説明

美容器

【課題】皮膚の細胞に活動電位を生じさせ、細胞増殖を促進させて皮膚の再生を促す。
【解決手段】測定パルス電圧発生部12はパルス電圧を徐々に変化させながら皮膚に印加する。膜電位測定用コイル15は、皮膚の細胞に生じる電位の変化を電磁誘導によって検出する。そして、電流測定部23は膜電位測定用コイル15に流れる電流を測定する。制御部30は、この電流により活動電位が発生したか否かを判別し、活動電位を発生させることができるパルス電圧の電圧値を求める。次に、制御部30は、活性化パルス電圧発生部11の発生する電圧を求められた電圧値に設定し、電圧制御発振部21を制御してパルス電圧を印加する間隔を変化させて、活動電位を繰り返し発生させることができる間隔を求める。電圧制御発振部21は求められた間隔でパルス電圧を出力し、活性化パルス電圧発生部11は活動電位を発生させることができる大きさの電圧を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の再生を促進する美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波導入やイオン導入を行う美容器(美顔器)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)
ここで、超音波導入とは、超音波の物理的な振動を皮膚に与え、美肌成分の浸透を高めることである。また、イオン導入とは、マイナスに帯電している美肌成分を電気の反発力により皮膚の奥深くまで浸透させることである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】http://www.ebis-cosme.co.jp/twinpro/index.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、超音波導入やイオン導入は、美肌成分を皮膚に浸透させるのみである。超音波導入やイオン導入により、細胞増殖を促進する効果を持つ成分を皮膚に浸透させることも考えられるが、皮膚の細胞増殖を促進させて皮膚を再生させる効果には限界がある。
【0005】
本発明は、上記実情を鑑みて行われたものであり、皮膚の細胞増殖を促進させて皮膚の再生を促すことができる美容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の美容器は、
パルス電圧の電圧値を、活動電位を発生させることができる電圧値に設定する電圧値設定手段と、
前記パルス電圧を印加する間隔を、繰り返し活動電位を発生させることができる間隔に設定する印加間隔設定手段と、
前記電圧値設定手段によって設定された電圧値のパルス電圧を、前記印加間隔設定手段によって設定された間隔で出力するパルス電圧出力手段と、
を備える。
【0007】
好ましくは、前記電圧値設定手段は、パルス電圧を出力し、皮膚の細胞に発生する活動電位の変化によってコイルに生じる電流を測定することによって皮膚の細胞に活動電位が発生したか否かを判別する手段を含む。
【0008】
また、本発明の美容方法は、
パルス電圧の電圧値を、活動電位を発生させることができる電圧値に設定する電圧値設定ステップと、
前記パルス電圧を印加する間隔を、繰り返し活動電位を発生させることができる間隔に設定する印加間隔設定ステップと、
前記設定された電圧値のパルス電圧を、前記設定された間隔で出力するパルス電圧出力ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、皮膚の細胞増殖を促進させて皮膚の再生を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】活動電位を示す図である。
【図2】刺激(パルス電圧)を与えたとき、細胞内に流入するNaを示す図である
【図3】本発明の実施形態に係る美容器の構成の一例を示す図である。
【図4】電流パルス測定・印加処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る美容器について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、活動電位を示す図である。図2に示すように、適切な大きさのパルス電圧(刺激)を皮膚の表面に加えると、Naが細胞内に流入して膜電位が負から正になる。すなわち、負に荷電していた膜電位が脱分極(電圧が上がる)して、しきい電位に達するとNa(ナトリウム)チャネルが開き、Naが細胞内に流入する(内向き電流が流れる)。このため、膜電位が急激に上昇し、活動電位が生じる。
Naによる電流はピークに達した後、次第に減少する。そして、Naチャネルに少し遅れ、K(カリウム)チャネルが開き、Kが細胞外に流出する(外向き電流が流れる)。このため、膜電位はピークに達した後、減少し、静止膜電位以下に下がる。その後再び静止膜電位に戻る。
【0013】
刺激(パルス電圧)を皮膚の表面に加えるとき、図1の破線に示すように、しきい電位以下の刺激では活動電位は発生しない。しきい電位を超える大きさの刺激に対して、ほぼ一定の大きさの活動電位が発生する。また、膜電位の上昇中に刺激を受けてもそれ以上の興奮は起こらない。この時期を絶対不応期という。また、膜電位が静止膜電位以下になっている間は強い刺激に対してのみ興奮が生じる。この時期を相対不応期という。
【0014】
活動電位は一度発生すると、次々と興奮性細胞に伝達される。電流パルスにより生じた活動電位は神経細胞を介して脳に伝達される。この活動電位を受けると、脳は、電流パルスが加えられた皮膚の周辺の細胞に数日間(例えば、4日間〜1週間)に渡って活動電位を生じさせる。
活動電位が生じている間、皮膚の細胞増殖が促進され、皮膚の再生が促される。
【0015】
皮膚細胞の膜電位は、皮膚の各部位、年齢、男女の性別、気候や季節、環境、時間、体質等の条件により変わる。このため、皮膚細胞に活動電位を生じさせる電圧の大きさは膜電位に応じて変わる。皮膚細胞の膜電位に合ったパルス電圧を適切に印加することにより活動電位が上がり、細胞増殖が促進される。パルス電圧が大きすぎたり、小さすぎたりすると、細胞活動が阻止され、細胞接着が起きて、細胞の劣化が進む。
【0016】
そこで、本実施形態に係る美容器は、まず、皮膚にパルス電圧を印加し、皮膚の細胞に生じる膜電位の変化をコイルによる電磁誘導によって検出する。そして、その時、コイルに流れる電流を測定する。この電流により、活動電位が発生したか否かを判別し、活動電位を発生させることができるパルス電圧の電圧値を求める。
本実施形態に係る美容器は、次に、パルス電圧を印加する間隔を変化させて、活動電位を繰り返し発生させることができる間隔を求める。
本実施形態に係る美容器は、このようにして求められた電圧値のパルス電圧を求められた間隔で皮膚に印加する。
本実施形態に係る美容器は、パルス電圧を例えば1分間当たり1万回印加する。
【0017】
図3は、本発明の実施形態に係る美容器10の構成の一例を示す。
美容器10は、活性化パルス電圧発生部11と、測定パルス電圧発生部12と、切換部13と、切換部14と、膜電位測定用コイル15と、膜電位測定用コイル16と、電圧制御発信部21と、波形整形部22と、電流測定部23と、制御部30とを備えている。
【0018】
電圧制御発振部21は、制御部30により制御されてパルス電圧の発振周波数を変化させる。これにより、皮膚に加えられるパルス電圧の間隔が変化する。
波形整形部22は、コンデンサと抵抗等で構成される。波形整形部22は、電圧制御発振部21の出力するパルス電圧の波形を整形する。
【0019】
測定パルス電圧発生部12は、制御部30により制御されて波形整形部22から出力されるパルス電圧の大きさを徐々に変化させる。測定パルス電圧発生部12は、活動電位を発生させるためにパルス電圧の適切な大きさを求める際に使用される。
活性化パルス電圧発生部11は、波形整形部22から出力されるパルス電圧を制御部30から指示される大きさに変更する。活性化パルス電圧発生部11は、活動電位を繰り返し発生させる際に使用される。
切換部13と切換部14は、連動して動作する。切換部13と切換部14は、測定パルス電圧発生部12と活性化パルス電圧発生部11のいずれかの電圧を選択して出力する。
膜電位測定用コイル15と膜電位測定用コイル16は、細胞の膜電位が変化すると電磁誘導により電流を生じる。
【0020】
電流測定部23は、膜電位測定用コイル15または膜電位測定用コイル16に生じた電流(細胞の膜電位の変化により生じる電流)の大きさを測定する。
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等で構成されるメモリを含む。制御部30は、電流測定部23によって測定される電流値に基づいて、活動電位を発生させるために必要なパルス電圧の周期と大きさを求め、電圧制御発振部21と活性化パルス電圧発生部11を制御して活動電位を発生させるパルス電圧を繰り返し出力させる。
【0021】
図4は、電流パルス測定・印加処理の流れを示す図である。
制御部30は、測定パルス電圧発生部12にパルス電圧の初期値を設定する(S101)。なお、パルス電圧の初期値として、細胞に活動電位を生じさせない低い電圧を設定することが望ましい。
測定パルス電圧発生部12は、電圧制御発振部21から出力され、波形整形部22によって整形されたパルス電圧の大きさを変化させてパルス電圧を皮膚に印加する(S102)。電流測定部23は、膜電位測定用コイル15に生じた電流の大きさを測定する(S103)。制御部30は、電流測定部23によって測定された電流に基づいて皮膚の細胞に活動電位が発生したか否か判別する(S104)。皮膚の細胞に活動電位が発生していない場合(S104:No)、制御部30は測定パルス電圧発生部12のパルス電圧の設定値を増加させ(S105)、ステップS102に戻る。
皮膚の細胞に活動電位が発生した場合(S104:Yes)、制御部30はパルス電圧の大きさを活性化パルス電圧発生部11に設定する。また、同時に、制御部30はパルス電圧の印加間隔の初期値を電圧制御発振部21に設定する(S106)。言い換えると、制御部30は、電圧制御発振部21の発振を制御する電圧として初期電圧を加える。
【0022】
活性化パルス電圧発生部11は、電圧制御発振部21から出力され、波形整形部22によって整形されたパルス電圧の大きさを制御部30による設定値に変化させて皮膚に印加する(S107)。電流測定部23は、電流測定用コイル16に生じた電流の大きさを測定する(S108)。制御部30は、電流測定部23によって測定された電流に基づいて皮膚の細胞に活動電位が発生したか否か判別する(S109)。皮膚の細胞に活動電位が発生した場合(S109:Yes)、電圧制御発振部21は設定された印加間隔経過後(S110)、ステップS107に戻り、パルス電圧を再度印加する。
皮膚の細胞に活動電位が発生していない場合(S109:No)、制御部30は印加間隔の設定値を増加させ(S111)、印加間隔経過後(S112)、ステップS112に戻る。
【0023】
なお、ステップS109において皮膚の細胞に活動電位が発生していない場合に、ステップS111で印加間隔の設定値を増加させても活動電位が発生しない場合(S109)には、制御部30はステップS101に戻って活性化パルス電圧発生部11の設定値を適切な値に再設定しても良い。
【0024】
本発明によれば、皮膚の細胞に活動電位を生じさせることができる。これにより、皮膚の細胞増殖を促進させて皮膚の再生を促すことができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、請求項に記載されている発明や発明の実施形態に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0026】
10…美容器、11…活性化パルス電圧発生部、12…測定パルス電圧発生部、13、14…切換部、15、16…膜電位測定用コイル、21…電圧制御発信部、22…波形整形部、23…電流測定部、30…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス電圧の電圧値を、活動電位を発生させることができる電圧値に設定する電圧値設定手段と、
前記パルス電圧を印加する間隔を、繰り返し活動電位を発生させることができる間隔に設定する印加間隔設定手段と、
前記電圧値設定手段によって設定された電圧値のパルス電圧を、前記印加間隔設定手段によって設定された間隔で出力するパルス電圧出力手段と、
を備えることを特徴とする美容器。
【請求項2】
前記電圧値設定手段は、パルス電圧を出力し、皮膚の細胞に発生する活動電位の変化によってコイルに生じる電流を測定することによって皮膚の細胞に活動電位が発生したか否かを判別する手段を含むことを特徴とする美容器。
【請求項3】
パルス電圧の電圧値を、活動電位を発生させることができる電圧値に設定する電圧値設定ステップと、
前記パルス電圧を印加する間隔を、繰り返し活動電位を発生させることができる間隔に設定する印加間隔設定ステップと、
前記設定された電圧値のパルス電圧を、前記設定された間隔で出力するパルス電圧出力ステップと、
を備えることを特徴とする美容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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