説明

耐水・耐熱型点火バーナーを備えた消火訓練方法およびその装置

【課題】従来技術に対して、性能上や信頼性・安全性に関する課題を抱えており、要するに、点火バーナにおける安定燃焼域をいかに拡大するかが不可避の課題であるので、本発明の目的はこの課題を解決すべき手段を提供する。
【解決手段】車両や船舶等の移動体や建築物に発生する火災を消火する訓練用設備にて火災を作り出すための燃焼装置において、ひとつの点火源から複数のパイロット火炎(113 )を作り出し、複数のメインバーナ(611 )に同時に点火することを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置であり、さらに、点火火炎を始点として火炎が流れるバーナ管(112 )、その内部に内装しイグナイタスパークを有するバーナ、及びバーナ管の先端にパイロット火炎が吹き出す複数の開口部(115 )を設けた部材から成るとともに、バーナ管の中心軸(116 )と開口部(115 )の中心軸とのなす角度(片振り)を30°以上120°以内の範囲としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐水・耐熱型点火バーナーを備えた消火訓練装置に関するものであり、特に、移動体・車両、建築物、化学プラントや燃料貯蔵体に生じる火災の消火訓練を実施するための方法及び設備に係るもので、火災の訓練用設備(モックアップ)において模擬火災を発生させるための消火訓練方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火災消火訓練設備は、実物体のモックアップ、火災を作り出すための点火バーナ、点火バーナから火種を受けて着火するメイン火災のバーナ及び冷却水供給系から構成されている。
【0003】
これらの中で点火バーナは、地上用(配管や槽から地上面に流出した火災を作るため)、エンジン(船舶)用や生活空間(車両、船舶、建屋)向けに用いられ、モックアップの規模にもよるが、合計数十個が配位されるのが一般的である。
【0004】
メインバーナは、上記点火バーナの周囲に網目状に配位される配管群である。本発明は、上述の中で点火バーナを対象としたものである。
【0005】
そして、図13は、燃料基地火災の中で、「地上に流出した液化ガス燃料に引火した火災」の一部を模式的に描いたものである。地面上に本発明において対象とするパイロットバーナ(1309)が設置されていて、ここにパイロットバーナガス燃料管(1303)を通じてパイロットバーナ用ガス燃料1302が供給され、パイロット火炎1306がつくり出される。
【0006】
このパイロット火炎(1306)が、管状のメインバーナ(1308)から吹き出すメインバーナ液化ガス燃料1304に引火し、メイン火炎1307が作り出される。メイン火炎(1307)は地上10m 近くにまで到る。
【0007】
図11及び12に示す代表的な先行技術における点火バーナの構成を示す。ガスバーナ(1206)の先端にエルボ管状のバーナヘッド部材(1102)が設けられていて、ここからパイロット火炎が吹き出すようになっている。例えば、特許文献1のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−70732号公報
【0009】
パイロット火炎は、バーナヘッド部材(1102)の出口開口部近くに設けられたバーナ要素(1103)から噴出するメイン火災用のメインガス燃料に引火する。このようにして、模擬火災が作り出される。火炎ロッド(1207)によって、火炎が検知される。
【0010】
この実施例になるバーナでは、パイロット火炎からメイン火炎への火渡りのスムーズさ、機器の構造の健全性、点火バーナ操作に係る信頼性等に関して、いくつかの解決すべき課題を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した従来技術には、このような課題がある。
図13に示したように、火災消火訓練設備は、巨大な火炎を作り出すため多量のガス燃料を噴出させるように扱う設備である。したがって、消火訓練士の安全確保のため、爆発事故につながる未着火のままの燃料漏出を防止できる設備でなければならない。
【0012】
従来技術のバーナでは、バーナヘッド部材が、特に湾曲した外側部が過熱して焼損する。これは火炎が偏って、バーナヘッドの湾曲内面に接触して流れるためである。バーナヘッド部材は、ガス流通が一方向となる単体管であるため、バーナ管内で気柱型の周期的熱変動が自励型に発達し易く、燃焼振動へと発達し易い。
【0013】
燃焼振動が発生すると騒音が大きいばかりでなく、部材の係止部のゆるみや割れなどが生じ、機器の健全性が損なわれる。
