説明

耐火性合成部材

【課題】例えば、火災時において、合成部材における金属材とコンクリート材との界面に空隙が生じ難く、金属材が過度に高温に曝される恐れが防止され、しかも軽量性に富み、更にはコストが低廉な耐火性合成部材を提供することである。
【解決手段】金属材およびコンクリート材を具備する合成部材に耐火被覆材が設けられた耐火性合成部材であって、棒材が、少なくとも二つの方向に沿って存する如く、かつ、前記コンクリート材によって覆われる如く、前記金属材の表面上に、設けられてなり、前記金属材には3個以上の突起が設けられてなり、前記棒材は、異なる個所において、互いに異なる前記突起に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火性合成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材(例えば、鋼や鋳鉄など)とコンクリート材とを備えた合成部材を用いた構造物がある。このような合成部材に耐火被覆材が設けられた耐火性合成部材も提案(特開2001−271597号公報、特開2007−270485号公報、特開2007−297907号公報)されている。この種の耐火性合成部材は、金属材(金属板)の一面側にコンクリート材が設けられ、金属材(金属板)の他面側に耐火被覆材が設けられたものである。そして、耐火被覆材が外側に面しているように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−271597号公報
【特許文献2】特開2007−270485号公報
【特許文献3】特開2007−297907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように構成・配置された耐火性合成部材が、火災などにより、加熱されると、熱は、耐火被覆材から金属材(金属板)に伝わり、更にはコンクリート材に伝わる。勿論、耐火被覆材によって防護されているから、温度上昇はそれなりに抑制されている。
【0005】
さて、温度上昇が抑制されているとは言うものの、温度上昇に伴って、金属材とコンクリート材との界面において剥離が起きる場合も認められた。そして、斯かる剥離が、一旦、起きると、この剥離部は、空隙部であって、断熱作用を奏する。この結果、剥離が起きない場合に比べて、金属材は、一層、高温になることが判って来た。
【0006】
このようなことから、即ち、金属材が高温に曝されることを防止する為、耐火被覆材の厚さを厚くすることが提案されている。
【0007】
しかしながら、厚い耐火被覆材の採用は、耐火性合成部材が占有する空間が広がることになる為、耐火性合成部材の周囲において、利用可能な空間が減少する。その為、必要な空間を得る為に部材の大きさや建設規模が大きくなり、コストアップにつながる。更に、厚い耐火被覆材の採用は、材料の使用量増加に起因したコストアップにもつながる。かつ、厚い耐火被覆材は重さが増す。この結果、耐火被覆材は剥落し易くなる恐れが高い。このような剥落の恐れを防止しようとすると、それだけ、剥落防止対策を強化する必要がある為、コストが高く付く。
【0008】
従って、このような問題点の発生を無くす為には、耐火被覆材を厚くすることは避ける必要が有る。すなわち、耐火性能が満足された範囲内であれば、耐火被覆材は薄い方が好ましい。そして、そのような範囲内において、金属材とコンクリート材との一体性を高める工夫が必要となる。
【0009】
よって、本発明が解決しようとする課題は、例えば火災時において、合成部材における金属材とコンクリート材との界面に空隙が生じ難く、金属材が過度に高温に曝される恐れが防止され、しかも軽量性に富み、更にはコストが低廉な耐火性合成部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点に対する検討が、本発明者によって、鋭意、推し進められて行った。その結果、次のことが判明して来た。すなわち、耐火性合成部材の耐火被覆材が所定温度に加熱された場合、耐火性合成部材の金属材とコンクリート材との界面において、剥離が起き、この剥離によって出来た空隙部が断熱作用を果たし、金属材が高温に曝されることから、金属材とコンクリート材との間で剥離が起きないようにすれば良いと気付くに至った。
【0011】
勿論、上述した通り、耐火被覆材を厚くすることによって、金属材に熱が伝わり難くなり、その結果、金属材とコンクリート材との間で剥離が起き難くなるのであるが、この手法は、前記問題点から、採用され難い。
