説明

耐候性有色樹脂組成物およびその製法

(i)アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)またはアクリレート変性ASA25〜45重量%と、(ii)スチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレン、スチレンおよびアクリロニトリル;スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはα−メチルスチレン、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはこれらの混合物から誘導される構造単位を含む少なくとも1種の硬質熱可塑性ポリマー75〜55重量%と、(iii)少なくとも1種の酸化鉄被覆雲母と、(iv)少なくとも1種の有機または無機着色剤とを含む耐候性組成物を開示する。該組成物を製造する方法も開示する。前記組成物から製造される物品も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐候性を示す有色樹脂組成物に関する。特定の実施形態では、本発明は、優れた耐候性を示す、雲母を含む有色樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品を得る樹脂組成物中にSolvent Red 135などの有機赤色着色剤を入れることによって、有色成形品を製造することが知られている。有色成形品に特別な視覚効果を与えるために、多くの場合樹脂組成物に雲母状顔料が添加される。しかし、酸化チタン被覆雲母などの特定の雲母状顔料の存在下において、有機赤色着色剤は耐候性試験条件に対して安定でなく、このような組成物を含む成形品において望ましくない変色が観察されることが認められてきた。このような組成物において、有機赤色着色剤を標準的な赤色酸化鉄と取り替えることによって色を付けると、成形品の色は、所望の用途にはあまりに暗く、かつ/またはあまりに鈍くなる。耐候性試験条件に曝露した成形品において色安定性を示す有色樹脂組成物が必要とされている。特に、耐候性試験条件に曝露した成形品において色安定性を示す有色樹脂組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、安定した色を保持しながらも、色安定性および優れた耐候性を示す新規な組成物を発見した。一実施形態では、本発明は、(i)アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)またはアクリレート変性ASA25〜45重量%と、(ii)スチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレン、スチレンおよびアクリロニトリル;スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはα−メチルスチレン、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、またはこれらの混合物から誘導される構造単位を含む少なくとも1種の硬質熱可塑性ポリマー75〜55重量%と、(iii)少なくとも1種の酸化鉄被覆雲母と、(iv)少なくとも1種の有機または無機の二次着色剤とを含む樹脂組成物であって、成分(iii)および(iv)を合わせた量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で成形品を2500kJ/mに曝露した後、デルタL値が鏡面反射成分を除外して測定して+/−0.6未満であり、デルタE値が+/−1.0未満である成形品を提供するのに有効な量であり、重量%値は樹脂成分(i)および(ii)の重量基準である、耐候性有色樹脂組成物を含む。
【0004】
別の実施形態では、本発明は、(i)アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)またはアクリレート変性ASA25〜45重量%と、(ii)スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートから誘導される構造単位を含む少なくとも1種の硬質熱可塑性ポリマー75〜55重量%と、(iii)樹脂100部当たり0.1部(phr)〜10phrの範囲の量で存在する少なくとも1種の酸化鉄被覆雲母と、(iv)少なくとも1種の有機二次着色剤と、(v)酸化鉄(III)、カーボンブラック、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機二次着色剤とを含む樹脂組成物であって、成分(iii)、(iv)および(v)を合わせた量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で成形品を2500kJ/mに曝露した後、デルタL値が鏡面反射成分を除外して測定して+/−0.6未満であり、デルタE値が+/−1.0未満である成形品を提供するのに有効な量であり、重量%値は樹脂成分(i)および(ii)の重量基準である、耐候性有色樹脂組成物を含む。
【0005】
さらに別の実施形態では、本発明は、(i)アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)またはアクリレート変性ASA25〜45重量%と、(ii)スチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレン、スチレンおよびアクリロニトリル;スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはα−メチルスチレン、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、またはこれらの混合物から誘導される構造単位を含む少なくとも1種の硬質熱可塑性ポリマー75〜55重量%と、(iii)少なくとも1種の酸化鉄被覆雲母と、(iv)少なくとも1種の有機二次着色剤と、(v)酸化鉄(III)、カーボンブラック、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機二次着色剤とを含み、成分(iii)、(iv)および(v)を合わせた量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で成形品を2500kJ/mに曝露した後、デルタL値が鏡面反射成分を除外して測定して+/−0.6未満であり、デルタE値が+/−1.0未満である成形品を提供するのに有効な量であり、重量%値は樹脂成分(i)および(ii)の重量基準である耐候性有色樹脂組成物を調製する方法であって、(A)雲母成分(iii)の全部または一部および硬質熱可塑性ポリマー(ii)の少なくとも一部を含むマスターバッチを調製するステップと、(B)マスターバッチを混練プロセスの残留組成成分と混ぜ合わせるステップと、(C)混合物を混練するステップとを含む方法を含む。
【0006】
さらに他の実施形態では、本発明は前記組成物から製造される物品を含む。本発明の種々の他の特徴、態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することによってさらに明らかになる。
詳細な説明
【0007】
以下の明細書およびそれ続く特許請求の範囲では、いくつかの用語に言及するが、それらは以下の意味を持つよう定義される。単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上明確にそうでないと指示しない限り、複数の指示対象を含む。「モノエチレン性不飽和」という用語は、1分子当たり1箇所のエチレン性不飽和部位があることを意味する。「ポリエチレン性不飽和」という用語は、1分子当たり2箇所以上のエチレン性不飽和部位があることを意味する。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートおよびメタクリレートを総称し、例えば、「(メタ)アクリレートモノマー」という用語は、アクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーを総称する。「(メタ)アクリルアミド」という用語は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドを総称する。
【0008】
本発明の種々の実施形態で使用される「アルキル」という用語は、炭素原子および水素原子を含み、かつ炭素および水素に加えて例えば周期表の15、16および17族から選択される原子を任意成分として含む直鎖アルキル、分枝アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、トリシクロアルキルおよびポリシクロアルキル基を示すことを意図する。アルキル基は、飽和または不飽和とすることができ、例えばビニルまたはアリルを含むことができる。「アルキル」という用語は、アルコキシド基のアルキル部分も含む。種々の実施形態で、ノルマルおよび分枝アルキル基は、炭素原子1〜約32個を含むものであり、例示的で非限定的な例として、C〜C32アルキル(任意選択で、C〜C32アルキル、C〜C15シクロアルキルまたはアリールから選択される1つまたは複数の基によって置換される)、およびC〜C15シクロアルキル(任意選択でC〜C32アルキルから選択される1つまたは複数の基によって置換される)を含む。いくつかの特定の例示的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ターシャリー−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシルが含まれる。シクロアルキルおよびビシクロアルキル基のいくつかの例示的で非限定的な例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロヘプチルおよびアダマンチルが含まれる。種々の実施形態では、アラルキル基は、炭素原子7〜約14を含むものであり、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピルおよびフェニルエチルが含まれるが、これらに限定されない。本発明の種々の実施形態で使用する「アリール」という用語は、環炭素原子6〜20個を含む置換または非置換のアリール基を示すことを意図する。これらのアリール基のいくつかの例示的で非限定的な例には、C〜C20アリール(任意選択で、C〜C32アルキル、C〜C15シクロアルキル、アリールならびに周期表の15、16および17族から選択される原子を含む官能基から選択される1つまたは複数の基によって置換される)が含まれる。アリール基のいくつかの特定の例示的な例には、置換または非置換のフェニル、ビフェニル、トリル、ナフチルおよびビナフチルが含まれる。
【0009】
本発明の組成物には、硬質熱可塑性相中に分散した不連続なエラストマー相を含むゴム変性熱可塑性樹脂が含まれ、硬質熱可塑性相の少なくとも一部はエラストマー相にグラフトされている。ゴム変性熱可塑性樹脂は、グラフトのために少なくとも1種のゴム基材を使用する。ゴム基材は、組成物の不連続なエラストマー相を含む。グラフト可能なモノマーの少なくとも一部によりグラフトされやすいものであれば、ゴム基材に特に制限はない。いくつかの実施形態では、適当なゴム基材には、ジメチルシロキサン/ブチルアクリレートゴムまたはシリコーン/ブチルアクリレート複合ゴム;エチレン−プロピレンゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムなどのポリオレフィンゴム;あるいはポリメチルシロキサンゴムなどのシリコーンゴムポリマーが含まれる。ゴム基材は、典型的には、ガラス転移温度Tgが、一実施形態では25℃以下、別の実施形態では約0℃未満、他の別の実施形態では約−20℃未満、およびさらに別の実施形態では約−30℃未満である。本明細書で言及する場合、ポリマーのTgは示差走査熱量測定(DSC;加熱速度20℃/分、Tg値は変曲点で測定される)によって測定される。
【0010】
一実施形態では、ゴム基材は、(C〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよび前記モノマーの少なくとも1種を含む混合物から選択される少なくとも1種のモノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリレートモノマーの既知の方法による重合から得られる。本明細書で使用される場合、例えば化合物または化学置換基などの特定の単位に適用される「(C〜C)」という用語は、炭素原子含量が、このような単位当たり炭素原子「x」個〜「y」個であること意味する。例えば、「(C〜C12)アルキル」は、1基当たり炭素原子が1〜12個である直鎖、分枝または環状のアルキル置換基を意味する。適当な(C〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマーには、それだけに限定されないが、例示的な例としてエチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソ−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートを含む(C〜C12)アルキルアクリレートモノマー;ならびに例示的な例としてメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソ−プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレートおよびデシルメタクリレートを含むこれらの(C〜C12)アルキルメタクリレート類似体が含まれる。本発明の特定の実施形態では、ゴム基材はn−ブチルアクリレートから誘導される構造単位を含む。
【0011】
種々の実施形態では、ゴム基材は、任意成分として、少なくとも1種のポリエチレン性不飽和モノマー、例えばゴム基材を調製するために使用されるモノマーと共重合することができるもの、から誘導される構造単位を少量、例えば約5重量%まで、含むこともできる。ポリエチレン性不飽和モノマーは、多くの場合、ゴム粒子の架橋結合を提供するため、および/または、グラフトするモノマーとの後続反応のためにゴム基材中に「グラフト結合(graftlinking)」部位を提供するために使用される。適当なポリエチレン性不飽和モノマーには、ブチレンジアクリレート、ジビニルベンゼン、ブテンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリアリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリシクロデセニルアルコールのアクリレートおよびこのようなモノマーの少なくとも1種を含む混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ゴム基材は、トリアリルシアヌレートから誘導される構造単位を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、ゴム基材は、任意成分として、少量の他の不飽和モノマー、例えばゴム基材を調製するために使用されるモノマーと共重合可能であるもの、から誘導される構造単位を含むことができる。特定の実施形態では、ゴム基材は、任意成分として、(メタ)アクリレートモノマー、アルケニル芳香族モノマーおよびモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから選択される1つまたは複数のモノマーから誘導される構造単位を約25重量%まで含むことができる。適当な共重合可能な(メタ)アクリレートモノマーには、C〜C12アリールもしくはハロアリール置換アクリレート、C〜C12アリールもしくはハロアリール置換メタクリレート、またはこれらの混合物;例えばアクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸などのモノエチレン性不飽和カルボン酸;グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシ(C〜C12)アルキル(メタ)アクリレート;例えばシクロヘキシルメタクリレートなどの(C〜C12)シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー;例えばアクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−置換アクリルアミドもしくはN−置換メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドモノマー;例えばマレイミド、N−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド、N−フェニルマレイミドおよびハロアリール置換マレイミドなどのマレイミドモノマー;無水マレイン酸;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルならびに例えば酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのビニルエステルが含まれるが、これらに限定されない。適当なアルケニル芳香族モノマーには、例えばスチレン、芳香環に1つまたは複数のアルキル、アルコキシ、ヒドロキシまたはハロ置換基が結合した置換スチレンなどのビニル芳香族モノマー(例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルビニルトルエン、ビニルキシレン、トリメチルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、α−クロロスチレン、ジクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ブロモスチレン、α−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、メトキシスチレンが含まれるが、これらに限定されない)、及び、ビニル置換縮合芳香環構造(例えばビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど)、ならびに、ビニル芳香族モノマーと例えばアクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルおよびα−クロロアクリロニトリルなどのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーの混合物が含まれるが、これらに限定されない。芳香環上に複数の置換基が混在している置換スチレンも適当である。本明細書で使用される場合、「モノエチレン性不飽和ニトリルモノマー」という用語は、1分子当たり1個のニトリル基および1箇所のエチレン性不飽和部位を含むアクリル化合物を意味し、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