以上のように従来技術に対して、性能上や信頼性・安全性に関する課題を抱えており、要するに、点火バーナにおける安定燃焼域をいかに拡大するかが不可避の課題であるので、本発明の目的はこの課題を解決すべき手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するために、本発明においては以下のような手段を採用する。
燃料ガスと燃焼エアを部分予混合しイグナイタと保炎用円筒体から成るバーナ(以下内装バーナと呼ぶ)を内装したバーナ管体の先端を、複数の出口開口部へと分岐する。
【0015】
要するに、ひとつの点火源において、複数個のパイロット火炎を作り出す。上流のバーナ管体と分岐開口部のなす角度は、両者の中心軸のなす片振り角度θで定義すると、
30°<θ<120°の範囲内から角度を選定する。両管状体には実体としての「太さ」があるため、30°<θあるいはθ<120°の条件は幾何学的に非現実的である。
【0016】
後述するように本実施例では、分岐開口を二股左右対称とし、θ=90°とした。具体的には、バーナ管体を両振り角度180°対向になるよう分割し、両端にバーナ開口部を設ける。外観が「ハンマー」に似ることから、このバーナ部材をハンマーヘッド部材と呼ぶ。
【0017】
模擬室内やエンジン等に設けるパイロットバーナでは、水平あるいは鉛直に配置した直管体のバーナ管の先端にハンマーヘッド部材を設ける。一方、地面上で発生させる模擬火災火炎用には、45°下向きに曲げたバーナ管の先端にハンマーヘッドを設ける。
【0018】
この地上火災用バーナは、砂利上に設置する。これは、消防車からの放水量が数千L/minであるが、この消火放水流の跳ね返りを砂利内で吸収し、放水飛沫がバーナ内に入らぬようにするためである。
【0019】
本発明においては、上記したバーナ管体(内部に内装バーナを設置)及びハンマーヘ
ッド部材をともに、冷却水をはった冷却ボックス内に完全に沈めて、外面から水冷する。従来から広く使われているような外皮部を水冷ジャケットとするバーナとは異なりこのような冷却方式とするのは、バーナ自身の発熱に加えてメイン火災火炎からのふく射熱の影響が圧倒的に強いからである。
【0020】
消火訓練後に冷却ボックス内に水が残ると冬期では凍結するため、冷却ボックス底面に排水孔を設ける。火炎形成時には、連続的に冷却水を流し続け、冷却ボックスからオーバーフローさせる。冷却ボックス内にゴミや異物が混入することを防ぐために、フタを設ける。このフタは、冷却水のオーバーフローを阻害しない。
【0021】
バーナ火炎は、高温用の熱電対により検知する。この熱電対は、内装バーナの外面にはわせるように固定し、内装バーナ出口から内側へ少し突き出すように位置決めする。
これにより、本バーナの点火・消火あるいは失火を判定し、火炎形成システムの制御に役立てる。
【0022】
本発明において、火炎検知に熱電対を用いるのは、従来から広く使用されるイオン電流法や光学視覚法が、放水による水飛沫の影響を受けて誤動作が多いからである。
【0023】
上記したバーナは、設置個所によっては、消火放水の直撃を防ぐために、プロテクト用の板材をフェンスとして設ける。
【0024】
バーナ管体の過熱を防ぐために、冷却ボックス内の冷却水のごく一部をハンマーヘッド部材の内側に混入させてバーナ内部を水の蒸発熱で冷却する手段も採用する。
【発明の効果】
【0025】
本発明を実施したことによる効果は、以下のようにまとめられる。
1) 本発明になるパイロットバーナの火炎からメインバーナへの火渡りが速くスムーズでる。メインバーナ着火時の膨圧発生や爆発音が生じることなく静粛である。
2) 本発明になるパイロット(点火)バーナは失火せず、したがってメインバーナも失火しない。未燃ガスの流出に伴う爆発は無く安全である。
3) バーナ部材が局部過熱することなく、またメイン火炎からのふく射熱の影響も防げるので、耐熱性にすぐれ熱変形や割れが生じない。
4) 騒音レベルが低い。また燃焼振動も発生しない。
5) 訓練時の消火放水の水しぶきがバーナに混入しても、火炎は安定に維持される。つまり消火訓練に支障が生じない。
6) 全体的に構造がシンプルであり、製作コストが安く、メンテナンス性も良好である。
7) 消火水の水しぶきの影響があっても、火炎検知が確実に行える。失火判断も適切に管理され、消火訓練システムの安全に貢献できる。
8) 集中的な大雨によっても、地表に設置するパイロット(点火)バーナは水没することが無く、メンテナンス不要で再稼働できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に使用する点火バーナの一実施例を示す一部欠截平面断面図である。
【図2】本発明に使用する点火バーナの一実施例を示す一部欠截側面断面図である。
【図3】本発明に使用する火炎検知位置の一実施例を示し、(a)は側面断面図であり、(b)は正面図である。
【図4】本発明に使用する点火バーナのシステム構成を示す一部欠截側面図である。
