説明

置局設計装置

【課題】RSSIを高精度に算出して、効率的に基地局の設置位置を決定することを実現可能な置局設計装置を得ること。
【解決手段】本発明にかかる置局設計装置1は、自装置の位置情報が外部から入力されるごとに、利用している無線装置から受信電力測定結果である受信電力情報を取得する受信電力測定I/F部2と、受信電力情報に基づいてRSSIを算出し、算出したRSSIを、利用している無線装置に応じた方法で補正して補正後のRSSIを生成し、位置情報と関連付けて記憶部8に格納する通信品質判定部3と、ユーザーから指示を受けた場合に、記憶部8に格納されているRSSIおよび位置情報と、置局対象エリアの地図情報と、に基づいて、置局対象エリア内の通信可能エリアと通信不能エリアを示すエリア内通信品質判定結果を生成する判定結果出力I/F部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANの基地局を設置する際の配置(置局)を決定する置局設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線LANの基地局設置(置局)においては、まず置局の仮位置を決定して仮決定位置の各々に基地局を配置し、次にRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を測定し、その測定結果に応じて基地局の最終的な位置決めを実施していた(たとえば、下記非特許文献1および2参照)。
【0003】
ここで、無線LANの規格が記載された下記非特許文献3では、2.4GHz帯の直接拡散の場合には直接拡散のPHYでの受信したRFの電力を測定し、この結果を用いてRSSI値を求めるように規定されている。しかし、RSSI値の具体的な測定方法については非特許文献3で規定されておらず、また、RSSI値のレベルを8bitsで表すように規定されてはいるものの、1bit辺りのRSSI値についても規定されていない。
【0004】
加えて、非特許文献3では、5GHz帯のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)の場合にはPLCPプリアンブルの電力を測定するように規定され、その値は0からRSSI Maximumの範囲とされているが、RSSI Maximumの値については規定されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“AirMagnet Survey Pro/Standard 6.0 802.11a/b/g 無線LANサイトサーベイ専用ツール”,2009年,インターネット <http://www.toyo.co.jp/airmagnet/d_airmagnet_sv.html>
【非特許文献2】“Ekahau Site Survey”,2009年,インターネット <http://www.marubeni-sys.com/network/ekahau/ess-lan.html>
【非特許文献3】“IEEE Std 802.11.−2007,Part 11 Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer(PHY) Specifications”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記装置(非特許文献1や2に記載の装置)を利用して上記非特許文献3に準拠した無線LANの基地局の設置位置を決定する場合、基地局を仮設置した上で、所定の汎用無線LAN装置(端末局)によるRSSIの測定結果を上記装置が収集し、収集したRSSIに基づいて、基地局の最終的な設置位置を決定する。しかしながら、上述したように、規格に不明確な部分が含まれるため各無線LAN装置(端末局)のベンダーは独自にRSSI測定方法を決め、また1bit辺りのRSSI値もベンダー毎に異なっている。したがって、予め想定していた特定の無線LAN装置以外を使用してRSSIの測定結果を収集した場合には、取得したRSSI測定値に対して、なんらかの装置固有の補正を行う必要がある。たとえば、使用する無線LAN装置が、想定している装置によるRSSI測定結果よりも高いRSSI値を出力する場合、出力されたRSSI値をそのまま利用して最終的な設置位置を決定すると、特定の場所では十分な通信品質が得られなくなる。一方、使用する無線LAN装置が、想定している装置によるRSSI測定結果よりも低いRSSI値を出力する場合、出力されたRSSI値をそのまま利用して最終的な設置位置を決定すると、必要以上に多数の基地局を設置することとなり、効率的な置局ができなくなる。
