説明

老眼矯正体及び老眼矯正方法

【課題】簡単な構成で、老眼の人の視力を改善することが可能な老眼矯正体及び老眼矯正方法を提供する。
【解決手段】老眼矯正体10は、レンズまたはフィルムである透明薄板1であり、透明薄板1は不透明部2を有した絞り透明部3を形成する。老眼矯正体10を、片方または両方の眼の角膜の表面に装着し、老眼矯正体10の絞り透明部3を通して焦点合わせを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、角膜に直接装着して使用される老眼矯正体及び老眼矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人が加齢するにしたがって、眼は観測者(その個人)の比較的近くの物体に焦点を合わせるために生来の水晶体が硬くなったり調節力が低くなる。このような状態は、老眼として知られており、典型的には加齢した患者は、老眼、乱視、近視、および遠視のさまざまな組合せを有し、特に、老眼を有する患者の視力を矯正することは難しく、この課題を解決するためのさまざまな方法が長年に亘って示唆されてきた。
【0003】
ひとつの公知の方法は、凸面および反対側の凹面を有し、凸面および凹面の一方が交互に配置された遠用度数と近用度数の部分を含み、ひとつ以上の遠用度数の部分が円柱度数を有する、眼用レンズを含むコンタクトレンズを用いるものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−507794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このコンタクトレンズでは、眼用レンズの構成が複雑であり、精度も要求されることから生産コストが嵩むなどの問題があり、簡単な構成で老眼の人の視力を改善する方法が必要とされている。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、簡単な構成で、老眼の人の視力を改善することが可能な老眼矯正体及び老眼矯正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、透明薄板であり、前記透明薄板は、不透明部を有し、前記不透明部に絞り透明部を形成したことを特徴とする老眼矯正体である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記絞り透明部が複数個であることを特徴とする請求項1に記載の老眼矯正体である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記透明薄板は、レンズまたはフィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の老眼矯正体である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の老眼矯正体を、片方または両方の眼の角膜の表面に装着し、前記老眼矯正体の絞り透明部を通して焦点合わせを可能にすることを特徴とする老眼矯正方法である。
【発明の効果】
【0012】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0013】
請求項1乃至請求項4に記載の発明では、老眼矯正体を、片方または両方の眼の角膜の表面に装着し、この老眼矯正体の絞り透明部を通して焦点合わせを可能にすることで、絞り透明部により眼に入る光の量が減り、焦点の合う範囲が広がり鮮明に見えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】老眼矯正体の正面図である。
【図2】老眼矯正体の側面図である。
【図3】老眼矯正体の断面図である。
【図4】他の実施の形態の老眼矯正体の正面図である。
【図5】絞り透明部を複数個形成した実施の形態の老眼矯正体の正面図である。
【図6】スピンキャスティング法を説明する図である。
【図7】モールディング法を説明する図である。
【図8】レースカット法を説明する図である。
【図9】老眼矯正体を眼の角膜の表面に装着した状態を示す図である。
【図10】老眼矯正体の透明部による焦点合わせを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の老眼矯正体及び老眼矯正方法の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
[老眼矯正体]
この発明の老眼矯正体を、図1乃至図4に基づいて説明する。図1は老眼矯正体の正面図、図2は老眼矯正体の側面図、図3は老眼矯正体の断面図、図4は他の実施の形態の老眼矯正体の正面図である。
【0016】
この老眼矯正体10は、透明薄板1であり、この透明薄板1は、不透明部2を有し、この不透明部2に絞り透明部3を形成した構成である。
【0017】
透明薄板1は、レンズでも、フィルムでも良い。透明薄板1をレンズとすることで、乱視、近視、および遠視のさまざまな組合せにすることができる。また、透明薄板1をフィルムとすることで、眼の保護具や化粧品として用いることができる。眼の保護具は、日差しを防ぐために着用し、また眩しさや紫外線などを低減するために着用する。すなわち、日光から健康被害を受けやすいため、瞳を日光から守るという健康上の理由で使う。また、オゾンホールの影響で紫外線が強い地域などで用いる。
【0018】
