説明

耐久性の硬化性固体インク

【課題】従来の硬化性の固体転相インクと同様、取り扱い性、安全性、印刷品質といった利点を保持しながら、さらに耐久性があり、環境に優しいといった利点を有する硬化性固体インクを提供する。
【解決手段】本発明の硬化性固体インクは、硬化性ワックスと;1種類以上のモノマーと;アミドゲル化剤と;光開始剤と;場合により、着色剤とを含み、1種類以上のモノマーが、1個以上のエポキシ基を有する不飽和油がアクリル酸によって官能基化される反応の生成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本実施形態は、室温では固体であり、高温では溶融し、この温度で、溶融したインクを基板に塗布することを特徴とする、固体の転相インク組成物に関する。これらの固体インク組成物は、種々の用途でインクジェット印刷するのに用いることができる。本実施形態は、硬化性固体インク(CSI)に関し、特に、硬化性固体インクは、耐久性を有する紫外線(UV)硬化性インクである。望ましいインク品質を提供することに加え、本実施形態は、これらのインクの二酸化炭素排出量を減らすのに役立つ、再生可能な「環境に優しい」材料に基づく。
【0002】
インクジェット印刷プロセスは、一般的に、室温で固体であり、高温では液体であるインクを使用してもよい。このようなインクは、固体インク、ホットメルトインク、転相インクなどと呼ばれることがある。ホットメルトインクを使用するサーマルインクジェット印刷プロセスでは、印刷装置内のヒーターによって固体インクを溶融させ、従来のサーマルインクジェット印刷と似た様式で液体として利用する(吐出する)。印刷記録媒体と接触したら、溶融したインクはすばやく固化し、着色剤を毛細管作用によって記録媒体(例えば、紙)に保持しておくのではなく、記録媒体表面に実質的にとどめておくことができ、それによって、液体インクを用いて一般的に得られる印刷密度よりも高い印刷密度を得ることができる。したがって、インクジェット印刷における固体インクの利点は、取り扱い中にインクが潜在的に漏出しないこと、広範囲の印刷密度および印刷品質、紙のしわまたはゆがみが最低限であること、ノズルに蓋をしなくても、ノズルが詰まる危険性がなく、無期限に印刷しない期間があってもよいことである。
【0003】
インクジェットプリンタにとって、固体インクは、運搬中、長期間の保存中など、室温で固相状態を維持するため、固体インクが望ましい。それに加え、インクジェット用液体インクを用いると、インクが蒸発する結果としてノズルが詰まることによって生じる問題は、ほとんどなくなり、それによって、インクジェット印刷の信頼性が高まる。さらに、インクの液滴が最終的な記録媒体(例えば、紙、透明材料など)に直接塗布されるような固体インクジェットプリンタでは、記録媒体と接触すると液滴がすぐに固化し、その結果、印刷媒体に沿ったインクの移動を防ぎ、ドット品質が高まる。
【0004】
硬化性固体インクは、従来の固体インク印刷プロセス、特に、転写固定を用い、硬化後の機械的耐久性を高めるための手段として考えられた。適切な硬化性固体インクを配合する際の課題のひとつは、すばやく、広範囲にわたって硬化できるように、十分な分子移動度を有する固体インクを作成することである。このような特徴を有する固体インクを提供するであろう配合物を得ることに加え、インクの二酸化炭素排出量を減らすために再生可能な「環境に優しい」材料から誘導される配合物を作成することが、最近の原動力となっている。例えば、バイオ材料から誘導される継続使用可能なモノマーを原料とすることが注目されている。インクの主成分である従来のモノマー(例えば、典型的には、インクの合計重量の約50〜約55重量%)は、一般的に、石油系ジオールから誘導されるジアクリレート分子である。石油系材料の代わりとなる再生可能なバイオ材料を特定し、用いることによって、環境に優しいインクを提供しつつ、化石燃料への依存を減らすことができる。
【0005】
したがって、開示されている固体インク配合物は、従来の配合物と比べていくつかの利点があり、硬化性固体インクの望ましい特性を与えるだけではなく、再生可能な資源(例えば、植物)から誘導される配合物を得ることがいまだ必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に示される実施形態によれば、インクジェット印刷に適した非化石燃料原料から作られるモノマー材料を含む、新しい硬化性固体インク組成物が提供される。
【0007】
特に、本実施形態は、硬化性ワックスと;1種類以上のモノマーと;アミドゲル化剤と;光開始剤と;場合により、着色剤とを含み、1種類以上のモノマーが、1個以上のエポキシ基を有する不飽和油がアクリル酸によって官能基化される反応の生成物を含む、硬化性固体インクを提供する。
【0008】
さらなる実施形態では、硬化性ワックスと;1種類以上のモノマーと;アミドゲル化剤と;光開始剤と;場合により、着色剤とを含み、1種類以上のモノマーが、以下からなる群から選択されるエポキシ化された化合物を含む、硬化性固体インクを提供する。
【化1】

