翼設計装置,翼設計手法,それを用いて設計された翼,及びその翼を用いたターボ機械
【課題】ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できる翼設計装置,翼設計手法,それを用いて設計された翼,及びその翼を用いたターボ機械を提供することにある。
【解決手段】二次元翼型設計部112は、熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定する。スタッキング部114は、二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得る。
【解決手段】二次元翼型設計部112は、熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定する。スタッキング部114は、二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、翼設計装置,翼設計手法,それを用いて設計された翼,及びその翼を用いたターボ機械に係り、特に、蒸気タービンやガスタービン等のターボ機械の翼の設計に好適な翼設計装置,翼設計手法,それを用いて設計された翼,及びその翼を用いたターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の流体が低圧部に向かって膨張する時に生じる運動エネルギーを、静翼と動翼から構成される段落によりロータの回転エネルギーに変える機能を持つタービンにおいては、そのエネルギー変換効率を100%に近づけるためには、エネルギー損失の小さい静翼および動翼の形状を設計することが重要である。一方で、翼を設計するときには、強度,振動,構造上の制約条件を満たすように設計する必要がある。
【0003】
また、出力増加,タービンのコンパクト化,効率向上を目的として、翼長を大きくしたいという要求がある。翼長を大きくできると、単段あたりを流れる作動流体の質量流量を増加させることができ、出力増加が可能となる。また、同じ出力であれば、同じ流量を流すためのフロー数を減らすことが可能となり、タービンを小さくできる。さらに、最終段の動翼の場合、翼長を長くすることで、段落流出速度を小さくでき、それにより出口から捨てる運動エネルギーを小さくできるため、タービン効率が向上できる。
【0004】
一方で、翼長が大きい翼においては、内周側の翼型と外周側の翼型のねじりが大きくなる、外周側の流出マッハ数が超音速となる、遠心力による応力が大きくなる、などにより、翼の設計が困難となる。そのため、翼長の長い翼に対しても、必要とされる後続条件を満たし、かつ性能の良い翼を効率的かつ、間違いなく設計できる手法が求められている。
【0005】
なお、滑らかな翼面圧力分布を実現するためには、滑らかな曲率分布、すなわち曲率の勾配の連続性が重要であることが指摘されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Korakianitis、 P。 Papagiannidis、 Surface-Curvature-Distribution Effects on Turbine Cascade Performance、 Journal of Turbomachinery、 Vol。115、 pp。334-341 (1993-4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蒸気タービンやガスタービン等のターボ機械の翼の三次元的な形状は、球や立方体の単純な組み合わせではなく、閉じた自由曲面により形成される。そのため、形状の自由度は無限であり、その面を三次元的に制御して、性能の良い翼を設計することは一般的には時間がかかる。そのため、特に軸流型のターボ機械においては、翼を、円筒面や円錐面、もしくは等流量面で切ってできる翼型と呼ばれる二次元断面を設計し、それを、各断面の図心や後縁端などを基準に翼高さ方向に積み上げて、三次元的な翼面を形成する手法がとられている。
【0008】
この翼設計手法は、流れが直感的に理解し易い二次元断面で翼型を設計するために、三次元的な面を直接設計する手法に対し、設計しやすい利点があるが、一方で、翼が長くなった場合、複数の翼型をスタッキングすることにより形成された面がうねり易く、翼型を設計する時に、高さ方向の近接断面を意識しながら設計する必要があり、設計に時間がかかる。
【0009】
蒸気タービンの最終段動翼のように、翼の根元径を先端径で割った値で定義されるボス比が小さく、翼長が大きくなると、以下のような理由で、滑らかな翼面の形成が困難となる。まず始めに、内周側と外周側の動翼周速が大きく異なるため、動翼の流入角が大きく変化し、その流れ角に翼の入口角を合わせるために、内周側の翼型と外周側の翼型のねじりが大きくなる。また、内周側の翼型断面の流出マッハは亜音速であるため翼間流路が絞り流路となる翼型を設計するのに対し、外周側の流出マッハ数は超音速となるため翼間流路は絞り拡がり流路となる翼型を設計する必要がある。このように、小ボス比の長翼では、このように設計法が異なる翼型を翼高さ方向につなぐ必要がある。加えて、遠心力による応力が大きくなるため、内周側の翼型断面積に対する、外周側の断面積の比が小さくなる。そのため、外周側の翼型は、板のようにコード方向に長く、コード方向に垂直方向には薄い形になる。そのため、前縁、後縁位置を抑えたままの図心の調整が難しく、図心基準でスタッキングをして、滑らかな翼面を形成することが難しくなる。そのため、滑らかな翼型断面を形成するために、一般的には、設計する高さ方向の翼型断面数を増加させる必要があるが、そのことは逆に、翼型設計時にも、スタッキング調整時にも、設計自由度を増やすことにつながり、設計時間を増大させる。
【0010】
本発明の目的は、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できる翼設計装置,翼設計手法,それを用いて設計された翼,及びその翼を用いたターボ機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ターボ機械の翼を設計する翼設計装置であって、熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定する二次元翼型設計部と、該二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得るスタッキング部とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できるものとなる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記スタッキング部により得られた三次元翼に対して算出された一次元遠心応力が翼材料の許容応力以下であることを拘束条件として、前記二次元翼型設計部により決定された二次元翼型に対する流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を決定する最適化部とを備え、前記二次元翼型設計部は、前記最適部により決定された翼型の設計変数を用いて、再度、二次元翼型を決定するようにしたものである。
【0013】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記スタッキング部は、前記二次元翼型設計部により決定された複数の翼高さ位置の異なる二次元断面を示すNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルが一致しない場合には、すべてのNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを等しくした上で、4次のNURBS曲面を生成するようにしたものである。
【0014】
(4)また、上記目的を達成するために、本発明は、ターボ機械の翼を設計する翼設計方法であって、代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、翼を設計するようにしたものである。
かかる方法により、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できるものとなる。
【0015】
(5)上記(4)において、好ましくは、二次元翼型設計部により、熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定し、スタッキング部により、前記二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得るようにしたものである。
【0016】
(6)上記(5)において、好ましくは、前記二次元翼型は、内周側は絞り流路を持つ亜音速翼型であり、外周側は絞り−拡がり流路を持つ遷音速翼型であり、前記拡がり流路は流出マッハ数に応じた形状であり、前記スタッキング部は、前記二次元翼型設計部により決定された複数の翼高さ位置の異なる二次元断面を示すNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルが一致しない場合には、すべてのNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを等しくした上で、4次のNURBS曲面を生成するようにしたものである。
【0017】
(7)上記(5)において、好ましくは、前記二次元翼型設計部は、二次元断面を定義する4次のNURBS曲線が、上流工程で決まる流入角、スロート・ピッチ比を必ず満足するように決定するようにしたものである。
【0018】
(8)上記(4)において、好ましくは、最適化部により、二次元断面を定義する4次のNURBS曲線の設計変数を、翼型損失最小化を目的とした数値的な最適化法を用いて決定し、前記二次元翼型設計部により、前記最適部により決定された翼型の設計変数を用いて、再度、二次元翼型を決定するようにしたものである。
【0019】
(9)上記(8)において、好ましくは、前記最適化部により、前記スタッキング部により得られた三次元翼に対して算出された一次元遠心応力が翼材料の許容応力以下であることを拘束条件として、前記二次元翼型設計部により決定された二次元翼型に対する流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を決定するようにしたものである。
【0020】
(10)また、上記目的を達成するために、本発明は、ターボ機械の翼を設計する翼設計方法を用いて設計された翼であって、代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより設計したものである。
かかる構成により、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を得ることができるものとなる。
【0021】
(11)また、上記目的を達成するために、本発明は、タービンケーシングの内周側に固設された静翼と、タービン中心軸周りに回転するタービンロータに設けられた動翼とからなるターボ機械であって、前記動翼若しくは静翼は、代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより設計された翼としたものである。
