説明

美容器具

【課題】化粧水が本体ケースの内部に入り込むような場合でも、回路基板に実装された電子部品等に化粧水が付着して短絡や誤作動に陥るのを防止する。さらに、美容器具が過熱状態に陥るのを解消して、安全性と信頼性を向上できる美容器具を提供する。
【解決手段】本体ケース1と、肌面を冷却するヘッド2、およびヘッド2を冷却するための熱電変換素子44を含む冷却部12と、冷却部12に接続される放熱用のヒートシンク30と、ヒートシンク30に熱交換風を供給する送風ファン31とを備えている。本体ケース1の内部に、熱電変換素子44の駆動を制御する制御回路87が配置される電気部品エリア15と、ヒートシンク30および送風ファン31が配置される通風エリア13を有する。通風エリア13には、空気の吸込み口61と排出口62を開口する。通風エリア13と電気部品エリア15は、本体ケース1の内部に固定したカバー体18で区画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌を効果的に冷やす美容器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の美容器具として、美容器本体のヘッドの内面にペルチェ素子を配置しておき、ペルチェ素子で冷却された冷却板で顔肌を冷却して、肌の状態を向上する美容器具が公知である(特許文献1)。そこでは、ペルチェ素子の高温面側に熱良導体からなる放熱基台を接合し、さらに放熱基台の外面に放熱フィンを接合している。また、送風ファンで生成した冷却風で放熱フィンを冷却することによりペルチェ素子の放熱を促進して、同素子が過熱状態に陥るのを防止している。冷却風は、美容器本体のマッサージヘッドの周囲に開口した吸込み口から吸い込まれ、美容器本体の下端に開口した排出口から外部へ放出される。なお、放熱フィンは、筒体の周面に一群のフィンを放射状に突設して構成してある。
【0003】
同様の美容器具は特許文献2にも見ることができ、そこでは、顔肌をプローブで交互に加熱し、あるいは冷却しながら美容器本体を振動させて、美容効果を向上できるようにしている。そのために、モーターと、その出力軸に固定される偏心重りとからなるバイブレータを美容器本体の内部に配置している。美容器本体の内部には、ペルチェ素子の放熱を促進する送風ファンが設けてある。
【0004】
さらに、特許文献3の美容器具においては、ヘッドをペルチェ素子で冷却し、肌面に微弱なパルス電流を通電することにより、化粧水等をイオン導入作用によって肌に浸透できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3142860号公報(第2頁左欄20〜27行、第1図)
【特許文献2】特開2001−190586号公報(段落番号0015、図1)
【特許文献3】特開2002−345976号公報(段落番号0021、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の美容器具では、ペルチェ素子の放熱作用を促進するために、美容器本体の内部に送風ファンを配置し、美容器本体の上下に冷却風の吸込み口と排出口とを開口している。そのため、単に冷却された冷却板を顔肌に押当てて冷却する限りは問題ないが、特許文献3の美容器具のように、化粧水を併用して肌面の冷却を行うような場合に問題を生じる。詳しくは、化粧水が冷却風の吸込み口や排出口から美容器本体の内部に入り込み、美容器本体の内部に配置した回路基板や、回路基板に実装された電子部品等に付着して、回路の短絡や、誤作動を生じるおそれがある。また、この種の美容器本体の内部に配置した回路基板には、ペルチェ素子や送風ファンの駆動状態を制御する制御回路、あるいはイオン導入用のパルス電流を生成するための電流調整回路などが組み込んであるが、回路基板に実装された電子部品が熱交換後の温風に晒されて過熱状態に陥り、誤作動を生じるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、化粧水等の液体がたとえ本体ケースの内部に入り込んだとしても、制御回路や、制御回路の基板に実装された電子部品等に化粧水等の液体が付着するのを防止でき、さらに、電子部品が過熱状態に陥るのを防止して、安全性と信頼性を向上できる美容器具を提供することにある。
本発明の目的は、熱電変換素子から放出される熱をより効果的に排出して、美容器具が過熱状態に陥るのを解消でき、美容器具が適正な使用時間を越えて使用されるような場合であっても、ユーザーの安全性を確保し保護できる美容器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る美容器具は、図1に示すように、本体ケース1と、肌面を冷却するヘッド2、およびヘッド2を冷却するための熱電変換素子44を含む冷却部12と、冷却部12に接続される放熱用のヒートシンク30と、ヒートシンク30に熱交換風を供給する送風ファン31とを備えている。本体ケース1の内部に、熱電変換素子44の駆動を制御する制御回路87が配置される電気部品エリア15と、ヒートシンク30および送風ファン31が配置される通風エリア13を有する。通風エリア13を形成する壁には空気の吸込み口61と排出口62を開口する。通風エリア13と電気部品エリア15は、本体ケース1の内部に固定したカバー体18で区画する。
【0009】
冷却部12は、本体ケース1の上部に配置する。熱電変換素子44の高温面側に、熱電変換素子44の高温面側で発生する熱を放出するヒートシンク30を配置する。ヒートシンク30は、冷却部12からカバー体18の外面にわたって縦長に配置する。
【0010】
ヒートシンク30の下方に冷却風を送給する送風ファン31を配置する。ヒートシンク30は、板状のシンクベース54と、シンクベース54に突設される多数個のフィン55とを備えている。カバー体18の外面の上部をシンクベース54で覆う。
【0011】
シンクベース54の上下中途部に段違い部57を形成する。
【0012】
シンクベース54と、同ベース54に対向する本体ケース1の周壁とで挟まれる熱交換通路60を、その通路断面積がヒートシンク30の上部から下部へ向かって小さくなるように形成する。
【0013】
シンクベース54と、同ベース54に対向するカバー体18との間に、熱交換通路60の前後隙間より小さな通風隙間63を設ける。
【0014】
冷却部12と電気部品エリア15との間の本体ケース1の内部にバイブレータ33を配置する。図6に示すように、バイブレータ33は、本体ケース1に締結固定したカバー体18に設けた押圧壁22で固定する。
【0015】
送風ファン31より下側の本体ケース1の周壁に排出口62を開口する。送風ファン31から送給される熱交換風を排出口62へ向かって変向案内する変向体32を、排出口62と対向する本体ケース1の内面に固定する(図7参照)。
【0016】
変向体32に隣接して、給電リード77を含む給電用のソケット75を配置する。ソケット75の通風エリア13側の周面を変向体32で覆う。
【0017】
給電リード77は、カバー体18に開口したリード開口78を介して電気部品エリア15の内部に導入する。変向体32の一部を、給電リード77とリード開口78との間の隙間を塞ぐパッキン79で受け止める。
【0018】
イオン導入またはイオン導出用のパルス電流を発生する制御回路88を電気部品エリア15に配置する。ヘッド2の接触板39は、イオン導入またはイオン導出用の第1電極9を兼ねている。グリップを兼ねる本体ケース1の外面に、イオン導入またはイオン導出用の第2電極10を配置する。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、本体ケース1の内部を通風エリア13と、電気部品エリア15とに区分し、通風エリア13の内部に送風ファン31と放熱用のヒートシンク30を配置した。また、カバー体18で区画した電気部品エリア15の内部に、冷却部12の熱電変換素子44の駆動を制御する制御回路87を配置した。このように、電気部品エリア15に制御回路87を配置すると、肌冷却を行う際に化粧水等の液体が本体ケース1の内部に入り込んだとしても、制御回路87の基板に液体が付着するのを防止できる。また、熱交換後の温風や、ヒートシンク30から放出される輻射熱によって、制御回路87が加熱されるのを防止して、その電子部品等が過熱状態に陥るのを防止できる。したがって、化粧水等の液体の付着による短絡や誤作動を生じる余地がなく、さらに電子部品の過熱に伴う故障や火傷を生じる余地のない、安全性と信頼性に優れた美容器具を提供できる。
【0020】
ヒートシンク30を、本体ケース1の上部に配置した冷却部12から、カバー体18の外面にわたって縦長に配置すると、冷却風とヒートシンク30との接触機会を多くして、熱電変換素子44から放出される熱を、本体ケース1の外へ効果的に排出できる。また、カバー体18の外面の一部をヒートシンク30で覆うので、冷却風とともに通風エリア13の内部に入り込んだ化粧水等の液体をヒートシンク30で遮って、液体がカバー体18の外面に付着するのを極力避けることができる。
【0021】
板状のシンクベース54と、シンクベース54に突設される多数個のフィン55とでヒートシンク30を構成し、カバー体18の外面の上部をシンクベース54で覆うと、通風エリア13の内部に入り込んだ化粧水等の液体を、板状のシンクベース54でさらに効果的に遮ることができる。したがって、液体がカバー体18に付着するのをさらに確実に防止して、回路基板14や電子部品等の故障を防止できる。
【0022】
シンクベース54の上下中途部に段違い部57を設けると、ヒートシンク30のフィン55の間に入り込んだ化粧水等の液体を段違い部57で受止めて、一時的に段違い部57に滞留することができる。したがって、フィン55の間に入り込んだ液体が、冷却風とともにヒートシンク30を素通りして、通風エリア13の下流側に配置した送風ファン31に付着するのを抑止できる。また、段違い部57に滞留した液体の一部は、シンクベース54に沿って流下する間に、シンクベース54の熱で加熱して蒸発することができる。
【0023】
シンクベース54と本体ケース1の周壁との間に設けた熱交換通路60を、その通路断面積がヒートシンク30の上部から下部へ向かって小さくなるように形成すると、ヒートシンク30の下端側における冷却風の流速を高めることができる。したがって、フィン55の間を通過する冷却風の通過速度を大きくして、フィン55と冷却空気との接触機会を増加でき、ヒートシンク30の熱交換効率を高めることができる。これにより、熱電変換素子44から放出される熱をより効果的に排出でき、たとえば美容器具が適正な使用時間を越えて使用されるような場合であっても、美容器具が過熱状態に陥るのを解消して、ユーザーの安全性を確保し保護できる。
【0024】
シンクベース54とカバー体18との間に、熱交換通路60の前後隙間より小さな通風隙間63を設けると、シンクベース54の熱がカバー体18へ伝導するのを、通風隙間63を流れる空気層で遮断できる。同様にして、シンクベース54の輻射熱がカバー体18へ到達するのを、通風隙間63を流れる空気層で遮断でき、電気部品エリア15内の電子部品をヒートシンク30の熱から保護することができる。また、通風隙間63の隙間寸法を熱交換通路60の前後隙間より小さくするので、通風隙間63を通過する空気の量を制限することができる。したがって、送風ファン31に吸い込まれる冷却風の殆どを熱交換通路60に沿って流動させて、冷却風とヒートシンク30との間の熱交換を効果的に行ないながら、ヒートシンク30からカバー体18へ向かう熱の移動を防止できる。
【0025】
バイブレータ33を本体ケース1に締結固定したカバー体18の押圧壁22で固定すると、バイブレータ33を固定するためのビスや固定構造を省略して、その分だけ構造の簡素化を実現できる。また、カバー体18に設けた押圧壁22でバイブレータ33の外面を覆い隠すので、通風エリア13に入り込んだ化粧水等の液体を押圧壁22で遮って、バイブレータ33に付着するのを防止できる。
【0026】
送風ファン31の下方に変向体32を配置し、送風ファン31から送給される熱交換風を変向体32で排出口62へ向かって変向案内すると、熱交換風を本体ケース1の外へ効果的に排出することができる。これにより、通風エリア13に熱交換後の高温の空気が籠るのを解消できるので、ヒートシンク30における放熱作用を促進して熱交換効率をさらに向上できる。
【0027】
変向体32に隣接して給電用のソケット75を配置し、その通風エリア13側の周面を変向体32で覆うと、ソケット75の近傍にまで到達した化粧水等の液体が、ソケット75や給電リード77等に付着するのを変向体32で阻止できる。したがって、ソケット75の周辺における液体の付着に伴う故障や事故を未然に防止できる。
【0028】
ソケット75から導出した給電リード77と、カバー体18に開口したリード開口78との間をパッキン79でシールし、変向体32の一部をパッキン79で受け止めるようにすると、変向体32の動きをパッキン79で緩衝し制振できる。したがって、変向体32が送風ファン31やバイブレータ33の振動を受けて振動するのを抑制できる。また、変向体32がカバー体18に接当して、接当騒音が発生するのを解消できるので、美容器具を使用する時の運転騒音を低下して静粛性を向上できる。
【0029】
ヘッド2の接触板39を利用してイオン導入またはイオン導出用の第1電極9とし、本体ケース1の外面にイオン導入またはイオン導出用の第2電極10を配置した美容器具によれば、イオン導入作用によって化粧水を肌に効果的に浸透させ、またはイオン導出作用によって肌の微細な汚れを効果的に落とすことができるなど、さらに広範な美容効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る美容器具の縦断側面図である。
【図2】本発明に係る美容器具の正面図である。
【図3】本発明に係る美容器具の側面図である。
【図4】本発明に係る美容器具の背面図である。
【図5】本発明に係る美容器具の分解断面図である。
【図6】ヘッドおよび冷却部の構造を示す縦断側面図である。
【図7】送風ファンとその周辺構造を示す縦断側面図である。
【図8】図1におけるA−A線断面図である。
【図9】図1におけるB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施例) 図1ないし図9は本発明に係る美容器具の実施例を示す。本発明における前後・左右・上下とは、図2および図3に示す交差矢印と、矢印の近傍に表示した前後・左右・上下の表記に従う。図2および図3において美容器具は、グリップを兼ねる本体ケース1を基本構造体にして、その前面上部にヘッド2が突設してある。本体ケース1の前面には、電源投入用の電源ボタン3と、運転モードを切り換えるモードボタン4と、イオン導入時の電位を切り換える強弱ボタン5と、運転モードの違いに応じて点灯される4個のモード表示灯6と、電位の違いに応じて点灯される2個の強弱表示灯7などが設けてある。
【0032】
本体ケース1の左右両側には、上下端が半楕円状に丸められた縦長の第2電極10が配置してある。第2電極10は、人体に微弱なパルス電流を供給するイオン導入またはイオン導出用の電極であって、第1電極9を兼ねる接触板39と協同してパルス電流を人体に供給する。第2電極10は、本体ケース1に対して固定されており、後述する圧縮コイル形のばね94を介して、イオン導入またはイオン導出用の制御回路88の出力リード90と電気的に接続されている(図9参照)。
【0033】
本体ケース1は、前後に分割された前ケース1aと後ケース1bをビス8(図1参照)で蓋合わせ状に接合して中空ケース状に構成してあり、その内部には、冷却部12の一部が収容される通風エリア13と、冷却部12のペルチェ素子(熱電変換素子)44の駆動を制御する制御回路87用の電子部品や、それを搭載する回路基板14が配置される電気部品エリア15とが区画してある。電気部品エリア15には、後述するイオン導入またはイオン導出用の制御回路(肌通電用制御回路)88も配置される。具体的には、前ケース1aの内面に周回状に突設される区画リブ17と、区画リブ17の開口面を塞ぐカバー体18とで電気部品エリア15を区画し、電気部品エリア15以外の本体ケース1の内部空間の主に後半部側を通風エリア13としている。つまり、本体ケース1の壁とカバー体18の壁により、通風エリア13と電気部品エリア15とが区分してある。
【0034】
カバー体18は、トレー状のプラスチック成形品からなり、区画リブ17に接合される周囲壁19と、周囲壁19の後面を塞ぐ後壁20を一体に備えている。周囲壁19の上端には、締結座21が張り出してあり、その左右中央部分にバイブレータ33を固定する押圧壁22が一体に形成してある(図9参照)。図5に示すように、後壁20の下部には、ファンケース65の周面の一部を収容する長円状の凹部23が凹み形成してあり、その左右両側にファンケース65を固定するためのねじボス24が突設してある。カバー体18の区画リブ17との接合面はシールリング25でシールしてある。押圧壁22は長方形状に張り出してあり、バイブレータ33用のモーター82の周面全体を覆う状態で、同モーター82を押圧固定する(図9参照)。
【0035】
通風エリア13の上部には冷却部12が設けてあり、さらに、冷却部12の後端に接続した放熱用のヒートシンク30と、送風ファン31と、変向体32とが、通風エリア13内に上下に間隔をあけた状態で記載順に配置してある。これにより本体ケース1の上部構造が占める空間量を小さくして、本体ケース1のグリップ部分をスリム化できる。また、冷却部12と電気部品エリア15との間の前ケース1aの内部に、美容器具の全体を振動させるためのバイブレータ33が配置してある。
【0036】
冷却部12は、円筒状のヘッドケース36と、ヘッド2と、ヘッド2を冷却する冷却ユニット37、および冷却ユニット37用の放熱構造などで構成する。ヘッドケース36は、前ケース1aの内面にビス35で固定されて前ケース1aより前方へ突出しており、その突端にヘッド2が固定してある。ヘッド2は、チタン板を皿状に成形した接触板39と、接触板39の周縁部分を固定保持する保持リング40とからなる。図6に示すように、保持リング40は、ヘッドケース36の突端外面に外嵌装着されてビス41で固定してある。ヘッドケース36と前ケース1aとの間、および接触板39とヘッドケース36との間は、それぞれシールリング26・27でシールしてある。
【0037】
冷却ユニット37は、ペルチェ素子(熱電変換素子)44と、同素子44を間に挟んで低温面側と高温面側に密着される冷熱ブロック45および温熱ブロック46と、これら三者44・45・46を支持する冷却部ホルダー47などで構成する。冷熱ブロック45および温熱ブロック46とペルチェ素子44とは伝熱シート48を介して密着してある。伝熱シート48は、アルミニウムシートの表裏のそれぞれにシリコンをコーティングして構成してある。ペルチェ素子(熱電変換素子)44と、冷熱ブロック45と、温熱ブロック46とは、冷却部ホルダー47に挿通したビス49で、両ブロック45・46の間に配置した熱絶縁体50と共に締結されてユニット部品化してある(図5参照)。
【0038】
冷却部ホルダー47を、図9に示すように前ケース1aに4個のビス51で固定することにより、冷熱ブロック45の前端面が接触板39の内面に密着する状態で、冷却ユニット37が前ケース1aおよびヘッドケース36に固定してある。この状態の温熱ブロック46の後端は、前後ケース1a・1bの接合面より後ケース1b側へ入り込んでいる(図6参照)。
【0039】
冷熱ブロック45および温熱ブロック46は、それぞれアルミニウム製のダイキャスト成形品からなる。ペルチェ素子(熱電変換素子)44で発生した熱の放出をより効果的に行うために、温熱ブロック46の体積を冷熱ブロック45の体積に比べて十分に大きくして、単位時間当たりの熱伝導量(熱容量)を大きくしている。これにより、ペルチェ素子44の高温面側で発生する熱を、温熱ブロック46の後端に固定したヒートシンク30へ効果的に伝導して放熱作用を促進できる。
【0040】
図5および図6に示すように、ヒートシンク30は、板状のシンクベース54と、シンクベース54の後面に突設される多数個のフィン55とを一体に備えたアルミニウム製のダイキャスト成形品からなる。ヒートシンク30は、シンクベース54の上部を温熱ブロック46に相対移動不能に係合した接触状態で、温熱ブロック46にねじ込まれるビス56で分離不能に締結してある。シンクベース54の上下中途部には斜め下向きに傾斜する段違い部57が形成してあり、したがって、段違い部57より下側の板状部54bは、段違い部57より上側の板状部54aよりも後ケース1bに接近している。冷却部12とヒートシンク30との接続は、温熱ブロック46に対してシンクベース54を直接固定する上記構造に限らず、温熱ブロック46とシンクベース54の向き合う面が接触した状態のままで、ヒートシンク30を前ケース1aに締結する固定構造とすることができる。
【0041】
フィン55と冷却風との接触機会を増加して熱交換効率を高めるために、ヒートシンク30は通風エリア13に沿って縦長に形成してある。さらに、シンクベース54と、同ベース54に対向する後ケース1bの周壁とで挟まれる熱交換通路60の通路断面積を、ヒートシンク30の側から送風ファン31の側へ向かって小さくなるようにしている。より具体的には、シンクベース54と対向する後ケース1bの周壁を、シンクベース54に接近する向きに凹ませて、熱交換通路60の通路断面積を、シンクベース54の上端側から下端側へ向かって下すぼまり状に形成している。因みに、シンクベース54の下端側と後ケース1bの周壁との対向間隔を、シンクベース54の上端側と後ケース1bの周壁との対向間隔より小さくして、熱交換通路60の通路断面積を、送風ファン31の側へ向かって下すぼまり状に形成することができる。
【0042】
上記のように、ヒートシンク30の上下長を大きくすることにより、フィン55による放熱量を増強できる。さらに、熱交換通路60を下すぼまり状に形成することにより、フィン55の間を通過する冷却風の通過速度を大きくして、フィン55と冷却空気との接触機会を増加でき、全体としてヒートシンク30の熱交換効率を高めることができる。ヒートシンク30を、冷却部12からカバー体18の外面にわたって縦長に配置するので、下側の板状部54bの過半下部はカバー体18の後面上部の外方を覆っている(図1、図6参照)。そのため、吸込み口61から浸入した化粧水をシンクベース54で遮蔽して、化粧水がカバー体18に付着するのをよく防止できる。また、シンクベース54の上下中途部に段違い部57を設けておくことにより、上側の板状部54aに沿って流下する化粧水を段違い部57で受け止めて、そこに滞留させることができる。
【0043】
シンクベース54の上側の板状部54aと対向する後ケース1bの周壁には、冷却空気用の吸込み口61の一群が開口してある。また、後ケース1bの下部側の周壁には、熱交換後の温風を排出する一群の排出口62が開口してある。このように、本体ケース1の下部側から温風を排出する構造を採用すると、冷却対象の肌から遠ざかった位置で温風を排出できるので、ユーザーに不快感を与えることがない。本実施例では吸込み口61、排出口62が側方(後方)に向けて開口しているが、それに限らず吸込み口61が上方に向けて開口し、排出口62が下方に向けて開口するものであってもよい。
【0044】
先に説明した下側の板状部54bとカバー体18との間には、熱交換通路60の前後隙間より小さな通風隙間63が確保してあり、したがって通風エリア13内の冷却風の一部は通風隙間63を経由して送風ファン31に吸い込まれる。このように、通風隙間63を確保しておくことにより、シンクベース54の熱がカバー体18へ伝導するのを防止できる。また、通風隙間63の隙間寸法が小さいので、送風ファン31に吸い込まれる冷却風の殆どを熱交換通路60に沿って流動させて、熱交換を効果的に行なうことができる。
【0045】
送風ファン31は、モーターホルダーを兼ねるファンケース65と、ファンケース65の上半部に固定されるモーター66と、その出力軸に固定される軸流型のファン67とで構成してあり、通風エリア13内の空気を変向体32へ向かって下向きに送給する。ファンケース65は、先に説明したねじボス24にビス71で固定してある(図9参照)。なお、ファンケース65の周囲は、カバー体18と後ケース1bから対向状に張り出した区分壁72で上下に区分してあり(図7参照)、したがって、送風ファン31から送出された熱交換後の温風が熱交換通路60側へ逆流することはない。
【0046】
図5に示すように、変向体32は、前面および下面が開口するカバー状の構造体からなり、後面側から見た外形形状は逆凸字状に形成してある(図9参照)。図7に示すように排出口62と対向する変向体32の上半側の幅広の部分には、変向壁68が下り傾斜状に形成してある。また、変向壁68の上端の傾斜部内面には、接当リブ69が設けてある。先に述べた凹部23の下端には、部分球面状の変向面70が形成してあり、この変向面70によって送風ファン31から送給される熱交換風を、変向壁68と共同して排出口62へ向かって変向案内できる。上記実施例では、本体ケース1の上部に吸込み口61を、本体ケース1の下部に排出口62を形成して、通風エリア13内の熱交換(冷却)風を下向きに送給したが、本体ケース1の上部に排出口62を、本体ケース1の下部に吸込み口61を形成して、通風エリア13内の熱交換(冷却)風を上向きに送給してもよい。当然その場合の送風ファン31の送風方向は逆に設定する。
【0047】
前後ケース1a・1bの下端内面には給電用のソケット75が配置してあり、その通風エリア13側の周面が変向体32で覆ってある。変向体32およびソケット75は、前後ケース1a・1bを締結する下側2個のビス8を利用して固定されて、本体ケース1と一体化してある。図7に示すように、給電用のソケット75の内部には、電源アダプターから導出された給電プラグ74を接続するための2個の接続ピン76が設けてあり、接続ピン76に接続した給電リード77がソケット75の上端から導出してある。給電リード77は、カバー体18に開口したリード開口78を介して電気部品エリア15の内部に導入されて回路基板14に接続してある。給電リード77とリード開口78との間の隙間は、リード開口78に装着したゴム製のパッキン79で封止してある。
【0048】
先に説明したように変向体32は、本体ケース1に固定してある。そのため、送風ファン31の振動や、バイブレータ33の振動を受けて振動し、その上開口縁がカバー体18に接当して、接当騒音を生じるおそれがある。こうした騒音の発生を防ぐために、変向体32の接当リブ69の突端をパッキン79の後端面で受け止めて、変向体32がカバー体18に接当するのを防止し、変向体32の振動をパッキン79で吸収できるようにしている(図7の拡大図参照)。
【0049】
前ケース1aの内部に配置したバイブレータ33は、モーター82と、その出力軸に固定される偏心重り83とで構成する。前ケース1aの内部にはゴム製の装着座84が固定してあり、この装着座84に嵌め込んだモーター82をカバー体18に設けた押圧壁22で分離不能に固定保持している(図6参照)。
【0050】
図3に示すように、電気部品エリア15には次のような部材が収容してある。ペルチェ素子(熱電変換素子)44、および送風ファン31のモーター66と、バイブレータ33のモーター82への通電状態を制御する制御回路(機器通電用制御回路)87用の電子部品と、イオン導入またはイオン導出用のパルス電流を生成し、その電位を制御する制御回路(肌通電用制御回路)88用の電子部品とが、回路基板14にそれぞれ搭載される。制御回路88の一方の出力リード89は、図8に示すようにヘッドケース36の内部に設けた弾性変形可能な接触部93を一体に備えた接続端子91に接続されており、他方の出力リード90は、図9に示すようにファンケース65の左右に固定した接続端子92に接続してある。前者の接続端子91は金属板材からなり、ヘッドケース36を前ケース1aに締結するビス35を利用してその自由端側、つまり接触部93側が弾性変形可能に固定してある。
【0051】
ヘッド2をヘッドケース36に組み付けた状態では、接続端子91の腕部の先端側に設けた接触部93が、第1電極9を兼ねる接触板39の内面に押圧された状態で密着している。このように、弾性変形可能な接触部93を介して接続端子91と第1電極9を導通すると、接続端子91の固定部分と第1電極9との間に寸法誤差が生じていたとしても、寸法誤差を接続端子91の腕部で吸収して、電気的な接続状態を良好に維持できる。とくに、美容器具の使用時には、ヘッド2が冷却され、あるいは常温に戻るため、温度変化に伴う各部品間の距離の変化を生じやすいが、こうした場合であっても電気的な接続状態を良好に維持できる。
【0052】
また、第2電極10用の接続端子92は、ファンケース65を固定するビス71を利用して固定してあり、第2電極10と接続端子92とは、第2電極10を押圧付勢するばね94を利用して導通してある。接続端子92と第2電極10とをコイル状のばね94を介して導通すると、接続端子92と第2電極10との間に寸法誤差が生じたとしても、寸法誤差をばね94で吸収できるので、良好な電気的接続状態を維持できる。
【0053】
接続端子91は、金属線材の基端部分をL字状に折り曲げて固定部とし、他方端を、コイル状に形成してばね性を備えた接触部93とすることができる。その場合には、固定部をビス35で固定し、自由端側の接触部93を第1電極9に押圧した状態で組み付け、接続端子91と第1電極9とを導通させる。この構造の場合にも、接続端子91の固定部分と第1電極9との間に寸法誤差が生じたとしても弾性接触によって良好な電気的接続状態を維持できる。
【0054】
図9において、符号101はペルチェ素子(熱電変換素子)44用の給電リード、符号102は送風ファン31用の給電リード、符号103はバイブレータ33用の給電リードである。これらの各給電リード101・102・103のリード開口や、先に説明した出力リード89・90のリード開口も、給電リード77と同様にしてパッキンでシールしてある。
【0055】
以上のように構成した美容器具は、電源ボタン3がオン操作されると、制御回路87から駆動電流が供給されて、バイブレータ33のモーター82が起動され、所定期間(例えば1秒間)後、下記の第1モードの状態となり器具の動作が始まる。電源ボタン3がオン操作されたときバイブレータ33が駆動することにより、手の感触で器具が起動していることを確認できるので、ユーザーの安心感につながる。
【0056】
モードボタン4は、オン操作するごとに第1モードから第4モードまで切り換えることができる。第1モードでは、第1電極9をプラス極性、第2電極10をマイナス極性とした電圧が印加される。これにより化粧水が含浸された化粧用の綿マット97(図3参照)を接触板39の外面にあてがい、その周囲をヘッド2に圧嵌装着されるキャップ98で固定した状態で、綿マット97を顔肌にあてがえばイオン導出を行うことができ、顔肌などの微細な汚れを落とすことができる。第2モードでは、第1電極9と第2電極10に極性を交互に切り替えた電圧が印加されるとともに、バイブレータ33が駆動される。これによりヘッド2を顔肌にあてがえば肌をほぐすことができる。第3モードでは、第1電極9をマイナス極性、第2電極10をプラス極性とした電圧が印加される。これにより化粧水が含浸された化粧用の綿マット97をヘッド2に固定した状態で、綿マット97を顔肌にあてがえばイオン導入を行うことができ、保湿成分を肌に浸透させて美容効果を高めることができる。第4モードでは、ペルチェ素子(熱電変換素子)44が駆動される。これにより、ヘッド2を顔肌にあてがえば肌面を冷却することができる。
【0057】
各モードにおいて、強弱ボタン5をオン操作することにより、第1、第2の電極9・10に印加される電位を強弱に切り換えることができる。第1、第2、第3モードのときは、肌面への通電を行うため、本体ケース1を片手で握り、その手を第2電極10と接触させたうえで、ヘッド2を顔肌などの肌面に接触させる必要がある。電源ボタン3をもう一度オン操作するか、電源ボタン3のオン操作から所定期間(例えば5分間)が経過すると電源がオフされる。その他、ペルチェ素子(熱電変換素子)44の駆動、バイブレータ33の駆動、第1電極9と第2電極10への電圧印加を同時に行うモードを設けてもよい。
【0058】
上記の実施例では、イオン導入機能を備えた美容器具について説明したが、イオン導入機能は省略することができる。その場合には、パルス電流を供給する第2電極10を省略するとよい。本発明に係る美容器具は、顔肌の冷却・通電以外に、首周りの肌や胸周りの肌の冷却・通電を行う場合にも使用される。
【0059】
熱交換通路60は、シンクベース54と後ケース1bの前後間隔を下すぼまり状とする以外に、左右方向の間隔を下すぼまり状にし、あるいは前後間隔と左右間隔の両者を下すぼまり状に構成することができる。ヒートシンク30は、シンクベース54の前後面のそれぞれにフィン55を設ける形態を採ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 本体ケース
2 ヘッド
12 冷却部
13 通風エリア
15 電気部品エリア
17 区画リブ
18 カバー体
30 ヒートシンク
31 送風ファン
32 変向体
33 バイブレータ
39 接触板
44 ペルチェ素子
54 シンクベース
55 フィン
60 熱交換通路
61 吸込み口
62 排出口
68 変向壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース(1)と、肌面を冷却するヘッド(2)、およびヘッド(2)を冷却するための熱電変換素子(44)を含む冷却部(12)と、冷却部(12)に接続される放熱用のヒートシンク(30)と、ヒートシンク(30)に熱交換風を供給する送風ファン(31)とを備えており、
本体ケース(1)の内部に、熱電変換素子(44)の駆動を制御する制御回路(87)が配置される電気部品エリア(15)と、ヒートシンク(30)および送風ファン(31)が配置される通風エリア(13)を有し、
通風エリア(13)を形成する壁に空気の吸込み口(61)と排出口(62)が開口されており、
通風エリア(13)と電気部品エリア(15)が、本体ケース(1)の内部に固定したカバー体(18)で区画してあることを特徴とする美容器具。
【請求項2】
冷却部(12)が、本体ケース(1)の上部に配置されており、
熱電変換素子(44)の高温面側に、熱電変換素子(44)の高温面側で発生する熱を放出するヒートシンク(30)が配置されており、
ヒートシンク(30)が、冷却部(12)からカバー体(18)の外面にわたって縦長に配置してある請求項1に記載の美容器具。
【請求項3】
ヒートシンク(30)の下方に冷却風を送給する送風ファン(31)が配置されており、
ヒートシンク(30)は、板状のシンクベース(54)と、シンクベース(54)に突設される多数個のフィン(55)とを備えており、
カバー体(18)の外面の上部がシンクベース(54)で覆われている請求項2に記載の美容器具。
【請求項4】
シンクベース(54)の上下中途部に段違い部(57)が形成してある請求項3に記載の美容器具。
【請求項5】
シンクベース(54)と、同ベース(54)に対向する本体ケース(1)の周壁とで挟まれる熱交換通路(60)を、その通路断面積がヒートシンク(30)の上部から下部へ向かって小さくなるように形成してある請求項3または4に記載の美容器具。
【請求項6】
シンクベース(54)と、同ベース(54)に対向するカバー体(18)との間に、熱交換通路(60)の前後隙間より小さな通風隙間(63)が設けてある請求項3、4または5に記載の美容器具。
【請求項7】
冷却部(12)と電気部品エリア(15)との間の本体ケース(1)の内部にバイブレータ(33)が配置されており、
バイブレータ(33)が、本体ケース(1)に締結固定したカバー体(18)に設けた押圧壁(22)で固定してある請求項1から6のいずれかひとつに記載の美容器具。
【請求項8】
送風ファン(31)より下側の本体ケース(1)の周壁に排出口(62)が開口されており、
送風ファン(31)から送給される熱交換風を排出口(62)へ向かって変向案内する変向体(32)が、排出口(62)と対向する本体ケース(1)の内面に固定してある請求項1から7のいずれかひとつに記載の美容器具。
【請求項9】
変向体(32)に隣接して、給電リード(77)を含む給電用のソケット(75)が配置されており、
ソケット(75)の通風エリア(13)側の周面が変向体(32)で覆ってある請求項8に記載の美容器具。
【請求項10】
給電リード(77)が、カバー体(18)に開口したリード開口(78)を介して電気部品エリア(15)の内部に導入されており、
変向体(32)の一部が、給電リード(77)とリード開口(78)との間の隙間を塞ぐパッキン(79)で受け止めてある請求項8または9に記載の美容器具。
【請求項11】
イオン導入またはイオン導出用のパルス電流を発生する制御回路(88)が電気部品エリア(15)に配置されており、
ヘッド(2)の接触板(39)が、イオン導入またはイオン導出用の第1電極(9)を兼ねており、グリップを兼ねる本体ケース(1)の外面に、イオン導入またはイオン導出用の第2電極(10)が配置してある請求項1から10のいずれかひとつに記載の美容器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−61251(P2012−61251A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209860(P2010−209860)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】