【図5】本発明に使用する点火バーナの他の実施例を示し、(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【図6】本発明に使用する点火バーナのさらに他の実施例を示し、(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【図7】本発明になる点火バーナの作用を模式的に描いた説明図である。
【図8】本発明になる点火バーナの別の応用例を示す説明図である。
【図9】本発明になる点火バーナの他の応用例を示し、(a)は、一部欠截斜視図であり、(b)は、一部欠截平面図である。
【図10】本発明の他の実施例の点火バーナの作用を示し、(a)は、一部欠截正面図であり、(b)は、一部欠截側面図である。
【図11】先行技術の一例を示す一部欠截斜視図である。
【図12】先行技術の一例を示す一部欠截側面図である。
【図13】液化ガス燃料施設のモックアップ消火訓練設備にて作り出す模擬火災の一部を模式的に描いた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上記した本発明になる点火バーナは、以下のように作用する。
ひとつの点火源に対して、複数の分岐開口部から複数の火炎が吹き出す。ハンマーヘッドバーナでは、180°離れた2 方向に2 つのパイロット火炎が形成する。多数のパイロット火炎へ分散することによって、メインバーナ火炎への火渡しが速くなる。
【0028】
本発明になるバーナは、バーナ管及びハンマーヘッド部も水没冷却されるので過熱することがない。点火バーナにて燃焼中、要するに火災消火訓練中、冷却水が連続的に供給されている場合、バーナ部材の温度(冷却水側から金属表面を測定)や冷却ボックス中の冷却水水温は40〜50℃である。一方、何らかの不具合で冷却水の供給が停止しても、冷却ボックス中に冷却水がはってあればバーナ部材の温度は60〜70℃であり、過熱に係わる問題は生じない。従って、バーナ機器の構造健全性は維持される。
【0029】
燃焼振動は、管体内で圧力変動が「節」と「腹」が交互・周期的に発達する自励的気柱圧振動である。本発明になるハンマーヘッドバーナは、以下の理由で燃焼振動状態には至らない;
1)ハンマーヘッド部における衝突作用で、気柱圧変動が崩れる。
2)一方の分岐ハンマーヘッド管における熱変動は、他方のハンマーヘッド管の変動で相互キャンセルされる。
【0030】
以上の作用によって、本発明になるバーナは静粛であって、燃焼振動は生じない。
本発明においては、熱電対で火炎検知を行うため、光学的手法の検知とは異なり、バーナ内に混入する消火放水由来の水しぶきによる影響は受けない。点火から消火(あるいは何らかの不具合による失火も)まで一貫して火炎(正確には火炎の発達過程)の温度を測定し、火炎を検知する。
【実施例】
【0031】
次に、この発明の一実施例を図面に基づいて説明すると、図1は、本発明を具体化した水平ハンマーヘッドバーナ(101 )を上方からの略断面視図として描いたものである。上流側にあって、ガスバーナ(108 )を内挿するバーナ管(112 )の先端に、左右対称に分岐されてハンマーヘッド部材(102 )が設けられている。
【0032】
このバーナ管(112 )とハンマーヘッド部材(102 )は、箱形をした冷却ボックス(103 )の中にあたかも水没状態のように有り、冷却ボックス(103 )内には冷却水(114 )がはってあるので、外面から水冷されている。このような水没水冷とするのは、本実施例にてバーナ自身の発熱量が10〜40kWであるのに対し、周囲のメイン火災火炎からのふく射熱量が50〜200kW と、5 倍にも到るからである。
【0033】
バーナの外側をウォータージャケットのように保護する従来方式では、熱的に耐久しない。ガスバーナ(108)は、中心軸上から燃料ガス(104)が、その周囲から燃焼エア(105)が供給され、ガスバーナの側面に開口した孔から燃焼エア(105)の一部が燃料ガス(104)と混合する。
【0034】
この孔のひとつには、点火用のスパークプラグが近接していて、これによってガス燃料(104)は点火する。ガスバーナ(108 )の先端には保炎カン(110)があって、ここの入口において燃焼エア(105)の一部が混入し、またこれの出口で残りの燃焼エア(105)が混合する。
【0035】
このように、ガスバーナ(108 )は段階混合型と言える。この保炎カン(110)において保炎されて、バーナ管(112 )内において燃焼火炎が広がり、ハンマーヘッド部材(102 )において左右に分かれて、2 つのパイロット火炎(113 )となる。両パイロット火炎(113 )は、外観上は、冷却ボックス(103)の両側面に開口するハンマーヘッド開口部(115)から吹き出すようになる。
【0036】