かかる構成により、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を得ることができるものとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による翼設計装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図9】本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図10】本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図11】本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図12】本発明の一実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼の形状を示す翼断面のスタッキング図である。
【図13】本発明の一実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼を用いたターボ機械の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図13を用いて、本発明の一実施形態による翼設計装置の構成及び動作について説明する。なお、以下においては、動翼の設計を例にとって説明する。
【0025】
最初に、図1を用いて、本実施形態による翼設計装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による翼設計装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
本実施形態による翼設計装置は、翼形状形成部110と、設計変数部120と、評価部130,140,170と、最適化部150と、CAD部160とを備えている。
【0027】
翼形状形成部110は、翼設計の上流工程である熱設計からフローパターン(速度三角形)の情報を受けて、設計変数部120に保持された設計変数を用いて、三次元の翼形状を設計する。翼形状形成部110は、二次元翼型設計部112と、スタッキング部114とを備えている。
【0028】
二次元翼型設計部112は、熱設計からフローパターン(速度三角形)の情報を受けて、設計変数部120に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置で二次元翼型を決定する。二次元翼型設計部112によって設計された二次元翼型は、1本の4次のNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲線を用いて表現する。なお、二次元翼型設計部112の動作については、図2〜図11を用いて後述する。
【0029】
スタッキング部114は、二次元翼型設計部112によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、三次元翼の形状データを得る。
【0030】
評価部130は、二次元翼型設計部112によって設計された二次元翼型に対して、二次元関数値による流体解析を行い、損失を算出する。また、評価部140は、スタッキング部114により得られた三次元翼に対して、一次元遠心応力を算出する。最適化部150は、遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法を用い、評価部140により算出された一次元遠心応力が、翼材料の許容応力以下であることなどを拘束条件として、評価部130により算出された流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を自動的に決定する。決定された翼型の設計変数は、設計変数部120に保存される。ただし、後縁厚みなどの、製造上や強度上の制約から予め最適値が分かっている変数に関しては、最適化の対象とはせず固定入力値として、設計変数部120に保存されている。
【0031】
二次元翼型設計部112は、フローパターン(速度三角形)の情報を受けて、最適化部150により決定され、設計変数部120に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置で二次元翼型を決定する。スタッキング部114は、二次元翼型設計部112によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、三次元翼の形状データを得る。そして、最適化部150において、再度、流体損失を最小とするような設計変数を決定する。これらの繰り返しにより、最終的な三次元翼型のデータが求められる。
【0032】
本実施形態において特徴的なのは、二次元翼型設計部112にて決定される二次元翼型の数が従来よりも少なくなっている。例えば、ボス比が小さく、翼長が大きい翼の場合、従来は、長翼の高さ方向を5%高さ毎に二次元翼型が必要となっている。すなわち、21断面の翼型が必要となる。それに対して、本実施形態では、例えば、0%、25%、50%、75%、100%高さ位置の5断面の二次元翼型のみ決定する。そして、5断面の各翼型は、4次のNURBS曲線を用いて表現する。さらに、スタッキング部114では、5断面のNURBS曲線で表される二次元翼型を高さ方向に積み重ねて、三次元翼型のデータをNURBS曲面で表すようにしている。
【0033】
翼形状設計部110は、得られた三次元翼のデータを、CAD用の汎用データとして出力する。CAD用の汎用データとしては、例えば、IGES(Initial Graphics Exchange Specification)形式データを用いることができる。IGES形式のデータは、ANSI(American National Standrds Institure;米国標準規格協会)により策定されたものである。また、翼形状設計部110は、同時に、流体解析用格子の形のデータも出力する。
【0034】
CAD部160は、翼のCAD用の汎用データに、カバー,タイボス,プラットフォーム,翼根部などのデータを用いて、CADデータを生成する。評価部170は、生成されたCADデータを用いて、有限要素法により応力などの強度特性を計算し、また、固有振動数などの振動特性を計算する。また、評価部170は、流体解析用格子の形のデータを用いて、三次元流体解析手法により、段落効率などの流体性能を評価する。
【0035】
次に、図2〜図11を用いて、本実施形態の翼設計装置による翼の二次元翼型の決定方法について説明する。
最初に、図2〜図7を用いて、本実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法について説明する。
図2〜図7は、本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【0036】
最初に、本実施形態で用いるp次のNURBS曲線は、次式(1)のように、制御点の重み付き線形和の形で定義される。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、式(1)における「CPi」は制御点で、「n」はその最大インデックス(n+1が個数)、「wi」は制御点CPiに対応するウェイトであり、大きくすると曲線をその制御点に近づける効果を持つ。
【0039】
また、式(1)において、「Ni,p(u)」は、p次のB−spline基底関数であり、次式(2),式(3)により定義される。
【0040】
【数2】
【0041】
【数3】
【0042】
ここで、「ui」はノットベクトルと呼ばれる、aからbまで減少しないm+1個の実数列である。なお、m=p+n+1である。
【0043】
【数4】
【0044】
なお、式(1)における「Ri,p(u)」は、p次の有理B−spline基底関数である。
【0045】
図2は、翼間流路が絞り流路となる亜音速翼型を示している。亜音速翼型は、後縁,背側スロート下流,背側スロート上流,前縁と腹側の五つの部分からなる。ピッチt,スロートs,入口角αinは、二次元翼型部112に入力するフローパターンから決まる値に固定する。この3つのデータにより、二次元翼型部112は、原点(0,0)に対する点(x1,y1)の位置を決定する。なお、入口角αinは、フローパターンの流入角βinと等しく設定される。
【0046】
また、設計変数部120に予め保存されている軸方向コード長caxと、スタッガー角γstgとにより、二次元翼型部112は、制御点CP4の座標を決定する。
【0047】
以上の点(x1,y1)と、制御点CP4の座標により、二次元翼型の大まかな体格が決定される。
【0048】
次に、図3及び図4を用いて、二次元翼型の後縁部の形状の決定方法について説明する。
【0049】
後縁部は円弧形状とする。
【0050】
図3は、その後縁円弧を示している。二次元翼型部112は、設計変数部120に保存されている後縁円弧径dTEと、後縁ウェッジ角WETEとを用い、それを設計変数部120に保存されている翼背側出口角αout_ssだけ傾けることで、後縁円弧dTEを決める。二次元翼型部112は、後縁円弧dTE の中心が、原点(0,0)を通るように、後縁円弧dTE の座標を決定する。なお、翼背側出口角αout_ssの決め方は後述する。
【0051】
図4に示すように、後縁円弧dTEは、9点の制御点P0,…,P8を持つ4次のNURBS曲線により表現できる。ここで、制御点P0は、図2及び図3の制御点CP18に対応し、制御点P8は、図2及び図3の制御点CP0に対応する。
【0052】
次に、図5を用いて、背側スロート下流部の幾何学的関係について説明する。
【0053】
背側スロート位置throatssを決めるために、a)ピッチtと、b)スロート・ピッチ比t/sに加えて、アンカバード角δと翼背側の出口角αout_ssを指定する必要がある。アンカバード角δは、背側のスロート下流の転向角で、背側スロートにおける接線(スロート線)と、背側後縁端における接線のなす角で定義される。後縁円弧の中心を基準にすると、背側スロート位置は次式(5)により求めることができる。
【0054】
【数5】
【0055】
本実施形態では、アンカバード角δを直接指定する代わりに、スロート絞り角throatssを設計変数として、設計変数部120に保存し、それを用いるようにしている。スロート絞り角throatssは、スロート部における絞り角で、背側スロートにおける接線(スロート線)と、腹側スロートすなわち腹側後縁端における接線のなす角で定義される。この二つの角度は、後縁ウェッジ角WETEが固定されている場合は独立ではなく、幾何学的関係より、アンカバード角δは、次式(6)を用いて求めることができる。
【0056】
【数6】
【0057】
スロート部での絞り角αは、大きいほど加速流となるため一般的には望ましく、一方、アンカバート角δは、小さいほど流れのはく離が起きにくいため一般的には望ましい。本実施形態で、スロート絞り角θを設計変数に選んだ理由は、アンカバート角δは、後縁ウェッジ角WETEより小さくすると、スロート絞り角θがマイナスとなり、出口スロートよりも流路幅が小さい部分ができる可能性があるためである。スロート絞り角θに正の値を指定すると、式(6)よりアンカバート角δは必ず正の値となる。
