説明

耐火物廃材を使用した転炉スラグフォーミング鎮静材

【課題】耐火物廃材のリサイクル化と共に、従来材質以上の性能を持つスラグフォーミング鎮静材を提供すること。
【解決手段】本発明は耐火物廃材および磁力選別で発生する残材を主たる原料とした転炉スラグフォーミング鎮静材を提供するものである。耐火物廃材のリサイクルを目的に選別・粉砕・分級する過程で発生する様々な粒度の耐火物廃材を組み合わせ、水を添加して混練する。具体的には、最大粒度が0.5mm以上で且つ粒度0.15mm以下を5〜70質量%含む耐火物廃材粉100質量部と水5〜50質量部とを含み、これを熱消失性の容器にて包持してなる、耐火物廃材を使用した転炉スラグフォーミング鎮静材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所における転炉操業で使用するスラグフォーミング鎮静材に係り、特に産業廃棄物の有効利用を図るために耐火物廃材を利用したスラグフォーミング鎮静材に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉操業において、鋼中のC成分とスラグ中のFeO成分とが反応して発生するCOガスがスラグ層に滞留し、スラグ層ボリュームが増大するいわゆるスラグフォーミングが生じる。これがさらに激しくなると、スラグが転炉外に大量流出するスロッピングを招く。そして、このスラグフォーミングは、溶鋼のサンプリング、温度測定、取鍋への出鋼等に弊害となる。
【0003】
そこで、従来からこのスラグフォーミングを鎮静するための手段が種々提案されている。現在の主流は、合成樹脂や可燃物のように熱によって分解あるいは燃焼ガスを生成する鎮静材の投入である。鎮静材は生成ガス圧でスラグ層に脱気孔を形成し、スラグフォーミングを鎮静化する(特許文献1)。鎮静材の材質としては、ガスを発生させる、含油スラッジ、製紙スラッジ、プラスチック、木屑、古紙、パルプ排液、コークス粉等が知られている。
【0004】
また、水と有機物あるいは無機物との混合物よりなる鎮静材の使用(特許文献2)、水そのものを散布する方法(特許文献3,4)が提案されている。ここでの水は、スラグとの接触で急激に水蒸気を発生し、その水蒸気圧によってスラグ層に脱気孔を形成し、スラグフォーミングを鎮静する。
【0005】
また、可燃性物質と金属アルミニウムの混合物よりなる鎮静材(特許文献5)が提案されている。この材質は、可燃性物質からの発生ガスと、金属アルミニウムの酸化熱によるスラグ粘性の低下によって鎮静効果が得られる。
【0006】
一方、鎮静材の効果を十分に発揮させるためには、スラグ層ヘ投入後、鎮静材が溶綱とスラグ層との界面付近まで到達する必要がある。スラグ層の表面上に留まると生成ガスは直接外気中へ拡散し、スラグ層中に脱気孔を形成することができない。そこで、鎮静材は転炉スラグより比重が重いことが好ましく、比重が小さい有機物に代えて、比重調整手段として無機物を配合することが知られている(特許文献6,7)。
【特許文献1】特開2003−82410号公報
【特許文献2】特開昭52−115716号公報
【特許文献3】特開平08−325619号公報
【特許文献4】特開平01−129919号公報
【特許文献5】特開2000−160223号公報
【特許文献6】特開2001−348609号公報
【特許文献7】特開平08−199217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
資源の有効活用、環境保全の重要性が世界的規模でクローズアップされている現在、製鉄所で一度使用された耐火物を再度耐火原料としてリサイクル化する技術が開発されている。耐火物廃材である使用後耐火物を選別・粉砕・分級し、さらに粒度調整して得た耐火原料を複数組み合わせて耐火物の配合原料として使用することにより、耐火物廃材のリサイクル化を実現している。
【0008】
しかし、耐火物廃材はスラグ・地金を多く含んでおり、耐火原料としてのリサイクル化率が低く、磁力選別等で選別された後は、多くの部分が廃棄処分されているのが実状である。このため、この廃棄処分に該当する耐火物廃材の活用が強く望まれている。
【0009】
