説明

翻訳支援プログラム、翻訳支援装置、および翻訳支援方法

【課題】入力文内の翻訳領域を簡単かつ適切に設定すること。
【解決手段】(A)において、ユーザ操作により入力文内の領域「弟が水」を指定する。(B)において、形態素解析を実行する。(C)において、対象領域を特定する。(D)において、対象領域内の文節間で係り受けチェック(1回目)をおこなう。(E)において、2回目の係り受けチェックをおこなう。これにより、拡大された対象領域「弟が水曜日に買った」が翻訳領域に決定される。したがって、翻訳領域において翻訳が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力文の翻訳を支援する翻訳支援プログラム、翻訳支援装置、および翻訳支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日本語から英語へ機械翻訳をする際、長い入力文に対していきなり構文解析を実施してその結果を表示する技術が開示されている(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−19964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、長文に対する解析精度が低いため、ユーザは、翻訳領域の度重なる修正を強いられるという問題があった。また、タッチパッドなどの入力装置による操作ミスにより正確に翻訳領域を指定することができない場合があり、使い勝手が悪いという問題があった。さらに、ユーザの文法の不知により、指定した領域内の文字列では正確な翻訳ができないという問題があった。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、入力文内の翻訳領域を簡単かつ適切に設定することができる翻訳支援プログラム、翻訳支援装置、および翻訳支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この翻訳支援プログラム、翻訳支援装置、および翻訳支援方法は、入力文の中から任意の領域の指定を受け付け、前記入力文を文節に分解し、分解結果に基づいて、指定された領域に該当する文節を対象領域として特定し、特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、前記対象領域内において前記注目文節に隣接する前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定し、前記注目文節と前記係り受け候補との間の係り受けの有無を判断し、係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、翻訳領域を決定し、決定された翻訳領域を出力することを要件とする。
【0007】
この翻訳支援プログラム、翻訳支援装置、および翻訳支援方法によれば、指定された領域が文節単位でなくても、文節単位でかつ翻訳可能な領域にして提示することができる。
【発明の効果】
【0008】
この翻訳支援プログラム、翻訳支援装置、および翻訳支援方法によれば、入力文内の翻訳領域を簡単かつ適切に設定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本実施の形態にかかる翻訳支援プログラム、翻訳支援装置、および翻訳支援方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。この翻訳支援プログラム、翻訳支援装置、および翻訳支援方法では、ユーザの領域指定が不適切であっても入力文内の翻訳領域を簡単かつ適切に設定する。以下、添付図面を参照して説明する。本実施の形態では、「これは、弟が水曜日に買った本です。」という入力文を例に挙げて説明する。
【0010】
(実施の形態の概要)
図1は、実施の形態にかかる翻訳支援の概要を示す説明図である。図1では、(A)〜(E)の時系列で説明する。(A)において、ユーザ操作により入力文内の領域を指定する。ここでは、「弟が水」を誤って指定したこととする。領域指定されると、(B)において、形態素解析を実行する。具体的には、入力文を文節ごとに分解する。ここでは、「これは、」、「弟が」、「水曜日に」、「買った」、および「本です」、「。」に分解される。そして、各文節について自立語の種別(体言、用言)とその活用形(連用、連体、終止)を取得する。
【0011】
(C)において、対象領域を特定する。対象領域とは、文節間の係り受けのチェック対象となる領域である。領域指定された領域の境界が文節の境界と一致している場合、その領域がそのまま対象領域となる。不一致の場合、調整することとなる。本例では、指定領域が「弟が水」であるが、「水」の存在により文節「弟が」と文節「水曜日に」との境界と不一致である。この場合、「水」を削除した「弟が」を対象領域としてもよく、また、「水」が存在する文節を含む「弟が水曜日に」を対象領域としてもよい。ここでは、後者を対象領域とする。
【0012】
(D)において、対象領域内の文節間で係り受けチェック(1回目)をおこなう。「係り受け」とは、一方の文節が他方の文節を修飾している関係をいう。この係り受けチェックでは、対象となる文節の自立語種別とその活用形により、両文節が係り受け構造であるか否かをチェックする。本例では、文節「弟が」と文節「水曜日に」との係り受け構造をチェックする。すなわち、文節「弟が」が係り受け元、文節「水曜日に」が係り受け先候補となる。
【0013】
文節「弟が」は体言の連用形であるため、被修飾語は用言でなければならない。この場合、文節「水曜日に」は、体言であるため、両文節は係り受け構造ではない。係り受け構造がない場合は翻訳できないため、1文節右にシフトして対象領域を拡大する。そして、文節「買った」を文節「弟が」および「水曜日に」の係り受け先候補とする。
【0014】
(E)において、2回目の係り受けチェックをおこなう。文節「弟が」と文節「買った」については、文節「買った」は用言であるため、活用形が連用である文節「弟が」に修飾される。同様に、文節「水曜日に」と文節「買った」についても、文節「買った」は用言であるため、活用形が連用である文節「水曜日に」に修飾される。これにより、拡大された対象領域「弟が水曜日に買った」が翻訳領域に決定される。したがって、翻訳領域において翻訳が可能となる。
【0015】
(翻訳支援装置のハードウェア構成)
図2は、実施の形態にかかる翻訳支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図2において、翻訳支援装置は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read‐Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、磁気ディスクドライブ204と、磁気ディスク205と、光ディスクドライブ206と、光ディスク207と、ディスプレイ208と、I/F(Interface)209と、キーボード210と、マウス211と、スキャナ212と、プリンタ213と、を備えている。また、各構成部はバス200によってそれぞれ接続されている。
【0016】
ここで、CPU201は、翻訳支援装置の全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。磁気ディスクドライブ204は、CPU201の制御にしたがって磁気ディスク205に対するデータのリード/ライトを制御する。磁気ディスク205は、磁気ディスクドライブ204の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0017】
光ディスクドライブ206は、CPU201の制御にしたがって光ディスク207に対するデータのリード/ライトを制御する。光ディスク207は、光ディスクドライブ206の制御で書き込まれたデータを記憶したり、光ディスク207に記憶されたデータをコンピュータに読み取らせたりする。
【0018】
ディスプレイ208は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。このディスプレイ208は、たとえば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0019】
インターフェース(以下、「I/F」と略する。)209は、通信回線を通じてLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどのネットワーク214に接続され、このネットワーク214を介して他の装置に接続される。そして、I/F209は、ネットワーク214と内部のインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する。I/F209には、たとえばモデムやLANアダプタなどを採用することができる。
【0020】
キーボード210は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力をおこなう。また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。マウス211は、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウィンドウの移動やサイズの変更などをおこなう。ポインティングデバイスとして同様に機能を備えるものであれば、トラックボールやジョイスティックなどであってもよい。
【0021】
スキャナ212は、画像を光学的に読み取り、翻訳支援装置内に画像データを取り込む。なお、スキャナ212は、OCR(Optical Character Reader)機能を持たせてもよい。また、プリンタ213は、画像データや文書データを印刷する。プリンタ213には、たとえば、レーザプリンタやインクジェットプリンタを採用することができる。
【0022】
<実施の形態1>
(翻訳支援装置の機能的構成)
図3は、実施の形態1にかかる翻訳支援装置の機能的構成を示すブロック図である。図3において、翻訳支援装置300は、指定部301と、分解部302と、特定部303と、設定部304と、判断部305と、決定部306と、出力部307と、受付部308と、を含む制御部309を有する。
