説明

耐油紙

【課題】 油分の再付着を防止する。
【解決手段】 耐油度がキット法で3級以上であり、JIS P 8117に規定されている透気度が100秒以下であり、少なくとも収容物と接する面側に、幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部1aと、凸部で形成された低密度部1bとからなる凹凸が設けられ、JIS P 8124に規定されている坪量が30g/m以上、70g/m以下とすることによって、高密度部1aに油分を保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分を含む収容物を収容する包装材や袋に用いられる耐油紙に関する。
【背景技術】
【0002】
耐油紙は、油分の浸透を防止する機能を有し、例えば唐揚げやフライ等の惣菜を包装する包装材やファーストフード店でフライドポテトを詰める袋として広く用いられている。耐油紙は、内部に収容された食品から染み出た油分が外側に染み出ず、包装材や袋の外面が油分により汚れることを防止することができる。この耐油紙は、例えば主原料となるパルプにフッ素樹脂等の耐油剤が混合されて形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような耐油紙を用いた包装材や袋では、耐油剤によって内部に収容された食品から染み出た油分が外側に浸透しないという利点を有するが、油分が耐油紙に浸透しないことから食品と接する内面に油分が付着した状態となる。このため、耐油紙を用いた包装材や袋では、内面に付着した油分が再び食品に付いてしまい、食品の風味や食感を損ねてしまう。これは、包装材や袋の内面と内部に収容された食品との接触面積が大きいほど、食品への油分の再付着が多くなり、食品の風味や食感が著しく低下してしまう。
【0004】
【特許文献1】特開昭55−142796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、油分の再付着が防止された耐油紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成する本発明に係る耐油紙は、耐油度がキット法で3級以上であり、JIS P 8117に規定されている透気度が100秒以下であり、少なくとも収容物と接する面側に、幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部と、凸部で形成された低密度部とからなる凹凸が設けられ、JIS P 8124に規定されている坪量が30g/m以上、70g/m以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、収容物と接する面側に幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部と、凸部で形成された低密度部とからなる凹凸が設けられている。凹部で形成された高密度部には、収容物から染み出した油分が流れ込み、油分を保持することができる。凸部で形成された低密度部は、収容物を支持する。
【0008】
本発明では、凹部で形成された高密度部の幅を0.5mm以上とすることによって、収容物と接する面で十分な油分を保持することができる。また、本発明では、凹部で形成された高密度部で油分を保持し、凸部で形成された低密度部で収容物を支持して収容物との接触面積を小さくすることによって、収容物に対する油分の再付着を防止することができる。これにより、本発明では、油分の再付着による収容物の劣化を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した耐油紙について詳細に説明する。耐油紙1は、図1に示すように、例えば揚げ物や油脂食品等の油分を有する食品2を収容する袋を形成するために用いられる。なお、この耐油紙1は、食品2の包装用に限定されず、例えば保護用のオイルが付着している金属機械部品の包装用や化粧品の包装用に用いてもよい。また、耐油紙1は、包装紙として用いてもよい。
【0010】
具体的に、耐油紙1は、主原料となるパルプに耐油性を付与するための耐油剤と、この耐油剤をパルプに定着させる定着剤とが混合された紙料を抄造して得られる。パルプには、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)等の木材パルプが用いられる。L−BKP、N−BKPの中でも、環境への配慮から漂白処理された、特に無塩素漂白された所謂ECF(Element Chlorine Free)パルプやTCF(Total Choline Free)パルプが好ましい。ECFパルプは、塩素を使わず二酸化塩素によって漂白が施されたパルプである。TCFパルプは、オゾンや酸素によって漂白が施されたパルプである。このECFパルプやTCFパルプは、パルプを構成する繊維のセルロースの末端基が酸素により活性化されているため、耐油剤との親和性が高く、より耐油効果が得られる。
