説明

耐火ペースト

【課題】 柔軟性の要求される対象であっても、簡易な方法で耐熱層を形成でき、その耐熱層が形成した対象の柔軟性に追随できる耐火ペーストを提供せんとする。
【解決手段】 ゴム状弾性材又は弾性塗料を基材とし、難燃剤と耐火材料を配合して成ることを特徴とする。また、基材100部に対して難燃剤1〜20部、耐火材料5〜50部であることを最適とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性の塗布素材として利用できる耐火ペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の本発明の目的と共通するものとしては、耐熱塗料が考えられる。
そして、耐熱塗料は塗布して乾燥すると、塗布面に硬い皮膜が形成されるのであり、固形の塗布面に対しては初期の目的が達成できるのである。
【0003】
しかし、可動部や折曲部においては柔軟性が要求されるため、固化した塗料皮膜は動きに追随できず被塗布部の機能に支障がでるか、皮膜が割れてしまって耐火目的を達成できないこととなるのである。
【特許文献1】特開2005−2145
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、自動車工場での溶接・溶断作業に不可欠で、柔軟性の要求される耐火シートにスパッタシートがある。
このスパッタシートはガラス繊維布、ガラス繊維布をシリコーン樹脂加工したもの、炭素繊維布などハイテク繊維が使用されており高価なものである。
しかし、実際の現場では至近距離での溶接作業が伴い、この時に発生する火花に耐えられないこと、溶断して落ちた熱鉄片にも耐えられずシートに穴が開いてしまう事態が頻繁に起きるのである。
【0005】
そこで、先ず、作業範囲に水で濡らしたコンパネを下敷きとし、その上にスパッタシートを敷き、更に周囲に水バケツや消火器を配置すると共に、発火に備えた消化人員まで待機させて作業を行っているのである。
【0006】
本発明はこのような点に鑑み、柔軟性の要求される対象であっても、簡易な方法で耐熱層を形成でき、その耐熱層が形成した対象の柔軟性に追随できる耐火ペーストを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の耐火ペーストは、ゴム状弾性材又は弾性塗料を基材とし、難燃剤と耐火材料を配合して成ることを特徴とするものである。
また、基材100部に対して難燃剤1〜20部、耐火材料5〜50部であることを最適とする。
【0008】
ゴム状弾性材には天然ゴム、合成ゴム或いは液体ゴム等があり、弾性塗料と同様に一般に製造販売されている公知のものの使用が可能で、特定のものに限定されない。
また、難燃剤には水酸化マグネシウム、硫酸アンモニウム、第一リン酸水素アンモニウム、ジシアンジアミド、三酸化アンチモン或いはトリエチルフォスフェイトのいずれか一種又は数種を混合したもの等、そして、耐火材料には耐熱性粉体、耐熱性粒子又は耐熱性フレークのうち一種又は数種を混合したもの等が使用できる。
【0009】
そして、耐熱性粉体にはシリカ、石膏又は鉄粉やアルミ粉等の金属粉等、耐熱性粒子には砂、金属粒、熱硬化性樹脂、セラミック粒、ガラス粒又は硬化した熱硬化樹脂の破砕・粉砕粒等、耐熱性フレークにはバーミキュライトの粉砕片等がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は基材がゴム状弾性材又は弾性塗料でペースト状であるため、対象物に公知の方法で簡易に塗布することが出来、固化しても弾性を有するため対象物の折曲に追随して対応できる柔軟性を発揮するものである。
そして、難燃剤と耐火材料を含むため耐火効果をも合わせて発揮するものである。
【0011】
また、基材100部に対して難燃剤1〜20部、耐火材料5〜50部の範囲で配合することでJIS規格や各種法定の耐火規格に適合する耐火層を形成することが可能であり、基材の柔軟性を維持しつつ強度を保ち、且つ不必要な難燃剤や耐火材料の使用を避けることができる効果が得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る耐火ペーストは、ゴム状弾性材又は弾性塗料を基材とし、難燃剤と耐火材料を配合して成ることを特徴とするものである。
【0013】
ゴム状弾性材や弾性塗料は一般に製造販売されている公知のものの使用が可能で、特定のものに限定されない。
ゴム状弾性材には天然ゴム、合成ゴム或いは液体ゴム等がある。
合成ゴムには、例えばネオプレンゴム、シリコーンゴムなどが使用でき、また、液体ゴムは、乾燥するとゴムのように弾性をもつゴム層をつくり、一般にアクリル系のものであるが、アクリル系以外でもゴム層をつくるものであれば使用可能であり、水性・油性の別も問わない。
また、弾性塗料(ゴム塗料とも言う)についても、水性・油性の別を問わない。
【0014】
難燃剤には水酸化マグネシウム、硫酸アンモニウム、第一リン酸水素アンモニウム、ジシアンジアミド、三酸化アンチモン或いはトリエチルフォスフェイトのいずれか一種又は数種を混合したもの等が使用できる。
難燃剤の種類と使用量に限定はないけれど、基材100部に対して1〜20部程度で充分であり、また、通常は固体のものが使い易く、ゴム質基材の水性・油性を問わずに選択して使用できる利点がある。
しかし、水溶性の難燃剤を使用するときにはゴム質基材は水性のもの、また、油性液体の難燃剤を使用するときにはゴム質基材は油性のものを選択しなければならない。
【0015】
耐火材料には耐熱性粉体、耐熱性粒子又は耐熱性フレークのうち一種又は数種を混合したもの等が使用できる。
耐熱性粉体にはシリカ、石膏又は鉄粉やアルミ粉等、耐熱性粒子には砂、金属粒、熱硬化性樹脂、セラミック粒、ガラス粒又は硬化した熱硬化樹脂の破砕・粉砕粒等、耐熱性フレークにはバーミキュライトの粉砕片等がある。
耐火材料の使用量は、要求される耐火性能に応じて増減でき、使用量が多ければそれだけ耐火性能は向上する。
しかし、基材100部に対して5〜50部で、使用用途の耐火基準をクリアーできるものと考えられる。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
弾性塗料(商標名シリコンテックス、関西ペイント社製)100部、ボラックス20部及び石膏30部の割合で配合し、均一になるまで混合し耐火ペーストを得た。
【0017】
(実施例2)
液体ゴム100部(ユカタメイク社製)、ジシアンジアミド10部及びフェノール樹脂220(日本合成加工社製)30部の割合で配し、均一になるまで混合し耐火ペーストを得た。
【0018】
(実施例3)
液体ゴム(商品名プロト)100部、第一リン酸水素アンモニウム20部及びバーミキュライト粗粉砕品(フレーク)25部の割合で配合し、均一になるまで混合し耐火ペーストを得た。
【0019】
(実施例4)
弾性塗料(商標名シリコンテックス、関西ペイント社製)100部、水酸化マグネシュウム15部及びセラッミック粒50部の割合で配合し、均一になるまで混合し耐火ペーストを得た。
【0020】
(実施例5)
液体ゴム100部(ユカタメイク社製)、ジシアンジアミド10部、フェノール樹脂220(日本合成加工社製)10部及びフェノール樹脂粉砕品20部の割合で配合し、均一になるまで混合し耐火ペーストを得た。
【0021】
(実施例6)
液体ゴム100部(ユカタメイク社製)、ジシアンジアミド10部及びフェノール樹脂粉砕品35部の割合で配合し、均一になるまで混合し耐火ペーストを得た。
【0022】
次にその作用効果を確認するため、比較例1乃至3のスパッタシートを製作し、比較例のスパッタシートをコンクリート上に敷き、30cm上方で8mmの鉄板を溶断する。
この灼熱した溶断片(5cm×5cm×8cmの三角形)を各スパッタシートに落下させて放置し、5分後各スパッタシートを観察した。
【0023】
(比較例1)
上記実施例1乃至6の各耐火ペーストをスパッタシート(スター電器製造株式会社製)に塗布して乾燥させ、全てを比較例1とした。
【0024】
(比較例2)
上記実施例1乃至6の各耐火ペーストを帆布NO11に塗布して乾燥させ、全てを比較例2とした。
【0025】
(比較例3)
スパッタシート(スター電器製造株式会社製)をそのままで、比較例3とした。
【0026】
(観察結果)
比較例1・・・溶断片の在った場所には穴が開かず、シートの強度等にも変化は認められなかった。
比較例2・・・溶断片の在った場所には穴が開いていなかったけれど、ドライバ等の尖ったもので突くと穴が開いた。
比較例3・・・溶断片のあった場所には穴が開いていた。
【0027】
以上の結果より、本発明の耐火ペーストを市販のスパッタシートに塗るだけで耐火性能が格段に向上したことを確認できた。
また、帆布の例に見られるように、綿布、ダンボール紙、ベニヤ板に本耐火ペーストを塗って、緊急・簡易にスパッタシートの代用にすることも可能であることが推察できる。
【0028】
比較例ではスパッタシートについて性能効果の確認をしたが、当該用途に限定されるものでないことは勿論であり、木材、紙材、布材、樹脂等を基材とするあらゆる製品の耐火目的に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性材又は弾性塗料を基材とし、難燃剤と耐火材料を配合して成ることを特徴とする耐火ペースト。
【請求項2】
基材100部に対して難燃剤1〜20部、耐火材料5〜50部であることを特徴とする請求項1記載の耐火ペースト。
【請求項3】
難燃剤が水酸化マグネシウム、硫酸アンモニウム、第一リン酸水素アンモニウム、ジシアンジアミド、三酸化アンチモン或いはトリエチルフォスフェイトのいずれか一種又は数種を混合したものであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐火ペースト。
【請求項4】
耐火材料が耐熱性粉体、耐熱性粒子又は耐熱性フレークのうち一種又は数種を混合したものである請求項1から3のいずれか1項記載の耐火ペースト。
【請求項5】
耐熱性粉体がシリカ、石膏又は金属粉である請求項4記載の耐火ペースト。
【請求項6】
耐熱性粒子が砂、金属粒、熱硬化性樹脂、セラミック粒、ガラス粒又は硬化した熱硬化樹脂の破砕・粉砕粒である請求項4又は5記載の耐火ペースト。
【請求項7】
耐熱性フレークがバーミキュライトの粉砕片である請求項4から6のいずれか1項記載の耐火ペースト。

【公開番号】特開2008−56875(P2008−56875A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238871(P2006−238871)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(506300349)
【Fターム(参考)】