【0058】
また、翼背側出口角αout_ssには、取り得る範囲に制限があるため、設計値は、その範囲を1.0とした時の比Rαout_ssを設計変数としている。翼背側出口角αout_ssは、式(7)により決定される。
【0059】
【数7】
【0060】
また、翼背側出口角αout_ssの取り得る範囲は、次式(8)で表される。
【0061】
【数8】
【0062】
次に、図6を用いて、二次元翼型の前縁部の形状の決定方法について説明する。
【0063】
本実施形態では、二次元翼型部112は、前縁形状も4次のNURBS曲線で形成し、下流とは曲率勾配の連続性が保証されるようにする。
【0064】
図2に示したx−y座標系に対して、図6では、x’−y’座標系で示している。図2に示した入口角αin(固定値)の方向D(αin)を、x’軸とする。すなわち、x’−y’座標系は、図2に示したx−y平面において、x−y平面に直交するz軸廻りに、(90−αin)だけ回転させた座標系である。なお、図2に示した点(x1,y1)は、図6に示す前縁部の中心の位置(x1,y1)である。
【0065】
前縁は、5つの制御点P0〜P4により、NURBS曲線で表される。なお、制御点P0〜P4は、図2に示した制御点CP10〜CP14に対応する点である。
【0066】
5つの制御点P0〜P4は、二次元翼型部112は、基準線(x’軸)に対して対称に配置する。制御点P0〜P4は、以下の四つの設計変数を与えることにより決まる。
【0067】
A)前縁制御点幅1:wLE1
B)前縁制御点幅2:wLE2
C)前縁ウェッジ角1:WELE1
D)前縁ウェッジ角2:WELE2
ここでのウェッジ角は、NURBS曲線の制御点のなす角である。また、
E)前縁ウェッジ角3:WELE3
は、図6に示すように線P0−P−1と線P4−P5とのなす角である。ここで、制御点P−1,P5は、仮想的な制御点である。
【0068】
以上の5つの設計変数を用いて、二次元翼型部112は、各制御点P0〜P4の、図6上での具体的なx’軸上の座標値を、以下の式(9),式(10),式(11)、
【0069】
【数9】
【0070】
【数10】
【0071】
【数11】
【0072】
により求める。
【0073】
次に、図7を用いて、背側スロート下流,背側スロート上流,腹側の3つの部分の二次元翼型の形状の決定方法について説明する。
【0074】
上述にて説明した方法により、二次元翼型部112は、制御点CP0,CP18,CP10〜CP14の座標を決定しているが、それ以外の制御点は、設計変数部120に保持されている座標に加え、より汎用的な無次元量で与える方法により、決定するようにしている。
【0075】
ここで、一般的に、二次元翼型部112が、6点の制御点を無次元量で指定する方法について説明する。
【0076】
始めに、両端の制御点P0,P5の座標が決定された場合、二次元翼型部112は、設計変数部120に保存されているそれぞれの点での勾配(P0−P1),勾配(P5−P4)を用いて、その交点Q0を求める。そして、設計変数部120に保存されている、線(P0−Q0)の長さを1としたときの線(P0−P1)の長さの比R0とし、線(P5−Q0)の長さを1としたときの線(P5−P4)の長さの比R5を用いて、二次元翼型部112は、制御点P1,P4を決める。
【0077】
次に、二次元翼型部112は、設計変数部120に保存されている角度(Q0−P1−P4)に対する角度(P2−P1−P4)の比、角度(Q0−P4−P1)に対する角度(P3−P4−P1)の比を用いて、その交点Q1を求める。さらに、二次元翼型部112は、設計変数部120に保存されている線(P1−Q1)の長さを1としたときの線(P1−P2)の長さの比R1とし、線(P4−Q1)の長さを1としたときの線(P3−P4)の長さの比R4を用いて、制御点P2,P3を決める。
【0078】
以上の方法により、設計変数部120は、制御点P0〜P5を決定することができる。
【0079】
図2の例では、例えば、制御点CP0と、制御点CP4が決定された後、図7にて説明した方法により、設計変数部120は、最初に制御点CP1,CP3を決定し、次に、制御点CP2を決定する。また、制御点CP4と制御点CP10とから、同様にして、制御点CP5〜CP9が決定され、制御点CP18と制御点CP14から、同様にして、制御点CP15〜CP17が決定される。
【0080】
例えば、0%、25%、50%、75%、100%高さ位置の5断面の二次元翼型が必要な場合、0%、25%、50%高さ位置の3断面の二次元翼型は、上述の方法により、設計変数部120によって決定される。
【0081】
次に、図8〜図11を用いて、本実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法について説明する。
図8〜図11は、本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【0082】
ここで、流出マッハ数が超音速になり、翼間流路が絞り−拡がり流路となる遷音速翼型の設計方法について説明する。
【0083】
図8に示すように、ピッチt,スロートs,入口角αinは、二次元翼型部112に入力するフローパターンから決まる値に固定する。この3つのデータにより、二次元翼型部112は、原点(0,0)に対する点(x1,y1)の位置を決定する。なお、入口角αinは、フローパターンの流入角βinと等しく設定される。
【0084】
また、設計変数部120に予め保存されている軸方向コード長caxと、スタッガー角γstgとにより、二次元翼型部112は、制御点CP8の座標を決定する。
【0085】
以上の点(x1,y1)と、制御点CP8の座標により、二次元翼型の大まかな体格が決定される。加えて、二次元翼型部112は、拡がり流路部を設計するための、フローパターンから決まる出口マッハ数Moutを用いる。
【0086】
次に、図9に示すように、遷音速翼型は、後縁、超音速流部である背側スロート下流と腹側スロート下流、亜音速流部である背側スロート上流と腹側スロート上流、前縁の六つの部分からなる。すなわち、図2と比較すると理解されるように、腹側は、腹側スロート下流と腹側スロート上流との2つの部分からなる。その結果、制御点の数は、図2の場合に比べて増えて、制御点CP0〜CP22となる。後縁部と前縁部と亜音速部の制御点の決定方法は、図3〜図6にて説明した方法と同様であり、二次元翼型部112が決定する。
【0087】
ここで、図10に示すように、拡がり流路部はスロート部から放出される特性波が、対向する壁で反射しない条件から、二次元翼型部112が決定する。超音速流部をこの拡がりノズル形状とすることで、拡がり流路部出口では、設計マッハ数に等しい一様流状態が得られる。
【0088】
図11に示すように、この超音速ノズルを、出口マッハ数Mout、スロートs、ピッチt、比熱比γから、式(12)により決まる翼背側出口角αout_ss傾ける。
【0089】
【数12】
【0090】
これにより、図11における線(a1−a2)が決定される。そして、二次元翼型部112は、線(a1.a2)を、一点鎖線で示す線に対して線対称の位置に、線(a3−a4)を決定する。次に、二次元翼型部112は、背側の拡大ノズル出口部に、腹側と軸方向長さが合うように直線部(線(a4−a5))を加え、さらに、線(a3−a5)の線を平行移動して、線(a2−a6)を決定する。ここで、点a2の近傍では、後縁の厚みが薄く強度が不十分であるため、二次元翼型部112は、後縁厚みにあわせで出口側をカットして、図示の後縁を決定する。以上により、二次元翼型部112は、超音速流部の翼型を決定する。
【0091】
例えば、0%、25%、50%、75%、100%高さ位置の5断面の二次元翼型が必要な場合、75%、100%高さ位置の2断面の二次元翼型は、上述の方法により、設計変数部120によって決定される。
【0092】
なお、以上のようにして設計された超音速流路部は、NURBS曲線の形式となっていないため、NURBS曲線で表された亜音速翼型と合わせて面を形成することができないため、この超音速流部の翼型を、4次のNURBS曲線を用いてフィッティングする。
【0093】
次に、スタッキング部114における、NURBS曲線で定義された複数の翼型から、翼面を形成する方法について説明する。
【0094】
パラメータu方向にp次、パラメータv方向にq次のNURBS曲面は、次式(13)で定義される。
【0095】
【数13】
【0096】
ここで、式(13)において、Pi、jは三次元空間中における制御点で、nuはパラメータu方向の制御点の最大インデックス(nu+1が個数)、nvはパラメータv方向の制御点の最大インデックス(nv+1が個数)、wi、jは制御点Pi、jに対応するウェイトである。また、Ni、p(u)、Nj、q(v)は、それぞれp次、q次のB−spline基底関数であり、u、vそれぞれの方向のノットベクトルである、以下の式(14),式(15)、
【0097】
【数14】
【0098】
【数15】
【0099】
を用いて、計算することができる。
【0100】
式(14)を、四次元の同次座標系を用いて表すと、以下の式(16)のように、
【0101】
【数16】
【0102】
と、非有理のB−spline基底関数Ni、p(u)とNj、q(v)の重み付き線形和の形で表すことができる。ここでPiwは、次式(17)で表される四次元の同次座標系における制御点である。
【0103】
【数17】
【0104】
さらに、式(16)を変形すると、次式(18)のように表すことができる。
【0105】
【数18】
【0106】
ただし、
【0107】
【数19】
【0108】
とおいた。
【0109】
翼面を定義するに当たり、翼高さ方向にパラメータv、二次元翼型の翼面に沿う方向にパラメータuをとる。翼高さhにおける二次元翼型設計断面のパラメータvをvdとすると、式(18)から、二次元翼型の曲線に関して、次式(20)が導かれる。
【0110】
【数20】
【0111】
式(20)から、Qi(vd)は、二次元翼型のNURBS曲線を定義する制御点CPiを、四次元の同次座標系で表したものに等しいことがわかる。そのことと式(19)を合わせると、次式(21)が、
【0112】
【数21】
【0113】
成り立つ。
【0114】
NURBS曲面は、次数p、qとノットベクトルu、vを決めると、制御点Pi、jによって一意に決まる。式(21)の左辺CPiwは、二次元翼型設計によって決めた制御点CPiを四次元の同次座標系で表したものである。また、B−spline基底関数Nj、q(vd)も、式(3)により決まる。従って、式(21)からPi、jwがわかれば、翼面を定義するNURBS曲面を決めることができる。すなわち、スタッキング部114は、二次元の翼型を定義するNURBS曲線の、同じ番号iを持つ制御点を、各断面から一つずつ選び、翼高さ方向に積み上げた点列をつくる。次に、その点列を通る曲線を表すNURBS曲線(パラメータv方向)の制御点列を、式(21)を解くことにより求める。それをすべての番号iについて行い(パラメータu方向)、二次元マトリックスを作る。それが、二次元翼型を積み重ねて形成される翼面を定義するNURBS曲面の制御点の二次元マトリックスとなる。
【0115】
本発明では、翼高さ方向のNURBS曲線の次数qも4とし、4次のNURBS曲面で翼を定義している。このことにより、流体性能上重要な曲率勾配の連続性が、翼面のあらゆる方向に対して保証される。NURBS曲線の次数qは、5次以上とすることができる。NURBS曲線の次数qが増えると、計算処理に時間を要することとなるが、曲面の精度を上げることができる。
【0116】
翼高さ方向の制御点の数nv+1は、翼設計断面数と等しくした。そのことにより、式(21)の制御点Pi、jwは、線形連立方程式を解くことにより、一意に決まる。すなわち、三次元翼の翼面は、設計した二次元翼型曲線を必ず通る。4次のNURBS曲線を定義するためには、最低5点の制御点が必要であるため、二次元翼型は最低でも5断面設計される必要がある。
【0117】
なお、翼面を形成する場合、蒸気タービンの長翼のように、遷音速翼型と亜音速翼型とが翼高さ方向に混在している場合には、曲線の制御点の数とノットベクトルが異なるため、式(21)を解くことができない。そのため、遷音速翼型と亜音速翼型とが混在する場合には、スタッキング部114は、NURBS曲面を生成する前に、両者のNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを、ノットベクトルの成分の挿入して統一する。これにより、遷音速翼型と亜音速翼型とが翼高さ方向に混在している場合でも、5断面の二次元翼型のNURBS曲線から、三次元翼のNURBS曲面を求めることができる。
【0118】
次に、図12を用いて、本実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼の形状について説明する。
図12は、本発明の一実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼の形状を示す翼断面のスタッキング図である。
【0119】
前述したように、本実施形態では、二次元翼型部112は、5断面の二次元翼型のNURBS曲線を決定する。ここでは、0%、25%、50%、75%、100%高さ位置の5断面についてNURBS曲線を決定している。そして、スタッキング部114は、5断面の二次元翼型のNURBS曲線から、三次元翼のNURBS曲面を求める。
【0120】
図12は、スタッキング部114が求めたNURBS曲面に対して、5%高さ毎の21断面の二次元形状を求め、それ高さ方向にスタッキングしたものである。
翼型のスタッキング図
内周側0%、25%高さ位置の2断面が亜音速翼型であり、50%、75%、100%高さ位置の3断面が遷音速翼型であるため、翼のねじりが大きく、また高さ方向に種類の異なる二種類の翼が適用されているにもかかわらず、5断面の設計断面から、滑らかな翼面が形成されていることが確認できる。
【0121】
次に、図13を用いて、本実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼を用いたターボ機械の構成について説明する。ここでは、ターボ機械として、軸流タービンを例にして説明するとともに、そのタービン段落部の基本構造について説明する。
図13は、本発明の一実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼を用いたターボ機械の構成を示す断面図である。
【0122】
図13に示すように、軸流タービンのタービン段落は、作動流体流れ方向上流側(以下単に上流側と記載する)の高圧部P0と作動流体流れ方向下流側(以下単に下流側と記載する)の低圧部P1との間に設けられている。タービン段落は、タービンケーシング4の内周側に固設された外周側ダイアフラム5と内周側ダイアフラム6との間に固設された静翼3と、タービン中心軸50周りに回転するタービンロータ1に設けられた動翼2とからなる。タービン段落が複数の段落から構成される軸流タービンの場合、この段落構造が作動流体流れ方向に複数回繰り返されて設けられている。各段落において、静翼の下流側に動翼が対向する。
【0123】
動翼2のタービン径方向外周側の先端(以下単に外周端と記載する)には、シュラウド7が設けられている。図1に示すように、軸流タービンは、タービンロータ1及び内周側ダイアフラム6,9のタービン径方向外周側(以下単に外周側と記載する)壁面6a,9aと外周側ダイアフラム5,8及びシュラウド7のタービン径方向内周側(以下単に内周側と記載する)壁面5b,8b,7b、との間に作動流体が流れる円筒状あるいは部分円錐状のタービン翼室12が形成されている。
【0124】
図13に示すように、外周側ダイアフラム5,8の内周側壁面5b,8b、およびシュラウド7の内周側壁面7bは、連なってタービン翼室12の外周側壁面12bを構成しており、タービン翼室12の外側、即ち外周側壁面12bとタービンケーシング4との間にタービン翼室12を覆うようにタービン周方向(以下、単に周方向と記載する)に沿った環状の抽気室15が形成されている。抽気室15の一部には抽気配管(図示せず)が接続されている。
【0125】
図13に示すように、抽気室15は、外周側ダイアフラム5,8の間に形成されている。また、作動流体流れ方向に連設された、外周側ダイアフラム5の下流側端部13と外周側ダイアフラム8の上流側端部14との間には周方向に沿って間隙が設けられており、この間隙は抽気室15とタービン翼室12とを連通する抽気口16を構成している。
【0126】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来設計が困難で、設計のための時間と熟練を要していた、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できるようになる。損失が小さい翼型を設計するためには、翼面圧力分布を滑らかにして、翼面境界層が急激に厚くなることや、はく離することを防止する必要がある。圧力分布には翼面曲率が強く影響する。滑らかな翼面圧力分布を実現するためには、滑らかな曲率分布、すなわち曲率の勾配の連続性が重要である。本実施形態では、NURBS曲面の次数を4次以上とすることで、曲面上のあらゆる方向で、曲率の勾配の連続性が保証されるため、三次元的な翼面圧力分布が滑らかになる。そのため、翼面境界層が急激に厚くなったり、はく離することを抑制でき、性能が良い翼が設計可能となる。
【符号の説明】
【0127】
110…翼形状形成部
112…二次元翼型設計部
114…スタッキング部
120…設計変数部
130,140,170…評価部
150…最適化部
160…CAD部
【技術分野】
【0001】
本発明は、翼設計装置,翼設計手法,それを用いて設計された翼,及びその翼を用いたターボ機械に係り、特に、蒸気タービンやガスタービン等のターボ機械の翼の設計に好適な翼設計装置,翼設計手法,それを用いて設計された翼,及びその翼を用いたターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の流体が低圧部に向かって膨張する時に生じる運動エネルギーを、静翼と動翼から構成される段落によりロータの回転エネルギーに変える機能を持つタービンにおいては、そのエネルギー変換効率を100%に近づけるためには、エネルギー損失の小さい静翼および動翼の形状を設計することが重要である。一方で、翼を設計するときには、強度,振動,構造上の制約条件を満たすように設計する必要がある。
【0003】
また、出力増加,タービンのコンパクト化,効率向上を目的として、翼長を大きくしたいという要求がある。翼長を大きくできると、単段あたりを流れる作動流体の質量流量を増加させることができ、出力増加が可能となる。また、同じ出力であれば、同じ流量を流すためのフロー数を減らすことが可能となり、タービンを小さくできる。さらに、最終段の動翼の場合、翼長を長くすることで、段落流出速度を小さくでき、それにより出口から捨てる運動エネルギーを小さくできるため、タービン効率が向上できる。
【0004】
一方で、翼長が大きい翼においては、内周側の翼型と外周側の翼型のねじりが大きくなる、外周側の流出マッハ数が超音速となる、遠心力による応力が大きくなる、などにより、翼の設計が困難となる。そのため、翼長の長い翼に対しても、必要とされる後続条件を満たし、かつ性能の良い翼を効率的かつ、間違いなく設計できる手法が求められている。
【0005】
なお、滑らかな翼面圧力分布を実現するためには、滑らかな曲率分布、すなわち曲率の勾配の連続性が重要であることが指摘されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Korakianitis、 P。 Papagiannidis、 Surface-Curvature-Distribution Effects on Turbine Cascade Performance、 Journal of Turbomachinery、 Vol。115、 pp。334-341 (1993-4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蒸気タービンやガスタービン等のターボ機械の翼の三次元的な形状は、球や立方体の単純な組み合わせではなく、閉じた自由曲面により形成される。そのため、形状の自由度は無限であり、その面を三次元的に制御して、性能の良い翼を設計することは一般的には時間がかかる。そのため、特に軸流型のターボ機械においては、翼を、円筒面や円錐面、もしくは等流量面で切ってできる翼型と呼ばれる二次元断面を設計し、それを、各断面の図心や後縁端などを基準に翼高さ方向に積み上げて、三次元的な翼面を形成する手法がとられている。
【0008】
この翼設計手法は、流れが直感的に理解し易い二次元断面で翼型を設計するために、三次元的な面を直接設計する手法に対し、設計しやすい利点があるが、一方で、翼が長くなった場合、複数の翼型をスタッキングすることにより形成された面がうねり易く、翼型を設計する時に、高さ方向の近接断面を意識しながら設計する必要があり、設計に時間がかかる。
【0009】
蒸気タービンの最終段動翼のように、翼の根元径を先端径で割った値で定義されるボス比が小さく、翼長が大きくなると、以下のような理由で、滑らかな翼面の形成が困難となる。まず始めに、内周側と外周側の動翼周速が大きく異なるため、動翼の流入角が大きく変化し、その流れ角に翼の入口角を合わせるために、内周側の翼型と外周側の翼型のねじりが大きくなる。また、内周側の翼型断面の流出マッハは亜音速であるため翼間流路が絞り流路となる翼型を設計するのに対し、外周側の流出マッハ数は超音速となるため翼間流路は絞り拡がり流路となる翼型を設計する必要がある。このように、小ボス比の長翼では、このように設計法が異なる翼型を翼高さ方向につなぐ必要がある。加えて、遠心力による応力が大きくなるため、内周側の翼型断面積に対する、外周側の断面積の比が小さくなる。そのため、外周側の翼型は、板のようにコード方向に長く、コード方向に垂直方向には薄い形になる。そのため、前縁、後縁位置を抑えたままの図心の調整が難しく、図心基準でスタッキングをして、滑らかな翼面を形成することが難しくなる。そのため、滑らかな翼型断面を形成するために、一般的には、設計する高さ方向の翼型断面数を増加させる必要があるが、そのことは逆に、翼型設計時にも、スタッキング調整時にも、設計自由度を増やすことにつながり、設計時間を増大させる。
【0010】
本発明の目的は、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できる翼設計装置,翼設計手法,それを用いて設計された翼,及びその翼を用いたターボ機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ターボ機械の翼を設計する翼設計装置であって、熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定する二次元翼型設計部と、該二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得るスタッキング部とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できるものとなる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記スタッキング部により得られた三次元翼に対して算出された一次元遠心応力が翼材料の許容応力以下であることを拘束条件として、前記二次元翼型設計部により決定された二次元翼型に対する流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を決定する最適化部とを備え、前記二次元翼型設計部は、前記最適部により決定された翼型の設計変数を用いて、再度、二次元翼型を決定するようにしたものである。
【0013】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記スタッキング部は、前記二次元翼型設計部により決定された複数の翼高さ位置の異なる二次元断面を示すNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルが一致しない場合には、すべてのNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを等しくした上で、4次のNURBS曲面を生成するようにしたものである。
【0014】
(4)また、上記目的を達成するために、本発明は、ターボ機械の翼を設計する翼設計方法であって、代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、翼を設計するようにしたものである。
かかる方法により、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できるものとなる。
【0015】
(5)上記(4)において、好ましくは、二次元翼型設計部により、熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定し、スタッキング部により、前記二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得るようにしたものである。
【0016】
(6)上記(5)において、好ましくは、前記二次元翼型は、内周側は絞り流路を持つ亜音速翼型であり、外周側は絞り−拡がり流路を持つ遷音速翼型であり、前記拡がり流路は流出マッハ数に応じた形状であり、前記スタッキング部は、前記二次元翼型設計部により決定された複数の翼高さ位置の異なる二次元断面を示すNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルが一致しない場合には、すべてのNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを等しくした上で、4次のNURBS曲面を生成するようにしたものである。
【0017】
(7)上記(5)において、好ましくは、前記二次元翼型設計部は、二次元断面を定義する4次のNURBS曲線が、上流工程で決まる流入角、スロート・ピッチ比を必ず満足するように決定するようにしたものである。
【0018】
(8)上記(4)において、好ましくは、最適化部により、二次元断面を定義する4次のNURBS曲線の設計変数を、翼型損失最小化を目的とした数値的な最適化法を用いて決定し、前記二次元翼型設計部により、前記最適部により決定された翼型の設計変数を用いて、再度、二次元翼型を決定するようにしたものである。
【0019】
(9)上記(8)において、好ましくは、前記最適化部により、前記スタッキング部により得られた三次元翼に対して算出された一次元遠心応力が翼材料の許容応力以下であることを拘束条件として、前記二次元翼型設計部により決定された二次元翼型に対する流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を決定するようにしたものである。
【0020】
(10)また、上記目的を達成するために、本発明は、ターボ機械の翼を設計する翼設計方法を用いて設計された翼であって、代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより設計したものである。
かかる構成により、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を得ることができるものとなる。
【0021】
(11)また、上記目的を達成するために、本発明は、タービンケーシングの内周側に固設された静翼と、タービン中心軸周りに回転するタービンロータに設けられた動翼とからなるターボ機械であって、前記動翼若しくは静翼は、代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより設計された翼としたものである。
かかる構成により、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を得ることができるものとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による翼設計装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図9】本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図10】本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図11】本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【図12】本発明の一実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼の形状を示す翼断面のスタッキング図である。
【図13】本発明の一実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼を用いたターボ機械の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図13を用いて、本発明の一実施形態による翼設計装置の構成及び動作について説明する。なお、以下においては、動翼の設計を例にとって説明する。
【0025】
最初に、図1を用いて、本実施形態による翼設計装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による翼設計装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
本実施形態による翼設計装置は、翼形状形成部110と、設計変数部120と、評価部130,140,170と、最適化部150と、CAD部160とを備えている。
【0027】
翼形状形成部110は、翼設計の上流工程である熱設計からフローパターン(速度三角形)の情報を受けて、設計変数部120に保持された設計変数を用いて、三次元の翼形状を設計する。翼形状形成部110は、二次元翼型設計部112と、スタッキング部114とを備えている。
【0028】
二次元翼型設計部112は、熱設計からフローパターン(速度三角形)の情報を受けて、設計変数部120に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置で二次元翼型を決定する。二次元翼型設計部112によって設計された二次元翼型は、1本の4次のNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲線を用いて表現する。なお、二次元翼型設計部112の動作については、図2〜図11を用いて後述する。
【0029】
スタッキング部114は、二次元翼型設計部112によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、三次元翼の形状データを得る。
【0030】
評価部130は、二次元翼型設計部112によって設計された二次元翼型に対して、二次元関数値による流体解析を行い、損失を算出する。また、評価部140は、スタッキング部114により得られた三次元翼に対して、一次元遠心応力を算出する。最適化部150は、遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法を用い、評価部140により算出された一次元遠心応力が、翼材料の許容応力以下であることなどを拘束条件として、評価部130により算出された流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を自動的に決定する。決定された翼型の設計変数は、設計変数部120に保存される。ただし、後縁厚みなどの、製造上や強度上の制約から予め最適値が分かっている変数に関しては、最適化の対象とはせず固定入力値として、設計変数部120に保存されている。
【0031】
二次元翼型設計部112は、フローパターン(速度三角形)の情報を受けて、最適化部150により決定され、設計変数部120に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置で二次元翼型を決定する。スタッキング部114は、二次元翼型設計部112によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、三次元翼の形状データを得る。そして、最適化部150において、再度、流体損失を最小とするような設計変数を決定する。これらの繰り返しにより、最終的な三次元翼型のデータが求められる。
【0032】
本実施形態において特徴的なのは、二次元翼型設計部112にて決定される二次元翼型の数が従来よりも少なくなっている。例えば、ボス比が小さく、翼長が大きい翼の場合、従来は、長翼の高さ方向を5%高さ毎に二次元翼型が必要となっている。すなわち、21断面の翼型が必要となる。それに対して、本実施形態では、例えば、0%、25%、50%、75%、100%高さ位置の5断面の二次元翼型のみ決定する。そして、5断面の各翼型は、4次のNURBS曲線を用いて表現する。さらに、スタッキング部114では、5断面のNURBS曲線で表される二次元翼型を高さ方向に積み重ねて、三次元翼型のデータをNURBS曲面で表すようにしている。
【0033】
翼形状設計部110は、得られた三次元翼のデータを、CAD用の汎用データとして出力する。CAD用の汎用データとしては、例えば、IGES(Initial Graphics Exchange Specification)形式データを用いることができる。IGES形式のデータは、ANSI(American National Standrds Institure;米国標準規格協会)により策定されたものである。また、翼形状設計部110は、同時に、流体解析用格子の形のデータも出力する。
【0034】
CAD部160は、翼のCAD用の汎用データに、カバー,タイボス,プラットフォーム,翼根部などのデータを用いて、CADデータを生成する。評価部170は、生成されたCADデータを用いて、有限要素法により応力などの強度特性を計算し、また、固有振動数などの振動特性を計算する。また、評価部170は、流体解析用格子の形のデータを用いて、三次元流体解析手法により、段落効率などの流体性能を評価する。
【0035】
次に、図2〜図11を用いて、本実施形態の翼設計装置による翼の二次元翼型の決定方法について説明する。
最初に、図2〜図7を用いて、本実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法について説明する。
図2〜図7は、本発明の一実施形態の翼設計装置による亜音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【0036】
最初に、本実施形態で用いるp次のNURBS曲線は、次式(1)のように、制御点の重み付き線形和の形で定義される。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、式(1)における「CPi」は制御点で、「n」はその最大インデックス(n+1が個数)、「wi」は制御点CPiに対応するウェイトであり、大きくすると曲線をその制御点に近づける効果を持つ。
【0039】
また、式(1)において、「Ni,p(u)」は、p次のB−spline基底関数であり、次式(2),式(3)により定義される。
【0040】
【数2】
【0041】
【数3】
【0042】
ここで、「ui」はノットベクトルと呼ばれる、aからbまで減少しないm+1個の実数列である。なお、m=p+n+1である。
【0043】
【数4】
【0044】
なお、式(1)における「Ri,p(u)」は、p次の有理B−spline基底関数である。
【0045】
図2は、翼間流路が絞り流路となる亜音速翼型を示している。亜音速翼型は、後縁,背側スロート下流,背側スロート上流,前縁と腹側の五つの部分からなる。ピッチt,スロートs,入口角αinは、二次元翼型部112に入力するフローパターンから決まる値に固定する。この3つのデータにより、二次元翼型部112は、原点(0,0)に対する点(x1,y1)の位置を決定する。なお、入口角αinは、フローパターンの流入角βinと等しく設定される。
【0046】
また、設計変数部120に予め保存されている軸方向コード長caxと、スタッガー角γstgとにより、二次元翼型部112は、制御点CP4の座標を決定する。
【0047】
以上の点(x1,y1)と、制御点CP4の座標により、二次元翼型の大まかな体格が決定される。
【0048】
次に、図3及び図4を用いて、二次元翼型の後縁部の形状の決定方法について説明する。
【0049】
後縁部は円弧形状とする。
【0050】
図3は、その後縁円弧を示している。二次元翼型部112は、設計変数部120に保存されている後縁円弧径dTEと、後縁ウェッジ角WETEとを用い、それを設計変数部120に保存されている翼背側出口角αout_ssだけ傾けることで、後縁円弧dTEを決める。二次元翼型部112は、後縁円弧dTE の中心が、原点(0,0)を通るように、後縁円弧dTE の座標を決定する。なお、翼背側出口角αout_ssの決め方は後述する。
【0051】
図4に示すように、後縁円弧dTEは、9点の制御点P0,…,P8を持つ4次のNURBS曲線により表現できる。ここで、制御点P0は、図2及び図3の制御点CP18に対応し、制御点P8は、図2及び図3の制御点CP0に対応する。
【0052】
次に、図5を用いて、背側スロート下流部の幾何学的関係について説明する。
【0053】
背側スロート位置throatssを決めるために、a)ピッチtと、b)スロート・ピッチ比t/sに加えて、アンカバード角δと翼背側の出口角αout_ssを指定する必要がある。アンカバード角δは、背側のスロート下流の転向角で、背側スロートにおける接線(スロート線)と、背側後縁端における接線のなす角で定義される。後縁円弧の中心を基準にすると、背側スロート位置は次式(5)により求めることができる。
【0054】
【数5】
【0055】
本実施形態では、アンカバード角δを直接指定する代わりに、スロート絞り角throatssを設計変数として、設計変数部120に保存し、それを用いるようにしている。スロート絞り角throatssは、スロート部における絞り角で、背側スロートにおける接線(スロート線)と、腹側スロートすなわち腹側後縁端における接線のなす角で定義される。この二つの角度は、後縁ウェッジ角WETEが固定されている場合は独立ではなく、幾何学的関係より、アンカバード角δは、次式(6)を用いて求めることができる。
【0056】
【数6】
【0057】
スロート部での絞り角αは、大きいほど加速流となるため一般的には望ましく、一方、アンカバート角δは、小さいほど流れのはく離が起きにくいため一般的には望ましい。本実施形態で、スロート絞り角θを設計変数に選んだ理由は、アンカバート角δは、後縁ウェッジ角WETEより小さくすると、スロート絞り角θがマイナスとなり、出口スロートよりも流路幅が小さい部分ができる可能性があるためである。スロート絞り角θに正の値を指定すると、式(6)よりアンカバート角δは必ず正の値となる。
【0058】
また、翼背側出口角αout_ssには、取り得る範囲に制限があるため、設計値は、その範囲を1.0とした時の比Rαout_ssを設計変数としている。翼背側出口角αout_ssは、式(7)により決定される。
【0059】
【数7】
【0060】
また、翼背側出口角αout_ssの取り得る範囲は、次式(8)で表される。
【0061】
【数8】
【0062】
次に、図6を用いて、二次元翼型の前縁部の形状の決定方法について説明する。
【0063】
本実施形態では、二次元翼型部112は、前縁形状も4次のNURBS曲線で形成し、下流とは曲率勾配の連続性が保証されるようにする。
【0064】
図2に示したx−y座標系に対して、図6では、x’−y’座標系で示している。図2に示した入口角αin(固定値)の方向D(αin)を、x’軸とする。すなわち、x’−y’座標系は、図2に示したx−y平面において、x−y平面に直交するz軸廻りに、(90−αin)だけ回転させた座標系である。なお、図2に示した点(x1,y1)は、図6に示す前縁部の中心の位置(x1,y1)である。
【0065】
前縁は、5つの制御点P0〜P4により、NURBS曲線で表される。なお、制御点P0〜P4は、図2に示した制御点CP10〜CP14に対応する点である。
【0066】
5つの制御点P0〜P4は、二次元翼型部112は、基準線(x’軸)に対して対称に配置する。制御点P0〜P4は、以下の四つの設計変数を与えることにより決まる。
【0067】
A)前縁制御点幅1:wLE1
B)前縁制御点幅2:wLE2
C)前縁ウェッジ角1:WELE1
D)前縁ウェッジ角2:WELE2
ここでのウェッジ角は、NURBS曲線の制御点のなす角である。また、
E)前縁ウェッジ角3:WELE3
は、図6に示すように線P0−P−1と線P4−P5とのなす角である。ここで、制御点P−1,P5は、仮想的な制御点である。
【0068】
以上の5つの設計変数を用いて、二次元翼型部112は、各制御点P0〜P4の、図6上での具体的なx’軸上の座標値を、以下の式(9),式(10),式(11)、
【0069】
【数9】
【0070】
【数10】
【0071】
【数11】
【0072】
により求める。
【0073】
次に、図7を用いて、背側スロート下流,背側スロート上流,腹側の3つの部分の二次元翼型の形状の決定方法について説明する。
【0074】
上述にて説明した方法により、二次元翼型部112は、制御点CP0,CP18,CP10〜CP14の座標を決定しているが、それ以外の制御点は、設計変数部120に保持されている座標に加え、より汎用的な無次元量で与える方法により、決定するようにしている。
【0075】
ここで、一般的に、二次元翼型部112が、6点の制御点を無次元量で指定する方法について説明する。
【0076】
始めに、両端の制御点P0,P5の座標が決定された場合、二次元翼型部112は、設計変数部120に保存されているそれぞれの点での勾配(P0−P1),勾配(P5−P4)を用いて、その交点Q0を求める。そして、設計変数部120に保存されている、線(P0−Q0)の長さを1としたときの線(P0−P1)の長さの比R0とし、線(P5−Q0)の長さを1としたときの線(P5−P4)の長さの比R5を用いて、二次元翼型部112は、制御点P1,P4を決める。
【0077】
次に、二次元翼型部112は、設計変数部120に保存されている角度(Q0−P1−P4)に対する角度(P2−P1−P4)の比、角度(Q0−P4−P1)に対する角度(P3−P4−P1)の比を用いて、その交点Q1を求める。さらに、二次元翼型部112は、設計変数部120に保存されている線(P1−Q1)の長さを1としたときの線(P1−P2)の長さの比R1とし、線(P4−Q1)の長さを1としたときの線(P3−P4)の長さの比R4を用いて、制御点P2,P3を決める。
【0078】
以上の方法により、設計変数部120は、制御点P0〜P5を決定することができる。
【0079】
図2の例では、例えば、制御点CP0と、制御点CP4が決定された後、図7にて説明した方法により、設計変数部120は、最初に制御点CP1,CP3を決定し、次に、制御点CP2を決定する。また、制御点CP4と制御点CP10とから、同様にして、制御点CP5〜CP9が決定され、制御点CP18と制御点CP14から、同様にして、制御点CP15〜CP17が決定される。
【0080】
例えば、0%、25%、50%、75%、100%高さ位置の5断面の二次元翼型が必要な場合、0%、25%、50%高さ位置の3断面の二次元翼型は、上述の方法により、設計変数部120によって決定される。
【0081】
次に、図8〜図11を用いて、本実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法について説明する。
図8〜図11は、本発明の一実施形態の翼設計装置による遷音速翼型翼の二次元翼型の決定方法の説明図である。
【0082】
ここで、流出マッハ数が超音速になり、翼間流路が絞り−拡がり流路となる遷音速翼型の設計方法について説明する。
【0083】
図8に示すように、ピッチt,スロートs,入口角αinは、二次元翼型部112に入力するフローパターンから決まる値に固定する。この3つのデータにより、二次元翼型部112は、原点(0,0)に対する点(x1,y1)の位置を決定する。なお、入口角αinは、フローパターンの流入角βinと等しく設定される。
【0084】
また、設計変数部120に予め保存されている軸方向コード長caxと、スタッガー角γstgとにより、二次元翼型部112は、制御点CP8の座標を決定する。
【0085】
以上の点(x1,y1)と、制御点CP8の座標により、二次元翼型の大まかな体格が決定される。加えて、二次元翼型部112は、拡がり流路部を設計するための、フローパターンから決まる出口マッハ数Moutを用いる。
【0086】
次に、図9に示すように、遷音速翼型は、後縁、超音速流部である背側スロート下流と腹側スロート下流、亜音速流部である背側スロート上流と腹側スロート上流、前縁の六つの部分からなる。すなわち、図2と比較すると理解されるように、腹側は、腹側スロート下流と腹側スロート上流との2つの部分からなる。その結果、制御点の数は、図2の場合に比べて増えて、制御点CP0〜CP22となる。後縁部と前縁部と亜音速部の制御点の決定方法は、図3〜図6にて説明した方法と同様であり、二次元翼型部112が決定する。
【0087】
ここで、図10に示すように、拡がり流路部はスロート部から放出される特性波が、対向する壁で反射しない条件から、二次元翼型部112が決定する。超音速流部をこの拡がりノズル形状とすることで、拡がり流路部出口では、設計マッハ数に等しい一様流状態が得られる。
【0088】
図11に示すように、この超音速ノズルを、出口マッハ数Mout、スロートs、ピッチt、比熱比γから、式(12)により決まる翼背側出口角αout_ss傾ける。
【0089】
【数12】
【0090】
これにより、図11における線(a1−a2)が決定される。そして、二次元翼型部112は、線(a1.a2)を、一点鎖線で示す線に対して線対称の位置に、線(a3−a4)を決定する。次に、二次元翼型部112は、背側の拡大ノズル出口部に、腹側と軸方向長さが合うように直線部(線(a4−a5))を加え、さらに、線(a3−a5)の線を平行移動して、線(a2−a6)を決定する。ここで、点a2の近傍では、後縁の厚みが薄く強度が不十分であるため、二次元翼型部112は、後縁厚みにあわせで出口側をカットして、図示の後縁を決定する。以上により、二次元翼型部112は、超音速流部の翼型を決定する。
【0091】
例えば、0%、25%、50%、75%、100%高さ位置の5断面の二次元翼型が必要な場合、75%、100%高さ位置の2断面の二次元翼型は、上述の方法により、設計変数部120によって決定される。
【0092】
なお、以上のようにして設計された超音速流路部は、NURBS曲線の形式となっていないため、NURBS曲線で表された亜音速翼型と合わせて面を形成することができないため、この超音速流部の翼型を、4次のNURBS曲線を用いてフィッティングする。
【0093】
次に、スタッキング部114における、NURBS曲線で定義された複数の翼型から、翼面を形成する方法について説明する。
【0094】
パラメータu方向にp次、パラメータv方向にq次のNURBS曲面は、次式(13)で定義される。
【0095】
【数13】
【0096】
ここで、式(13)において、Pi、jは三次元空間中における制御点で、nuはパラメータu方向の制御点の最大インデックス(nu+1が個数)、nvはパラメータv方向の制御点の最大インデックス(nv+1が個数)、wi、jは制御点Pi、jに対応するウェイトである。また、Ni、p(u)、Nj、q(v)は、それぞれp次、q次のB−spline基底関数であり、u、vそれぞれの方向のノットベクトルである、以下の式(14),式(15)、
【0097】
【数14】
【0098】
【数15】
【0099】
を用いて、計算することができる。
【0100】
式(14)を、四次元の同次座標系を用いて表すと、以下の式(16)のように、
【0101】
【数16】
【0102】
と、非有理のB−spline基底関数Ni、p(u)とNj、q(v)の重み付き線形和の形で表すことができる。ここでPiwは、次式(17)で表される四次元の同次座標系における制御点である。
【0103】
【数17】
【0104】
さらに、式(16)を変形すると、次式(18)のように表すことができる。
【0105】
【数18】
【0106】
ただし、
【0107】
【数19】
【0108】
とおいた。
【0109】
翼面を定義するに当たり、翼高さ方向にパラメータv、二次元翼型の翼面に沿う方向にパラメータuをとる。翼高さhにおける二次元翼型設計断面のパラメータvをvdとすると、式(18)から、二次元翼型の曲線に関して、次式(20)が導かれる。
【0110】
【数20】
【0111】
式(20)から、Qi(vd)は、二次元翼型のNURBS曲線を定義する制御点CPiを、四次元の同次座標系で表したものに等しいことがわかる。そのことと式(19)を合わせると、次式(21)が、
【0112】
【数21】
【0113】
成り立つ。
【0114】
NURBS曲面は、次数p、qとノットベクトルu、vを決めると、制御点Pi、jによって一意に決まる。式(21)の左辺CPiwは、二次元翼型設計によって決めた制御点CPiを四次元の同次座標系で表したものである。また、B−spline基底関数Nj、q(vd)も、式(3)により決まる。従って、式(21)からPi、jwがわかれば、翼面を定義するNURBS曲面を決めることができる。すなわち、スタッキング部114は、二次元の翼型を定義するNURBS曲線の、同じ番号iを持つ制御点を、各断面から一つずつ選び、翼高さ方向に積み上げた点列をつくる。次に、その点列を通る曲線を表すNURBS曲線(パラメータv方向)の制御点列を、式(21)を解くことにより求める。それをすべての番号iについて行い(パラメータu方向)、二次元マトリックスを作る。それが、二次元翼型を積み重ねて形成される翼面を定義するNURBS曲面の制御点の二次元マトリックスとなる。
【0115】
本発明では、翼高さ方向のNURBS曲線の次数qも4とし、4次のNURBS曲面で翼を定義している。このことにより、流体性能上重要な曲率勾配の連続性が、翼面のあらゆる方向に対して保証される。NURBS曲線の次数qは、5次以上とすることができる。NURBS曲線の次数qが増えると、計算処理に時間を要することとなるが、曲面の精度を上げることができる。
【0116】
翼高さ方向の制御点の数nv+1は、翼設計断面数と等しくした。そのことにより、式(21)の制御点Pi、jwは、線形連立方程式を解くことにより、一意に決まる。すなわち、三次元翼の翼面は、設計した二次元翼型曲線を必ず通る。4次のNURBS曲線を定義するためには、最低5点の制御点が必要であるため、二次元翼型は最低でも5断面設計される必要がある。
【0117】
なお、翼面を形成する場合、蒸気タービンの長翼のように、遷音速翼型と亜音速翼型とが翼高さ方向に混在している場合には、曲線の制御点の数とノットベクトルが異なるため、式(21)を解くことができない。そのため、遷音速翼型と亜音速翼型とが混在する場合には、スタッキング部114は、NURBS曲面を生成する前に、両者のNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを、ノットベクトルの成分の挿入して統一する。これにより、遷音速翼型と亜音速翼型とが翼高さ方向に混在している場合でも、5断面の二次元翼型のNURBS曲線から、三次元翼のNURBS曲面を求めることができる。
【0118】
次に、図12を用いて、本実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼の形状について説明する。
図12は、本発明の一実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼の形状を示す翼断面のスタッキング図である。
【0119】
前述したように、本実施形態では、二次元翼型部112は、5断面の二次元翼型のNURBS曲線を決定する。ここでは、0%、25%、50%、75%、100%高さ位置の5断面についてNURBS曲線を決定している。そして、スタッキング部114は、5断面の二次元翼型のNURBS曲線から、三次元翼のNURBS曲面を求める。
【0120】
図12は、スタッキング部114が求めたNURBS曲面に対して、5%高さ毎の21断面の二次元形状を求め、それ高さ方向にスタッキングしたものである。
翼型のスタッキング図
内周側0%、25%高さ位置の2断面が亜音速翼型であり、50%、75%、100%高さ位置の3断面が遷音速翼型であるため、翼のねじりが大きく、また高さ方向に種類の異なる二種類の翼が適用されているにもかかわらず、5断面の設計断面から、滑らかな翼面が形成されていることが確認できる。
【0121】
次に、図13を用いて、本実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼を用いたターボ機械の構成について説明する。ここでは、ターボ機械として、軸流タービンを例にして説明するとともに、そのタービン段落部の基本構造について説明する。
図13は、本発明の一実施形態の翼設計装置により設計され三次元翼を用いたターボ機械の構成を示す断面図である。
【0122】
図13に示すように、軸流タービンのタービン段落は、作動流体流れ方向上流側(以下単に上流側と記載する)の高圧部P0と作動流体流れ方向下流側(以下単に下流側と記載する)の低圧部P1との間に設けられている。タービン段落は、タービンケーシング4の内周側に固設された外周側ダイアフラム5と内周側ダイアフラム6との間に固設された静翼3と、タービン中心軸50周りに回転するタービンロータ1に設けられた動翼2とからなる。タービン段落が複数の段落から構成される軸流タービンの場合、この段落構造が作動流体流れ方向に複数回繰り返されて設けられている。各段落において、静翼の下流側に動翼が対向する。
【0123】
動翼2のタービン径方向外周側の先端(以下単に外周端と記載する)には、シュラウド7が設けられている。図1に示すように、軸流タービンは、タービンロータ1及び内周側ダイアフラム6,9のタービン径方向外周側(以下単に外周側と記載する)壁面6a,9aと外周側ダイアフラム5,8及びシュラウド7のタービン径方向内周側(以下単に内周側と記載する)壁面5b,8b,7b、との間に作動流体が流れる円筒状あるいは部分円錐状のタービン翼室12が形成されている。
【0124】
図13に示すように、外周側ダイアフラム5,8の内周側壁面5b,8b、およびシュラウド7の内周側壁面7bは、連なってタービン翼室12の外周側壁面12bを構成しており、タービン翼室12の外側、即ち外周側壁面12bとタービンケーシング4との間にタービン翼室12を覆うようにタービン周方向(以下、単に周方向と記載する)に沿った環状の抽気室15が形成されている。抽気室15の一部には抽気配管(図示せず)が接続されている。
【0125】
図13に示すように、抽気室15は、外周側ダイアフラム5,8の間に形成されている。また、作動流体流れ方向に連設された、外周側ダイアフラム5の下流側端部13と外周側ダイアフラム8の上流側端部14との間には周方向に沿って間隙が設けられており、この間隙は抽気室15とタービン翼室12とを連通する抽気口16を構成している。
【0126】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来設計が困難で、設計のための時間と熟練を要していた、ボス比が小さく、翼長が大きい翼に対しても、滑らかな翼面を効率的に設計できるようになる。損失が小さい翼型を設計するためには、翼面圧力分布を滑らかにして、翼面境界層が急激に厚くなることや、はく離することを防止する必要がある。圧力分布には翼面曲率が強く影響する。滑らかな翼面圧力分布を実現するためには、滑らかな曲率分布、すなわち曲率の勾配の連続性が重要である。本実施形態では、NURBS曲面の次数を4次以上とすることで、曲面上のあらゆる方向で、曲率の勾配の連続性が保証されるため、三次元的な翼面圧力分布が滑らかになる。そのため、翼面境界層が急激に厚くなったり、はく離することを抑制でき、性能が良い翼が設計可能となる。
【符号の説明】
【0127】
110…翼形状形成部
112…二次元翼型設計部
114…スタッキング部
120…設計変数部
130,140,170…評価部
150…最適化部
160…CAD部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械の翼を設計する翼設計装置であって、
熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定する二次元翼型設計部と、
該二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得るスタッキング部とを備えることを特徴とする翼設計装置。
【請求項2】
請求項1記載の翼設計装置において、
前記スタッキング部により得られた三次元翼に対して算出された一次元遠心応力が翼材料の許容応力以下であることを拘束条件として、前記二次元翼型設計部により決定された二次元翼型に対する流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を決定する最適化部とを備え、
前記二次元翼型設計部は、前記最適部により決定された翼型の設計変数を用いて、再度、二次元翼型を決定することを特徴とする翼設計装置。
【請求項3】
請求項1記載の翼設計装置において、
前記スタッキング部は、前記二次元翼型設計部により決定された複数の翼高さ位置の異なる二次元断面を示すNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルが一致しない場合には、すべてのNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを等しくした上で、4次のNURBS曲面を生成することを特徴とする翼設計装置。
【請求項4】
ターボ機械の翼を設計する翼設計方法であって、
代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、翼を設計する翼設計方法。
【請求項5】
請求項4記載の翼設計方法において、
二次元翼型設計部により、熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定し、
スタッキング部により、前記二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得ることを特徴とする翼設計方法。
【請求項6】
請求項5記載の翼設計方法において、
前記二次元翼型は、内周側は絞り流路を持つ亜音速翼型であり、外周側は絞り−拡がり流路を持つ遷音速翼型であり、前記拡がり流路は流出マッハ数に応じた形状であり、
前記スタッキング部は、前記二次元翼型設計部により決定された複数の翼高さ位置の異なる二次元断面を示すNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルが一致しない場合には、すべてのNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを等しくした上で、4次のNURBS曲面を生成することを特徴とする翼設計方法。
【請求項7】
請求項5記載の翼設計方法において、
前記二次元翼型設計部は、二次元断面を定義する4次のNURBS曲線が、上流工程で決まる流入角、スロート・ピッチ比を必ず満足するように決定することを特徴とする翼設計方法。
【請求項8】
請求項4記載の翼設計方法において、
最適化部により、二次元断面を定義する4次のNURBS曲線の設計変数を、翼型損失最小化を目的とした数値的な最適化法を用いて決定し、
前記二次元翼型設計部により、前記最適部により決定された翼型の設計変数を用いて、再度、二次元翼型を決定することを特徴とする翼設計方法。
【請求項9】
請求項8記載の翼設計方法において、
前記最適化部により、前記スタッキング部により得られた三次元翼に対して算出された一次元遠心応力が翼材料の許容応力以下であることを拘束条件として、前記二次元翼型設計部により決定された二次元翼型に対する流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を決定することを特徴とする翼設計方法。
【請求項10】
ターボ機械の翼を設計する翼設計方法を用いて設計された翼であって、
代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより設計されたことを特徴とする翼。
【請求項11】
タービンケーシングの内周側に固設された静翼と、タービン中心軸周りに回転するタービンロータに設けられた動翼とからなるターボ機械であって、
前記動翼若しくは静翼は、代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより設計された翼であることを特徴とするターボ機械。
【請求項1】
ターボ機械の翼を設計する翼設計装置であって、
熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定する二次元翼型設計部と、
該二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得るスタッキング部とを備えることを特徴とする翼設計装置。
【請求項2】
請求項1記載の翼設計装置において、
前記スタッキング部により得られた三次元翼に対して算出された一次元遠心応力が翼材料の許容応力以下であることを拘束条件として、前記二次元翼型設計部により決定された二次元翼型に対する流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を決定する最適化部とを備え、
前記二次元翼型設計部は、前記最適部により決定された翼型の設計変数を用いて、再度、二次元翼型を決定することを特徴とする翼設計装置。
【請求項3】
請求項1記載の翼設計装置において、
前記スタッキング部は、前記二次元翼型設計部により決定された複数の翼高さ位置の異なる二次元断面を示すNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルが一致しない場合には、すべてのNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを等しくした上で、4次のNURBS曲面を生成することを特徴とする翼設計装置。
【請求項4】
ターボ機械の翼を設計する翼設計方法であって、
代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、翼を設計する翼設計方法。
【請求項5】
請求項4記載の翼設計方法において、
二次元翼型設計部により、熱設計からフローパターンの情報及び設計変数部に保持された設計変数を用いて、それぞれの翼高さ位置での二次元断面を4次のNURBS曲線で定義して、二次元翼型を決定し、
スタッキング部により、前記二次元翼型設計部によって設計された翼高さ位置の異なる複数の二次元翼型を、図心や後縁を基準にスタッキングして、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより、三次元翼の形状データを得ることを特徴とする翼設計方法。
【請求項6】
請求項5記載の翼設計方法において、
前記二次元翼型は、内周側は絞り流路を持つ亜音速翼型であり、外周側は絞り−拡がり流路を持つ遷音速翼型であり、前記拡がり流路は流出マッハ数に応じた形状であり、
前記スタッキング部は、前記二次元翼型設計部により決定された複数の翼高さ位置の異なる二次元断面を示すNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルが一致しない場合には、すべてのNURBS曲線の制御点の数とノットベクトルを等しくした上で、4次のNURBS曲面を生成することを特徴とする翼設計方法。
【請求項7】
請求項5記載の翼設計方法において、
前記二次元翼型設計部は、二次元断面を定義する4次のNURBS曲線が、上流工程で決まる流入角、スロート・ピッチ比を必ず満足するように決定することを特徴とする翼設計方法。
【請求項8】
請求項4記載の翼設計方法において、
最適化部により、二次元断面を定義する4次のNURBS曲線の設計変数を、翼型損失最小化を目的とした数値的な最適化法を用いて決定し、
前記二次元翼型設計部により、前記最適部により決定された翼型の設計変数を用いて、再度、二次元翼型を決定することを特徴とする翼設計方法。
【請求項9】
請求項8記載の翼設計方法において、
前記最適化部により、前記スタッキング部により得られた三次元翼に対して算出された一次元遠心応力が翼材料の許容応力以下であることを拘束条件として、前記二次元翼型設計部により決定された二次元翼型に対する流体解析による損失最小化を目的関数に、翼型の設計変数を決定することを特徴とする翼設計方法。
【請求項10】
ターボ機械の翼を設計する翼設計方法を用いて設計された翼であって、
代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより設計されたことを特徴とする翼。
【請求項11】
タービンケーシングの内周側に固設された静翼と、タービン中心軸周りに回転するタービンロータに設けられた動翼とからなるターボ機械であって、
前記動翼若しくは静翼は、代表高さの二次元断面を4次のNURBS曲線で定義し、そのNURBS曲線群から4次のNURBS曲面を生成することにより設計された翼であることを特徴とするターボ機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−237971(P2011−237971A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108116(P2010−108116)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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