【0011】
また、耐油紙1は、処分する際に焼却処理されることが殆どである。耐油紙1を焼却処分した場合には、食品2から浸出した油分3が耐油紙1に付着しているため、この油分3により燃焼温度が高温となる。ECFパルプやTCFパルプは、無塩素漂白であるため、焼却時に燃焼温度が高温となっても、ダイオキシン等の塩化物の発生を防止することができる。また、ECFやTCFパルプを用いた場合には、焼却時に耐油紙1を塩素を含む他の焼却物と共に焼却処理した際、排ガス中に含まれる塩化物の量を少なくすることができる。
【0012】
また、パルプには、ECFパルプやTCFパルプの他に、FAS(二酸化チオ尿素)にて還元漂白された古紙パルプを使用することもできる。FAS漂白された古紙パルプは、従来、耐油紙のパルプとして用いられた塩素漂白されたパルプと比べて耐油剤との親和性が高く、より耐油効果が得られる。
【0013】
なお、パルプとしては、上述した木材パルプの他に麻や木綿、ケナフ、竹等の非木材パルプ等を用いたり、含有させてもよい。また、木材パルプや非木材パルプの他に、耐油紙1の透気性を調整するために例えばセラミックファイバー、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維等の無機繊維やレーヨン、ポリプロピレン、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維を含有させてもよい。これらの木材パルプ、非木材パルプ、無機繊維、有機繊維は、耐油紙1の用途に応じて単独又は適宜組み合わせて混合する。
【0014】
耐油剤には、アクリル系樹脂やスチレンブタジエン系樹脂を使用したものが用いられる。耐油剤は、耐油紙1の耐油度がJAPAN TAPPI No.41に規定されるキット法で3級以上となるように、耐油紙1中に含有されている。耐油紙1では、耐油度が3級未満の場合、食品2から染み出た油分3が浸透し、袋の外側に染み出てしまう虞がある。また、耐油剤としては、アクリル系樹脂やスチレンブタジエン系樹脂を使用したものの他に、フッ素樹脂を使用したものを用いてもよい。フッ素樹脂を使用した耐油剤としては、例えば旭硝子株式会社製のアサヒガードAG530及びAG710、住友化学工業株式会社製のスミレーズレジンFP−110、デュポン社製のゾニールRP、チバスペシャリティケミカルズ社製のローダイン2000等がある。
【0015】
定着剤には、一般に用いられる例えばポリアミド樹脂、ポリアミン樹脂、エビクロルヒドリン樹脂、カチオン性尿素、カチオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等が用いられる。
【0016】
なお、耐油紙1には、上述した耐油剤や定着剤の他に、耐水性を付与するサイズ剤や澱粉、填料、消泡剤、紙力増強剤、pH調整剤等が含有されていてもよい。
【0017】
以上の構成からなる耐油紙1は、パルプの混合割合や叩解度、坪量を調整することにより、JIS P 8117に規定される透気度が100秒以下に抄紙されている。耐油紙1では、透気度を100秒以下にすることによって、食品2から出た蒸気を外部に排出することができ、袋の内部に蒸気がこもらず、蒸気による食品2の劣化を防止することができる。耐油紙1では、JIS P 8117に規定される透気度が100秒よりも大きい場合、食品2から出た蒸気が外部へ排出されにくく、蒸気の排出量が少なくなるため、蒸気により食品2が劣化し、食感が劣化してまう。
【0018】
以上のような構成からなる耐油紙1には、図2に示すように、少なくとも食品2と接する面側に凹部で形成された密度の高い高密度部1aと、凸部で形成された密度の低い低密度部1bとからなる凹凸が設けられている。この高密度部1a及び低密度部1bは、食品2と接する面の全体に満遍なく例えばストライプ状に形成されている。外側となる他方の面は、平坦に形成されている。
【0019】
高密度部1aは、後述する抄紙機のプレスパートにおいて、図2に示すように、食品2と接する面が厚み方向に押圧されることによって耐油紙1が圧縮され、密度が高くなっている。この高密度部1aは、幅が0.5mm以上であり、厚み方向に押圧されて凹部で形成されている。低密度部1bは、食品2と接する面が厚み方向に押圧されず、密度が高密度部1aの密度よりも低くなっている。低密度部1bは、厚み方向に押圧されないため、高密度部1aよりも突出した凸部で形成されている。