【0009】
さらに他の実施形態では、硬化性ワックスと;1種類以上のモノマーと;アミドゲル化剤と;光開始剤と;場合により、着色剤とを含み、1種類以上のモノマーが、エポキシ化された油とアクリル酸とを、エポキシド基のいくつか、またはすべてが開環し、アクリレート基が骨格構造に組み込まれるように反応させて得られるエポキシ化されたアクリレート油を含む、硬化性固体インクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施形態にしたがって製造された固体インクの温度に対する複素粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述のように、現行のインクの選択肢は、種々の基板に印刷するのはうまくいっているが、硬化速度を高め、硬化したら耐久性と硬度が高まる硬化性固体インクを得ることは、いまだ必要とされている。
【0012】
本実施形態は、一般的に、紫外線(UV)硬化性固体インクに関する。特に、本実施形態は、望ましい特性(例えば、インクジェットによる印刷用途で使用するための耐久性)を示し、再生可能なバイオ材料に由来する硬化性固体インクを提供する。したがって、本実施形態の固体インクは、固体転相インクに通常関連する取り扱い性、安全性、印刷品質といった利点を保持しているが、大部分が継続使用可能な材料で構成されるというさらなる利点も有している。例えば、この実施形態では、石油系モノマーを、亜麻仁および大豆のような植物源に由来するか、またはヒマシ油のような動物源に由来するバイオ系材料である、エポキシ化された大豆油アクリレート(ESOA)と置き換える。これらのバイオ系アクリレートの多官能性はこのほかにも、耐久性の大きなインクを作るための高い架橋度を与え、既存の多官能アクリレート(例えば、Sartomer Company(エクストン、ペンシルバニア)から入手可能な低粘度ジペンタエリスリトールペンタアクリレートSR399LV)の「環境に優しい」置き換えを可能にする。
【0013】
本実施形態は、硬化性ワックスと、モノマーと、硬化性ゲル化剤と、遊離ラジカル光開始剤と、架橋剤と、任意要素の着色剤とのブレンドを含む。この実施形態では、モノマーは、アクリル酸で官能基化された1個以上のエポキシ基を含む不飽和油の生成物を含む。特定の実施形態では、この反応の生成物は、エポキシ化されたアクリレート油である。例えば、アクリレート官能基を作り出すように化学修飾された天然に存在する植物/種子油であるもの。この油の二重結合は、過酢酸を用いてエポキシ化された後、アクリル酸との反応によって、元々二重結合が存在していた位置にアクリレート基が接続する。油の形質変換は、以下の例示的な2段階反応によって示される。
【化2】

【化3】

上の反応スキームからわかるように、エポキシ化されたアクリレート油は、エポキシ化された油と、アクリル酸とを、エポキシド基のいくつか、またはすべてが開環し、アクリレート基が骨格構造に組み込まれるように反応させて得られる。
【0014】
近年の方法は、Ti/SO触媒および過酸化水素も使用し、以下に示されるようなエポキシ化された化合物を得ることが開示されている(http://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2004/GC/b404975fから):
【化4】