そこで本発明者らは、耐火物廃材のスラグフォーミング鎮静材への利用を考えた。磁力選別によって副産物的に発生する磁性物を含んだ耐火物廃材はもとより、一般の耐火物廃材についても、この鎮静材への利用は未だ知られていない。
【0010】
本発明は、耐火物廃材のリサイクル化と共に、従来材質以上の性能を持つスラグフォーミング鎮静材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴とするところは、最大粒度が0.5mm以上で且つ粒度0.15mm以下を5〜70質量%含む耐火物廃材粉100質量部と水5〜50質量部とを含み、これを熱消失性の容器にて包持してなる、耐火物廃材を使用した転炉スラグフォーミング鎮静材である。
【0012】
耐火物廃材粉と水とを熱消失性の容器にて包持した状態でスラグ中に投入すると、耐火物廃材粉と水とはその重量からスラグと溶鋼との界面付近まで到達後、水から水蒸気ガスを発生させ、そのガス圧でスラグ層を打ち破り、スラグ層中に脱気孔を形成する。水は可燃物あるいは金属粉に比べて気化温度が低いことから、ガス化は急激であり、スラグ層の打ち破りに効果的である。
【0013】
しかし、この耐火物廃材粉と水からなる鎮静材は、事前に十分に混合しておいたとしても、投入待ち時間に耐火物廃材粉と水とが分離しやすい問題がある。その結果、鎮静材組成において水が局所集中し、鎮静材投入時に溶鋼・スラグに水が直接接触して激しい水蒸気爆発が生じ、安全面で問題がある。
【0014】
また、水量と水蒸気爆発の程度が必ずしも一致せず、鎮静効果が不安定である。対策として水量を減らすと、たちまちスラグフォーミング鎮静の効果が大きく減退する。
【0015】
これに対し、本発明は耐火物廃材粉と水とを含む鎮静材において、耐火物廃材粉の一部に粒度0.15mm以下の耐火物廃材微粉を特定の割合で組み合わせる。この粒度0.15mm以下の耐火物廃材微粉は、比表面積が大きいことによって保水性に優れ、鎮静材中において水分を均一に分散保持させることができる。その結果、水分の局所集中が解消され、水蒸気爆発は適度で且つ安定したものとなる。しかも、その適度な水蒸気爆発はスラグ層に対して広範囲に及ぶ。また、水量の調整で水蒸気爆発の程度を正確にコントロールすることができる。
【0016】
スラグフォーミング鎮静をより効果的なものにするには、水の添加量を増し、それに伴って保水性に優れた耐火物廃材微粉の使用量の増加が必要となる。しかし、水と耐火物廃材微粉の増加はその分、鎮静材の嵩比重が小さくなって鎮静材の投入エネルギーが低下し、スラグ層に対する投入の際には、スラグと溶鋼との界面付近に到達しないまま水蒸気爆発を生じ、スラグフォーミング鎮静化の効果に乏しい。
【0017】
そこで本発明は、前記耐火物廃材微粉と共に、最大粒度が0.5mm以上の耐火物廃材粗粒粉を使用する。この粗粒粉は鎮静材の投入エネルギーを付与し、溶鋼とスラグ層との界面付近まで鎮静材を到達させる効果をもつ。
【0018】
耐火物廃材の選別には一般に磁力選別法が用いられている。磁力選別では、地金や地金を含んだスラグまたは耐火物が磁性物として選別除去される。磁性物は耐火物原料としてのリサイクル化が困難であり、廃棄処分される。しかし、この磁性物は鉄分を含むため比重が大きく、本発明で使用する耐火物廃材粉として適用した場合は、その比重の大きさから、投入エネルギー付与により効果的である。
【0019】
また、この磁性物を含む耐火物廃材粉は、磁性物である金属鉄の酸化発熱反応によってスラグ層を昇温させ、その粘性を低下させることでも、スラグフォーミングの鎮静化に効果を発揮する。
【0020】
耐火物廃材の耐火物へのリサイクルの工程において、粉砕・搬送時に多量の粉塵が発生する。そこで、一般的には集塵機等の局所排気装置による粉塵対策が講じられている。この集塵機からは大量の集塵粉が回収されるが、各ラインから集められた集塵粉には耐火物の性能低下の原因となる地金、スラグ他の様々な成分がランダムに含まれ、耐火物原料としてリサイクル活用は困難である。また、現在の選別技術をもってしても、この集塵粉から地金、スラグ等を選別除去することは困難である。
【0021】