【0020】
耐油紙1は、食品2と接する面側に幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部1aと凸部で形成された低密度部1bとが設けられていることによって、図2に示すように、食品2から染み出た油分3が凹部で形成された高密度部1aに流れ込み、この高密度部1aで油分3を保持することができる。また、耐油紙1では、凸部で形成された低密度部1bに食品2が接触しやすくなるため、食品2と接する面の全面に食品2が接することなく、食品2と直接接する面積を小さくすることができる。したがって、耐油紙1では、食品2と直接接する面積が小さく、高密度部1aで油分3を保持することができることから、袋の内面に付いた油分3が再び食品2に付着することを防止することができる。これにより、この耐油紙1では、油分3の再付着による食品2の風味や食感を劣化させることなく、食品2の風味や食感を長持ちさせることができる。
【0021】
耐油紙1では、高密度部1aの幅を0.5mm以上とすることによって、十分な油分3を保持することができる。一方、高密度部1aの幅が0.5mmより狭い場合には、食品2から染み出た油分3を保持しきれず、保持できなかった油分3が食品2に再付着しやすくなる。耐油紙1では、再付着した油分3により食品2の風味や食感が劣化してしまう。なお、高密度部1aの幅の上限は、収容物によって異なるが、5mm程度がよい。高密度部1aの幅が広すぎる場合には、高密度部1aに食品2が接してしまい、高密度部1aに保持されている油分が再付着してしまう。
【0022】
また、耐油紙1では、食品2と接する面側に形成された幅0.5mm以上の高密度部1aと低密度部1bとからなる凹凸において、幅0.5mm以上の高密度部1aと低密度部1bとの面積比が10:90〜90:10の範囲とされている。耐油紙1では、高密度部1aの面積の割合が食品2と接する面において10よりも小さい場合、高密度部1a部分が少なく、低密度部1b部分が多いため、高密度部1aが食品2から染み出た油分3を保持しきれず、低密度部1bに油分3が残ってしまう。また、この耐油紙1では、低密度部1bが多いため、食品2と接触する面積が大きくなり、高密度部1aで保持しきれなかった油分3が再付着しやすくなる。このような耐油紙1では、食品2に油分3が再付着し、食品2の風味や所謂クリスピー感といわれる「サクッ」とした食感が劣化してしまう。
【0023】
一方、耐油紙1では、幅0.5mm以上の高密度部1aの面積の割合が食品2と接する面において90よりも大きい場合、高密度部1a部分が多く、低密度部1b部分が少ないため、油分3を保持している高密度部1aに食品2が接触しやすくなる。このような耐油紙1では、油分3を保持している高密度部1aに食品2が接することにより、食品2に油分3が再付着し、食品2の風味やクリスピー感を劣化させてしまう。
【0024】
そこで、耐油紙1では、食品2と接する面側に凹部で形成された幅0.5mm以上の高密度部1aと凸部で形成された低密度部1bの面積比が10:90〜90:10となるように、高密度部1aと低密度部1bとを設けることによって、凸部で形成された低密度部1bで食品2を支持し、凹部で形成された高密度部1aで油分3を保持することができる。このような耐油紙1では、食品2と直接接する面積が小さく、表面で油分3を保持することができることから、油分3が食品2に再付着することを防止することができる。これにより、この耐油紙1では、収容した食品2の風味や食感を劣化させることなく、食品2の風味や食感をより長持ちさせることができる。
【0025】
なお、耐油紙1では、上述したように高密度部1aと低密度部1bとを食品2と接する面の全体に満遍なくストライプ状に設けることに限定せず、例えば散点状に設けるようにしてもよい。
【0026】
また、耐油紙1は、JIS P 8124に規定される坪量が30g/m以上、70g/m以下である。一般に、耐油紙は、収容する物の量や搬送性等に適合した必要とする坪量で抄紙されるか、複数層からなる多層構成で形成することで任意に坪量が決定される。坪量が30g/m以上、70g/m以下の範囲は、例えばファーストフード店の店頭等で消費者が耐油紙1に収容された状態で食品2を受け取ったり、食品2を食したりする際に取り扱いやすく、提供者が食品2を収容する際に作業性が良好となり、最も汎用性が高い。
【0027】