特定の実施形態では、ゴム基材は、1つまたは複数の(C〜C12)アルキルアクリレートモノマーから誘導される反復単位を含む。さらに別の特定の実施形態では、ゴム基材は、1つまたは複数の(C〜C12)アルキルアクリレートモノマー、より具体的にはエチルアクリレート、ブチルアクリレートおよびn−ヘキシルアクリレートから選択される1つまたは複数のモノマー、から誘導される反復単位40〜95重量%を含む。
【0014】
ゴム基材は、ゴム変性熱可塑性樹脂中に、ゴム変性熱可塑性樹脂の重量基準で、一実施形態では約4重量%〜約94重量%のレベルで、別の実施形態では約10重量%〜約80重量%のレベルで、別の実施形態では約15重量%〜約80重量%のレベルで、別の実施形態では約35重量%〜約80重量%のレベルで、別の実施形態では約40重量%〜約80重量%のレベルで、別の実施形態では約25重量%〜約60重量%のレベルで、そしてさらに別の実施形態では約40重量%〜約50重量%のレベルで存在することができる。他の実施形態では、ゴム基材は、ゴム変性熱可塑性樹脂中に、特定のゴム変性熱可塑性樹脂の重量基準で、約5重量%〜約50重量%のレベルで、約8重量%〜約40重量%のレベルで、または約10重量%〜約30重量%のレベルで存在することができる。
【0015】
ゴム基材(グラフト後のゴム基材と区別するために、以下「初期ゴム基材」という場合がある)の粒度分布に特に制限はない。いくつかの実施形態では、初期ゴム基材は、粒子の大きさが約50ナノメートル(nm)〜約1000nmに及ぶ、幅広い、基本的に単峰性の粒度分布を有することができる。他の実施形態では、初期ゴム基材の平均粒度は、約100nm未満とすることができる。さらに他の実施形態では、初期ゴム基材の平均粒度は、約80nm〜約400nmの範囲とすることができる。他の実施形態では、初期ゴム基材の平均粒度は、約400nmを超えることができる。さらに他の実施形態では、初期ゴム基材の平均粒度は、約400nm〜約750nmの範囲とすることができる。さらに他の実施形態では、初期ゴム基材は、少なくとも2種の平均粒度分布を有する粒度の混合物である粒子を含む。特定の実施形態では、初期ゴム基材は、各々の平均粒度分布が約80nm〜約750nmの範囲にある粒子の混合物を含む。別の特定の実施形態では、初期ゴム基材は、一方の平均粒度分布が約80nm〜約400nmの範囲にあり、もう一方の平均粒度分布が幅広く基本的に単峰性である粒子の混合物を含む。
【0016】
ゴム基材は、バルク法、溶液法または乳化法などの既知の方法に従って製造することができるが、これらに限定されない。1つの非限定的実施形態では、ゴム基材は、フリーラジカル開始剤、例えばアゾニトリル開始剤、有機過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤または酸化還元開始剤系の存在下で、かつ任意成分として連鎖移動剤、例えばアルキルメルカプタンの存在下で、水系乳化重合によってゴム基材の粒子を生成することによって、製造することができる。
【0017】
ゴム変性熱可塑性樹脂の硬質熱可塑性樹脂相は、1つまたは複数の熱可塑性ポリマーを含む。本発明の一実施形態では、モノマーはゴム基材の存在下で重合され、それによって硬質熱可塑性相が生成され、少なくともその一部は、エラストマー相に化学的にグラフトされる。ゴム基材に化学的にグラフトされた硬質熱可塑性相の部分を、以下、「グラフトコポリマー」という場合がある。硬質熱可塑性相は、一実施形態では約25℃を超え、別の実施形態では90℃以上、さらに別の実施形態では100℃以上のガラス転移温度(Tg)を示す熱可塑性ポリマーまたはコポリマーを含む。
【0018】
特定の実施形態では、硬質熱可塑性樹脂相は、(C〜C12)アルキル−(メタ)アクリレートモノマー、アリール−(メタ)アクリレートモノマー、アルケニル芳香族モノマーおよびモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択される1つまたは複数のモノマーから誘導される構造単位を有するポリマーを含む。適当な(C〜C12)アルキル−(メタ)アクリレートおよびアリール−(メタ)アクリレートモノマー、アルケニル芳香族モノマーおよびモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーには、ゴム基材の説明の箇所で上述したモノマーが含まれる。さらに、硬質熱可塑性相は、相についてのTgの制限が満たされていれば、1つまたは複数の他の共重合可能なモノマーから誘導される第3の反復単位を約10重量%まで任意成分として含むことができる。
【0019】
硬質熱可塑性相は、典型的には、1つまたは複数のアルケニル芳香族ポリマーを含む。適当なアルケニル芳香族ポリマーは、1つまたは複数のアルケニル芳香族モノマーから誘導される構造単位を少なくとも約20重量%含む。一実施形態では、硬質熱可塑性相は、1つまたは複数のアルケニル芳香族モノマーおよび1つまたは複数のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導される構造単位を有するアルケニル芳香族ポリマーを含む。このようなアルケニル芳香族ポリマーの例には、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン/アクリロニトリルコポリマーまたはα−メチルスチレン/スチレン/アクリロニトリルコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。別の特定の実施形態では、硬質熱可塑性相は、1つまたは複数のアルケニル芳香族モノマー、1つまたは複数のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、ならびに(C〜C12)アルキル−およびアリール−(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1つまたは複数のモノマーから誘導される構造単位を有するアルケニル芳香族ポリマーを含む。このようなアルケニル芳香族ポリマーの例には、スチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートコポリマー、α−メチルスチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートコポリマーおよびα−メチルスチレン/スチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。適当なアルケニル芳香族ポリマーのさらなる例には、スチレン/メチルメタクリレートコポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、スチレン/アクリロニトリル/無水マレイン酸コポリマーおよびスチレン/アクリロニトリル/アクリル酸コポリマーが含まれる。これらのコポリマーは、単独でまたは混合物として硬質熱可塑性相に使用することができる。
【0020】
コポリマー中の構造単位が1つまたは複数のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導される場合、グラフトコポリマーを含むコポリマーおよび硬質熱可塑性相を生成するために添加されるニトリルモノマーの量は、グラフトコポリマーを含むコポリマーおよび硬質熱可塑性相を生成するために添加されるモノマーの総重量基準で、一実施形態では約5重量%〜約40重量%の範囲、別の実施形態では約5重量%〜約30重量%の範囲、別の実施形態では約10重量%〜約30重量%の範囲、およびさらに別の実施形態では約15重量%〜約30重量%の範囲とすることができる。
【0021】
コポリマー中の構造単位が1つまたは複数の(C〜C12)アルキル−およびアリール−(メタ)アクリレートモノマーから誘導される場合、グラフトコポリマーを含むコポリマーおよび硬質熱可塑性相を生成するために添加される前記モノマーの量は、グラフトコポリマーを含むコポリマーおよび硬質熱可塑性相を生成するために添加されるモノマーの総重量基準で、一実施形態では約5重量%〜約50重量%の範囲、別の実施形態では約5重量%〜約45重量%の範囲、別の実施形態では約10重量%〜約35重量%の範囲、およびさらに別の実施形態では約15重量%〜約35重量%の範囲とすることができる。
【0022】
ゴム基材と硬質熱可塑性相を構成するモノマーとの間に起こるグラフトの量は、ゴム相の相対量および組成とともに変化する。一実施形態では、組成物中の硬質熱可塑性相の総量基準で、約10重量%を超える硬質熱可塑性相がゴム基材に化学的にグラフトされる。別の実施形態では、組成物中の硬質熱可塑性相の総量基準で、約15重量%を超える硬質熱可塑性相がゴム基材に化学的にグラフトされる。さらに別の実施形態では、組成物中の硬質熱可塑性相の総量基準で、約20重量%を超える硬質熱可塑性相がゴム基材に化学的にグラフトされる。特定の実施形態では、ゴム基材に化学的にグラフトされる硬質熱可塑性相の量は、組成物中の硬質熱可塑性相の総量基準で、約5重量%〜約90重量%、約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約85重量%、約15重量%〜約50重量%、または約20重量%〜約50重量%の範囲とすることができる。さらに他の実施形態では、硬質熱可塑性相の約40重量%〜約90重量%はフリー、すなわちグラフトされていない。
【0023】
硬質熱可塑性相は、ゴム変性熱可塑性樹脂中に、ゴム変性熱可塑性樹脂の重量基準で、一実施形態では約85重量%〜約6重量%のレベルで、別の実施形態では約65重量%〜約6重量%のレベルで、別の実施形態では約60重量%〜約20重量%のレベルで、別の実施形態では約75重量%〜約40重量%のレベルで、およびさらに別の実施形態では約60重量%〜約50重量%のレベルで存在することができる。他の実施形態では、硬質熱可塑性相は、ゴム変性熱可塑性樹脂の重量基準で、約90重量%〜約30重量%の範囲で存在することができる。
【0024】
一実施形態では、各々の平均粒度が異なる2種以上の異なるゴム基材を重合反応において別々に使用して硬質熱可塑性相を調製し、次いで生成物を一緒に混合してゴム変性熱可塑性樹脂を製造することができる。各々の初期ゴム基材の平均粒度が異なるこのような生成物が一緒に混合される例示的な実施形態では、前記基材の比は、約90:10〜約10:90の範囲、または約80:20〜約20:80の範囲、または約70:30〜約30:70の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、粒度がより小さい初期ゴム基材は、2種以上の粒度の初期ゴム基材を含むこのような混合物における主成分である。
【0025】
硬質熱可塑性相は、既知の方法、例えば塊状重合、乳化重合、懸濁重合またはこれらの組合せによって製造することができ、ここで硬質熱可塑性相の少なくとも一部は、ゴム相中に存在する不飽和部位との反応によってゴム相に化学的に結合、すなわち「グラフト化」される。グラフト反応は、バッチ、連続または半連続プロセスで行うことができる。代表的な手順には、それだけに限定されないが、米国特許第3944631号に教示されている手順が含まれる。ゴム相中の不飽和部位は、例えばグラフト結合するモノマーから誘導されたゴムの構造単位中の残留不飽和部位によって提供される。本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1種の第1モノマーがゴム基材にグラフトされ、それに続いて前記第1モノマーとは異なる少なくとも1種の第2モノマーがグラフトされる段階において、任意選択で、硬質熱可塑性相の同時生成を伴うゴム基材へのモノマーのグラフトを行うことができる。ゴム基材に段階的にモノマーをグラフトする代表的な手順には、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第7049368号に教示される手順が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
特定の実施形態では、ゴム変性熱可塑性樹脂は、GELOY(登録商標)の商標でSABIC Innovative Plastics(商標)によって製造販売されているアクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)グラフトコポリマー、および特にアクリレート変性ASAグラフトコポリマーである。ASAグラフトコポリマーには、例えば、米国特許第3711575号に開示されているものが含まれる。ASAグラフトコポリマーには、米国特許第4731414号および第4831079号に記載されているものも含まれる。アクリレート変性ASAが使用される本発明のいくつかの実施形態では、ASA成分は、硬質相、ゴム相、またはこれら両方の一部として、C1〜C12アルキル−およびアリール−(メタ)アクリレートからなる群から選択されるモノマーから生成される追加的なアクリレートグラフトをさらに含む。このようなコポリマーをアクリレート変性アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマーまたはアクリレート変性ASAと呼ぶ。特定のモノマーは、PMMA変性ASA(以下、「MMA−ASA」という場合がある)をもたらすメチルメタクリレートである。本発明の文脈において、「ASA」という用語は、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)およびアクリレート変性ASAの両方を指すものである。
【0027】
ゴム変性熱可塑性樹脂は、本発明の組成物中に、組成物中の樹脂成分の重量基準で、一実施形態では約5重量%〜約90重量%の範囲、別の実施形態では約10重量%〜約80重量%の範囲、別の実施形態では約10重量%〜約70重量%の範囲、別の実施形態では約15重量%〜約65重量%の範囲、さらに別の実施形態では約20重量%〜約65重量%の範囲、さらに別の実施形態では約25重量%〜約45重量%の範囲、およびさらに別の実施形態では約30重量%〜約40重量%の範囲の量で存在する。
【0028】
ゴム変性熱可塑性樹脂の硬質熱可塑性相は、ゴム基材の存在下で行われる重合の結果として存在する、あるいは1つまたは複数の別々に合成した硬質熱可塑性ポリマーを、組成物を含むゴム変性熱可塑性樹脂に添加した結果として存在する、あるいは両方法の組合せの結果として存在する硬質熱可塑性相を含むことができる。種々の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1種のアルケニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーの混合物から誘導される構造単位を含む別々に合成した硬質熱可塑性樹脂ポリマーを含む。適当なアルケニル芳香族モノマーには、例えばスチレン、芳香環に1つまたは複数のアルキル、アルコキシ、ヒドロキシまたはハロ置換基が結合した置換スチレンなどのビニル芳香族モノマー(例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルビニルトルエン、ビニルキシレン、トリメチルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、α−クロロスチレン、ジクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ブロモスチレン、α−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、メトキシスチレンが含まれるが、これらに限定されない)、並びに、ビニル置換縮合芳香環構造(例えばビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど)が含まれるが、これらに限定されない。芳香環上に複数の置換基が混在している置換スチレンも適当である。本明細書で使用される場合、「モノエチレン性不飽和ニトリルモノマー」という用語は、1分子当たり1個のニトリル基および1箇所のエチレン性不飽和部位を含むアクリル化合物を意味し、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、別々に合成された硬質熱可塑性ポリマーは、ゴム変性熱可塑性樹脂を構成する硬質熱可塑性相の構造単位と基本的に同一の構造単位を含む。いくつかの特定の実施形態では、別々に合成された硬質熱可塑性ポリマーは、スチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレン、スチレンおよびアクリロニトリル;スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはα−メチルスチレン、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートなど、またはこれらの混合物から誘導される構造単位を含む。1つの特定の実施形態では、別々に合成された硬質熱可塑性ポリマーは、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートから誘導される構造単位(以下、「MMASAN」と略される場合がある)を含む。別々に合成された硬質熱可塑性ポリマーは、本発明の組成物中に、組成物中の樹脂成分の重量基準で、一実施形態では約10重量%〜約95重量%の範囲、別の実施形態では約20重量%〜約90重量%の範囲、別の実施形態では約30重量%〜約90重量%の範囲、別の実施形態では約35重量%〜約85重量%の範囲、さらに別の実施形態では約35重量%〜約80重量%の範囲、さらに別の実施形態では約55重量%〜約75重量%の範囲、およびさらに別の実施形態では約60重量%〜約70重量%の範囲の量で存在する。