しかしながら、集塵粉を本発明の鎮静材において耐火物廃材微粉として使用した場合、金属鉄である地金の酸化反応熱、さらにはスラグ成分の転炉スラグ層への溶出が、微粉であるために顕著であり、スラグ層の粘性を下げると共に水蒸気爆発に伴う転炉スラグ層の脱気孔の形成を容易にし、スラグフォーミング鎮静がより速やかなものとなる。また、この集塵粉の使用によって耐火物廃材のリサイクル化が一層向上する。
【0022】
耐火物の種類には結晶質あるいは非晶質の炭素を含むものがある。耐火物廃材の中から、炭素成分を含む材質を選択し、これを本発明の鎮静材に使用し、鎮静材に使用した耐火物廃材粉が炭素成分を40質量%以下含むように調整した場合は、スラグフォーミング鎮静を持続性させる効果がある。
【0023】
炭素成分はスラグ中のFeOを還元してCOガスを発生させ、このCOガスもスラグ層の開孔に作用する。炭素成分からのこのCOガスの発生は水からの水蒸気の発生のように急激なものではない。スラグフォーミング鎮静を持続させる効果は、水による水蒸気で形成された脱気孔がこのCOガスによって開孔を継続させることによる。
【0024】
本発明の鎮静材は耐火物廃材粉と水を主成分として構成され、ミキサー等で混合あるいは混練した後、合成樹脂袋等の熱消失性の容器にて包持して製造される。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、スラグフォーミング鎮静材として優れた効果を発揮すると共に、耐火物廃材の活用によって資源の有効利用に大きく貢献する。また、必要によっては耐火物廃材の選別、粉砕、分級過程で発生する余剰粉砕品、磁性物、集塵粉等を使用することができ、耐火物廃材については循環型社会に適応した100%リサイクルも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明で使用する耐火物廃材粉は、最大粒度を0.5mm以上とする。より好ましい最大粒度は0.5〜50mm、さらに好ましい最大粒度は1〜50mmである。最大粒度が0.5mm未満では粉体嵩比重が低下し、投入エネルギー不足によって鎮静材が投入時において溶鋼とスラグとの界面付近まで到達し難くなる。最大粒度が例えば50mmを超えるような大きなものは、鎮静材投入時に耐火物廃材微粉との間で偏在を生じ、耐火物廃材粗粒粉だけが転炉スラグ層の奥深く沈み込み、保水した耐火物廃材微粉が転炉スラグ層の上部に取り残される傾向があり、好ましくない。
【0027】
この耐火物廃材粉に対して本発明では、粒度0.15mm以下の耐火物廃材微粉を5〜70質量%含ませる。5質量%未満では保水性が不足し、鎮静材配合物を調整後、時間の経過とともに耐火物廃材粉と水が分離する。70質量%を超過した場合は、粉体嵩比重が低下し、鎮静材のスラグ層中への沈み込みが不十分となる。
【0028】
なお、本発明で耐火物廃材粉の粒度は、例えばJISふるい目開きで定めることができる。ここで粒度0.15mm以下とは、耐火物廃材粉全体を粒度0.15mmの篩で篩い分けた際、その篩い下の割合である。0.15mm以下であるから、例えば0.075mmあるいは0.045mm等の篩下であってもよい。また、耐火物廃材微粉として0.15mmを超える篩で篩い分けたものを使用した場合も、結果として、耐火物廃材粉全体の粒度が本発明で規定した粒度0.15mm以下が5〜70質量%であれば本発明の範囲内である。
【0029】
耐火物廃材微粉は、耐火物廃材の粉砕あるいは粉砕工程で発する集塵粉を使用することができる。この0.15mm以下の耐火物廃材微粉の使用割合は、本発明で規定した範囲内において、転炉スラグの粘性に応じて適宜決定するのが好ましい。集塵粉を使用する場合は耐火物廃材のリサイクル効率の面から、その割合は本発明の範囲内において可能な限り多く使用することが望ましい。
【0030】
本発明では以上から少なくとも、粒度0.15mm以下の耐火物廃材微粉と最大粒度が0.5mm以上の耐火物廃材粗粒粉を使用するが、さらにこの微粉と粗粒粉との間の中間粒を組み合わせても良い。しかし、中間粒の組み合わせは、配合物の種類が増えることになり、生産性の面からは好ましくない。
【0031】
また、0.5mm以上の耐火物廃材粗粒粉はその量が少ないと、粗粒粉がもつ投入エネルギー付与の効果が損なわれる。このため、0.5mm以上の耐火物廃材粗粒粉は、耐火物廃材粉全体に占める割合で少なくとも20質量%が好ましく、さらに好ましくは30質量%とする。さらに好ましくは、前記微粉の残部すべてを0.5mm以上の耐火物廃材粗粒粉にする。
