわゆる「注ぎ残し」がないように、金属缶から内容物を完全に出し尽くすことができる。
【0019】
本発明の請求項3に記載の発明においては、缶開封器を金属缶の持ち手として利用できるため、金属缶を容易に持ち上げたり、傾けたりすることができる。従って、金属缶の内容物の移し変え作業の効率が向上する。
【0020】
本発明の請求項4に記載の缶開封器においては、作業時の安全性を高めることができる。
【0021】
本発明の請求項5に記載の缶開封器においては、金属缶の天板を折り曲げ具によって均一に折り曲げることができる。
【0022】
本発明の請求項6に記載の缶開封器においては、操作者が一対の押圧部をそれぞれ手に持って体重をかけながら、ハンドルを押し下げることができる。この場合、比較的弱い力でも金属缶を確実に開封することができる。これにより、金属缶を持ち上げる作業が容易となるため、内容物の移し変え作業の効率が向上する。
【0023】
本発明の請求項7に記載の缶開封器においては、金属缶の内容物の粘性が高い場合でも切断板を金属缶の内部から無理なく引き上げることができる。また、開口部の形成により切断板の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の最良の実施の形態に係る缶開封器の実施例について図1乃至図5を用いて説明する。
【実施例】
【0025】
本実施例の缶開封器の構造について図1及び図2を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る缶開封器の実施例の外観斜視図である。また、図2(a)及び(b)はそれぞれ本実施例の缶開封器の上面図及び背面図である。なお、図1において、金属缶16の対角線16a,16bの方向をそれぞれX軸及びY軸としている。また、金属缶16の天板17を切刃2aによって押し切る方向をZ軸の正方向としている。
図1及び図2に示すように、缶開封器1は、18リットル缶等の金属缶16に対して側板18と天板17の接続部分を切断することにより既存の注ぎ口(図示せず)よりも大きな開口部を形成する装置であり、平面視直角二等辺三角形の二辺をなす金属製の切断板2及びガイド部3と、切断板2の上部に設置されるスペーサ5,5及び取付具6と、切断板2の上方に設置されるハンドル7と、平面視して直角二等辺三角形の二辺をなす切断板2の内側に配置され取付具6を用いて切断板2の上方に固設される折り曲げ具8を備えている。
【0026】
平坦部に開口部2bが設けられた切断板2は正面視して頂点が下に向いた三角形状をなし、その斜辺を構成する端縁に切刃2aが形成されている。正面視V字状をなすガイド部3は平面視して直角二等辺三角形の二辺をなす切断板2の外側に切刃2aとその近傍の外表面を覆うように配置され、金属缶16の側板18よりも厚いスペーサ5を介してボルト4a及びナット4bにより切断板2にネジ止めされている。すなわち、ガイド部3は金属缶16の側板18を挿入可能な間隔をあけて切断板2に並設されている。
取付具6は平面視した場合に切断板2によって二辺が構成される直角二等辺三角形の斜辺をなすように切断板2の上部に、折曲された両端6a,6aを上方に向けた状態で跨設されている。ハンドル7は金属缶16の側板18を切断板2とガイド部3の間に挿入した状態で平面視して切断板2によって二辺が構成される直角二等辺三角形の頂点を通る金属缶16の対角線16aを挟んで対称に、かつ、対角線16aに対して平行に配置される一対の押圧部7a,7aと、平面視して対角線16b上に配置される把持部7bとからなる。すなわち、平面視「コ」の字状をなす円筒形状のハンドル7は、押圧部7a,7aが取付具6の両端6a,6aにそれぞれ取り付けられ、金属缶16の天板17に対して平行に設置されている。
なお、上述の説明において、直角二等辺三角形、三角形、V字状及び「コ」の字状には、それぞれ略直角二等辺三角形、略三角形、略V字状及び略「コ」の字状の場合が含まれるものとする。
【0027】
このような構造の缶開封器1においては、ガイド部3が切刃2aに触れて怪我をすることがないように操作者を保護するという作用を有する。これにより、作業時の安全性が高まる。また、ハンドル7の押圧部7a,7aが水平に、かつ互いに平行に設置されているため、缶開封器1の操作者が押圧部7a,7aを持って缶開封器1を押し下げた場合に、押圧部7a,7aに加えられた力が切断板2を介して金属缶16の天板17に対して均等に加わることになる。そして、操作者は押圧部7a,7aを左手と右手にそれぞれ持って体重をかけながら、ハンドル7を押し下げることができるため、比較的弱い力でも金属缶16を確実に開封することができる。なお、本実施例の缶開封器1では、押圧部7aと取付具6の接合部が天板17の上方に位置する構造となっている。従って、この接合部付近を握って押圧部7a,7aを押し下げるようにすれば、金属缶16を転倒させることなく、安全に開封することができる。