【0012】
従って、耐火被覆材を厚くする手法とは異なった技術思想が採用されなければならない。
【0013】
斯かる観点に沿っての検討が、本発明者によって、更に、鋭意、推し進められて行った。その結果、コンクリート材中に埋設されるように、幾つかの方向に沿って棒材を配置すると共に、この棒材を金属材(金属板)に対して動かないように固定しておけば、コンクリート材と金属材(金属板)との一体性が向上し、かつ、一体性向上効果は棒材によって奏されるものであるから、重量増加やコストアップの要因は低く、簡単、かつ、低廉なコストで耐火性合成部材が得られるであろうとの啓示を得るに至った。
【0014】
斯かる観点から本発明が達成された。
【0015】
すなわち、前記の問題点は、
金属材およびコンクリート材を具備する合成部材に耐火被覆材が設けられた耐火性合成部材であって、
棒材が、少なくとも二つの方向に沿って存する如く、かつ、前記コンクリート材によって覆われる如く、前記金属材の表面上に、設けられてなり、
前記金属材には3個以上の突起が設けられてなり、
前記棒材は、異なる個所において、互いに異なる前記突起に連結されている
ことを特徴とする耐火性合成部材によって解決される。
【0016】
前記耐火性合成部材は、好ましくは、前記棒材が、平面視で、n(nは3以上の整数)角形状に設けられてなり、前記突起が前記n角形状に設けられた棒材に沿って設けられてなることを特徴とする耐火性合成部材によって解決される。
【0017】
前記耐火性合成部材は、好ましくは、前記棒材が格子状に設けられてなり、前記突起が前記格子状に設けられた棒材に沿って設けられてなることを特徴とする耐火性合成部材によって解決される。
【0018】
前記耐火性合成部材は、前記棒材が、好ましくは、金属製棒材であることを特徴とする耐火性合成部材によって解決される。
【0019】
前記耐火性合成部材は、前記突起が、好ましくは、金属製突起であることを特徴とする耐火性合成部材によって解決される。
【発明の効果】
【0020】
耐火性合成部材におけるコンクリート材と金属材との一体性が向上し、高温に曝されても、又、耐火被覆材が過度に厚くなくても、コンクリート材と金属材との間で剥離が起き難いものとなった。このような剥離防止効果は、棒材と突起によって奏されるものであるから、重量増加やコストアップの要因は低く、簡単、かつ、低廉なコストで耐火性合成部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態になる耐火性合成部材の断面図および平面図
【図2】第2実施形態になる耐火性合成部材の断面図および平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は耐火性合成部材である。この耐火性合成部材は、金属材およびコンクリート材を具備する合成部材に耐火被覆材が設けられた部材である。特に、金属材の一面側にコンクリート材が設けられ、金属材の他面側に耐火被覆材が設けられた部材である。この部材は、棒材を具備する。特に、棒材が、少なくとも二つの方向に沿って存する如く、かつ、前記コンクリート材によって覆われる如く、前記金属材の表面上に、設けられている。例えば、平面視で、n(nは3以上の整数)角形状(例えば、三角形状、四角形状、五角形状、……。特に好ましくは四角形状。中でも、略長方形状)に棒材が設けられている。1本の棒材が曲げられて前記形状に構成されていても良く、又は、複数本の棒材で前記形状に構成されていても良い。好ましくは、平面視で、n(nは3以上の整数)角形状に構成された棒材が同心状に設けられる。例えば、平面視で、格子状(略碁盤目状)に棒材が設けられることが好ましい。棒材はコンクリート材中に完全に埋設されたものであっても、一部が露出したものでも良い。但し、完全に埋設されている形態のものが好ましい。金属材には、前記棒材が設けられている側において、突起が設けられている。特に、前記棒材に沿った位置に設けられている。そして、前記棒材は、異なる個所において、互いに異なる前記突起に連結されている。例えば、一つの線状(一つの一直線状)の棒材は、複数個の突起に連結されている。棒材が複数本であるから、突起の数は、必然的に、3個以上である。上限値は、棒の数によって変わるから、一義的には決まらない。そして、棒材はリジッドに金属材上に固定されている。前記棒材は、好ましくは、金属製棒材である。前記突起は、好ましくは、金属製突起である。
【0023】
