説明

耐油紙

【課題】生産効率が高く、耐油性に優れる非フッ素系耐油紙を提供することを目的とする。
【解決手段】紙支持体の少なくとも片面に、アニオン性合成樹脂を含む耐油層を有する耐油紙であり、紙支持体の紙層中あるいは紙支持体の表層にカチオン性の高分子が含有され、該含有量が紙支持体を構成するパルプに対して固形分で3〜20質量%である耐油紙である。また、該アニオン性合成樹脂がスチレン−ブタジエン系共重合体または(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体から選択される少なくとも1種である耐油紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に生産効率の高い方法で製造可能な耐油性に優れる非フッ素系耐油紙に関し、特に耐油層の塗工量が少なくても優れた耐油性を発揮する非フッ素系耐油紙に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの包装材料には、紙あるいは板紙が幅広く用いられている。それらの中でもチョコレートやピザ、ドーナッツなど、油や油脂成分が多く含まれる食品には油が紙に浸透しないように耐油性を有する紙や板紙が使用される。
食品に含まれる油類が紙に浸透すると紙の表面にまで油が浸透して表面に油しみができ、外観を損ねて商品価値を下げたり、印刷部分が油しみで黒くなり文字が判別できなくなったり、手や衣服に油が転移したりするなどの問題があるため、食品に接する部分に耐油性を付与した紙や板紙が使用される。
従来、耐油性を発現させるため、フッ素系化合物、特にパーフルオロフッ素系化合物の耐油剤が使用されていた。しかし、パーフルオロフッ素系化合物は、加熱処理によってパーフルオロオクタン酸やパーフルオロスルホン酸を発生するため、安全性に懸念が持たれている。
そのため、安全性を高めたフッ素系樹脂も各種開発されつつあるが、耐油性が不十分であったり、安全性に不安が残っているのが現状である。
他方、非フッ素系耐油剤としてアクリル系耐油剤も開発されている。アクリル系耐油剤の作用機序としては紙の表面に皮膜を形成して油の浸透を防ぐメカニズムである。アクリル系耐油剤は耐油性に優れるものの、アクリル系樹脂特有の臭気、あるいは巻取にした際のブロッキングやアクリル系樹脂エマルジョンを紙に塗工するとエマルジョンが紙に浸透してしまい、塗工量を多くする必要があり、コストが高くなるという問題がある。
さらに、非フッ素系耐油剤としてポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂は親水性樹脂であり、強固な皮膜を形成するため油の浸透を防ぎ、耐油性に優れることが知られている。しかし、ポリビニルアルコール系樹脂は塗工しても紙に浸透してしまい、ピンホールを発生し易いため、塗工量を多くする必要があるが、塗工量を多くすると乾燥負荷が大きくなり過ぎて、生産性が極端に低下するという問題もある。
【0003】
特に、エマルジョン系耐水耐油剤と顔料を混合した塗料を塗工した耐水耐油紙が提案されているが、所望の耐油性を発現するために耐油層の塗布量は固形分で4〜15g/m必要となる(特許文献1)。
【0004】
また、基材の少なくとも片面に、顔料100重量部当たり、アクリル系ディスパージョン(A)とスチレン・ブタジエン系ディスパージョン(B)の混合物を50乃至200重量部配合してなる塗料を、5乃至25g/m塗工した、耐油度が10級乃至16級である耐水耐油紙が提案されているが、該技術も耐油層の塗工量は高いものである(特許文献2)。
【0005】
上記のように先行技術の耐油紙は、食品用途の包装紙として所望の耐油性を発現させるためには耐油層の塗工量が多く必要になるという問題があった。そこで、塗工量4g/m以下の低塗工量で優れた耐油性を発揮する耐油紙の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−28650号公報
【特許文献2】特開2002−13095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、安全で、環境に優しい耐油性を有する食品用包装紙などに使用できる耐油紙であり、4g/m以下の少ない塗工量で優れた耐油性を発揮する包装紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、以下の各発明を包含する。
(1)紙支持体の少なくとも片面に、アニオン性合成樹脂を含む耐油層を有する耐油紙であり、紙支持体の紙層中あるいは紙支持体の表層にカチオン性の高分子が含有され、該含有量が紙支持体を構成するパルプに対して固形分で3〜20質量%である耐油紙。
【0009】
(2)前記アニオン性合成樹脂がスチレン−ブタジエン系共重合体または(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体から選択される少なくとも1種である(1)に記載の耐油紙。
【0010】
(3)前記カチオン性の高分子が水溶性であり、カチオン化デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミド系高分子、カチオン性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種である(1)または(2)に記載の耐油紙。
【発明の効果】
【0011】
本発明の耐油紙は、紙支持体にカチオン性高分子を特定量含有させ、かつ該紙支持体上にアニオン性合成樹脂からなる耐油層を形成しているので、耐油層が強固なイオン的相互作用により、緻密な皮膜層となり、チョコレート、ピザ、ドーナッツなどの油や油脂成分を多く含む食品について安全で、環境に優しい耐油性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明者らは、合成樹脂エマルジョンを上質紙に塗工、乾燥して、耐油性を調べたところ、塗工量が固形分で1g/m程度であると全く耐油性が発現しなかった。そこで、塗工量を5g/m以上としたところ耐油性が発現することがわかった。しかしながら、合成樹脂エマルジョンを固形分で5g/m以上塗工するとコストが高く、製品として成立しない。
そこで、本発明者らは鋭意検討したところ、カチオン性の水溶性高分子を内添あるいは塗工した後、未乾燥あるいは乾燥させた状態でアニオン性の合成樹脂エマルジョンを塗工すると、塗工量が固形分で1g/m前後で耐油性を発揮することを見出した。
【0014】
本発明に用いられる紙支持体は、植物由来のパルプを主成分とするものであれば特に制限はないが、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、または他の化学パルプや機械パルプを主原料として用い、各種抄紙機で抄紙された上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、片艶紙、晒または未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、又は段ボール用、建材用、白ボ−ル用、チップボ−ル用などに用いられる板紙、白板紙などが好適である。紙支持体の坪量は特に制限はないが、150〜500g/mが好適である。また、原紙中には填料など製紙用の補助薬品が含まれていてもよい。
【0015】
パルプの叩解度はJIS P 8121−1995に規定されるカナダ標準ろ水度試験方法で300〜600mlであり、好ましくは400〜550mlである。叩解度を大きくすると、すなわち、ろ水度を300mlより小さくすると繊維長が短くなり過ぎ、寸法変化率が大きくなるおそれがある。逆に叩解度を小さくすると、すなわち、ろ水度を600mlより大きくすると、繊維同士の絡み合いが弱くなり、強度が低下してしまうおそれがある。したがって、上記パルプの叩解度を制御すること等により、紙支持体の寸法安定性を向上させ、耐油紙の寸法変化を低く抑えることができる。特に、横方向の伸縮率は変形やカール等の問題に対して重要な因子となる。横方向の伸縮率は1.2%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。横方向の伸縮率が1.2%を超えて大きくなると、カールが大きくなったり、トンネリング等の問題が生じるおそれがある。
【0016】
また、上記パルプに内添されるサイズ剤は特に限定されないが、優れた強度が得られることから中性サイズ剤が好ましい。中性サイズ剤とは、耐油紙のpHが6以上でサイズ効果が発現するサイズ剤のことであり、例えばアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、アルケニルコハク酸、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ワックス等の中から適宜選択使用することができる。具体的には、荒川化学工業社製「サイズパインK−287」、日本PMC社製「AS−211」を代表的な材料として挙げることができる。
【0017】
原紙のステキヒトサイズ度(JIS P 8122−1976)としては良好な塗工性が得られ、また、原紙としての強度を確保する上で、3秒以上、特に10〜200秒であることが好ましい。通常使用されるサイズ剤と定着剤である硫酸バンドを添加してもよい。また、その他必要に応じて染料、紙力剤、湿潤紙力増強剤、耐水化剤、架橋剤、電位調整剤等の公知の内添薬品を添加することができる。
【0018】
紙支持体を得るための抄紙機としては、長網抄紙機、短網抄紙機、ヤンキー抄紙機、オントップフォーマー、コンビネーション型フォーマー、セパレート型フォーマー、ギャップフォーマー等の各種抄紙機が使用でき、多層を抄き合せて原紙を抄紙してもよい。
【0019】
本発明で使用できるカチオン性の高分子としては、カチオン化デンプン、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリアミド系高分子、カチオン性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどが挙げられる。これらの中でもカチオン化デンプンやカチオン性ポリアクリルアミド、カチオン化ポリビニルアルコールが耐油性に優れるため好ましい。
カチオン性の高分子の含有量としては、内添の場合、原料パルプに対して3〜20質量%とする必要があり、より好ましくは4〜15質量%であり、さらに好ましくは5〜10質量%である。20質量%を超えて添加するとパルプスラリーの粘度が上昇して抄紙が困難になる。3質量%未満になると耐油性が低下する。また、原紙の表層に塗工する場合は、塗工量として0.1〜3g/mが好ましく、より好ましくは0.3〜2.5g/mであり、さらに好ましくは0.5〜2g/mである。塗工量が3g/mを超えても耐油性向上効果が飽和し、経済性の点から必要性に乏しい。塗工量が0.1g/m未満であると、耐油性が低下する。
【0020】
本発明の耐油層に使用できるアニオン性合成樹脂としては、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル酸アルキルエステル系共重合体エマルジョン、アクリル−スチレン系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、ポリエステル系エマルジョン、酸変性ポリエチレンエマルジョンなどが挙げられる。これらの中でも耐油性の点でスチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル酸アルキルエステル系共重合体エマルジョン、アクリル−スチレン系エマルジョン、ウレタン系エマルジョンが好ましい。また、合成樹脂エマルジョンはアニオン性であることが必要である。ノニオン性やカチオン性であると耐油性が低下する。
アニオン性合成樹脂エマルジョンの塗工量としては0.5〜4.0g/mが好ましく、1.0〜2.0g/mがより好ましい。0.5g/m未満では耐油性発現効果が不十分で、4.0g/mを超えると経済的に好ましくないばかりでなく、塗料の高Wet量による塗料の泳ぎ、乾燥ムラなどのトラブルの原因となるため好ましくない。
【0021】
本発明においては、カチオン性の水溶性高分子の水溶液やアニオン性合成樹脂エマルジョンの中に、必要に応じて、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、雲母などの顔料、ポリカルボン酸などの分散剤、シリコーン系化合物などの消泡剤、界面活性剤、保水剤、色合い調整剤等を添加することができる。
【0022】
本発明において紙支持体に耐油層塗料を塗工する設備として特に限定はないが、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、スライドビードコーター、ゲートロールコーター、ロールコーター、ツーロールあるいはメータリングブレード方式のサイズプレス、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、キャレンダーによるニップコーターなどの方式が適宜用いられる。
耐油層塗料の塗工は、オンマシンコーティングがコストの面で好ましい。特に抄紙パートの後半部に位置するキャレンダー部でのニップ塗工では、平滑化ロールの段数に応じて多段塗工ができるため、少ない塗工量で高い耐油性が得られ易く、好ましい実施態様である。
【0023】
本発明の耐油紙は耐油層形成後、必要に応じて平滑化処理を行うことができる。平滑化処理は通常のスーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、ソフトキャレンダー等の平滑化処理装置を用いて、オンマシンまたはオフマシンで行われる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」を示す。
【0025】
<実施例1>
フリーネスを450mlcsfまで叩解したLBKPの0.5%スラリー100質量部に、カチオン化デンプン(王子コーンスターチ社製、商品名:「エースK100」)の5%水溶液1.0質量部を添加して、絶乾坪量が50g/mになるように長網抄紙機で抄紙した。抄紙後、乾燥水分20%のところで、アニオン性のアクリル酸アルキルエステル共重合体系合成樹脂エマルジョン(BASFジャパン社製、商品名:「PDX7326」、固形分39%)をゲートロールコーターで固形1g/mとなるように塗工し、乾燥して本発明の耐油紙を得た。
【0026】
<実施例2>
アニオン性のスチレン−ブタジエン系ラテックス(JSR社製、商品名:「X300B」、固形分49%)をアニオン性のアクリル酸アルキルエステル共重合体系合成樹脂エマルジョンの代わりに用い、固形2g/mとなるように塗工し、乾燥した以外は実施例1と同様にして本発明の耐油紙を得た。
【0027】
<実施例3>
フリーネスを450mlcsfまで叩解したLBKPの0.5%スラリー100質量部にカチオン性ポリアクリルアミド(荒川化学社製、商品名:「アラフィックス255」、固形分25%)を0.2質量部添加して、絶乾坪量が50g/mになるように長網抄紙機で抄紙した。乾燥水分20%のところで、アニオン性のアクリル酸アルキルエステル系合成樹脂エマルジョン(BASFジャパン社製、商品名:「PDX7326」、固形分39%)をゲートロールコーターで固形1g/mとなるように塗工し、乾燥して本発明の耐油紙を得た。
【0028】
<実施例4>
カチオン化ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:「CM−318」、けん化度90モル%)5質量部を水95質量部に分散し、90℃で30分攪拌、完全に溶解したものを1.0質量部、実施例1のカチオン化デンプンの代わりに用いた以外は実施例1と同様にして本発明の耐油紙を得た。
【0029】
<実施例5>
ポリアリルアミン塩酸塩(日東紡績社製、商品名:「PAA−HCL-05」、固形分40%)を0.125質量部添加して長網抄紙機で抄紙した以外は実施例1と同様にして本発明の耐油紙を得た。
【0030】
<実施例6>
フリーネスを450mlcsfまで叩解したLBKPの0.5%スラリー100質量部に、カチオン化デンプン(王子コーンスターチ社製、商品名:「エースK100」)の5%水溶液0.3質量部を添加して、絶乾坪量が50g/mになるように長網抄紙機で抄紙した。抄紙後、乾燥水分20%のところで、アクリル系合成樹脂エマルジョン(BASFジャパン社製、商品名:「PDX7326」、固形分39%)をゲートロールで固形1g/mになるように塗工し、乾燥して本発明の耐油紙を得た。
【0031】
<実施例7>
カチオン化デンプン(王子コーンスターチ社製、商品名:「エースK100」)の5%水溶液0.5質量部を添加して長網抄紙機で抄紙した以外は実施例1と同様に本発明の耐油紙を得た。
【0032】
<実施例8>
カチオン化デンプン(王子コーンスターチ社製、商品名:「エースK100」)の5%水溶液2.0質量部を添加して長網抄紙機で抄紙した以外は実施例1と同様に本発明の耐油紙を得た。
【0033】
<比較例1>
フリーネスを450mlcsfまで叩解したLBKPの0.5%スラリー100質量部に、カチオン化デンプン(王子コーンスターチ社製、商品名:「エースK100」)の5%水溶液0.2質量部を添加して、絶乾坪量が50g/mになるように長網抄紙機で抄紙した。抄紙後、乾燥水分20%のところで、アクリル系合成樹脂エマルジョン(BASFジャパン社製、商品名:「PDX7326」、固形分39%)をゲートロールコーターで固形1g/mになるように塗工し、乾燥して耐油紙を得た。
【0034】
<比較例2>
フリーネスを450mlcsfまで叩解したLBKPの0.5%スラリー100質量部にポリアクリルアミド(荒川化学社製、商品名:「アラフィックス255」、固形分25%)を0.04質量部添加して、絶乾坪量が50g/mになるように長網抄紙機で抄紙した。乾燥水分20%のところで、アクリル系合成樹脂エマルジョン(BASFジャパン社製、商品名:「PDX7326」、固形分39%)をゲートロールコーターで固形1g/mになるように塗工し、乾燥して耐油紙を得た。
【0035】
<比較例3>
フリーネスを450mlcsfまで叩解したLBKPの0.5%スラリー100質量部にポリアクリルアミド(荒川化学社製、商品名:「アラフィックス255」、固形分25%)を0.04質量部添加して、絶乾坪量が50g/mになるように長網抄紙機で抄紙した。乾燥水分20%のところで、アクリル系合成樹脂エマルジョン(BASFジャパン社製、商品名:「PDX7326」、固形分39%)をゲートロールコーターで固形1g/mになるように塗工し、乾燥して耐油紙を得た。
【0036】
<比較例4>
カチオン化PVA(クラレ社製、商品名:「CM−318」、けん化度90%)5質量部を水95質量部に分散し、90℃で30分攪拌、完全に溶解したものを0.2質量部、比較例1のカチオン化デンプンの代わりに用いた以外は比較例1と同様にして耐油紙を得た。
【0037】
<比較例5>
ポリアリルアミン塩酸塩(日東紡積社製、商品名:「PAA−HCL-05」、固形分40%)を0.03質量部添加して長網抄紙機で抄紙した以外は比較例1と同様にして耐油紙を得た。
【0038】
実施例、比較例で得た耐油紙を以下の方法で評価し、その結果を表1に示す。
〔評価方法〕
<耐油性>
旭硝子社製Eキット液で耐油性を評価した。評価方法は以下のとおりである。
(1)実施例および比較例で得た耐油紙の耐油層を上にして、清潔かつ水平な場所に置く。
(2)適当なEキット液をスポイトで滴下(約0.05ml)し、1分後に耐油紙表面に残存する過剰分を静かにふき取り、評価液の浸透具合(紙の濡れ色)を観察する。
(3)(2)と同様の操作を他のEキット液で行い、浸透していない評価液のもっとも大きい番号を判定値とする。
なお、Eキット値の値が大きいほど耐油性が強く、様々な油に適用できたり、油との長時間の接触にも耐えられる。なお、Eキット1液の耐油性がない場合は「0」とした。Eキット値およびその組成を表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1から明らかなように本発明の実施例1〜8の耐油紙はEキット値が高く、耐油性に優れるものであった。一方、比較例1〜5の耐油紙はEキット値が非常に低く、耐油性包装紙として使用できないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明による非フッ素系耐油紙は、耐油剤の塗工量が少なくても安全で、環境に優しい耐油性を発揮することができ、チョコレート、ピザ、ドーナッツなどの油や油脂成分を多く含む食品の包装紙として使用可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体の少なくとも片面に、アニオン性合成樹脂を含む耐油層を有する耐油紙であり、紙支持体の紙層中あるいは紙支持体の表層にカチオン性の高分子が含有され、該含有量が紙支持体を構成するパルプに対して固形分で3〜20質量%であることを特徴とする耐油紙。
【請求項2】
前記アニオン性合成樹脂がスチレン−ブタジエン系共重合体または(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の耐油紙。
【請求項3】
前記カチオン性の高分子が水溶性であり、カチオン化デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミド系高分子、カチオン性ポリビニルアルコール、ポリアルキルアミンから選択さる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐油紙。

【公開番号】特開2011−256467(P2011−256467A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129518(P2010−129518)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】