また、取付板6が天板17に接触するまで缶開封器1を押し下げた後、金属缶16を持ち上げる場合、ハンドル7の把持部7bが対角線16b上にあるため、把持部7bを持つことで、金属缶16を傾かせずに持ち上げることができる。これにより、金属缶16を持ち上げる作業が容易となり、内容物を移し変える作業を効率よく行うことが可能となる。
【0028】
折り曲げ具8は駆動レバー13の操作により押板14を回動させて、側板18との接続部分が切刃2aによって切断された天板17の一部を折り曲げるものであり、取付具6の略中央に設置されている。以下、図3を用いて折り曲げ具8の構造について詳しく説明する。
図3(a)乃至(c)は本実施例の缶開封器を構成する折り曲げ具の側面図である。
図3(a)に示すように、折り曲げ具8は、ボルト4a(図2参照)を用いて取付具6にネジ止めされる取付板9に支持板10が立設され、支持板10に押圧用アーム11の基端部が枢軸15aを介して枢設され、支持板10の上部にリンク12の基端部が枢軸15bを介して枢設された構造となっている。そして、駆動レバー13の後端は枢軸15cを介して押圧用アーム11の基端部に枢設されるとともに、枢軸15dを介してリンク12の先端部に枢設されている。さらに、押圧用アーム11の下面前方には略二等辺三角形状をなす金属製の押板14が取り付けられている。なお、支持板10は、金属缶16の側板18を切断板2とガイド部3の間に挿入した状態で平面視した場合に、対角線16aに対して平行になるように設置されている。そして、押圧用アーム11、リンク12及び駆動レバー13は支持板10に対して平行になるように設置されている。
【0029】
図3(a)において、駆動レバー13を矢印Aの向きに回動させると、枢軸15dは枢軸15bを中心として矢印Bの向きに回動し、枢軸15cは枢軸15aを中心として矢印Cの向きに回動する。その結果、押板14は押圧用アーム11とともに枢軸15aを中心として矢印Cの向きに回動し、図3(b)の状態になる。
図3(b)において、駆動レバー13を矢印Aの向きに回動させると、枢軸15dは枢軸15bを中心として矢印Dの向き(矢印Bの逆向き)に回動し、枢軸15cは15dの回動の向きと無関係に、枢軸15aを中心として矢印Cの向きに回動する。その結果、押板14は押圧用アーム11とともに枢軸15aを中心として矢印Cの向きに回動し、最終的に図3(c)の状態になる。
図3(c)において、駆動レバー13を矢印Eの向き(矢印Aの逆向き)に回動させると、枢軸15dは枢軸15bを中心として矢印Bの向きに回動し、枢軸15cは枢軸15aを中心として矢印Fの向き(矢印Cの逆向き)に回動する。これにより、押板14は押圧用アーム11とともに枢軸15aを中心として矢印Fの向きに回動し、図3(b)の状態になる。そして、駆動レバー13を矢印Eの向きにさらに回動させると、枢軸15dは枢軸15bを中心として矢印Dの向きに回動し、枢軸15cは枢軸15dの回動の向きと無関係に、枢軸15aを中心として矢印Fの向きに回動する。その結果、押板14は押圧用アーム11とともに枢軸15aを中心として矢印Fの向きに回動し、最終的に図3(a)の状態に戻る。
また、図3(c)において、押板14に対して下向き(Z軸の正方向)の力を加えた場合、枢軸15aを中心として枢軸15cを矢印Fの向きに回動させようとするモーメントが発生するが、枢軸15dが矢印Bの向きに回動しないため、枢軸15cは矢印Fの向きに回動することはない。なお、前述したように、駆動レバー13を操作して枢軸15dを矢印Bの向きに所定の角度だけ回動させた状態であれば、押板14に下向きの力を加えることで枢軸15cは枢軸15aを中心として矢印Fの向きに容易に回動する。すなわち、図3(c)に示すように押板14が取付板9と平行になるまで回動した場合には、たとえ押板14に対して下向きの力が加わったとしても、駆動レバー13を操作しない限り、押板14と取付板9との位置関係は維持される。
【0030】
次に、切断板2とガイド部3の作用について図4を用いて説明する。
図4(a)は図2(a)におけるG−G線矢視断面図であり、(b)は同図(a)の部分拡大図である。なお、切断板2、ガイド部3及びスペーサ5以外の構成要素については図示を省略している。また、図4(b)における破線は、切断板2の切刃2aによって天板17が切断される際の金属缶16の位置を示している。
図4(a)に示すように、切断板2とガイド部3にはスペーサ5の厚さ分の隙間があいており、スペーサ5は金属缶16の側板18よりも厚いため、この隙間には金属缶16の側板18を挿入することができる。従って、隣り合う2枚の側板18がこの切断板2とガイド部3の隙間に挿入可能なように、金属缶16に対して缶開封器1を配置した後、缶開封器1を下向き(Z軸の正方向)に移動させると、図4(b)に示したように、切断板2の切刃2aによって天板17と側板18の接続部分が切断される。