前記の耐火性合成部材は、コンクリート材と金属材との一体性が向上している。従って、コンクリート材と金属材との間で剥離が起き難いものとなった。剥離が発生しても、出来た空隙は小さなものであった。特に、高温に曝されても、又、耐火被覆材が過度に厚くなくても、コンクリート材と金属材との間で剥離が起き難いものとなった。そして、金属材の温度が過度に上昇し難いものとなった。すなわち、耐火性に優れたものであった。このような効果は、棒材と突起によって奏されるものであるから、部材の大型化による重量増加やコストアップの要因は低く、簡単、かつ、低廉なコストで耐火性合成部材が得られる。
【0024】
以下、更に詳しく説明される。
【0025】
本発明の耐火性合成部材における合成部材は、例えば金属材およびコンクリート材を主体としている。具体的には、鋼管充填コンクリートからなる部材、コンクリートを充填した鋼殻セグメント、コンクリートを充填した鋳鉄製セグメント、コンクリートと鋼板からなる合成床版、コンクリートと鋼板からなる合成スラブ、鋼板巻きたてコンクリート、コンクリートを充填した鋼殻からなる函体などが挙げられる。尚、前記コンクリートには、コンクリートに粗骨材が含まれないモルタルも含まれる意味で用いられている。合成部材には、前記金属材やコンクリート材以外にも、各種の材が用いられる場合も有る。例えば、タイル等のセラミックス、ガラス、エポキシ系防食塗料やアクリル樹脂などの樹脂、石板等の石材、木材、石膏ボード等が挙げられる。この種の材は、1種でも2種以上が併用されても良い。
【0026】
本発明の耐火性合成部材は、例えば金属材とコンクリート材とを主な材とする合成部材の金属材表面に耐火被覆材を備え、かつ、耐火被覆材を備える部分の金属材裏面にコンクリート材が在る耐火性合成部材である。そして、前記金属材裏面に突起を複数備え、これらの突起によって複数の方向に亘って存する棒材が固定されている。
【0027】
本発明に用いられる耐火被覆材としては、珪酸カルシウム板やセラミックス製耐火板等の耐火板、耐火塗料や耐火モルタル等の不定形耐火被覆材、ブランケット等が挙げられる。耐火被覆材として不定形耐火材が用いられることは好ましい。なぜならば、合成部材の形状が複雑な場合でも、耐火被覆材の被覆が容易であるからによる。合成部材表面に耐火被覆材が被覆される方法は限定されない。耐火被覆材の種類により、適宜、選定される。例えば、耐火板の場合は、接着剤による貼付や取り付け金具による取り付け等が考えられる。不定形耐火被覆材の場合は、型枠を設置した打ち込み、ローラー塗り、塗装、吹付け、コテ塗り等が考えられる。ブランケットの場合には、金具による取り付け、巻き付け、接着剤による貼付等が考えられる。
【0028】
本発明における突起は、例えば棒状、板状、鉤状、環状、ボルト状などが挙げられる。勿論、これ以外のものであっても差し支えない。要するに、一端側(基端側)が金属材に取り付けられ、他端側(先端側)に前記棒材が取り付けられるものであれば良い。突起の数は、金属材の面の面積当たりの数が多いほうが好ましい。しかし、必要以上に多くする必要は無い。なぜならば、多すぎると、コストが高く付く。かつ、コンクリートの充填(打設)が困難になる。突起と突起との間隔は、打設されるコンクリートに含まれる骨材の最大寸法の3倍以上あるのが好ましい。なぜならば、コンクリートにジャンカ等の不具合が生じる虞が低いからである。突起の大きさは、コンクリートに5mm以上は埋設される大きさが好ましい。突起の材質としては、例えば鋼材等の金属、樹脂、ガラス、セラミックス、モルタル等のセメント質、石等が挙げられる。1種の材質からなっていても良く、2種以上の材質からなっていても良い。但し、熱が金属材からコンクリート材に伝熱し易いことから、鋼材等の金属が好ましい。この意味から、前記棒材も鋼材等の金属が好ましい。特に、突起と棒材とは連結されることから、この連結箇所において電池が形成され難い(腐食が起き難い)ように、同質な金属で構成されることが好ましい。前記金属材に前記突起を設ける方法としては、例えば接着、溶着、溶接、ネジ止め等が考えられる。熱が金属材からコンクリート材に伝熱し易いことから、伝熱性接着剤による接着、或いは溶接やネジ止めが好ましい。特に、溶接やネジ止めが好ましい。金属材をプレス加工することによって、金属材に突起を設けるようにすることも好ましい。
【0029】