【0032】
磁性物を含む耐火物廃材粉としては、耐火物廃材から耐火物原料を得るリサイクル工程において、磁力選別機からの発生品、さらには粉砕工程からの粉塵を使用することができる。地金、鉄分あるいはこれらを取り込んだスラグを含む材質のために磁性を有している。この材質はスラグ粘性を低下させ、スラグフォーミング鎮静効果を一層向上させる。
【0033】
前記耐火物廃材粉と組み合わせる水の量は、耐火物廃材粉100質量部に対して5質量部未満ではスラグフォーミング鎮静の効果が不十分である。50質量部を超過すると鎮静材の比重が低下し、スラグ中への沈み込みが不足する。さらに好ましい水量は10〜30質量部である。水量が多過ぎると過度の水蒸気爆発により、鎮静材の投入作業に危険性を伴う。
【0034】
炭素成分を含む耐火物廃材粉を使用する場合、例えば鱗片状黒鉛、ピッチ、コークス、フェノール樹脂等の炭素源を含む耐火物の廃材を使用する。例えばマグネシア−炭素質、スピネル−炭素質、アルミナ−炭素質、アルミナ−炭化珪素−炭素質等の定形耐火物、あるいはアルミナ−炭化珪素質、アルミナ−炭化珪素−炭素質、スピネル-炭化珪素質、スピネル−炭化珪素質、スピネル−炭化珪素質、スピネル−炭化珪素−炭素質等の不定形耐火物の廃材の一種又は二種以上である。炭素源は耐火原料骨材だけでなく、炭素質結合剤からも供給源となる。
【0035】
炭素成分を含む耐火物廃材粉の使用量は、耐火物廃材粉全体に占める割合で、炭素成分が40質量%以下、さらに好ましくは3〜40質量%含むようにすることが好ましい。この場合の炭素成分の割合は耐火物廃材粉全体に対するものであるから、炭素成分を含まない耐火物廃材粉と組み合わせて使用した場合も、炭素成分は耐火物廃材粉全体に占める割合で、炭素成分が40質量%以下、さらに好ましくは3〜40質量%含むようにすることが好ましい。
【0036】
炭素は水との濡れ性が悪く、炭素成分が40質量%を超えると水と分離しやすくなって本発明の保水性の効果が損なわれる。炭素成分が少ないとスラグフォーミング鎮静効果の持続性向上が明確に認められない。
【0037】
以上の耐火物廃材粉と水の他にも、本発明の構成から逸脱せずしかも本発明の効果を損なわない範囲であれば、コンクリート等の建設廃材、あるいはガラス廃材、陶磁器廃材、合成樹脂廃材、金属廃材等を鎮静材構成原料の一部に使用してもよい。
【0038】
鎮静材は事前に十分に混合した上で、熱消失性容器にて包持する。熱消失性容器の材質は合成樹脂袋の他にも、例えば紙袋、薄鉄板容器等を使用することができる。取り扱いおよび費用の面から、合成樹脂袋が好ましい。
【実施例】
【0039】
表1は各例で使用した耐火物廃材とその化学成分値である。使用後耐火物のリサイクル化において、Feの含有量が多いものは磁性物を含むとして選別作業で除外される。同表中、Fe含有量が15.5質量%あるいは3.7質量%のものは、この磁性物を含む材質である。また、表2,3は各例における鎮静材の配合組成とその試験結果である。試験方法は以下のとおりである。
【0040】
分離抑制性:鎮静材組成をモルタルミキサーにて、水量も含めた合量で80kgを混合した後、水の分離の程度を混合直後、3日経過後、10日経過後のそれぞれについて目視観察にて3段階に評価した。◎:10日経過後も水分の分離が全くない。○:3日経過後では水分分離が全くないが、10日経過後では僅かに分離が認められるものの、鎮静材の性能上影響しない。×:混合直後から分離が発生。
【0041】
スラグ中への沈み込み:鎮静材を実際の転炉に投入し、スラグ層中への沈み込み状態を目視観察にて3段階に評価した。◎:粗粒と微粉部との分離もなく全体がスラグ層中の溶鋼界面まで沈み込む。○粗粒と微粉部との分離は無いが、沈み込みにやや劣る傾向が認められる。△:鎮静材の一部はスラグ層へ沈み込むが残りは表面上で残留。×:沈み込みが全くなく、鎮静材がスラグ上で浮遊。
【0042】
スラグフォーミング鎮静度:スラグフォーミングした転炉に鎮静材を投入し、目視観察にて3段階で評価した。◎:5kg入り鎮静材を5袋投入して鎮静効果あり、○:5kg入り鎮静材を10袋投入して鎮静効果あり、×:20袋以上投入するも全く鎮静効果認められず。