【0029】
本発明の実施形態中の組成物は、酸化鉄被覆雲母を含む。異なる種類の酸化鉄被覆雲母の混合物を使用することができる。酸化鉄被覆雲母は、混合性の酸化鉄被覆雲母、例えば酸化鉄および二酸化チタンで被覆された雲母を含むことができる。酸化鉄被覆雲母の例示的な例には、IRIODIN(登録商標)型:500、502、504、505、507、520、522、524、530、532および534などのMerckから市販されているIRIODIN(登録商標)500型酸化鉄被覆雲母、IRIODIN(登録商標)型:300、302、303、306、309、320、323、351および355などのMerckから市販されているIRIODIN(登録商標)300型酸化鉄被覆雲母、KD型:401、402、403、404、405および406などのKodia Company Limitedから市販されているKD−400型酸化鉄被覆雲母、ならびにSun Chemical Performance Pigmentsから市販されているSunPEARL(登録商標)酸化鉄被覆雲母が含まれるが、これらに限定されない。他の例示的な酸化鉄被覆雲母は、米国特許第4146403号、第4744832号および第5759255号に教示されている。本発明の組成物は、典型的には、組成物の成形品に所望の色を与えるのに十分な量の酸化鉄被覆雲母を含む。代表的な所望の色には、銅色、ブロンズ色、金色、赤金色および赤の色合いが含まれるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、本発明の組成物は、一実施形態では樹脂100部当たり約0.1部(phr)〜約10phrの範囲、別の実施形態では約0.3phr〜約6phrの範囲、およびさらに別の実施形態では約0.5phr〜約4phrの範囲の量の酸化鉄被覆雲母を含む。本発明の組成物中の酸化鉄被覆雲母の量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で2500kJ/mに曝露した後、デルタL値(鏡面反射成分を除外して測定)が、一実施形態では約+/−0.6未満、および別の実施形態では約+/−0.5未満である成形品を提供するのに有効な量である。さらに他の特定の実施形態では、本発明の組成物中の酸化鉄被覆雲母の量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で2500kJ/mに曝露した後、デルタE値が、一実施形態では約+/−1.0未満、および別の実施形態では約+/−0.8未満である成形品を提供するのに有効な量である。
【0030】
種々の実施形態では、本発明の組成物は、有機、無機または有機金属とすることができる染料および顔料などの二次着色剤を含む。例示的な二次着色剤は、特に限定されず、組成物の成形品に酸化鉄被覆雲母がもたらす色の生成に寄与するか、またはこれを阻害しないかのいずれかである着色剤を含む。適当な二次着色剤は、本発明の組成物の実施形態中に、単独でまたは2種以上の着色剤を含む混合物として使用することができる。いくつかの特定の実施形態では、少なくとも2種の有機二次着色剤を使用することができる。他の特定の実施形態では、少なくとも1種の有機二次着色剤および少なくとも1種の無機二次着色剤を使用することができる。さらに他の特定の実施形態では、少なくとも2種の有機二次着色剤および少なくとも1種の無機二次着色剤を使用することができる。例示的な有機二次着色剤には、アントラキノン、アントラセン、アゾ、無水フタル酸、フタロシアニン、インジゴ/チオインジゴ、アゾメチン、アゾメチン−アゾ、ジオキサジン、キナクリドン、クマリン、ピラゾロン、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、ジケトピロロピロール、イミダゾール、ナフタルイミド、キサンテン、チオキサンテン、アジン、ローダミン、ペリレンまたはペリノン有機着色剤など、またはこれらの混合物の種類から誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない。例示的な無機二次着色剤には、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、複合酸化物など、またはこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。他の特定の実施形態では、本発明の組成物は、二酸化チタンおよびカーボンブラックの一方または両方を含む。二次着色剤のいくつかの例には、Solvent Yellow 93、Solvent Yellow 163、Solvent Yellow 114/Disperse Yellow 54、Solvent Violet 36、Solvent Violet 13、Solvent Red 195、Solvent Red 179、Solvent Red 135、Solvent Orange 60、Solvent Green 3、Solvent Blue 97、Solvent Blue 104、Solvent Blue 101、Macrolex Yellow E2R、Disperse Yellow 201、Disperse Red 60、Diaresin Red K、Colorplast Red LB、Pigment Yellow 183、Pigment Yellow 138、Pigment Yellow 110、Pigment Violet 29、Pigment Red 209、Pigment Red 209、Pigment Red 202、Pigment Red 178、Pigment Red 149、Pigment Red 104、Pigment Red 108、Pigment Red 29、Pigment Red 122、Pigment Orange 68、Pigment Green 7、Pigment Green 36、Pigment Blue 60、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:3、Pigment Yellow 53、Pigment Yellow 184、Pigment Yellow 119、Pigment White 6、Pigment Red 101、Pigment Green 50、Pigment Green 17、Pigment Brown 24、Pigment Blue 29、Pigment Blue 28、Pigment Black 7、モリブデン酸鉛、クロム酸鉛、硫化セリウム、硫セレン化カドミウム、硫化カドミウムなどおよびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。これに関連して、本明細書の上記の二次着色剤は、酸化鉄被覆雲母とは別で異なるものである。
【0031】
本発明の組成物の実施形態中の二次着色剤の量は、特に限定されず、典型的には、組成物の成形品中に酸化鉄被覆雲母がもたらす色の生成に寄与するか、またはこれを阻害しないかのいずれかに有効な量である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の二次着色剤の量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で2500kJ/mに曝露した後、デルタL値(鏡面反射成分を除外して測定)が、一実施形態では約+/−0.6未満、および別の実施形態では約+/−0.5未満である成形品を提供するのに有効な量である。他の特定の実施形態では、本発明の組成物中の二次着色剤の量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で2500kJ/mに曝露した後、デルタE値が、一実施形態では約+/−1.0未満、および別の実施形態では約+/−0.8未満である成形品を提供するのに有効な量である。種々の実施形態では、本発明の組成物中に存在する1つまたは複数の二次着色剤の総量は、0.1phr〜10phrの範囲にある。種々の実施形態では、二次着色剤の総量は、約4phr以下、特に約3phr以下、さらに特に約2phr以下である。これに関連して、本明細書の上記の存在する二次着色剤の量は、存在する酸化鉄被覆雲母の量とは別である。本発明のいくつかの特定の実施形態では、主として酸化鉄被覆雲母が存在することから、別の二次赤色着色剤を含む必要がなく、所望の色を示す成形品が提供される。
【0032】