なお、耐油紙1では、坪量が30g/m未満の場合、十分な強度が得られないため、食品2を包装する際に破れてしまったり不具合が生じやすくなる。また、坪量が30g/m未満の場合には、食品2から浸出する油分が透過されてしまう虞があり、透過した油分により外面が汚れたり、滑りやすくなる。
【0028】
一方、耐油紙1では、坪量が70g/mを超える場合、坪量が高く、十分な厚さが得られるため、食品2から浸出する油分の透過を防止できるが、強度が高くなり過ぎ、包装する際の作業性が悪くなったり、包装された状態で食品2を受け取ったり、食品2を食する際に取り扱いずらくなる。
【0029】
上述した耐油紙1は、抄紙機を用いて次のように抄紙する。先ず、抄紙機のストックインレットにおいて、パルプ又は他の繊維を水中に分散させ、耐油剤及び定着剤を添加し混合して所定の紙料を調整する。
【0030】
次に、調整した紙料をワイヤーパートの漉き網上に噴出する。このワイヤーパートでは、漉き網上で繊維を平均的に絡み合わせ、脱水しながら均一な地合の湿紙を作る。
【0031】
次に、ワイヤーパートで作られた湿紙をプレスパートの毛布が巻かれたプレスロール間に送り、湿紙から水分を搾り取る。ここで、このプレスパートでは、湿紙の食品2と接する側の面を押圧する一方のプレスロールの毛布に幅方向に沿って凹凸パターンが設けられている。毛布の凹凸パターンは、凸部が幅0.5mm以上であり、凸部が等間隔に形成されている。プレスパートでは、プレスロール間に湿紙が送られることで、水分を搾り取ると共に、一方のプレスロールの凹凸パターンが湿紙を押圧し、凹凸パターンの凸部により湿紙が厚み方向に圧縮され、圧縮された部分の密度が高くなり、幅0.5mm以上の高密度部1aが凹部として形成され、凹凸パターンの凹部により、厚み方向に圧縮されず、高密度部1aよりも密度が低い低密度部1bが凸部として形成される。
【0032】
次に、プレスパートで凹部で形成された高密度部1aと凸部で形成された低密度部1bとからなる凹凸が形成された湿紙をドライヤーパートに送り、湿紙の凹凸が形成された面とは反対側の面に表面が鏡面仕上げされたヤンキードライヤーの表面を押し当て湿紙を乾燥させる。湿紙は、ヤンキードライヤーの表面を押し当てて乾燥することによって、高い平坦性が得られるため、袋を形成した際に外側となる面の印刷適性が良好となる。以上のようにして、食品2と接する面側に幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部1aと凸部で形成された低密度部1bからなる凹凸が形成され、反対側の面が平坦に形成された耐油紙1が得られる。
【0033】
また、上述した抄紙方法では、パルプ又は他の繊維を水中に分散させたものに耐油剤及び定着剤を混合した紙料を抄紙機で抄紙したが、このことに限定されず、耐油剤が混合されていない紙料を抄紙し湿紙を作り、サイズプレスパートで湿紙の表面に耐油剤を塗布してもよい。
【0034】
耐油紙1は、食品2と接する面側に凹部で形成された幅0.5mm以上の高密度部1aと凸部で形成された低密度部1bとからなる凹凸を設けるにあたって、上述したようにプレスパートのプレスロールに巻かれた毛布に凹凸を設けるだけで高密度部1aと低密度部1bとからなる凹凸を形成することができるため、従来の抄紙工程の中で容易に形成することができる。
【0035】
なお、耐油紙1は、幅0.5mm以上の高密度部1aと低密度部1bとからなる凹凸を設けるにあたって、通常の抄紙工程で抄紙された耐油紙にエンボス加工を施して、高密度部1aと低密度部1bとを形成するようにしてもよい。但し、上述したように抄紙工程中のプレスパートにて高密度部1aと低密度部1bとを形成した場合には、エンボス加工を用いた場合よりも抄紙後の耐油紙1に圧力が加わらないため耐油紙1の強度を低下させることがない。
【0036】
以上のようにして得られた耐油紙1は、耐油度がキット法で3級以上であり、JIS P 8117に規定される透気度が100秒以下であり、食品2と接する面側に幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部1aと凸部で形成された低密度部1bとからなる凹凸が設けられ、JIS P 8124に規定される坪量が30g/m以上、70g/m以下であることから、耐油性を有し、蒸気の排出も良好であり、食品2から染み出た油分3が高密度部1aに流れ込み、高密度部1aで油分3を維持することができる。耐油紙1では、凸部として表れた低密度部1bに食品2が接し易くなるので、袋の内面と食品2との接触面積を小さくすることができる。これにより、耐油紙1では、油分3が食品2に再付着することを防止でき、食品2の風味や食感を劣化させることなく、風味や食感を長持ちさせることができる。