【0023】
翻訳支援装置300は、キーボード210、マウス211などの入力装置311、ディスプレイ208などの出力装置312、ROM202(フラッシュメモリ含む)、RAM203、磁気ディスク205などの記憶装置313といったハードウェア資源とアクセス可能である。制御部309の各機能は、記憶装置313に記憶されたプログラムをCPU201が実行することによりその機能を実現する。
【0024】
指定部301は、入力文の中から任意の領域の指定を受け付ける機能を有する。具体的には、CPU201がI/F209からのコマンドを解釈して指定領域を特定する。たとえば、ユーザがマウス211で入力文の文字「弟」から「水」までをドラッグすることで、「弟が水」という指定領域を特定する。なお、ユーザが領域指定する前に入力文を設定することとしてもよく、領域指定された文を入力文としてもよい。
【0025】
分解部302は、入力文を文節に分解する機能を有する。具体的には、周知の形態素解析により、入力文を文節に分解する。そして、分解された文節の自立語種およびその活用形を取得する。なお、分解部302は、入力文全体について文節に分解してもよく、指定部301によって指定された領域や、後述の特定部303によって特定された対象領域内の文節についてのみ分解してもよい。
【0026】
また、指定された領域や対象領域内では、末尾の文節が用言である場合、損活用形が終止か連体かが不明となるため、指定された領域や対象領域から所定数の文節を拡張した領域について形態素解析をおこなうこととしてもよい。これにより、入力文が長文である場合に生じやすい解析ミスを抑制することができる。
【0027】
特定部303は、分解部302によって分解された分解結果に基づいて、指定部301によって指定された領域に該当する文節を対象領域として特定する機能を有する。対象領域とは、文節間の係り受けのチェック対象となる領域である。領域指定された領域の境界が文節の境界と一致している場合、その領域がそのまま対象領域となる。不一致の場合、調整することとなる。調整内容としては、対象領域を、指定領域を包含する文節単位の領域にする場合と指定領域に包含される文節単位の領域とする場合がある。
【0028】
図4−1〜図4−4は、特定部303による対象領域の特定例を示す説明図である。図4―1および図4−2は、対象領域を、指定領域を包含する文節にする場合の例である。図4−1では、指定領域が「弟が水」であるため、対象領域は「弟が水」を包含する「弟が水曜日に」となる。図4−2では、指定領域が「が水曜日に買」であるため、対象領域は「が水曜日に買」を包含する「弟が水曜日に買った」となる。このように対象領域を特定することで、領域指定を狭くしがちなユーザにとって領域指定の利便性の向上を図ることができる。
【0029】
図4―3および図4−4は、対象領域を、指定領域に包含される文節にする場合の例である。図4−3では、指定領域が「弟が水」であるため、対象領域は「弟が水」に包含される「弟が」となる。図4−4では、指定領域が「が水曜日に買」であるため、対象領域は「が水曜日に買」に包含される「水曜日に」となる。このように対象領域を特定することで、領域指定を広くしがちなユーザにとって領域指定の利便性の向上を図ることができる。
【0030】
図3に戻って、設定部304は、特定部303によって特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、対象領域内において注目文節に隣接する注目文節の係り受け候補となる文節を設定する機能を有する。対象領域の境界に位置する文節とは、対象領域の左端または右端の文節である。左端の文節を注目文節とした場合、その右隣の文節が係り受け先候補となる。たとえば、対象領域が「弟が水曜日に」である場合、左端の文節「弟が」が注目文節、その右隣の文節「水曜日に」が係り受け先候補となる。
【0031】
また、右端の文節を注目文節とした場合、その左隣の文節が係り受け元候補となる。たとえば、対象領域が「弟が水曜日に」である場合、右端の文節「水曜日に」が注目文節、その左隣の文節「弟が」が係り受け元候補となる。右端左端のいずれを注目文節にするかは、初期設定で決めておき、その都度ユーザ操作による設定変更により変更してもよい。
【0032】
判断部305は、注目文節と係り受け候補との間の係り受けの有無を判断する機能を有する。具体的には、注目文節と係り受け先候補との関係では、注目文節の活用形が連用であり、係り受け先候補の自立語種が用言である場合、係り受けありと判断する。たとえば、文節「水曜日に」が注目文節であり、その右隣の文節「買った」が係り受け先候補である場合、注目文節「水曜日に」の活用形は連用であり、係り受け先候補「買った」は用言であるため、係り受けありと判断する。ただし、文節「これは、」が注目文節であり、文節「買った」が係り受け先候補である場合、注目文節には読点が含まれているため、係り受けなしと判断する。
【0033】
同様に、注目文節の活用形が連体であり、係り受け先候補の自立語種が体言である場合も、係り受けありと判断する。たとえば、文節「買った」が注目文節であり、その右隣の文節「本です」が係り受け先候補である場合、注目文節「買った」の活用形は連体であり、係り受け先候補「本です」は体言であるため、係り受けありと判断する。
【0034】
また、係り受け元候補と注目文節との関係では、係り受け元候補の活用形が連用であり、注目文節の自立語種が用言である場合、係り受けありと判断する。たとえば、文節「水曜日に」が係り受け元候補であり、その右隣の文節「買った」が注目文節である場合、係り受け元候補「水曜日に」の活用形は連用であり、注目文節「買った」は用言であるため、係り受けありと判断する。
【0035】
同様に、係り受け元候補の活用形が連体であり、注目文節の自立語種が体言である場合も、係り受けありと判断する。たとえば、文節「買った」が係り受け元候補であり、その右隣の文節「本です」が注目文節である場合、係り受け元候補「買った」の活用形は連体であり、注目文節「本です」は体言であるため、係り受けありと判断する。
【0036】
決定部306は、判断部305によって係り受けありと判断された場合、対象領域と注目文節と係り受け候補とに基づいて、翻訳領域を決定する機能を有する。係り受け無しと判断された場合は、隣接文節にシフトして、再度判断部305による係り受けチェックをおこなう。この係り受けチェックおよび翻訳領域決定により、対象領域が拡大したり縮小したりする。
【0037】
図5−1および図5−2は対象領域の拡大例を示す説明図であり、図5−3および図5−4は対象領域の縮小例を示す説明図である。図5−1では、当初の対象領域を「弟が水曜日に」とし、注目文節を左端の文節「弟が」とした場合の拡大例である。すなわち、左端から右端に向う順方向に拡大する。
【0038】
図5−1において、(A)では、注目文節「弟が」と係り受け先候補「水曜日に」との係り受けチェックをおこなう。注目文節「弟が」の活用形は連用であり、係り受け先候補「水曜日に」は体言であるため、係り受け構造ではない。したがって、係り受け先候補「水曜日に」も注目文節に追加設定し、その右隣の文節「買った」をあらたな係り受け先候補とする。
【0039】
(B)では、注目文節「弟が」および「水曜日に」と係り受け先候補「買った」との係り受けチェックをおこなう。注目文節「弟が」および「水曜日に」の活用形はともに連用であり、係り受け先候補「本です」は用言であるため、係り受け構造である。したがって、拡大された対象領域「弟が水曜日に買った」が翻訳領域となる。この場合、係り受け先候補「買った」を注目文節とし、その右隣の文節「本です」を係り受け先候補とする。文節「弟が」および「水曜日に」は注目文節から外される。
【0040】
(C)では、注目文節「買った」と係り受け先候補「本です」との係り受けチェックをおこなう。注目文節「買った」の活用形は連体であり、係り受け先候補「本です」は体言であるため、係り受け構造である。したがって、拡大された対象領域「弟が水曜日に買った本です」が翻訳領域となる。
【0041】
図5−2では、当初の対象領域を「買った本です」とし、注目文節を右端の文節「本です」とした場合の拡大例である。すなわち、右端から左端へ向う逆方向に拡大する。
【0042】
図5−2において、(A)では、係り受け元候補「買った」と注目文節「本です」との係り受けチェックをおこなう。係り受け元候補「買った」の活用形は連体であり、注目文節「本です」は体言であるため、係り受け構造である。したがって、対象領域「買った本です」が翻訳領域となる。そして、係り受け元候補「買った」の左隣である文節「水曜日に」を係り受け元候補として追加設定する。
【0043】
(B)では、係り受け元候補「水曜日に」と注目文節「本です」との係り受けチェックをおこなう。係り受け元候補「水曜日に」の活用形は連用であり、注目文節「本です」は体言であるため、係り受け構造ではない。したがって、注目文節を「本です」からその左隣である「買った」に変更する。また、その左隣である文節「水曜日に」を係り受け元候補とする。
【0044】
(C)では、係り受け元候補「水曜日に」と注目文節「買った」との係り受けチェックをおこなう。係り受け元候補「水曜日に」の活用形は連用であり、注目文節「買った」は用言であるため、係り受け構造となる。したがって、拡大された対象領域「水曜日に買った本です」が翻訳領域となる。そして、係り受け元候補「水曜日に」の左隣である文節「弟が」を係り受け元候補として追加設定する。
【0045】
(D)では、係り受け元候補「弟が」と注目文節「買った」との係り受けチェックをおこなう。係り受け元候補「弟が」の活用形は連用であり、注目文節「買った」は用言であるため、係り受け構造となる。したがって、拡大された対象領域「弟が水曜日に買った本です」が翻訳領域となる。そして、係り受け元候補「弟が」の左隣である文節「これは、」を係り受け元候補として追加設定する。
【0046】
(E)では、係り受け元候補「これは、」と注目文節「買った」との係り受けチェックをおこなう際、係り受け元候補「これは、」には読点が含まれている。読点が含まれている場合、係り受けチェック対象から除外する。したがって、対象領域「弟が水曜日に買った本です」が翻訳領域となる。
【0047】
図5−3では、当初の対象領域を「弟が水曜日に買った本です」とし、注目文節を左端の文節「弟が」とした場合の縮小例である。すなわち、左端から右端に向う順方向に縮小する。
【0048】
図5−3において、(A)では、注目文節「弟が」と係り受け先候補「水曜日に」との係り受けチェックをおこなう。注目文節「弟が」の活用形は連用であり、係り受け先候補「水曜日に」は体言であるため、係り受け構造ではない。したがって、係り受け先候補「水曜日に」も注目文節に追加設定し、その右隣の文節「買った」をあらたな係り受け先候補とする。
【0049】
(B)では、注目文節「弟が」および「水曜日に」と係り受け先候補「買った」との係り受けチェックをおこなう。注目文節「弟が」および「水曜日に」の活用形はともに連用であり、係り受け先候補「買った」は用言であるため、係り受け構造である。したがって、(C)では、注目文節「弟が」および「水曜日に」のうち先頭の注目文節「弟が」を除外することにより縮小された対象領域「水曜日に買った本です」が翻訳領域となる。
【0050】
図5−4では、当初の対象領域を「弟が水曜日に買った本です」とし、注目文節を右端の文節「本です」とした場合の縮小例である。すなわち、右端から左端へ向う逆方向に縮小する。
【0051】
図5−4において、(A)では、係り受け元候補「買った」と注目文節「本です」との係り受けチェックをおこなう。係り受け元候補「買った」の活用形は連体であり、注目文節「本です」は体言であるため、係り受け構造である。そして、係り受け元候補「買った」の左隣である文節「水曜日に」を係り受け元候補として追加設定する。
【0052】
(B)では、係り受け元候補「水曜日に」と注目文節「本です」との係り受けチェックをおこなう。係り受け元候補「水曜日に」の活用形は連用であり、注目文節「本です」は体言であるため、係り受け構造ではない。したがって、注目文節を「本です」からその左隣である「買った」に変更する。また、その左隣である文節「水曜日に」を係り受け元候補とする。
【0053】
(C)では、係り受け元候補「水曜日に」と注目文節「買った」との係り受けチェックをおこなう。係り受け元候補「水曜日に」の活用形は連用であり、注目文節「買った」は用言であるため、係り受け構造となる。そして、係り受け元候補「水曜日に」の左隣である文節「弟が」を係り受け元候補として追加設定する。
【0054】
(D)では、係り受け元候補「弟が」と注目文節「買った」との係り受けチェックをおこなう。係り受け元候補「弟が」の活用形は連用であり、注目文節「買った」は用言であるため、係り受け構造となる。
【0055】
したがって、(E)では、係り受け元候補「弟が」および「水曜日に」が注目文節「買った」の係り受け元となるため、さらにその注目文節であった文節「本です」を除外することにより縮小された対象領域「弟が水曜日に買った」が翻訳領域となる。
【0056】
このように、設定部304、判断部305および決定部306の一連の処理の流れにより、係り受けが見つかるまで拡大または縮小を継続し、係り受けが確定した場合に、拡大また縮小後の翻訳領域を確定させる。そのほか、対象領域を拡大する場合、入力文の先頭文節や末尾文節に到達した場合は、これ以上拡大しない。すなわち、設定部304では注目文節の追加設定をおこなわない。追加設定した場合、形態素解析で得られる自立語種および活用形では係り受けがあると判断されるが、文法上はありえない修飾関係であるため、係り受けなしとすることができる。
【0057】
また、図3に戻って、出力部307は、決定部306によって決定された翻訳領域を出力する機能を有する。具体的には、たとえば、翻訳領域を出力装置312に出力することで、ディスプレイ208の表示画面に表示されている入力文には、翻訳領域が強調表示される。また、翻訳支援装置300の内部または外部には翻訳ソフトウェア310が存在する。翻訳ソフトウェア310は日本語の入力文字列に対して英語の翻訳文を出力装置312に出力する。したがって、翻訳領域内の文字列を翻訳ソフトウェア310に与えると、その翻訳文が出力装置312に表示されることとなる。
【0058】
受付部308は、対象領域に対する拡大または縮小の指示を受け付ける機能を有する。具体的には、ユーザが入力装置311を操作することで、拡大指示や縮小指示のコマンドをI/F209から取得する。たとえば、拡大モードの場合にマウス211をクリックすると拡大指示のコマンドを受け付ける。同様に、縮小モードの場合にマウス211をクリックすると縮小指示のコマンドを受け付ける。設定部304では、この指示内容にしたがって上述した設定をおこなう。これにより、指示を受け付ける都度、翻訳領域を決定することができる。したがって、ユーザは、指示の前後における翻訳領域の変化(異同)を把握することができる。
【0059】
(翻訳領域の具体例)
図6−1は、翻訳領域の順方向への拡大例を示す説明図である。(A)の入力文に対して、(B)において、領域指定「弟が水」をおこなう。(C)において、形態素解析をおこなって文節に分割し、(D)において、対象領域「弟が水曜日に」を特定する。(E)において、係り受けチェックにより対象領域を「弟が水曜日に買った」まで拡大し、(F)において、係り受けチェックにより、対象領域を「弟が水曜日に買った本です」に拡大する。文節「本です」の活用形が終止であるため、対象領域の拡大を終了する。これにより拡大後の翻訳領域「弟が水曜日に買った本です」が決定される。
【0060】
図6−2は、翻訳領域の逆方向への拡大例を示す説明図である。(A)の入力文に対して、(B)において、領域指定「水曜日に買」をおこなう。(C)において、形態素解析をおこなって文節に分割し、(D)において、対象領域「水曜日に買った」を特定する。この対象領域は、係り受け構造が存在するため翻訳領域に確定する。(E)において、係り受けチェックにより、対象領域を「弟が水曜日に買った」に拡大する。これにより拡大後の翻訳領域「弟が水曜日に買った」が決定される。
【0061】
図6−3は、翻訳領域の順方向への縮小例を示す説明図である。(A)の入力文に対して、(B)において、領域指定「弟が水曜日に買っ」をおこなう。(C)において、形態素解析をおこなって文節に分割し、(D)において、対象領域「弟が水曜日に買った」を特定する。この対象領域は、係り受け構造が存在するため翻訳領域に確定する。(E)において、係り受けチェックにより対象領域を「水曜日に買った」に縮小する。これにより縮小後の翻訳領域「水曜日に買った」が決定される。
【0062】
図6−4は、翻訳領域の逆方向への縮小例を示す説明図である。(A)の入力文に対して、(B)において、領域指定「弟が水曜日に買った本」をおこなう。(C)において、形態素解析をおこなって文節に分割し、(D)において、対象領域「水曜日に買った本です」を特定する。この対象領域は、係り受け構造が存在するため翻訳領域に確定する。(E)において、係り受けチェックにより、対象領域を「弟が水曜日に買った」に縮小する。これにより縮小後の翻訳領域「弟が水曜日に買った」が決定される。
【0063】
図7は、翻訳領域の順方向への拡大と逆方向への縮小の組み合わせ例を示す説明図である。(A)〜(F)までは図6−1と同じである。(G)において、縮小指示を受け付けると、(F)において拡大された文節「本です」が削除されて、対象領域が「弟が水曜日に買った」に縮小される。(H)において、拡大指示を受け付けると、(G)において縮小された文節「本です」が追加されて、対象領域が「弟が水曜日に買った本です」に拡大される。
【0064】
(翻訳支援処理手順)
図8は、実施の形態1にかかる翻訳支援処理手順を示すフローチャート(前半)である。まず、指定部301により領域指定されるのを待ち受け(ステップS801:No)、領域指定された場合(ステップS801:Yes)、分解部302により形態素解析をおこなう(ステップS802)。そして、特定部303により対象領域を特定する(ステップS803)。
【0065】
このあと、対象領域内に2以上の文節があるか否かを判断する(ステップS804)。2以上の文節がない場合(ステップS804:No)、図9のステップS901に移行する。一方、2以上の文節がある場合(ステップS804:Yes)、対象領域内で係り受けチェックが可能となるため、設定部304により対象領域の先頭文節を注目文節に設定し(ステップS805)、その先頭文節に隣接する対象領域内の文節を係り受け先候補に設定する(ステップS806)。
【0066】
そして、判断部305により、注目文節と係り受け先候補との間に係り受けがあるか否かを判断する(ステップS807)。係り受けがないと判断された場合(ステップS807:No)、図9のステップS901に移行する。一方、係り受けがあると判断された場合(ステップS807:Yes)、決定部306により、対象領域を翻訳領域に決定する(ステップS808)。そして、決定された翻訳領域を出力装置312へ出力することで、表示画面に翻訳領域を表示する(ステップS809)。
【0067】
図9は、本実施の形態にかかる翻訳支援装置300による翻訳支援処理手順を示すフローチャート(後半)である。まず、ステップS804:NoまたはステップS807:Noのあと、受付部308により、入力装置311からの指示が受け付けられるのを待ち受ける(ステップS901:No)。指示が受け付けられた場合(ステップS901:Yes)、その指示内容が拡大指示であるか否かを判断する(ステップS902)。
【0068】
拡大指示である場合(ステップS902:Yes)、対象領域拡大処理を実行する(ステップS903)。対象領域拡大処理の詳細については後述する。そして、ステップS901に戻る。一方、指示内容が拡大指示でない場合(ステップS902:No)、縮小指示であるか否かを判断する(ステップS904)。縮小指示である場合(ステップS904:Yes)、対象領域縮小処理を実行する(ステップS905)。対象領域縮小処理の詳細については後述する。そして、ステップS901に戻る。
【0069】
また、縮小指示でもない場合(ステップS904:No)、翻訳指示であるか否かを判断する(ステップS906)。翻訳指示である場合(ステップS906:Yes)、翻訳領域内の文字列を翻訳ソフトウェア310に与えることで、翻訳ソフトウェア310からその翻訳文を取得する(ステップS907)。そして、取得された翻訳文を出力装置312に出力することで、表示画面に翻訳領域を表示する(ステップS908)。そして、ステップS901に戻る。一方、ステップS906において、翻訳指示でもない場合(ステップS906:No)、終了指示であるため、一連の処理を終了する。
【0070】
(対象領域拡大処理)
つぎに、図9に示した対象領域拡大処理(ステップS903)について説明する。対象領域拡大処理(ステップS903)は、順方向対象領域拡大処理と逆方向対象領域拡大処理の2種類があるが、いずれか一方の対象領域拡大処理がデフォルトで設定されることとなる。順方向対象領域拡大処理は順方向に対象領域を拡大していく処理であり、逆方向対象領域拡大処理は逆方向に対象領域を拡大していく処理である。
【0071】
図10−1は、順方向対象領域拡大処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。まず、設定部304により、対象領域の末尾文節を注目文節に設定する(ステップS1011)。つぎに、末尾の注目文節の右隣の文節を係り受け先候補に設定する(ステップS1012)。そして、すべての注目文節が係り受け先候補と係り受け構造であるか否かを判断する(ステップS1013)。
【0072】
係り受け構造でない場合(ステップS1013:No)、係り受け先候補の文節の活用形が終止であるか否かを判断する(ステップS1014)。終止でない場合(ステップS1014:No)、係り受け先候補を注目文節に変更する(ステップS1015)。これにより、注目文節が追加設定されることとなる。そして、ステップS1012に戻る。追加設定された注目文節は、末尾の注目文節となるため、係り受け先候補が末尾方向にシフトされることとなる。
【0073】
一方、ステップS1014において、係り受け先候補の文節の活用形が終止である場合(ステップS1014:Yes)、指示エラー出力をおこなう(ステップS1016)。これにより、「これ以上拡大できません」といったメッセージ内容のエラー画面が出力される。そして、ステップS901に戻る。
【0074】
一方、ステップS1013において、すべての注目文節が係り受け先候補と係り受け構造である場合(ステップS1013:Yes)、決定部306により、対象領域の先頭から係り受け先候補までの文節を拡大後の翻訳領域に決定する(ステップS1017)。そして、出力部307により、拡大後の翻訳領域を表示する(ステップS1018)。このあと、ステップS901に戻る。
【0075】
図10−2は、逆方向対象領域拡大処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。まず、設定部304により、対象領域の先頭文節を注目文節に設定する(ステップS1021)。つぎに、先頭の注目文節の左隣に文節があるか否かを判断する(ステップS1022)。左隣に文節がない場合(ステップS1022:No)、係り受け元候補が入力文の先頭文節であるため、指示エラー出力をおこなう(ステップS1023)。これにより、「これ以上拡大できません」といったメッセージ内容のエラー画面が出力される。そして、ステップS901に戻る。
【0076】
一方、左隣に文節がある場合(ステップS1022:Yes)、先頭の注目文節の左隣の文節を係り受け元候補に設定する(ステップS1024)。そして、係り受け元候補が読点を含むか否かを判断する(ステップS1025)。読点を含む場合(ステップS1025:Yes)、係り受け元候補は注目文節を修飾しないため、指示エラー出力をおこなう(ステップS1023)。これにより、「これ以上拡大できません」といったメッセージ内容のエラー画面が出力される。そして、ステップS901に戻る。
【0077】
一方、読点を含まない場合(ステップS1025:No)、係り受け元候補がすべての注目文節と係り受け構造であるか否かを判断する(ステップS1026)。係り受け構造でない場合(ステップS1026:No)、係り受け元候補を注目文節に変更する(ステップS1027)。これにより、注目文節が追加設定されることとなる。そして、ステップS1022に戻る。追加設定された注目文節は、先頭の注目文節となるため、係り受け元候補が先頭方向にシフトされることとなる。
【0078】
一方、係り受け元候補がすべての注目文節と係り受け構造である場合(ステップS1026:Yes)、決定部306により、係り受け元候補から対象領域の末尾までの文節を拡大後の翻訳領域に決定する(ステップS1028)。そして、出力部307により、拡大後の翻訳領域を表示する(ステップS1029)。このあと、ステップS901に戻る。
【0079】
(対象領域縮小処理)
つぎに、図9に示した対象領域縮小処理(ステップS905)について説明する。対象領域縮小処理(ステップS905)は、順方向対象領域縮小処理と逆方向対象領域縮小処理の2種類があるが、いずれか一方の対象領域縮小処理がデフォルトで設定されることとなる。順方向対象領域縮小処理は順方向に対象領域を縮小していく処理であり、逆方向対象領域縮小処理は逆方向に対象領域を縮小していく処理である。
【0080】
図10−3は、順方向対象領域縮小処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。まず、対象領域内に3以上の文節があるか否かを判断する(ステップS1031)。3以上ない場合(ステップS1031:No)、すなわち、文節が2以下である場合、縮小すると1文節以下となるため、指示エラー出力をおこなう(ステップS1032−1)。これにより、「これ以上縮小できません」といったメッセージ内容のエラー画面が出力される。そして、ステップS901に戻る。
【0081】
一方、3以上の文節がある場合(ステップS1031:Yes)、設定部304により、対象領域の先頭文節を注目文節に設定する(ステップS1033)。つぎに、末尾の注目文節の右隣の文節を係り受け先候補に設定する(ステップS1034)。そして、すべての注目文節が係り受け先候補と係り受け構造であるか否かを判断する(ステップS1035)。
【0082】
係り受け構造でない場合(ステップS1035:No)、係り受け先候補は対象領域の末尾文節であるか否かを判断する(ステップS1036)。末尾文節でない場合(ステップS1036:No)、係り受け先候補を注目文節に変更する(ステップS1037)。これにより、注目文節が追加設定されることとなる。そして、ステップS1034に戻る。追加設定された注目文節は、末尾の注目文節となるため、係り受け先候補が末尾方向にシフトされることとなる。
【0083】
一方、ステップS1036において、係り受け先候補が対象領域の末尾文節である場合(ステップS1036:Yes)、指示エラー出力をおこなう(ステップS1032−2)。これにより、「これ以上縮小できません」といったメッセージ内容のエラー画面が出力される。そして、ステップS901に戻る。
【0084】
一方、ステップS1035において、すべての注目文節が係り受け先候補と係り受け構造である場合(ステップS1035:Yes)、決定部306により、対象領域の先頭の順方向に隣接する文節から末尾文節までの文節を縮小後の翻訳領域に決定する(ステップS1038)。すなわち、対象領域の先頭文節を除外する。そして、出力部307により、縮小後の翻訳領域を表示する(ステップS1039)。このあと、ステップS901に戻る。
【0085】
図10−4は、逆方向対象領域縮小処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。まず、対象領域内に3以上の文節があるか否かを判断する(ステップS1041)。3以上ない場合(ステップS1041:No)、すなわち、文節が2以下である場合、縮小すると1文節以下となるため、指示エラー出力をおこなう(ステップS1042−1)。これにより、「これ以上縮小できません」といったメッセージ内容のエラー画面が出力される。そして、ステップS901に戻る。
【0086】
一方、3以上の文節がある場合(ステップS1041:Yes)、設定部304により、対象領域の末尾文節を注目文節に設定する(ステップS1043)。先頭の注目文節の左隣の文節を係り受け元候補に設定する(ステップS1044)。そして、係り受け元候補が読点を含むか否かを判断する(ステップS1045)。読点を含む場合(ステップS1045:Yes)、係り受け元候補は注目文節を修飾しないため、指示エラー出力をおこなう(ステップS1042−1)。これにより、「これ以上拡大できません」といったメッセージ内容のエラー画面が出力される。そして、ステップS901に戻る。
【0087】
一方、読点を含まない場合(ステップS1045:No)、係り受け元候補がすべての注目文節と係り受け構造であるか否かを判断する(ステップS1046)。係り受け構造でない場合(ステップS1046:No)、係り受け元候補は対象領域の先頭文節であるか否かを判断する(ステップS1047)。対象領域の先頭文節でない場合(ステップS1047:No)、係り受け元候補を注目文節に変更する(ステップS1048)。これにより、注目文節が追加設定されることとなる。そして、ステップS1044に戻る。追加設定された注目文節は、先頭の注目文節となるため、係り受け元候補が先頭方向にシフトされることとなる。
【0088】
一方、ステップS1047において、係り受け元候補が対象領域の先頭文節である場合(ステップS1047:Yes)、指示エラー出力をおこなう(ステップS1042−2)。これにより、「これ以上縮小できません」といったメッセージ内容のエラー画面が出力される。そして、ステップS901に戻る。
【0089】
一方、ステップS1046において、係り受け元候補がすべての注目文節と係り受け構造である場合(ステップS1046:Yes)、決定部306により、対象領域の先頭文節から末尾文節の逆方向に隣接する文節までを縮小後の翻訳領域に決定する(ステップS1049)。そして、出力部307により、縮小後の翻訳領域を表示する(ステップS1050)。このあと、ステップS901に戻る。
【0090】
このように、実施の形態1では、ユーザの操作ミスや文法の不知により領域指定が不適切であっても入力文内の翻訳領域を簡単かつ適切に設定することができる。また、一度決定された翻訳領域に対し、マウス211やタッチパッドなどの入力装置311のクリックなどによる単純操作で拡大または縮小指示をするだけで、翻訳領域の拡大または縮小をおこなうことができる。
【0091】
したがって、簡単な操作により、適切な翻訳領域を設定することができる。これにより、領域指定のやり直しを抑制することができる。また、翻訳ソフトウェア310に対し、意味のある文字列を与えることができるため、翻訳領域の翻訳精度の向上を図ることができ、無駄な翻訳処理を抑制することができる。
【0092】
また、図9に示した対象領域拡大処理(ステップS903)と対象領域縮小処理(ステップS905)の組み合わせについては、図10−1の順方向対象領域拡大処理(ステップS1010)と図10−4の逆方向対象領域縮小処理(ステップS1040)とを組み合わせて設定しておくのが好ましい。これらを組み合わせることで、順方向に拡大した後元に戻したいときは逆方向への縮小をおこなえばよく、逆方向に縮小した後元に戻したいときは順方向への拡大をおこなえばよい。これにより、対象領域の拡縮の前後の状態を簡単な操作で把握することができ、ユーザの利便性が向上することとなる。
【0093】
同様に、図10−2の逆方向対象領域拡大処理(ステップS1020)と図10−3の順方向対象領域縮小処理(ステップS1030)とを組み合わせて設定しておくこととしてもよい。これらを組み合わせることで、逆方向に拡大した後元に戻したいときは順方向への縮小をおこなえばよく、順方向に縮小した後元に戻したいときは逆方向への拡大をおこなえばよい。これにより、対象領域の拡縮の前後の状態を簡単な操作で把握することができ、ユーザの利便性が向上することとなる。
【0094】
<実施の形態2>
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態1では、あらかじめ拡大モードや縮小モードを設定しておいたり、拡大方向や縮小方向も、あらかじめ順方向またはその逆方向と設定しておく必要がある。たとえば、順方向に拡大したい場合はそのように設定しておき、逆方向に縮小したい場合は設定変更により逆方向への縮小モードに切り替える必要がある。
【0095】
実施の形態2では、そのような設定変更をおこなうことなく、簡単な操作により拡大または縮小、およびその方向を切り替えて領域決定をおこなうことができる。これにより、使い勝手の向上を図ることができる。なお、実施の形態1で示した構成と同一構成には同一符号や同一ステップ番号を付しその説明を省略する。
【0096】
(翻訳支援装置300の機能的構成)
図11は、実施の形態2にかかる翻訳支援装置300の機能的構成を示すブロック図である。図11において、翻訳支援装置300は、指定部301と、分解部302と、特定部303と、設定部304と、判断部305と、決定部306と、出力部307と、受付部308と、検出部1101と、判別部1102と、を含む制御部309を有する。
【0097】
翻訳支援装置300は、キーボード210、マウス211などの入力装置311、ディスプレイ208などの出力装置312、ROM202、RAM203、磁気ディスク205などの記憶装置313といったハードウェア資源とアクセス可能である。制御部309の各機能は、記憶装置313に記憶されたプログラムをCPU201が実行することによりその機能を実現する。
【0098】
特定部303は、実施の形態1で示した機能のほか、対象領域の先頭(左端)位置L、中央位置C、末尾(右端)位置Rを特定する機能を有する。具体的には、CPU201が対象領域の境界や文字位置を特定して、先頭位置L、中央位置C、および末尾位置Rを特定する。ここで、先頭位置L、中央位置C、および末尾位置Rについて説明する。
【0099】
図12は、先頭位置L、中央位置C、および末尾位置Rを示す説明図である。図12では、「水曜日に買った」を対象領域としている。先頭位置Lとは、対象領域の先頭文節とそれに隣接する対象領域外の文節との境界である。この場合、対象領域の先頭文節「水曜日に」と隣接する文節「弟が」の境界が先頭位置Lとなる。
【0100】
末尾位置Rとは、対象領域の末尾文節とそれに隣接する対象領域外の文節との境界である。この場合、対象領域の末尾文節「買った」と隣接する文節「本です」の境界が末尾位置Rとなる。中央位置Cとは、対象領域の中央の位置であり、対象領域内の文字数が奇数である場合は中央の文字位置、偶数である場合には中央の2文字の境界となる。この場合、対象領域「水曜日に買った」の文字数は7であるため、中央(4番目)の「に」が中央位置Cとなる。
【0101】
図11に戻って、検出部1101は、受付部308によって指示が受け付けられた場合、対象領域に対する画面上のカーソルのポイント位置を検出する機能を有する。具体的には、たとえば、入力文の並び方向におけるカーソル位置座標を検出する。
【0102】
判別部1102は、検出部1101によって検出されたポイント位置に基づいて、対象領域に対する拡縮指示を判別する機能を有する。具体的には、たとえば、受付部308によりマウス211のクリックを受け付けたときのカーソル位置が、先頭位置L以前、先頭位置Lから中央位置Cまでの間、中央位置Cから末尾位置Rまでの間、末尾位置R以降のいずれに該当するかを判別する。
【0103】
たとえば、カーソル位置が先頭位置Lよりも手前である場合、逆方向対象領域拡大処理(ステップS1020)をおこなう。先頭位置Lから中央位置Cまでの間である場合、順方向対象領域縮小処理(ステップS1030)をおこなう。中央位置Cから末尾位置Rまでの間である場合、順方向対象領域縮小処理(ステップS1040)をおこなう。末尾位置R以降である場合、順方向対象領域拡大処理(ステップS1010)をおこなう。
【0104】
図13−1は、カーソル位置が末尾位置R以降である場合の拡大例を示す説明図である。図13−1では、カーソルが末尾位置R以降の文節「本です」を指し示しているため、マウス211をクリックすることで、その文節への順方向対象領域拡大処理(ステップS1010)を実行する。その結果、拡大後の翻訳領域「水曜日に買った本です」が得られることとなる。
【0105】
図13−2は、カーソル位置が先頭位置L以前である場合の拡大例を示す説明図である。図13−2では、カーソルが先頭位置L以前の文節「弟が」を指し示しているため、マウス211をクリックすることで、その文節への逆方向対象領域拡大処理(ステップS1020)を実行する。その結果、拡大後の翻訳領域「弟が水曜日に買った」が得られることとなる。
【0106】
図13−3は、カーソル位置が先頭位置Lから中央位置Cまでの間である場合の縮小例を示す説明図である。図13−3では、カーソルが先頭位置Lから中央位置Cまでの間の文節「弟が」を指し示しているため、マウス211をクリックすることで、その文節を除外する順方向対象領域縮小処理(ステップS1030)を実行する。その結果、縮小後の翻訳領域「水曜日に買った」が得られることとなる。
【0107】
図13−4は、カーソル位置が中央位置Cから末尾位置Rまでの間である場合の縮小例を示す説明図である。図13−4では、カーソルが中央位置Cから末尾位置Rまでの間の文節「買った」を指し示しているため、マウス211をクリックすることで、その文節を除外する逆方向対象領域縮小処理(ステップS1030)を実行する。この場合、文節数が2であるため、文節「買った」を除外できない。したがって、対象領域を縮小できず、「水曜日に買った」のままである。
【0108】
(翻訳支援処理手順)
図14は、実施の形態2にかかる翻訳支援処理手順を示すフローチャート(前半)である。まず、指定部301により領域指定されるのを待ち受け(ステップS1401:No)、領域指定された場合(ステップS1401:Yes)、分解部302により形態素解析をおこなう(ステップS1402)。そして、特定部303により対象領域を特定する(ステップS1403)。
【0109】
このあと、受付部308により指示が受け付けられるのを待ち受け(ステップS1404:No)、指示が受け付けられた場合(ステップS1404:Yes)、翻訳指示であるか否かを判断する(ステップS1405)。翻訳指示でない場合(ステップS1405:No)、図15のステップS1501に移行する。一方、翻訳指示である場合(ステップS1405:Yes)、対象領域内に2以上の文節があるか否かを判断する(ステップS1406)。
【0110】
2以上の文節がない場合(ステップS1406:No)、翻訳不可であるため、指示エラー出力をおこない(ステップS1407)、ステップS1404に戻る。一方、2以上の文節がある場合(ステップS1406:Yes)、設定部304により対象領域の先頭文節を注目文節に設定し(ステップS1408)、その先頭文節に隣接する対象領域内の文節を係り受け先候補に設定する(ステップS1409)。
【0111】
そして、判断部305により、注目文節と係り受け先候補との間に係り受けがあるか否かを判断する(ステップS1410)。係り受けがないと判断された場合(ステップS1410:No)、ステップS1407に移行する。一方、係り受けがあると判断された場合(ステップS1410:Yes)、決定部306により、対象領域を翻訳領域に決定する(ステップS1411)。そして、決定された翻訳領域を出力装置312へ出力することで、表示画面に翻訳領域を表示する(ステップS1412)。
【0112】
図15は、実施の形態2にかかる翻訳支援処理手順を示すフローチャート(後半)である。まず、検出部1101により、カーソル位置を検出し(ステップS1501)、特定部303により、対象領域の先頭位置L、中央位置C及び末尾位置Rを特定する(ステップS1502)。そして、判別部1102により、中央位置Cに対するカーソル位置を判別する(ステップS1503)。カーソル位置が中央位置Cより末尾側である場合(ステップS1503:末尾)、末尾位置Rに対するカーソル位置を判別する(ステップS1504)。
【0113】