さらなる実施形態では、モノマーは、エポキシ化された大豆油アクリレート、エポキシ化されたヒマシ油アクリレート、エポキシ化された亜麻仁油アクリレート、エポキシ化された菜種油アクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態では、モノマーは、ヒマシ油アクリレートであってもよい。これらの実施形態では、エポキシ化されたアクリレート油を、固体インク中に存在するモノマーのすべて、または一部分に用いてもよい。この実施形態では、エポキシ化されたアクリレート油は、固体インク中に、インクの合計重量の約1〜約25重量%の量で存在する。他の実施形態では、エポキシ化されたアクリレート油は、固体インク中に、インクの合計重量の約2〜約20重量%、または約5〜約10重量%の量で存在する。
【0015】
いくつかの実施形態では、一般的に、硬化性ワックスと、1種類以上のモノマーと、任意要素の着色剤と、アミドゲル化剤と、光開始剤とを含み、1種類以上のモノマーが、エポキシ化されたアクリレート油を含む硬化性固体インクが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物は、硬化性である。「硬化性」は、本明細書で使用される場合、重合可能であるか、または鎖伸長可能であることを意味し、つまり、限定されないが、遊離ラジカル重合または鎖伸長、カチオン性重合または鎖伸長を含む重合によって硬化させることが可能であり、および/または、重合が、放射線感受性の光開始剤を用いることによって、光によって開始されるような材料を意味する。放射線硬化性とは、本明細書で使用される場合、放射線源(限定されないが、光源および熱源を含み、開始剤存在下または開始剤が存在しない状態を含む)をあてると硬化するすべての形態を包含することを意図している。放射線硬化の例としては、限定されないが、場合により、光開始剤および/または光感作剤存在下での紫外(UV)光(例えば、約200〜約400ナノメートルの波長を有する光)、可視光など、場合により、光開始剤存在下での電子線照射、場合により、高温熱開始剤存在下での熱による硬化(選択した実施形態では、転相インクを用いる場合、吐出温度では主に不活性である)、およびこれらの適切な組み合わせが挙げられる。
【0016】
一般的な実施形態では、硬化性ワックスは、硬化性固体インクの合計重量の約1〜約25重量%の量で存在する。ワックスは、Unilin 350アクリレート、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸オクタデシル、アクリレート化されたC12直鎖アルコールなど、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0017】
任意要素の着色剤は、硬化性インク中に、望ましい色または色相を得るために任意の望ましい量または任意の有効な量で存在していてもよく、例えば、インクの少なくとも約0.1重量%〜約50重量%、少なくとも約0.2重量%〜約20重量%、少なくとも約0.5重量%〜約10重量%の量で存在していてもよい。特定の実施形態では、任意要素の着色剤は、硬化性固体インクの合計重量の約15〜約25重量%の量で存在する。任意要素の着色剤は、顔料、染料またはこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。特定の実施形態では、任意要素の着色剤は、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートにシアン顔料を分散させたものを含む。
【0018】
一般的な実施形態では、ゲル化剤は、アミドゲル化剤などであり、硬化性インクの合計重量の約2〜約25重量%、または約4〜約12重量%の量で存在する。一般的な実施形態では、光開始剤は、硬化性固体インクの合計重量の約1〜約15重量%、または約6〜約15重量%の量で存在する。
【0019】
光開始剤は、α−ヒドロキシケトン、モノ−アシルホスフィンオキシド、ビス−アシルホスフィンオキシドなど、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0020】
この実施形態では、さらに、文字をジェット印刷するために硬化性固体インクを用いる方法が提供される。このような実施形態では、この方法は、中間基板の上に硬化性固体インクを吐出させ、中間画像を作成することと、この中間画像を基板に転写し、転写された画像を作成することと、この転写された画像に、約4ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲の波長を有する放射線をあて、硬化性固体インクを硬化させることとを含む。いくつかの実施形態では、吐出工程は、70℃よりも高い温度で、または約70℃〜約100℃で行われる。
【0021】
本発明で任意の適切な印刷デバイスを用いてもよい。一実施形態では、この装置は、同一出願人による同時係属中の米国特許公開第2008/0218540号(その全体が参考として組み込まれる)に記載されているような、少なくともインクジェット印刷ヘッドと、インクジェット印刷ヘッドからインクが吐出される印刷領域表面とを備えるインクジェット印刷デバイスであり、インクジェット印刷ヘッドと印刷領域表面との間の高さ方向の距離は、調節可能である。
【0022】
マーキング材料を画像のパターンになるように、中間転写体に塗布するか、または画像を受け入れる基板に直接塗布するのに適した任意の望ましい印刷システムおよびマーキング材料、例えば、サーマルインクジェット印刷(室温で液体のインクを用いるものと、転相インクとを用いるもの)、圧電式インクジェット印刷(室温で液体のインクを用いるものと、転相インクとを用いるもの)、音響式インクジェット印刷(室温で液体のインクを用いるものと、転相インクとを用いるもの)、熱転写印刷、グラビア印刷、静電印刷方法(乾燥したマーキング材料を使用するものと、液体のマーキング材料を使用するもの)などとともに、本明細書の装置および方法を使用してもよい。説明のために、マーキング材料を画像のパターンになるように中間転写体に塗布するための圧電式転相インクジェットプリンタを記載する。
【0023】
放射線硬化性インクは、一般的に、少なくとも1つの硬化性モノマーと、ゲル化剤と、着色剤と、インクの硬化性成分(特定的には、硬化性モノマー)の重合を開始させる、放射線で活性化する開始剤(特定的には、光開始剤)とを含む。Odellらに対する米国特許第7,279,587号(開示内容は、本明細書に参考として完全に組み込まれる)は、硬化性固体インク組成物で有用な光開始化合物を開示している。Odellらに対する米国特許公開第2007/0120910号(開示内容は、その全体が本明細書に参考として完全に組み込まれる)は、いくつかの実施形態では、着色剤と、開始剤と、インク媒剤とを含む固体インクを記載する。
【0024】
ある実施形態では、1種類以上のモノマーは、さらに、エポキシ化されたアクリレート油(例えば、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート)以外のモノマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示されているインク媒剤は、任意の適切な硬化性モノマーまたはプレポリマーを含んでいてもよい。適切な材料の例としては、転相インクキャリアとして使用するのに適したラジカル硬化性モノマー化合物(例えば、アクリレートモノマー化合物およびメタクリレートモノマー化合物)が挙げられる。それに加え、多官能アクリレートおよび多官能メタクリレートのモノマーおよびオリゴマーが、転相インクキャリアに含まれていてもよい。