【0037】
また、この耐油紙1では、坪量が30g/m以上、70g/m以下であることから、適切な強度が得られ、食品2を包装する際の作業性や包装された食品2の取り扱いが良好となる。
【0038】
また、耐油紙1では、食品2と接する面側に設けた高密度部1aと低密度部1bとの面積比が10:90〜90:10であることから、高密度部1aで油分を適切に保持することができ、食品2の風味や劣化をより防止することができる。
【0039】
また、耐油紙1では、抄紙工程中において、抄紙機のプレスパートにて、プレスロールに装着された毛布に設けられた凹凸を湿紙に押圧して形成するため、エンボスロールを用いた場合のように抄紙後に圧力が加わらないため、十分な強度が得られる。これにより、耐油紙1では、作業性や取り扱いが良好となる。
【0040】
また、この耐油紙1では、抄紙する際に高密度部1a及び低密度部1bが形成された面とは反対側の面をヤンキードライヤーの鏡面仕上げされた表面を押し当てて乾燥することによって、高い平坦性が得られるため、外側の面の印刷適性が良好となる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の好適な実施例を実験結果に基づいて説明する。
【0042】
〈実施例1〉
実施例1では、先ず、パルプとしてECF漂白した針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)のみを用い、このパルプと耐油剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製のローダイン2000を20kg/tと、湿潤紙力増強剤(星光PMC社製:WS4024)を20kg/tとを混合して紙料を調整する。次に、調整した紙料をワイヤーパートの漉き網上に噴出し、脱水して湿紙を作る。次に、ワイヤーパートで作られた湿紙をプレスパートの毛布が装着されたプレスロール間に送り、湿紙から水分を搾り取る。ここで、湿紙の一方の面を押圧する一方のプレスロールの毛布には、幅方向に沿って高密度部の幅0.9mmで、高密度部と低密度部との面積比が30:70となる凹凸パターンが設けられている。プレスパートでは、プレスロール間に湿紙を送り、一方のプレスロールの凹凸パターンが湿紙を押圧することで、幅0.9mmの高密度部と低密度部との面積比が30:70からなる凹凸が湿紙の一方の面に形成される。次に、湿紙をドライヤーパートに送り、ヤンキードライヤーの鏡面仕上げされた表面を湿紙の凹凸が設けられている面とは反対側の面に押し当てて湿紙を乾燥する。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で3級であり、透気度がJIS P 8117で25秒であり、坪量が30g/mである耐油紙を抄紙した。
【0043】
〈実施例2〉
実施例2では、先ずパルプにECF漂白したN−BKPとECF漂白したL−BKPとを90%:10%の割合で混合したものを用い、実施例1と同様に紙料を調整した。ワイヤーパートからドライヤーパートまでは、プレスパートにて、幅2mmの高密度部と低密度部との面積比が50:50からなる凹凸を湿紙の一方の面にプレスロールで形成したこと以外は、実施例1と同様にして耐油紙を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で8級であり、透気度が100秒であり、坪量が70g/mである。
【0044】
〈実施例3〉
実施例3では、実施例1と同様にして紙料を調整した。ワイヤーパートからドライヤーパートまでは、プレスパートにて、幅3mmの高密度部と低密度部との面積比が60:40からなる凹凸を湿紙の一方の面にプレスロールで形成したこと以外は、実施例1と同様にして耐油紙を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で4級であり、透気度が35秒であり、坪量が40g/mである。
【0045】
〈実施例4〉
実施例4では、パルプにECF漂白したN−BKPとTCF漂白したL−BKPとFAS漂白した古紙パルプ(DIP)とを80%:10%:10%の割合で混合したものを用い、実施例1と同様に紙料を調整した。ワイヤーパートからドライヤーパートまでは、プレスパートにて、幅0.5mmの高密度部と低密度部との面積比が10:90からなる凹凸を湿紙の一方の面にプレスロールで形成したこと以外は、実施例1と同様にして耐油紙を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で6級であり、透気度が60秒であり、坪量が50g/mである。