透明薄板1は、透明度は高くても低くてもよく特に限定されない。また、透明薄板1は、着色されていても、着色されていなくても透明でればよい。例えば、色の明るさを意味する明度の低い黒っぽい色がついているものは、外から不透明に見え、また黒っぽくない色や透明度が高いものは、外からも透明に見える。透明薄板1は、外形形状が円形形状であるが、図4に示すように、多角形形状、星形形状でもよく、さらにハート形形状などでも良く、特に限定されない。
【0019】
レンズの材質は、コンタクトレンズの公知の種々の材料が利用可能であり、酸素非透過性ハードコンタクトレンズのMMA(メタルメタクリレート)、酸素透過性ハードコンタクトレンズのSMA(シロキサニルメタクリレート)やFMA(フルオロメタクリレート)、含水性ソフトコンタクトレンズのHEMA(ハイドロキシエチルメタクリレート),N−VP(N−ビニルピロリドン),DMAA(ジメチルアクリアミド),GMA(グリセロールメタクリレート)、非含水性ソフトコンタクトレンズのシリコンラバー,ブチルアクリレート,ジメチルシロキサン、生体親和性コンタクトレンズのコラーゲン,アミノ酸共重合体などに適用できる。
【0020】
この他、コンタクトレンズ用の重合性モノマーとしては、一般的に用いられるラジカル重合可能な化合物が考えられ、例えばビニル基、アリル基、アクリル基、またはメタクリル基を分子中に1個以上含む化合物で、通常ハードコンタクトレンズまたはソフトコンタクトレンズ材料として使用されている物質ならばどのようなものでも利用可能である。具体的には、アルキルアクリレート、シロキサニルアクリレート、フルオロアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ビニルアクリレート等のアクリル酸エステル類、スチレンの誘導体、N−ビニルラクタム、(多価)カルボン酸ビニル等のビニル化合物等を考えることができる。さらに具体的には、例えば、スチレン、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、フマル酸およびそれらのエステル類、メタクリロニトリル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等を用いることが可能である。
【0021】
さらに架橋剤として、エチレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、ジビニルベンゼンジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の多官能モノマーを用いることができる。
【0022】
フィルムの材質は、コンタクトレンズの公知の種々の材料が利用可能である。
【0023】
不透明部2は、透明でない部分であり、この不透明部2により絞り透明部3が透明薄板1に形成される。不透明部2は、着色によって形成しても、着色しないで形成しても良く、透明でなければ特に限定されない。着色よって形成する場合には、明度の高い色、また明度の低い色でもよい。
【0024】
不透明部2は、絞り透明部3を除いて透明薄板1の全面に設けても良いが、絞り透明部3は直径0.8乃至1.6mmの円形が好ましい。この実施の形態の不透明部2は、直径3.8mmの外周縁部2aと、直径0.8乃至1.6mmの内周縁部2bとにより構成される環状としている。不透明部2は、黒色であるが、この黒色に限定されず、紺、赤、茶色などでもよく、明度の低い色が好ましい。
【0025】
絞り透明部3は、不透明部2の中心部に形成され、老眼矯正体10を眼の角膜の表面に装着した際に、眼に入る光の量を減らし、焦点の合う範囲が広がり鮮明に見えるように機能する。絞り透明部3の透明度は、高くても低くてもよく、この実施の形態では、透明薄板1に不透明部2を形成することによって絞り透明部3が形成されるが、これに限定されない。
【0026】
また、不透明部2は、直径3.8mmの外周縁部2aと、直径0.8乃至1.6mmの内周縁部2bとにより構成される環状であり、直径3.8mmの外周縁部2aとすることで、着色部2の外周縁部2aがほぼ眼の瞳の大きさに対応しており、外部から老眼矯正体10を装着している印象がなく体裁が良い。また、絞り透明部3の直径が0.8乃至1.6mmであることが、眼に入る光の量を減らし、しかも焦点の合う範囲をより広げることができ好ましい。
【0027】
不透明部2は、環状であるが、図4に示すように、環状の外側形状、または内側形状は、多角形形状、星形形状でもよく、さらにハート形形状などでも良く、特に限定されない。
【0028】
また、この老眼矯正体10は、図5に示すように、不透明部2の形状、絞り透明部3の形状、個数は特に限定されない。図5(a),(b)では、円形の不透明部2に複数の円形の絞り透明部3が形成されている。図5(c),(d)では、六角形の不透明部2に複数の円形の絞り透明部3が形成されている。図5(e),(f)では、六角形の不透明部2に複数の星型の絞り透明部3が形成されている。
【0029】
この老眼矯正体を製造する方法としては、透明薄板の素材と同一または異なるモノマーに所定の色素を混合してインクを製造し、このインクを、所定以上の径を有する環状に配置された凹部に注入し、この凹部のインクをパットにて採取して透明薄板の成型型に転写し、この転写された成型型にて透明薄板の少なくとも一方面の成型を行なうものを考えることができる。
【0030】