本発明の組成物は、色安定剤、熱安定剤、光安定剤などの安定剤、抗酸化剤、UV遮断剤およびUV吸収剤;潤滑剤、流動促進剤および他の加工助剤;可塑剤、帯電防止剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、充填剤などの添加剤を含む当技術分野で既知の添加剤を任意成分として含むこともできるが、これらに限定されない。例示的な添加剤には、シリカ、ケイ酸塩、ゼオライト、石粉、ガラスの繊維または球、カーボン繊維、グラファイト、雲母、炭酸カルシウム、タルク、リトポン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、珪藻土、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、粉砕石英、粘土、か焼粘土、タルク、カオリン、石綿、セルロース、木粉、コルク、綿、ならびに合成紡織繊維、特にガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維などの補強充填剤、ならびに金属フレーク(アルミニウムフレークを含むが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。多くの場合、本発明の組成物中には2種以上の添加剤が含まれ、いくつかの実施形態では、1タイプの2種以上の添加剤が含まれる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、潤滑剤、安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、UV遮断剤、UV吸収剤およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む。
【0033】
組成物において1つまたは複数の成分を他の成分と混ぜ合わせる方法は、本発明の実施形態では特に重要ではない。いくつかの実施形態では、成分の全部または一部は、基本的に無希釈の形で他の組成成分と混ぜ合わせることができる。他の実施形態では、非樹脂成分の全部または一部を1つまたは複数の樹脂成分の少なくとも一部と予め混練してマスターバッチを調製することができ、次いで残りの樹脂成分を添加してそれと混合することができ、またいくつかの実施形態では他の樹脂および非樹脂成分とともに混合することができる。特定の実施形態では、酸化鉄被覆雲母などの1つもしくは複数の添加剤、または1つもしくは複数の着色剤、またはその両方の全部または一部、および/または、1つもしくは複数の従来の添加剤の全部または一部は、任意のマスターバッチ中に任意成分として存在させることができる。いくつかの実施形態では、そのマスターバッチは押出プロセスで調製される。1つの特定の実施形態では、マスターバッチは酸化鉄被覆雲母および少なくとも1種の樹脂成分を含み、マスターバッチ中の酸化鉄被覆雲母の量は、マスターバッチの重量基準で、一実施形態では10〜70重量%の範囲、および別の実施形態では20〜60重量%の範囲にある。別の特定の実施形態では、マスターバッチは、酸化鉄被覆雲母、ならびに、スチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレン、スチレンおよびアクリロニトリル;スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはα−メチルスチレン、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートなど、またはこれらの混合物から誘導される構造単位を含む少なくとも1種の硬質熱可塑性ポリマーを含む。1つの特定の実施形態では、本発明は、(i)アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)またはアクリレート変性ASA25〜45重量%と、(ii)スチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレン、スチレンおよびアクリロニトリル;スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはα−メチルスチレン、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、またはこれらの混合物から誘導される構造単位を含む少なくとも1種の硬質熱可塑性ポリマー75〜55重量%と、(iii)少なくとも1種の酸化鉄被覆雲母と、(iv)少なくとも1種の有機二次着色剤と、(v)酸化鉄(III)、カーボンブラック、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機二次着色剤とを含み、成分(iii)、(iv)および(v)を合わせた量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で成形品を2500kJ/mに曝露した後、デルタL値が鏡面反射成分を除外して測定して+/−0.6未満であり、デルタE値が+/−1.0未満である成形品を提供するのに有効な量であり、重量%値は樹脂成分(i)および(ii)の重量基準である耐候性有色樹脂組成物を調製する方法であって、(A)雲母成分(iii)の全部または一部および硬質熱可塑性ポリマー(ii)の少なくとも一部を含むマスターバッチを調製するステップと、(B)マスターバッチを混練プロセスの残留組成成分と混ぜ合わせるステップと、(C)混合物を混練するステップと、任意選択で(D)混練した樹脂成分を単離するステップとを含む方法を含む。
【0034】
本発明の組成物およびそれから製造される物品は、既知の熱可塑性加工技術によって調製することができる。使用することができる既知の熱可塑性加工技術には、押出成形、カレンダ成形、混練成形、異形押出成形、シート成形、共押出成形、成形、押出ブロー成形、熱成形、圧縮成形、射出成形、共射出成形および回転成形が含まれるが、これらに限定されない。本発明は、溶接、機械加工、インモールド装飾、塗料オーブン中での焼成、表面エッチング、ラミネーション、および/または熱成形などの、前記物品への追加的な成形作業がさらに考えられるが、これらに限定されない。本発明の組成物は、再粉剤されたまたは再加工された樹脂成分も含むことができる。
【0035】
本発明の組成物を含む物品も、本発明の実施形態である。例示的な物品には、屋外用途および/または物品が日光にさらされる用途で使用される物品などの、耐候性が必要とされる物品が含まれる。このような物品には、射出成形プロセスまたは異形押出成形またはシート成形プロセスによって調製される物品が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、物品は、本発明の組成物を含む少なくとも1つの層を含む多層物品を含むことができる。種々の実施形態では、多層物品は、本発明の組成物を含むキャップ層、および前記キャップ層とは異なる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む基板層を含むことができる。本発明の組成物を含むキャップ層を含む多層物品は、前記キャップ層のない同様の物品と比較して耐候性の向上を示すことができる。他の実施形態では、物品は、基本的に本発明の組成物からなる。本発明の組成物を含む物品には、それだけに限定されないが、シート、パイプ、キャップストック、中空管、固体円形ストック、正方形断面ストックなどが含まれる。建築および建設用途、特に窓枠、サッシ戸枠、プライシングチャンネル(pricing channels)、コーナーガード、家のサイディング、雨樋、手すり、縦樋、フェンスの支柱などに使用するものなど、より複雑な形状を製造することもできる。本発明の組成物を含む例示的な物品は、電気容器、暖房、換気および空調用途に使用される部品およびハウジング、エアフィルタハウジング、遠距離通信用途に使用される部品、芝生および庭園用途に使用される部品、電装品、電気製品の構成部品およびハウジング、洗濯機の構成部品およびハウジング、食器洗浄機の構成部品およびハウジング、冷蔵庫の構成部品およびハウジング、ネットワーク筐体、個人の保護および警報システムに使用される部品およびハウジング、ATMおよび自動券売機用途に使用される部品およびハウジング、コンピューターおよび家電用途に使用される部品およびハウジング、コピー機のカバー、プリンターのカバー、サーバーのベゼル、ガス検知器の部品および筐体なども含むことができる。
【0036】
さらなる詳細がなくても、当業者は、本明細書の説明を使用して、本発明を最大限に利用することができると考えられる。以下の実施例は、当業者が特許請求された発明を実施する際に追加的な手引きを提供するためのものである。提供された実施例は、本出願の教示に寄与する成果を単に提供するにすぎない。したがって、これらの実施例は、いかなる意味においても、添付の特許請求の範囲で定義される本発明を限定するものではない。
【0037】
以下の実施例で使用されるASAは、典型的には、ゴム粒度分布が幅広い単峰性の、スチレン28〜34重量%、アクリロニトリル10〜15重量%、メチルメタクリレート10〜15重量%およびブチルアクリレート約40〜45重量%から誘導される構造単位を含むアクリレート変性ASAであった。MMASANは、メチルメタクリレート約30〜45重量%、スチレン35〜50重量%およびアクリロニトリル20〜35重量%から誘導された。酸化鉄被覆雲母(以下「雲母−1」という場合がある)は、Merckから得たIRIODIN(登録商標)500雲母とした。いくつかの比較例では、酸化チタン被覆雲母(以下「雲母−2」という場合がある)は、Merckから市販されているIRIODIN(登録商標)100雲母とした。本明細書で使用されている「変色」または「色ずれ」という用語は、同意語である。