【0046】
〈実施例5〉
実施例5では、紙料を実施例1と同様にして調整した。ワイヤーパートからドライヤーパートまでは、プレスパートにて、幅5mmの高密度部と低密度部との面積比が90:10からなる凹凸を湿紙の一方の面にプレスロールで形成したこと以外は、実施例1と同様にして耐油紙を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で5級であり、透気度が50秒であり、坪量が50g/mである。
【0047】
〈比較例1〉
比較例1では、パルプに塩素(C)漂白したN−BKPを用い、このパルプと耐油剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製のローダイン2000を10kg/tと、湿潤紙力増強剤(星光PMC社製:WS4024)を7kg/tとを混合して紙料を調整する。ワイヤーパートからドライヤーパートまでは、プレスパートにて、幅0.5mmの高密度部と低密度部との面積比が30:70からなる凹凸を湿紙の一方の面にプレスロールで形成したこと以外は、実施例1と同様にして耐油紙を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で2級であり、透気度が15秒であり、坪量が25g/mである。
【0048】
〈比較例2〉
比較例2では、パルプにC漂白したN−BKPとECF漂白したL−BKPとを50%:50%の割合で混合したものを用い、実施例1と同様に紙料を調整した。ワイヤーパートからドライヤーパートまでは、プレスパートにて、凹凸が形成されていないプレスロールを用い、湿紙の水分を搾り取ったこと以外は、実施例1と同様にして耐油紙を形成した。そして、得られた耐油紙に対して、幅方向に沿って幅2mmの高密度部と低密度部の面積比が50:50となる凹凸パターンが設けられているエンボスロールを押圧し、耐油紙の一方の面に幅2mmの高密度部と低密度部の面積比が50:50の凹凸を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で5級であり、透気度が120秒であり、坪量が80g/mである。
【0049】
〈比較例3〉
比較例3では、パルプにC漂白したN−BKPとFAS漂白したDIPとを20%:80%の割合で混合したものを用い、比較例1と同様に紙料を調整した。ワイヤーパートからドライヤーパートまでは、比較例2と同様にして耐油紙を形成した。そして、得られた耐油紙に対して、幅方向に沿って幅3mmの高密度部と低密度部との面積比が60:40となる凹凸パターンが設けられているエンボスロールを押圧し、耐油紙の一方の面に幅3mmの高密度部と低密度部の面積比が60:40の凹凸を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で2級であり、透気度が30秒であり、坪量が40g/mである。
【0050】
〈比較例4〉
比較例4では、パルプにC漂白したN−BKPを用い、実施例1と同様に紙料を調整した。ワイヤーパートからドライヤーパートの間では、プレスパートにて、幅0.3mmの高密度部と低密度部との面積比が5:95からなる凹凸を湿紙の一方の面にプレスロールで形成したこと以外は、実施例1と同様にして耐油紙を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で3級であり、透気度が60秒であり、坪量が50g/mである。
【0051】
〈比較例5〉
比較例5では、パルプにC漂白したN−BKPとC漂白したL−BKPとを40%:60%の割合で混合したものを用い、比較例1と同様に紙料を調整した。ワイヤーパートからドライヤーパートの間では、プレスパートにて、幅6mmの高密度部と低密度部との面積比が95:5からなる凹凸を湿紙の一方の面にプレスロールで形成したこと以外は、実施例1と同様にして耐油紙を形成した。得られた耐油紙は、耐油度がキット法で2級であり、透気度が40秒であり、坪量が50g/mである。
【0052】
以上のようにして抄紙した実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5の耐油紙について、耐油度は、キット法に準じて測定した。坪量は、JIS P 8124に規定される坪量測定方法に準じて測定した。透気度は、JIS P 8117に規定される透気度試験方法のガーレー試験機法に準じて測定した。また、凹部で形成された高密度部の幅は、光学実体顕微鏡を用いて耐油紙の凹凸が形成されている一方の面を写真撮影し、スケール(定規)と対比して各高密度部の幅を測り、平均したものである。また、高密度部と低密度部の面積比は、光学実体顕微鏡を用いて耐油紙の凹凸が形成されている一方の面を写真撮影し、2cm平方における高密度部と低密度部の平均幅より面積比を求めた。