【0025】
適切な放射線(例えば、UV)硬化性のモノマーおよびオリゴマーとしては、例えば、アクリレート化されたエステル、アクリレート化されたポリエステル、アクリレート化されたエーテル、アクリレート化されたポリエーテル、アクリレート化されたエポキシ、ウレタンアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。適切なアクリレート化されたモノマーの特定の例としては、モノアクリレート、ジアクリレート、1個以上のジアクリレートまたはトリアクリレートを含む多官能アルコキシル化アクリルモノマーまたはポリアルコキシル化アクリルモノマーが挙げられる。適切なモノアクリレートは、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、アクリル酸ステアリル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベヘニル、2−フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸第三級ブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソボルニル、ブタンジオールモノアクリレート、エトキシル化フェノールモノアクリレート、オキシエチル化フェノールアクリレート、モノメトキシヘキサンジオールアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、ジシクロペンチルアクリレート、カルボニルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレートなどがある。適切な多官能アルコキシル化アクリレートまたはポリアルコキシル化アクリレートは、例えば、以下のもののアルコキシル化(例えば、エトキシル化またはプロポキシル化)された変形例である。ネオペンチルグリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリルトリアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリブタンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレートなど。
【0026】
適切なモノマーは、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、例えば、SR9003(Sartomer Co.,Inc.、エクストン、PA)である。他の適切な反応性モノマーは、同様に、例えば、Sartomer Co.,Inc.、Henkel Corp.、Radcure Specialtiesなどから市販されている。適切なアクリレート化されたオリゴマーの特定の例としては、例えば、アクリレート化されたポリエステルオリゴマー、例えば、CN2262(Sartomer Co.)、EB 812(Cytec Surface Specialties)、EB 810(Cytec Surface Specialties)、CN2200(Sartomer Co.)、CN2300(Sartomer Co.)など、アクリレート化されたウレタンオリゴマー、例えば、EB270(UCB Chemicals)、EB 5129(Cytec Surface Specialties)、CN2920(Sartomer Co.)、CN3211(Sartomer Co.)など、アクリレート化されたエポキシオリゴマー、例えば、EB 600(Cytec Surface Specialties)、EB 3411(Cytec Surface Specialties)、CN2204(Sartomer Co.)、CN110(Sartomer Co.)など;ペンタエリスリトールテトラアクリレートオリゴマー、例えば、SR399LV(Sartomer Co.)などが挙げられる。
【0027】
これらのモノマーおよびオリゴマーは、反応性希釈剤として機能し、さらに、硬化した画像の架橋密度を高め、これによって、硬化した画像の靱性を高めることができる材料として機能する。反応性希釈剤をインクキャリア材料に加えるとき、反応性希釈剤は、任意の望ましい量または任意の有効な量で加えられ、例えば、キャリアの約1重量%〜約80重量%、または約35重量%〜約70重量%の量で加えられるが、希釈剤の量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0028】
特定の実施形態では、本明細書に開示されているインク媒剤は、任意の適切な光開始剤を含んでいてもよい。特定の開始剤の例としては、限定されないが、特に、IRGACURE(登録商標)127、IRGACURE(登録商標)379、IRGACURE(登録商標)819(すべてBASF Chemicalsから市販されている)が挙げられる。場合により、転相インクは、水素原子を光開始剤に供与し、重合を開始させるラジカル種を生成することができ、さらに、遊離ラジカル重合を阻害する溶存酸素を消費し、重合速度を高めることができるような補助開始剤であるアミン共力剤も含んでいてもよい。
【0029】
本明細書に開示されているインクのための開始剤は、任意の望ましい波長または任意の有効な波長を吸収することができ、例えば、約4ナノメートル〜約560ナノメートル、または約200ナノメートル〜約560ナノメートル、または約200ナノメートル〜約420ナノメートルの範囲の波長を吸収することができるが、波長は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0030】
場合により、光開始剤は、転相インク中、任意の望ましい量または任意の有効な量で存在し、例えば、インク組成物の約0.5重量%〜約15重量%、または約1重量%〜約10重量%の量で存在するが、この量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0031】
インク媒剤は、ゲル状の挙動を示すことができ、液体に溶解すると、比較的狭い温度範囲で粘度を比較的急激に上昇させることができる、少なくとも1つの化合物、例えば、紫外線のような放射線をあてると、硬化性モノマーとして挙動する化合物を含む。このような硬化性液体モノマーの一例は、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートである。一実施形態では、本明細書に開示されているようなある種の媒剤は、一実施形態では、少なくとも約30℃の温度範囲では、少なくとも約10センチポイズの粘度変化を受けるが、この粘度変化および温度範囲は、これらの範囲からはずれていてもよく、これらの範囲内で変化しない媒剤も本明細書に含まれる。
【0032】
任意の適切なゲル化剤を、本明細書に開示されているインク媒剤として用いてもよい。ゲル化剤は、以下の式を有する化合物のような材料から選択されてもよく、
【化5】