本発明における棒材は、その形状は特に限定されない。所謂、棒状(一方向の長さが他方向の長さよりも長い形状:線状:一次元的形状)のものであれば良い。棒材の長さは、上記突起と突起との間を繋ぐことが出来るものでなければならない。棒材の材質としては、例えば鋼材等の金属、樹脂、ガラス、セラミックス、モルタル等のセメント質、石等が挙げられる。1種の材質からなっていても良く、2種以上の材質からなっていても良い。但し、熱が金属材からコンクリート材に伝熱し易いことから、鋼材等の金属が好ましい。前記突起と前記棒材とを連結(固定)する方法としては、接着、溶着又は溶接等の固着、ネジ止め、ボルト止め、リベット止め等が挙げられる。容易、かつ、確実に固定できることから、溶接による固定方法は特に好ましい。
【0030】
本発明において、上記突起は複数方向の棒材に固定されている。従って、金属材とコンクリート材とは剥離が起き難い。金属材とコンクリート材との間で剥離が起きても、ここに生ずる空隙は小さい。この為、金属材からコンクリートに熱が伝わり易く、金属材の温度上昇が抑制される。
【0031】
これに対して、突起が一方向のみの棒材で固定されているに過ぎない場合は、本発明の場合とは異なり、棒材と直角な方向の金属材の熱膨脹が抑制され難い。この為、本発明と比べて、金属材とコンクリート材との間で剥離が起き易い。そして、金属材とコンクリート材とが剥離し、界面に大きな空隙が生ずる。この結果、金属材からコンクリート材に熱が伝わり難く、金属材の温度が上昇し易い。又、突起が一方向のみの棒材で固定されているに過ぎない場合は、金属材の熱変形により、突起または棒材を介して、コンクリート材の一部分に応力が集中し易い。この為、コンクリート材にひび割れが発生し易い。しかるに、本発明にあっては、突起が、複数方向に亘って、棒材で固定されている。この結果、金属材の熱変形により発生する応力がコンクリート材に分散して伝達され易い。そして、コンクリート材のひび割れ発生が起こり難い。
【0032】
以下、具体的な実施例によって本発明が説明される。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものでないことは当然である。
【0033】
[実施例1]
8本の異形鉄筋(D10)8が、鋼板9上の所定の位置において、垂直に向けて配置され、溶接された。異形鉄筋8の長さは110mmである。鋼板9は300mm×300mm×9mm(縦×横×厚さ)である。110mm長の異形鉄筋8の配置位置は、図1(a)から判る通り、格子(略碁盤目)の交点位置である。特に、小さな四角形の四隅位置と、その外側に位置する大きな四角形の四隅の位置である。
【0034】
次に、長さが200mmの4本の異形鉄筋(D10)8が横方向(図1(a)中、横方向:左右方向)に配置されると共に、長さが200mmの4本の異形鉄筋(D10)8が縦方向(図1(a)中、縦方向:上下方向)に配置され、更には前記縦・横方向に合計8本配置された200mm長の異形鉄筋8が前記垂直に溶接された110mm長の異形鉄筋8に対して交差するよう配置された。前記200mm長の異形鉄筋8は鋼板9の主面に対して平行であるよう配置されている。そして、溶接が、各異形鉄筋8の交点において、行われた。すなわち、異形鉄筋8同士は交点において溶接された。
【0035】
尚、孔(穴)を形成する為、長さが280mmで内形が18.6mm×18.6mmの正方形状の角型鋼製パイプ3が、鋼板9の中央位置上に設けられた。
【0036】
この後、コンクリートが鋼板9上に打設された。この打設されたコンクリート材7は、300mm×300mm×200mm(縦×横×厚さ)の大きさである。従って、前記全ての鉄筋8はコンクリート材7中に埋設されたものとなっている。尚、パイプ3の開口端はコンクリート材7によって塞がれてない。
【0037】
又、軽量モルタルが鋼板9のコンクリート材7とは反対側面の全域に亘って吹き付けられ、鏝による仕上げが行われた。これによって、厚さが25mmの軽量モルタル製のセメント系耐火被覆材6が設けられた。
【0038】
又、角型鋼製パイプ3内にφ18mm×300mm(直径×長さ)の石英ガラス製丸棒4が挿入された。石英ガラス製丸棒4の先端面は、図1(b)から判る通り、鋼板9面に当接している。
【0039】
そして、上記構成物(耐火性合成部材)が所定温度に加熱された。すなわち、図1(a)(b)に示される試験体(供試体)1が、この試験体(供試体)1と同等の製品が実装される箇所で要求される所定の温度に加熱された。本例での加熱条件は、例えば加熱開始から5分間で1200℃に達し、25分間に亘って1200℃が維持され、その後110分で室温まで戻すRABT加熱曲線による30分加熱(RABT30分加熱)である。合計加熱時間は140分である。加熱は耐火被覆材6に対して行われた。すなわち、図1(b)の下方側から火炎が当てられて加熱が行われた。
