説明

置換ポルフィリンの調製方法

式(I)を有する化合物および中間化合物を調製するための方法を開示する。式中、Mは、単一光子放出型トモグラフィにより画像化可能な放射性金属および/または常磁性金属であり、Rは水素またはハロゲンであり、但し、少なくとも1つのRがハロゲンであり、Yは、オルト、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルト−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルト−、メタ−、パラ−カルボランである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のポリフィリンの製造方法、ならびに式(II)の化合物のような中間化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、初期から末期の癌の処置および治療において広く用いられているが、欠点も多く、これには正常組織の損傷、つらい治療スケジュール(6週間にも及ぶ)が含まれる。臨床での放射線療法および化学療法による生存率は、いまだ不十分であり、全く受け入れ難いようなケースもある。しかし、治療の他の選択肢がない場合(圧倒的多数の癌患者がこれに当てはまる)には、放射線療法様式の使用が主流となる。目下の研究努力では、この先の10年で、放射線治療の実施過程および結果は10%しか向上しないと予測されている。つまり、治癒率は30%から33%へ上昇するが、残り70%は緩和治療となる。よって、主たる課題は、正常組織の耐性限界を越えることなくこの治癒率をさらに著しく向上させることである。慎重な見通しによれば、世界中で1日に100,000を超える患者が従来の放射線療法による治療を受けており、1日に5,000を超える新たな患者がその治療様式を開始する。従来の放射線療法の手法を改善して、治癒率を向上させる必要があるのは明らかである。
【0003】
治癒率を向上させる一手段には、X線活性薬剤療法(X-ray activated-drug therapy)または光活性薬剤療法(photo activated-drug therapy)(PAT)がある。この方法では、活性化可能な薬剤を患者に投与し、この薬剤を選択的に腫瘍組織に局部集中させる。この手段は、標準的な多数の放射線技術と組み合わせることができる。X線活性薬剤療法(PAT)は、癌治療のための従来の放射線療法に代えて用いることができる。X線活性薬剤療法の臨床現場への移行は、従来の放射線療法による30%の治癒率から、85%という驚くべき治癒率をもたらす可能性を有する。
【0004】
放射線療法では、大きなX線装置を使用する。ガンマ線または電子線を使用することもある。活性化可能な薬剤は、X線(ならびにガンマ線、電子線、陽子線、中性子線といったイオン化放射)を使用して活性化することができる。X線は、従来の放射線療法および様々な種類の療法、例えば共焦点放射線療法(confocal radiotherapy)、強度変調放射線療法(IMRT)、侵襲性内用放射線療法(invasive internal radiotherapy)および小線源放射線療法(brachytherapy)で使用されている。
【0005】
外部X線では、マスク(腫瘍の形状に輪郭が描かれた)を利用して目標を定め、外部から光線を当てる。様々な角度の単一または多重X線ビームを使用して、腫瘍に達するX線量を最大限に、これに対して正常組織に達するX線量を最小限にすることができる。
【0006】
侵襲性内用放射線療法では、放射線管を腫瘍へと導入して極めて強いX線量を与える。このようにして多くの腫瘍、特に頸癌、乳癌および皮膚癌を治療することができる。
【0007】
小線源療法では、放射線「シード線源(seeds)」を確実に(seriotactically)腫瘍体内部に入れ込む。放射線源は、通常、ラジウム226、セシウム137、コバルト60、イリジウム192、金198、ストロンチウム90、イットリウム90のいずれか1つである。非密封式の用法に適した別の放射性核種は、ヨウ素131、リン32、イットリウム90である。
【0008】
IMRTは最近開発されたものであり、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出トモグラフィ(PET)、単一光子放出型トモグラフィ(SPECT)およびコンピュータトモグラフィ(CT)の走査から得られた3次元のデータを利用し、X線を極めて正確にターゲットに到達させる。X線のペンシルビームによって、腫瘍全体にわたって走査がなされる。任意の点でのビームの強さおよび所要時間(照射時間、dwell time)は、細胞殺滅作用が最大となる最大のX線エネルギーを発するように可変となっている。これにより、90〜100Gyを超えるX線量の合計が供給され、極めて有効であることも証明されている。
【0009】
しかし、IMRTは、多くのデータを必要とする方法であり、腫瘍の詳細な寸法およびその拡がりに関する情報が必要であり、呼吸および心臓の鼓動によって起こる腫瘍の小さな動き(0.1〜1mm)のために、ゲリラ細胞へ供給されるX線が最適量より少なくなってしまう。このような細胞は治療を逃れ、腫瘍再発が起こり得る。この方法では、腫瘍の動きも補償するようなリアルタイムのフィードバックがあれば、助けとなるであろう。
【0010】
ある患者が癌であると診断され、放射線による癌治療を行う決定がなされた場合、患者には、腫瘍の正確な位置、腫瘍の拡がりおよび寸法を基に、治療計画が立てられ、その患者固有のX線量の計算が行われる。治療計画のための情報は、従来の診断画像技術、例えばMRI、PET、SPECT、ならびにX線画像およびCT走査から得られる。治療面積および領域が癌の全てを含み、生命維持に必要な器官(例えば心臓、脊髄、内臓)が回避されていることが確実になるように、注意深い計画が必要である。このような計画を助成するための、腫瘍を画像化する改善された方法が必要である。
【0011】
従来技術においては、ポルフィリンが、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)および光線力学療法(PDT)を含む様々な放射線式の療法に応用されてきた。ポルフィリンは、ヒトを含むホ乳類の新生組織に対して高い親和性を有することが知られている(例えば、Solloway et al, Chem Rev (1998), 98, 1515-1562、米国特許第5,877,165号明細書、British Journal of Radiology (1998), 71, 773-781、Journal of Neuro-Oncology (2001), 52, 111-117、およびInternational Journal of Cancer (1996), 68, 114-119を参照)。
【0012】
特に重要であるのは、CuTCPHおよびNiTCPHを含む合成テトラフェニルポルフィリン(TPP)誘導体を含むポルフィリンの類である。これらのポルフィリン環は、ニッケルおよび銅原子のキレート剤として存在し、正常組織または血液に対し腫瘍組織を選択する極めて有益な局在を示す。例えば、米国特許第5,877,165号明細書には、腫瘍の結腸・血液比が16:1であることが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
治療法および診断法での使用のためのさらに別のかつ改善されたポルフィリンが必要とされている。また、このようなポルフィリンを製造する改善された方法も必要とされている。本発明は、これらの問題およびさらに他の問題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
よって、第1の態様では、本発明は、式I
【0015】
【化25】