式中、Rは、(i)アルキレン基(アルキレン基は、二価脂肪族基またはアルキル基であると定義され、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、非環状の置換アルキレン基および置換されていないアルキレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素を約1〜約12個、または約2〜約4個有するもの、
(ii)アリーレン基(アリーレン基は、二価芳香族基またはアリール基であると定義され、置換アリーレン基および置換されていないアリーレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリーレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約5〜約14個、または約6〜約10個有するもの、
(iii)アリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、二価アリールアルキル基であると定義され、置換アリールアルキレン基および置換されていないアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約6〜約32個、または約7〜約22個有するもの、
(iv)アルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、二価アルキルアリール基であると定義され、置換アルキルアリーレン基および置換されていないアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を少なくとも約6個有するもの、別の実施形態では、約7〜約32個、または約7〜約22個有するものであり、ここで、置換アルキレン基、置換アリーレン基、置換アリールアルキレン基、置換アルキルアリーレン基の置換基は、(限定されないが)ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が一緒に接続して環を形成していてもよく;
およびR2’は、それぞれ互いに独立して、以下のものからなる群から選択され:
(i)アルキレン基(アルキレン基は、二価脂肪族基またはアルキル基であると定義され、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、非環状の置換アルキレン基および置換されていないアルキレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素を1〜約54個、または炭素原子を約1〜約34個有するもの、
(ii)アリーレン基(アリーレン基は、二価芳香族基またはアリール基であると定義され、置換アリーレン基および置換されていないアリーレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリーレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を少なくとも約5個、別の実施形態では、炭素を約6〜約14個、または炭素原子を約7〜約10個有するもの、
(iii)アリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、二価アリールアルキル基であると定義され、置換アリールアルキレン基および置換されていないアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素を約6〜約32個、または炭素原子を約7〜約22個有するもの、
(iv)アルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、二価アルキルアリール基であると定義され、置換アルキルアリーレン基および置換されていないアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を少なくとも約6個有するもの、別の実施形態では、約7〜約32個、または約7〜約22個有するものであり、ここで、置換アルキレン基、置換アリーレン基、置換アリールアルキレン基、置換アルキルアリーレン基の置換基は、(限定されないが)ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が一緒に接続して環を形成していてもよく;
およびR3’は、それぞれ互いに独立して、以下のいずれかであり:
(a)光開始基、例えば、以下の式の1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導される基
【化6】