【0007】
また、無線LAN上に音声データを通す場合にはリアルタイム性が要求されるため、RSSI値を満足している場合であっても、ハンドオーバの実行に伴い品質が劣化する場合がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、予め想定していない方法でRSSIを測定する無線LAN装置を利用して置局を行う(基地局の設置位置を決定する)場合であっても、基地局を設置するエリア内の任意の位置で所望の通信品質が得られるようにするとともに、必要以上に基地局を密に設置してしまうことがないようにする、すなわち、RSSIを高精度に算出して、効率的に基地局の設置位置を決定することを実現可能な置局設計装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、使用可能な複数の無線装置のうちのいずれか一つの無線装置における無線信号の受信電力測定結果を利用し、無線LANの基地局設置位置を決定する際に参照するエリア内通信品質判定結果を生成する置局設計装置であって、自装置の位置情報が外部から入力されるごとに、利用している無線装置から受信電力測定結果である受信電力情報を取得する受信電力情報取得手段と、前記受信電力情報に基づいてRSSIを算出し、さらに、算出したRSSIを、利用している無線装置に応じた方法で補正して補正後のRSSIを生成し、前記位置情報と関連付けて記憶部に格納する通信品質情報生成手段と、ユーザーから指示を受けた場合に、前記記憶部に格納されているRSSIおよび位置情報と、置局対象エリアの地図情報と、に基づいて、当該置局対象エリア内の通信可能エリアと通信不能エリアを示すエリア内通信品質判定結果を生成するエリア判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、置局設計装置では、無線装置で測定された受信電力情報を取得してRSSI値を算出し、これを無線装置ごとに異なる方法で補正して補正後のRSSI値を生成するとともに位置情報と関連付けて記憶しておき、また、ユーザーから指示を受けた場合には、記憶しておいた補正後のRSSI値および位置情報に基づいて、エリア内通信品質判定結果を生成することとしたので、予め想定していない方法でRSSIを測定する無線LAN装置を無線装置として使用する場合のRSSI算出精度を向上させることができる。この結果、ユーザーは、基地局を設置する置局対象エリア内の任意の位置で所望の通信品質が得られるようにするとともに、必要以上に基地局を密に設置してしまうことのない、効率的な基地局の設置位置を決定できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明にかかる置局設計装置の実施の形態1の構成例を示す図である。
【図2】図2は、本発明にかかる置局設計装置の他の構成例を示す図である。
【図3】図3は、通信品質判定部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる置局設計装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる置局設計装置の実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示した置局設計装置1は、受信電力測定I/F(インタフェース)部2、通信品質判定部3、判定結果出力I/F部4、測定位置入力I/F部5、パラメータ入力I/F部6、地図情報入力I/F部7および記憶部8を備え、外部の無線装置100で測定された無線信号の受信電力測定結果を利用して、基地局の設置位置をユーザーが決定する際に参照する情報を生成する。
【0014】
置局設計装置1において、受信電力測定I/F部2(受信電力情報取得手段に相当)は、外部の無線LANなどの無線装置100と接続する機能を提供し、無線装置100が測定した無線信号の受信電力を所定のタイミングで取得する。なお、図1では、無線装置100を置局設計装置の外部に置く構成例について示しているが、図2に示すように、置局設計装置の中に置く構成でも構わない。いずれの構成を採用した場合においても、置局設計装置の各構成要素の動作は同じである。
【0015】
図1に示した構成を採用している置局設計装置1においては、無線装置100とのインタフェース(I/F)はUSB,SDIO,PCI,PCICIAなどであり、無線装置100のH/W(ハードウェア)形状に応じた構成を採用する。I/Fを複数備える場合、受信電力は、無線装置100が接続されているI/F経由で取得する。