【0016】
[式中、Mは、単一光子放出型トモグラフィで画像化可能な放射性金属および/または常磁性金属であり、Rは、水素またはハロゲンであって、但し、少なくとも1つのRがハロゲンであり、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、式III
【0017】
【化26】

【0018】
[式中、YおよびMは、式Iの化合物で定義した通りである]を有する化合物をハロゲン化することを含む方法を提供する。
【0019】
上記第1の態様の方法によって製造される式Iの化合物は、8つのR基を含む。本発明においては、各R基は、好ましくはハロゲンであり、より好ましくは臭化物である。Yは、好ましくは、メタO−(CH−CHB10またはメタO−(CH−CHB1010から選択され、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。Mは、好ましくは、遷移金属またはランタノイド金属である。
【0020】
本発明の第1の態様の特定の構成では、上記方法は、好ましくは、式Iの化合物を形成する方法であって、MがCuであり、各Rが臭化物であり、YがメタO−CH−CHB1010である。
【0021】
本発明の第2の態様は、上記のように定義した式(III)の化合物を製造する方法であって、式II
【0022】
【化27】

【0023】
[式中、Yは、式Iの化合物で定義した通りである]を有する化合物を、金属Mのアセテートと組み合わせる(化合させる)ことを含む方法を提供する。
【0024】
本発明の第3の態様は、式Iの化合物を式IIの化合物から製造する方法であって、式IIの化合物を金属アセテートと化合させて、式IIIの化合物をインサイトゥで形成し、このインサイトゥで生成した式IIIの化合物をハロゲン化剤と化合させて、式Iの化合物を形成することを含む方法を提供する。このワンポット合成によって、式IIIの化合物のインサイトゥでの生成が可能となり、この中間化合物の分離および精製の必要がなくなることが理解されるであろう。本発明のこの態様のためには、式IIの化合物を、好ましくは、ジクロロメタン中で金属アセテートと化合させる。より好ましくは、金属アセテートは銅アセテートである。インサイトゥで生成させた式IIIの化合物のハロゲン化は、好ましくは、臭化物を用いて行う。ハロゲン化は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、より好ましくはメタノール中で行う。
【0025】
本発明の第4の態様は、上記のように定義した式(II)を有する化合物を調製する方法であって、
a)式
【0026】
【化28】

【0027】
を有するアルデヒドを、ルイス酸触媒の存在下でピロールと化合させて、式IV
【0028】
【化29】

【0029】
を有する化合物を形成し、
b)アルデヒドに対し0.01〜2モル等量の2,3−ジシアノベンゾキノンを添加することによって、上記式IVを有する化合物を酸化することを含む、方法に関する。
【0030】
さらに、本発明は、上記ステップa)に記載のプロセスを含む、上述の式IVを有する化合物を製造する方法に関する。さらに、本発明は、上記ステップb)に記載のプロセスによって、式IVの化合物から式IIの化合物を製造する方法に関する。
【0031】
本発明の第5の態様は、上記のように定義した式Iを有する化合物を調製する方法であって、
a)式
【0032】
【化30】

【0033】
を有するアルデヒドを、ルイス酸触媒の存在下でピロールと化合し、上述の式IVを有する化合物を形成し、
アルデヒドに対し0.01〜2モル等量の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンを添加することによって、式IVを有する化合物を酸化し、上記式IIを有する化合物を形成し、
c)式IIを有する化合物を金属Mのアセテートと化合し、上記式IIIを有する化合物を形成し、
d)式IIIを有する化合物をハロゲン化剤と化合し、上記式Iを有する化合物を形成する、方法に関する。
【0034】
本発明のこの態様のためには、式IIの化合物を、好ましくは、ジクロロメタンおよびメタノールの混合物中で金属Mのアセテートと化合させる。別態様では、式IIの化合物を、好ましくは、ジクロロメタン中で金属Mのアセテートと化合させる。式IIの化合物と金属アセテートとの反応は、好ましくは、常温温度で行う。
【0035】
ハロゲン化は、混合された溶剤溶液、好ましくは、トリクロロメタン、四塩化炭素および/またはジクロロメタンから選択された塩素化溶剤または塩素化溶剤の混合物中で行うのが好ましく、より好ましくはジクロロメタン中で行うのが好ましい。別態様では、ハロゲン化は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、好ましくはメタノール中で行う。また、ハロゲン化は、常温で行うのが好ましい。
【0036】
本発明の第6の態様は、上記のように定義した式Iを有する化合物を調製するさらなる方法であって、
a)式
【0037】
【化31】

【0038】
を有するアルデヒドを、ルイス酸触媒の存在下でピロールと化合し、上記のように定義した式IVを有する化合物を形成し、
b)アルデヒドに対し0.01〜2モル等量の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンを添加することによって、式IVを有する化合物を酸化し、上記のように定義した式IIを有する化合物を形成し、
c)式IIを有する化合物を金属Mのアセテートと化合し、上記のように定義した式IIIを有する化合物をインサイトゥで形成し、
d)式IIIを有する化合物をハロゲン化剤と化合し、式Iを有する化合物を形成する方法に関する。
【0039】
式IIの化合物を、インサイトゥで製造し、次なる分離または精製をすることなくステップd)で直ちに使用する。よって、このプロセスは、労力と時間を要する分離ステップおよび精製ステップを最小限にして式Iの化合物を合成する効率の良い方法を提供する。
【0040】
本発明のこの第6の態様のためには、式(II)を有する化合物を、好ましくは、ジクロロメタン中で金属アセテートと化合させる。さらに、ハロゲン化を、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、好ましくはメタノール中で行う。また、金属の導入およびハロゲン化は、常温で行うのが好ましい。
【0041】
上記の各プロセスは、高いレベルでの(高収率での)、例えば数十グラムのプロセス製品の再現性のある製造を提供するものであり、これにより、これまで不可能であった方式で反応のスケールアップ(規模拡大)が可能となり、特に、大量生産規模での製品の製造が可能となる。
【0042】
本発明の第7の態様は、式
【0043】
【化32】

【0044】
[式中、Yは、式Iの化合物で定義した通りである]を有するアルデヒドを形成する方法であって、
カルボランをアセトニトリルによって活性化し、プロパルギルオキシベンジルアセテートと反応させて、アルコールを形成し、続いて酸化を行う方法に関する。好ましくは、カルボランはデカボランである。
【0045】
錯誤を回避するために、式II、III、IVの化合物またはアルデヒドのいずれにおいても基R、MおよびYは、式Iの化合物で定義した通りとする。さらに、本発明に記載のプロセスの1つ以上を、本発明に記載の1つ以上の別のプロセスと組み合わせ、本発明で定義する式I、II、IIIまたはIVの化合物を得るためのプロセスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
上記の式Iを有する化合物を調製する方法は、上記のように定義した式IIIの化合物のハロゲン化を含む。
【0047】
式IIIを有する化合物を溶剤溶液中でハロゲン化剤と化合させるが、この溶剤溶液は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ジクロロメタン、トリクロロメタンおよび/または四塩化炭素、あるいは好ましくは混合された溶剤系、例えば、1〜6個の炭素原子を有する2つ以上の脂肪族アルコールの混合物を含む。混合溶剤は、好ましくは、トリクロロメタンおよび四塩化炭素である。本発明の特定の構成では、溶剤系は、ジクロロメタンを含むのが好ましい。
【0048】
溶剤系は、さらに、塩基、例えば有機塩基を含んでいてよい。適切な塩基の例には、ピリジン、アルコール等が含まれる。
【0049】
式IIIの化合物を、脂肪族アルコール中でハロゲン化剤と化合させる場合には、この脂肪族アルコールは、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。脂肪族アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールまたはヘキサノールの1つ以上であってよい。好ましくは、脂肪族アルコールはメタノールである。ハロゲン化を脂肪族アルコール中で行う場合、ピリジンのような有機塩基の使用は必ずしも必要でないことが理解されるであろう。
【0050】
Rで表されるハロゲンは、F、Cl、Br、I、好ましくはBrであってよい。
【0051】
適切なハロゲン化剤の例は、F、Cl、BrおよびIである。特に好ましいハロゲン化剤は臭素である。
【0052】
上述のように、式Iの化合物において、1つ以上の基Rがハロゲンであり、好ましくは、2、3、4、5、6、7または8個の基Rがハロゲンであり、最も好ましくは、全てのR基がハロゲンである。よって、ハロゲン化剤は、所望の程度のハロゲン化を可能にするような十分な量で供給(使用)する。好ましくは、式I中の各Rがハロゲンを表すことを確実にするために十分なハロゲン化剤を使用する。よって、ハロゲン化剤は、式I中の各Rがハロゲンを表すことを確実にするような過剰の量で供給されるであろう。ハロゲン化剤は、8〜20等量(式IIIの化合物の量に対して)のレベルで、好ましくは9〜14等量のレベルで供給することができる。
【0053】
好ましくは、ハロゲン化剤の溶液を式IIIの化合物の溶液に、1分〜6時間、好ましくは0.5〜3時間の時間にわたり徐々に添加し、得られた混合物を10分〜6時間、好ましくは1〜4時間の時間にわたり撹拌する。
【0054】
反応は、0〜80℃、好ましくは常温で行うことができる。好ましくは、ピリジンのような塩基を加え、得られた混合物を2〜48時間撹拌する。
【0055】
式IIIの化合物と、ハロゲン化剤および1〜6個の炭素原子を有する脂肪族アルコールと合わせることによって式Iの化合物を形成する場合には、ハロゲン化剤は、好ましくは臭素である。
【0056】
いかなるハロゲン化剤またはいかなるハロゲン化剤の反応生成物も、ハロゲン化ステップが終了した後に反応混合物から除去するのが望ましいことが理解されるであろう。この除去は、当分野で公知の方法を用いて行うことができる。本発明の好ましい構成では、式Iの化合物の形成中に生成する臭化水素を、塩基、好ましくは無機塩基、例えば1A族(1族)金属の1つ以上の重炭酸塩を使用して除去する。
【0057】
式IIIの化合物は、上記のように定義した式IIを有する化合物を金属Mのアセテートと、好ましくは常温で化合させて、式IIIを有する化合物を形成することにより製造する。
【0058】
本発明では、金属Mは、遷移金属またはランタノイド金属、例えば、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、テクネチウム(Tc)、クロム(Cr)、白金(Pt)、鉛(Pd)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)、金(Au)、バリウム(Ba)、タングステン(W)およびガドリニウム(Gd)から選択される。最も好ましい金属は、Cu、Zn、Ni、PbおよびMnである。金属アセテートは、好ましくは、1〜5等量(式IIの化合物の量に対して)のレベルで、より好ましくは1.1〜1.5等量のレベルで供給(使用)することができる。
【0059】
式IIIの化合物の形成は、好ましくは、ジクロロメタンおよびメタノールの混合物中で行う。溶剤混合物中のジクロロメタンおよびメタノールのモル比は、10:1〜1:5であってよい。別態様では、式IIIの化合物の形成は、ジクロロメタン中で行うことができる。式IIIの化合物を、ジクロロメタン中での式IIの化合物と金属アセテートとの化合によって製造する場合、金属アセテートは、好ましくは銅アセテートである。
【0060】
反応は、10〜70℃、より好ましくは15〜60℃、最も好ましくは常温で行うことができる。
【0061】
反応は、0.01〜2時間、好ましくは0.1〜0.5時間にわたって行うことができる。
【0062】
上記のように定義した式IIを有する化合物は、式
【0063】
【化33】

【0064】
[Yは、上記の通りに定義される]を有するアルデヒドとピロールとをルイス酸触媒の存在下で化合させ、上記のように定義した式IVを有する化合物を形成することを含むプロセスによって調製することができる。
【0065】
純粋なピロール、好ましくは新規に蒸留されたピロールを使用すると、収率が向上する。ピロールは、好ましくは、少なくとも98〜99.99%、より好ましくは99.5〜99.99%の純度を有する。
【0066】
反応のための好ましい溶剤には、ジクロロメタン(DCM)およびトリクロロメタンが含まれる。
【0067】
適切なルイス酸触媒には、限定されることなく、トリフルオロ酢酸、ZnCl、FeCl、FeCl、AIBr、AICl、HSO、HNOが含まれる。好ましいルイス酸触媒は、三フッ化ホウ素ジエチルエーテルである。
【0068】
反応は、好ましくは、酸素を存在させないで行う。好ましくは、乾燥窒素流を、溶剤中のアルデヒドとピロールとの混合物に通し、ルイス酸触媒を添加する前に酸素を完全に除去する。
【0069】
反応混合物は、5分〜6時間、好ましくは約1.5時間にわたって撹拌してよい。また、反応は、常温で行うのが好ましい。
【0070】
さらに、反応は、好ましくは無水である。好ましくは、例えば分子篩(モレキュラーシーブ)を加え、得られた溶液を5分〜3時間撹拌し、かつ/または溶剤、試薬およびガラス器具を使用前に乾燥させることによって水を完全に除去する。
【0071】
さらに、反応混合物を、アルデヒドに対して0.01〜2、好ましくは0.1〜1モル等量の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(DDQ)で処理することができる。アルデヒドに対し1モル等量未満のDDQを使用することが好ましい。このような量での使用により、化合物IIの収率が上がることが分かった。得られた溶液を、2〜72時間、好ましくは常温で撹拌することが好ましい。
【0072】
上記のように定義した式IIを有する化合物の調製で使用された式
【0073】
【化34】

【0074】
を有するアルデヒドは、本発明においては、Miura, M., et al, "Preparation of Carboranyl Porphyrins for Boron Neutron Capture Therapy", Tetrahedron Letters, 31, 2247-2250, (1990)に記載の工程に従う複数の段階で調製することができる。上式中、Yは、好ましくは、O−CH−CHB1010である。
【0075】
別態様では、アルデヒドは、実施例に記載する1つ以上の高収率のプロセスによって製造することができる。
【0076】
本発明はさらに、上述のプロセスもしくは方法により得られる生成物(製品)にも関する。特に、本発明は、本発明に記載する1つ以上のプロセスもしくは方法によって製造される、式I、II、IIIまたはIVの化合物あるいは本明細書に記載のアルデヒドに関する。本発明の化合物、特に式Iの化合物は、癌の治療、特にX線活性薬剤療法または光活性薬剤療法で使用することができる。
【0077】
本発明の各態様の全ての好ましい構成は、本発明の他の全ての構成に準用される。
【実施例】
【0078】
本発明を、以下に示す1つ以上の非限定的な実施例によって説明する。
【0079】
実施例1
別途記載がなければ、全ての反応は、窒素雰囲気下で、高温のオーブンで乾燥させたガラス器具中で、マグネチックスターラーによる撹拌またはオーバーヘッドスターラーによって行った。全ての中間生成物および生成物(製品)は、陽子NMR(可能であれば)、TLCおよびMALDI TOF質量分析(ジトラノールマトリックス中で)を用いて同定した。
【0080】
3−プロパルギルオキシベンジルアルコール 3 の調製
【0081】
【化35】

【0082】
20.0Lのフランジ型フラスコ(flange flask)に、メタノール(MeOH)(9.1L、3A分子篩上で乾燥)中の3−ヒドロキシベンジルアルコール(97%、Aldrichより入手、903g、7.28mol、1等量)を仕込み、透明な溶液を得て、この溶液中に、ナトリウムメトキシド(メタノール中に25%、Aldrichより入手、1.746L、7.63mol、1.05等量)を、強く撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間の撹拌後、塩化プロパルギル(トルエン中70重量%、Aldrichより入手、542.6g、805ml、7.29mol、1等量)を、30分間強く撹拌しながらゆっくりと加えた。反応混合物を、40時間還流しながら加熱した(アイソマントルヒータ(isomantle)を76℃に設定、内部温度は64℃)。TLC試験(DCM中の10%MeOH)では、反応が完了していないことが示された。しかし、この段階で反応を終了した。回転蒸発によってMeOHを除去し、残滓をDCM(10.2L)中に溶解して透明な溶液を得て、これを水で洗浄し(5.82L×3)、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶剤を真空で除去し、オレンジ色のゴムのような表記の化合物(706g、60%)を得た。
【0083】
3−プロパルギルオキシベンジルアセテート 4 の調製
【0084】
【化36】

【0085】
このステップのための出発物質は、プロパルギルオキシ物質3およびいくらかのヒドロキシベンジルアルコール2を含む上記の未処理物質であった。
【0086】
5.0Lのフランジ型フラスコに、3(706g、約4.36mol、1等量)および無水酢酸(99.5%、Fisherより入手、1300ml、1mol)を仕込み、透明の溶液を得た。次に、硫酸(濃硫酸98%、150滴、〜3ml、触媒的に使用)を、氷/水浴を用いて0℃に冷却して発熱を制御しながら、極めてゆっくりと(滴下により)30分にわたり添加し、極めて暗色の反応混合物を得た。観察された内部温度の最高値は45℃であった。反応混合物の添加後、30分にわたり撹拌し、反応混合物を99℃で3時間撹拌した。TLC試験(シリカゲルプレート、DCM溶離剤、PMA染色(stain))により、全ての出発物質が消費されたことが示された。混合物を、室温(r.t.)に一晩冷却し、暗緑色の溶液を得て、この溶液を、強く撹拌しながら氷水混合物(水2.5Lおよび氷2.5Kg)中へ注ぎ入れた。生成物をDCM(5.0L×3)で抽出し、この化合した抽出物を水(3.0L×3)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、蒸発させ、黒/茶色の油状の残滓を得た。
【0087】
未処理の生成物を真空蒸留により精製し、表記の化合物4(598g、67%、2からの両ステップに対する収量計40%)を、沸点=92〜80℃/0.1〜0.05mmHg(油浴127〜140℃)の無色油状物として得た。
【0088】
式(4)の化合物は、以下に説明する改善された工程によって調製することができる。この代替的な工程によって、(4)およびこの(4)から誘導される後続の化合物を、より高い収率でかつより高いコスト効率で製造することができる。
【0089】
1)臭化プロパルギルによるアセチル化
【0090】
【化37】