以下の式の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導される基
【化7】

以下の式の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導される基
【化8】

以下の式のN,N−ジメチルエタノールアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導される基
【化9】

など:または
(b)以下の基:
(i)アルキル基(直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、非環状の置換アルキル基および置換されていないアルキル基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約2〜約100個、または約3〜約60個、または約4〜約30個有するもの、しかし、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよく、
(ii)アリール基(置換アリール基および置換されていないアリール基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約5〜約100個、または約6〜約60個、または約6〜約30個有するもの、例えば、フェニルなど、
(iii)アリールアルキル基(置換アリールアルキル基および置換されていないアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、実施形態では、炭素原子を少なくとも約6個有し、別の実施形態では、約7〜約100個、または約7〜約60個有するもの、しかし、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよく、例えば、ベンジルなど、または
(iv)アルキルアリール基(置換アルキルアリール基および置換されていないアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約6〜約100個、または約7〜約60個、または約7〜約30個有するもの、例えば、トリルなどであり、ここで、置換アルキル基、置換アリールアルキル基、置換アルキルアリール基の置換基は、(限定されないが)ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、亜硝酸基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が一緒に接続して環を形成していてもよく、但し、XおよびX’は、それぞれ互いに独立して、酸素原子であるか、式−NR−の基であり、式中、Rは、
(i)水素原子、
(ii)アルキル基(直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、非環状の置換アルキル基および置換されていないアルキル基を含み、ヘテロ原子が、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約1〜約100個、または約1〜約60個、または約1〜約30個有するもの、
(iii)アリール基(置換アリール基および置換されていないアリール基を含み、ヘテロ原子が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約5〜約100個、または約6〜約60個有するもの、しかし、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよく、
(iv)アリールアルキル基(置換アリールアルキル基および置換されていないアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子が、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約6〜約100個、または約7〜約60個有するもの、しかし、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよく、または
(v)アルキルアリール基(置換アルキルアリール基および置換されていないアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子が、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、一実施形態では、炭素原子を約6〜約100個、または約7〜約60個有するものであり、ここで、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリールアルキル基、置換アルキルアリール基の置換基は、(限定されないが)ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が一緒に接続して環を形成していてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書の放射線硬化性転相インクは、上述のゲル化剤と、場合により、硬化性ワックスとを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、ゲル化薬剤またはゲル化剤は、以下の一般的な構造を有するアミドゲル化薬剤の混合物である。
【化10】

【化11】

および
【化12】

【0034】
それに加え、本実施形態のゲル化剤は、以下の式を有する化合物であってもよく、
【化13】

式中、R、R、R’は、上述のとおりであるが、RおよびR’のうち少なくとも1つが芳香族基であり、但し、RもR’も光開始基ではない。
【0035】
特定の実施形態では、インクのゲル化薬剤は、以下の一般的な構造を有する化合物である。
【化14】