【0053】
得られた実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5の耐油紙について、クリスピー感、作業性、油保持性、環境面について評価した。評価結果を以下の表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
クリスピー感は、油揚げを耐油紙で包装し、10分後のクリスピー感について、成人男女10名が油揚げを食し、5段階評価を行った。5段階評価にうち、評価5はサクッとした食感があり、クリスピー感が良好であるとし、評価5から評価1になるにしたがって、サクッとした食感がなくなり、評価1ではクリスピー感が悪いとした。
【0056】
作業性については、成人男女10名が油揚げを耐油紙で包装し、その包装する際の作業性について5段階評価を行った。5段階評価のうち、評価5は、作業性に優れ、評価4は、作業性が良好であり、評価3は、包装する際に手が滑ったりする場合があり、評価2は、油揚げを包装しづらく、評価1は、包装する際に問題があるとした。
【0057】
油保持性は、JIS P 8140に規定されるコブサイズに準じ、水に変えて市販のサラダオイルを用いて油分の保持量を測定した。測定時、サラダオイルは吸い取り紙で低密度部に油の付着がなくなるまで軽く抑える様に拭き取った。高密度部の油分の保持量が一番多いものを1位とし、保持量の多いものから順に1位から9位まで順位を付けた。厚みの薄い部分の保持量が多く、油保持性の優れている1位から3位までを◎印で示し、保持量がやや少ないが耐油紙として適用できる4位と6位を○印で示し、保持量が少なく、耐油紙として適用できない7位から8位を△印で示し、保持量がほとんどなく、耐油紙として適用できない9位以下を×印で示した。
【0058】
環境面は、各耐油紙を小型焼却炉で温度940度から950度で焼却し、排ガス中の塩化水素の発生量を調査した。塩化水素の発生量が1番少ないものを1位とし、塩化水素の発生量が少ないものから順に順位を付けた。塩化水素の発生量が少ない1位から3位を◎印で示し、塩化水素がやや発生した4位から5位を○印で示し、塩化水素の発生量がやや多い6位から7位を△印で示し、塩化水素の発生量が多い8位以下を×印で示した。
【0059】
表1において、実施例1〜実施例5は、耐油度が3級以上であり、透気度が100秒以下であり、油揚げと接する面側に幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部と、凸部で形成された低密度部の凹凸が設けられ、坪量が30g/m以上、70g/m以下である。また、実施例1〜実施例5は、幅0.5mm以上の高密度部と低密度部の面積比が10:90〜90:10の範囲である。また、実施例1〜実施例5は、凹部で形成された幅0.5mm以上の高密度部がプレスパートのプレスロールで形成される。このような条件からなる実施例1〜実施例5は、これらの条件を満たしていない比較例1〜比較例5と比べて、クリスピー感、作業性、油保持性のすべての評価が良好であった。
【0060】
また、実施例1〜実施例5は、パルプの漂白にECF漂白やTCF漂白、FAS漂白を用いており、パルプに塩素漂白を施した比較例1〜比較例5と比べて、環境面の評価が良好であった。
【0061】
比較例1では、坪量が25g/mであり、30g/mよりも小さく、耐油度が2級であることから、包装中に破れたり、油分が外面まで浸透して滑りやすくなり、作業性が低下した。また、比較例1では、耐油度が2級であり、油分が浸透したことにより、油保持性が低下した。
【0062】
比較例2では、透気度が100秒よりも大きいため、内部の蒸気が外部に排出されにくく、内部にこもり、油揚げのクリスピー感が低下した。また、比較例2では、坪量が80g/mであり、70g/mより高いため、強度が高くなり過ぎ、包装する際の作業性が悪くなったり、包装された状態で食品2を受け取ったり、食品2を食する際に取り扱いずらくなる。
【0063】
比較例3では、耐油紙を作製した後、エンボスロールで高密度部及び低密度部を形成したため、強度が低下し、包装中に破れやすいといった不具合が生じ、作業性が低下した。また、比較例3では、耐油度が2級であり、3級よりも低いため、油分が外面に染み出てしまい、高密度部で油分が保持されなかったため、油保持性及び作業性が低下した。