【0038】
組成物は、シート状の試験試料または射出成形された試験試料に成形された。加速耐候性試験測定は、典型的にASTM G155cプロトコールの下で行った。試料は加速耐候性試験のためにCi65A耐候性試験器中に置き、曝露時間を625、1250、1875、2500、3750および5000(kJ/m)として、色の変化を典型的に試験した。特定の曝露時間で取り除かれた試料は、「そのままで」(すなわち、洗浄せず、磨かず)視覚的に評価し、マクベスカラーアイ(Macbeth ColorEye、登録商標)7000A分光光度計を使用して、評価試験条件:DREOLL;D65光源;CIE LAB Equations;10度観測;反射率モード;鏡面反射成分除外(SCE);UV除外;大ビューポートで色を測定した。
【実施例】
【0039】
<実施例1〜6>
ASA35重量%およびMMASAN65重量%を含む樹脂組成物を表1に示す添加剤と混練した。添加剤は、有機着色剤(「Org.Col.」と略す)の混合物ならびにカーボンブラックおよび酸化鉄(III)を含む無機着色剤(「Inorg.Col.」と略す)の混合物を含んでいた。表1の添加剤の量は、樹脂成分100部当たりの部(phr)で示されている。酸化鉄被覆雲母を、MMASAN(雲母30重量%/MMASAN70重量%)の一部とともに、マスターバッチ押出成形物の形で他の成分と混ぜ合わせた。表に示された雲母の量は、組成物中の雲母の実際の量を示している。組成物中のMMASANの総量には、マスターバッチから得られるMMASANの量も含まれる。さらに、各々の組成物は、UV吸収剤、抗酸化剤、潤滑剤および安定剤の混合物を樹脂成分100部当たり約2.9部(phr;ここでは樹脂成分はASAおよびMMASANを含む)含んでいた。混練した材料を試験部品に成形し、これらの部品を、加速耐候性試験条件下で色安定性について試験した。試験結果を表2に示す。
【0040】
雲母−1を含む本発明の実施例は、加速耐候性試験条件下で優れた色安定性を示す。特に、デルタaの値は、実施例が加速耐候性試験条件下で赤色/緑色方向で変色しないことを示している。また、デルタbの値は、実施例が加速耐候性試験条件下で黄色/青色方向で変色しないことを示している。さらに、デルタE値によって示される、加速耐候性試験条件下での全体的な変色は、本発明の実施例において最小である。組成物中の無機着色剤酸化鉄(III)の存在は、加速耐候性試験条件下で変色を防ぐためには、積極的な効果が顕著ではない。
【0041】
<実施例7〜8および比較例1〜5>
ASA35重量%およびMMASAN65重量%を含む樹脂組成物を表3に示された添加剤と混練した。添加剤は、有機着色剤(「Org.Col.」と略す)の混合物ならびに二酸化チタン、カーボンブラックおよび酸化鉄(III)を含む無機着色剤(「Inorg.Col.」と略す)の混合物を含んでいた。表3の添加剤の量は、樹脂成分100部当たりの部(phr)で示している。本発明の実施例は雲母−1を含んでおり、比較例(「C.Ex.」と略す)は雲母−2を含んでいた。雲母を、MMASAN(雲母30重量%/MMASAN70重量%)の一部とともに、マスターバッチ押出成形物の形で他の成分と混ぜ合わせた。表に示された雲母の量は、組成物中の雲母の実際の量を示している。組成物中のMMASANの総量には、マスターバッチから得られるMMASANの量も含まれる。さらに、各々の組成物は、UV吸収剤、抗酸化剤、潤滑剤および安定剤の混合物を樹脂成分100部当たり約2.9部(phr;ここでは樹脂成分はASAおよびMMASANを含む)含んでいた。混練した材料の試験部品を、加速耐候性試験条件下で色安定性について試験した。試験結果を表4に示す。
【0042】
雲母−1を含む本発明の組成物は、雲母−2を含む比較組成物よりも加速耐候性試験条件下で変色を示さない。より具体的には、表4のデータは、雲母−1を含む本発明の組成物におけるデルタLの値が、雲母−2を含む比較例の組成物のデルタLの値と比較して向上していることを示している。比較例の組成物中の雲母−2の量を減少させると(比較例1対比較例2〜5)、デルタLの値が多少向上するが、これらの値はまだ本発明の実施例7〜8で観察される値ほど、良くはない。
【0043】
さらに、表4のデータは、雲母−1を含む本発明の組成物におけるデルタaの値が、雲母−2を含む比較例の組成物のデルタaの値と比較して典型的に向上していることを示している。雲母−2を含む比較例の組成物は、雲母−2のレベルが最も低い場合を除いて、デルタaの値によって示される変色が顕著であることを示している。比較例の組成物中の雲母−2の量を減少させると(比較例1対比較例2〜3)、デルタaの値が多少向上するが、これらの値はまだ本発明の実施例7〜8で観察される値ほどよくはないか、または同程度である。
【0044】
さらに、表4のデータは、雲母−1を含む本発明の組成物におけるデルタbの値が、雲母−2を含む比較例の組成物のデルタbの値と比較して向上していることを示している。雲母−2を含む比較例の組成物は、デルタbの値によって示されるように変色が顕著である。比較例の組成物中の雲母−2の量を減少させると(比較例1対比較例2〜5)、デルタbの値が多少向上するが、これらの値はまだ本発明の実施例7〜8で観察される値ほどよくはない。
【0045】
さらに、表4のデータは、デルタE値によって示されるように全体的な色ずれが、雲母−2を含む比較例よりも雲母−1を含む本発明の例の方が少ないことを示している。雲母−2を含む比較例の組成物は、デルタEの値によって示されるように変色が顕著である。比較例の組成物中の雲母−2の量を減少させると(比較例1対比較例2〜5)、デルタEの値が多少向上するが、これらの値はまだ本発明の実施例7〜8で観察される値ほどよくはない。比較例の組成物中の有機着色剤の量を減少させると、デルタEの値が多少向上するが、これらの値はまだ本発明の実施例7〜8で観察されるほどよくはない。
【0046】
<比較例6〜10>
ASA35重量%およびMMASAN65重量%を含む樹脂組成物を表5に示す添加剤と混練した。添加剤は、有機着色剤(「Org.Col.」と略す)の混合物ならびに二酸化チタン、カーボンブラックおよび酸化鉄(III)を含む無機着色剤(「Inorg.Col.」と略す)の混合物を含んでいた。表5の添加剤の量は、樹脂成分100部当たりの部(phr)で示している。比較例(「C.Ex.」と略す)は雲母−2を含んでいた。雲母−2を、MMASAN(雲母30重量%/MMASAN70重量%)の一部とともに、マスターバッチ押出成形物の形で他の成分と混ぜ合わせた。表に示す雲母の量は、組成物中の雲母の実際の量を示している。組成物中のMMASANの総量には、マスターバッチから得られるMMASANの量も含まれる。さらに、各々の組成物は、UV吸収剤、抗酸化剤、潤滑剤および安定剤の混合物を樹脂成分100部当たり約2.9部(phr;ここでは樹脂成分はASAおよびMMASANを含む)含んでいた。混練された材料の試験部品を、加速耐候性試験条件下で色安定性について試験した。試験結果を表6に示す。
【0047】
表6のデータは、雲母−2を含む全ての比較例が加速耐候性試験条件下で変色すること、および変色が表2および4の雲母−1を含む本発明の実施例が示すいかなる変色よりも大きいことを示している。雲母−2の量を減少させると、加速耐候性試験条件下での変色が減少する結果が得られる(比較例6対他の比較例)。表5〜6のこの比較例の組み合わせ間では、酸化鉄(III)をさらに含む比較例で、色安定性が多少向上することが観察される。しかし、表1〜2に示すように、酸化鉄(III)の存在は、雲母−1を含む本発明の実施例における変色耐性を向上させるのに必ずしも必要ではない。それゆえ、本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、酸化鉄被覆雲母とは別の無機着色剤の形で酸化鉄(III)を含まない。
【0048】
耐候性有色樹脂組成物は、(i)アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)またはアクリレート変性ASA25〜45重量%と、(ii)スチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレン、スチレンおよびアクリロニトリル;スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはα−メチルスチレン、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、またはこれらの混合物から誘導される構造単位を含む少なくとも1種の硬質熱可塑性ポリマー75〜55重量%と、(iii)少なくとも1種の酸化鉄被覆雲母と、(iv)少なくとも1種の有機または無機二次着色剤とを含むことができ、成分(iii)および(iv)を合わせた量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で成形品を2500kJ/mに曝露した後、デルタL値が鏡面反射成分を除外して測定して+/−0.6未満であり、デルタE値が+/−1.0未満である成形品を提供するのに有効な量であり、重量%値は樹脂成分(i)および(ii)の重量基準である。