【化15】

【化16】

または
【化17】

【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書の放射線硬化性の転相インクは、上述のゲル化剤と、場合により、硬化性ワックスとを含む。
【0037】
インク組成物は、ゲル化剤を任意の適切な量で含んでいてもよく、例えば、インクの約1重量%〜約50重量%、または約2重量%〜約20重量%、または約5重量%〜約15重量%の量で含んでいてもよい。
【0038】
硬化性モノマーまたはプレポリマーと硬化性ワックスとを合わせ、インクの約50重量%を超えて作成してもよく、または、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%であってもよい。
【0039】
インクセットの1つ以上のインクのインク媒剤は、さらなる任意要素の添加剤を含んでいてもよい。任意要素の添加剤としては、界面活性剤、入射するUV光を吸収し、これを熱エネルギーに変換して最終的には消散してしまう光安定化剤、酸化防止剤、画像の外観を改善し、マスクの黄変を向上させることができる任意要素の蛍光増白剤、チクソトロピー剤、ディウェッティング剤、すべり剤、気泡剤、消泡剤、流動剤、他の非硬化性ワックス、油、可塑剤、バインダー、導電性剤、防カビ剤、抗菌剤、有機および/または無機のフィラー粒子、異なる光沢レベルを作り出すか、または減らす薬剤であるレベリング剤、乳白剤、帯電防止剤、分散剤などが挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の硬化性転相インク組成物は、着色剤として顔料を含んでいてもよい。顔料は、インク中に任意の適切な量で含まれていてもよく、例えば、インクの約0.1〜約25重量%、例えば、約0.5重量%または約20重量%〜約1重量%または約15重量%の量で含まれていてもよい。硬化性転相インクは、室温で固体であるか、またはほぼ固体である。硬化性転相インクは、室温で固体であるか、またはほぼ固体である。硬化性転相インクの粘度が、インクの吐出温度で約50mPas未満、例えば、約30mPas未満、例えば、約3〜約30mPas、約5〜約20mPas、または約8〜約15mPasであることが望ましい。したがって、インクを液体状態で吐出し、この操作は、吐出前にインクに熱を加えて溶融させることによって達成される。インクは、望ましくは、低温で、特に、約120℃未満、例えば、約50℃〜約110℃、または約60℃〜約110℃で吐出される。したがって、インクは、理想的には、圧電式インクジェットデバイスで使用するのに適している。顔料は、インク成分を加熱する前、またはインク成分を加熱した後に加えてもよい。顔料は、選択された着色剤であり、溶融した混合物をアトライタまたはボールミル装置で粉砕し、インクキャリアに顔料を分散させてもよい。次いで、加熱した混合物を約5秒〜約10分以上撹拌し、実質的に均質で均一な溶融物を得て、その後、このインクを周囲温度(典型的には、約20℃〜約25℃)まで冷却する。インクは、周囲温度で固体であるか、またはほぼ固体である。
【0041】
上述のインクを、直接的な印刷インクジェットプロセスおよび間接的な(オフセット)印刷インクジェット用途で用いてもよい。本明細書に開示されている別の実施形態は、本明細書に開示されているインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、このインクを溶融することと、溶融したインクの液滴を、記録基板の上に画像のパターンになるように吐出することとを含むプロセスに関する。本明細書に開示される、さらに別の実施形態は、本明細書に開示されているインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、このインクを溶融することと、溶融したインクの液滴を、中間転写体の上に画像のパターンになるように吐出することと、この画像のパターンになったインクを中間転写体から最終的な記録基板に転写することとを含むプロセスに関する。特定の実施形態では、中間転写体を、最終的な記録シートの温度よりも高く、印刷装置の溶融したインクの温度よりも低い温度まで加熱する。別の特定的な実施形態では、中間転写体および最終的な記録シートを両方とも加熱し、この実施形態では、中間転写体および最終的な記録シートを両方とも、印刷装置の溶融したインクの温度よりも低い温度まで加熱し、この実施形態では、中間転写体および最終的な記録シートの相対温度は、(1)中間転写体を最終的な記録基板の温度より高く、印刷装置の溶融したインクよりも低い温度まで加熱するか、(2)最終的な記録基板を、中間転写体の温度より高く、印刷装置の溶融したインクよりも低い温度まで加熱するか;または(3)中間転写体および最終的な記録シートをほぼ同じ温度まで加熱してもよい。ある特定の実施形態では、印刷装置は、インクの液滴が圧電振動要素の振幅によって画像のパターンになるように吐出される圧電式印刷プロセスを利用する。本明細書に開示されるようなインクを、例えば、ホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルトサーマルインクジェット印刷、ホットメルト連続流インクジェット印刷または偏向インクジェット印刷などのような他のホットメルト印刷プロセスで使用してもよい。また、本明細書に開示した転相インクを、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスで使用してもよい。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
(レオロジー試験)
UVインクプリンタで要求される望ましい吐出可能な粘度を保持している、本実施形態のインク中のエポキシ化された大豆油アクリレートモノマー添加量の最適な量を決定するために、試験を行った。本実施形態の数種類の調製されたシアンインクの温度に対する複素粘度のレオロジープロットを示す図に示されるように、適切なインク配合物は、エポキシ化された大豆油アクリレートモノマーを25重量%まで含む。
【0043】
(固体インクの調製)
エポキシ化された油に由来するアクリレートを組み込んだ種々のUV硬化性転相インク組成物を以下のように調製した。30mLのコハク色のガラス瓶を90℃に加熱し、これにSR9003モノマー(Sartomer Company(エクストン、ペンシルバニア)から入手可能なプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート)、IRGACURE 379、819、127(BASF Specialty Chemicals(バーゼル、スイス)から入手可能な光開始剤)、IRGASTAB UV10(硬化速度への影響がきわめて小さく、UV硬化性組成物のゲル化を防ぐのに有効なラジカル捕捉剤として作用する安定化剤、これもBASF Specialty Chemicalsから入手可能)を入れた。この混合物を撹拌しながら固体成分が溶解するまで加熱した。次いで、UNILIN 350アクリレート(UNILIN 350に由来するアクリレート改質されたワックス、Baker Petrolite(ヒューストン、テキサス)から入手可能)、目的のエポキシ化されたアクリレート油(エポキシ化された大豆油アクリレート、Aldrich Chemicalsから、ESOAと省略)を混合物に加えた。この混合物を撹拌しつつ1時間加熱し、インク基剤の調製を完了させた。最後に、SR9003中の顔料分散濃縮物を加え、この混合物をさらに1時間撹拌した。調製したインクの配合を表1に示す。フェニルグリコールで保護されたアミドゲル化剤をすべての実施例で使用し、希釈剤としてモノマーSR9003を同時に加えた。
【表1】

【0044】
表1において、調製されたインクは、配合物で使用されたエポキシ化されたアクリレート油の量がさまざまである。例えば、インクAは、5重量%のエポキシ化されたアクリレート油を含み、インクBは、10重量%のエポキシ化されたアクリレート油を含み、インクCは、20重量%のエポキシ化されたアクリレート油を含み、予測例であるインクDは、25重量%のエポキシ化されたアクリレート油を含む。
【0045】
(試験結果)
インクA、B、Cを、K−印刷プルーファを用い、600W Fusions UV Lighthammer UV硬化ランプに水銀D球を取り付け、移動コンベアベルトで、32fpmで移動しつつ、コーティングしていないMylarシートに印刷した。硬化性を評価するために、硬化した膜に、綿スワブを用い、メチルエチルケトン(MEK)二重摩耗試験を行った。以下の表2は、本実施形態の膜の耐MEK摩耗性をまとめている。ここからわかるように、所定の割合のESOAを含むインクの性能は、許容範囲にある標準に匹敵する耐摩耗性を有している。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性ワックスと;
1種類以上のモノマーと;
アミドゲル化剤と;
光開始剤と;
場合により、着色剤とを含み、1種類以上のモノマーが、1個以上のエポキシ基を有する不飽和油がアクリル酸によって官能基化される反応の生成物を含む、硬化性固体インク。
【請求項2】
前記反応の生成物が、エポキシ化されたアクリレート油である、請求項1に記載の硬化性固体インク。
【請求項3】
前記エポキシ化されたアクリレート油が、エポキシ化された大豆油アクリレート、エポキシ化されたヒマシ油アクリレート、エポキシ化された亜麻仁油アクリレート、エポキシ化された菜種油アクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の硬化性固体インク。
【請求項4】
前記エポキシ化されたアクリレート油が、前記硬化性固体インクの合計重量の約1〜約25重量%の量で存在する、請求項1に記載の硬化性固体インク。
【請求項5】
前記1種類以上のモノマーが、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートをさらに含む、請求項1に記載の硬化性固体インク。
【請求項6】
前記硬化性ワックスが、前記硬化性固体インクの合計重量の約2〜約10重量%の量で存在する、請求項1に記載の硬化性固体インク。
【請求項7】
前記アミドゲル化剤が、前記硬化性固体インクの合計重量の約2〜約25重量%の量で存在する、請求項1に記載の硬化性固体インク。
【請求項8】
前記光開始剤が、前記硬化性固体インクの合計重量の約1〜約15重量%の量で存在する、請求項1に記載の硬化性固体インク。
【請求項9】
硬化性ワックスと;
1種類以上のモノマーと;
アミドゲル化剤と;
光開始剤と;
場合により、着色剤とを含み、1種類以上のモノマーが、以下の構造を有するエポキシ化された化合物を含む、硬化性固体インク。
【化1】

【請求項10】
硬化性ワックスと;
1種類以上のモノマーと;
アミドゲル化剤と;
光開始剤と;
場合により、着色剤とを含み、1種類以上のモノマーが、エポキシ化された油とアクリル酸とを、エポキシド基のいくつか、またはすべてが開環し、アクリレート基が骨格構造に組み込まれるように反応させて得られるエポキシ化されたアクリレート油を含む、硬化性固体インク。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149256(P2012−149256A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4331(P2012−4331)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】