末尾位置Rより入力文の末尾側である場合(ステップS1504:末尾)、カーソルは末尾位置R以降に位置するため、順方向対象領域拡大処理を実行する(ステップS1505)。この処理は、図10−1に示した一連の処理と同一処理である。その後、ステップS1404に移行する。
【0114】
一方、ステップS1504において、末尾位置Rに対して先頭側である場合(ステップS1504:先頭)、カーソルは中央位置Cと末尾位置Rの間に位置するため、逆方向対象領域縮小処理を実行する(ステップS1506)。この処理は、図10−4に示した一連の処理と同一処理である。その後、ステップS1404に移行する。
【0115】
一方、ステップS1503において、カーソル位置が中央位置Cより先頭側である場合(ステップS1503:先頭)、先頭位置Lに対するカーソル位置を判別する(ステップS1507)。先頭位置Lに対して末尾側である場合(ステップS1507:末尾)、カーソルは先頭位置Lと中央位置Cの間に位置するため、順方向対象領域縮小処理を実行する(ステップS1508)。この処理は、図10−3に示した一連の処理と同一処理である。その後、ステップS1404に移行する。
【0116】
一方、先頭位置Lに対して入力文の先頭側である場合(ステップS1507:先頭)、カーソルは先頭位置L以前に位置するため、逆方向対象領域拡大処理を実行する(ステップS1509)。この処理は、図10−2に示した一連の処理と同一処理である。その後、ステップS1404に移行する。
【0117】
このように、実施の形態2では、対象領域の拡大、縮小、またはこれらの方向を、マウス211やタッチパッドを用いて操作するだけ、すなわち、カーソルのドラッグおよびその後のクリックのみで特定することができる。したがって、ユーザによる直感的な操作が可能となり、使い勝手の向上を図ることができる。
【0118】
以上説明したように、本実施の形態によれば、文節単位で係り受けチェックをおこなうことで、文節単位で対象領域の拡大や縮小をおこなうことができる。したがって、入力文内の翻訳領域を簡単かつ適切に設定することができる。特に、ノートパソコンや携帯型端末のタッチパッドでは領域指定ミスが生じやすいが、そのような領域指定ミスを補完して翻訳領域を提示することができる。また、対象領域の拡大処理や縮小処理を混在させることにより、対象領域の拡縮の前後の状態を簡単な操作で把握することができ、ユーザの利便性が向上することとなる。
【0119】
なお、本実施の形態で説明した翻訳支援方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することが可能な媒体であってもよい。
【0120】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0121】
(付記1)コンピュータを、
入力文の中から任意の領域の指定を受け付ける指定手段、
前記入力文を文節に分解する分解手段、
前記分解手段によって分解された分解結果に基づいて、前記指定手段によって指定された領域に該当する文節を対象領域として特定する特定手段、
前記特定手段によって特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、前記対象領域内において前記注目文節に隣接する前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定する設定手段、
前記注目文節と前記係り受け候補との間の係り受けの有無を判断する判断手段、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、翻訳領域を決定する決定手段、
前記決定手段によって決定された翻訳領域を出力する出力手段、
として機能させることを特徴とする翻訳支援プログラム。
【0122】
(付記2)前記特定手段は、
前記指定された領域の境界に一致する前記文節の境界がない場合、前記指定された領域に包含される文節単位の領域を前記対象領域にすることを特徴とする付記1に記載の翻訳支援プログラム。
【0123】
(付記3)前記特定手段は、
前記指定された領域の境界に一致する前記文節の境界がない場合、前記指定された領域を包含する文節単位の領域を前記対象領域にすることを特徴とする付記1に記載の翻訳支援プログラム。
【0124】
(付記4)前記コンピュータを、
前記対象領域に対する拡大または縮小の指示を受け付ける受付手段として機能させ、
前記特定手段は、
前記受付手段によって指示が受け付けられた場合、前記決定手段によって決定された翻訳領域を前記対象領域として特定し、
前記設定手段は、
前記対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、当該注目文節から文節単位で前記指示に応じて拡大または縮小することにより前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、拡大または縮小後の翻訳領域を決定することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の翻訳支援プログラム。
【0125】
(付記5)前記受付手段は、
前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向への拡大指示を受け付け、
前記設定手段は、
前記受付手段によって拡大指示が受け付けられた場合、前記対象領域の末尾文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節と前記順方向に隣接する文節を前記注目文節の係り受け先候補に設定し、
前記判断手段は、
前記注目文節と前記係り受け先候補との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域の先頭文節から前記係り受け先候補までの文節を、拡大後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の翻訳支援プログラム。
【0126】
(付記6)前記設定手段は、
前記判断手段によって係り受けなしと判断された場合、前記係り受け先候補を前記注目文節に追加設定するとともに、当該追加設定された注目文節から前記順方向に隣接する文節を前記各注目文節の係り受け先候補に設定し、
前記判断手段は、
前記各注目文節と前記係り受け先候補との間の係り受けの有無を判断することを特徴とする付記5に記載の翻訳支援プログラム。
【0127】
(付記7)前記判断手段は、
係り受けなしと判断された前記係り受け先候補の活用形が終止であるか否かを判断し、
前記設定手段は、
前記判断手段によって終止でないと判断された場合、係り受けなしと判断された前記係り受け先候補を前記注目文節に追加設定するとともに、当該追加設定された注目文節から前記順方向に隣接する文節を前記各注目文節の係り受け先候補に設定することを特徴とする付記6に記載の翻訳支援プログラム。
【0128】
(付記8)前記出力手段は、
前記判断手段によって終止であると判断された場合、前記順方向への拡大不可に関する情報を出力することを特徴とする付記7に記載の翻訳支援プログラム。
【0129】
(付記9)前記受付手段は、
前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向とは逆方向への拡大指示を受け付け、
前記設定手段は、
前記受付手段によって拡大指定が受け付けられた場合、前記対象領域の先頭文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節と前記逆方向に隣接する文節を前記注目文節の係り受け元候補に設定し、
前記判断手段は、
前記係り受け元候補と前記注目文節との間に係り受けがあるか否かを判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記係り受け元候補から前記対象領域の末尾文節までの文節を、拡大後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の翻訳支援プログラム。
【0130】
(付記10)前記設定手段は、
前記判断手段によって係り受けなしと判断された場合、前記係り受け元候補を前記注目文節に設定し、
前記判断手段は、
前記各注目文節を係り受け元とする係り受け先が前記対象領域にあるか否かを判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって前記係り受け先が前記対象領域にあると判断された場合、前記係り受け先から前記末尾文節までの文節を、拡大後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記9に記載の翻訳支援プログラム。
【0131】
(付記11)前記判断手段は、
前記係り受け元候補に読点が含まれているか否かを判断し、前記係り受け元候補に読点が含まれていないと判断された場合、前記係り受け元候補と前記注目文節との間に係り受けがあるか否かを判断することを特徴とする付記9または10に記載の翻訳支援プログラム。
【0132】
(付記12)前記出力手段は、
前記判断手段によって前記係り受け元候補に読点が含まれていると判断された場合、前記逆方向への拡大不可に関する情報を出力することを特徴とする付記11に記載の翻訳支援プログラム。
【0133】
(付記13)前記判断手段は、
前記係り受け元候補が前記入力文の先頭に該当するか否かを判断し、前記入力文の先頭に該当しないと判断された場合、前記係り受け元候補と前記注目文節との間に係り受けがあるか否かを判断することを特徴とする付記9または10に記載の翻訳支援プログラム。
【0134】
(付記14)前記出力手段は、
前記入力文の先頭に該当すると判断された場合、前記逆方向への拡大不可に関する情報を出力することを特徴とする付記13に記載の翻訳支援プログラム。
【0135】
(付記15)前記受付手段は、
前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向への縮小指示を受け付け、
前記設定手段は、
前記受付手段によって縮小指示が受け付けられた場合、前記対象領域の先頭文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節から前記順方向に隣接する前記対象領域の文節を前記注目文節の係り受け先候補に設定し、
前記判断手段は、
前記注目文節と前記係り受け先候補との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記係り受け先候補から前記対象領域の末尾文節までの文節を、縮小後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の翻訳支援プログラム。
【0136】
(付記16)前記設定手段は、
前記判断手段によって係り受けなしと判断された場合、前記係り受け先候補を前記注目文節に追加設定するとともに、当該追加設定された注目文節から前記順方向に隣接する前記対象領域の文節を前記注目文節の係り受け先候補に設定し、
前記判断手段は、
前記各注目文節と前記係り受け先候補との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記先頭文節に隣接する文節から前記末尾文節までの文節を、縮小後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記15に記載の翻訳支援プログラム。
【0137】
(付記17)前記受付手段は、
前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向とは逆方向への縮小指示を受け付け、
前記設定手段は、
前記受付手段によって縮小指示が受け付けられた場合、前記対象領域の末尾文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節から前記逆方向に隣接する前記対象領域の文節を前記注目文節の係り受け元候補に設定し、
前記判断手段は、
前記係り受け元候補と前記注目文節との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域の先頭文節から前記係り受け元候補までの文節を、縮小後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の翻訳支援プログラム。
【0138】
(付記18)前記設定手段は、
前記判断手段によって係り受けなしと判断された場合、前記係り受け元候補を前記注目文節に追加設定するとともに、当該追加設定された注目文節から前記逆方向に隣接する前記対象領域の文節を前記各注目文節の係り受け元候補に設定し、
前記判断手段は、
前記係り受け元候補と前記各注目文節との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記先頭文節から前記末尾文節の前記逆方向に隣接する文節までの文節を、縮小後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記17に記載の翻訳支援プログラム。
【0139】
(付記19)前記コンピュータを、
前記受付手段によって指示が受け付けられた場合、前記対象領域に対する画面上のカーソルのポイント位置を検出する検出手段、
前記検出手段によって検出されたポイント位置に基づいて、前記対象領域に対する拡縮指示を判別する判別手段として機能させ、
前記設定手段は、
前記判別手段によって判別された指示に基づいて、前記特定手段によって特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、当該注目文節から文節単位で拡大または縮小することにより前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の翻訳支援プログラム。
【0140】
(付記20)前記判別手段は、
前記ポイント位置が前記対象領域外である場合、前記対象領域の拡大指示であると判別し、
前記設定手段は、
前記対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、当該注目文節から文節単位で拡大することにより前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定する付記19に記載の翻訳支援プログラム。
【0141】
(付記21)前記判別手段は、
前記ポイント位置が前記対象領域外でかつ前記対象領域の末尾文節側である場合、前記対象領域の前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向への拡大指示であると判別し、
前記設定手段は、
前記対象領域の末尾文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節と前記順方向に隣接する文節を前記注目文節の係り受け先候補に設定し、
前記判断手段は、
前記注目文節と前記係り受け先候補との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域の先頭文節から前記係り受け先候補までの文節を、拡大後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記20に記載の翻訳支援プログラム。
【0142】
(付記22)前記判別手段は、
前記ポイント位置が前記対象領域外でかつ前記対象領域の先頭文節側である場合、前記対象領域の前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向とは逆方向への拡大指示であると判別し、
前記設定手段は、
前記対象領域の先頭文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節と前記逆方向に隣接する文節を前記注目文節の係り受け元候補に設定し、
前記判断手段は、
前記係り受け元候補と前記注目文節との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記係り受け元候補から前記対象領域の末尾文節までの文節を、拡大後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記20に記載の翻訳支援プログラム。
【0143】
(付記23)前記判別手段は、
前記ポイント位置が前記対象領域内である場合、前記対象領域の縮小指示であると判別し、
前記設定手段は、
前記対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、当該注目文節から文節単位で縮小することにより前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定する付記19に記載の翻訳支援プログラム。
【0144】
(付記24)前記判別手段は、
前記ポイント位置が前記対象領域内でかつ前記対象領域の先頭文節側である場合、前記対象領域の前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向への縮小指示であると判別し、
前記設定手段は、
前記対象領域の先頭文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節と前記順方向に隣接する文節を前記注目文節の係り受け先候補に設定し、
前記判断手段は、
前記注目文節と前記係り受け先候補との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記係り受け先候補から前記対象領域の末尾文節までの文節を、縮小後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記23に記載の翻訳支援プログラム。
【0145】
(付記25)前記判別手段は、
前記ポイント位置が前記対象領域内でかつ前記対象領域の末尾文節側である場合、前記対象領域の前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向とは逆方向への縮小指示であると判別し、
前記設定手段は、
前記対象領域の末尾文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節と前記逆方向に隣接する文節を前記注目文節の係り受け元候補に設定し、
前記判断手段は、
前記係り受け元候補と前記各注目文節との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記先頭文節から前記末尾文節の前記逆方向に隣接する文節までの文節を、縮小後の翻訳領域に決定することを特徴とする付記23に記載の翻訳支援プログラム。
【0146】
(付記26)入力文の中から任意の領域の指定を受け付ける指定手段と、
前記入力文を文節に分解する分解手段と、
前記分解手段によって分解された分解結果に基づいて、前記指定手段によって指定された領域に該当する文節を対象領域として特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、前記対象領域内において前記注目文節に隣接する前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定する設定手段と、
前記注目文節と前記係り受け候補との間の係り受けの有無を判断する判断手段と、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、翻訳領域を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された翻訳領域を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする翻訳支援装置。
【0147】
(付記27)入力装置、出力装置および記憶装置を備えるコンピュータが、
前記記憶装置に記憶されている入力文の中から任意の領域の指定を前記入力装置から受け付ける指定工程と、
前記入力文を文節に分解する分解工程と、
前記分解工程によって分解された分解結果に基づいて、前記指定工程によって指定された領域に該当する文節を対象領域として特定する特定工程と、
前記特定工程によって特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、前記対象領域内において前記注目文節に隣接する前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定する設定工程と、
前記注目文節と前記係り受け候補との間の係り受けの有無を判断する判断工程と、
前記判断工程によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、翻訳領域を決定する決定工程と、
前記決定工程によって決定された翻訳領域を前記出力装置に出力する出力工程と、
を含んだことを特徴とする翻訳支援方法。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】実施の形態にかかる翻訳支援の概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態にかかる翻訳支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1にかかる翻訳支援装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4−1】特定部による対象領域の特定例(その1)を示す説明図である。
【図4−2】特定部による対象領域の特定例(その2)を示す説明図である。
【図4−3】特定部による対象領域の特定例(その3)を示す説明図である。
【図4−4】特定部による対象領域の特定例(その4)を示す説明図である。
【図5−1】対象領域の拡大例(その1)を示す説明図である。
【図5−2】対象領域の拡大例(その2)を示す説明図である。
【図5−3】対象領域の縮小例(その1)を示す説明図である。
【図5−4】対象領域の縮小例(その2)を示す説明図である。
【図6−1】翻訳領域の順方向への拡大例を示す説明図である。
【図6−2】翻訳領域の逆方向への拡大例を示す説明図である。
【図6−3】翻訳領域の順方向への縮小例を示す説明図である。
【図6−4】翻訳領域の逆方向への拡大例を示す説明図である。
【図7】翻訳領域の順方向への拡大と逆方向への縮小の組み合わせ例を示す説明図である。
【図8】実施の形態1にかかる翻訳支援処理手順を示すフローチャート(前半)である。
【図9】本実施の形態にかかる翻訳支援装置300による翻訳支援処理手順を示すフローチャート(後半)である。
【図10−1】順方向対象領域拡大処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図10−2】逆方向対象領域拡大処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図10−3】順方向対象領域縮小処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図10−4】逆方向対象領域縮小処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2にかかる翻訳支援装置300の機能的構成を示すブロック図である。
【図12】先頭位置L、中央位置C、および末尾位置Rを示す説明図である。
【図13−1】カーソル位置が末尾位置R以降である場合の拡大例を示す説明図である。
【図13−2】カーソル位置が先頭位置L以前である場合の拡大例を示す説明図である。
【図13−3】カーソル位置が先頭位置Lから中央位置Cまでの間である場合の縮小例を示す説明図である。
【図13−4】カーソル位置が中央位置Cから末尾位置Rまでの間である場合の縮小例を示す説明図である。
【図14】実施の形態2にかかる翻訳支援処理手順を示すフローチャート(前半)である。
【図15】実施の形態2にかかる翻訳支援処理手順を示すフローチャート(後半)である。
【符号の説明】
【0149】
300 翻訳支援装置
301 指定部
302 分解部
303 特定部
304 設定部
305 判断部
306 決定部
307 出力部
308 受付部
309 制御部
310 翻訳ソフトウェア
311 入力装置
312 出力装置
313 記憶装置
1101 検出部
1102 判別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
入力文の中から任意の領域の指定を受け付ける指定手段、
前記入力文を文節に分解する分解手段、
前記分解手段によって分解された分解結果に基づいて、前記指定手段によって指定された領域に該当する文節を対象領域として特定する特定手段、
前記特定手段によって特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、前記対象領域内において前記注目文節に隣接する前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定する設定手段、
前記注目文節と前記係り受け候補との間の係り受けの有無を判断する判断手段、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、翻訳領域を決定する決定手段、
前記決定手段によって決定された翻訳領域を出力する出力手段、
として機能させることを特徴とする翻訳支援プログラム。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記指定された領域の境界に一致する前記文節の境界がない場合、前記指定された領域に包含される文節単位の領域を前記対象領域にすることを特徴とする請求項1に記載の翻訳支援プログラム。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記指定された領域の境界に一致する前記文節の境界がない場合、前記指定された領域を包含する文節単位の領域を前記対象領域にすることを特徴とする請求項1に記載の翻訳支援プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータを、
前記対象領域に対する拡大または縮小の指示を受け付ける受付手段として機能させ、
前記特定手段は、
前記受付手段によって指示が受け付けられた場合、前記決定手段によって決定された翻訳領域を前記対象領域として特定し、
前記設定手段は、
前記対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、当該注目文節から文節単位で前記指示に応じて拡大または縮小することにより前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、拡大または縮小後の翻訳領域を決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の翻訳支援プログラム。
【請求項5】
前記受付手段は、
前記入力文の先頭文字から末尾文字へ向かう順方向への拡大指示を受け付け、
前記設定手段は、
前記受付手段によって拡大指示が受け付けられた場合、前記対象領域の末尾文節を前記注目文節に設定するとともに、当該注目文節と前記順方向に隣接する文節を前記注目文節の係り受け先候補に設定し、
前記判断手段は、
前記注目文節と前記係り受け先候補との間の係り受けの有無を判断し、
前記決定手段は、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域の先頭文節から前記係り受け先候補までの文節を、拡大後の翻訳領域に決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の翻訳支援プログラム。
【請求項6】
入力文の中から任意の領域の指定を受け付ける指定手段と、
前記入力文を文節に分解する分解手段と、
前記分解手段によって分解された分解結果に基づいて、前記指定手段によって指定された領域に該当する文節を対象領域として特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、前記対象領域内において前記注目文節に隣接する前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定する設定手段と、
前記注目文節と前記係り受け候補との間の係り受けの有無を判断する判断手段と、
前記判断手段によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、翻訳領域を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された翻訳領域を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする翻訳支援装置。
【請求項7】
入力装置、出力装置および記憶装置を備えるコンピュータが、
前記記憶装置に記憶されている入力文の中から任意の領域の指定を前記入力装置から受け付ける指定工程と、
前記入力文を文節に分解する分解工程と、
前記分解工程によって分解された分解結果に基づいて、前記指定工程によって指定された領域に該当する文節を対象領域として特定する特定工程と、
前記特定工程によって特定された対象領域の境界に位置する文節を注目文節に設定するとともに、前記対象領域内において前記注目文節に隣接する前記注目文節の係り受け候補となる文節を設定する設定工程と、
前記注目文節と前記係り受け候補との間の係り受けの有無を判断する判断工程と、
前記判断工程によって係り受けありと判断された場合、前記対象領域と前記注目文節と前記係り受け候補とに基づいて、翻訳領域を決定する決定工程と、
前記決定工程によって決定された翻訳領域を前記出力装置に出力する出力工程と、
を含んだことを特徴とする翻訳支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図13−4】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−113385(P2010−113385A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282771(P2008−282771)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】