【0049】
種々の実施形態では、(a)組成物は、少なくとも1種の有機二次着色剤および少なくとも1種の無機二次着色剤を含むことができ、無機着色剤は、酸化鉄(III)、カーボンブラック、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる群から選択され;硬質熱可塑性ポリマー(ii)は、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートから誘導される構造単位を含み;(b)酸化鉄被覆雲母は樹脂成分100部当たり0.1部(phr)〜10phrの範囲の量で存在することができ、具体的には酸化鉄被覆雲母は0.3phr〜6phrの範囲の量で存在することができ;(c)組成物は、少なくとも2種の有機二次着色剤および少なくとも1種の無機二次着色剤を含むことができ、無機着色剤は、酸化鉄(III)、カーボンブラック、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる群から選択され、任意選択で成分(iii)、(iv)および(v)を合わせた量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で成形品を2500kJ/mに曝露した後、デルタL値が鏡面反射成分を除外して測定して+/−0.6未満であり、デルタE値が+/−1.0未満である成形品を提供するのに有効な量であり;(d)組成物は、潤滑剤、安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、UV遮断剤、UV吸収剤およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができ;かつ/または(e)雲母成分(iii)の全部または一部は、硬質熱可塑性ポリマー(ii)の少なくとも一部とともにマスターバッチの形で組成物と混ぜ合わせることができる。本明細書には、任意の上記組成物から製造される物品および任意の上記組成物を製造する方法も含まれる。任意の上記組成物を製造する方法は、雲母成分(iii)の全部または一部および硬質熱可塑性ポリマー(ii)の少なくとも一部を含むマスターバッチを調製するステップと、マスターバッチを混練プロセスの残留組成成分と混ぜ合わせるステップと、混合物を混練するステップとを含む。
【0050】
本発明を、典型的な実施形態で例示しおよび説明してきたが、本発明の趣旨から何ら逸脱することなく種々の修正および置換が可能であるので、本発明は示された詳細に限定されるものではない。当業者は、ほんの日常的な実験によって本明細書に開示の発明のさらなる修正および同等物を思いつくことができるので、そのような修正および同等物の全ては以下の特許請求の範囲によって規定される発明の趣旨および範囲内にある。本明細書で引用された全ての特許および出版物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)またはアクリレート変性ASA25〜45重量%と、(ii)スチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレンおよびアクリロニトリル;α−メチルスチレン、スチレンおよびアクリロニトリル;スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはα−メチルスチレン、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;またはこれらの混合物から誘導される構造単位を含む少なくとも1種の硬質熱可塑性ポリマー75〜55重量%と、(iii)少なくとも1種の酸化鉄被覆雲母と、(iv)少なくとも1種の有機または無機の二次着色剤とを含み、成分(iii)および(iv)を合わせた量は、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で成形品を2500kJ/mに曝露した後、デルタL値が鏡面反射成分を除外して測定して+/−0.6未満であり、デルタE値が+/−1.0未満である成形品を提供するのに有効な量であり、重量%値は樹脂成分(i)および(ii)の重量基準である、耐候性有色樹脂組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の有機二次着色剤および少なくとも1種の無機二次着色剤を含む請求項1に記載の耐候性有色樹脂組成物であって、前記無機二次着色剤は酸化鉄(III)、カーボンブラック、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる群から選択される耐候性有色樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬質熱可塑性ポリマー(ii)が、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートから誘導される構造単位を含む、請求項1または2に記載の耐候性有色樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸化鉄被覆雲母(iii)が、樹脂100部当たり0.1部(phr)〜10部の範囲の量で存在する、請求項1から3のいずれかに記載の耐候性有色樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸化鉄被覆雲母(iii)が、0.3phr〜6phrの範囲の量で存在する、請求項1から4のいずれかに記載の耐候性有色樹脂組成物。
【請求項6】
少なくとも2種の有機二次着色剤および少なくとも1種の無機二次着色剤を含む、請求項1から5のいずれかに記載の耐候性有色樹脂組成物であって、前記無機二次着色剤は、酸化鉄(III)、カーボンブラック、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる群から選択される耐候性有色樹脂組成物。
【請求項7】
前記成分(iii)、(iv)および(v)を合わせた量が、ASTM G155cプロトコールで規定された加速耐候性試験条件下で成形品を2500kJ/mに曝露した後、デルタL値が鏡面反射成分を除外して測定して+/−0.6未満であり、デルタE値が+/−1.0未満である成形品を提供するのに有効な量である、請求項6に記載の耐候性有色樹脂組成物。
【請求項8】
潤滑剤、安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、UV遮断剤、UV吸収剤およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の耐候性有色樹脂組成物。
【請求項9】
前記雲母成分(iii)の全部または一部が、前記硬質熱可塑性ポリマー(ii)の少なくとも一部とともにマスターバッチの形で組成物と混合される、請求項1から8のいずれかに記載の耐候性有色樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の組成物から製造される物品。
【請求項11】
(A)前記雲母成分(iii)の全部または一部および硬質熱可塑性ポリマー(ii)の少なくとも一部を含むマスターバッチを調製するステップと、
(B)前記マスターバッチを混練プロセスの残留組成成分と混合するステップと、
(C)前記混合物を混練するステップと
を含む、請求項1から9のいずれかに記載の耐候性有色樹脂組成物を調製する方法。
【請求項12】
前記硬質熱可塑性ポリマー(ii)が、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートから誘導される構造単位を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化鉄被覆雲母(iii)が、樹脂成分100部当たり0.1部(phr)〜10部の範囲の量で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、潤滑剤、安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、UV遮断剤、UV吸収剤およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512946(P2012−512946A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542268(P2011−542268)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067457
【国際公開番号】WO2010/080325
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(309001610)サビック イノベーティブ プラスチックス イーペー ベスローテン フェンノートシャップ (16)
【Fターム(参考)】