図2は、図1に示した水平ハンマーヘッドバーナを側方からの略断面図として描いたものである。バーナ管(112 )内には、図1ではガスバーナと記した内装バーナ(201 )が装着されていて、ここでガス燃料(104 )が着火する。バーナ管(112)の先端に取り付くハンマーヘッド部材のハンマーヘッド開口部(115)からパイロット火炎(113 )が吹き出す。
【0037】
バーナ管(112 )とハンマーヘッド部材は、冷却ボックス(103 )内にはった冷却水(114 )内に沈められるようにして水冷される。冷却ボックス(103 )の底部には小さな排水孔(204 )があり、排水(205)するようになっている。ここから排水しても、冷却水の供給量が多いため、冷却ボックス(103 )からは常にオーバーフロー(203)する。
【0038】
訓練終了後には冷却水が止まり、排水(205)によって冷却ボックス(103 )内は空になる。したがって冬期でも、 冷却ボックス(103)内の残留水が凍結することはない。冷却ボックス(103)の上部は、塵やゴミが混入せぬように、カバースペーサー(206)を介してバーナカバー(202)が設けられている。
【0039】
バーナカバー(202)と冷却ボックス(103 )との間には、冷却水の水面近くに隙間があり、冷却水がオーバーフロー(203)するとともに、水面が外気に通じている。
【0040】
図3は、火炎検知のための熱電対の設置状況を側方からの略断面図及び正面図として描いたものである。前述したように、本発明の実施例では、消火放水の水飛沫や水が蒸発・凝結して生じるミストの影響を過度に敏感に受けぬように、火炎検知には熱電対を採用した。
【0041】
内装バーナ(302 )の外側に沿って、保護管(304 )に入れた熱電対(303 )を掃引し、熱電対(303 )の先端を内装バーナ出口(305 )から内側(中心軸側)・前方へ斜めに突き出すようにして設置する。この突き出す長さ(R)(半径方向距離)及び(L)(軸方向距離)は、火炎検知のため火炎温度を測定する最適値に設定した。
【0042】
半径方向距離(R)は内装バーナ(302)の半径の1/2〜4/5程度のものであり、一方軸方向距離(L)は、数mm〜十数mm程度のものである。火炎検知用の熱電対(303 )は、このように内装バーナ(302 )と組み合せて一体化するものであるが、ハンマーヘッドバーナ全体における位置は以下のようにする。
【0043】
熱電対は、バーナ管中心軸(308 )とハンマーヘッド中心軸との支点から上流側へ向かって、バーナ管径の0.8倍以上3.5 倍以下の範囲内にくるように設定する。ハンマーヘッド側に近づき過ぎると、消火放水の飛沫の影響が出るなど温度変動幅が過度に大きくなる。これによって、火炎の誤検知で未燃焼燃料流出など安全上の問題が生じる。
【0044】
一方、熱電対(303)がすなわち内装バーナ(302)がバーナ管体の奥に入り過ぎると、水飛沫は入らぬが、ハンマーヘッド出口からの火炎の伸びが乏しくなりメインバーナへの着火機能に問題が生じる。さらに外気から火炎中に流入する燃焼用空気の不足で、バーナ管体内部に未燃分が生成する。
【0045】
図4は、移動体・車両の内部火炎に適用する点火バーナの全体システムを描いたものである。ここまで述べてきた内装バーナ(405)、バーナ管(401 )及び冷却ボックス(403 )は、遮へい板(409)に固定されている。この遮へい板には、これらバーナ部の固定材としての役割の他に、模擬火炎からのふく射熱から、接続ボックス(ウィンドボックス)(410)とトランス(415 )を内蔵するトランスボックス(414 )を保護する役割もある。
【0046】
冷却水(406 )は、冷却水供給管(407)を通じて冷却ボックス(403)の側壁から供給される(407)。接続ボックス(ウィンドボックス)(410)内には、燃料ガス管(416 )が貫通していて、燃料ガス(411 )は内装バーナ(405 )にて供給される。
【0047】
燃焼エア(412)は、文字通り風箱である接続ボックス(ウィンドボックス)(410)を介して内装バーナ(405 )に導かれる。接続ボックス(ウィンドボックス)(410)とトランスボックス(414 )は電線管(413 )によってつながっているが、トランス(415 )とスパークプラグ(109)(図1)をつなぐケーブルが電線管(413 )の内部を通っている。
【0048】
図5に示す実施例は、ここまで述べてきた実施例と基本的に同一であるが、バーナ管(502 )が水平ではなく、バーナ管(502 )の先が角度(α)で下向きに首垂れし、その先端に首下げハンマーヘッド部材(503)を設けたのものである。
【0049】
発明者らによる実施例のひとつでは、α=45°とした。この実施例は、液化ガス燃料が地上に流出しそこで火災が発生することを模擬した流出火災用の点火バーナとして用いるものである。地上近傍に設置するため、大雨時などにおいて水がバーナに流入しても、点火部まで水が遡上しないようにしたものである。
【0050】
ハンマーヘッド開口部(515)に、大雨等で地表に溜まった水が流入しても、地上の水位が上昇しない限り内装バーナ(507)までは水が混入しない。したがって、スパークプラグ(109)(図1)や熱電対(303)(図3)等が水没からまぬがれることになる。
【0051】
このバーナ(501 )は、図示したように、10〜40mm程度の大きさの砂利層(516 )の上に乗せるように設置する。これは、平面体上に乗せると消火放水の跳ね返り飛沫がハンマーヘッド開口部(515)に入りやすいため、砂利層(516 )で水を吸引させるためである。消火放水によって砂利層が移動せぬようにネット(517 )をかぶせるようにして砂利層を押え込んでいる。
【0052】
図6に示す実施例は、バーナ管(602)を鉛直方向に立てる鉛直下向きハンマーヘッドバーナ(601)を示すものである。このタイプの点火バーナは、模擬生活空間内の天井部における模擬火災を作り出すためのものである。基本的な構成は、下方を向いていること以外は先に述べた図1〜図4に示す実施例と同様であるが、冷却水(606 )をオーバーフロー(607 )させるオーバーフロー開口部(610 )が4 つの側面中の一面に横スリット状に開口している点が異なる。
【0053】
左右のハンマーヘッド開口部(608 )から吹き出す両パイロット火炎(605)は、やはり左右に配位されている。メインバーナ管(611 )から噴出するメイン燃料に火移りして規模の大きなメイン火炎(613)を作り出す。
【0054】
図7は、本発明になる点火バーナである水平ハンマーヘッドバーナ(701 )が、複数のメインバーナに火渡しする状況を上方からの視図として描いたものである。ハンマーヘッド部材(704 )の両端開口部からは、左右にパイロット火炎(706)が吹き出す。一方、この点火バーナの近傍には、3 本のメインバーナ管(709a、709b及び709c)が配位されている。
【0055】
これらのメインバーナ管内にはいずれも、液化プロパンが供給されていて、各メインバーナ管に開口する多数の孔から液化プロパンが噴出し、その際の急激な減圧作用によって高濃度のプロパンガス塊となる。このプロパンガスは、いずれのメインバーナ管にも付設しているデフレクタプレート(707及び708 )に衝突し、向きを変えてメインバーナ管の周囲に放散する。
【0056】
この放散したプロパンガスは、パイロット火炎(706)によって着火し、パイロット火炎に比べると大規模な火災を模擬する火炎が形成される。3 箇所のメインバーナ管(709a、709b及び709c)において、ほぼ同時にメイン火炎(711 )が立ち上がる。着火遅れや火炎伝播の間延びは生じない。
【0057】
図8に上方からの視図として示す実施例は、図7と同様に水平ハンマーヘッドバーナ(801 )に対し、左右にメインバーナ管(808dおよび808e)を配位したものを示している。ハンマーヘッド部材(804 )から左右にパイロット火炎(805 )が吹き出し、両メインバーナ管(808d及び808e)から噴出しデフレクタプレート(809 )によって四方に広がるメインプロパンガスに点火する。両メインバーナ管におけるメイン火炎はほぼ同時に立ち上がる。このようにして、平行する2 本のメインバーナ管においてスムーズに模擬火災の火炎が作り出される。
【0058】
図9は、船舶操舵室の天井部で模擬火炎を発生させる実施例であって、斜め上方からの視図として描いたものである。ここで用いる鉛直下向きハンマーヘッドバーナ(900)は、図6に示した鉛直下向きのタイプである。左右に吹き出すパイロット火炎(904 )は、ハンマーヘッド部材(902)の開口部に先端を近接させたメインバーナ管からデフレクタプレート(907 )を介して噴出するプロパンガスに点火し、模擬火災であるメイン火炎(911 )を作り出す。
【0059】
メインバーナ管(906 )は、プロテクタプレート(2)の内側に挿入させ、鉛直下向きハンマーヘッドバーナ(900 )の開口部に、メインバーナ(906 )の端部を近接させる。このようにメインバーナ管(906)の端部がプロテクタ箱内に挿入しているため、消火放水もかかりにくく、点火バーナの失火はまぬがれる。本実施例において、鉛直下向きパイロットバーナ(900)は操縦席に向う3方向を、プロテクタプレート(1)(908 )及びプロテクタプレート(2) (909 )で囲われている。
【0060】
これらのプロテクタプレート(1)及び(2)(908 及び908 )は、いずれも消火訓練放水流の直撃を避けるためのものである。このようにして、激しい水流がハンマーヘッド部材内部に流入するのを防ぐ。正面のプロテクタプレート(1)(908 )は、下方にエア開口部(908 )を設けていて、ここから燃焼エアが流入するようになっている。このエアは、側面のプロテクタプレート(2)の開口部を通じて流出し、メイン火炎(911 )の点火をスムーズにする。両側面のプロテクタプレート(2)は下半分が開口している。この開口部からパイロット火炎(904 )が吹き出し、メインバーナからプロパンガスに点火する。尚、左右のメイン火炎の形成は同時である。
【0061】
次に、この発明の他の実施例を図10において詳述する。
水平なバーナ管(1001)の先端にハンマーヘッド部材(1007)を接続し、それらを冷却ボックス(1006)中の冷却水(1003)中に浸す構成は、図1及び図2に示した実施例と同様である。
【0062】
本実施例は、ハンマーヘッド開口部(1002)の上方にて、冷却水(1003)を漏水させる小さな孔(直径3mm 程度)を2 ヶ所開けている点が異なる。これらの漏出孔(1004)から冷却水が出て、冷却ボックス(1006)の外表面上を流下し(1008)、ハンマーヘッド開口部(1002)に生じる渦流(1009)に巻き込まれるようにハンマーヘッド部材(1007)内に流入する(1010)。
【0063】
ハンマーヘッド部材(1007)内に入った水は、火炎の熱で蒸発し、バーナ管(1001)やハンマーヘッド部材(1007)を蒸発潜熱で冷却する。したがって、バーナ機器部材や火炎検知熱電対を過熱から保護できる。
尚、本実施例のように、漏出冷却水をバーナ内に混入させても、パイロット火炎(1005)の威力を衰えさせることはない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の耐水・耐熱型点火バーナーを備えた消火訓練方法およびその装置の技術を確立し、その方法およびその装置を実施・販売することにより、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0065】
101,801 水平ハンマーヘッドバーナ
102,402,603,704,804,902,1007 ハンマーヘッド部材 103,403,504,705,806 冷却ボックス
104,306,411,505 燃料ガス
105,307,412,506 燃焼エア
106 燃料孔
107 エア側孔
108 ガスバーナ
109 スパークプラグ
110 保炎カン(保炎器)
111 エア合流孔
112,301,401,502,602,702,802,901 バーナ管
113,404,508,605,706,805,904,1005 パイロット 火炎
114,406,511,606,712,807,1003 冷却水
115,515,608,1002 ハンマーヘッド開口部
116,308,518 バーナ管中心軸
117,207 ハンマーヘッド部材中心軸
201,302,507,609,703,803 内装バーナ
202,509 バーナカバー
203,512,607 冷却水オーバーフロー
204,513 排水孔
205,514 排水
206,510 カバースペーサー
301,401,502,602,702,1001 バーナ管
303 熱電対
304 保護管
305 内装バーナ出口
405,507,703 内装バーナ
407 冷却水供給
408 冷却水管
409 遮へい板
410 接続ボックス(ウインドボックス)
413 電線管
414 トランスボックス
415 トランス
416 燃料ガス管
501 首下げハンマーヘッドバーナ
503 首下げハンマーヘッド部材
516 砂利層
517 ネット
601,900 鉛直下向きハンマーヘッドバーナ
610 オーバーフロー開口部
611,709a,709b,709c,808d,808e,906 メインバー ナ管
612,707,708,809 デフレクタプレート
613,711,810,911 メイン火炎
614 排水口
615 排水
905 燃焼エア流
906 メインバーナ管
907 プロテクタプレート
908 プロテクタプレート(1)
909 プロテクタプレート(2)
910 エア開口部
504,604,705,903,1006 冷却ボックス
1008 漏出水流下
1009 過流
1010 流入
α ハンマーヘッド首下げ角度
θ 分岐角度
D バーナ管径
R 半径方向距離
L 軸方向距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両や船舶等の移動体や建築物に発生する火災を消火する訓練用設備にて火災を作り出すための燃焼装置において、
ひとつの点火源から複数のパイロット火炎を作り出し、複数のメインバーナに同時に点火することを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練方法。
【請求項2】
車両や船舶等の移動体や建築物に発生する火災を消火する訓練用設備にて火災を作り出すための燃焼装置において、
点火火炎を始点として火炎が流れるバーナ管、その内部に内装しイグナイタスパークを有するバーナ、及びバーナ管の先端にパイロット火炎が吹き出す複数の開口部を設けた部材から成るとともに、バーナ管の中心軸と開口部の中心軸とのなす角度(片振り)を30°以上120°以内の範囲とすることを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項3】
