説明

耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントとその被覆方法

本発明は、炭化水素坑井での掘削又は作業用の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントに関し、その端部(1;2)の一方にねじ山式領域(3;4)があり、前記ねじ山式領域は、そのねじ山式端部が雄型ねじ山か雌型ねじ山かによって外周面あるいは内周面に構成される。ねじ山式領域(3;4)の少なくとも一部分は、比表面積が高い結晶構造の乾燥膜で被覆され、主に、金属とは反応しない1以上の鉱物塩で構成される。本発明はまた、そのようなコンポーネントを被覆するための方法に関し、比表面積が高い結晶構造を有する乾燥鉱物膜を用いる。当該膜は主に、金属とは反応しない1以上の鉱物塩で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素坑井の掘削や作業で使用される耐摩耗性管状コンポーネントに関し、より的確には、当該コンポーネントのねじ山端部分に関し、当該端部は、雄型ねじ山又は雌型ねじ山であり、他のコンポーネントの相当する端部と接続することができる。本発明はまた、2つの管状コンポーネントを構造的に結合してできるねじ山式接続部に関する。さらに、本発明は、このような耐摩耗性管状コンポーネントを被覆する方法に関する。
【0002】
「炭化水素坑井の掘削や作業で使用される」コンポーネントは、実質的に管状であり、同じタイプの別の要素と接続されるように意図されるか、又は炭化水素坑井掘削用ストリング若しくはワークオーバー用ライザー等のメンテナンスを目的とするライザー、若しくは生産(プロダクション)ライザー等の作業用ライザー、坑井での作業で用いられる鋳型ストリングや管状ストリング用ライザーを最終的に形成するように意図される、いかなる要素をも意味する。本発明はまた、ドリルパイプ、重量ドリルパイプ、ドリルカラー及びパイプ接続部分等のドリルストリング並びにツールジョイントとして知られる重量パイプ部分で使用されるコンポーネントにも適用できる。
【0003】
各管状コンポーネントは、雄型ねじ山領域を有する端部及び/又は雌型ねじ山領域を有する端部から構成され、各々、他のコンポーネントの相当する端部と構造的に接合されることを意図し、接続部を規定して組み立てる。
【背景技術】
【0004】
ねじ山式管状コンポーネントは、使用条件で課せられた確実な適合及び密封に必要な条件を満たすように、規定された応力で接続される。この応力は、接続で使用される合金の種類により、程度や性質が変化してもよい。炭素鋼合金は、一般に、腐食挙動に関してやや脆弱であるが、より有益な摩擦挙動を示す。それに対して、ステンレス鋼合金は、より臨界挙動を示すが、腐食耐性は極めて良好である。なお、ねじ山式管状コンポーネントは、坑井で数度の組立−分解(makeup−breakout)サイクルを受けなければならないかもしれないことに留意すべきである。組立作業は、一般に高軸荷重下、例えば、ねじ山接続部で接続される長さ数メートルの管の重み、で行われ、前記管は接続されるねじ山式要素の軸からわずかにずらして配置されてもよい。このような接続は、ねじ山領域と金属/金属封止面との摩耗のリスクを生じさせる。
【0005】
ねじ山式領域を円滑にするための様々な方法が行われてきた。
【0006】
伝統的に、組立−分解工程中の摩耗からねじ山式領域を保護するために、腐食から保護し、米国石油協会(API)規格のAPI Bul 5A2又は5A3に基づくグリース等の特別な組立グリースを被覆する、グリースを取り除く。しかしながら、鉛等の重金属及び/又は有毒金属で装着された、当該グリースを用いることは、現場で追加の被覆工程が必要である欠点に加え、環境や井戸内の汚染が生じるという欠点が生じ、過剰なグリースは組立工程中にねじ切りから排出される。
【0007】
環境基準を踏まえたさらなる進歩は「ドライ(乾燥)」製品を設計することであり、この製品は、APIタイプのグリース使用で引き起こされる問題の多くを解決する。従って、熱硬化性膜タイプの乾燥潤滑油は、環境的に有望で高性能な解決方法を供してきた。
【0008】
粘塑性系もまた、さらに良好な性能を獲得するために開発されてきた。
【0009】
グリースを使用しないことを主な目的とした、多層状態を用いた他の解決方法も開発されてきた。
【0010】
炭素鋼について、リン酸亜鉛処理、リン酸マンガン処理又は混合リン酸塩処理等のリン酸塩系の処理が開発されてきた。当該処理は、鋼鉄を化学的に攻撃すること、腐食に対する保護機能の促進を促す密着性が高い結晶層を形成することから構成される。当該層の形態はまた、被覆の密着性の向上及び潤滑系の維持の向上にさらに好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】フランス国特許出願公開番号 FR−2 892 174号公報
【特許文献2】フランス国特許出願公開番号 FR−2 914 926号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】C Gidice:“Zinc−rich epoxy primers based on lamellar zinc dust”,Surface Coatings International,Part B:Coatings Transactions(1997),vol 80,number 6
【非特許文献2】B Muller:“Corrosion inhibition of metallic pigments by nitrophenols”,Surface Coatings International,Part B:Coatings Transactions(2000),vol 83,number 1
【非特許文献3】D Kuhlmann−Wilsdorfら“Plastic flow between Bridgman anvils under high pressures”,J Mater Res,vol. 6,no.12,1991年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このようなタイプの表面処理はクロム鋼には適さないという欠点がある。また以下の工業規模の点でも欠点があるが、それは、技術的パラメータ(均一性の問題があり得る)の制御が困難である点、特に廃液処理に関して、工業施設が注意深く管理されなければならない点、である。
【0014】
鋼鉄に対してシュウ酸を用いて表面を攻撃するようなシュウ酸処理タイプの表面処理は、表面をシュウ酸で処理することに基づく、鋼鉄に用いるものであるが、環境的問題は前記したリン酸塩処理よりもより顕著であるという欠点がある。
【0015】
ショットブラスト加工、サンドブラスト加工及び他の衝撃加工等の機械的動作による表面改変を用いた解決方法もまた用いられてきた。しかしながら、観測される性能は低い。
【0016】
金属化工程が採用されてきた。金属化工程では、銅又は三元合金等の様々な物質の合金を接着して堆積させることから構成される。このようなタイプの工程は、潤滑層の接着性が向上するように、界面において摩擦性の向上に寄与する犠牲層を製造するように、及び/又は、腐食から表面を保護できるように、設計された。表面金属化工程は、すでに航空用合金の熱間変形工程及びねじ山式管状コンポーネントに使用されているが、本質的には、電気化学析出に基づく。本工程には、製造コストが高く、性能の再現性及び均一性の制御が困難であるという欠点がある。
【0017】
亜鉛めっき及び他の誘導工程等のその他の工程は金属拡散を用いる。このタイプの工程は、工業的に扱いにくく、高価であり、廃液処理に問題があるが、それは表面に亜鉛が存在するためである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの理由から、本発明では、摩耗について管状コンポーネントのねじ山領域の感度の問題を克服することができる解決方法を提供するが、この解決方法は、さらに簡便で安価に工業化することができ、環境に優しい。
【0019】
特に、本発明では、稼動地熱坑井、特に炭化水素坑井で使用される管接続部の組立及び分解作業で要求される性能に適合した金属表面の被覆の生産に関する。この被覆工程は、接着を可能にし、前記接続部のねじ切り上に堆積された潤滑システムの性能を促進することを目的とし、当分野で現在商業化されているか又は開発されてきた現状のシステムよりも優れる。本被覆はまた、補足的な潤滑システムがなくても機能的でありうる。
【0020】
特に、現在用いられている表面前処理技術と比較して、性能向上と製造コスト削減が実現している。
【0021】
さらに、金属基質の化学的性質は、接着性があり、処理加工された表面と化学的に反応しない表面結晶堆積が産生されても、保護される。
【0022】
さらに、掘削や石油生産において使用されるいかなるタイプの合金への適用が想定されてよく、特に、いかなる等級の鋼鉄に適用できる。
【0023】
より的確には、被覆工程は、炭化水素坑井での掘削又は作業のために、耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントに供される。前記管状コンポーネントは、その両端部の一方にねじ山式領域を有し、当該ねじ山式領域は、そのねじ山式端部が雄型ねじ山か雌型ねじ山かによって外周面又は内周面に構成される。この工程は、以下の:
・金属と反応しない1以上の無機塩を溶媒に溶解する;
・こうして得られた溶液を、前記ねじ山式領域の少なくとも一部分上に堆積させる;
・高い比表面積を有する結晶性鉱物構造の乾燥膜を得るために、前記溶媒を気化させる;
工程を含む。
【0024】
補完的又は置換される随意の特徴を以下に定義する。
【0025】
結晶性鉱物構造を有する乾燥膜の比表面積は、20m/g以上、好ましくは、100m/g以上であってよい。
【0026】
前記溶液は、ケイ酸アルカリを水に溶解して得られてもよい。
【0027】
前記溶液は、金属リン酸塩を酸に溶解して得られてもよい。
【0028】
前記溶液は、噴霧による堆積により得られてもよい。
【0029】
前記溶液は、浸漬による堆積により得られてもよい。
【0030】
前記ねじ山式領域は、溶液を堆積する前に、50℃〜250℃の間で加熱されてもよい。
【0031】
前記ねじ山式領域は、溶液を堆積した後、50℃〜300℃の間で加熱されてもよい。
【0032】
前記溶液は、融点よりもわずかに下回る温度で堆積されてもよい。
【0033】
堆積前に、耐腐食剤で補充されてもよい。
【0034】
前記溶液は、堆積前に、固体潤滑剤の分散粒子で補充されてもよく、この固体潤滑剤の粒子は、第1、第2、第3及び第4分類のうち少なくとも1由来の潤滑剤の粒子を含む。この点は、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1を参照できるはずである。
【0035】
前記溶液は、堆積前に、鉱物粒子又は有機物粒子を分散させて得られる制動添加剤で補充されてもよく、前記粒子は比較的高い劈開荷重値及び/又は強い微粒子相互作用若しくは粒子間引力及び/又は中〜高程度のモース硬度及び/又は動作に抵抗するか若しくは反対に動作させるレオロジー的挙動を有する。前記制動添加剤は、少なくとも酸化ビスマス、酸化チタン、コロイド状シリカ及びカーボンブラックを含む群から選択される。この点は、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献2を参照できるはずである。
【0036】
堆積前に、前記溶液は、摩擦係数を調節して膜の摩擦強度を上げるために、ナノメートル鉱物粒子(アルミナ、シリカ、TiN)で補充されてもよい。
【0037】
堆積前に、前記溶液は、摩擦係数を小さくして膜の摩擦強度を上げるため、フラーレン粒子で補充されてもよい。
【0038】
堆積前に、前記溶液は、有機分散剤又は乳化剤で補充されてもよい。
【0039】
ねじ山式領域は、膜が形成されると潤滑系で被覆されてもよい。
【0040】
ねじ山式領域を被覆する潤滑系は、熱溶融性ポリマーでもよい。
【0041】
地熱井での掘削又は作業用の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントは、その両端部の一方に、ねじ山式領域を有し、前記ねじ山式領域は、そのねじ山式端部が雄型ねじ山か雌型ねじ山かによって外周面あるいは内周面に構成される。前記ねじ山式領域の少なくとも一部分は、主に、金属とは反応しない1以上の鉱物塩から構成される比表面積が高い結晶構造の乾燥膜で被覆される。
【0042】
補完的又は置換される随意の特徴を以下に定義する。
【0043】
結晶性鉱物構造である乾燥膜の比表面積は、20m/g以上、好ましくは、100m/g以上であってよい。
【0044】
前記膜は、主にケイ酸アルカリから構成されてもよい。
【0045】
前記膜は、主に金属リン酸塩から構成されてもよい。
【0046】
前記膜は、耐食試薬を含んでもよい。
【0047】
前記膜は、固体潤滑剤の分散粒子を含んでもよく、この固体潤滑剤の粒子は、第1、第2、第3及び第4分類のうち少なくとも1由来の潤滑剤の粒子を含んでもよい。
【0048】
前記膜は、鉱物粒子又は有機物粒子を分散させて構成される制動添加剤を含んでもよく、前記粒子は、比較的高い劈開荷重値及び/又は強い微粒子相互作用若しくは粒子間引力及び/又は中〜高程度のモース硬度及び/又は動作に抵抗するか若しくは反対に動作させるレオロジー的挙動を有し、前記制動添加剤は、少なくとも酸化ビスマス、酸化チタン、コロイド状シリカ及びカーボンブラックを含む群から選択される。
【0049】
前記膜は、摩擦係数を調節して膜の摩擦強度を上げるため、アルミナ、シリカ、TiNタイプのナノメートル鉱物粒子を含んでもよい。
【0050】
前記膜は、摩擦係数を小さくして膜の摩擦強度を上げるため、フラーレン粒子を含んでもよい。
【0051】
前記膜は、膜の降伏強度を上げるため、有機化合物を含んでもよい。
【0052】
膜で被覆されるねじ山式領域は、潤滑系で被覆されてもよい。
【0053】
ねじ山式領域を被覆する潤滑系は、熱溶融性ポリマーでもよい。
【0054】
ねじ山式管状接続部は、お互いに補い合う雄型ねじ山式管状コンポーネントと雌型ねじ山式管状コンポーネントを含む。前記ねじ山式管状コンポーネントの少なくとも一方は、前記実施の形態の1に基づく。
【0055】
本発明の特徴や利点は、添付図面を参照して、以下の記載で詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】組立による2つの管状コンポーネントの接続から生じた接続部の線図である。
【0057】
【図2】2つのねじ山式管状コンポーネントの組立カーブの線図である。
【0058】
【図3】本発明の1の実施の形態に基づく管状コンポーネントのねじ山表面の詳細図である。
【0059】
【図4】本発明の別の実施の形態による管状コンポーネントのねじ山表面の詳細図である。
【0060】
【図5】試験装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1に示されたねじ山式接続部は、雄状端部1を備え、回転軸10を有する第1管状コンポーネントと、雌状端部2を備え、回転軸10を有する第2管状コンポーネントを含む。この2つの端部1と2は、ねじ山式接続部の軸10に対して放射状に配置された末端面7と8で各々終端となり、各々は、2つのコンポーネントの組立で相互接続するように相互に協働するねじ山式領域3と4を備える。このねじ山式領域3と4は、台形状で自己固定するようなねじ山タイプであってよい点で従来のものである。さらに、組立によって2つのねじ山式コンポーネントが接続された後に互いに緊密に封止して接触するように意図された金属/金属封止面が、ねじ山式領域3、4と雄状端部1の末端面7との間の5と6に示されている。
【0062】
ねじ山式管状コンポーネントの少なくとも1は、ねじ山式領域3;4の少なくとも一部分で、金属と反応しない1以上の鉱物塩から主に構成される乾燥鉱物膜で被覆されている。「1以上の鉱物塩から主に構成される」という用語は、膜の化学組成が鉱物塩又は鉱物塩の混合物に基づき、また、添加物として含有される他の化合物も含んでもよいことを意味する。
【0063】
膜の乾燥性は、接触粘着性(粘着した感触)がない(あるいは、わずかである)ことを意味し、これは膜の使用環境から放出されたゴミを捕獲せず、接触する表面が汚染されないというメリットを有する。従って、組立−分解中の移動、ぶれ、あるいは押出しによって環境を汚染する欠点がある、従来から用いられてきたグリースとは異なる。
【0064】
本出願人は、主に鉱物塩から構成される化合物を溶媒に溶解する工程、その後、得られた溶液を、ねじ山式領域の少なくとも一部に堆積する工程、最後に、結晶構造を有する鉱物膜を得るために前記溶剤を気化させる工程を含む、鉱物膜の形成方法を推奨する。
【0065】
より的確には、この方法は、金属と反応せず、主に鉱物塩から構成される結晶構造を有する乾燥膜を構成することに基づく。従って、この膜の化学的性質として、管状コンポーネントの金属表面が変質するような反応はしないので、管状コンポーネントの金属表面の化学構造が維持される。膜と管状コンポーネントの金属表面との間には、実質的に、共有結合性の化学結合は存在しない。
【0066】
さらに、鉱物膜には、その結晶構造の比表面積が高いという、とても興味深い性質がある。「比表面積が高い結晶構造」という用語は、その構造が結晶性であり、その実際の表面積は見かけの表面積よりもかなり広いことを意味する。換言すれば、膜の展開面は、かなり拡大された面を構成すると予想される。従来的には、比表面積は、単位質量当たりの表面積、すなわち、グラム当たり平方メートル(m/g)という単位で、ブルナウアー-エメット‐テラー(Brunauer,Emett and Teller (BET)) 測定法を用いて数値化される。
【0067】
より的確には、「比表面積が高い」という用語は、膜が少なくとも数十m/gの比表面積でなければならず、特に20m/g以上であることを意味する。指標としては、部分的に結晶正方構造(10〜30nm)である酸化ジルコニウムは、BET比表面積が比較的高く、一般に、30m/g〜120m/gの範囲である。指標としてはまた、六方晶構造である亜鉛は、層状構造で8m/g及び球状構造で0.25m/gとBET比表面積が低い。
【0068】
膜の展開面の非常に広い拡大面は、その膜が、溶剤の気化中に生成される基質の原子構造が起点となる結晶発芽方法により形成されるという事実によって説明される。結晶マクロ構造は、非常に広い表面積を展開することで得られる。このため、膜は、非常に高い表面エネルギーを有し、これにより、基質に面する1の面の接着能力が高まり、もう一方の面には潤滑膜が残存する。換言すれば、膜の形成方法は、比表面積が高い結晶マクロ構造を得るのに主要な役割を果たす。実際、結晶化を導く発芽部位をできるだけ多く誘発するように層を構築する方法が必要である。
【0069】
結晶マクロ構造の種類は、結晶マクロ構造の発芽が起こる金属表面11の上面図を表す図3及び4に示すように、針部12b又は樹枝状部12aの形態で存在してもよい。発芽由来の結晶は、化学結合又は極性ファンデルワールス性結合により、ねじ山式領域に強く結合する。
【0070】
鉱物膜の接着が強いと、膜の補完物として使われるいかなる潤滑剤をも残存させることができる。このため、膜の形態は、マクロ構造が針部12b又は樹枝状部12aの形態で存在することに直接関連するが、摩擦下で流体力学的若しくは弾性流体力学的な状態又は粘塑性状態を促す。
【0071】
さらに、膜の形態はフィルム効果の改善や安定化に寄与する。トライボロジー(摩擦学)で用いられる「フィルム効果」とは、転写層や第三体ともいわれる、固体粒子を含有する膜において、摩擦基質上の固体表面への処理を正確に行う能力を意味する。より的確には、この転写層は、摩擦で生じる鉱物膜の粒子で構成され、せん断強度に関する膜の性質を強化する。それはまた、摩擦距離が長い場合又はねじ山式管状接続部の組立−分解作業中の摩擦が高い場合でも、高い摩擦性能が得られることを意味する。
【0072】
従って、本出願人は、条件を満たす性能を示す程度に比表面積が高く、簡易で安価に工業化できる結晶構造を有する非反応性鉱物膜の生成法を検討してきた。以下の詳細な形態ではまた、結晶発芽を形成する装置が考慮される。
【0073】
1の実施の形態によれば、Condat製Vicafil TS 915(登録商標)、Traxit International製Traxit ZEL 510(登録商標)、又はTraxit ZEL 590(登録商標)等の水溶性のケイ酸アルカリ系塩が使用されてもよい。当該ケイ酸アルカリは、650〜800m/gの範囲で比表面積をとても高めることができ、特にケイ酸ナトリウムでは720m/gとなる。
【0074】
別の実施の形態によれば、酸に溶融性の金属リン酸系塩を使用することができる。例として、pH2でリン酸中に溶解されたリン酸アルミニウム又はリン酸マンガンを使用することができる。この場合、酸性度は、鉱物塩を溶解する目的で使用される。金属リン酸塩の結晶膜は、基質と結合するように形成され、その結合は、主に極性結合又はファンデルワールス結合であり、実質的に共有結合ではない。炭素鋼を使用した従来のリン酸塩処理では基質に化学変質が起こるのに対し、この場合には基質の表面に化学変質は起こらない。そして、金属リン酸塩は、100〜200m/gの範囲で比表面積がもたらされる。
【0075】
上記2つの実施の形態、すなわち、ケイ酸アルカリ系塩や金属リン酸系塩では、100m/g以上の比表面積が得られる。
【0076】
有利には、堆積処理しようとするねじ山式領域は、50℃〜250℃で前加熱されてもよい。このため、リン酸にリン酸アルミニウムを溶解して得られる溶液を使用し、ある程度溶解性が低い化合物を使用する場合、基質を200℃に前加熱することがすすめられる。
【0077】
有利には、溶液は浸漬又は噴霧によって堆積される。これらの堆積形態には、非常に簡易で安価であるというメリットがある。
【0078】
有利には、被覆後、溶剤の気化と鉱物膜の発芽を促進させるために、基質は50℃〜350℃で加熱される。
【0079】
同様に同じ目的で、溶液は、沸点よりもわずかに低い温度で堆積される。
【0080】
なお、膜形成のためのパラメータは、結晶成長形態、ひいては、結晶ネットワークに影響を及ぼす。このパラメータは、ある程度の極性結晶ネットワークをもたらす針状結晶成長形態と樹枝状結晶成長形態との間の平衡、及び、密結晶ネットワークをもたらすエピタキシャル結晶成長形態を得るために、調整されてもよい。
【0081】
有利には、溶液には、鉱物膜の機械的性質又は耐腐食性を改良しうる様々な試薬を補充してもよい。
【0082】
すなわち、柔軟性や弾性がより優れた膜をもたらすために、アクリルコポリマー及びスチレン/アクリルコポリマーの混合物等の乳化剤又は有機分散剤が添加されてもよい。
【0083】
腐食耐性に関して、溶液に腐食阻害剤を補充してもよい。「腐食阻害剤」という用語は添加剤を意味し、基質上に展開された膜に、化学的、電気化学的又は物理化学的メカニズムにより基質を保護する性質をもたらす添加剤を想起させるであろう。腐食阻害剤は、金属リン酸塩、層状金属又は有機的組織であってもよい。
【0084】
層状金属としては、主に、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化黄銅及び酸化鉄があげられる。これらの層状構造は、球状構造と比較すると、特に二次元的接触により結合剤及び保護表面と交換できる比表面積を広くすることができることを意味し、さらに、腐食メカニズムに関与する電解質の拡散がより起こりにくいことも意味する。例えば、球状構造の亜鉛末の32倍の比表面積である層状亜鉛の場合である。
【0085】
このため、比表面積が広いと、顔料表面への結合剤(すなわち、上記溶液)の吸収が高まり、顔料容量濃度(PVC)を低くするように形成できるが、これは、当該膜の適用や性質、特に耐腐食保護性に関して好ましい。すなわち、層状亜鉛はまた、亜鉛と鋼鉄間の高い導電性により誘導される陰極腐食からの保護に加え、優れた障壁効果をもたらす。
【0086】
球状構造の顔料に対して、耐腐食保護は、層状構造である顔料の濃度が低い場合により有効であり、その膜に関する利点は、より高い柔軟性、より優れた界面密着性、低間隙率、及び低透過率をもたらしうる。同様に、沈降のリスクはより低く、より均一に形成される。より詳細には、非特許文献1が当業者に示される。
【0087】
なお、金属顔料は、特に水溶液中で腐食に晒されることに留意するべきである。アルカリ媒体では、層状のアルミニウム又は亜鉛の顔料は水素を遊離することにより反応するのに対し、銅又は黄銅での反応はその後に酸素吸収がおこる。遊離された水素も酸素吸収も有害であるかもしれない。しかしながら、2、4−ジニトロフェノールを添加すると、様々な腐食反応を防ぐことができるため、顔料本来の性質が保持されるかもしれない。より詳細は非特許文献2を参照することによって得ることができる。
【0088】
同様に、溶液には、当該溶液中で分散状態の固体潤滑剤を補充してもよい。本明細書中に使用される「固体潤滑剤」という用語は、固形で安定な物体を意味し、2つの摩擦面の間に位置して、摩擦係数を下げたり、当該表面の摩耗や損傷の程度を下げたりする。これらの物体は、その機能的メカニズム及びその構造によって定義される異なるカテゴリーに分類されるが、すなわち:
・第1分類:結晶構造に対して潤滑特性がある固体であって、例えば、グラファイト、酸化亜鉛(ZnO)又は窒化ホウ素(BN);
・第2分類:結晶構造及びその組成における反応性化学元素に対して潤滑特性がある固体であって、例えば、二硫化モリブデン(MoS)、フッ化黒鉛、硫化スズ、硫化ビスマス、二硫化タングステン又はフッ化カルシウム;
・第3分類:化学反応性に対して潤滑特性がある固体であって、例えば、チオ硫酸塩系のある種の化学化合物又はDesilube Technologies Inc.製Desilube 88(登録商標);
・第4分類:摩擦応力下における可塑性又は粘塑性挙動に対して潤滑特性がある固体であって、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリアミドである。
【0089】
フラーレンの特別な分類にもまた留意すべきであり;これは、第1分類のサブカテゴリーに分類される。フラーレンは、球状又は管状構造であり、単層又は多層構造であり、摩擦表面の摩擦を減少させ、安定した転写膜を生成する性質を有する分子であることを想起させるであろう。特に、例えば、炭素フラーレンタイプ又は二硫化金属タイプのフラーレンを使用することができる。
【0090】
また、異なる分類に属する少なくとも2つの固体潤滑剤を組み合わせて使用することもまた推奨でき、それにより相乗効果が得られ、潤滑的性能を非常に高くすることができる。
【0091】
有利には、当該溶液ひいては最終的には鉱物膜には、より高い最終的な組立のトルクに適合するために当該膜の摩擦係数を高めることを意図する1以上の制動添加剤を補充してもよく、同時にねじ山式接続部の封止を保証するのに有効な締め付けを維持する。各ブレーキ添加剤は、ねじ山式管状接続部のための組立トルクのプロファイル関数として、潤滑レジームでの組立作業中に適用される動作に「ブレーキをかける」性質を伴う組成物を提供できるような、特定の物理的性質の関数として選択されると理解されるであろうもので、つまり後の製造のモードの関数である。
【0092】
制動添加剤は鉱物又は有機物の粒子を分散させて従来通りに形成され、この粒子は、比較的高い劈開荷重値及び/又は強い微粒子相互作用若しくは粒子間引力及び/又は中〜高程度のモース硬度及び/又は動作に抵抗するか若しくは反対に動作させるレオロジー的挙動を有する。各制動添加剤は、少なくとも酸化ビスマス、酸化チタン、コロイド状シリカ及びカーボンブラックを含む群から選択される。
【0093】
有利には、当該溶液ひいては最終的には鉱物膜には、当該膜の摩擦抵抗を上げるため、ナノメートル鉱物粒子(アルミナ、シリカ、TiN)が補充されてもよい。より具体的には、これらのナノメートル鉱物粒子は、膜の摩擦係数を調節することができ、転写層又は第三の摩擦体の構成を向上させることができる。
【0094】
必要であれば、ねじ山式領域の耐摩耗性を強化するために、鉱物膜が形成された後、潤滑系で被覆することができる。
【0095】
膜に使用される潤滑系の選択は限定されない。従来のグリース又は熱溶融性タイプの乾燥非粘着性潤滑被覆剤、例えば、又は別の、膜の高い比表面積のために熱溶融性被覆剤の接着性が最適化されたものと同様のものであってもよい。「熱溶融性被覆剤」という用語は、いかなる熱溶融性ポリマー被覆剤をも意味する。この種の被覆剤の例が、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1に記載されている。
【実施例】
【0096】
本出願人は、膜に関するトライボロジーの結果について、ブリッジマン型装置を使用して摩擦試験を実施した。このような型の装置は、特に非特許文献3に記載されている。
【0097】
ブリッジマン装置の図及び動作例は図5に記されている。この装置は、以下の:
・選択された速度で回転操作することができるディスクDQ;
・第1アンビルEC1であって、好ましくは円錐形で、ディスクDQの第1面に強く固定される;
・第2アンビルEC2であって、好ましくは円錐形で、ディスクDQの第1面とは逆の第2面に強く固定される;
・第1圧力構成要素EP1及び第2圧力構成要素EP2であって、例えば、選択された軸圧力Pをかけることができるピストン等;
・第3アンビルEC3であって、好ましくは円筒形で、第1圧力構成要素EP1の1の面に強く固定される;
・第4アンビルEC4であって、好ましくは円筒形で、第2圧力構成要素EP2の1の面に強く固定される;
を含む。
【0098】
潤滑剤の組成物を試験するために、ねじ山式構成要素を構成するのと同一の材料の2つの断片が当該組成物で被覆され、第1試料S1と第2試料S2を形成する。次に、第1試料S1が第1アンビルEC1と第三アンビルEC3の自由面の間に置かれ、第2試料S2が第2アンビルEC2と第四アンビルEC4の自由面の間に置かれる。次に、ディスクDQを選択した速度で回転させ、第1圧力構成要素EP1と第2圧力構成要素EP2それぞれで選択された軸圧力P(例えばほぼ1.5GPa)を加え、各試料S1及びS2がさらされる組立トルクが測定される。
【0099】
軸圧力、回転速度及び回転角度はブリッジマン試験で選択され、組立作業終了時のヘルツ圧力や隣接表面の相対速度がシミュレートされる。
【0100】
このような装置を使用して、数個の異なる対(組立トルクや回転速度)を組み合わせて固定することができ、これにより試料S1とS2に所定の組立トルクを課すことができ、ひいては、当該試料S1及びS2が設定された組立トルクプロファイルに密接に従っているか、及び、特に、選択された組立トルクについて選択された閾値と少なくとも同等の回転数に摩耗前に完全に到達することができるかを確認することができる。
【0101】
本願の場合、選択された接触圧力は500MPa、回転速度は10rpmであった。テスト試料は、13%Cr含有ステンレス鋼から形成され、機械加工され、その後、結晶鉱物構造で比表面積が高い乾燥膜を形成するために異なる処方で被覆された。当該膜それ自体は粘塑性ポリマー系の潤滑被覆剤で被覆された。この潤滑被覆剤の組成は以下のとおりである:
CLARIANT製ポリエチレン(商品名PE520) 19%
カルナバワックス 15%
ステアリン酸亜鉛 20%
ROHMAX製PAMA(商品名VISCOPLEX 6−950) 5%
LUBRIZOL製スルホン酸カルシウム誘導体(商品名ALOX 2211Y) 30%
フッ化黒鉛 7%
ポリテトラフルオロエチレン 2%
窒化ホウ素 1%
染料(キニザリングリーンC2822) 0.5%
チバーガイギー製抗酸化物質:
IRGANOX(登録商標) L150 0.3%
IRGAFOS(登録商標) 168 0.2%
【0102】
以下の表は、上記の膜において、摩耗前の回転数が粘塑性ポリマー系単独の潤滑被覆剤で試料を被覆した時の回転数よりもかなり高くなることができることを示す。
【0103】
以下の表にP/L比は添加剤と溶剤との重量比を示す。
【表1】

【0104】
本出願人はまた、実際に、VAM TOP(登録商標)製品に相当する管状コンポーネントを使用して、組立−分解試験を行った。組立操作は、図2に示すプロファイルに基づいて行われたが、図2では、組立(締め付け)トルクを、行われた回転数の関数として示している。
【0105】
図1に示されるように、「高品質」接続部の組立トルクのプロファイルは4つの部分に分けられる。第1の部分P1は、ねじ山式管状接続部の第1コンポーネントの雄型ねじ山構成要素(又はピン)の外部ねじ山は、同じねじ山式管状接続部の第2コンポーネントの相当する雌ねじ山構成要素(又はボックス)に相当する内部ねじ山とのいかなる放射状締め付けもない区間である。
【0106】
第2の部分P2は、雄型及び雌型のねじ山構成要素のねじ山どうしの幾何学的干渉が、組立操作が進展されるにつれ、放射状の締め付けを(程度は小さいものの、組立トルクを上げるように)おこす区間である。
【0107】
第3の部分P3は、雄型ねじ山構成要素の端部外周部の封止面は、相当する雌ねじ山構成要素の封止面と放射状に干渉し、金属/金属封止が形成される区間である。
【0108】
第4の部分P4は、雄型ねじ山構成要素の前方端面は、雌ねじ山構成要素の組立当接部の環状面で軸方向に当接する区間である。この第4の部分P4は、端部組立相(terminal make up phase)に相当する。第3の部分P3の終わりと第4の部分P4のはじめに相当する組立トルクCABは、肩トルク(shouldering torque)と表される。第4の部分P4の終わりに相当する組立トルクCPは、可塑化トルク(plastification torque)と表される。
【0109】
この可塑化トルクCPを超えて、雄型組立当接部(雄型ねじ山構成要素の端部)及び/又は雌型組立当接部(雌ねじ山構成要素の環状当接面の背後領域)は塑性が変形されるが、同時に封止面の樹脂加工によって封止面間の接触の締め付けに関する性能が低下するかもしれない。可塑化トルクCPと肩トルクCABの差は、肩トルク抵抗値CSB(CSB=CP−CAB)と表される。
【0110】
ねじ山式管状接続部は、組立操作終了時に締め付けが最適化され、ねじ山式接続部の最適化された機械的挙動が保証されるが、これは例えば、張力、稼働中の突発的な分解であり、並びに最適化された封止性能も保証される。ねじ山式接続部の設計者は、すなわち、各々所定のタイプのねじ山式接続部について、最適化された組立トルクの値を定義しなければならず、この値は、このタイプの接続部のすべての接続部について、(当接部が可塑化されて不都合が生じることを避けるために)可塑化トルクCPよりも低く、肩トルクCABよりも高くなければならない。
【0111】
CABより低いトルクで組立操作を終えると、雄型構成要素と雌型構成要素の正しい相対位置が保証されないので、封止面間の有効な締め付けも保証されない。さらに、分解のリスクもある。肩トルクCABの実効値は、同タイプの接続部について1の接続部と別の接続部とでは大きく変動するが、これは、ねじ山と雄/雌型封止面との有効径に依存し、最適化された組立トルクは、実質的に肩トルクCABよりも高くあるべきである。その結果、肩トルク抵抗値CSBの値が高くなれば、最適化される組立トルクを設定する限界が広くなり、ねじ山式接続部は操作上の応力に対して強まる。
【0112】
組立−分解試験はVAM TOP(商標登録)接続部について行われたが、当該接続部は、外径88.9mm(すなわち、3と1/2")及び厚さ6.45mm(すなわち、9.2lb/ft)並びに3930N.m.の可塑化トルクCPであるVicafil TS910(商標登録)タイプの鉱物膜で被覆されたL80 13 Cr鋼種である。この膜を、雄型ねじ山端部と雌ねじ山端部に共に適用し、ブリッジマン試験で用いられたのと同タイプの熱溶融ポリマーの乾燥被覆が、上塗り膜として、すなわち、鉱物膜に使用された。毎回分解が生じた後に15回転した後でも、摩耗は観察されなかった。
【0113】
すなわち、比表面積が高い結晶鉱物構造の乾燥膜及びそれに関連する堆積方法は、有効な処理であり、特に、ステンレス鋼から形成されるねじ山式管状コンポーネントに有効であるようである。
【0114】
さらに、比表面積が高い結晶鉱物構造の乾燥膜の適用は、有利には、炭化水素坑井での掘削又は操作に用いられる接続部のねじ山式領域3と4への適用に限定されない。当該膜が、掘削以外の炭化水素坑井での操作で用いられるコンポーネント接続部の封止領域5と6に適用される場合、耐摩耗性について良好な結果が得られた。これら封止面は、組立により2つのねじ山コンポーネントを連結した後、互いの封止の接触が締め付けられることを意図するものであり、この封止面5及び6間の締め付け接触度合いは、ねじ山式領域3と4でみられるのと同程度のヘルツ応力である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素坑井での掘削又は作業用の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法であって、前記管状コンポーネントは、その両端部(1;2)の一方にねじ山式領域(3;4)を有し、前記ねじ山式領域は、そのねじ山式端部が雄型ねじ山か雌型ねじ山かによって外周面又は内周面に構成されており、以下の:
・金属と反応しない1以上の鉱物塩を溶剤に溶解する工程;
・こうして得られた溶液を前記ねじ山式領域(3;4)の少なくとも一部分上に堆積させる工程;
・比表面積が高い結晶鉱物構造の乾燥膜を得るために、前記溶剤を気化させる工程;と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
結晶鉱物構造である乾燥膜の比表面積は、20m/g以上、好ましくは、100m/g以上であることを特徴とする、請求項1に記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項3】
前記溶液は、水に溶解されたケイ素アルカリであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項4】
前記溶液は、酸に溶解された金属リン酸塩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項5】
前記溶液は、噴霧によって堆積されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項6】
前記溶液は、浸漬によって堆積されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項7】
前記ねじ山式領域は、溶液を堆積する前に、50℃〜250℃で加熱されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項8】
前記ねじ山式領域は、溶液を堆積した後に、50℃〜300℃で加熱されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項9】
前記溶液は、沸点をわずかに下回る温度で堆積されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項10】
前記溶液は、堆積前に、耐腐食剤で補充されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項11】
前記溶液は、堆積前に、固体潤滑剤の分散粒子で補充されてもよく、この固体潤滑剤の粒子は、第1、第2、第3及び第4分類のうち少なくとも1由来の潤滑剤の粒子を含むことを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項12】
前記溶液は、堆積前に、鉱物粒子又は有機物粒子を分散させて得られる制動添加剤で補充されてもよく、前記粒子は比較的高い劈開荷重値及び/又は強い微粒子相互作用若しくは粒子間引力及び/又は中〜高程度のモース硬度及び/又は動作に抵抗するか若しくは反対に動作させるレオロジー的挙動を有し、前記制動添加剤は、少なくとも酸化ビスマス、酸化チタン、コロイド状シリカ及びカーボンブラックを含む群から選択されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項13】
前記溶液は、摩擦係数を調節して鉱物膜の摩擦強度を上げるため、堆積前にナノメートル鉱物粒子(アルミナ、シリカ、TiN)で補充されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項14】
前記溶液は、摩擦係数を小さくして膜の摩擦強度を上げるため、堆積前にフラーレン粒子で補充されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項15】
前記溶液は、堆積前に、有機分散剤/乳化剤で補充されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項16】
前記ねじ山式領域は、膜が形成されると潤滑系で被覆されることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項17】
前記潤滑系は、熱溶融性であることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントを被覆する方法。
【請求項18】
炭化水素坑井での掘削又は作業用の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネントであって、その両端部(1;2)の一方にねじ山式領域(3;4)を有し、前記ねじ山式領域は、そのねじ山式端部が雄型ねじ山か雌型ねじ山かによって外周面か内周面に構成されているコンポーネントであって、前記ねじ山式領域(3;4)の少なくとも一部分は、比表面積が高い結晶構造の乾燥膜で被覆され、前記膜は主に、金属とは反応しない1以上の鉱物塩から構成されることを特徴とする、前記コンポーネント。
【請求項19】
結晶性鉱物構造の乾燥膜の比表面積は20m/g以上、好ましくは、100m/g以上であることを特徴とする、請求項18に記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項20】
前記膜は、主にケイ酸アルカリから構成されていることを特徴とする、請求項18又は19に記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項21】
前記膜は、主に金属リン酸塩から構成されていることを特徴とする、請求項18又は19に記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項22】
前記膜は、耐食試薬を含んでいることを特徴とする、請求項18〜21のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項23】
前記膜は、固体潤滑剤の分散粒子を含み、この固体潤滑剤の粒子は、第1、第2、第3及び第4分類のうち少なくとも1由来の潤滑剤の粒子を含むことを特徴とする、請求項18〜22のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項24】
前記膜は、鉱物粒子又は有機物粒子を分散させることで構成される制動添加剤を含み、前記粒子は、比較的高い劈開荷重値及び/又は強い微粒子相互作用若しくは粒子間引力及び/又は中〜高程度のモース硬度及び/又は動作に抵抗するか若しくは反対に動作させるレオロジー的挙動を有し、前記制動添加剤は、少なくとも酸化ビスマス、酸化チタン、コロイド状シリカ及びカーボンブラックを含む群から選択されることを特徴とする請求項18〜23のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項25】
前記膜は、摩擦係数を調節して鉱物層の摩擦強度を上げるため、ナノメートル鉱物粒子(アルミナ、シリカ、TiN)を含むことを特徴とする、請求項18〜24のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項26】
前記膜は、摩擦係数を小さくして鉱物膜の摩擦強度を上げるため、フラーレン粒子を含むことを特徴とする、請求項18〜25のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項27】
前記膜は、鉱物膜の降伏強度を上げるため、有機化合物を含むことを特徴とする、請求項18〜26のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項28】
鉱物膜で被覆されるねじ山式領域(3、4)は、潤滑系で被覆されることを特徴とする、請求項18〜27のいずれか1項記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項29】
前記潤滑系は、熱溶融性であることを特徴とする、請求項28に記載の耐摩耗性ねじ山式管状コンポーネント。
【請求項30】
お互いに補い合う雄ねじ山式管状コンポーネントと雌ねじ山式管状コンポーネントを含むねじ山式管状接続部であって、前記ねじ山式管状コンポーネントの少なくとも一方は、前記請求項18〜29の1に記載されたものであることを特徴とする、ねじ山式管状接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−506797(P2013−506797A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531266(P2012−531266)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005763
【国際公開番号】WO2011/038850
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(504255249)ヴァルレック・マンネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス (30)
【氏名又は名称原語表記】VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS FRANCE
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】