【0043】
スラグフォーミング鎮静の持続性:5kg入り鎮静材を10袋投入後、スラグフォーミング抑制時間を測定し4段階で評価した。◎:20分以上鎮静持続。○:5〜20分鎮静持続。△:鎮静持続時間が5分未満。×:脱気孔開口するも即またスラグフォーミング発生。
【0044】
大きな水蒸気爆裂の発生有無:5kg入り鎮静材一袋を転炉に投入し、スラグや溶鋼の飛散が防熱板にまで到達する大きな水蒸気爆発の有無で評価した。
【0045】
なお、各例における耐火物廃材粉の粒度は、いずれも「mm以下」で示している。これは、「0.15mm以下」を例に挙げると、0.15mmの篩による篩下を意味している。この0.15mm以下の粒度は、例えば5mm以下の篩い下にも含まれているから、表2,3には、耐火物廃材粉全体に占める0.15mm以下の割合も同時に示す。
【0046】
本発明実施例1〜10はいずれも粒度0.15mm以下の耐火物廃材微粉量が本発明の範囲内であり、その保水性によって分離抑制性に優れている。これに対し比較例1,2,7は粒度0.15mm以下の微粉量が本発明の範囲内より少なく、水分離を抑制できないことで、転炉へ投入後、大きな水蒸気曝裂が発生し、安全上の問題があった。
【0047】
本発明実施例は水量の変化によって、スラグフォーミング鎮静効果に程度差は見られるものの、いずれも鎮静材として優れた効果を発揮している。これに対し、比較例5のように水量がないと全く鎮静効果は得られない。逆に比較例6のように水量が多すぎると嵩比重が小さいことでスラグ層中への沈み込みが不足し、しかも水の分離が発生して危険が伴う程度の大きな水蒸気爆裂を生じた。
【0048】
粒度0.15mm以下の微粉量とスラグ層中への沈み込みとの間には相関が認められ、微粉量増とともにスラグ中への沈み込み度は低下傾向にある。比較例3,4のごとく粒度0.15mm以下の微粉量が本願発明で限定した範囲を超過したものは嵩比重が小さくなってスラグ層への沈み込みがなく、スラグ表面上で浮遊し、スラグフォーミング鎮静効果が得られない。
【0049】
実施例3,4で示すように、耐火物廃材粉の最大粒度が5mmや20mmときわめて大きい場合でも、粒度0.15mm以下の微粉が本発明の範囲であれば、スラグフォーミング鎮静の効果は十分発揮できる。これに対し、比較例3のとおり耐火物廃材のすべてが微粉の場合は、嵩比重の不足によるスラグ層中への沈み込みが不十分となり、鎮静効果が発揮されない。
【0050】
実施例1は、耐火物廃材微粉としてスラグや地金付着の少ない良質の耐火物廃材粉を使用したものである。実質的に磁性物を含まないことで、わずかに鎮静効果に劣るが実使用上は問題ない。また、他実施例と比べて耐火物廃材微粉の割合がやや少ないため水の分離抑制性も低いが、本発明の鎮静効果に大きく影響しない。
【0051】
実施例6〜9は、炭素成分を含んだ耐火物廃材を使用した例である。スラグフォーミング鎮静について、他の実施例に比べてその持続性に優れていることが確認される。比較例2、4〜6も同様に炭素成分を含んだ耐火物廃材を使用しているが、いずれもスラグフォーミング鎮静効果自体が乏しいことで、鎮静効果も持続しない。
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大粒度が0.5mm以上で且つ粒度0.15mm以下を5〜70質量%含む耐火物廃材粉100質量部と水5〜50質量部とを含み、これを熱消失性の容器にて包持してなる、耐火物廃材を使用した転炉スラグフォーミング鎮静材。
【請求項2】
耐火物廃材粉が、磁性物を含む耐火物廃材粉である請求項1記載の耐火物廃材を使用した転炉スラグフォーミング鎮静材。
【請求項3】
耐火物廃材粉全体に占める割合で、耐火物廃材粉が炭素成分を40質量%以下含む請求項1または2記載の耐火物廃材を使用した転炉スラグフォーミング鎮静材。

【公開番号】特開2007−302951(P2007−302951A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133049(P2006−133049)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】