【0091】
この反応は、オーバーヘッド撹拌により6L反応器中で行った。
【0092】
反応器に、3−ヒドロキシベンズアルデヒド(1)(500g、4.09M)を仕込み、外部温度を50℃に設定した。DMF(2L)を添加し、溶液を撹拌した。炭酸カリウム(848g、6.14M)を、起こりうるどんな発熱をも監視しながら(Tmax57℃)徐々に(in portions)添加し、溶液は明るい黄色となった。臭化プロパルギル(550ml、トルエン中80重量%)を滴下により1.5時間にわたり添加した。穏やかな発熱が観察された(Tmax57℃)。
【0093】
添加が完了すると、温度は1時間で60℃に上昇し、反応物は薄茶色の懸濁液に変化した。25℃に冷却した後、水(5L)を添加し、生成物をトルエン(3L)で抽出した。有機相を水で洗浄し(2×2L)、残滓DMFを除去した。分離後、溶剤を真空で除去し、オレンジ色の油状物を得て、さらなる精製なしで使用した。
【0094】
蒸留した生成物は、静止状態で徐々に結晶化した(融点<35℃)。
【0095】
2)水素化ホウ素ナトリウムによる還元
【0096】
【化38】

【0097】
反応は、オーバーヘッド撹拌により6L反応器中で行った。
【0098】
反応器を−5℃に冷却し、化合物(2)をエタノール1L中に添加し、その後、エタノールで3Lとした。水素化ホウ素ナトリウム(50g)を、十分に撹拌しながら(Tmax35℃)、約4gの量ずつ加えた。30分以上経過した後、tlc分析によれば、全ての出発物質が消費されていた。エタノールを真空中で除去し、残ったオレンジ色の油状物を水(3L)中に溶解させた。濃HCl 140mlを撹拌しながらゆっくりと加えた。水相を、ジクロロメタン2×1.5Lで抽出し、MgSO上で乾燥させ、さらなる精製を何ら行わずに次なるステップで使用した。
【0099】
3)塩化アセチルとの反応
【0100】
【化39】

【0101】
反応は、オーバーヘッド撹拌により6L反応器中で行った。
【0102】
反応器に、前のステップからの(3)(4.09mol)のDCM溶液(3L)を仕込み、5℃に冷却した。ピリジン(500ml)およびDMAP(1g)を添加した。次に、塩化アセチル(365ml)を、滴下により添加して、この場合、内部温度が40℃を超えないようにした。添加の完了後、室温で1.5時間撹拌して反応させた。塩酸水溶液(2N)(200ml)を添加し、反応系を撹拌し、相分離させた。有機層を炭酸カリウム水溶液(10重量%)1Lで、続いて塩水1Lで洗浄した。有機抽出物をMgSO上で乾燥させて、溶剤を真空で除去し、オレンジ色の油状物を得た。
【0103】
反応を3回繰り返して、生成物を化合させた。油状物を部分ずつ蒸留により精製し(0.5mmHg、130℃)、薄い黄色の油状物(2.4kg)として(4)を得た。
【0104】
3−(o−クロソ−カルボラニルメトキシ)ベンジルアセテート 5 の調製
【0105】
【化40】

【0106】
この反応ステップでは、デカボラン出発物質を、まずアセトニトリルと反応させて、B1012(CHCN)反応中間体を得た。
【0107】
【化41】

【0108】
このステップの第2の段階では、活性化されたボランを4のアルキン官能部分と反応させて、所望のo−クロソ−カルボランサブユニットを得る。
【0109】
10.0Lフランジ型フラスコに、デカボラン(B1014、Katchemより入手、150g、1.23mol、1等量)を仕込み、無色透明の溶液を得た。アセトニトリル(Aldrichより入手、無水、150ml)を添加し、得られた混合物を室温で3〜4時間窒素雰囲気下で撹拌した。反応を、さらなる手順の前に水素の発生に関して監視した。水素の発生が停止した後、新規に蒸留された3−プロパルギルオキシベンジルアセテオート4(251g、1.23mol、1等量)を添加し、得られた溶液を80℃で3〜4日間撹拌した。反応溶液は、わずかに黄色になった。この時点でのTLC試験(シリカ、DCM、PMAまたはUV検出(developing))では、アルキン4のほぼ全てが消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却し、濃HCl(26ml)、水(500ml)、アセトン(515ml)およびメタノール(1575ml)の混合物2.61Lを、起こり得る発熱を制御するために氷/水浴を用いてゆっくりと添加し、得られた2相系を室温で16時間撹拌し、過剰のデカボラン試薬を完全に消失させた。トルエン層を分離し、さらに水層をトルエン(500ml)で抽出し、化合した有機物を40℃/40mmHgで回転蒸発による蒸発乾固した。減圧下で溶剤を除去することにより、未処理の生成物5(307.0g、77%)を得て、次のステップでさらなる精製を行うことなく使用した。
【0110】
3−(o−クロソ−カルボラニルメトキシ)ベンジルアルコール 6 の調製
【0111】
【化42】

【0112】
この反応ステップも、極めて単純であった。出発物質5および生成物6中のo−クロソ−カルボラニルメトキシ基は、酸性反応条件に対して安定であった。
【0113】
濃塩酸(50.0ml)を、撹拌しながら滴下により、氷温度のアセテート5(307.0g、0.953mol、1等量)のメタノール溶液(3.5L)に添加し、得られたオレンジ色溶液を室温で24時間撹拌し、その後のTLC試験(シリカ、DCM、UVまたはPMA検出)では、出発物質5の全てが消費されていることが示された。 溶剤を、回転蒸留により40℃/40mmHgで除去し、残滓をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(1.7Kgシリカ、1:1DCM/イソヘキサン溶出剤)によって精製し、アルコール6を得た(収量205.2g、77%)。
【0114】
化合物6を得るプロセスの別態様を以下に記述する。
【0115】
4)ボロンかご状構造の導入
【0116】
【化43】