上記請求項2において記載したバーナ管の先端に、θ=90°すなわち両振り角度180°左右対称とするハンマーヘッド様に2つに分割したパイロット火炎噴出部を設けたことを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項4】
上記請求項2又は3において、バーナ管及びその先端の分岐部全体を外側から水冷することを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項5】
上記請求項4において、バーナ管、その先端の分岐部、冷却水を連続供給する冷却ボックスから成り、バーナ管とその先端の分岐部を冷却ボックス中に水没させ、冷却ボックス中の水面を外気に通じるようにするとともに、上記分岐部出口を、冷却ボックス側壁を貫通させて、パイロット火炎が吹き出す開口部を冷却ボックスの側部に設けることを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項6】
上記請求項5において、冷却水ボックスに水抜き穴を開口し、消火訓練終了後には排水し、冷却水ボックス内に凍結に到る残留水を無くすことを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項7】
上記請求項2〜5のいずれか1の請求項において、冷却水の一部をバーナ先端分岐開口部あるいはハンマーヘッド様開口部に流入させ、水の蒸発熱によって火炎温度を抑制することを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項8】
上記請求項7において、バーナ先端分岐開口部あるいはハンマーヘッド様開口部の上方の冷却ボックス側面に、冷却水を漏流下させるための流出孔を設けたことを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項9】
上記請求項3において、ハンマーヘッド様の部材を、途中で折れ曲がる様に下向きに傾斜させたバーナ管の先端に設けることを、より望ましくはこの傾斜確度が45°前後であることを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項10】
上記請求項2〜8のいずれか1の請求項において、バーナ管を水平に設置することを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項11】
上記請求項2〜8のいずれか1の請求項において、バーナ管を鉛直に設置することを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項12】
上記請求項2〜11のいずれか1の請求項において、火災検知を熱電対にて行うことを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項13】
上記請求項2〜11のいずれか1の請求項において、熱電対先端を内装バーナの出口のガス流れ中に設置する上記請求項(2)記載両中心軸からの距離としてバーナ管径の0.8 倍以上3.5 倍未満の範囲内に設定することを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項14】
上記請求項9において、当該記載バーナを、地上にて作り出す火災用とするとともに、砕石群あるいは砂利面上に設置することを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項15】
上記請求項2〜8、10〜13のいずれか1の請求項において、バーナを、移動体車両内や建屋内の火災用及び移動体車両外・建屋外・燃料貯蔵体周りの火災用とすることを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。
【請求項16】
上記請求項15において、当該バーナの周囲に放水流あるいはその飛沫を遮へいする板状の防御体を設けるとともに、火炎噴出部にメインバーナの一部あるいは端部を近接させることを特徴とする耐水・耐熱型点火バーナを備えた消火訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−32443(P2012−32443A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169483(P2010−169483)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(391018639)バブ日立工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】