説明

耐摩耗性を有するポリウレタン樹脂組成物および成形用樹脂セット

【課題】従来の熱可塑性ポリウレタン樹脂成形物の欠点を解消し、さらに優れた耐摩耗性を有する成形物を与える熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるA成分と、ポリイソシアネート化合物からなるB成分とを混合してなる樹脂組成物において、上記A成分またはB成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする耐摩耗性ポリウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業分野やスポーツ分野など、耐摩耗性を要求される用途に用いられる成形物を成形するためのポリウレタン樹脂組成物および成形用樹脂セットに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂成形物は、高強度、耐摩耗性および耐屈曲性などの強靭な特性を有し、従来、耐圧ホースやパッキン、コンベアーベルト、靴底などの用途に使用されている。特に、耐摩耗性を必要とする分野においては、ポリイソシアネートによる架橋や、ポリテトラフルオロエチレン粒子をブレンドすることにより、熱可塑性ポリウレタン成形物の耐摩耗性を改良してきた。ポリイソシアネートによる熱可塑性ポリウレタン樹脂の架橋に関しては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
しかしながら、ポリイソシアネートによる熱可塑性ポリウレタン樹脂の架橋による成形物の耐摩耗性向上には限界があり、また、熱可塑性ポリウレタン樹脂にポリテトラフルオロエチレン粒子をブレンドしたものからなる成形物は、該成形物表面の摩耗とともに、成形物からポリテトラフルオロエチレン粒子が粉末として分離する場合があり、成形物の外観が悪化するという問題点がある。
【特許文献1】特開昭56−167430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、従来の熱可塑性ポリウレタン樹脂成形物の上記欠点を解消し、さらに優れた耐摩耗性を有する成形物を与える熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物および成形用樹脂セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は以下の構成の本発明によって達成される。
1.熱可塑性ポリウレタン樹脂(以下単に「ポリウレタン」と称する場合がある)からなるA成分と、ポリイソシアネート化合物(以下単に「ポリイソシアネート」と称する場合がある)からなるB成分とを混合してなる樹脂組成物において、上記A成分またはB成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(以下単に「エポキシ化合物」と称する場合がある)を含有することを特徴とする耐摩耗性ポリウレタン樹脂組成物。
【0006】
2.A成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含有する前記1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
3.B成分が、エポキシ基を2個以上主鎖に有する熱可塑性樹脂を有する前記1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
4.B成分が、ポリイソシアネート化合物とエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物とを含むポリウレタン以外の熱可塑性樹脂である前記1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【0007】
5.エポキシ基を2個以上主鎖に有する熱可塑性樹脂が、エポキシ基を有するオレフィン樹脂、エポキシ基を有するスチレン樹脂、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系樹脂およびエポキシ基を有する熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記3に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【0008】
6.熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるA成分と、ポリイソシアネート化合物からなるB成分とを組み合わせてなる成形用樹脂セットにおいて、上記A成分またはB成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする成形用樹脂セット。
【0009】
7.A成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含有する前記6に記載の成形用樹脂セット。
8.B成分が、エポキシ基を2個以上主鎖に有する熱可塑性樹脂を含有する前記6に記載の成形用樹脂セット。
【0010】
9.B成分が、ポリイソシアネート化合物とエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物とを含むポリウレタン以外の熱可塑性樹脂である前記6に記載の成形用樹脂セット。
10.エポキシ基を2個以上主鎖に有する熱可塑性樹脂が、エポキシ基を有するオレフィン樹脂、エポキシ基を有するスチレン樹脂、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系樹脂およびエポキシ基を有する熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記8に記載の成形用樹脂セット。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリウレタンをポリイソシアネートで架橋する際、同時にエポキシ化合物を加えることにより、より耐摩耗性を向上させた成形物を与えるポリウレタン組成物および成形用樹脂セットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に好ましい実施態様を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の耐摩耗性ポリウレタン樹脂組成物(以下「成形用樹脂セット」も含む)の製造に使用するポリウレタンとしては、公知のポリウレタン、例えば、エステル系、エーテル系、エステル−エーテル系、カーボネート系などのポリウレタンが使用でき、例えば、商品名「レザミン」などとして大日精化工業(株)、その他の多くの企業から入手して使用することができる。
【0013】
本発明において架橋剤として使用するポリイソシアネートとしては公知のポリイソシアネート、例えば、脂肪族の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,5−オクチレンジイソシアネートおよびダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートおよびイソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオホスフェート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートおよびジフェニルスルホンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネートなどが挙げられ、特に好ましいものはMDIである。
【0014】
本発明で使用するエポキシ化合物としては、公知の材料、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸型エポキシ樹脂、テトラヒドロ無水フタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、脂環式アセタール型エポキシ樹脂、脂環式アジペート型エポキシ樹脂、脂環式カルボキシレート型エポキシ樹脂およびビニルシクロヘキセン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0015】
特に好ましいエポキシ化合物としては、エポキシ基を有するアクリル樹脂、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系樹脂、エポキシ基を有するアクリル・エチレン系樹脂、エポキシ基を有するアクリル・酢酸ビニル系樹脂およびエポキシ基を有するアクリル・アクリロニトリルスチレン系樹脂、エポキシ基を有するスチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0016】
上記材料からなる本発明の耐摩耗性ポリウレタン樹脂組成物は、任意の方法で上記成分を配合することによって得られる。好ましい製造方法は以下の通りである。なお、本発明の耐摩耗性ポリウレタン樹脂組成物の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
【0017】
(1)エポキシ化合物とポリイソシアネートと熱可塑性樹脂とを混練してB成分とし、これをA成分であるポリウレタンに混合して本発明の組成物とする方法。この方法で使用する上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、MBS樹脂、アクリル樹脂、AS樹脂、塩素化ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、PBT樹脂、EVA樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどのポリウレタン以外で、ポリイソシアネートやエポキシ化合物と反応しない熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0018】
上記熱可塑性樹脂に対するポリイソシアネートの配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部あたり、約1〜100質量部の範囲であることが好ましい。また、上記熱可塑性樹脂に対するエポキシ化合物の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部あたり、約1〜100質量部の範囲であることが好ましい。
【0019】
(2)ポリウレタンとエポキシ化合物とを混練してA成分とし、一方、ポリイソシアネートを前記の如き熱可塑性樹脂に混練してB成分とし、A成分とB成分とを混合して本発明の組成物とする方法。
上記ポリウレタンに対するエポキシ化合物の配合割合は、ポリウレタン100質量部あたり、約1〜20質量部の範囲であることが好ましい。また、上記熱可塑性樹脂に対するポリイソシアネートの配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部あたり、約1〜100質量部の範囲であることが好ましい。
【0020】
(3)エポキシ化合物とポリイソシアネートとを混練してB成分とし、これをA成分であるポリウレタンに混合して本発明の組成物とする方法。上記エポキシ化合物に対するポリイソシアネートの配合割合は、エポキシ化合物100質量部あたり、約1〜100質量部の範囲であることが好ましい。
【0021】
(4)A成分であるポリウレタンに、B成分としてポリイソシアネートを混練したエポキシ基含有高分子化合物を配合する方法。この方法で使用するエポキシ基含有高分子化合物としては、例えば、エポキシオレフィン樹脂、エポキシ熱可塑性エラストマー、エポキシ・アクリルスチレン樹脂およびエポキシスチレン樹脂が挙げられる。エポキシ基含有高分子化合物に対するポリイソシアネートの配合割合は、エポキシ基含有高分子化合物100質量部あたり、約1〜100質量部の範囲であることが好ましい。
【0022】
上記のエポキシオレフィン樹脂としては、例えば、商品名「ボンドファースト2B」として、住友化学(株)から入手できるものが挙げられ、上記のエポキシ熱可塑エラストマーとしては、例えば、商品名「エポフレンドAT501」として、ダイセル化学工業(株)から入手できるものが挙げられ、上記のエポキシアクリル・スチレン樹脂としては、例えば、商品名「アルフォンUG4070」として、東亜合成(株)から入手できるものが挙げられ、上記のエポキシスチレン樹脂としては、例えば、商品名「モディパーA4100」として、日本油脂(株)から入手できるものが挙げられる。
【0023】
上記本発明の耐摩耗性ポリウレタン樹脂組成物の製造に際しては、ポリイソシアネートは勿論であるが、その他の樹脂についても、ポリイソシアネートと反応することがないように充分に乾燥して、含有されている水分を除去しておくことが好ましい。また、各成分の混合は如何なる方法でもよいが、例えば、押出し機などを用いて均質に混合することが好ましい。また、本発明の組成物は、前記A成分とB成分とを混合した状態でもよいが、この場合には長期保存によってポリイソシアネートがポリウレタン中のウレタン結合(−NHCO−)や尿素結合(−NHCONH−)に反応して成形が困難となる可能性があるので、A成分とB成分とを混合せず、両者を成形用樹脂セットとして保管あるいは販売して、成形時に両者を組み合わせて成形することが好ましい。成形方法は特に限定されないが、押出し成形や射出成形が一般的である。
【0024】
上記A成分とB成分との混合比率は、最終的に得られる成形物に要求される耐摩耗性によって異なるが、A成分100質量部あたりB成分を約1〜50質量部の割合で配合して成形することが好ましい。成形の際に加えられる熱、およびその後の熟成によってポリイソシアネートおよびエポキシ化合物が、ポリウレタンのウレタン結合または尿素結合と反応してポリウレタンを架橋させ、耐摩耗性に優れた成形物を与える。
【0025】
上記成形物中におけるエポキシ化合物の量は、最も好ましくは10〜50質量%を占める量である。エポキシ化合物の含有量が10質量%未満では成形物の耐摩耗性の改善効果が少ない。一方、エポキシ化合物の含有量が50質量%を超えると、相対的にポリウレタン成分が少なく、得られる成形物の強度特性が低下するので好ましくない。
【0026】
本発明の耐摩耗性ポリウレタン樹脂組成物から形成される成形物の物性を以下に示すが、これにより本願発明が特に限定されるものではない。本発明の成形物の硬度はJIS A50〜JISD85である。硬度は、日本工業規格 JIS K7311の条件で測定した値である。
【0027】
以上の如き本発明によれば、工業分野やスポーツ分野など、耐摩耗性を要求される用途に用いられる耐摩耗性の良好な成形物が提供される。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中部または%とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
100℃で4時間乾燥したJISA硬度90のエステル系ポリウレタン(商品名;レザミンP−1070、大日精化工業社製)1,000部と、予め100部のポリスチレン樹脂(商品名;ダイヤレックスHF77、三菱モンサント社製)に70部のエポキシ樹脂(商品名;エピコート1256;ジャパンエポキシレジン社製)と100部のMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)を2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U1)の試料を得た。
【0029】
(実施例2)
100℃で4時間乾燥したJISA硬度93のエーテル系ポリウレタン(商品名;レザミンP−2593、大日精化工業社製)1,000部と、予め120部の実施例1と同じポリスチレン樹脂に100部の実施例1と同じエポキシ樹脂と90部のMDIを2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U2)の試料を得た。
【0030】
(実施例3)
JISA硬度90のカプロラクトン系ポリウレタン(商品名;レザミンP−4590、大日精化工業社製)1,000部と80部の実施例1と同じエポキシ樹脂を単軸押出機により練り込み、100℃で4時間乾燥した円柱状ペレットと、80部の実施例1と同じポリスチレン樹脂に80部のMDIを2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U3)の試料を得た。
【0031】
(実施例4)
100℃で4時間乾燥したJISA硬度82のカーボネート系ポリウレタン(商品名;レザミンP−880、大日精化工業社製)1,000部と、予め150部の実施例1と同じエポキシ樹脂と50部のMDIを2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U4)の試料を得た。
【0032】
(比較例1)
実施例1と同じエステル系ポリウレタン1,000部と実施例1と同じポリスチレン樹脂200部を、混合し、射出機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U5)の試料を得た。
【0033】
(比較例2)
実施例1と同じエステル系ポリウレタン1,000部と、予め130部の実施例1と同じポリスチレン樹脂に70部のMDIを2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U6)の試料を得た。
【0034】
(比較例3)
実施例1と同じエステル系ポリウレタン1,000部と200部の実施例1と同じエポキシ樹脂を、混合して100℃で4時間乾燥し、射出機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U7)の試料を得た。
【0035】
(実施例5)
実施例1と同じエステル系ポリウレタン1,000部と、予め180部のエポキシ基を有するオレフィン樹脂(商品名;ボンドファースト2B、住友化学社製)と80部のMDIを2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U8)の試料を得た。
【0036】
(実施例6)
実施例1と同じエステル系ポリウレタン1,000部と、予め200部のエポキシ化熱可塑性エラストマー樹脂(商品名;エポフレンドAT501、ダイセル化学工業社製)と100部のMDIを2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U9)の試料を得た。
【0037】
(実施例7)
実施例2と同じエーテル系ポリウレタン1,000部と、予め190部のエポキシ基を有するアクリル・スチレン系樹脂(商品名;アルフォンUG4070、東亜合成社製)と90部のMDIを2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U10)の試料を得た。
【0038】
(実施例8)
実施例2と同じエーテル系ポリウレタン1,000部と、予め200部のエポキシ基を有するスチレン樹脂(商品名;モディパーA4100、日本油脂社製)と70部のMDIを2軸押出機により混練して得られた樹脂組成物とを混合し、該混合物を射出成形機で10cm×10cm×厚さ2mmの成形板を射出成形し、ポリウレタンコンパウンド(U11)の試料を得た。
【0039】
上記の実施例1〜8、および比較例1〜3のポリウレタンコンパウンドを、100℃で6時間加熱して熱キュアし、その後、88時間放置の上、試験片に加工し、日本工業規格JIS K7311に準じて機械的特性を求めた。耐摩耗性については、H−22の摩耗輪を使用して、荷重1kgで1,000回転あたりの摩耗量を日本工業規格JIS K7311に準じて求めた。その結果を下記表1に示す。
【0040】
摩耗性試験の結果、実施例1〜8の試験片(U1、U2、U3、U4、U8、U9、U10およびU11)では、摩耗量が15〜19mgであり、耐摩耗性の良好な材料であることを示した。
【0041】
一方、比較例1〜3に示す試験片(U5、U6およびU7)では、摩耗量が39〜380mgと大きく、特にMDIを加えていないポリウレタン(U5およびU7)では、摩耗量が181〜380mgと非常に大きく、成形物の耐摩耗性が悪く、耐摩耗性が必要な工業部品やスポーツ部品用材料として不適切であることを示した。
【0042】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、ポリウレタンをポリイソシアネートで架橋する際、同時にエポキシ化合物を加えることにより、より耐摩耗性を向上させた成形物を与えるポリウレタン組成物および成形用樹脂セットを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるA成分と、ポリイソシアネート化合物からなるB成分とを混合してなる樹脂組成物において、上記A成分またはB成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする耐摩耗性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
A成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含有する請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
B成分が、エポキシ基を2個以上主鎖に有する熱可塑性樹脂を含む請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
B成分が、ポリイソシアネート化合物とエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物とを含むポリウレタン以外の熱可塑性樹脂である請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ基を2個以上主鎖に有する熱可塑性樹脂が、エポキシ基を有するオレフィン樹脂、エポキシ基を有するスチレン樹脂、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系樹脂およびエポキシ基を有する熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるA成分と、ポリイソシアネート化合物からなるB成分とを組み合わせてなる成形用樹脂セットにおいて、上記A成分またはB成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする成形用樹脂セット。
【請求項7】
A成分が、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を含有する請求項6に記載の成形用樹脂セット。
【請求項8】
B成分が、エポキシ基を2個以上主鎖に有する熱可塑性樹脂を含有する請求項6に記載の成形用樹脂セット。
【請求項9】
B成分が、ポリイソシアネート化合物とエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物とを含むポリウレタン以外の熱可塑性樹脂である請求項6に記載の成形用樹脂セット。
【請求項10】
エポキシ基を2個以上主鎖に有する熱可塑性樹脂が、エポキシ基を有するオレフィン樹脂、エポキシ基を有するスチレン樹脂、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系樹脂およびエポキシ基を有する熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の成形用樹脂セット。

【公開番号】特開2006−335952(P2006−335952A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164338(P2005−164338)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】