【0117】
[注:このステップで使用された全ての溶剤は、始めに、分子篩上に静置させることにより乾燥させた。]
5L三又フラスコにトルエン1.7Lを装入し、窒素を吹き込んだ(flushed)。デカボラン(200g)を窒素雰囲気下で添加した。アセトニトリル(200ml)を添加して反応させ、40分間、約80℃に加熱し、この温度を1時間維持した。水素の発生、および固体の形成(デカボランアセトニトリル錯体が形成されたものと考えられる)が観察された。
【0118】
反応を熱から外した。アセテート(4)(334.7g)をトルエン(200ml)中に溶解させ、溶液の半量を、撹拌中のデカボラン錯体に添加した。撹拌を、固体が溶解するまで続けた。始めに76℃に冷却した後、81℃までの発熱が観察された。アセテート溶液の残りを添加し、再び加熱を行った。トルエン100mlを使用してアセテートの残りを洗いながら反応容器へ入れた。加熱を43時間続け、その後、出発物質は残らなかった。反応を冷却させ、溶剤を真空で除去し、未処理の生成物をオレンジ色の油状物(655g)として得た。
【0119】
この生成物を、次の反応で直ちに使用した。
5)アセチル基の除去
【0120】
【化44】

【0121】
前の段階から得た未処理の生成物を、メタノール2.5Lに溶解し、水素ガスの発生を監視しながら室温(25℃)で撹拌した。ガス発生が観察されなくなった時(2〜3時間)、反応物を氷浴で冷却し、濃HCl(65ml)を慎重に添加した。撹拌は一晩続けた。
【0122】
24時間後、メタノールを真空30℃で除去した。メタノール約2Lを除去したら、トルエン(1L)添加し、残りのメタノールも除去した。溶液をシリカでろ過し、生成物が全て分離される(tlc分析)までシリカをジクロロメタンで洗浄した。
【0123】
溶剤を除去し、未処理の物質を、ジクロロメタンを溶剤として使用するクロマトグラフィによって精製した。精製された生成物の収量、204g+約50gの混合分画が、他の混合物質と共にクロマトグラフィによって得られた。
【0124】
化合物6は、以下に説明するプロセスによっても調製できる。このプロセスは、本発明の化合物のより直接的な合成を可能にする。このプロセスでは、以下に示すようにボランかご状構造のアルデヒドへの直接的な付加を行う。
【0125】
【化45】

【0126】
デカボラン(50g)を窒素下でトルエン(450ml)に溶解させた。アセトニトリル(50ml)を添加し、混合物を80℃で3時間加熱した。トルエン(50ml)にアルデヒド(64g)を加えたものを添加し、混合物を40時間加熱した(出発物質は見られなかった)。溶剤を真空下で除去し、残滓をメタノール中で還流しながら8時間加熱し、ボランの残りを消失させた。溶剤を除去し、生成物を、ジクロロメタンを溶剤として使用するクロマトグラフィによって分離した。
【0127】
分画1 9.3g、高R値のボラン残滓で汚染
分画2 56.7g、主にフラクションのみ
分画3 2.3g、低R値のボラン残滓で汚染。
【0128】
HPLCによって、生成物が、代替の手順によって生成された生成物と同じであることが示された。
【0129】
デカボラン(2.25g)を、HPLCグレードのアセトニトリル15ml中で還流下で3時間加熱した(懸濁固体)。アセトニトリル(10ml)中の化合物4(3.7g)を添加した。混合物を8時間加熱し(出発物質は完全に消費)、冷却し、溶剤を除去した。残滓をジクロロメタン中に溶解させ、シリカによってろ過し、ジクロロメタン約100mlで洗浄した。溶剤を除去し、未処理の化合物4.2gを得た。アセトニトリルを使用することによって、デカボランと化合物4との反応が加速した。この加速は予測されなかったものであり、本発明の化合物の製造に大きな利益および進歩をもたらす。
【0130】
3−(o−クロソ−カルボラニルメトキシ)ベンズアルデヒド 7 の調製
【0131】
【化46】

【0132】
この調製は、比較的慣例のステップであるが、生成物であるアルデヒド7の収量は極めて高かった(〜90%)。このステップでの重要な要因は、酸化を厳密な無水条件で行うことが必要であり、さもなければこのステップは失敗となる、ということである。
【0133】
乾燥DCM(1.5L)中のアルコール溶液6(205.0g、0.732mol、1等量)を氷温度に冷却されたピリジニウムクロロクロメート(PCC、244.6g、1.135mol、1.55等量)の乾燥DCM懸濁液(750ml)中に、滴下により添加し、得られた混合物を室温で4.5時間撹拌した。TLC試験(シリカ、DCM、UVまたはPMA検出)では、アルコール6の全てが消費されたことが示された。混合物をシリカゲル(シリカ1.5kg)のパッドによりろ過し、ろ過ケーキをDCMにより洗浄した。さらに、ろ液を蒸発乾固し、生成物7を無色の固体として得た(収量187g、92%)。
【0134】
酸化を必要としない、化合物7の別の高収率の合成を以下に記述する。
【0135】
ステップA
デカボラン(12.2g、0.1mol)を、アセトニトリル50ml中で還流下で5時間加熱する。溶剤の体積は、約50%減少し、乾燥トルエン75mlで置き換える(を加える)。プロパルギルアセテート(19.8g、0.2mol)を添加し、混合物を80〜90℃で36時間加熱する。溶剤および過剰の試薬を回転蒸発により除去する。残滓をメタノール50ml中で溶解し、濃HCl 5mlを添加する。一晩放置した後、溶剤の体積を減少させ、トルエン(100ml)を添加し、トルエン溶液を10%炭酸カリウムで洗浄する。溶剤を除去した後、残滓をジクロロメタン小体積中に溶解し、シリカの短いプラグ(plug)を通過させ、ジクロロメタンで溶出する。溶剤の除去後、12.9gの生成物が得られる。
【0136】
アルコールを、ジクロロメタン(60ml)中に溶解する。ピリジン(12ml、2等量)を添加し、混合物を0〜5℃に冷却する。メタンスルホニルクロリド(7.1ml、1.25等量)を添加し、混合物を5時間、その後室温で1時間撹拌する。反応物を2M HCl 100mlで急冷し、層を分離し、水で洗浄し、乾燥させる。溶剤の除去後、未処理の残滓を3−ヒドロキシベンズアルデヒド(12.2g、1.3等量)、DMF(60ml)中の炭酸カリウム(20g)で90〜100℃で8時間処理する。混合物を水(250ml)中に注ぎ込み、トルエンで抽出する(100ml、次に50ml)。合わせられたトルエン抽出物を、炭酸カリウム10%溶液50ml、続いて水で洗浄し、乾燥させる。溶剤の蒸発により化合物7が得られる(18.9g)。必要であれば、化合物を、ジイソプロピルエーテルからの再結晶によってさらに精製することができる。
【0137】
(α,β,γ,δ−テトラ−[3−(1,2−ジカルボドデカボラン(12)−1−イルメトキシル)−フェニル]ポルフォリン 8 の調製
【0138】
【化47】

【0139】
オーバーヘッド撹拌機および窒素インレット/アウトレットを備えている10Lフランジ型フラスコに、アルデヒド7(163g、0.586mol、1等量)、乾燥DCM(8.0L)および新規に蒸留されたピロール(39.26g、0.586mol、1等量)を装入し、乾燥窒素流を気泡状に反応混合物中に24分間通過させ、酸素を完全に除去した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(3.52ml)を添加し、得られた溶液を室温で1.5時間撹拌したところ、赤/茶色の着色が見られた。TLC(シリカ、1:1DCM/イソヘキサン)により、7全てが消費されたことが示された。活性化4A分子篩(106g)を添加して水を完全に除去し、得られた溶液を30分間撹拌した。次に、反応混合物を2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾ−キノン(DDQ、101g、0.44mol、0.76等量)で処理し、室温で20時間撹拌した。反応混合物をろ過し、篩を除去し、生成物をシリカゲルカラムに装填した(1.0Kgシリカ、1:1DCM/イソヘキサンから100%DCMグラジエント)。溶出を実施し、未処理物質をカラムに析出させたので、メタノールを使用して(6×10.0L)生成物をシリカゲルから抽出/洗浄することが必要であった。生成物を、ろ過およびメタノール抽出液/洗浄液を濃縮することにより分離し、不純物をわずかに含んだポルフィリン8を60.9g得た(収率32%)。この物質は、試験反応(pilot reaction)から得た生成物と合わせられ、ポルフィリン8 71.4gが得られた。
【0140】
α,β,γ,δ−テトラ−[3−(1,2−ジカルボドデカボラン(12)−1−イルメトキシル)フェニル]−ポルフォリナト−銅(II) 9 の調製
【0141】
【化48】

【0142】
銅酸化反応は、室温でDCMおよびメタノール混合溶剤系で速やかに行われ、ほぼ定量的収率が得られた。
【0143】
銅(II)アセテート(55.6g)を乾燥メタノール(5.54L)と混合し、混合物を20時間で50℃に加熱し、青透明色の溶液を得て、これを、室温で冷却し、ポルフィリン8(71.4g、54.79mmol)の暗紫色の撹拌DCM溶液(2.79L)に添加した。反応混合物を室温で10分間撹拌すると、暗赤色が観察され、その後、TLC(シリカ、1:1DCM/イソヘキサン)により、8が完全に消費されたことが示された。暗赤色の溶液を、回転蒸発器で30℃/40mmHgで半量の体積に濃縮し、DCM(2.0L)で希釈した。得られた溶液をシリカゲルのパッドを通過させ(2×1.5kg)、DCMで洗浄し、9の溶液を得た。溶剤を蒸発させ、9を64.6g得た(収率86%)。
【0144】
1,2,3,4,5,6,7,8−オクタブロモ−α,β,γ,δ−テトラ−[3−(1,2−ジカルボドデカボラン(12)−1−イルメトキシル)フェニル]ポルフィナト−銅(II)の調製
【0145】
【化49】

【0146】
四塩化炭素および乾燥クロロホルム(各1.2L)の混合物中の臭素の溶液(229g、73.5ml、1.43mol)を、滴下ににより室温で1時間にわたり、撹拌されたポルフィリン9(64.6g、47.32mmol)のクロロホルム/CCI4(各6.0L)溶液に添加し、得られた溶液を4時間撹拌した。ピリジン(193ml、188.5g、2.38mol)を添加し、得られた混合物を室温でさらに2時間撹拌した。TLC(シリカ、1:1DCM/イソヘキサン)により、出発物質全てが消費されたことが示された。次に、Naの20%水溶液(2.7L)を添加し、混合物を〜10分間強く撹拌し、過剰の臭素を消滅させた。混合物を水(2.7L)で希釈し、撹拌を10分間続け、有機相および水相を分離した。有機相を見ず(2.7L)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶剤を30℃/40mmHgで蒸発させ、暗色の残滓を得た。これを、シリカ(1.3Kg)(1:1DCM/イソヘキサン溶出)のパッドを通過させて、極めて暗い緑色の固体として10を得た(71g、75%)。質量分析(MALDI−TOF LD、ジトラノール中)分析により、予測された分子イオンパターンが得られたことが示された。
【0147】
ワンポット工程を用いた式Iの化合物の製造
上述の工程の非限定的な例として、以下のものを示す。微粉末の銅アセテート130mg(1.4等量)および(α,β,γ,δ−テトラ−[3−(1,2−ジカルボドデカボラン(12)−1−イルメトキシル)フェニル]ポルフィリン0.65g(0.5mol)を、ジクロロメタン(23ml)中で約2時間にわたり、またはHPLC分析によって完了が確認されるまで急速に撹拌する。これに、新規に調製された臭素のHPLCグレードメタノール10%溶液を3.6ml(14等量)を、約20℃の温度で添加した。PP200を形成するにつれ、混合物は徐々に暗色になった。約8時間後、HPLCにより反応がほぼ完了したことが示される。重炭酸ナトリウム(2.5g)を添加し、混合物を10分間撹拌する。混合物をセリット(celite)のパッドに通し、ジクロロメタン(50ml)によって洗浄する。
【0148】
溶剤+過剰臭素を除去し、温度を30℃未満に維持する。残滓を最小体積のジクロロメタン中に溶解させ、シリカのパッドを通過させることにより精製し、ジクロロメタンで溶出した。溶剤を高真空処理で除去した後、生成物0.95gを得た。これは、前述の工程で得られるものと同じ純度を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】置換ポルフィリンであるl,2,3,4,5,6,7,8−オクタブロモ−α,β,γ,δ−テトラ−[3−(l,2−ジカルボドデカボラン−(12)−1−イル−メトキシル)フェニル]ポルフィナト−銅II(CuTCPBrとしても知られる)の調製の反応式を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】