このような構成によれば、切断板2はガイド部3に案内されて側板18に沿って直線的に上昇又は下降するという作用を有する。これにより、比較的弱い力でも缶開封器1を扱うことができる。また、切刃2aを天板17の所望の箇所に正確にあてるとともに、缶開封器1を下降させる力を天板17に対して効率よく伝えることができる。従って、天板17の所望の箇所を正確、かつ容易に切断することが可能である。また、切断板2の開口部2bは、切断板2と金属缶16の内容物との間に生じる粘性抵抗を小さくするという作用を有する。これにより、内容物の粘性が高い場合でも切断板2を金属缶16の内部から無理なく引き上げることができる。また、開口部2bを設けることで切断板2の軽量化を図ることができる。なお、開口部2bを設ける箇所や形状及び個数は、本実施例に示す場合に限定されるものではなく、適宜変更可能である。ただし、開口部2bが大きいと切断板2の剛性が低下する上、切断板2を引き上げる際、切断された天板17と側板18の接続部分に残った切断片が開口部2bに引っ掛かり易くなるおそれがある。従って、開口部2bは大きくし過ぎないようにするとともに、本実施例に示したように開口部2bの縁を円弧状に形成することが望ましい。
【0031】
さらに、折り曲げ具8の作用について図5を用いて説明する。
図5(a)及び(b)は図2(a)におけるH−H線矢視断面図である。なお、図5(a)は切断板2の切刃2aによって天板17と側板18の接続部分の一部が切断された様子を示している。また、切断板2、スペーサ5、取付具6、ハンドル7、折り曲げ具8及び金属缶16以外の構成要素については図示を省略している。
図5(a)において、駆動レバー13を矢印Aの向きに回動させると、既に図3(a)乃至(c)を用いて説明したように、枢軸15cは枢軸15aを中心として矢印Cの向きに回動し、押板14は押圧用アーム11とともに枢軸15aを中心として矢印Cの向きに回動する。これにより、側板18との接続部分が切断された天板17aは押板14によって矢印Cの向きに折り曲げられる。そして、最終的には、図5(b)に示すように天板17aは180度折り曲げられて金属缶16のコーナーに通常設けられる既存の注ぎ口(図示せず)よりも大きな開口部が形成される。これにより、内容物の移し変え作業を短時間で行うことが可能となる。また、内容物を金属缶16から完全に出し尽くすことができるため、いわゆる「注ぎ残し」が生じるおそれがない。さらに、図5(a)において、支持板10、押圧用アーム11、リンク12及び駆動レバー13が、金属缶16の対角線16a(図1参照)に対して平行になるように設置されているため、押板14を回動させる力が天板17aに対して対角線16aを中心として左右対称に、すなわち、均等に作用する。これにより、天板17aは均一に折り曲げられる。
図5(b)に示すように、180度折り曲げられた天板17aは天板17とともに、取付具6を介して押板14及び取付板9によって挟持される。この状態では、既に図3(c)を用いて説明したように、たとえ押板14に対して下向きの力が加わったとしても駆動レバー13を操作しない限り、押板14と取付板9との位置関係が維持される。すなわち、図5(b)において、ハンドル7の把持部7bを持って缶開封器1を引き上げた場合、折り曲げ具8は天板17及び天板17aを保持するという作用を有する。この場合、缶開封器1を金属缶16の持ち手として利用することができる。これにより、金属缶16を持ち上げたり、傾けたりする作業が容易になる。従って、内容物の移し変え作業を効率よく行うことができる。
なお、上述の説明における「180度」には、「略180度」の場合が含まれるものとする。
【0032】
本発明の缶開封器は、本実施例に示す場合に限定されるものではない。例えば、金属缶16が角缶ではなく、円缶の場合には、切断板2及びガイド部3を平面視円弧状をなすような形状とすることが望ましい。また、ガイド部3を板状ではなく、棒状として、平面視した場合に折り曲げ具8を挟んで対称となる箇所に1本ずつ、切断板2の外側に所定の間隔をあけて併設する構造としても良い。この場合、ガイド部3は平面視して2箇所で側板18を案内することになるため、金属缶16が角缶であっても円缶であっても対応することができる。特に、金属缶16が円缶の場合には、側板18の曲率によらず、対応可能である。また、切断板2は全体が金属製である必要はなく、切刃2a以外の部分を例えば、硬質の樹脂製とすることもできる。同様に、ガイド部3も金属製に限らず、硬質の樹脂製であっても良い。さらに、切断板2及びガイド部3を平面視した場合に直角二等辺三角形状でなく、単に直角三角形状とすることもでき、また、切断板2を正面視した場合、特に、二等辺三角形状をなすようにすることもできる。この場合には、天板17に対して切刃2aを押し付ける力が均等に作用するというメリットがある。さらに、ハンドル7は必ずしも平面視略「コ」の字状でなくとも良く、例えば、押圧部7aと把持部7bが分離した構造であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の請求項1乃至請求項7に記載された発明は、密閉された状態の金属容器を開封する場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る缶開封器の実施例の外観斜視図である。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ本実施例の缶開封器の上面図及び背面図である。
【図3】(a)乃至(c)は本実施例の缶開封器を構成する折り曲げ具の側面図である。
【図4】(a)は図2(a)におけるG−G線矢視断面図であり、(b)は同図(a)の部分拡大図である。
【図5】(a)及び(b)は図2(a)におけるH−H線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1…缶開封器 2…切断板 2a…切刃 2b…開口部 3…ガイド部 4a…ボルト 4b…ナット 5…スペーサ 6…取付具 6a…端部 7…ハンドル 7a…押圧部 7b…把持部 8…折り曲げ具 9…取付板 10…支持板 11…押圧用アーム 12…リンク 13…駆動レバー 14…押板 15a〜15d…枢軸 16…金属缶 16a,16b…対角線 17,17a…天板 18…側板 A〜F…矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属缶の天板を開封する缶開封器において、平面視直角三角形の二辺をなし、かつ、正面視して頂点を下に向けた三角形状をなす金属製の切断板と、平面視して前記切断板の外側に位置するように前記金属缶の側板を挿入可能な間隔をあけて前記切断板に並設されるガイド部と、前記切断板の上方に設置されるハンドルと、前記切断板の上部に設置される取付具と、平面視して前記切断板の内側に配置され前記天板の少なくとも一部を折り曲げ可能に前記取付具を用いて前記切断板の上方に固設される折り曲げ具とを備え、前記切断板は正面視前記三角形の斜辺を構成する端縁に切刃が形成されたことを特徴とする缶開封器。
【請求項2】
前記折り曲げ具は、前記取付具に固設される取付板と、この取付板に立設される支持板と、この支持板にそれぞれ基端部が枢設される押圧用アーム及びリンクと、一端が前記押圧用アームの基端部及び前記リンクの先端部にそれぞれ枢設される駆動レバーと、前記押圧用アームの下面前方に設置される押板とを備え、前記押圧用レバーは前記駆動レバーの回動に連動して前記押板を用いて前記天板の少なくとも一部を180度に折り曲げ可能に回動し、この折り曲げられた天板は前記押板と前記取付板によって挟持されることを特徴とする請求項1記載の缶開封器。
【請求項3】
前記折り曲げ具は、前記天板を180度折り曲げた場合に前記押圧用レバーの回動が拘束され、この押圧用レバーの拘束状態は前記駆動レバーの回動によって解除されることを特徴とする請求項2記載の缶開封器。
【請求項4】
前記ガイド部は平面視直角三角形の二辺をなし、かつ、前記切刃の表面を被覆可能に正面視V字状をなすことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の缶開封器。
【請求項5】
前記支持板は、前記金属缶の前記側板を前記切断板と前記ガイド部の間に挿入した状態で平面視して前記切断板の前記直角三角形の頂点を通る前記金属缶の第一の対角線に対して平行に設置されることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の缶開封器。
【請求項6】
前記ハンドルは、平面視して前記金属缶の前記第一の対角線を挟んで対称に、かつ、前記第一の対角線に対して平行に配置される一対の押圧部と、平面視して前記第一の対角線に直交する前記第二の対角線上に配置される把持部とからなることを特徴とする請求項5記載の缶開封器。
【請求項7】
前記切断板は開口部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の缶開封器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−6434(P2010−6434A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169352(P2008−169352)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(508194032)有限会社リンクス (1)
【Fターム(参考)】