かかる製造法によれば、透明薄板の素材と同一または異なるモノマーに所定の色素を混合したインクを所定の径を有する環状に配置された凹部に充填し、この凹部のインクをパッドにて採取して透明薄板の成型型にプリントし、プリントされた成型型にて透明薄板の少なくとも一方面の成型を行なう。
【0031】
従って、この製造方法によれば、環状の着色部を、透明薄板に所定の径で環状に設けることが容易となる。こうした成型型を用いた老眼矯正体の製造方法として、コンタクトレンズの製造方法を用いることができる。
【0032】
このコンタクトレンズの製造方法としては、回転するモールドの中にコンタクトレンズの材料となるモノマーを注入して遠心力によってこれを拡げて重合するスピンキャスティング法(図6)、凹型にコンタクトレンズの材料を流し込んで凸型を合わせて成型するモールディング法(図7)などが知られている。また、近年では、前面を型により形成し後面をレースカットする製造方法や、その逆に後面を型により形成して前面をレースカットする製法などがあり、このようなコンタクトレンズの製造方法のいずれも採用することができる。
【0033】
インクを注入する凹部としては、微細加工の容易な金属板が利用でき、特に銅板が適している。インクを採取するパッドとしては、モノマーに対して科学的に安定した物性を有する軟質ポリマーなどの材質が適しており、特にシリコンが好適である。インクをプリントする成型型としては、ポリビニール製樹脂が適しているが、他に金属製の型なども用いることができる。このように製造される老眼矯正体は、環状の着色部の製造に当たって大幅な製造工程の追加・改変を必要としない。
【0034】
また、コンタクトレンズの製造方法としては、前記の成型を伴う方法の他に、前面(外界からの光線が最初に接触する面)と後面(角膜に接触する面)とをポリマーから削り出すレースカット法(図8)がある。この製造方法を採用する場合には、所望の形状のコンタクトレンズを予め削りだしておき、これに後から、環状の着色部を配置すればよい。この場合の環状の着色部の配置は、レンズ前面側または後面側を削りだした後、この面にインクを転写し、インクの重合を行ない、表面研磨後、反対側の面を切削するといった方法を用いて行なえば良い。
【0035】
また、従来の公知の方法により製造されたコンタクトレンズの前面(外界からの光線が最初に接触する面)にマスキングを行い、塗布により環状の着色部を形成して絞り透明部を設けても良い。
【0036】
[老眼矯正方法]
この発明の老眼矯正方法を、図9及び図10に基づいて説明する。老眼が進み、老眼鏡を使用するようになると、老眼矯正体10を、図9に示すように、老眼が進んだ片方の眼10の角膜21の表面に装着する。このように老眼矯正体10を装着すると、不透明部2の直径0.8乃至1.6mmの内周縁部2bにより形成された絞り透明部3を通して焦点合わせが可能になる。
【0037】
したがって、図10(a)に示すように、老眼矯正体10を、老眼が進んだ片方の眼20の角膜21の表面に装着したことで、老眼矯正体10の絞り透明部3を通して焦点合わせを可能になり、この絞り透明部3により眼20に入る光の量が減り、焦点の合う範囲が広がり鮮明に見えるようになる。
【0038】
これに対して、老眼矯正体10を装着しない状態では、図10(b)に示すように、眼20に入る光の量が多く、ぼやけたり、かすむなど不鮮明である。
【0039】
この老眼矯正体10を使用した老眼矯正方法は、老眼が進んだ片方の矯正に使用することで、両眼とのバランスが行われ、見え方に違和感がなくなる。
【0040】
図9及び図10では、老眼矯正体10を、老眼が進んだ片方の眼10の角膜21の表面に装着する場合について説明したが、両方の眼を装着しても同様に絞り透明部3を通して焦点合わせが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、角膜に直接装着して使用される老眼矯正体及び老眼矯正方法に適用可能であり、簡単な構成で、老眼の人の視力を改善することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 透明薄板
2 不透明部
2a 外周縁部
2b 内周縁部
3 絞り透明部
10 老眼矯正体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明薄板であり、
前記透明薄板は、不透明部を有し、
前記不透明部に絞り透明部を形成したことを特徴とする老眼矯正体。
【請求項2】
前記絞り透明部が複数個であることを特徴とする請求項1に記載の老眼矯正体。
【請求項3】
前記透明薄板は、レンズまたはフィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の老眼矯正体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の老眼矯正体を、片方または両方の眼の角膜の表面に装着し、
前記老眼矯正体の絞り透明部を通して焦点合わせを可能にすることを特徴とする老眼矯正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−11846(P2013−11846A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235254(P2011−235254)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(511026197)
【Fターム(参考)】