【0064】
比較例4では、高密度部の幅0.3mmであり、高密度部と低密度部の面積比が5:95であることから、高密度部の幅が狭く、面積が少ないことから、油分を保持しきれず、油保持性が低下した。また、比較例4では、保持しきれなかった油分が食品に再付着してしまい、クリスピー性が低下した。
【0065】
比較例5では、耐油度が2級であり、3級よりも低いため、油分が外面に染み出てしまい、高密度部で油分が保持されなかったため、油保持性が低下した。また、比較例5では、油分が外面に染み出たことにより、外面が油分より滑りやすくなり、作業性が低下した。また、比較例5では、高密度部:低密度部の面積比が95:5で、高密度部の面積が広いため、高密度部に保持されている油分が食品に再付着しやすく、クリスピー性が低下した。
【0066】
また、比較例1〜比較例5では、塩素漂白を施したパルプが含有されているため、焼却した際の排ガス中に含まれる塩化水素の量が多くなり、環境面の評価が低下した。
【0067】
これに対して、実施例1〜実施例5では、油揚げと接する面に幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部と、凸部で形成された低密度部とからなる凹凸が設けられ、この高密度部と低密度部の面積比が10:90〜90:10であることから、高密度部に油揚げから染み出た油分が流れ込み、油保持性が良好となった。
【0068】
また、実施例1〜実施例5では、油保持性が良好であるため、油揚げに油分が再付着せず、透気度が100秒以下で蒸気の排出も良好であることから、蒸気が内部にこもらないため、油揚げの食感が劣化せず、クリスピー感が良好となった。
【0069】
また、実施例1〜実施例5では、耐油度が3級以上であり、外面に油分が浸透せず、外面が汚れたり、滑りやすくなることがなく、坪量が30g/m以上、70g/m以下であり、包装する際に破れたりすることなく、取り扱いやすいため、作業性が良好となった、また、実施例1〜実施例4では、プレスパートにて、高密度部を形成することから、抄紙後の耐油紙に圧力が加わらないため強度の低下が防止され、作業性が良好となった。
【0070】
また、実施例1〜実施例5では、パルプの漂白にECF漂白、TCF漂白及びFAS漂白を用いているため、焼却した際の排ガスに含有される塩化水素の量が非常に少なく、環境面の評価が良好となった。
【0071】
以上のように、耐油度がキット法で3級以上、JIS P 8117に規定されている透気度が100秒以下で、油揚げ等の油分を含む収容物と接する面側に幅1mm以上の高密度部と、低密度部からなる凹凸を設け、米坪が30g/m以上、70g/m以下にすることによって、収容物に油分が再付着を防止することができる耐油紙が得られる。更に、高密度部と低密度部の面積比を10:90〜90:10にしたり、高密度部と低密度部をプレスパートにて形成することによって、より良好な耐油紙を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明を適用した耐油紙で食品を収容する袋を形成した場合の斜視図である。
【図2】同耐油紙の断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 耐油紙、1a 高密度部、1b 低密度部、2 食品、3 油分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐油度がキット法で3級以上であり、
JIS P 8117に規定されている透気度が100秒以下であり、
少なくとも収容物と接する面側に、幅0.5mm以上の凹部で形成された高密度部と、凸部で形成された低密度部とからなる凹凸が設けられ、
JIS P 8124に規定されている坪量が30g/m以上、70g/m以下であることを特徴とする耐油紙。
【請求項2】
上記高密度部と上記低密度部との面積比は、10:90〜90:10であることを特徴とする請求項1記載の耐油紙。
【請求項3】
上記高密度部は、抄紙機のプレスパートにて、プレス用毛布に設けられた凸部によって形成されることを特徴とする請求項1記載の耐油紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−348435(P2006−348435A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178293(P2005−178293)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】