[式中、Mは、単一光子放出型トモグラフィで画像化可能な放射性金属および/または常磁性金属であり、Rは、水素またはハロゲンであって、但し、少なくとも1つのRがハロゲンであり、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、式III
【化2】


[式中、YおよびMは、式Iの化合物で定義した通りである]を有する化合物を、ハロゲン化剤と化合させ、前記式Iを有する化合物を形成する、方法。
【請求項2】
前記式IIIを有する化合物を、ハロゲン化剤と、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール中で化合させることを含む、請求項1に記載の式Iを有する化合物を調製する方法。
【請求項3】
前記脂肪族アルコールがメタノールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記式IIIを有する化合物を、ハロゲン化剤と、トリクロロメタンおよび四塩化炭素溶剤系中で化合させることを含む、請求項1に記載の式Iの化合物を調製する方法。
【請求項5】
前記金属がCuである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化剤が臭素である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化剤を、8〜20等量のレベルで供給する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式III
【化3】


[式中、Mは、単一光子放出型トモグラフィで画像化可能な放射性金属および/または常磁性金属であり、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、式II
【化4】


[式中、YおよびMは、式Iの化合物で定義した通りである]を有する化合物を、金属Mのアセテートと化合させ、前記式IIIを有する化合物を形成する、方法。
【請求項9】
前記式IIを有する化合物を、ジクロロメタン中、またはジクロロメタンおよびメタノールの混合物中で、金属Mのアセテートと化合させることを含む、請求項8に記載の式IIIを有する化合物を調製する方法。
【請求項10】
前記金属アセテートを、1〜5等量のレベルで供給する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
式I
【化5】


[式中、Mは、単一光子放出型トモグラフィで画像化可能な放射性金属および/または常磁性金属であり、Rは、水素またはハロゲンであって、但し、少なくとも1つのRがハロゲンであり、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、
a)式II
【化6】


を有する化合物を、金属Mのアセテートと化合させ、式III
【化7】


を有する化合物を形成し、
b)前記式IIIを有する化合物をハロゲン化剤と化合させ、前記式Iを有する化合物を形成する、方法。
【請求項12】
式Iの化合物を製造するワンポットプロセスであって、請求項8から10のいずれか1項に記載のように式IIIの化合物をインサイトゥで形成し、続いて、該インサイトゥで生成された式IIIの化合物を、請求項1から7のいずれか1項に記載のようにハロゲン化する、方法。
【請求項13】
式II
【化8】


[式中、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、
a)式
【化9】


を有するアルデヒドを、ルイス酸触媒の存在下で、ピロールと化合させ、式IV
【化10】


を有する化合物を形成し、
b)アルデヒドに対し0.1〜1モル等量の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンを添加することによって、前記式IVを有する化合物を酸化する、方法。
【請求項14】
前記ピロールが、少なくとも98〜99.99%の純度を有し、好ましくは、蒸留されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップa)の後でかつステップb)の前に、水を完全に除去する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
式II
【化11】


[式中、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、式IV
【化12】


を有する化合物を、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンの添加によって酸化する、方法。
【請求項17】
式IV
【化13】


[式中、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、式
【化14】


を有するアルデヒドを、ルイス酸触媒の存在下で、ピロールと化合させる酸化、方法。
【請求項18】
式III
【化15】


[式中、Mは、単一光子放出型トモグラフィで画像化可能な放射性金属および/または常磁性金属であり、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、式
【化16】


を有するアルデヒドを、ルイス酸触媒の存在下で、ピロールと化合させ、式IV
【化17】


を有する化合物を形成し、
b)アルデヒドに対し0.1〜2モル等量の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンを添加することによって、前記式IVを有する化合物を酸化し、式II
【化18】


を有する化合物を形成し、
c)前記式IIを有する化合物を金属Mのアセテートと化合させ、前記式IIIを有する化合物を形成する、方法。
【請求項19】
式I
【化19】


[式中、Mは、単一光子放出型トモグラフィで画像化可能な放射性金属および/または常磁性金属であり、Rは、水素またはハロゲンであって、但し、少なくとも1つのRがハロゲンであり、Yは、オルソ、メタまたはパラO(CHHB10またはO(CHHB1010から選択され、nは、0または1〜20の整数であり、O(CHHB10は、ニドオルソ−、メタ−、パラ−カルボランであり、O(CHHB1010は、オルソ−、メタ−、パラ−カルボランである]を有する化合物を調製する方法であって、
a)式
【化20】


を有するアルデヒドを、ルイス酸触媒の存在下で、ピロールと化合させ、式IV
【化21】


を有する化合物を形成し、
b)アルデヒドに対し0.1〜2モル等量の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンを添加することによって、前記式IVを有する化合物を酸化し、式II
【化22】


を有する化合物を形成し、
c)前記式IIを有する化合物を、金属Mのアセテートと化合し、前記式III
【化23】


を有する化合物を形成し、
d)前記式IIIを有する化合物を、混合溶剤溶液中、好ましくはトリクロロメタンおよび四塩化炭素の混合物中で、好ましくは常温でハロゲン化剤と化合させ、前記式Iを有する化合物を形成する、方法。
【請求項20】
前記ステップc)で生成された前記式IIIを有する化合物を直ちに使用して、前記ステップd)で前記式Iの化合物を形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
MがCuであり、各Rが臭化物であり、Yが、メタO−CH−CHB1010である、請求項1から8、11、12、19および20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】

【化24】


[式中、Yは、式Iの化合物で定義した通りである]を有するアルデヒドを形成する方法であっって、カルボランをアセトニトリルによって活性化し、プロパルギルオキシベンジルアセテートと反応させて、アルコールを形成し、続いて酸化を行う、方法。
【請求項23】
請求項1〜8、11、12、19、20および21のいずれか1項に記載の方法によって製造される式Iの化合物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−524182(P2008−524182A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546167(P2007−546167)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004784
【国際公開番号】WO2006/064205
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507012386)サイメイ ファーマスーティカルズ ピーエルシー (2)
【Fターム(参考)】