【0040】
試験体(供試体)1には熱電対が埋め込まれているので、所定箇所の温度が測定された。すなわち、鋼板9と耐火被覆材6との界面における温度(鋼材表面温度:t)と、その略裏に当たる部分の鋼板9とコンクリート材7との界面から20mm上側の位置における温度(コンクリート材7の所定位置における温度:t)が測定された。
【0041】
又、鋼板9の撓み量(δ)と、貫通孔(鋼製パイプ3)近傍のコンクリート材7裏面(試験体1の加熱側に対し背面)の撓み量(δ)とが測定された。この撓み量(δ,δ)の測定は、石英ガラス製丸棒(変位伝達具)4の上端面およびコンクリート材7の上端面に先端が当接するように配置された変位計(図示せず)によって測定されたものである。これによって、鋼板9とコンクリート材7下面との間の界面において、加熱によって生じた空隙部の厚さG(δ−δ)が求められた。
【0042】
上記測定で得られた空隙部の厚さ(G:δ−δ)は0.12mmであった。尚、この空隙部の厚さは加熱開始から140分間における空隙部の厚さの平均値である。すなわち、加熱開始より140分間において測定で得られた空隙部の厚さ(G)の和を測定回数で除した値である。
鋼材表面温度(t)は184℃であった。
コンクリート材7における所定箇所での温度(t)は127℃であった。
【0043】
これから判る通り、コンクリート材7と鋼板9との界面には熱に起因した剥離が起き難く、大きな空隙が形成され難い。
そして、鋼板9は過度に高い温度にならず、かつ、コンクリート材7の温度も低いものであった。
【0044】
本実施例1においては、長さが200mmの異形鉄筋8は縦・横方向に合計8本配置されて溶接されたものであったが、長さが200mmの異形鉄筋8が縦方向(又は横方向の何れか一方のみ)に合計4本配置されて溶接されたに過ぎない場合にあっては、空隙部の厚さ(G:δ−δ)は約0.5mm近くにもなっていた。すなわち、コンクリート材7と鋼板9との界面には熱に起因した大きな剥離が起き、大きな空隙が形成されていた。しかも、この場合の鋼板9の表面温度は約200℃近くにも到達していた。
【0045】
この結果から判る通り、本実施例のものは、耐熱特性に優れていることが判る。
【0046】
[実施例2]
110mm長の異形鉄筋(D10)8が、合計4本、図2(a)(b)に示される通りに配置・溶接された以外は、実施例1と同様に行われた。
【0047】
この本例における加熱試験の結果は下記の通りであった。
本測定で得られた空隙部の平均厚さ(G:δ−δ)は0.19mmであった。
鋼材表面温度(t)は187℃であった。
コンクリート材7における所定箇所での温度(t)は128℃であった。
【0048】
これから判る通り、コンクリート材7と鋼板9との界面には熱に起因した剥離が起き難く、大きな空隙が形成され難い。
そして、鋼板9は過度に高い温度にならず、かつ、コンクリート材7の温度も低いものであった。
【符号の説明】
【0049】
1 試験体(供試体)
6 耐火被覆材
7 コンクリート材
8 異形鉄筋(突起または棒材)
9 鋼板(金属材)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材およびコンクリート材を具備する合成部材に耐火被覆材が設けられた耐火性合成部材であって、
棒材が、少なくとも二つの方向に沿って存する如く、かつ、前記コンクリート材によって覆われる如く、前記金属材の表面上に、設けられてなり、
前記金属材には3個以上の突起が設けられてなり、
前記棒材は、異なる個所において、互いに異なる前記突起に連結されている
ことを特徴とする耐火性合成部材。
【請求項2】
前記棒材が、平面視で、n(nは3以上の整数)角形状に設けられてなり、
前記突起が前記n角形状に設けられた棒材に沿って設けられてなる
ことを特徴とする請求項1の耐火性合成部材。
【請求項3】
前記棒材が格子状に設けられてなり、
前記突起が前記格子状に設けられた棒材に沿って設けられてなる
ことを特徴とする請求項1の耐火性合成部材。
【請求項4】
前記棒材は金属製棒材である
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの耐火性合成部材。
【請求項5】
前記突起は金属製突起である
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの耐火性合成部材。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate