説明

耐火ケーブル

【課題】耐火性能を向上させることが可能な耐火ケーブルを提供する。
【解決手段】耐火ケーブル1は、複数本の絶縁線心10と、複数本の絶縁線心10を撚り合わせることにより形成される線心間に充填される介在物20と、介在物20が充填された複数本の絶縁線心10の外周側から巻き付けられる押さえ巻きテープ30と、押さえ巻きテープ30を被覆するシース40を備えている。また、この耐火ケーブル1において介在物20は、雲母を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災等の非常時に光熱や火炎に対して所要の耐火性能を有する耐火ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災等の非常時に高熱や火炎に対して所要の耐火性能や電気特性を備えた耐火ケーブルとしては、複数本の絶縁線心と、複数本の絶縁線心を撚り合わせることにより形成される線心間に充填される介在物と、介在物が充填された複数本の絶縁線心の外側に巻き付けられる押さえ巻きテープと、押さえ巻きテープを被覆するシースとからなっている。また、耐火ケーブルには、介在物に無資質粉体を含有するものが提案されている。この耐火ケーブルによると、耐火ケーブルが高熱に曝された場合に、無機質粉体がガラス状化する。これにより、耐火ケーブルが高熱に曝され、絶縁線心の絶縁体等が炭化し、線心内の導体と導通して電気特性が低下してしまうことを防止する構成となっている(特許文献1参照)。
【0003】
また、一般に耐火ケーブルでは、耐火層がポリエチレンフィルム等のフィルムに雲母を貼り合わせた構造となっており、高温に曝されても雲母が残存して耐火性能を維持ししている。
【特許文献1】特開2002−324439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、雲母層は剥がれやすい性質を有している。このため、従来の耐火ケーブルでは、高温状態が長く続くと、雲母層がポリエチレンフィルム等のフィルムから次第に剥がれてしまい、耐火性能を維持できなくなる可能性があった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐火性能を向上させることが可能な耐火ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の耐火ケーブルは、導体、耐火層及び絶縁体を少なくとも有し、導体の外周側に耐火層が設けられ、この耐火層の外周側に絶縁体が設けられた複数本の絶縁線心と、複数本の絶縁線心を撚り合わせることにより形成される線心間に充填される介在物と、介在物が充填された複数本の絶縁線心の外周側から巻き付けられる押さえ巻きテープと、押さえ巻きテープを被覆するシースとを備え、介在物は、雲母を含有していることを特徴とする。
【0007】
この耐火ケーブルによれば、介在物に雲母を含有しているため、耐火層側の雲母へ伝わる熱量を少なくし、高温時において耐火層の雲母層がポリエチレンフィルム等のフィルムから剥がれてしまうまでの時間を長期化させることができる。従って、耐火性能を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の耐火ケーブルにおいて、雲母の含有量は、20重量%以上25重量%以下であることが好ましい。
【0009】
この耐火ケーブルによれば、雲母の含有量は、20重量%以上25重量%以下であるため、耐火性能の向上を図りつつ、介在物の介在強度の低下を抑え、ケーブル形状が変形する事態を防止することができる。
【0010】
また、本発明の耐火ケーブルにおいて、介在物は、母体となる介在材料に雲母の破片が練り込まれて構成されていることが好ましい。
【0011】
この耐火ケーブルによれば、介在物が、母体となる介在材料に雲母の破片が練り込まれて構成されているため、雲母が均一的に介在物に含有されることとなる。これにより、雲母が不均一に含有されて部分的に耐火ケーブルの耐火性能が低下してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐火ケーブルによれば、耐火性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る耐火ケーブルの詳細を図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態に係る耐火ケーブルの外観斜視図であり、図2は、図1に示した耐火ケーブルを長手方向と垂直な面(II−II線)で切断したときの断面図である。 図1及び図2に示すように、耐火ケーブル1は、複数本の絶縁線心10と、介在物20と、押さえ巻きテープ30と、シース40とから構成されている。
【0014】
絶縁線心10は電流供給を行うものであって、図2に示すように、導体11と、耐火層12と、絶縁体13とからなっている。導体11は、電流供給を行うものであり、例えば銅線によって構成されている。耐火層12は、導体11の外周側に設けられ、高熱や火災時において導体11を外周から保護するものである。この耐火層12は、ポリエチレンフィルム等のフィルムと耐火性能を有する雲母層とからなっており、ポリエチレンフィルム等のフィルムの外側に雲母層が貼り付けられた構成となっている。絶縁体13は、耐火層12の外周側に設けられ、導体11と外部とを絶縁するものである。この絶縁体13は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂などポリオレフィン系樹脂によって構成されている。
【0015】
介在物20は、複数本の絶縁線心10を撚り合わせることにより形成される線心間に充填されるものである。具体的に本実施の形態において介在物20は、2本の絶縁線心10間に充填され、絶縁線心10の型くずれを防止したり、電線径を一定の形状としたりする役割を有している。また、介在物20は、ポリプロピレン材料等によって構成されている。
【0016】
押さえ巻きテープ30は、介在物20が充填された複数本の絶縁線心の外周側から巻き付けられるものであって、不織布やプラスチックフィルムなどにより構成されている。この押さえ巻きテープ30により、絶縁線心10、介在物20及び押さえ巻きテープ30は一体的に強化され且つ整形される。
【0017】
シース40は、押さえ巻きテープ30を被覆するものであって、絶縁線心10の絶縁体13と同様に、例えばポリ塩化ビニル系樹脂などポリオレフィン系樹脂によって構成されている。
【0018】
さらに、本実施の形態において介在物20は、雲母が含有されている。具体的に、雲母は砕片状にされ、介在物20は、母体となる介在材料(すなわちポリプロピレン材料)に雲母の砕片が練り込まれて構成されている。
【0019】
ここで、雲母は耐火性能を有する。このため、耐火層12側の雲母へ伝わる熱量を少なくし、耐火層12の雲母層がポリエチレンフィルム等のフィルムから剥がれてしまうまでの時間を長期化させることとなる。
【0020】
(実施例)
次に、本実施の形態に係る実施例を説明する。なお、通常、耐火層は耐火テープを少なくとも2枚巻としているが、以下の実施例及び比較例では、耐火テープを1枚巻きとした。まず、実施例1では、介在物20に雲母を20重量%以上25重量%以下の範囲で含有させた。また、実施例2では、介在物20に雲母を0重量%より多く20重量%未満だけ含有させた。また、実施例3では、介在物20に雲母を25重量%より多く35重量%未満だけ含有させた。また、実施例4では、介在物20に雲母を35重量%以上50重量%未満だけ含有させた。また、比較例1では、介在物20に雲母を含有させなかった。
【0021】
以上のような各耐火ケーブルに対して耐電圧短絡時間と介在強度との測定を行った。耐電圧短絡時間を測定する試験では、消防庁告示基準となる840℃の温度で耐火ケーブルを加熱し、絶縁体等が炭化して導体と短絡するまでの時間を測定した。介在強度を測定する試験では、引張強度や剛性を測定して、ケーブル形状が均一となるか否かを判定した。
【0022】
この結果、表1に示す結果が得られた。
【表1】

【0023】
なお、表1に示す介在強度「○」は、耐火ケーブルの製造においてケーブル形状(例えば径)が均一となることを示し、介在強度「△」は、耐火ケーブルの製造においてケーブル形状が均一となる場合と均一にならない場合とが混在することを示し、介在強度「×」は、ケーブル形状がおおよそ均一とならないことを示している。
【0024】
表1に示すように、実施例1の場合、耐電圧短絡時間は約24分となった。また、実施例1の場合、介在物の介在強度は適切であり、耐火ケーブルの製造においてケーブル形状が均一となることを示した。
【0025】
実施例2の場合、耐電圧短絡時間は約18分となった。また、実施例2の場合、介在物の介在強度は適切であり、耐火ケーブルの製造においてケーブル形状(例えば径)が均一となることを示した。
【0026】
実施例3の場合、耐電圧短絡時間は約25分となった。また、実施例3の場合、介在物の介在強度はやや適切であり、耐火ケーブルの製造においてケーブル形状が均一となる場合と均一にならない場合とが混在することを示した。
【0027】
実施例4の場合、耐電圧短絡時間は約30分となった。また、実施例4の場合、介在物の介在強度はあまり適切でなく、ケーブル形状がおおよそ均一とならないことを示した。
【0028】
比較例の場合、耐電圧短絡時間は約16分となった。また、比較例の場合、介在物の介在強度はやや適切であり、耐火ケーブルの製造においてケーブル形状が均一となることを示した。
【0029】
以上の結果から、雲母の含有により耐電圧短絡時間が長くなることが明らかとなった。また、ケーブル形状の均一性を考慮すると、雲母の含有量は、20重量%以上25重量%以下であることが最も適切であることが明らかとなった。
【0030】
以上のようにして、実施の形態に係るケーブル1によれば、介在物20に雲母を含有しているため、耐火層12側の雲母へ伝わる熱量を少なくし、高温時において耐火層12の雲母層がポリエチレンフィルム等のフィルムから剥がれてしまうまでの時間を長期化させることができる。従って、耐火性能を向上させることができる。
【0031】
また、雲母の含有量は、20重量%以上25重量%以下であるため、耐火性能の向上を図りつつ、介在物の介在強度の低下を抑え、ケーブル形状がいびつとなってしまう事態を防止することができる。
【0032】
また、介在物20が、母体となる介在材料に雲母の破片が練り込まれて構成されているため、雲母が均一的に介在物20に含有されることとなる。これにより、雲母が不均一に含有されて部分的に耐火ケーブルの耐火性能が低下してしまうことを防止することができる。
【0033】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施の形態において絶縁線心10は2本であるが、これに限らず、絶縁線心10は3本以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係るコネクタの外観斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1…耐火ケーブル
10…絶縁線心
11…導体
12…耐火層
13…絶縁体
20…介在物
30…押さえ巻きテープ
40…シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体、耐火層及び絶縁体を少なくとも有し、前記導体の外周側に前記耐火層が設けられ、前記耐火層の外周側に前記絶縁体が設けられた複数本の絶縁線心と、
複数本の前記絶縁線心を撚り合わせることにより形成される前記線心間に充填される介在物と、
前記介在物が充填された複数本の前記絶縁線心の外周側から巻き付けられる押さえ巻きテープと、
前記押さえ巻きテープを被覆するシースと、を備え、
前記介在物は、雲母を含有していることを特徴とする耐火ケーブル。
【請求項2】
前記雲母の含有量は、20重量%以上25重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐火ケーブル。
【請求項3】
前記介在物は、母材となる介在材料に雲母の砕片が練り込まれていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の耐火ケーブル。

【図1】
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【図2】
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