【0016】
通信品質判定部3(通信品質情報生成手段に相当)は、受信電力測定I/F部2経由で受け取った無線装置100における受信電力測定結果およびパラメータ入力I/F部6が外部から取得して記憶部8で保持しておいたパラメータに基づいて、通信品質を算出する。
【0017】
なお、本実施の形態では、通信品質判定部3が通信品質としてRSSIを算出する場合の例について説明する。RSSI以外を通信品質として算出する場合については実施の形態2で説明する。
【0018】
判定結果出力I/F部4(エリア判定手段に相当)は、ユーザーからの要求に応じて、通信品質判定部3からの出力(算出されたRSSI値など、詳細は後述する)を記憶部8経由で受け取り、この情報と、測定位置入力I/F部5、パラメータ入力I/F部6または地図情報入力I/F部7を介して外部から受け取ったそれぞれの情報(詳細は後述する)と、に基づいて、置局対象エリアにおいて基地局の設置位置を決定する際の参考データであるエリア内通信品質判定結果(詳細は後述する)を生成して出力する。
【0019】
測定位置入力I/F部5は、たとえばユーザーに位置情報を入力させることにより外部から位置情報を取得するインタフェースを提供する。なお、位置情報を取得した場合、この位置情報は、その時点の通信品質判定部3における判定結果(算出されたRSSI値)と関連付けられた上で記憶部8に格納される。インタフェース例としてはマウスや液晶画面に入力するタッチペンなどを利用して位置情報を入力させる構成が考えられる。また、GPS(Global Positioning System)などを利用して定期的に位置情報を取得するようにして、位置情報を取得するごとに通信品質判定部3における判定結果と関連付けて記憶部8に格納する構成を採用してもよい。
【0020】
パラメータ入力I/F部6は、あらかじめ決められた初期パラメータを入力するインタフェースを提供し、入力された情報(初期パラメータ)は記憶部8に格納する。初期パラメータとは、置局設計装置の動作を指示する情報である。インタフェース例としてはキーボードなどを接続し、指定された値を入力させる構成、あるいはRS233Cなどのシリアルケーブルのインタフェースを持ち、それを経由して接続されたPCから入力させる構成などが考えられる。入力情報(初期パラメータ)の具体例としては、地図上におけるメートル距離情報や通信品質判定部3で使用する無線の遅延やパケット損失率などのパラメータ、基地局のエリア範囲(通信可能な範囲)の判定に用いる情報の設定(RSSI値と音声品質値のどちらを使用して判定を行うかの指定)などがある。
【0021】
地図情報入力I/F部7は、地図情報を入力するインタ−フェースを提供し、測定するエリア(置局対象エリア)のレイアウト情報、地図情報などを入力情報として取得し、記憶部8に格納する。インタフェース例としては、スキャナーを具備し、地図をファイル形式で取り込む構成や、jpegなどの画像形式のファイルに変換済みの地図情報やxlsなどの文章ファイルに変換済みの地図情報をPCなどから取得する構成が考えられる。
【0022】
記憶部8は、たとえばメモリやHDDにより実現され、置局設計装置1内の各部から受け取った情報などを記憶する。
【0023】
つづいて、本実施の形態の置局設計装置1の動作例について説明する。受信電力測定I/F部2は、定期的にまたはユーザーから指示を受けた場合に、無線装置100で測定された無線信号の受信電力の情報を取得する。また、受信電力測定I/F部2は、受信電力情報を取得すると、それを通信品質判定部3に渡す。なお、受信電力測定I/F部2は、この動作を行うにあたって、記憶部8に格納されているパラメータ(パラメータ入力I/F部6が外部から受け取った初期パラメータに含まれる各種パラメータ)を参照し、パラメータ値に従った動作を実行する。たとえば、受信電力情報を定期的に取得するのかユーザーから指示があった場合に取得するのかの動作モードを示すパラメータや、受信電力情報を定期的に取得する場合の取得動作実行周期を示すパラメータなどに従った動作を実行する。
【0024】
通信品質判定部3は、受信電力測定I/F部2から受信電力情報を受け取ると、この受信電力情報および記憶部8に格納されているパラメータ(初期パラメータ)に基づいて、RSSI値を算出する。算出結果は測定位置入力I/F部5経由で入力された測定位置の情報とともに記憶部8に格納する。なお、格納しようとしている測定位置情報と同じ測定位置情報がRSSI値と関連付けられて記憶部8に格納済みの場合、予め指定された動作を実行する。たとえば、それまで格納されていた情報を新たに算出した情報に置き換える,それまで格納されていた情報(過去に算出された情報)と新たに算出した情報との平均値を算出し、それに置き換える,などの動作を実行する。
【0025】
判定結果出力I/F部4は、判定結果の出力指示をユーザーから受けると、記憶部8で記憶されている測定位置情報およびこれに関連付けられたRSSI値と、地図情報とに基づいてエリア内通信品質判定結果を生成して出力する。具体的には、判定対象エリア(置局対象エリア)の地図情報が示す地図上の各位置(記憶されている各測定位置情報に対応するそれぞれの位置)に対して、各位置に関連付けて記憶されているRSSI値に基づくプロットを行い、判定対象エリア内の各位置における通信品質(RSSI値)が示された地図情報を生成し、これをエリア内通信品質判定結果として出力する。
【0026】
ここで、本実施の形態の置局設計装置1では、音声などのリアルタイム性が要求される通信(低遅延通信)が実現可能かどうかをRSSI値に基づき判定するためのしきい値(第1のしきい値)と、低遅延通信は実現できないが、リアルタイム性が要求されない通信は実現可能かどうかをRSSI値に基づき判定するためのしきい値(第2のしきい値)とを予め決定し、記憶部8などで保持しておくこととする。なお、「第2のしきい値<第1のしきい値」の関係が成り立ち、これらのしきい値が、上述した基地局のエリア範囲を判定するRSSI値に相当する。そして、判定結果出力I/F部4がRSSI値を判定対象エリアの地図上にプロットする際には、RSSI値が第1のしきい値に達している場所(便宜上、音声通信可能エリアと呼ぶ)と、RSSI値(または通信品質情報)が第2のしきい値と第1のしきい値との間にある場所(非音声通信可能エリアと呼ぶ)と、その他の場所(通信不能エリアと呼ぶ)とに分けて、それぞれ異なる方法でプロットを行う。すなわち、判定結果出力I/F部4は、RSSI値に応じて3つに分けられたエリアのそれぞれを、たとえば異なる色を用いてプロットするなどし、エリア内通信品質判定結果として出力する。
【0027】
また、ユーザーが初期パラメータ内の特定パラメータの設定を変更することにより、プロットを点で表示するか、線で表示するか選択可能な構成とする,プロット間を推定して補間するかどうかを選択可能な構成とする,などとしてもよい。補間の方法としては、たとえば自由空間減衰(2乗則)を利用する。また、判定対象エリア内に壁、机などの障害物(遮蔽物)がある場合、その位置や大きさなどの情報をあらかじめ取得しておき(ユーザーに入力させて)、それを考慮して減衰させて、補間を行うようにしてもよい。
【0028】
判定結果出力I/F部4は、エリア内通信品質判定結果を出力する際、プリンターを利用した紙による出力,jpeやxlsなどのファイルによる出力,表示パネルへの出力(表示),などを行う。
【0029】
なお、図1や図2に示した本実施の形態の置局設計装置1は、ハードウェア単体の測定機、PC上ソフトウェアあるはPCに追加されているハードウェアと連携したソフトウェアのいずれの形態で実現してもよい。
【0030】
つづいて、通信品質判定部3におけるRSSIの計算方法について説明する。通信品質判定部3が通信品質としてRSSI値を算出するように構成する場合、置局設計装置1においては、無線装置100として接続可能な複数の無線LAN端末それぞれについて、RSSIの補正値と無線LAN端末の端末名をパラメータ入力I/F部6経由で取得し、記憶部8で記憶しておく。RSSIの補正値は、たとえば、接続可能なすべての無線LAN端末を無線装置100として使用して同一環境(同一位置)で測定した各RSSI値に基づいて、予め算出しておく。接続可能な無線LAN端末の中の一つを基準端末として設定し、この基準端末を使用した場合のRSSI算出結果と基準端末以外の無線LAN端末を使用した場合のRSSI値との差分に基づいて各無線LAN端末のRSSI補正値を算出すればよい。
【0031】
そして、通信品質判定部3は、RSSI値を計算する場合、受信電力測定I/F部2から受け取った受信電力情報を用いてRSSI値を計算した後、このRSSI値を、無線装置100として接続されている無線LAN端末に対応する補正値を用いて補正した上で最終的なRSSI値(補正後のRSSI値)として出力する。以下に、RSSI値の算出動作を図3に基づいてさらに詳しく説明する。なお、図3は、通信品質判定部3の動作例を示すフローチャートである。便宜上、通信品質判定部3以外の部分における処理も併せて示している。
【0032】
測定位置情報が入力されたことを測定位置入力I/F部5が検出すると(ステップS10)、通信品質判定部3に対して通信品質を測定するように指示が出され、指示を受けた通信品質判定部3は、受信電力測定I/F部2から受け取った受信電力情報に基づいてRSSI値を計算するとともに、無線装置100として接続されている無線LAN端末の基本情報を記憶部8から取得する(ステップS11)。基本情報には、端末名、RSSIを補正する場合に使用する補正値、などが含まれる。
【0033】
そして、通信品質判定部3は、ステップS11で取得した基本情報に基づいて、RSSI値を補正する必要があるかどうか判断し(ステップS12)、補正が必要な場合には(ステップS12,Yes)、上記ステップS11で取得した基本情報に含まれているRSSI補正値を使用して、RSSI補正処理を実行する(ステップS13)。一方、補正が不要な場合には(ステップS12,No)、ステップS14へ遷移する。RSSI値の補正が必要かどうかは、たとえば、無線装置100として接続されている無線LAN端末が、補正処理が不要な基準端末かどうかを端末名に基づき判定し、基準端末であれば補正処理を実施しない(補正処理が不要と判断する)。
【0034】
さらに、通信品質判定部3は、音声品質変換処理を実施する必要があるかどうかを判断し(ステップS14)、必要であれば(ステップS14,Yes)、ステップS12を実行して得られたRSSI値またはステップS13を実行して得られた補正後のRSSI値を音声品質情報に変換し(ステップS16)、得られた音声品質情報を上記ステップS10で取得した測定位置情報と関連付けて出力、すなわち記憶部8に格納する(ステップS17)。一方、音声品質変換処理の実施が不要であれば(ステップS14,No)、ステップS12を実行して得られたRSSI値またはステップS13を実行して得られた補正後のRSSI値を上記ステップS10で取得した測定位置情報と関連付けて、記憶部8に格納する(ステップS15)。音声品質変換処理を実施する必要があるかどうかは、ユーザーからの指示に従うこととし、動作指定のためのメニュー画面などで音声品質変換処理を実施するように設定がされていた場合には、実施する必要があると判断する。なお、ステップS16で実施する音声品質変換処理の詳細については、実施の形態2で説明する。
【0035】
このように、本実施の形態の置局設計装置は、無線装置で測定された基地局から送信された無線信号の受信電力の情報を取得し、取得した受信電力情報を用いてRSSI値を算出し、これを無線装置ごとに異なる方法で補正して(異なる補正値を用いて補正して)補正後のRSSI値を生成することとした。また、補正後のRSSI値を自装置の位置情報に関連付けて記憶しておき、この記憶しておいた補正後のRSSI値および位置情報に基づいて、置局対象エリア内の各位置を、音声通信可能エリア、非音声通信可能エリアおよび通信不能エリアの中のどのエリアに属するか判定することとした。これにより、エリアの判定に用いるRSSI値の算出精度を向上させることができる。この結果、予め想定していない方法でRSSI値を測定する無線LAN装置(上記基準端末以外の無線LAN端末)を無線装置として使用する場合であっても、ユーザーは、基地局を設置する置局対象エリア内の任意の位置で所望の通信品質が得られるようにするとともに、必要以上に基地局を密に設置してしまうことのない、効率的な基地局の設置位置を決定できる。
【0036】
なお、音声などのリアルタイム性が要求される通信(低遅延通信)サービスを主に提供することを目的として基地局の設置位置を決定する場合も想定して、無線装置100として接続可能な無線LAN端末のうち、同一条件(同一環境)下におけるRSSI値の測定結果が最も低くなる無線LAN端末を基準端末として補正を行うようにしてもよい。すなわち、低遅延通信サービスの提供を目的とした置局設計かどうかをユーザーが選択できるような構成を採用し、ユーザーによる選択結果に応じた方法にて通信品質(RSSI値)を補正するようにしてもよい。同一条件下におけるRSSI値の測定結果が最も低くなる無線LAN端末を基準端末として補正を行うようにするのは、無線LAN端末がRSSI値の測定結果から通信品質が劣化したと判断してハンドオーバを実行する頻度を抑えるためであり、これによって音声通信の品質がハンドオーバの実施に伴って劣化するのを防止できる。
【0037】
実施の形態2.
つづいて、実施の形態1で説明した置局設計装置1において、通信品質判定部3がRSSI値を音声品質情報に変換する動作、すなわち、上記図3のステップS16で実行する動作について説明する。
【0038】
通信品質判定部3がRSSI値を音声品質情報に変換する処理(音声品質変換処理)を実行する場合、置局設計装置1は、文献“ITU−T Rec.G107 E−model”<http://www.itu.int/ITU-T/studygroups/com12/emodelv1/tut.htm>で規定されているパラメータをパラメータ入力I/F部6経由で取得し、初期パラメータとして記憶部8に格納しておく。以下に、音声品質変換処理について説明する。
【0039】
通信品質判定部3は、音声品質変換処理を実行する場合、上記図3に示したステップS16では、次式で示されるE−modlの計算式に基づいて、上記文献で規定されたR値を計算する。そして、R値を音声品質として出力する(測定位置情報と関連付けて記憶部8に格納するステップS17の処理に相当)。
R=Ro−Is−Id−Ie,eff+A
【0040】
ここで、「Ro」は、回線雑音、送話側および受話側の室内騒音、加入者線雑音などによる劣化分のみを考慮して算出した総合品質であり、「Is」は、OLR、側音およびqduによる劣化分(なおqduはADPCMを含むPCM系符号化の量子化歪み単位である)であり、「Id」は、送話者エコー、受話者エコー、遅延時間による劣化分であり、「Ie,eff」は、低ビットレート符号化、パケット損失などによる劣化分である。また、「A」は、モバイル通信などの利便性による補完値を示している。なお、これらは23個のパラメータからなるが、これらのうち、無線に関連するパラメータは「Ta」(エンド・ツー・エンド片道遅延時間、単位はmsec)および「Ppl」(パケット損失率、単位は%)の2つである。したがって、通信品質判定部3は、この2つのパラメータを使用して次に示すような補正を行う。ただし、パケット損失率とエンド・ツー・エンド片道遅延時間は無線を考慮する。すなわち、パケット損失率は無線区間でのパケット損失率とし、実測値あるいは他のシステムで計算させたシミュレーション値をパケット損失率として入力する。または、受信電力と定義されたパケット長をパラメータ入力I/F部6経由で入力して通信品質判定部3がパケット損失率を計算する。例えば上記非特許文献3には1000byte長のデータ伝送時のPER=10%の値における受信電力が記載されているので、これを利用してパケット損失率(PER)を計算する。
【0041】
またエンド・ツー・エンド片道遅延時間は無線の遅延のみを適用し、最大収容台数時の送信遅延、送信タイミング待ち時間(2進バックオフ時間)、パケット衝突による再送時間などの総和を求める。なお、エンド・ツー・エンド片道遅延時間は、実測値や他のシステムで計算させたシミュレーション値をそのままパラメータ入力I/F部6から入力して記憶部8で保持する。または、上述した送信遅延、送信タイミング待ち時間、パケット衝突による再送時間、基地局における無線装置の最大収容台数などをパラメータ入力I/F部6から入力して記憶部8に保持し、その値を用いて、通信品質判定部3が算出する。
【0042】
なお、エンド・ツー・エンド片道遅延時間は無線だけを考慮したが、特定の拠点との通信が多い場合は特定拠点間の有線の遅延を考慮して計算するようにしても構わない。また、本実施の形態ではR値を算出することとしたが、これをMOS(Mean Opinion Score)値に変換して出力するようにしても構わない。この場合、上記文献のAnnex.Bの記載内容に従う。
【0043】
本実施の形態の測定結果出力I/F部4の動作(通信品質判定部3が音声品質変換処理を実行した場合の動作)は、使用する情報がRSSI値と測定位置情報から音声品質と測定位置情報に変更となる点を除いて、実施の形態1と同様である。
【0044】
このように、本実施の形態の置局設計装置は、実施の形態1の置局設計装置が有する機能に加えて、実施の形態1で示した手順で得られたRSSI値を音声品質情報に変換する処理を実行し、音声品質情報に基づいて、置局対象エリア内の各位置を、音声通信可能エリア、非音声通信可能エリアおよび通信不能エリアの中のどのエリアに属するか判定することとした。これにより、RSSI値でなく、音声品質にて評価する置局設計が実現され、無線がわからないユーザーに対しても、わかりやすい形で置局設計を容易にする効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる置局設計装置は、無線LANの基地局設置位置を決定する際に参照する情報であるエリア内通信品質判定結果を生成する場合に有用であり、特に、RSSIの利用に加えて音声品質によるエリア判定が可能な置局設計装置に適している。
【符号の説明】
【0046】
1 置局設計装置
2 受信電力測定I/F部
3 通信品質判定部
4 判定結果出力I/F部
5 測定位置入力I/F部
6 パラメータ入力I/F部
7 地図情報入力I/F部
8 記憶部
100 無線装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用可能な複数の無線装置のうちのいずれか一つの無線装置における無線信号の受信電力測定結果を利用し、無線LANの基地局設置位置を決定する際に参照するエリア内通信品質判定結果を生成する置局設計装置であって、
自装置の位置情報が外部から入力されるごとに、利用している無線装置から受信電力測定結果である受信電力情報を取得する受信電力情報取得手段と、
前記受信電力情報に基づいてRSSIを算出し、さらに、算出したRSSIを、利用している無線装置に応じた方法で補正して補正後のRSSIを生成し、前記位置情報と関連付けて記憶部に格納する通信品質情報生成手段と、
ユーザーから指示を受けた場合に、前記記憶部に格納されているRSSIおよび位置情報と、置局対象エリアの地図情報と、に基づいて、当該置局対象エリア内の通信可能エリアと通信不能エリアを示すエリア内通信品質判定結果を生成するエリア判定手段と、
を備えることを特徴とする置局設計装置。
【請求項2】
前記通信品質情報生成手段は、利用している無線装置が予め決定しておいた基準端末である場合には、前記算出したRSSIに対する補正処理を実行することなく前記位置情報と関連付けて記憶部に格納することを特徴とする請求項1に記載の置局設計装置。
【請求項3】
使用可能な複数の無線装置のうちのいずれか一つの無線装置における無線信号の受信電力測定結果を利用し、無線LANの基地局設置位置を決定する際に参照するエリア内通信品質判定結果を生成する置局設計装置であって、
自装置の位置情報が外部から入力されるごとに、利用している無線装置から受信電力測定結果である受信電力情報を取得する受信電力情報取得手段と、
前記受信電力情報に基づいて音声品質を算出し、前記位置情報と関連付けて記憶部に格納する通信品質情報生成手段と、
ユーザーから指示を受けた場合に、前記記憶部に格納されている音声品質および位置情報と、置局対象エリアの地図情報と、に基づいて、当該置局対象エリア内の通信可能エリアと通信不能エリアを示すエリア内通信品質判定結果を生成するエリア判定手段と、
を備えることを特徴とする置局設計装置。
【請求項4】
前記通信品質情報生成手段は、まず受信電力情報に基づいてRSSIを算出し、当該算出したRSSIに基づいて音声品質を算出することを特徴とする請求項3に記載の置局設計装置。
【請求項5】
前記通信品質情報生成手段は、さらに、利用している無線装置に応じた方法によって前記算出したRSSIを補正し、得られた補正後のRSSIを用いて音声品質を算出することを特徴とする請求項4に記載の置局設計装置。
【請求項6】
前記エリア判定手段は、前記通信可能エリア内の各位置を、リアルタイム性が要求される通信の実現が可能な位置と不可能な位置の2つに分類し、この分類結果を含んだエリア内通信品質判定結果を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の置局設計装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate